平成29(ワ)13797 特許権侵害差止請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年7月31日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-89125.txt

キーワード

判決文本文40,345 文字)

令和元年7月31日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成29年(ワ)第13797号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日令和元年6月21日判決原告株式会社光未来同訴訟代理人弁護士溝田宗司同補佐人弁理士田中泰彦同訴訟復代理人弁護士栁澤俊貴 関善輝被告株式会社豊大被告大丸エナウィン株式会社上記両名訴訟代理人弁護士角野佑子 村上創上記両名補佐人弁理士鈴木由充 新田研太 鶴寛主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告株式会社豊大(以下「被告豊大」という。)は,別紙被告製品目録記載1の製品(以下「被告製品1」という。)及び同記載2の製品(以下「被告製品2」といい,被告製品1と併せて「被告各製品」という。)を輸入し,販売し若しくは貸し渡し又は販売若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 2 被告大丸エナウィン株式会社(以下「被告大丸エナウィン」という。)は, 被告製品2を輸入し,販売し若しくは貸し渡し又は販売若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 3 被告らは,第1項及び第2項記載の各製品及びその半製品を廃棄せよ。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 5 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,その発明の名称を「気体溶解装置及び気体溶解方法」とする特許第6116658号(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が,被告製品1は,本件特許の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属し,被告製品2は,本件発明 という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が,被告製品1は,本件特許の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属し,被告製品2は,本件発明の技術的範囲に属する物の生産のみに用いられるため,被告豊大が,業として被告製品1を販売等し,被告らが,業として被告製品2を販売等する行為は,いずれも本件特許権を侵害するとして,特許法100条1項に基づき,被告豊大に対し,被告各製品の販売等の差止め及び廃棄等を求めるとともに,被告大丸エナウィンに対し,被告製品2の販売等の差止め及び廃棄等を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中に掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)(1) 当事者ア原告は,水素水サーバーの製造及び販売等を業とする会社である。 イ被告豊大は健康食品の製造,小売業等を目的とする会社であり,被告大丸エナウィンは医療用機械器具の販売等を目的とする会社である。 (2) 原告の特許権原告は,以下の本件特許権を有している登録番号:第6116658号 発明の名称:「気体溶解装置及び気体溶解方法」出願日:平成27年12月25日(特願2015-529952の分割)原出願日:平成27年5月26日優先日:平成26年5月27日優先権主張国:日本登録日:平成29年3月31日(3) 特許請求の範囲の記載本件特許に係る特許請求の範囲における請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,本件特許出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明及び図面(甲1の2)を「本件明細書等」という。)。ただし,下線部は,平成29年1月24日受付に係る手続補正 の記載は,以下のとおりである(以下,本件特許出願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明及び図面(甲1の2)を「本件明細書等」という。)。ただし,下線部は,平成29年1月24日受付に係る手続補正書(乙26)により補正された構成である。 「水に水素を溶解させて水素水を生成する気体溶解装置であって,水槽と,固体高分子膜(PEM)を挟んだ電気分解により水素を発生させる水素発生手段と,前記水素発生手段からの水素を水素バブルとして前記水槽からの水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段と,前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽と,前記溶存槽に貯留された水素水を前記水槽中に導く降圧移送手段としての管状路と,を含み,前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段,前記溶存槽,前記管状路,前記水槽へと送水して循環させ前記水素バブルをナノバブルとするとともに,前記加圧型気体溶解手段から前記溶存槽へと送水される水の一部を前記水素発生手段に導き電気分解に供することを特徴とする気体溶解装置。」(4) 構成要件の分説本件発明の構成要件は,以下のとおり分説することができる。 1A 水に水素を溶解させて水素水を生成する気体溶解装置であって,1B 水槽と, 1C 固体高分子膜(PEM)を挟んだ電気分解により水素を発生させる水素発生手段と,1D 前記水素発生手段からの水素を水素バブルとして前記水槽からの水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段と,1E 前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽と,1F 前記溶存槽に貯留された水素水を前記水槽中に導く降圧移送手段としての管状路と,を含み,1G 前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段,前記溶存槽,前記管状路,前記水槽へと送水して循環させ前記水素バブルをナノバブルとするとと 水を前記水槽中に導く降圧移送手段としての管状路と,を含み,1G 前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段,前記溶存槽,前記管状路,前記水槽へと送水して循環させ前記水素バブルをナノバブルとするとともに,1H 前記加圧型気体溶解手段から前記溶存槽へと送水される水の一部を前記水素発生手段に導き電気分解に供すること1I を特徴とする気体溶解装置。 (5) 無効審判手続の経過株式会社ハイジェンテックソリューションは,平成29年8月21日付けで,本件特許の請求項1~4に係る各発明につき特許無効審判請求をし(無効2017-800116),特許庁は,平成30年5月21日,同各発明はサポート要件に違反し,また,当業者が乙4~7等に基づき容易に想到し得たものであって進歩性を欠くとして,同各発明に係る特許を無効とする旨の審決の予告をした。(甲16)(6) 本件発明の訂正原告は,平成30年7月19日付けで,本件特許の特許請求の範囲について訂正(以下「本件訂正」という。)を求める訂正請求(甲17の1)をした。 本件訂正は,請求項1の構成要件1Fを以下のとおり訂正するものである(以下,本件訂正後の同項に係る発明を「本件訂正発明」という。なお,下 線部は訂正された部分である。)。 1F′ 前記溶存槽に貯留された水素水を前記水槽中に導く,1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し,0.8m以下の長さのものを除く)からなる降圧移送手段としての管状路と,を含み,(7) 特許庁の審決特許庁は,平成31年1月21日付けで,本件訂正の請求を認めた上で,本件訂正後の請求項1~4に係る各発明はサポート要件に違反するので,これらの発明に係る特許は無効とすべきものである旨の審決をした。(乙50)これに対し,原告は,同年2月28日 の請求を認めた上で,本件訂正後の請求項1~4に係る各発明はサポート要件に違反するので,これらの発明に係る特許は無効とすべきものである旨の審決をした。(乙50)これに対し,原告は,同年2月28日,知的財産高等裁判所に対し,同審決の取消しを求める訴訟(同庁平成31年(行ケ)第10025号)を提起した。(甲31の1,2)(8) 被告らの行為被告豊大は,被告各製品を輸入,販売し,被告大丸エナウィンは,被告製品2を販売している。 (9) 被告各製品の構成原告の主張する被告各製品の構成は,以下のとおりである。 ア被告製品11a 水素を水に溶解させて生成した水素水は,冷水タンクへと吐出される。 1b 水素発生器は,「分離型電気分解方式(PEM方式)」により,水ないし水素水を電気分解して水素を得る機能を有する。 1c ポンプは,水素発生器から発生した水素を水に与えて加圧し,送水する機能を有する。 1d カーボンフィルタ(溶存タンク)は,ポンプで生成した水素水を導いて貯留する。 1e 細管は,カーボンフィルタ(溶存タンク)と冷水タンクの間に位置 しており,これらを接続している。 1f カーボンフィルタ(溶存タンク)に貯留された飽和状態で水素を含む水素水をポンプに送出して加圧し,カーボンフィルタ(溶存タンク)→細管→冷水タンク→ポンプ→カーボンフィルタ(溶存タンク)→細管→冷水タンク→ポンプと繰り返し循環させることにより,時間とともに,水素水中の水素バブルの平均径を徐々に小さくしてナノバブルとすることを特徴とする。 1g 水素水の一部を水素発生器(電解槽)に導き,電気分解に供することを特徴とする。 イ被告製品22a 被告製品2をウォーターサーバーと組み合わせたものでは,水素を水に溶解させて生成した水素水は,ウォ 水の一部を水素発生器(電解槽)に導き,電気分解に供することを特徴とする。 イ被告製品22a 被告製品2をウォーターサーバーと組み合わせたものでは,水素を水に溶解させて生成した水素水は,ウォーターサーバーへと吐出される。 2b 被告製品2をウォーターサーバーと組み合わせたものの水素発生器は,「分離型電気分解方式(PEM方式)」により,水ないし水素水を電気分解して水素を得る機能を有する。 2c 被告製品2をウォーターサーバーと組み合わせたもののポンプは,水素発生器から発生した水素を水に与えて加圧し,送水する機能を有する。 2d 被告製品2をウォーターサーバーと組み合わせたもののカーボンフィルタ(溶存タンク)では,ポンプで生成した水素水を導いて貯留する。 2e 被告製品2をウォーターサーバーと組み合わせたものの細管は,カーボンフィルタ(溶存タンク)とウォーターサーバーの水槽の間に位置している。 