平成17(行ウ)79等 損害賠償(住民訴訟)請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年1月31日 大阪地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文24,154 文字)

- 1 -主文 被告は,社会福祉法人Aに対し,1億0158万7576円を堺市に支払うよう請求せよ。 原告ら(79号)の請求及び原告(143号)のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを6分し,その5を被告の,その余を原告ら(79号,143号)の各負担とする。 事実及び理由 第1請求 被告は,社会福祉法人Aに対し,1254万2015円を堺市に支払うよう請求せよ(79号。 ) 被告は,社会福祉法人Aに対し,1億1186万1276円を堺市に支払うよう請求せよ(143号。 )第2事案の概要本件は,堺市の住民である原告ら(79号,143号)が,社会福祉法人A(以下「A」という)が,その設置に係る通所介護事業所につき,平成12。 年度から平成16年度までに偽りその他不正の行為により堺市から介護報酬の支払を受けていたとして,被告に対し,介護保険法(以下「法」という)2。 2条3項に基づき,Aが当該介護報酬(3135万5038円)に対する100分の40の割合による加算金(1254万2015円)を堺市に支払うよう請求することを求めるとともに(79号,Aが,常勤の管理者を置かずに通)所介護事業所,訪問介護事業所,居宅介護支援事業所の各指定を申請し,その旨の指定を前提として,平成12年度から平成16年度までに堺市から介護報酬(1億6000万円を下らない)の支払を受けたことは,偽りその他不正。 の行為によるものであるなどとして,法22条3項,民法709条に基づき,既に返還済みの介護報酬を控除した残額を超えない額である1億1186万1- 2 -276円を堺市に支払うよう請求することを求めた(143号)事案である。 法令の定め(1)目的法は,加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態又は要支 86万1- 2 -276円を堺市に支払うよう請求することを求めた(143号)事案である。 法令の定め(1)目的法は,加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態又は要支援状態となった者のために,介護,機能訓練及び看護等の必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため,市町村等を保険者とする介護保険制度を設け,その行う保険給付等に関して必要な事項を定めた法律であり(法1条,2条1項,3条1項,平成12年4月1日より施)行された(法制定附則1条。 )(2)保険給付法の規定する保険給付には,要介護状態となった被保険者に対する介護給付,要支援状態となった被保険者に対する予防給付,これらに加えて市町村が条例で定める市町村特別給付とがある(法18条。 )(3)介護報酬介護保険の保険者である市町村は,要介護認定を受けた被保険者のうち,居宅において介護を受ける者が都道府県知事による指定を受けた事業者指,(定居宅サービス事業者)から,当該指定に係る通所介護,訪問介護等のサービス(指定居宅サービス)を受けたときは,当該被保険者に対し,所定の居宅介護サービス費を支給する(法8条1項,2項,7項,41条1項。な)お,一定の場合には,市町村は,当該指定居宅サービス事業者による請求に基づき,当該被保険者に代わり,当該居宅介護サービス費を,当該指定居宅サービス事業者に直接支払うことができる(法41条6項,9項。以下,このようにして支払われたサービス費等(後記の居宅介護サービス計画費も含む)を「介護報酬」ともいう。 。 。)また,市町村は,要介護認定を受けた被保険者が,都道府県知事による指定を受けた事業者(指定居宅介護支援事業者)から,当該指定に係る居宅サ- 3 -ービス計画の作成等のサービス(指定居宅 。 。)また,市町村は,要介護認定を受けた被保険者が,都道府県知事による指定を受けた事業者(指定居宅介護支援事業者)から,当該指定に係る居宅サ- 3 -ービス計画の作成等のサービス(指定居宅介護支援)を受けたときは,前同様,所定の居宅介護サービス計画費を支給し,一定の場合には,これを当該指定居宅介護支援事業者に直接支払うことができる(法46条1項,4項,6項。 )(4)事業者の指定指定居宅サービス事業者の指定は,居宅サービス事業を行う者の申請により,居宅サービスの種類及び当該居宅サービスの種類に係る居宅サービス事業を行う事業所ごとに,都道府県知事が行う(法70条1項。指定居宅サ)ービス事業者は,当該指定に係る事業所ごとに,厚生労働省令で定める基準に従い厚生労働省令で定める員数の当該指定居宅サービスに従事する従業員を有しなければならず(法74条1項,その要件を充足しなければ上記指)定がされない(法70条2項2号。 )指定居宅介護支援事業者の指定は,居宅介護支援事業を行う者の申請により,居宅介護支援事業を行う事業所ごとに,都道府県知事が行う(法79条1項。指定居宅介護支援事業者は,当該指定に係る事業所ごとに,厚生労)働省令で定める員数の介護支援専門員を有しなければならず(法81条1項,その要件を充足しなければ上記指定がされない(法79条2項2号。 ))(5)従業者の基準ア管理者上記各規定を受けて,指定居宅サービス等の事業の人員,設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「37号人員基準」という)は,指定通所介護事業者及び指定訪問介護事業者が,事業所ごと。 に,原則として専らその職務に従事する常勤の管理者を置かなければならないと定め(37号人員基準6条,94条,指定居宅介護支援等の事業)の人 定通所介護事業者及び指定訪問介護事業者が,事業所ごと。 に,原則として専らその職務に従事する常勤の管理者を置かなければならないと定め(37号人員基準6条,94条,指定居宅介護支援等の事業)の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号。以下「38号人員基準」という)は,指定居宅介護支援事業者が,事業所ごとに,。 - 4 -原則として専らその職務に従事する常勤の管理者を置かなければならないと定めている(38号人員基準3条1項,3項。 )そして,上記各規定を受けて,指定居宅サービス等の事業の人員,設備及び運営に関する基準について(平成11年老企第25号。以下「人員基準通達」という)は,常勤とは,当該事業所における勤務時間が,当該。 事業所において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数(週32時間を下回る場合は32時間を基本とする)に達していることをいうと。 している(人員基準通達第2,2項(3) 。