平成21(ワ)729 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年9月9日 秋田地方裁判所 その他
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判決文本文6,317 文字)

- 1 - 主文 1 被告は,原告Aに対し,4483万7262円及びうち2417万8602円に対する平成21年5月22日から,うち2065万8660円に対する同年6月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,4126万5802円及びうち2239万4568円に対する平成21年5月22日から,うち1887万1234円に対する同年6月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,550万1483円及びこれに対する平成19年10月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,原告A及び原告Bに生じた費用の100分の83と被告に生じた費用の100分の71を被告の,原告A及び原告Bに生じたその余の費用と被告に生じた費用の100分の15を原告A及び原告Bの,原告Cに生じた費用の100分の34と被告に生じた費用の100分の5を被告の,原告 - 2 -Cに生じたその余の費用と被告に生じたその余の費用を原告Cの,それぞれ負担とする。 6 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,5547万4589円及びうち2949万3236円に対する平成21年5月22日から,うち2598万1353円に対する同年6月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,4808万3441円及びうち2580万1170円に対する平成21年5月22日から,うち2228万2271円に対する同年6月6日から各支払済 分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,4808万3441円及びうち2580万1170円に対する平成21年5月22日から,うち2228万2271円に対する同年6月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,1608万7153円及びこれに対する平成19年10月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,交通事故で死亡した事故当時21歳と19歳の姉妹の両親及び同事故で負傷した被害者が,不法行為に基づき,加害者に対して損害賠償を求める事案である。 2 争いのない事実等(証拠等を掲げたもののほかは当事者間に争いがない。)(1) 次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。 ア日時平成19年10月6日午後9時15分ころイ場所秋田県潟上市ab番地c先道路(以下「本件事故現場」 という。)ウ加害者被告(同人所有の普通乗用自動車〔被告車両〕を運転)エ被害者 D(当時21歳の女性。以下「亡D」という。)E(当時19歳の女性。以下「亡E」という。) - 3 -原告C(当時20歳の男性。)(2) 本件事故の具体的な態様被告が被告車両を走行させていた道路は,中央線あり,片側各1車線,時速60km の法定速度制限あり,追越しのための右側部分はみ出し通行禁止場所と指定されている一般国道であった。 被告は,平成19年10月6日午後9時15分ころ,被告車両を運転して本件事故現場を五城目町方面から飯島方面に向かって進行中,前方を同方向へ進行中の普通自動二輪車を右側から追い越そうとして,時速76~89㎞で道路右側部分に 6日午後9時15分ころ,被告車両を運転して本件事故現場を五城目町方面から飯島方面に向かって進行中,前方を同方向へ進行中の普通自動二輪車を右側から追い越そうとして,時速76~89㎞で道路右側部分に進出して追越しを開始し,折から対向進行してきた原告C運転の車両(以下「原告C車両」という。)左前部に自車左前部を衝突させた。 (以上甲1,甲5~甲15,甲19,甲48,甲51,乙2【枝番を含む】)(3) 本件事故の結果被告は,本件事故により,原告C車両に同乗していた亡D及び亡Eを いずれも脳挫傷の傷害により死亡させた。また,原告Cに加療約2か月間を要する腸間膜損傷による腹腔内出血,右橈骨骨折及び左肺挫傷の傷害を負わせた。 (4) 原告らア原告A及び原告Bは,亡D及び亡Eの父母である。 イ亡Dは,昭和61年4月26日生まれであり,平成17年3月に高 校を卒業し,平成17年9月から原告Aが代表取締役を務め,医薬品の販売等を目的とする有限会社Z(以下「Z」という。)に正社員として勤務していた。(甲20)ウ亡Eは,昭和63年8月28日生まれであり,平成18年9月から Zにアルバイトとして勤務していた。(甲25)エ原告Cは,昭和61年12月19日生まれであり,平成17年3月に - 4 -高校を卒業し,同年4月から,電気工事を主たる目的とする株式会社Y(以下「Y」という。)