2f 被告製品2をウォーターサーバーと組み合わせたものは,カーボンフィルタ(溶存タンク)に貯留された飽和状態で水素を含む水素水をポンプに送出して加圧し,カーボンフィルタ(溶存タンク)→細管→ウォ ーターサーバーの水槽→ポンプ→カーボンフィルタ(溶存タンク)→細管→ウォーターサーバーの水槽→ポンプと繰り返し循環させることにより,時間とともに,水素水中の水素バブルの平均径を徐々に小さくしてナノバブルとすることを特徴とする。 2g 被告製品2をウォーターサーバーと組み合わせたものは,水素水の一部を水素発生器(電解槽)に導き,電気分解に供することを特徴とする。 (10) 先行文献本件特許の優先日前に,以下の文献が存在した。 ア発明の名称を「水素水供給装置」とする公開特許公報(特開2012-236133号。乙4。以下「乙4公報」と を特徴とする。 (10) 先行文献本件特許の優先日前に,以下の文献が存在した。 ア発明の名称を「水素水供給装置」とする公開特許公報(特開2012-236133号。乙4。以下「乙4公報」という。)イ発明の名称を「酸素浄水装置の溶存効率増大装置」とする韓国登録特許第10-0815092号(乙18)の登録特許公報(以下「乙18公報」という。) 3 争点(1) 本件発明についてア構成要件充足性(ア) 構成要件1E~1Hの充足性(争点1-1)(イ) 構成要件1F及び1Gの充足性(争点1-2)イ無効理由の存否(ア) 分割要件違反を前提とする進歩性の欠如(争点2-1)(イ) 乙4を主引例とする進歩性の欠如(争点2-2)(ウ) 乙18を主引例とする進歩性の欠如(争点2-3)(エ) 公然実施発明に基づく進歩性の欠如(争点2-4)(オ) サポート要件違反の有無(争点2-5)(2) 本件訂正発明について(無効理由の存否) アサポート要件違反の有無(争点3-1)イ乙4を主引例とする進歩性の欠如(争点3-2)ウ乙18を主引例とする進歩性の欠如(争点3-3)第3 当事者の主張 1 本件発明についての構成要件の充足性(1) 構成要件1E~1Hの充足性(争点1-1)〔原告の主張〕構成要件1Eは「前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽と,」というものであり,構成要件1F~1Hは「前記溶存槽」との構成を含むものであるところ,被告製品1のカーボンフィルタはポンプで生成した水素水を導いて貯留しているので,構成要件1Eの「前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽」に当たる。 また,被告は,被告製品2について,乙1等に基づき,そのカーボンフィルタは「前記加圧型気体 いて貯留しているので,構成要件1Eの「前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽」に当たる。 また,被告は,被告製品2について,乙1等に基づき,そのカーボンフィルタは「前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽」には該当しないと主張するが,乙1の画像を見ると,カーボンフィルタの内径がホースの内径よりも大きいことが看取できるので,乙1のカーボンフィルタには下端のホースにより導かれた水素水が溜まり,その後にカーボンフィルタの上端のホースから水素水が送り出されることは明らかである。また,乙24の画像においても,カーボンフィルタの内部において上端から下端に向けて水又は水素水が貯留され,最終的に下端から放出されることにより,その流れが定常状態に至ることが確認できる。 したがって,被告各製品は,構成要件1Eにいう「前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽」に該当し,併せて,構成要件1F~1Hの「前記溶存槽」との構成も備えていることになる。 〔被告らの主張〕被告各製品のカーボンフィルタは,ポンプで生成した水素水を貯留する機 能も有しないから構成要件1Eの「前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽」に当たらない。被告各製品のカーボンフィルタは,不純物を除去するものであり,水素水が,カーボンフィルタを一気に通水することに意味があるから,これに溶存,貯留されることはない。 乙1及び24は,被告製品2における水素水の循環,カーボンフィルタの役割を明らかにするため,カーボンフィルタの部分を透明にして撮影したものであるが,同画像を見ると,カーボンフィルタには貯留機能がないことは明らかである。被告製品1のカーボンフィルタは,被告製品2とは通水経路が異なるのみであり,貯留する機能を有しないことに変わ したものであるが,同画像を見ると,カーボンフィルタには貯留機能がないことは明らかである。被告製品1のカーボンフィルタは,被告製品2とは通水経路が異なるのみであり,貯留する機能を有しないことに変わりはない。 したがって,被告各製品は,構成要件1Eにいう「前記加圧型気体溶解手段から水素水を導いて貯留する溶存槽」及び構成要件1F~1Hの「前記溶存槽」との構成を備えていないので,同各構成要件を充足しない。 (2) 構成要件1F及び1Gの充足性(争点1-2)〔原告の主張〕被告各製品のカーボンフィルタ(溶存槽)に貯留された水素水は,これに接続された細管を通り,ゆっくりと大気圧まで減圧されながら冷水タンク(水槽)に導かれるので,同各製品の細管は,構成要件1Fの「前記溶存槽に貯留された水素水を前記水槽中に導く降圧移送手段としての管状路」及び構成要件1Gの「前記管状路」に相当する。 被告らは,構成要件1Fの「管状路」は層流を形成させるものであると主張するが,本件発明の「管状路」は,管状路という物の形状等を規定するにすぎず,被告らが主張するような作用的な限定や手順等を規定するものではないので,被告らの主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものである。 仮に,被告らの主張によるとしても,本件明細書等には,細管の内径をXmmとし,加圧型気体溶解手段により加えられる圧力をYMPaとしたとき,本件発明はX/Yの値(以下「XY比」という。)が1.00~12.00 であることを特徴とするものであり,かかる条件下では細管中を層流状態で液体が流れて降圧移送されると記載されている(段落【0031】)。被告製品1のXY比は約7.46,被告製品2のXY比は約5.97であるので,被告各製品の細管内には層流が形成されていることになるので,被告らの主張を前提とし ると記載されている(段落【0031】)。被告製品1のXY比は約7.46,被告製品2のXY比は約5.97であるので,被告各製品の細管内には層流が形成されていることになるので,被告らの主張を前提としても,被告各製品は構成要件1F及び1Gを充足する。 〔被告らの主張〕構成要件1Fの「降圧移送手段としての管状路」は,本件明細書等の記載(段落【0017】,【0023】,【0030】,【0031】,【0034】)を参酌すると,管状路内の圧力変動を防止し「層流」を形成するものをいうと解されるのに対し,被告各製品の細管において水素水は「乱流」となり,乱流となることにより細管を流れる水素水中の水素バブルを微細化してナノバブルとする機能を担っている(乙31,32)。 また,原告は,本件特許の出願過程において,「管状路」を「降圧移送手段としての管状路」と補正しているが,その際も「降圧移送手段」は「層流を形成させる」ものであると説明している(乙27)。 したがって,被告各製品の細管は,構成要件1Fにいう「降圧移送手段としての管状路」及び構成要件1Gの「前記管状路」には該当しない。 2 本件特許についての無効理由の存否(1) 分割要件違反を前提とする進歩性の欠如(争点2-1)〔被告らの主張〕ア本件発明に係る気体溶解装置は,特許請求の範囲の記載及びその目的(本件明細書等の段落【0003】等)に照らすと,ウォーターサーバー等の他装置の水槽に接続して水素水を生成する「外部接続型」に加え,他装置の水槽に接続することなく水素水を生成する「水槽一体型」の両方を含むものである。 しかるに,本件発明の原出願(特願2015-529952号。以下 「本件原出願」という。)の当初明細書及び図面(乙10の3)並びに原出願の分割当時の明細書及び図面(平成27 含むものである。 しかるに,本件発明の原出願(特願2015-529952号。以下 「本件原出願」という。)の当初明細書及び図面(乙10の3)並びに原出願の分割当時の明細書及び図面(平成27年10月20日付け手続補正書(乙10の14)による補正後のもの。なお,同手続補正により原出願の当初明細書及び図面は変更されておらず,以下,併せて「本件原明細書等」という。)には,「水槽一体型」の気体溶解装置は記載されておらず,かかる構成が本件原明細書等の記載に照らして自明であるということもできない。 これに対して,原告は,本件原明細書等の段落【0022】,【0025】,【0043】,【図3】等に基づき,本件原明細書等には「水槽一体型」の気体溶解装置が記載されていると主張するが,同明細書には気体溶解装置自体が水槽を有するとは記載されておらず,同装置と別の装置の水槽を接続することにより水素水を導くことが記載されているにすぎないので,同明細書に「水槽一体型」の気体溶解装置が記載されているということはできない。 イそうすると,本件発明にかかる分割出願は不適法であり,その出願日は,分割出願が行われた実際の出願日である平成27年12月25日となるところ,本件原出願の基礎となる国際出願(PCT/JP2015/065103)の国際公開公報(平成27年12月3日公開。乙2)には,本件発明のうち外部接続型の気体溶解装置が開示されているので,本件発明と乙2に記載された発明の相違点は構成要件1Bの「水槽」の有無のみである。 平成24年5月10日に公開された公開特許公報(乙3)には,水素溶解水製造装置が飲料容器12を含むことが記載されており,この飲料容器12は水槽に相当するので,乙3には水槽一体型の気体溶解装置が開示されているということができる。 乙2及 公報(乙3)には,水素溶解水製造装置が飲料容器12を含むことが記載されており,この飲料容器12は水槽に相当するので,乙3には水槽一体型の気体溶解装置が開示されているということができる。 乙2及び乙3に記載された発明は,関連する技術分野に属し,課題,作 用等が共通するので,乙2記載の発明に乙3記載の発明を適用する動機付けは存在し,当業者であれば,両発明を組み合わせることにより本件発明とすることを容易に想到することができたものである。 したがって,本件特許は,進歩性を欠くものとして,無効とされるべきものである。 〔原告の主張〕本件原明細書等の段落【0022】及び【0025】には,「前記溶存槽に加圧貯留された水素水を水槽中に導き,前記水槽中の水を前記加圧型気体溶解手段に送出することを特徴としてもよい」などの記載があり,また,同明細書の【図3】等にはウォーターサーバー100に気体溶解装置が接続されていることが図示され,同図面について説明した段落【0043】には,ウォーターサーバー100中の水を用いて水素ガスを発生させること及び同サーバー中に過飽和水素水を保存・循環することができると記載されている。 このように,本件原明細書等には,「水槽一体型」の気体溶解装置が開示され,又は同明細書記載から自明のこととして「水槽一体型」の構成を導き出すことができる。 したがって,本件特許出願は分割要件に違反するものではなく,これを前提とする被告らの主張は前提を欠くものである。 (2) 乙4を主引例とする進歩性の欠如(争点2-2)〔被告らの主張〕本件発明は,乙4公報に記載された下記発明及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明することができたものである。 ア乙4公報には,以下の発明(以下「乙4発明」という。)が開示されている。 「水 本件発明は,乙4公報に記載された下記発明及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明することができたものである。 ア乙4公報には,以下の発明(以下「乙4発明」という。)が開示されている。 「水に水素を溶解させて水素水を生成する水素水供給装置であって,貯留タンク,電気分解により水素を発生させる電気分解器,電気分解器から の水素を水素バブルとして貯留タンクからの水に与えて加圧送水する循環ポンプ,循環ポンプから水素水を導く加圧器,加圧器から貯留タンクへ水素水を導く管状路としての,加圧器と貯留タンクとの間の循環流路とを含み,貯留タンク中の水を,循環ポンプ,加圧器,加圧器と貯留タンクとの間の循環流路,貯留タンクへと送水して循環させるとともに,水を電気分解器に導き電気分解に供することを特徴とする水素水供給装置に係る発明」イ本件発明と乙4発明との対比(ア) 一致点水に水素を溶解させる気体溶解装置であり,水槽(貯留タンク),電気分解により水素を発生させる水素発生手段(電気分解器),水素発生手段からの水素を水槽からの水に与えて加圧送水する加圧型気体溶解手段(循環ポンプ),加圧型気体溶解手段から水素が溶解した水を導く容器(加圧器),水素が溶解した水を容器から水槽中に導く管状路(循環流路)とを含み,水槽中の水を加圧型気体溶解手段,容器,管状路,水槽へと送水して循環させる点(イ) 相違点① 本件発明では,水素発生手段が固体高分子膜を挟んだ電気分解を行っているのに対し(構成要件1C),乙4発明では,電気分解器が同方式の電気分解を行っているかどうか明らかでない点② 本件発明では,加圧型気体溶解手段が水素発生手段からの水素を水素バブルとして水槽からの水に与えているのに対し(同1D),乙4発明では循環ポンプ15が電気分解器10からの かどうか明らかでない点② 本件発明では,加圧型気体溶解手段が水素発生手段からの水素を水素バブルとして水槽からの水に与えているのに対し(同1D),乙4発明では循環ポンプ15が電気分解器10からの水素を水素バブルとして貯留タンク8からの水に与えているかどうか明らかでない点③ 本件発明では,加圧型気体溶解手段から水素水を溶存槽に導いて貯留しているのに対し(同1E),乙4発明では,加圧型気体溶解手段から水素水を導く加圧器が溶存槽に相当するかどうか明らかでない点 ④ 本件発明では,管状路が降圧移送手段として機能しているのに対し(同1F),乙4発明では,加圧器と貯留タンクとの間の循環流路が降圧移送手段として機能しているかどうか明らかでない点⑤ 本件発明では,水槽中の水を循環させて水素バブルをナノバブルとしているのに対し(同1G),乙4発明では,貯留タンク中の水を循環させて水素バブルをナノバブルとしているかどうか明らかでない点⑥ 本件発明では,加圧型気体溶解手段から溶存槽に送水される水の一部を水素発生手段に導いているのに対し(同1H),乙4発明では,水道水供給源からの水道水を電気分解器に導いている点ウ相違点についての検討(ア) 相違点①について固体高分子膜方式は,本件特許の優先日前に当業者に周知であるから(乙5~7),当業者が電気分解器を固体高分子膜方式とすることは格別困難なことではなかったので,相違点①に係る構成を当業者は容易に想到し得たものである。 (イ) 相違点②について乙4公報の記載によれば,循環ポンプは,送られてきた水素と水を同時に加圧しているから,乙4発明の循環ポンプが「加圧型気体溶解手段」として電気分解器からの水素を水素バブルとして貯留タンクからの水に与えていることは明らかであり,この点は実質的 れてきた水素と水を同時に加圧しているから,乙4発明の循環ポンプが「加圧型気体溶解手段」として電気分解器からの水素を水素バブルとして貯留タンクからの水に与えていることは明らかであり,この点は実質的な相違点ではない。 (ウ) 相違点③について構成要件1Eの「溶存槽」に形状等の限定はない。そして,乙4発明の加圧器17は,ベンチュリ管を内蔵するところ,ベンチュリ管は水の流入側から管内部に向けて徐々に細くなり,管途中の絞り部から流出側に向けて徐々に広がる形態をしているので,加圧器17に導かれた水素水はベンチュリ管内に一時的に貯留されることとなる。このため,乙4 発明のベンチュリ管は「水素水を貯留する溶存槽」に相当するので,相違点③は実質的な相違点ではない。 (エ) 相違点④について乙4発明の循環流路12は,加圧器17と貯留タンク8との間に設けられ,水素水を貯留タンク8に導く管状路である。液体は,圧力の高いところから低いところに流れるものであり,乙4発明では,水素水は加圧器17から貯留タンク8へ流れる。乙4発明の貯留タンク8に貯留した水素水は水栓19が開にされることにより外部に供給されるので,貯留タンク8に貯留された水素水の圧力は常圧となっていることからすると,加圧器17と貯留タンク8との間の循環流路12において水素水が降圧されることは明らかである。そうすると,相違点④に係る構成は,実質的な相違点ではない。 (オ) 相違点⑤について乙4発明の加圧器17に内蔵されたベンチュリ管は,乙17の段落【0020】にベンチュリ管内でナノバブルなどの微小気泡が多数生成される旨の記載なども参酌すると,水素水をナノバブルとする機能を有するものである。また,原告が原出願の過程で提出した意見書(乙10の14)などによれば,原告は加圧送水手段の などの微小気泡が多数生成される旨の記載なども参酌すると,水素水をナノバブルとする機能を有するものである。また,原告が原出願の過程で提出した意見書(乙10の14)などによれば,原告は加圧送水手段の加圧送水により水素バブルがナノバブルになると主張しているところ,乙4発明の循環流路12にも加圧送水手段としての循環ポンプ15が設けられているので,乙4発明においても同ポンプの加圧送水により水素バブルがナノバブルになるものと考えられる。 そうすると,相違点⑤は実質的な相違点ではないが,仮に,乙4発明において水素バブルがナノバブルになることが明確ではないとしても,孔がナノサイズである多孔質体は本件優先日前に周知であるから,孔がナノサイズである多孔質板を用いて水素バブルをナノバブルとすること は当業者であれば容易に想到し得たことである。 (カ) 相違点⑥について相違点⑥に係る構成,すなわち,水素発生手段に導く水を水道水供給源からの水道水とするか,循環させる水素水とするかは,単なる設計的事項にすぎない。仮にそうでないとしても,本件発明のような構成を採用することは,浴槽水循環装置に係る公開特許公報(乙9)に開示された発明(以下「乙9発明」という。)に基づき,当業者が容易に想到し得たものである。 〔原告の主張〕ア相違点③について被告らは,乙4発明の加圧器17が「溶存槽」に相当すると主張するが,加圧器17に内蔵されたベンチュリ管は,流路の一部が縮径しているものであって,流体からすると縮径部が抵抗になるので流れが悪くなることはあるが,だからといって,水の溜まりが生じて水を貯留することにはならないので,ベンチュリ管は「溶存槽」として機能するものではない。そして,相違点③に係る構成が当業者にとって容易に想到し得るものであったということ といって,水の溜まりが生じて水を貯留することにはならないので,ベンチュリ管は「溶存槽」として機能するものではない。そして,相違点③に係る構成が当業者にとって容易に想到し得るものであったということもできない。 イ相違点④について相違点④に関し,被告らは,水栓19が常開であることを前提としているが,水栓19は閉じられているものであり,水栓19が常開であっても,貯留タンク8に貯留した水素水の圧力が常圧になっているのであれば,大気圧と均衡するため,水栓19が常開であっても,水素水供給管18を流れて落下しない結果となる。また,「降圧移送手段としての管状路」は細管を意味するところ,乙4発明の循環流路12は細管ではないので,本件発明の「管状路」に相当するものではない。そして,相違点④に係る構成が当業者にとって容易に想到し得るものであったということもできない。 ウ相違点⑤について被告らは,相違点⑤に係る構成は実質的な相違点ではないと主張するが,乙4発明のベンチュリ管は,乙4の段落【0019】に「加圧器17は,内蔵したベンチュリ管の作用で水道水の内圧を増加させるものである」と記載されているとおり,圧力を低下させるものではなく,かえって増加させるものである。 また,本件発明は水素水を循環させることにより,徐々に水素中の水素濃度を上昇させることができるので,飽和状態で溶解できない水素が水素ナノバブルとして含まれる水素水を得ることができるのに対し,乙4発明は,外部から水道水を導入するものであるため,構成要件1Gにいう「循環」によって,当然にナノバブルは発生しない。 さらに,乙4発明では,循環ポンプ15の性能だけでは目的のサイズの水素の気泡を得ることはできず,目的のサイズの水素の気泡を得るためには細泡器16が必須である。 以上のと ナノバブルは発生しない。 さらに,乙4発明では,循環ポンプ15の性能だけでは目的のサイズの水素の気泡を得ることはできず,目的のサイズの水素の気泡を得るためには細泡器16が必須である。 以上のとおり,相違点⑤に係る構成は実質的な相違点であるというべきところ,被告は,多孔質体が本件優先日前に周知であることから,相違点⑤に係る構成を想到することは容易であったと主張するが,気体である水素は,多孔質板を通過する際に圧縮され,その後に膨脹するので,水素バブルのサイズが多孔質板の孔のサイズとなることはない。 そうすると,多孔質体が本件優先日前に周知の技術であったとしても,そのことから,相違点⑤に係る構成を当業者が容易に想到し得たということはできない。 エ相違点⑥について乙4発明は,水道水をそのまま使用しているので,本件発明より効率的に水素を発生させることができる。このように,本件発明と乙4発明とは水素発生の効率性が異なるのであるから,いずれの方法を選択するかは単 なる設計的事項ではない。 また,乙9発明は浴槽水に関する発明であり,外部から水道水が供給されないことが前提となるのであるから,乙4発明に乙9発明を適用する動機付けは存在しない。 したがって,乙4発明及び乙9発明に基づき,相違点⑥に係る構成を当業者が容易に想到し得たということはできない。 (3) 乙18を主引例とする進歩性の欠如(争点2-3)〔被告らの主張〕本件発明は,乙18公報に開示された発明等や周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ア乙18公報には,以下の発明(以下「乙118発明」という。)が開示されている。 「浄水に酸素を溶解させる酸素浄水装置であって,貯水槽と,電気分解により酸素及び水素を発生させる酸素発生器と,前記酸素 乙18公報には,以下の発明(以下「乙118発明」という。)が開示されている。 