また,人員基準通達は,管理)者につき,例外的に他の職務と兼ねることができる場合として,同一敷地内にある又は道路を隔てて隣接する等,特に当該事業所の管理業務に支障がないと認められる範囲内に他の事業所,施設等がある場合に,当該他の事業所,施設等の管理者又は従業者としての職務に従事する場合で,当該事業所の管理業務に支障がないときを挙げている(人員基準通達第8,1項(4),第3,1項(3)②。 )イ管理者以外の従業者37号人員基準は,指定通所介護事業者が,当該事業所ごとに置くべき従業者の基準として,原則として,提供時間帯を通じて専従の生活相談員1名提供時間帯を通じて専従の看護職員看護師及び准看護師1名な,()(お,平成15年厚生労働省令第28号(平成15年4月1日施行)による改正により,上記看護職員につき「 の生活相談員1名提供時間帯を通じて専従の看護職員看護師及び准看護師1名な,()(お,平成15年厚生労働省令第28号(平成15年4月1日施行)による改正により,上記看護職員につき「提供時間帯を通じ」との要件が削除された,提供時間帯を通じて専従の介護職員1名(生活相談員又は介護。)職員のうち1名以上は常勤でなければならない,機能訓練指導員1名。)と規定し(37号人員基準93条1項,5項,利用定員が10名以下の)場合には,看護職員及び介護職員は,提供時間帯を通じて専従の看護職員又は介護職員1名(生活相談員,看護職員又は介護職員のうち1名以上は常勤でなければならない)と規定している(同条2項,6項。 。 )- 5 -,,,,,そして上記各規定を受けて人員基準通達は専従とは原則としてサービス提供時間帯(当該従業者の当該事業所における勤務時間をいい,当該従業者の常勤,非常勤を問わない)を通じて当該サービス以外の職。 務に従事しないことをいい(人員基準通達第2,2項(4) ,提供時間帯)を通じて専従とは,提供時間帯に当該従業者が常に確保されることをいうと規定している(人員基準通達第8,1項(1)②。 )(6)介護報酬居宅介護サービス費(介護報酬)は,居宅サービスの種類ごとに,当該居宅サービスの種類に係る指定居宅サービスの内容その他の各事情を勘案して厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額の100分の90と定められている(法41条4項1号。 )上記規定を受けて,本件当時の指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号。以下「算定基準」という。 甲2)は,指定居宅サービスごとに,指定居宅サービス介護給付費単位数。 を定めており,認知症(以下,本件当時は「痴呆 用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号。以下「算定基準」という。 甲2)は,指定居宅サービスごとに,指定居宅サービス介護給付費単位数。 を定めており,認知症(以下,本件当時は「痴呆」とされていた場合であっても,すべて認知症と読み替える)専用併設型通所介護費とその余の通所。 介護費ごとに,所要時間3時間以上4時間未満の場合,所要時間4時間以上6時間未満の場合,所要時間6時間以上8時間未満の場合に区分して規定している(算定基準別表6項。 )上記規定を受けて,本件当時の厚生労働大臣が定める施設基準(平成12年厚生省告示第26号。以下「施設基準」という。甲3)は,認知症専用。 併設型通所介護費を算定すべき指定通所介護の施設基準として,利用定員が10名以下であること,37号人員基準93条所定の看護職員又は介護職員の員数に加えて,専ら当該指定通所介護を行う看護職員又は介護職員を1名以上置いていることと規定している(施設基準1項ニ(2)によって準用される同項ハ(3),(4) 。 )- 6 -上記規定を受けて,本件当時の厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法(平成12年厚生省告示第27号。以下「利用者数基準」という。甲4)は,指定通所介護の利用者が利用定員を超えた場合及び看護職員又は介護職員の員数が37号人員基準93条所定の員数を下回ったときは,所定単位数に100分の70(,を乗じた単位数を基準として通所介護費を算定すると規定している1項イロ。 )上記規定を受けて,指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス及び居宅療養管理指導に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年老企 ビスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス及び居宅療養管理指導に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年老企第36号。以下「留意事項」という)は,37号。 人員基準93条所定の看護職員及び介護職員が配置されていない状況で行われた通所介護については,所定単位数に100分の70を乗じて得た単位数を算定するものとし,認知症専用型の通所介護費を算定していた事業所において,認知症専用型の通所介護費を算定するための人員の基準を満たさないが,37号人員基準93条所定の員数の看護職員及び介護職員は配置されていた場合は,認知症専用型の通所介護費の100分の70相当の単位数を算定するのではなく,認知症専用型でない通所介護費を算定するものと規定している(第2,7項(7) 。 ),,,,また算定基準は所定単位数の算定について現に要した時間ではなく通所介護計画に位置づけられた内容の指定通所介護を行うのに要する標準的な時間で算定すると規定し(別表6項注1,これを受けた留意事項は,そ)の例として,単に利用者の家族の出迎え等の都合で,当該利用者が通常の時間を超えて事業所にいる場合は,通所介護のサービスが提供されているとは認められないと規定している(第2,7項(3) 。 )(7)指定の取消し及び介護報酬の返還- 7 -都道府県知事は,指定居宅サービス事業者につき,居宅介護サービス費の請求に関し不正があったとき,不正の手段により指定を受けたときは,当該事業者の指定を取り消すことができ(法77条1項4号,8号,指定居宅)介護支援事業者につき,不正の手段により指定を受けたときも,当該事業者の指定を取り消すことができる(法84条1項9号。 )市町村は,偽りその他 り消すことができ(法77条1項4号,8号,指定居宅)介護支援事業者につき,不正の手段により指定を受けたときも,当該事業者の指定を取り消すことができる(法84条1項9号。 )市町村は,偽りその他不正の行為によって,指定居宅サービス事業者,指定居宅介護支援事業者その他の事業者が,所定の介護報酬の支払を受けたときは,当該業者に対し,その支払った額につき返還させるほか,その返還させる額に100分の40を乗じて得た額の加算金を支払わせることができる(法22条3項。 ) 前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠(特記しない限り枝番を含む。 以下同じ)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)。 (1)当事者等(争いがない)原告ら(79号及び143号)は,いずれも堺市の住民である。 被告は,堺市の執行機関であり,損害賠償金又は不当利得金の支払を請求する権限を有する行政庁である。 (2)AAは,堺市α×番地の1に主たる事務所を置く社会福祉法人であり,平成10年から平成11年にかけて,軽費老人ホーム「B,老人デイサービス」「」,「」(,事業C老人ホームヘルプサービス事業Dの事業を開始した乙7弁論の全趣旨。 )Aは,大阪府知事から,法施行(平成12年4月1日)直前の同年3月15日,指定居宅サービス事業者として,通所介護事業所「C(以下「本件」デイサービスセンター」という,訪問介護事業所「E(以下「本件ヘル。)」パーステーション」という)の指定を受け,平成15年9月1日,指定居。 宅介護支援事業者として,居宅介護支援事業所「F(以下「本件ケアプラ」- 8 -ンセンターというの指定を受け以下これらの事業所を合わせて本」。)(,「件各センター」といい,これらの指定を合わせて「本件各指定」とい 業所「F(以下「本件ケアプラ」- 8 -ンセンターというの指定を受け以下これらの事業所を合わせて本」。)(,「件各センター」といい,これらの指定を合わせて「本件各指定」という,。)これらの事業を営んでいた(乙7,27,弁論の全趣旨。 )(3)本件デイサービスセンターの指定の申請及び運営Aは,本件デイサービスセンターの指定の申請(平成12年2月29日付け)に当たり,営業日を月曜日から金曜日(祝日を含む,営業時間を午前)9時30分から午後4時00分,利用定員を15名,配置する従業者を生活相談員(常勤かつ専従)1名,看護職員(非常勤かつ専従)1名,介護職員(常勤かつ専従)1名,機能訓練指導員(非常勤かつ兼務)1名として申請していたが(乙1,その指定の翌日である同年3月16日に提出した介護)給付費算定に係る体制等に関する届出書には,サービス提供時間を午前10時00分から午後4時00分,人員配置区分を認知症専用併設型とし,利用定員を10名として記載していた(乙2,7。 )Aは,上記指定後,本件デイサービスセンターを,利用定員10名の認知症専用併設型通所介護事業所として運用していたが,運営規程(介護保険法施行規則119条,37号人員基準100条)及び重要事項説明書(37号人員基準105条8条には利用定員を15名のままで記載していた甲,),(26,乙7。Aは,平成16年12月24日に大阪府担当者からの指摘を)受け,平成17年2月9日,運営規程上の利用定員を15名から10名に変更する旨の届出をした(乙7。 )(4)Aの管理者Aは,本件各指定に当たり,Gを管理者として申請していた(乙1,弁論の全趣旨。なお,Gは,本件各指定当時のA理事H(平成17年8月31)日辞任)の夫である(乙9,弁論の 。 )(4)Aの管理者Aは,本件各指定に当たり,Gを管理者として申請していた(乙1,弁論の全趣旨。なお,Gは,本件各指定当時のA理事H(平成17年8月31)日辞任)の夫である(乙9,弁論の全趣旨。 )(5)看護職員の派遣及び派遣料の還流Aは,I(以下「本件病院」という)との間で,本件病院から看護職員。 - 9 -を受ける旨の契約(以下「本件派遣契約」という)をした(甲8。Aは,。 )本件病院に対し,実際には派遣されていない日及び時間帯の派遣料についても支払を行った。また,実際の派遣分との差額については,後日,本件病院「」(,)。 から寄附金という名目で払戻しを受けていた甲14弁論の全趣旨(6)監査請求及び訴えの提起ア原告ら(79号)は,平成17年2月24日,堺市監査委員に対し,Aが,職員数を偽るなどして,本件デイサービスセンター及び本件ヘルパーステーションに係る介護報酬(平成12年度から平成16年度)を不正に請求し,堺市から介護報酬の支出を受けたから,被告は,Aに対し,介護報酬相当額の不当利得返還請求権等を有するのに,これを違法に怠ってい,()()。 るとして同請求権等の行使を求める監査請求79号をした甲1堺市監査委員は,同年4月25日,堺市は大阪府とともにAに対する実地調査を行い,事実の確認に努めているから,少なくとも被告が上記返還請求権等を行使しないことが違法とはいえないなどとして,監査請求を棄却し(甲1,そのころ,原告ら(79号)に通知した(弁論の全趣旨。 ))原告ら(79号)は,同年5月24日,被告に対し,Aに上記不正請求(本件デイサービスセンター及び本件ヘルパーステーション)により被った介護報酬相当額及びこれに100分の40を乗じた加算金(法22条3項)を堺市へ支払う 同年5月24日,被告に対し,Aに上記不正請求(本件デイサービスセンター及び本件ヘルパーステーション)により被った介護報酬相当額及びこれに100分の40を乗じた加算金(法22条3項)を堺市へ支払うよう請求することを求める訴え(79号)を提起した(顕著な事実。 )イ原告(143号)は,平成17年6月6日,Aが本件各指定に当たり管理者として申請したGは,管理者としての勤務実態がないから,そもそもその指定が無効であり,堺市が本件各指定を前提としてAに介護報酬を支出したことは違法であり,その支出した介護報酬全額が不当利得となるから,堺市はその返還請求権等を行使すべきであるのに,その行使を違法に怠っているとして,同請求権の行使等を求める監査請求(143号)をし- 10 -た(甲20。 )堺市監査委員は,同年8月3日,堺市は大阪府とともにAに対する実地調査を行い,事実の確認に努めているから,少なくとも被告が上記請求権を行使しないことが違法とはいえないなどとして,監査請求を棄却し(甲20,そのころ,原告(143号)に通知した(弁論の全趣旨。 ))原告(143号)は,同年9月2日,Aが,本件各センターについて,管理者としての勤務実態のない者を管理者として指定の申請をし,その後も不在の状態のまま虚偽の報告を行い続け,不正に介護報酬を受領したとして,被告に対し,これに相当する金員を堺市へ支払うよう請求することを求める訴えを提起した(顕著な事実。 )(7)指定の取消し,介護報酬の返還(争いがない)ア大阪府知事は,担当職員による事実の調査を経て,平成17年8月24日,Aに対し,①訪問介護事業所以外の施設職員等が行ったサービス提供について,訪問介護事業所の訪問介護員がサービス提供を行ったように装ってサービス提供記録に虚偽の記載を行い,介護給付 17年8月24日,Aに対し,①訪問介護事業所以外の施設職員等が行ったサービス提供について,訪問介護事業所の訪問介護員がサービス提供を行ったように装ってサービス提供記録に虚偽の記載を行い,介護給付費を不正に請求したこと,②利用者本人が居宅に不在の時間帯にサービスを行ったにもかかわらず,利用者本人が居宅に在宅している時間帯にサービス提供を行ったように装ってサービス提供記録に虚偽の記載を行い,介護給付費を不正に請求したこと(平成17年法律第77号による改正前の法77条1項3号。 法77条1項4号と同旨である)を理由として,指定訪問介護事業の指。 定を取り消した(甲6。 )被告は,同月26日,Aに対し,上記不正請求に係る介護報酬(平成12年6月1日から平成17年3月14日までのサービス提供分。