に正社員として勤務していた。(甲40)オ亡Dと原告Cは,本件事故当時交際中であり,結婚を前提とした交際 をしていた。(甲45~甲47)(5) 被告は,本件事故につき,平成20年9月30日,自動車運転過失致死 傷罪で起訴され,平成21年5月27日,禁錮3 ,結婚を前提とした交際 をしていた。(甲45~甲47)(5) 被告は,本件事故につき,平成20年9月30日,自動車運転過失致死 傷罪で起訴され,平成21年5月27日,禁錮3年の実刑に処せられた。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件では,被告が不法行為責任を負うこと自体は争いがなく,専ら損害論が問題である。損害論に関する原告らの主張は,別紙1の損害額一覧の請求額欄及び原告の主張骨子欄記載のとおりであり,これに対する被告の認否・反論は,同一覧の被告の認否・反論の骨子欄記載のとおりである。 これによれば,本件の争点は,損害論の中でも,亡D・亡Eの死亡慰謝料(争点(1)),原告A及び原告Bの遺族固有の慰謝料(争点(2)),逸失利益に関して亡D・亡E・原告Cの基礎収入(争点(3)),葬儀関係費用(争点(4)),原告A及び原告Bの弁護士費用(争点(5)),原告Cの後遺障害の有無・程度(争点(6)),原告Cの慰謝料(争点(7))ということになる。 第3 当裁判所の判断 1 争点(3)~争点(6)に関する当裁判所の判断は,別紙1の損害額一覧の認定額欄及び補足説明欄記載のとおりである。 2 争点(1)(亡D・亡Eの死亡慰謝料)及び争点(2)(原告A及び原告Bの遺族固有の慰謝料)について以下に掲げた事情・検討を総合すると,亡D及び亡E本人についてそれぞれ死亡慰謝料2200万円,亡Dの死亡に関する遺族固有の慰謝料として,原告A及び原告Bにそれぞれ300万円,亡Eの死亡に関する遺族固有の慰謝料として,原告A及び原告Bにそれぞれ300万円の慰謝料を認めることが相当である(因みに,いわゆる赤い本(平成19年)上の基準では,死亡慰謝料・近 - 5 -親者慰謝料を合わせて2000万円~2200万 300万円の慰謝料を認めることが相当である(因みに,いわゆる赤い本(平成19年)上の基準では,死亡慰謝料・近 - 5 -親者慰謝料を合わせて2000万円~2200万円とされている。)。 (1) 被告及びその運転態様被告の運転態様は右側部分はみ出し通行禁止場所と指定されている場所において道路右側部分に進出して高速度で追越しをするという極めて危険なものであること,しかも減速するのに十分な間隔があったのに,左折進入直後で速度が上がらなかった普通自動二輪車を追い越そうとしてのもの(甲6,甲8,甲11~甲13,甲51,乙2)であり何ら必要性のないものであったこと,被告が本件事故の直前にも追越しのための右側部分はみ出し通行禁止場所において高速度で追越しをしていたこと(甲23),本件事故現場である道路は,被告が通勤のために使用していた道路であり,追越しのための右側部分はみ出し通行禁止場所であることを被告が熟知していたこと(甲24,甲48),被告が日頃からしばしば追越しのための右側部分はみ出し通行禁止場所において追越しをしていたこと(甲24及び被告本人並びに本件事故時及び上記のとおり本件事故の直前にも追越しをしていたことからして認められる。)。 (2) 被害者側の事情ア被告によって,亡Dは21歳,亡Eは19歳といずれも若くして突然 人生を絶たれたものであり,亡D・亡Eの無念は筆舌に尽くし難い。 原告A及び原告Bは,大切に育て,慈しんでいた2人しかいない我が 子を一度に失ったのであり,その精神的苦痛は察するに余り有り,被告に対する被害感情が峻烈であるのも当然である。 イ原告C車両は,はみ出し通行禁止場所と指定されている場所において 被告車両がいきなり対向車線に進路変更してくると 痛は察するに余り有り,被告に対する被害感情が峻烈であるのも当然である。 イ原告C車両は,はみ出し通行禁止場所と指定されている場所において 被告車両がいきなり対向車線に進路変更してくるという全く回避不能の状態で衝突させられており,原告C車両には何ら落ち度がない。 (3) 本件事故後の被告の態度確かに,証拠(甲46,甲47,乙4,原告A本人,被告本人)及び弁 - 6 -論の全趣旨によれば,原告A及び原告Bが指摘するように,①被告が原告A及び原告Bの下に謝罪に訪れたのが本件事故から9か月弱を経過した後であったこと,②被告が刑事裁判の第1回公判の際,亡D及び亡Eの遺影に頭を下げなかったこと,③被告が刑事裁判の第2回,第3回の公判の際,モニターに映し出される証拠を正視するという姿勢に乏しかったこと(証拠(乙4,被告本人)や弁論の全趣旨によれば,2人の尊い命を奪ったという余りの責任の重さから,被告がこれを十分に受けとめられずにいることがうかがわれ,それがこのような態度となって顕れたことがうかがわれる。),④被告が刑事裁判の判決後,原告A及び原告Bの下に謝罪に訪れていないことが認められる。 しかしながら,証拠(甲46,乙3,乙4,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告も本件事故により手術を要する左大腿骨骨折の重傷を負い事故直後から2か月強入院していたこと,原告A及び原告Bの下に謝罪のため訪問した平成20年6月20日(同月27日にも再度謝罪のため訪問している。)