「浄水に酸素を溶解させる酸素浄水装置であって,貯水槽と,電気分解により酸素及び水素を発生させる酸素発生器と,前記酸素発生器からの酸素を貯水槽からの浄水に与えて加圧送水する水圧ポンプと,前記水圧ポンプから酸素水を導いて貯留する溶解槽と,前記溶解槽に貯留された酸素水を前記貯水槽に導く安定化部とを含み,貯水槽中の浄水を前記水圧ポンプ,前記溶解槽,前記安定化部,貯水槽へと送水して循環させ酸素を微粒化するとともに,前記貯水槽へと送水される浄水の一部を前記酸素発生器に導き電気分解に供することを特徴とする酸素浄水装置に係る発明」イ本件発明と乙18発明との対比(ア) 一致点水に気体を溶解させる気体溶解装置であり,水槽(貯水槽),電気分解により気体を発生させる気体発生手段(酸素発生器),気体発生手段からの気体を水槽からの水に与え加圧送水する加圧型気体溶解手段(水圧ポンプ),加圧型気体溶解手段から気体が溶解した水を導いて貯留す る溶存槽(溶解槽),溶存槽に貯留された気体が溶解した水を水槽中に導く管状路(安定化部)を含み,水槽中の水を加圧型気体溶解手段,溶存槽,管状路,水槽へと送水して循環させる点(イ) 相違点① 本件発明では,水素発生手段が発生させた水素を水槽からの水に与えて水素水を生成するのに対し,乙18発明では,酸素発生器が発生させた酸素を貯水槽からの浄水に与えて酸素水を生成している点② 本件発明では,水素発生手段が固体高分子膜を挟んだ電気分解を行うのに対し(構成要件1C),乙18発明では,酸素発生器が同方式による電気分解を行うかどうか明らかでない点③ 本件発明では,加圧型気体溶解手段が水素発生手段からの水素を水素バブルとして水槽からの水 のに対し(構成要件1C),乙18発明では,酸素発生器が同方式による電気分解を行うかどうか明らかでない点③ 本件発明では,加圧型気体溶解手段が水素発生手段からの水素を水素バブルとして水槽からの水に与えるのに対し(同1D),乙18発明では,水圧ポンプが同様に酸素を水に与えているかどうか明らかでない点④ 本件発明では,加圧型気体溶解手段から水素水を溶存槽に導いて貯留しているのに対し(同1E),乙18発明では,水圧ポンプから酸素水を溶解槽に導いて貯留している点⑤ 本件発明では,管状路が降圧移送手段として機能するのに対し(同1F),乙18発明では,安定化部が降圧移送手段として機能するかどうか明らかでない点⑥ 本件発明では,水槽中の水を循環させて水素バブルをナノバブルとするのに対し(同1G),乙18発明では,貯水槽中の浄水を循環させて酸素をナノバブルとしているかどうか明らかでない点⑦ 本件発明では,加圧型気体溶解手段から溶存槽に送水される水の一部を水素発生手段に導いているのに対し(同1H),乙18発明では,貯水槽に送水される浄水の一部を酸素発生器に導いている点 ウ相違点についての検討以下のとおり,上記各相違点に係る構成を当業者が想到することは容易であったということができるので,本件発明は進歩性を欠くものである。 (ア) 相違点①について相違点①に関し,乙22の公開特許公報(特開2008-188574。以下「乙22公報」という。)に記載された発明(以下「乙22発明」という。)は,乙18発明と同様に,ポンプで水及び酸素を加圧溶解部(溶存槽)に圧送して水に酸素を溶解させ,降圧移送手段としての減圧部にて酸素水の圧力を徐々に減圧することで,酸素の溶存状態を維持するものであり,乙18発明と共通の技術的特徴を有しているとこ 圧溶解部(溶存槽)に圧送して水に酸素を溶解させ,降圧移送手段としての減圧部にて酸素水の圧力を徐々に減圧することで,酸素の溶存状態を維持するものであり,乙18発明と共通の技術的特徴を有しているところ,乙22公報には,液体に供給して溶解させる気体は酸素でも水素でもよいと記載されている。 また,平成21年10月29日時点において,電気分解により発生した酸素及び水素を選択的に浄水に与えて溶存させることにより酸素水と水素水とを製造する酸素水水素水製造装置は,乙46の韓国特許庁公開特許公報(公開番号10-2009-0113100)に公開され,公知技術となっている。 上記乙22発明及び乙46に記載された発明は,乙18発明と技術的分野が同一であり,これらの発明に基づいて,乙18発明において電気分解により発生する酸素ではなく水素を循環する貯水槽の浄水に与えて溶存させる方法により過飽和水素水の生成を試みることは,当業者が容易に想到し得たものである。 (イ) 相違点②について本件発明の構成要件1Cのように,水素を発生させる電気分解を固体高分子膜方式とすることは,前記のとおり,本件特許の優先日前に当業者に周知であるので,乙18発明においても,当業者が酸素発生器を同 方式とすることについては格別の困難なく容易に想到し得たものである。 (ウ) 相違点③及び④について本件発明では,水素発生手段からの水素と水槽からの水が加圧型気体溶解装置へと送られ,ポンプにより同時に加圧されることにより,構成要件1Dの「水素発生手段からの水素を水素バブルとして水槽からの水に与える」ことを実現している。他方,乙18公報(段落〈16〉,〈43〉)によれば,乙18発明においても,酸素と水が水圧ポンプによって同時に加圧されている。 そうすると,本件発明と乙18発明 の水に与える」ことを実現している。他方,乙18公報(段落〈16〉,〈43〉)によれば,乙18発明においても,酸素と水が水圧ポンプによって同時に加圧されている。 そうすると,本件発明と乙18発明は,いずれもポンプにより加圧され,その後,水素水又は酸素水は溶存槽に導かれていると認められ,生成されるのが水素(水素水)か酸素(酸素水)かという点において相違するのみであるところ,乙18発明において,発生する水素を酸素の代わりに浄水に与え,水素水を生成するように試みることは,当業者の通常の創作能力の発揮であり,格別困難なことでもない。 したがって,相違点③及び④に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものである。 (エ) 相違点⑤について乙18発明の安定化部は,浄水中に溶存した酸素を安定化し,酸素の溶存状態をそのまま維持した状態で排出管路を経由して貯蔵場所に供給する機能を有している。この点,高濃度酸素が溶存された冷却水浄水器に関する韓国公開特許公報(乙23)の段落〈36〉には高濃度の酸素を水に溶存させる冷却水浄水器において,螺旋型ホースは酸素溶存部で溶存酸素量が増加した酸素水の水圧を徐々に低くすることにより溶存酸素量を安定化することが開示されている。乙23の螺旋型ホース及び乙18発明の安定化部は,いずれも螺旋状の管状路であり,いずれも水中に溶存した酸素を安定化して酸素の溶存状態を維持した状態で酸素水を 移送するものであるから,乙18発明の安定化部は乙23の螺旋型ホースと同様に,降圧移送手段として機能するものであるということができる。 そうすると,相違点⑤について,本件発明と乙18発明の実質的な相違点は,生成されるのが水素水か酸素水かという点のみであるところ,乙18発明において水素水を生成するように試みることは,当業者にとって そうすると,相違点⑤について,本件発明と乙18発明の実質的な相違点は,生成されるのが水素水か酸素水かという点のみであるところ,乙18発明において水素水を生成するように試みることは,当業者にとって格別困難ではないことは前記のとおりである。 (オ) 相違点⑥について乙18発明において,溶解槽のフィルター部には多数個の中空糸を含み,この中空糸は,隙間の間隔が0.01~0.5マイクロメーター程度の微細管であって,酸素を微粒化するものである。このように,乙18発明においては,貯水槽中の浄水が循環する過程で酸素バブルがフィルター部により繰り返し微粒化されて,ナノサイズのナノバブルになるということができる。 そうすると,相違点⑥について,本件発明と乙18発明の実質的な相違点は生成されるのが水素水か酸素水かという点のみであるところ,乙18発明において水素水を生成するように試みることは,当業者にとって格別困難ではないことは前記のとおりである。 (カ) 相違点⑦について相違点⑦に係る構成,すなわち,加圧型気体溶解手段から溶存槽に送水される水の一部を水素発生手段に導くか,貯水槽に送水される浄水の一部を酸素発生器に導くかは,単なる設計的事項にすぎない。仮にそうでないとしても,本件発明のような構成を採用することは,乙9発明に基づき,当業者が容易に想到し得たものである。 〔原告の主張〕以下のとおり,上記各相違点に係る構成を当業者が想到することが容易で あったということはできないので,本件発明は進歩性を欠くものではない。 ア相違点①について乙18発明は,酸素水を生成するという目的の下,酸素に特化しているのであるから,浄水に酸素を溶解させる構成に代えて水素を溶解させることについては,阻害要因があるというべきである。なお,水素(水素水) 18発明は,酸素水を生成するという目的の下,酸素に特化しているのであるから,浄水に酸素を溶解させる構成に代えて水素を溶解させることについては,阻害要因があるというべきである。なお,水素(水素水)を酸素(酸素水)に代えることが容易想到ではないことは,他の相違点についても同様である。 被告らは,酸素水発生機から水素水発生機に変更することが乙46に記載されていると主張するが,そもそも乙18発明では水素を使用することが想定されていないのであるから,乙18発明に対して乙46記載の技術的事項を適用することについては,阻害要因がある。 イ相違点③及び④について被告らは,本件発明と乙18発明はいずれも水素又は酸素と水が水圧ポンプにより加圧され,溶存層に導かれていると主張するが,乙18発明は,浄水及び酸素を流入管路で混合するのであり,構成要件1D及び1Eの「加圧型気体溶解手段」に相当する水圧ポンプで混合するものではないので,この点において相違する。そして,この相違点について,当業者が,乙18発明基づいて想到することは容易ではない。 ウ相違点⑥について被告らは,乙18発明においては,貯水槽中の浄水が循環する過程で酸素バブルが微粒化されると主張するが,乙18発明において,浄水と酸素の混合物は貯蔵場所に供給されるのであり,貯水槽に供給されるのではないので,被告らの主張はその前提において誤っている。 また,被告らは,上記混合物がフィルター部の中空糸を通過することにより酸素がナノバブル化すると主張するが,酸素は圧縮されかつ膨張するので,循環しない酸素がフィルター部の中空糸を一度通過することにより ナノサイズとなることはない。また,同発明の中空糸は浄水中のごみを除去するために使用されるものであり,中空糸に付加されるのは低圧力にすぎず,酸素 フィルター部の中空糸を一度通過することにより ナノサイズとなることはない。また,同発明の中空糸は浄水中のごみを除去するために使用されるものであり,中空糸に付加されるのは低圧力にすぎず,酸素及び水が高圧力で攪拌されることはないので,酸素がナノサイズになることはない。 したがって,相違点⑥に係る構成は実質的な相違点であり,当業者が乙18発明に基づいて,同相違点に係る構成を容易に想到し得たものではない。 エ相違点⑦について被告らは,加圧型気体溶解手段から溶存槽に送水される水の一部を水素発生手段に導くか,貯水槽に送水される浄水の一部を酸素発生器に導くかは,単なる設計的事項にすぎないと主張するが,乙18発明は,対象が浄水であって混合物が循環しないという「閉じた系」であるのに対し,乙9発明は,対象が浴槽水であり,浴槽水が循環するという「開いた系」であるので,その前提が異なるので,相違点⑦に係る構成を当業者が容易に想到し得たということはできない。 (4) 公然実施発明に基づく進歩性の欠如(争点2-4)〔被告らの主張〕株式会社ハイジェンテックソリューション(以下「ハイジェンテック社」という。)は,水素水サーバーSを製造していたが,遅くとも平成24年10月,FBCコーポレーションを介して,Aに対し,そのうちの1台(乙33)を販売した。本件発明は,本件特許の優先日前に公然実施された上記水素水サーバーSに基づいて,当業者が容易に想到し得たものであるから,進歩性を欠く。 