542万3188円)及びこれに対する100分の40の加算金を支払うよう請求し(法22条3項,堺市は,同年8月31日,これら全額の弁済を受け)た(甲15~17,弁論の全趣旨。 )- 11 -イ大阪府担当職員は,事実の調査を経て,Aに対し,平成17年8月24日,指定通所介護事業につき,①認知症専用併設型(利用定員10名)の従業者の人員基準を満たさない日があったにもかかわらず,介護給付費を減算せずに請求していたこと,②サービス提供時間について,4時間以上6時間未満の単位数で算定し,介護給付費を請求する必要があったにもかかわらず,6時間以上8時間未満の単位数を算定し,介護給付費を請求していたこと,③本人の希望等により当初の通所介護計画より時間を大きく短縮した場合には,計画を変更,再作成して変更後の所要時間に応じた単位数で算定し,介護給付費を請求する必要があったにもかかわらず,計画の変更等を行わず,6時間以上8時間未満の単位数で算定し,介護給付費を請 場合には,計画を変更,再作成して変更後の所要時間に応じた単位数で算定し,介護給付費を請求する必要があったにもかかわらず,計画の変更等を行わず,6時間以上8時間未満の単位数で算定し,介護給付費を請求していたこと,④利用定員(10名)を超過しているにもかかわらず,介護給付費を減算せずに請求していたこと(以下,それぞれ「本件不適正請求①」などといい,まとめて「本件各不適正請求」という)の4。 点において不適正な介護報酬の請求(平成12年4月から平成17年3月サービス提供分)がされていたと指摘し,自主点検により返還を行うよう勧告した(甲18,乙7,弁論の全趣旨。 )被告は,平成18年1月30日,Aによる自主点検の結果を受けて,Aが違法な請求として堺市に返還すべき介護報酬の額として確認された3135万5038円(本件不適正請求①につき738万6491円,本件不適正請求②及び③につき2379万6882円,本件不適正請求④につき)(,),17万1665円を堺市に支払うよう請求し甲18弁論の全趣旨同年2月13日,その全額の弁済を受けたが(弁論の全趣旨,これに対)する100分の40の加算金については,本件不適正請求が故意によるものではなく,報酬基準の解釈の誤りに基づくものと判断し,請求しなかった(弁論の全趣旨。 )(8)上記請求による請求の減縮(顕著な事実)- 12 -原告らは,上記取消し及び返還を受けて,請求の趣旨記載の請求以外の部分を取り下げた。 争点及び当事者の主張(1)本件各不適正請求が「偽りその他不正の行為(法22条3項)に該当,」するか否か(97号)(原告ら(97号)の主張)ア本件不適正請求①,④について前記前提事実のとおり,Aは,本件病院から,看護職員の派遣を週2日(火曜日及び木曜日)各2時間し 項)に該当,」するか否か(97号)(原告ら(97号)の主張)ア本件不適正請求①,④について前記前提事実のとおり,Aは,本件病院から,看護職員の派遣を週2日(火曜日及び木曜日)各2時間しか受けられないことを十分に認識しながら,本件病院から看護職員を週5日各6時間受ける旨の契約(本件派遣契約)をし,派遣料の還流を受けていた。 このような複雑かつ不自然な経理処理は,被告の主張するような形式的ミスではなく,Aが,当初から介護報酬の不正請求を意図していたと考えなければ説明がつかない。 また,被告は,Aが,本件デイサービスセンターの指定時において,その通所介護従業者として,生活相談員1名,介護職員1名,看護職員1名を置いていたと主張する。しかし,通所介護従業者の勤務実態を裏付けるものとしては,2人分のタイムカード(平成12年4月から平成15年3月のもの(乙18)と平成12年8月から平成14年11月のもの(乙19)しか存在しないのであるから,そのタイムカードがどの通所介護従)業者のものであったとしても,被告主張のとおりの人員配置がされていなかったことが明らかである。むしろ,本件派遣契約が,本件デイサービスセンターの指定日(平成12年3月15日)に近接した同年4月19日付けでされていたことにかんがみれば,本件デイサービスセンターには必要な通所介護従業者が置かれておらず,これを偽装するために本件派遣契約が締結されたものと強く推認される。 - 13 -被告は,Aが,本件デイサービスセンターの利用定員を10名として運用する意思を有していたにもかかわらず,その利用定員を15名として指定の申請をし,そのまま利用定員を10名として運用し続けていたのは,単に変更申請書の提出を失念していたにすぎないと主張する。しかし,Aは,その後の重要事項説明書に らず,その利用定員を15名として指定の申請をし,そのまま利用定員を10名として運用し続けていたのは,単に変更申請書の提出を失念していたにすぎないと主張する。しかし,Aは,その後の重要事項説明書に定員を15名として記載し続けており(甲26,単なるミスとは考えられない。 )イ本件不適正請求②,③について被告は,本件不適正請求②,③が,報酬算定基準の解釈の誤りによるものにすぎないと主張する。しかし,たとえば,大阪府のホームページ上で基本的事項として紹介された事項の中に,通所介護計画に基づき,6時間の介護サービスを提供した場合,介護サービス自体が終了するまでが6時間であるという理由で「4時間以上6時間未満」と算定することが掲げ,られているから(乙5,単なる法令の解釈の誤りにとどまらない。 )(被告の主張)ア本件不適正請求①,④についてAは,①認知症専用併設型(利用定員10名)の従業者の人員基準を満たさない日があったにもかかわらず,介護給付費を減算せずに請求していたが(本件不適正請求①,タイムカードによる勤務実態の実証がなかっ)た者をすべて勤務実態なしと判断していたから,実際には人員基準を満たしていた可能性もある。 原告らは,Aと本件病院との本件派遣契約を問題とする。しかし,本件デイサービスセンターには,指定申請時において,常勤かつ専従の生活相談員1名,常勤かつ専従の介護職員1名,非常勤で専従の看護師兼機能訓練指導員1名が配置されているとして指定の申請がされていたから,現にそのとおりの従業者が置かれていたはずである。また,指定後に看護職員の派遣契約(本件派遣契約。平成12年4月19日付け)がされている。 - 14 -が,派遣を受けること自体は何ら問題ないし,従業者や勤務態勢の変更があっても,基準の範囲内であれば,特段の届出を 員の派遣契約(本件派遣契約。平成12年4月19日付け)がされている。 - 14 -が,派遣を受けること自体は何ら問題ないし,従業者や勤務態勢の変更があっても,基準の範囲内であれば,特段の届出を要するものでもない。 また,原告らは,本件派遣契約上の看護師派遣時間数と,実際の看護師派遣時間数に齟齬があると主張する。確かに,本件派遣契約によって派遣された看護職員については,タイムカードが整備されていなかったために勤務実態を把握することができないが,仮に原告らの主張するような齟齬があったとしても,本件デイサービスセンターには上記の人員が配置されていた以上,人員基準を満たしていた可能性もある。