の前から,被告が何度か原告A及び原告Bに謝罪のための面会を電話で申し込んでいたものの拒絶されていた経緯があること,同年7月ころ,検察庁を通じて,原告A及び原告Bから被告に対して直接の謝罪訪問を断る旨の連絡があったこと,被告とその妻 Bに謝罪のための面会を電話で申し込んでいたものの拒絶されていた経緯があること,同年7月ころ,検察庁を通じて,原告A及び原告Bから被告に対して直接の謝罪訪問を断る旨の連絡があったこと,被告とその妻は,現在に至るまで,本件事故現場に頻繁に赴き,献花したり,お茶を供えて手を合わせるなどしていること,被告が刑事裁判の第2回公判以降は亡D及び亡Eの遺影に頭を下げていたことも認められることに照らせば,本件事故後の被告の態度をもって,前記認定額以上に慰謝料を増額すべきとまではいえない。 3 争点(7)(原告Cの慰謝料)について(1) 入通院慰謝料証拠(甲16,甲21,甲39)及び弁論の全趣旨によれば,原告Cは, 本件事故によって負った傷害の治療のため,入院22日,通院期間343 - 7 -日を要したこと,傷害箇所が数カ所に及ぶこと,腸間膜損傷による腹腔内出血について腸を切る手術を受けたこと,退院後右手に入れた金具を取る手術を受けたこと,事故直後から翌日昼まで意識がない状態であったことが認められ,これらを総合すると,入通院慰謝料として219万6000円を認めるのが相当と思料する(原告Cの主張額(183万円。これは,いわゆる赤い本(平成19年)上の基準に当てはめた場合の金額でもある。 因みに,上記認定額はその2割増である。)を超えるが,慰謝料額についてはそもそも裁判所が判断すべき事項であり,当事者は主張立証責任を負わないし,費目間の金額の流用も可能であるから問題はない。)。 (2) 後遺障害慰謝料ア別紙1の損害額一覧で認定したとおり,原告Cについては,いわゆる 後遺障害別等級14級に相当する後遺障害があると認定するのが相当であり,これに前記2(1)に掲げた被告及びその運転態様に ア別紙1の損害額一覧で認定したとおり,原告Cについては,いわゆる 後遺障害別等級14級に相当する後遺障害があると認定するのが相当であり,これに前記2(1)に掲げた被告及びその運転態様に関する事情,前記のとおり原告C車両には何ら落ち度がないこと,原告Cが自らの運転する車両において本件事故に遭い,恋人である亡Dを失っていることなどを総合的に勘案して,後遺障害慰謝料として140万円を認めるのが相当と思料する(因みに,いわゆる赤い本(平成19年)上の基準では,14級の後遺障害慰謝料は110万円とされている。)。 イ原告Cは,本件事故後の被告の態度が極めて不誠実であるとして,こ れを慰謝料増額事由に掲げている。原告Cが指摘するように,被告の謝罪行為・活動が十分とは到底いえないものの,証拠(乙3,乙4,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告C・被告の入院中,被告の妻が原告Cの下を訪れ,謝罪していること,被告自身も退院後原告Cの自宅に1度電話し,原告Cの親に謝罪した上で,謝罪のための面談を求めたこと,原告Cがこれを拒絶したことが認められるのであって,本件事故後の被告の態度をもって,前記認定額以上に慰謝料を増額すべきとまで - 8 -はいえない。 なお,原告Cは,被告から原告Cの父親に病院に来るなという言動が あったと主張するが,どのような経緯・趣旨・表現でやり取りがされたのか詳細が不明であるから,上記主張を採用して前記認定額以上に慰謝料を増額することはできない。 4 以上に従い,既払金を控除した後の損害額を算出すると,別紙1の損害額一覧の「認定額」欄記載のとおりとなり,原告A及び原告Bの請求は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,原告Aについて4483万 い,既払金を控除した後の損害額を算出すると,別紙1の損害額一覧の「認定額」欄記載のとおりとなり,原告A及び原告Bの請求は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,原告Aについて4483万7262円,原告Bについて4126万5802円,及び主文第1項,第2項掲記の各内金について不法行為の後の日である同掲記の各日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し,その余は理由がないのでこれを棄却することとする。 また,原告Cの請求は,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,550万1483円及びこれに対する不法行為の日の翌日である平成19年10月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し,その余は理由がないのでこれを棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 秋田地方裁判所民事第一部 裁判官佐藤久貴

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