ア水素水サーバーSの構成水素水サーバーSは,その内部に本件発明と同様に,冷水タンク,水素発生器,ダイヤフラムポンプ,溶存タンク,細管が備え付けられている。 イ被告らは,水素水サーバーSが,段ボール(以下「本件段ボール」という。)に梱包され,木箱 明と同様に,冷水タンク,水素発生器,ダイヤフラムポンプ,溶存タンク,細管が備え付けられている。 イ被告らは,水素水サーバーSが,段ボール(以下「本件段ボール」という。)に梱包され,木箱(以下「本件木箱」)に入れられて韓国から輸出されたとは考え難いと主張するが,①本件木箱は輸出申告書作成後に梱包されたため総重量に含まれておらず,②機械に組み込まれたコンプレッサーは横向きにしたとしても,機械を稼働させるまでに正常な状態で放置すれば問題なく稼働するものであり,③本件段ボールは資源節減のために再利用したものであるから,被告らの主張は理由がない。 ウ本件発明との対比(ア) 一致点水に水素を溶解させて水素水を生成する気体溶解装置であって,内部に水槽(冷水タンク)及び固体高分子膜方式による水素発生手段(水素発生器)を備え,加圧型気体溶解手段(ダイヤフラムポンプ)が,水素発生器から発生した水素を冷水タンクからの水に与えて加圧送水し,ダイヤフラムポンプからの水素を含む水が溶存槽(溶存タンク)に貯留され,降圧移送手段たる細管(なお,細管の内径及び長さは,本件訂正後の「管状路」の範囲内に収まる。)が溶存タンクに貯留された水素を含む水を水槽(冷水タンク)に導いた上,これをダイヤフラムポンプ,溶存タンク,細管,冷水タンクに送水循環させ,水素バブルをナノバブルにする点(イ) 相違点本件発明の気体溶解装置は,加圧型気体溶解手段から溶存槽に送水される水の一部を水素発生手段に導き電気分解に供するのに対し(構成要件1H),水素水サーバーSは,カーボンフィルタ等を通過し,不純物の除去された水の一部を水素発生器に導いている点エ相違点についての検討一般に,水を電気分解する際に,どの経路から水を水素発生手段に導く かは設計者にとっ ボンフィルタ等を通過し,不純物の除去された水の一部を水素発生器に導いている点エ相違点についての検討一般に,水を電気分解する際に,どの経路から水を水素発生手段に導く かは設計者にとって配管の距離や収まり具合などを勘案して設計する事項にすぎず,水素水サーバーSにおいても,水素発生器5に導く水を不純物の除去された水の一部とするか,循環する水素水とするかは単なる設計事項にすぎない。 〔原告の主張〕以下のとおり,水素水サーバーSが,本件段ボールに梱包され,本件木箱に入れられて韓国から輸出されたということはあり得ないので,平成24年11月15日時点において,水素水サーバーSが公知となっていたとは認められない。 輸出申告書(乙36)によれば,水素サーバーSの「総重量」は40キログラムで,「正味重量」が35キログラムであるから,その差分の5キログラムは梱包材等の重量ということになるが,本件木箱の重量を実際に計測してみると18.5キログラムであり(甲21)これによると,水素水サーバーSが本件木箱に入って韓国から輸出されたとは考え難い。 本件木箱には矢印が記載されているが(甲21,乙33),これによれば,水素水サーバーSは寝かされた状態で本件木箱に入れられて運送されたことになるが,水素サーバーはコンプレッサーを内蔵しているところ,コンプレッサーを横にして運送することはあり得ない。このため,本件木箱は水素水サーバーを運送するために用いられたものではない。 本件段ボールの上部に貼られたH2シールをはがすと「OXGEN」という文字が現れ(甲21),本件段ボールは酸素水サーバを梱包するためのものであることが判明した。また,他のH2シールをはがすと,輸入者はインドネシアのジャカルタにある会社であったことが判明した。 さらに,ハイジェンテ 1),本件段ボールは酸素水サーバを梱包するためのものであることが判明した。また,他のH2シールをはがすと,輸入者はインドネシアのジャカルタにある会社であったことが判明した。 さらに,ハイジェンテック社は,平成24年11月8日の時点では,溶存タンクや細管のない非循環式の水素浄水器しか取り扱っていなかったのであるから(甲25の浄水器写真リスト参照),同社がその6日後に循環式の水 素水サーバーを輸出していたとは考え難い。 以上のとおり,水素水サーバーSが,本件段ボールに梱包され,本件木箱に入れられて韓国から輸出されたとは考え難いので,同サーバーが平成24年11月15日時点において公然実施されていたということはできない。 (5) サポート要件違反の有無(争点2-5)〔被告らの主張〕ア本件明細書等の段落【0017】,【0031】には,降圧移送手段が層流を形成することで,水素水から水素を離脱させず,過飽和の状態が安定に維持されることが記載されているが,仮に原告の主張するように,本件特許の特許請求の範囲においては「降圧移送手段が層流を形成すること」の限定は行われていないとすると,本件発明は,発明の課題を解決するための手段が反映されていないため,サポート要件に違反するものである。 イ本件発明における気体溶解装置には「外部接続型」のもののみならず,「水槽一体型」のものも含まれるが,本件明細書等の発明の詳細な説明には,水槽一体型の気体溶解装置は記載も示唆もされていない。このように,本件発明の特許請求の範囲は,明細書の発明の詳細な説明に記載されていない発明を含むので,この点においてもサポート要件に違反する。 〔原告の主張〕いずれも争う。 3 本件訂正発明についての無効事由の存否(1) サポート要件違反の有無(争点3-1)〔 ていない発明を含むので,この点においてもサポート要件に違反する。 〔原告の主張〕いずれも争う。 3 本件訂正発明についての無効事由の存否(1) サポート要件違反の有無(争点3-1)〔被告らの主張〕ア本件訂正事項は,本件発明の構成要件1Fの細管の内径を「1.0mmより大きく3.0mm以下」とし,その長さを「0.8m以下の長さのものを除く」とするものである。 本件明細書等においては,過飽和の状態が維持された実施例1~13と して,細管の長さが1.4mから4mの範囲にあるものが開示され,他方,これを維持できなかったとされる比較例においては,細管の長さが0.4m及び0.8mのものが開示されている(段落【0053】~【0068】)。他方,細管の長さが0.8mより大きく1.4mより小さい範囲については,本件訂正発明の課題を解決できることを裏付ける具体例は本件明細書等に開示されていない。 このように,当業者は,本件明細書等の記載に接したとしても,細管の長さが0.8mより大きく1.4mより小さい場合に,過飽和の状態を安定に維持するとの本件訂正発明の課題を解決できると認識することではきない。 また,本件明細書等に開示された実施例には,過飽和の状態が維持されるときの条件として,細管の内径や長さに加え,細管の材料,加圧型気体溶解手段により加えられる圧力,水素発生量及び水の流量等の条件が記載されている上,これを安定に維持するためには,XY比を1.00から12.00の範囲に調整する必要があると記載されている(段落【0031】)。実際,本件明細書等の記載の実施例及び比較例のXY比を計算すれば,比較例は発明の課題を解決できるとされる数値の範囲内にはなく,実施例1~13と比較例1,2との間には,細管の内径X及び長さ以外に,XY比が課 件明細書等の記載の実施例及び比較例のXY比を計算すれば,比較例は発明の課題を解決できるとされる数値の範囲内にはなく,実施例1~13と比較例1,2との間には,細管の内径X及び長さ以外に,XY比が課題を解決できるか否かの境界となっていることは自明であるが,本件発明の特許請求の範囲は,本件訂正後においても,これらの条件を限定していない。 そうすると,本件訂正後の請求項1は,発明の課題を解決するための手段が反映されているということはできない。 イこれに対し,原告は,本件訂正のとおり,長さ0.8m以下の細管を除外しさえすれば,30分を超えて過飽和の状態を維持し得ると主張するが,仮に原告が主張するように水素濃度が1.8ppmから1.6ppmを下 回るまでに要する時間が約30分であるとしても,本件明細書等の段落【0039】には,「本発明の気体溶解装置1は,コントロール機構6により,気体発生手段2と加圧型気体溶解手段3の稼働時間が5~60分間であり,かつこの稼働時間の1~5倍の停止時間で,気体発生手段2と加圧型気体溶解手段3を制御することが好ましく,気体発生手段2と加圧型気体溶解手段3の稼働時間が10~30分間であり,かつこの稼働時間の2~4倍の停止時間で,気体発生手段2と加圧型気体溶解手段3を制御することがより好ましく」との記載があり,本件明細書等の実施例及び比較例では,30分運転後の水素濃度で過飽和の状態を維持するかどうかを判定している。本件明細書等の上記記載によると,30分運転後(稼働時間後)の停止時間は,30分~150分とすることが好ましく,60分~120分とすることがより好ましいとされ,30分をはるかに超える停止時間が経過しても過飽和の状態を維持できることが必要とされているところ,本件明細書等の記載及び本件特許出願時の技術常 しく,60分~120分とすることがより好ましいとされ,30分をはるかに超える停止時間が経過しても過飽和の状態を維持できることが必要とされているところ,本件明細書等の記載及び本件特許出願時の技術常識を参酌しても,細管の長さを0.8mよりも長くすれば,30分を大きく超える時間(例えば,45分や60分など)を停止時間とした場合に過飽和の状態を維持できることを当業者において認識することができない。 ウ以上のとおり,本件訂正後の特許請求の範囲は,本件発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえず,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるから,本件訂正により本件発明に係る無効事由が解消されたということはできず本件訂正発明は,特許法123条1項4号の規定により無効とされるべきものである。 〔原告の主張〕ア本件訂正前の特許請求の範囲においては,細管の内径や長さについての限定はなく,比較例として示された細管の長さが0.8m以下のものも含むような記載になっていたが,仮に,本件訂正前の特許請求の範囲の記載 がサポート要件違反と解されるとしても,本件訂正により,長さ0.8m以下の長さの細管が「降圧移送手段としての管状路」から除かれたので,サポート要件違反は解消された。 イ本件明細書等の比較例2において水素の濃度は1.8ppmとされており,少なくとも過飽和の状態にはなっている。水素の飽和濃度は約1.6ppmであるところ,1.8ppmから1.6ppmになるには約30分であるが,本件訂正発明のような飲料用の水素水を提供する気体溶解装置においては,30分よりも長く過飽和の状態を維持できるのであれば,本件発明の課題を解決できると評価することができるので,0.8m以下の細管を除外しさえすれば,過飽和の状態を安定に維 する気体溶解装置においては,30分よりも長く過飽和の状態を維持できるのであれば,本件発明の課題を解決できると評価することができるので,0.8m以下の細管を除外しさえすれば,過飽和の状態を安定に維持できる気体溶解装置であると評価することができる。 