なお,原告らは,通所介護従業者の勤務実態を裏付けるものとしては,2人分のタイムカード(平成12年4月から平成15年3月のもの(乙18)と平成12年8月から平成14年11月のもの(乙19)しか存在しないのであるから,)被告主張のとおりの人員配置がされていなかったことが明らかであると主張するが,これらのタイムカードはあくまで常勤介護職員及び非常勤介護職員のものを参考として提出したものにすぎないから,原告らの上記指摘は前提に誤りがある。 また,原告らは,本件派遣契約の経理処理を問題とするが,介護報酬の請求の適否と,職員の人件費の経理処理の適否は関係がない。 また,Aは,利用定員(10名)を超過しているにもかかわらず,介護給付費を減算せずに請求していたが(本件不適正請求④,そのような利)用定員の超過は5年間で11日分であり,恒常的なものとはいえない。 Aは,平成12年2月29日,大阪府知事に対し,本件デイサービスセンターにつき,利用定員を10名として運用する意思を有していたにもかかわらず,深く考えず,利用定員15名の通所介護事業所としての指定を申請し(乙1 年2月29日,大阪府知事に対し,本件デイサービスセンターにつき,利用定員を10名として運用する意思を有していたにもかかわらず,深く考えず,利用定員15名の通所介護事業所としての指定を申請し(乙1,同年3月15日,その旨の指定を受けた。 )ところが,施設基準では,認知症専用併設型通所介護施設の設置基準として,定員が10名以下であることと定められていたので,Aは,同年3- 15 -月16日,定員を10名として,介護給付費算定に係る体制等に関する届出書を提出した(乙2。Aは,指定内容の変更申請書を提出すべきであ)ったにもかかわらず,その提出を失念していただけである。 イ本件不適正請求②,③について介護報酬の請求については,たとえば,通所介護計画に基づき,6時間の介護サービスを提供した場合,介護サービス自体が終了するまでが6時間であるという理由で「4時間以上6時間未満」と算定することとされ,ていたり,介護計画の変更による場合について規定された基準もその旨を読みとりにくいなど,算定基準が複雑である。本件不適正請求②,③は,単なる算定基準の解釈の誤りに基づくものにすぎない。 (2)Aが不正の手段により本件各指定を受けたか否か(143号)(原告(143号)の主張)アAが本件指定に当たり管理者として申請したGは,学校法人J学園の理事長であり,本件各センターから直線距離で約10㎞も離れているK幼稚園(以下「本件幼稚園」という)の事務長である。幼稚園の事務長が幼。 稚園に常勤していないなどとは考えられないし,現に,Gは,本件各センターに,宿直のときのほかは,せいぜい月2,3回程度しか出勤していな。 ,,かった確かにGが本件各センターの管理者として常勤していなくとも日常業務にそれほど大きな問題はなかったが,これは従業員の努力によるもの きのほかは,せいぜい月2,3回程度しか出勤していな。 ,,かった確かにGが本件各センターの管理者として常勤していなくとも日常業務にそれほど大きな問題はなかったが,これは従業員の努力によるものにほかならない。むしろ,Aは,本件不適正請求及びこれによる介護報酬返還の事態を招くなど,本件各センターの運営に統制がとれていなかったが,これは,管理者が不在であったことによる実害といえる。 イこのように,Aは,Gが幼稚園の事務長であり,本件デイサービスセンター等の管理者として常時勤務できないことを十分承知しながら,本件各指定の申請に当たり提出した管理者経歴書(甲29)に,Gが幼稚園の事務長であることを記載しなかったから,Aは,不正の手段により本件各指- 16 -定を受けたものとして,本件各指定の取消要件に該当するというべきであり(法77条1項8号,84条1項9号,Aが本件各指定を前提として)支払を受けた介護報酬全額(ただし,既に返還済みのものを除く)は,。 「」,偽りその他不正の行為により支払を受けたものというべきであるから法22条3項ないし民法709条に基づき,これを堺市に支払う義務を負う。 (被告の主張)ア原告は,Aは「事業者が,不正の手段により指定を受けたとき」とい,う指定取消要件(法77条1項8号)に該当すると主張するが,同要件に該当するのは,法人の代表者等が指定申請を行うに際して,指定等の基準を満たすことができないと十分に知り得た上で,大阪府を故意に欺こうとして,事実と異なる虚偽の書類等を作成し指定を受けたときと解すべきで。 ,,あるしかるに本件各指定に係る権限を有する大阪府担当職員において,,Gの勤務実態を調査したが管理者の勤務を裏付ける資料がなかったため従業員など複数の関係者による聞き取り調査をしたとこ 。 ,,あるしかるに本件各指定に係る権限を有する大阪府担当職員において,,Gの勤務実態を調査したが管理者の勤務を裏付ける資料がなかったため従業員など複数の関係者による聞き取り調査をしたところ,ポイントポイントでは本件各センターに勤務していたことが認められたため,管理者が明らかに常時勤務していなかったことを裏付けることができなかった。また,緊急時の体制を確認したところ,管理者は連絡の取れる体制をとっており,即時の対応が必要な場合には,管理者の代理として施設長代理やそれぞれの事業所の責任者が応対しているとの結果が得られた。 ,,,これらの事実から大阪府担当者は好ましくない状態ではあるもののGは管理者としての責務を少なからず果たしており,Aが,指定申請時において,大阪府を故意に欺こうとした事実は認められず「不正の手段に,より指定を受けた」ものとはいえないと判断したのであり,その判断は正当である。 イ仮に,Gが管理者としての責務を果たすに不十分な状況にあったとして- 17 -も,本件では,実際に法が求める具体的な介護サービスの提供がされていたのであるから,当該サービス提供が無効とはいえず,Aが介護報酬を不当に利得していたとはいえない。 第3争点に対する判断 本件各不適正請求が「偽りその他不正の行為(法22条3項)に該当す,」るか否かについて(79号)(1)原告らは,Aが,本件デイサービスセンターに必要な人員を配置していなかったにもかかわらず,その勤務実態を偽って介護報酬を請求していたと主張するので(本件不適正請求①,④,以下検討する。 )ア前記前提事実のとおり,本件デイサービスセンターは,認知症専用併設型通所介護事業所(利用定員10名)として運営していたから,前記法令の定めのとおり,そのために必要な人員は, ,以下検討する。 )ア前記前提事実のとおり,本件デイサービスセンターは,認知症専用併設型通所介護事業所(利用定員10名)として運営していたから,前記法令の定めのとおり,そのために必要な人員は,提供時間を通じて専従の生活相談員1名,提供時間を通じて専従の看護職員又は介護職員1名(生活相談員,看護職員又は介護職員のうち1名以上は常勤でなければならない,機能訓練指導員1名に加え,専従の看護職員又は介護職員1名で。)ある。そして,前記前提事実のとおり,Aは,本件デイサービスセンター,,の指定の申請に当たり配置する従業者を常勤かつ専従の生活相談員1名非常勤かつ専従の看護職員兼機能訓練指導員1名,常勤かつ専従の介護職員1名としていたから,そのとおりの従業者が本件デイサービスセンターに配置され,現に勤務していれば,認知症専用併設型通所介護事業所としての人員基準を満たすこととなる。 イこの点について,被告は,Aには,上記申請とおりの従業者が配置されていたと主張する。 そこで検討するに,証拠(乙18,19,26)及び弁論の全趣旨によれば,本件デイサービスセンターにおいて,平成12年4月以降,常勤の介護職員が配置され,現に勤務していたこと,平成12年8月以降,非常- 18 -勤の介護職員が配置され,毎週月曜日,水曜日及び金曜日に勤務していたことが認められるが,看護職員が配置され,勤務していたことを裏付けるタイムカードその他の客観的証拠は提出されていない。そして,前記前提事実,証拠(甲8~10)及び弁論の全趣旨によれば,Aは,本件病院から看護職員を週5日各6時間の派遣を受ける旨の本件派遣契約(平成12年4月19日付け)を締結したものの,それは一部虚偽の内容のもので,実際には看護職員週2日各2時間の派遣を受けることを合意したにすぎなかった を週5日各6時間の派遣を受ける旨の本件派遣契約(平成12年4月19日付け)を締結したものの,それは一部虚偽の内容のもので,実際には看護職員週2日各2時間の派遣を受けることを合意したにすぎなかったこと,そして,Aは,本件病院に対し,いったんは,看護職員週5日各6時間分の派遣料を払い込むものの,後日,本件病院から,看護職員の実勤務分の人件費を控除した残額について寄附金の形で払戻しを受けていたことが認められる。このように,Aは,本件病院から週2日(火曜日及び木曜日)各2時間だけ看護師の派遣を受けていたにとどまるから,本件デイサービスセンターは,開設当初の平成12年4月から上記非常勤介護職員が配置された同年8月までは,認知症専用併設型通所介護事業所としての人員基準を満たしていなかったものと推認できる。 ウところで,本件派遣契約(平成12年4月19日付け)が締結された当時の上記人員配置を前提とすると,本件デイサービスセンターは,看護師を週2日各2時間派遣されるだけでは認知症専用併設型通所介護事業所としての人員基準を満たすことができないが,仮に本件派遣契約の文言どおり,看護師を週5日各6時間派遣されるのであれば,上記常勤介護職員1名のほか,専従の看護職員1名が確保されることとなるから,上記人員基準を満たすこととなる。 そして,上記認定事実のとおり,Aは,実際は看護師を週2日各2時間派遣されるにすぎないにもかかわらず,看護師を週5日各6時間派遣されることを内容とする本件派遣契約を締結し,派遣料を不自然に還流させているが,このようにあえて真実と異なる内容の契約書を交わし,派遣料を- 19 -還流させるメリットは,上記のとおり,認知症専用併設型通所介護事業所としての人員基準の充足を偽装できるという点以外には考えられない。 そして,本件派遣契約が, の契約書を交わし,派遣料を- 19 -還流させるメリットは,上記のとおり,認知症専用併設型通所介護事業所としての人員基準の充足を偽装できるという点以外には考えられない。 そして,本件派遣契約が,本件デイサービスセンターの指定(平成12),年3月15日間もない同年4月19日にされていることにかんがみればAは,本件デイサービスセンターの開設当初から,人員基準の偽装を意図していたものと推認される。 もっとも,上記のとおり,平成12年8月以降は,上記常勤介護職員のほか,上記非常勤介護職員が毎週月曜日,水曜日及び金曜日に勤務していたから,本件派遣契約における真の合意どおり,看護師が毎週火曜日及び木曜日に各2時間派遣されていれば,認知症専用併設型通所介護事業所としての人員基準を満たすことになる。そして,本件において,上記看護師が毎週2日各2時間すら本件デイサービスセンターで勤務していなかったことを認めるに足りる証拠はない。したがって,Aは,平成12年8月以降も本件派遣契約に基づく上記派遣を継続し,派遣料の還流も続けていたものの,同月以降は,上記センターが認知症専用併設型通所介護事務所としての人員基準を満たさないことを認めるに足りない以上,Aにより人員基準の充足を偽装した請求がされたと認めることはできない。確かに,前記前提事実のとおり,Aは,本件デイサービスセンターの従業員の人員基準に満たない日について,介護給付費を減算せずに請求していたという大,。 ,阪府からの指摘を受けて介護報酬の金額の一部を返還しているしかしこれは,Aに看護職員の実勤務を証明する資料がなかったためと解する余地もあるから,これをもって,平成12年8月以降も人員基準を充足しない実態があったと認めるには足りない。しかも,仮に同月以降も人員基準を充足しない日があったとし 証明する資料がなかったためと解する余地もあるから,これをもって,平成12年8月以降も人員基準を充足しない実態があったと認めるには足りない。しかも,仮に同月以降も人員基準を充足しない日があったとしても,それは,週2日間2時間の看護師派遣という,本件病院との真の合意の不履行があったことを原因とするものであり,本件派遣契約についての前記偽装とは直接関係しないものというべ- 20 -きであるから,その請求が,本件派遣契約による前記偽装工作に基づくものとはいえず,偽りその他不正の行為による介護報酬請求とはいえない。 エしたがって,本件不適正請求①のうち平成12年4月から同年7月までの期間のものについては,Aが,本件派遣契約により,本件デイサービスセンターの人員基準充足を偽装し,これに基づいて介護報酬を請求したものであるから,偽りその他不正の行為による介護報酬の請求として,加算金(法22条3項)の対象となるというべきである。しかし,本件において,上記期間の本件不適正請求金額を特定するに足りる証拠はないから,結局,本件不適正金額①に関する原告らの請求は理由がない。 オまた,前記前提事実のとおり,Aは,本件デイサービスセンターの利用定員を当初は15名として申請していたにもかかわらず,介護給付費算定に係る体制については,利用定員を10名として届出をし,利用定員(10名)を超過しても,介護報酬の所定の減算をしなかった(本件不適正請求④。 ),(,,),,そして 証拠 甲26乙7 及び弁論の全趣旨によればAは平成12年度の在宅福祉事業施設調書には利用定員を10名と記載しながら,運営規程及び重要事項説明書(平成12年8月6日に使用したもの)には利用定員を15名と記載していたことが認められ,Aが,両者の定員を使い分けていた可能 業施設調書には利用定員を10名と記載しながら,運営規程及び重要事項説明書(平成12年8月6日に使用したもの)には利用定員を15名と記載していたことが認められ,Aが,両者の定員を使い分けていた可能性は否定できない。しかし,利用定員の超過は5年間で11日にすぎず(弁論の全趣旨,恒常的なものとはいえないことに)照らせば,Aが指定内容の変更届出書の提出を失念していたというAの弁明(乙3)を一概に排斥することはできず「偽りその他不正の行為」に,より,所定の減算をせずに介護報酬を請求したことを認めるに足りる証拠はない。 (2)原告らは,Aが,本件デイサービスセンターのサービス提供時間にを4時間以上6時間未満の単位数で算定すべきところ,6時間以上8時間未満の- 21 -単位数を算定して介護給付費を請求していたこと(本件不適正請求②,本)人の希望等により当初の通所介護計画より時間を大きく短縮したにもかかわらず,計画の変更等を行わずに介護給付費を請求していたこと(本件不適正請求③)が「偽りその他不正の行為」による介護報酬の請求として,加算,金の対象となると主張するので,以下検討する。 