ウ被告らは,細管の内径や長さに加え,細管の材料,加圧型気体溶解手段により加えられる圧力,水素発生量及び水の流量等の条件が限定されていないとするが,加圧型気体溶解手段3により加えられる圧力,水素発生量及び水の流量等の条件は,実施例に明確に記載されており,実施例記載の条件にすることで過飽和の状態を維持できると容易に判断できる。 たとえば,細管5aの材料については,本件明細書等の段落【0051】において,「また,本発明において,降圧移送手段5である細管は,本発明の効果を妨げない範囲において,通常の液体や気体を流す際に使用できる部材を使用することができ」と記載されており,当該記載から通常の液体や気体を流す際に使用できる部材を使用すれば,本件訂正発明の課題を解決できることが明らかである。 また,X/Yの値については,その範囲が1.00~12.00となるような,内径の大きさ及び加圧型気体溶解手段3により加えられる圧力にすれば「気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,かかる過飽和の状態を安定に維持」との発明の課題を解決できることが明らかである。 エ以上のとおり,発明の詳細な説明には,特許請求の範囲に記載されている範囲と得られる効果との関係の技術的意味が当業者に理解できる程度に記載され,また,所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に記載されているのであるから,本件訂正後の特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反していない。 (2) 乙4を主引例とする進歩性の欠如(争点3-2) 果が得られると当業者において認識できる程度に記載されているのであるから,本件訂正後の特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反していない。 (2) 乙4を主引例とする進歩性の欠如(争点3-2)〔被告らの主張〕ア本件訂正発明と乙4発明とを対比すると,本件発明と乙4発明との相違点①~⑥に加えて,以下の相違点⑦が存在する。 「本件訂正発明における管状路の内径及び長さは,1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し,0.8m以下の長さのものを除く)であるのに対し,乙4発明では,ベンチュリ管の内径や長さが記載されているわけではなく,1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の管状路(但し,0.8m以下の長さのものを除く)を備えているか明らかでない点」イ相違点⑦に係る構成の容易想到性以下のとおり,相違点⑦に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 本件訂正発明の降圧移送手段は,水素水の水圧を徐々に低くすることで溶存水素量を安定化するものであるところ,乙22公報には,気体溶解液(水素水)の圧力を徐々に低くすることが,流路6の内径や長さを調整することで実現できることが記載されている(段落【0047】,【0048】)。乙4発明と,乙22発明とは,いずれも水素を水に溶解させる装置に関する発明であり,両者の技術分野は関連することからすると,乙22発明は,乙4発明の「加圧器17と貯留タンク8との循環流路12」又は「ベンチュリ管およびそれに続く管路」(以下,併せて「循環流路12 等」という。)の内径や長さを調整する動機を与えるものであり,乙4発明の循環流路12等の内径や長さを本件訂正発明に規定される値とすることは,当業者の通常の創作能力により実現することができる。 また,乙49には,加圧型気体溶解装置で,降 機を与えるものであり,乙4発明の循環流路12等の内径や長さを本件訂正発明に規定される値とすることは,当業者の通常の創作能力により実現することができる。 また,乙49には,加圧型気体溶解装置で,降圧機構を有し,過飽和とする降圧移送手段としての細管につき,長さが0.05~2.0mであることが望ましいことが記載されており,同文献の段落【0018】には,流速等の条件にはよるものの,降圧機構としてのキャピラリー1の内径は5~1000μm(=0.005~1.0mm)が好ましいことが記載されている。本件訂正発明における内径については,内径や圧力との関係を考慮し,その数値範囲を最適化・好適化すれば足りることである。 さらに,一般に家庭の水道管が内径13mm程度でもトイレや風呂への十分な給水が行える流量を確保することができ,不必要に太い管を用いることは技術常識としてあり得ないことなどからすれば,乙4発明の循環流路12等の内径を,13mmよりも小さい数ミリ程度にすることは当業者であれば容易になし得る。加えて,乙4発明の循環流路12等の長さを0. 8mより長くすることは,水素水供給装置の高さなどに応じて,当業者が容易に想到し得ることである。 したがって,乙4発明の循環流路12等を相違点⑦に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 〔原告の主張〕ア本件訂正後の本件発明は,相違点⑦に係る構成により,気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,かかる過飽和の状態を安定に維持するという発明の課題(本件明細書等の段落【0015】)を解決する手段を具体的に提供するものであり,管状路を1.0mmより大きく3.0mm以下の内径かつ0.8mより長い細管とすることで,より持続的に水素の過飽和状態を維持することができる。このように,具体的な数値で特定した管 提供するものであり,管状路を1.0mmより大きく3.0mm以下の内径かつ0.8mより長い細管とすることで,より持続的に水素の過飽和状態を維持することができる。このように,具体的な数値で特定した管状路と することで,従来技術に比べて極めて有利な効果を生じさせるのであるから,相違点⑦に係る構成が設計事項であるということはできない。 イ被告らは,乙4発明に乙22発明を組み合わせることができると主張するが,乙4における「ベンチュリ管及びそれに続く管」は,加圧するためのものであるから,圧力を下げる乙22の流路6を適用することはできない。また,乙22公報には,具体的に,圧力を徐々に低くさせることができる最適な細管の長さや内径の大きさが開示されているわけではなく,上記相違点⑦に係る構成とすることについては,何ら示唆も開示もない。 ウさらに,乙49記載のキャピラリー(毛細管などと呼ばれる細い管)は,気体を溶解させた液体の圧力を下げるものであるが,乙4発明のベンチュリ管は,そもそも加圧に関する機能を発揮するものであって降圧に関する機能を発揮するものではないので,乙4発明に乙49記載の技術的事項を適用する動機付けがない。 エしたがって,乙4発明に基づき相違点⑦に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことではない。 (3) 乙18を主引例とする進歩性の欠如(争点3-3)〔被告らの主張〕本件訂正発明と乙18発明とを対比すると,本件発明と乙18発明との相違点①~⑦に加えて,上記(2)〔被告らの主張〕アと同一の相違点(これを相違点⑧とする。)が存在するところ,同相違点に係る構成は,以下のとおり,当業者が容易に想到し得たものである。 乙18発明には,安定化部(20)の内径及び長さは規定されていないものの,乙18の段落<38>には る。)が存在するところ,同相違点に係る構成は,以下のとおり,当業者が容易に想到し得たものである。 乙18発明には,安定化部(20)の内径及び長さは規定されていないものの,乙18の段落<38>には,「安定化部(20)は酸素の溶存量を考慮して捲線回数や断面積と全体長さを多様な形に調節することが出来る。」と記載されている。 また,乙23の段落<36>には,乙18の安定化部(20)と同じく螺旋状 の管状路でありかつ水中に溶存した酸素を安定化して酸素の溶存状態(溶存酸素量)を維持した状態で酸素水を移送する螺旋型ホース(170)について,「螺旋型ホース(170)は酸素溶存部(130)を通過した酸素水の水圧を徐々に低くすることで溶存酸素量を安定化しようとするものだ。螺旋型ホースの直径と長さはタンクの処理容量などによって実験的又は経験的に決まるが大体ホースの内径は0.1~2cmで,長さは1~5mの範囲で決まることが出来る。」と記載されている。 さらに,先行文献(乙49)において,加圧型気体溶解装置で,降圧機構を有し,過飽和とする降圧移送手段としての細管につき,長さが0.05~2.0mであることが望ましいことなどが記載されていることは,前記のとおりである。 このように,水中に溶存する気体(酸素)の溶存量を高濃度に維持するために,管状路の内径(断面積)及び長さを適宜調整することは従来から行われてきた公知技術であり,内径及び長さの値を具体的に設定することは,当業者の通常の創作能力による最適化又は好適化で,実現できることである。 したがって,本件訂正発明の相違点⑧に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものである。 〔原告の主張〕相違点⑧に係る構成は,前記(2)〔原告の主張〕と同様の理由から,当業者が容易に想到し得たものではない。 第4 明の相違点⑧に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものである。 〔原告の主張〕相違点⑧に係る構成は,前記(2)〔原告の主張〕と同様の理由から,当業者が容易に想到し得たものではない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の内容(1) 本件明細書等(甲1の2)には,以下の記載がある。 ア技術分野「本発明は,気体溶解装置及び気体溶解方法に関し,特に,気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,かかる過飽和の状態を安定に維持し提供でき る気体溶解装置…に関する。」(段落【0001】)イ発明が解決しようとする課題「上記特許文献1~6記載の技術は,水素水を得ることはできるものの,気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,この過飽和の状態を安定に維持できるものではなく,提供される水素水の濃度が低く,十分な水素水の効果が得られるものではなかった。さらに,装置が大掛かりであるため十分なスペース等が必要となり,ウォーターサーバー等へ容易に取付けることができないという問題点があった。」(段落【0013】)「また,特許文献7記載の技術は,降圧機構が複数のキャピラリーを有しているため,降圧機構のスペースを広く取る必要があり,ウォーターサーバー等に容易に取付けることができないという問題点があった。さらに,複数のキャピラリーを有しているため製造や故障時の修理が煩雑になり,ウォーターサーバー等に取付けて使用するには,実用化の面で問題があった。」(段落【0014】)「そこで,本発明の目的は,前記の従来技術の問題点を解決し,気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,かかる過飽和の状態を安定に維持しこれを提供でき,さらにウォーターサーバー等へ容易に取付けることができる気体溶解装置を提供することにある。」(段落【0015】)ウ課題を解決するための手段 させ,かかる過飽和の状態を安定に維持しこれを提供でき,さらにウォーターサーバー等へ容易に取付けることができる気体溶解装置を提供することにある。」