ア前記法令の定めのとおり,介護報酬の算定基準は,提供する指定居宅サービス及び提供される施設の種類並びに提供時間によって単位数が細かく区分されており,その中でも,提供時間は,所要時間4時間以上6時間未満の場合と所要時間6時間以上8時間未満の場合とに区分されているが,その所要時間数の算定方法については,現に要した時間ではなく,通所介護計画に位置づけられた内容の指定通所介護を行うのに要する標準的な時間で算定すると規定されているほかは,それ以上具体的な定めは置かれていない。 イ前記前提事実のとおり,本件デイサービスセンターは,午前10時00分から午後4時00分 介護を行うのに要する標準的な時間で算定すると規定されているほかは,それ以上具体的な定めは置かれていない。 イ前記前提事実のとおり,本件デイサービスセンターは,午前10時00分から午後4時00分をサービス提供時間としているから,その開始時刻から終了時刻までは丁度6時間であり,上記法令の定めの文理に従えば,所要時間6時間以上8時間未満として介護報酬を請求することにも,それなりの理由があるというべきである。乙第5号証によれば,大阪府は,上記所要時間数の算定方法について,サービスの提供は遅くとも午後4時00分には終了するという理由で,4時間以上6時間未満と算定すると解釈していることが認められるが,少なくとも上記法令の定めから文理上当然に導かれる解釈とはいい難いし,Aが乙第5号証の記載をあえて無視して上記介護報酬の請求をしたと認めるに足りる証拠もない。 また,当初の介護計画から時間を短縮した場合の取扱いについても,前記法令の定めのとおり,具体的にどの程度の変更があった場合に計画を組み直すべきかについて一義的かつ明確な基準が定められていたわけでもな- 22 -く,Aが,あえて大阪府の解釈ないし見解を無視して上記介護報酬の請求をしたと認めるに足りる証拠はない。 ウそうすると,Aが,午前10時00分から午後4時00分までのサービス提供について,4時間以上6時間未満ではなく,6時間以上8時間未満と区分して介護報酬を請求し(本件不適正請求②,当初の介護計画から)時間を大きく短縮した場合に当初計画どおりの時間を前提として介護報酬を請求したこと(本件不適正請求③)は,介護報酬の算定方法についての解釈の相違に起因するものと解する余地があり,少なくともAの「偽りその他不正な行為」によるものと認めるに足りず,加算金(法22条3項)の対象となるものではな 請求③)は,介護報酬の算定方法についての解釈の相違に起因するものと解する余地があり,少なくともAの「偽りその他不正な行為」によるものと認めるに足りず,加算金(法22条3項)の対象となるものではないというべきである。 ,,()(3)以上のとおり本件不適正請求①~④について加算金法22条3項の支払を請求することを求める前記各請求はいずれも理由がない。 Aが不正の手段により本件各指定を受けたか否かについて(143号)(1)まず,法22条3項の請求の可否について検討する。 原告は,Aが,Gに常勤の見通しがないにもかかわらず,Gを管理者として本件各センターの指定を申請して本件各指定を受けたことが,不正の手段により指定を受けたとき(法77条1項8号)に当たると同時に,その指定,「」を前提として受領した金員は偽りその他不正の行為により支払を受けた(法22条3項)ものに当たると主張する。 (2)そこで検討するに,前記法令の定めのとおり,指定通所介護事業者,指定訪問介護事業者,指定居宅介護支援事業者は,事業所ごとに,原則として専らその職務に従事する常勤(原則として週32時間以上)の管理者を置かなければならず(37号人員基準6条,94条,38号人員基準3条1項,3項,人員基準通達第2,2項(3) ,例外的に他の職務と兼ねることがで)きる場合として,同一敷地内にある又は道路を隔てて隣接する等,特に当該事業所の管理業務に支障がないと認められる範囲内に他の事業所,施設等が- 23 -ある場合に,当該他の事業所,施設等の管理者又は従業者としての職務に従事する場合で当該事業所の管理業務に支障がないときが挙げられている人,(員基準通達第8,1項(4),第3,1項(3) 。 )そして,前記前提事実,証拠(証人L)及び弁論の全趣旨によ ての職務に従事する場合で当該事業所の管理業務に支障がないときが挙げられている人,(員基準通達第8,1項(4),第3,1項(3) 。 )そして,前記前提事実,証拠(証人L)及び弁論の全趣旨によれば,Aが管理者として申請したGは,学校法人J学園の理事長であり,本件各センターから直線距離で約10㎞離れている本件幼稚園の事務長であったことが認められるから,少なくとも例外的に他の職務と兼ねることができる場合の上記要件を充足しない。したがって,Aが,本件各指定に係る申請に当たり,Gが本件幼稚園の事務長である旨を記載していれば,補正指示がされ,直ちに本件各指定がされることはなかったと推認できる。 そして,前記前提事実のとおり,本件各指定に係る申請当時のA理事HはGの妻であったから,AがGの経歴を知らなかったとは考えられない。 ,,そうするとAが本件各指定に係る申請に当たり作成した管理者経歴書にGが本件幼稚園の事務長であることを記載しなかったのは,これを記載すると上記基準に抵触して本件各指定がされなくなると考え,あえてその経歴を秘匿したものと推認できる。 (3)以上によれば,Aは,Gの経歴書に虚偽の記載をするという不正の手段により本件各指定を受けたと推認することができる。もっとも,Gが,本件各指定申請当時,本件幼稚園の事務長をしていたとしても,近い将来事務長の職を辞する予定であった場合や事務長の肩書きはあるものの実際の事務量は少なく,本件各センターの管理者として常勤できる見込みがあった場合などは,仮にGの経歴を偽らずに記載しても,これらの実情を説明することにより,本件各指定を受けることができたと考え得るから,このような場合には,不正の手段により本件各指定を受けたとはいえない。そこで,Gについて,このような事情があるか否かが問題となる。 被 することにより,本件各指定を受けることができたと考え得るから,このような場合には,不正の手段により本件各指定を受けたとはいえない。そこで,Gについて,このような事情があるか否かが問題となる。 被告は,この点について,Gの管理者としての勤務を裏付ける客観的資料- 24 -はなかったが,従業員など複数の関係者による聞き取り調査をしたところ,ポイントポイントでは本件各センターに勤務していたと認められ,緊急時にはGに連絡の取れる体制となっていたことから,管理者としての業務を少なからず果たしており,Aが大阪府を故意に欺こうとした事実は認められないと主張する。そして,証拠(乙28)によれば,大阪府は,Gが管理者として明らかに常勤勤務をしていなかったことを裏付けることができなかったために,不正と判断しなかったことが認められる。 ,(,,),,しかし 証拠 甲30 証人L及び弁論の全趣旨によればGは月数回程度の宿直をするほか,大きな行事があるときとか,入居者や職員の面接等があるときなどは本件各センターに来て,管理者としての業務を行っているものの,それ以外は,毎朝のミーティング(月曜日から金曜日の午前8時50分ころから55分ころまで)にも参加せず,本件各センターの職員もGが事務所内で勤務する姿を見ることは少なく,職員は,Gの代わりに,事務長であるMに相談して業務上の問題に対処し,利用者の事故などの緊急事態が起こったときには,Gの携帯電話やGが事務長を務める本件幼稚園に連絡して指示を仰いでいることが認められる。 このように,Gは,本件幼稚園の事務長の仕事を兼務しているため,本件各センターの管理者としての勤務状況は不良で,常勤とは評価し得ないものであったと認められる。もっとも,これによって本件センターの業務に大きな支障を来してた 稚園の事務長の仕事を兼務しているため,本件各センターの管理者としての勤務状況は不良で,常勤とは評価し得ないものであったと認められる。もっとも,これによって本件センターの業務に大きな支障を来してた事実は認められないが,前記各法令や通達が専従で常勤の管理者を置くことを要求し,その勤務すべき時間数や兼職可能な基準を詳細に定めている趣旨に照らせば,他の者が管理者の職責を一部果たすことによって,その業務に大きな支障が生じなかったとしても,これをもってGが常勤していたといえないことはもとより,それと同等の状態と評価することもできない。 もっとも,証拠(乙29)によれば,本件各センターの職員や利用者の中- 25 -には,大阪府の担当者に対し,Gが管理者として常勤している趣旨の供述をした者もいたことが認められる。しかし,同証拠によれば,Gの管理者としての勤務を裏付ける資料がなかったことも認められるが,仮にGが管理者として常時勤務をしていたとすれば,その勤務を裏付ける資料がないこと自体不自然であること,Gの管理者としての勤務状況に関する証人Lの前記供述は,具体的で,その内容及び供述態度に不自然な点はなく,高い証拠力が認められることを考慮すれば,大阪府の担当者に対する上記供述を信用することはできない。 そして,Aが,本件各指定申請時において,Gが現状の勤務状態とは異なり,本件各センターの管理者として常勤勤務する具体的な見込みがあったことを窺わせる証拠はないから,Aは,本件各指定申請の時点で,Gの管理者としての勤務が現状程度の不十分なものとなることを知りながら,Gの経歴書に虚偽の記載をしたというべきであり,Aが不正の手段によって本件各指定を受けたという前記推認を破る事情を認めることはできない。 そうすると,Aが,本件各指定を受たことを前提として受領した ,Gの経歴書に虚偽の記載をしたというべきであり,Aが不正の手段によって本件各指定を受けたという前記推認を破る事情を認めることはできない。 そうすると,Aが,本件各指定を受たことを前提として受領した金員は,「偽りその他不正の行為により支払を受けた(法22条3項)ものに当た」ると解されるから,被告はAに対し,その全額(ただし返還済みのものを除く)を請求することができる。 。 この点について,被告は,仮に,Gが管理者としての責務を果たすに不十分な状況にあったとしても,本件では,実際に法が求める具体的な介護サー,,ビスの提供がされていたのであるから当該サービス提供が無効となったり介護報酬が不当な利得になったりしないと主張する。しかし,法22条3項は,指定居宅サービス事業者等が偽り又は不正の手段によって介護報酬の支払を受けたときは,市町村は,当該業者に対し,その支払った額につき返還させることができるとしており,法が求める具体的な介護サービスが行われたか否かによって上記返還の可否を分けていないから,被告の上記主張は採- 26 -用できない。 (4)以上のとおり,Aは,Gが本件幼稚園の事務長を兼ねているために管理者要件を充足していないことを知りながら,あえてその経歴を秘匿して本件各指定を受け,その結果,堺市から介護報酬の支払を受けたのであるから,偽りその他不正の行為により介護報酬の支払を受けたものとして,法22条3項に基づき,堺市に対し,当該報酬相当額の返還義務を負うというべきである。 (5)甲第5,第19号証及び弁論の全趣旨によれば,Aが本件デイサービスセンターのために堺市から法に基づいて平成12年度から平成16年度まで支払を受けた介護報酬のうち返還額を控除した残額は,6254万2625円であり,Aが本件ヘルパーステーションのために デイサービスセンターのために堺市から法に基づいて平成12年度から平成16年度まで支払を受けた介護報酬のうち返還額を控除した残額は,6254万2625円であり,Aが本件ヘルパーステーションのために堺市を含む保険者から法に基づいて平成12年度から平成15年度まで支払を受けた介護報酬は,4020万7383円(平成12年度につき649万4806円,平成13年度につき939万4688円,平成14年度につき1115万7629円,平成15年度につき1316万0260円,Aが本件ケアプランセンター)のために堺市を含む保険者から法に基づいて平成15年度に支払を受けた介護報酬は165万3146円と認められる。 弁論の全趣旨によれば,Aは,平成16年度も,平成15年度までと同様に本件ヘルパーステーション及び本件ケアプランセンターを経営していたと推認できるから,Aが,平成12年度から平成16年度まで,本件ヘルパーステーション及び本件ケアプランセンターのために堺市を含む保険者から法に基づいて支払を受けた介護報酬は,5191万2374円(4020万7383円の4分の5倍と165万3146円の合計額)と推認できる。そして,甲第16号証及び弁論の全趣旨によれば,Aが平成12年度から平成16年度まで本件ヘルパーステーションのために支払を受けた介護報酬のうち,被保険者を堺市とするものの割合は,85.66パーセント(542万- 27 -3188円÷633万0982円)と推認できる。そうすると,Aが,平成12年度から平成16年度までに堺市から支払を受けた介護報酬のうち,前記返還額を控除した残額は,3904万4951円(5191万2374円×0.8566-542万3188円)と推認できる。 (6)したがって,原告(143号)の請求は,被告に対し,Aに1億0158万7 返還額を控除した残額は,3904万4951円(5191万2374円×0.8566-542万3188円)と推認できる。 (6)したがって,原告(143号)の請求は,被告に対し,Aに1億0158万7576円(6254万2625円+3904万4951円)を堺市に支払うよう請求することを求める限度で理由がある。 結論 以上のとおり,原告ら(79号)の請求は理由がなく,原告(143号)の請求は,被告に対し,既に支払った介護報酬額相当額1億0158万7576円を堺市に支払うよう請求することを求める限度で理由があるが,その余の請求は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官廣谷章雄裁判官森鍵一裁判官森永亜湖

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