(段落【0015】)ウ課題を解決するための手段「本発明者らは,…,降圧移送手段を設け,さらに液体にかかる圧力を調整することで,前記目的を達成し得ることを見出し,本発明を完成するに至った。」(段落【0016】)「即ち,本発明の気体溶解装置は,水に水素を溶解させて水素水を生成し取出口から吐出させる気体溶解装置であって,生成した水素水を導いて加圧し貯留する溶存槽と,前記溶存槽及び前記取出口を接続する管状路において前記取出口からの水素水の吐出動作による前記管状路内の圧力変動 を防止し層流を形成させる降圧移送手段と,を含むことを特徴とする。かかる発明によれば,生成した水素水から水素を離脱させることなくこの外部に提供することができるのである。」(段落【0017】)エ発明を実施するための形態「図1は,本発明の気体溶解装置の一例を示す断面図である。図中,1は気体溶解装置,2は気体発生手段,3は加圧型気体溶解手段,4は溶存槽,5は降圧移送手段である。気体溶解装置1は,気体を発生させる気体発生手段2と,この気体を加圧して液体に溶解させる加圧型気体溶解手段3と,気体を溶解している液体を溶存及び貯留する溶存槽4と,この液体が細管5aを流れることで降圧する降圧移送手段5と,を有している。」(段落【0029】)「ここで,降圧移送手段5は,溶存槽4及び取出口10を接続する管状路5aにおいて,取出口10からの水素水の吐出動作による管状路5a内の圧力変動を防止しこの中に層流を形成させる。例えば、降圧移送手段5の管状路5aは,内部を流れる液体の圧力にもよるが比較的長尺であり径の小さいこと 出口10からの水素水の吐出動作による管状路5a内の圧力変動を防止しこの中に層流を形成させる。例えば、降圧移送手段5の管状路5aは,内部を流れる液体の圧力にもよるが比較的長尺であり径の小さいことが好ましく,管状路5aの取出口近傍に管径を絞った若しくは拡げたテーパーを与えた圧力調整部を含むものであってもよい。」(段落【0030】)「また,本発明の気体溶解装置1において,細管5aの内径をXmmとし,加圧型気体溶解手段3により加えられる圧力をYMPaとしたときに,細管5a内に層流を形成させるようなものであって,X/Yの値が,1. 00~12.00であることを特徴とするものであり,さらに,X/Yの値が,3.30~10.0であることが好ましく,4.00~6.67で【図1】 あることがより好ましい。気体を過飽和で溶存させている液体が,かかる条件で細管5a中を層流状態で流れて降圧移送されることで,気体を過飽和の状態で液体に溶解させ,さらに過飽和の状態を安定に維持し移送することができる。」(段落【0031】)「図1では,今回,液体として水を使用している。図2を併せて参照すると,液体吸入口7から水を吸入し(S1),加圧型気体溶解手段3の吸入口8を経由してポンプ3aで吸入し後述する水素発生手段21からの水素を配管内にて合流させ混合し(S2′),加圧溶解(S2)後,この吐出口9から水を吐出する。吐出された水の一部を分離し(S2″),イオン交換手段22でイオン交換し(S3)水素発生手段用取入口23を経由して水素発生手段21に送られる。水素発生手段21では,イオン交換された水を用いて電気分解(S4)により水素を発生させ水素供給管24を通して加圧型気体溶解手段3の吸入口8へと送られる。また,電気分解により発生した酸素は,酸素排出口25 生手段21では,イオン交換された水を用いて電気分解(S4)により水素を発生させ水素供給管24を通して加圧型気体溶解手段3の吸入口8へと送られる。また,電気分解により発生した酸素は,酸素排出口25を通して気体溶解装置1の外へと排出される。」(段落【0033】)「電気分解により発生した水素は加圧型気体溶解手段3の吸入口8へと送られ,そのポンプ3aにより加圧されることで,液体吸入口7から吸入した水に加圧溶解される。水素を加圧溶解した水は,加圧型気体溶解手段3の吐出口9から吐出され,溶存槽4に過飽和の状態で溶存される(S5)。溶存槽4に溶存された液体は,降圧移送手段5である細管5a内で層流状態を維持して流れることで降圧され(S6),水素水吐出口10から外部へ吐出される(S7)。」(段落【0034】)【図2】 「また,本発明の気体溶解装置1は,降圧移送手段5である細管5aの内径Xが,1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましく,1.0mmより大きく3.0mm以下であることがより好ましく,2.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。かかる範囲とすることで,特開平8-89771号公報記載の技術のように,降圧するために10本以上の細管を設置する必要が無く,細管5aを1本有することで降圧することができるとともに,管内に層流を形成し得る。また,ウォーターサーバー等に容易に取付けることができ,さらに,製造や故障時の修理が容易になり,ウォーターサーバー等への取付けがより容易になる。」(段落【0035】)「図3は,本発明の気体溶解装置の使用の一例を示す図である。図中,100はウォーターサーバーである。ウォーターサーバー100に気体溶解装置1′を取付けることで,ウォーターサーバー100中の水を用いて,水素ガスを発生させ, 置の使用の一例を示す図である。図中,100はウォーターサーバーである。ウォーターサーバー100に気体溶解装置1′を取付けることで,ウォーターサーバー100中の水を用いて,水素ガスを発生させ,さらにそれを用いて過飽和の水素水を供給することできる。また,過飽和の水素水をウォーターサーバー100中に保存できるとともに,循環できるので,常に過飽和の水素水を供給することができる。」(段落【0043】)【図3】 「詳細には,図4を併せて参照すると,ウォーターサーバー100から水,気体発生手段2から水素を同時に加圧型気体溶解手段3のダイヤフラムポンプ3aに導かれ,これで加圧しながらバブリングし水素水を得る。かかる水素水はダイヤフラムポンプ3aでの加圧状態を維持しながら,多孔質体などからなるマイクロフィルター(溶存タンク)41,活性炭フィルター(溶存タンク)42を通じて,降圧移送手段5の細管5aを経て再び,ウォーターサーバー100に導かれる。また,ダイヤフラムポンプ3aを出た水素水の一部は,イオン交換手段22を介して水素発生手段21に送られ電気分解されて水素を発生させる。かかる水素は気体溶解装置3のダイヤフラムポンプ3aに送られる。」(段落【0044】)「かかる装置で,約30分間稼動させたところ,500nm以下のナノバブルが光学的に観察され,引き続き3日間稼動させたところ,200nm程度のナノバブルが光学的に観察された。」(段落【0045】)「上記では,気体として水素を用いた例を示したが,他の気体を過飽和の状態で溶解することも可能である。例えば,気体発生手段2として炭酸ガスボンベ,窒素ガスボンベ,酸素ガスボンベ等を用いれば,種々の気体を過飽和で溶解することができる。これにより,水素,二酸化炭素,窒素および酸素から とも可能である。例えば,気体発生手段2として炭酸ガスボンベ,窒素ガスボンベ,酸素ガスボンベ等を用いれば,種々の気体を過飽和で溶解することができる。これにより,水素,二酸化炭素,窒素および酸素からなる群より選ばれる一種以上の気体を液体に過飽和で溶解することができる。」(段落【0046】)「ただし,気体としては水素が最も好ましい。水素は分子量が小さく,しかも液体中の内容物と内容物の間,例えば水と水との分子の間に入って,【図4】 より過飽和の状態を維持しやすいと考えられる。また,水素の液体中の濃度が7℃で2.0ppmより大きいことが好ましく,2.0~8.0ppmであることが好ましい。2.0ppmより大きいことで過飽和状態を維持できる。」(段落【0047】)「(実施例1) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ1.6mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.41MPa,水素発生量を21cm3/min,水の流量を730cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で6.5ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0053】)「(実施例2) 図1に示す気体溶解装置1を水道に接続して,4回循環して,水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ1.6mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.25MPa,水素発生量を21cm3/min,水の流量を730cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,11℃で2.6ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0054】)「(実施例3) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すよう /minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,11℃で2.6ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0054】)「(実施例3) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ1.6mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.30MPa,水素発生量を21cm3/min,水の流量を730cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で5.9ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0055】)「(実施例4) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ1.5mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.35MPa,水素発生量を25cm3/min,水の流量を590cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で3.0ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0056】)「(実施例5) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ1.6mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.38MPa,水素発生量を25cm3/min,水の流量を560cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で3.8ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0057】)「(実施例6) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環 7℃で3.8ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0057】)「(実施例6) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ1.8mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.40MPa,水素発生量を25cm3/min,水の流量を540cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で4.2ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0058】)「(実施例7) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ1.8mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.45MPa,水素発生量を20cm3/min,水の流量を560cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で4.5ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0059】) 「(実施例8) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ1.8mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.50MPa,水素発生量を15cm3/min,水の流量を570cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で4.2ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0060】)「(実施例9) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは, していた。」(段落【0060】)「(実施例9) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ2.0mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.60MPa,水素発生量を15cm3/min,水の流量を460cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で3.4ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0061】)「(実施例10) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ1.4mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.20MPa,水素発生量を30cm3/min,水の流量を550cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で2.7ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0062】)「(実施例11) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ3mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.50MPa,水素発生量を20cm3/min,水の流量を550cm3/minで行った。30分運転後の水 中の水素濃度は,7℃で2.4ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0063】)「(実施例12) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは,内径3mmで長さ4mのポリプロピレン製のものを使用 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは,内径3mmで長さ4mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.35MPa,水素発生量を20cm3/min,水の流量を650cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で3.5ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0064】)「(実施例13) 図1に示す気体溶解装置1を図3に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは,内径3mmで長さ2.5mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.25MPa,水素発生量を20cm3/min,水の流量を700cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で3.0ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持していた。」(段落【0065】)「(比較例1) 図1に示す気体溶解装置1を図2に示すように市販のウォーターサーバー100に接続して,4回循環して,水素水を生成した。 降圧移送手段5の細管5aは,内径2mmで長さ0.4mのポリプロピレン製のものを使用した。圧力を0.05MPa,水素発生量を21cm3/min,水の流量を960cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で1.6ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持できなかった。」(段落【0066】)「(比較例2) 図1に示す気体溶解装置1を図2に示すように市販のウォーターサーバーに接続して,4回循環して,水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは,内径3mmで長さ0.8mのポリプロピレン製 のものを使用した。圧力を0.08MPa,水素発生量を21cm3/m サーバーに接続して,4回循環して,水素水を生成した。降圧移送手段5の細管5aは,内径3mmで長さ0.8mのポリプロピレン製 のものを使用した。圧力を0.08MPa,水素発生量を21cm3/min,水の流量を900cm3/minで行った。30分運転後の水中の水素濃度は,7℃で1.8ppmの水素水となり,過飽和の状態を維持できなかった。」(段落【0067】)「実施例1~実施例13はいずれも過飽和状態の水素水を得ることができ,しかも持続的に維持できた。一方,比較例1および2では,過飽和状態の水素水を得ることができなかった。」(段落【0068】)オ産業上の利用可能性「水道やウォーターサーバーだけでなく,お茶やジュース等の飲料,あるいは浴槽などにも取付けることができる。気体を過飽和の状態で液体に溶解させ,かかる過飽和の状態を安定に維持することが求められる種々の液体に利用することができる。」(段落【0069】)(2) 本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書等における上記記載によれば,本件発明は,①水素を水に過飽和の状態で溶解させ提供する気体溶解装置に係る発明であり,②生成した水素水を過飽和の状態に安定に維持し,かつ,ウォーターサーバー等に容易に取り付けられる装置とするという課題を解決するため,③水槽,水素発生手段,加圧型気体溶解手段,水素水を貯留する溶存層,降圧移動手段としての管状路を含み,水槽中の水をこれらの手段へと送水して循環させ,水素バブルをナノバブルとするとともに,加圧型気体溶解手段から溶存槽へと送水される水の一部を水素発生手段に導き電気分解に供することなどを特徴とするものである。 2 争点3-1(サポート要件違反の有無)事案に鑑み,争点3-1から判断する。 (1) 本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書 手段に導き電気分解に供することなどを特徴とするものである。 2 争点3-1(サポート要件違反の有無)事案に鑑み,争点3-1から判断する。 (1) 本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,同条9項により準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものであると認められるところ,被告らは,本件訂正発明に 係る特許請求の範囲よりその範囲が広い本件発明がサポート要件に違反することは前提とした上で,本件訂正後の請求項1に係る発明はサポート要件に違反し,無効とされるべきものであるので,本件訂正により本件発明に係る無効事由は解消されていないと主張する。 特許請求の範囲の記載が,サポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである(知的財産高裁平成17年11月11日判決・判例タイムズ1192号164頁参照)。 (2)ア本件訂正は,特許請求の範囲請求項1の「細管」の内径及び長さについて「1.0mmより大きく3.0mm以下の内径の細管(但し,0.8m以下の長さのものを除く)」と特定するものである。本件訂正後の請求項1の記載によれば,本件訂正後の「細管」の長さは0.8mより長いものをすべて含むと解される。 イ本件訂正発明の目的は,①気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,かかる過飽和の状態を安定に維持して提供すること,②ウォーターサーバー等へ容 の長さは0.8mより長いものをすべて含むと解される。 イ本件訂正発明の目的は,①気体を過飽和の状態に液体へ溶解させ,かかる過飽和の状態を安定に維持して提供すること,②ウォーターサーバー等へ容易に取り付けることができる気体溶解装置を提供することにあるところ(本件明細書等の段落【0015】),同明細書等には維持すべき過飽和の濃度に関し,「2.0ppmより大きいことで過飽和状態を維持できる」(段落【0047】)と記載されている。そして,本件訂正発明の「管状路」について,本件明細書等の段落【0030】には,「管状路5aは,内部を流れる液体の圧力にもよるが比較的長尺であり径が小さいことが好まし」いと記載されている。 本件明細書等の上記記載によれば,本件訂正発明の課題である過飽和状態の安定的な維持のためには,過飽和の濃度が2.0ppmより大きいことを要すると解されるところ,管状路(細管)の長さについては,比較的長尺が好ましいとの記載が存するのみで,具体的にどのような長さであれば本件訂正発明の課題を解決することができるかは明らかではない。 ウそこで,本件明細書等に開示された実施例及び比較例を参酌すると,実施例1~13については,長さ1.4mから4mまでの長さの細管を使用し,過飽和の状態の水素水を得ることができ,かつ,持続的に維持できたとされている。他方,比較例においては,0.4m及び0.8mの長さの細管を使用したところ,2.0ppm以上の過飽和状態の水素水を得ることができなかったとされている。 上記のとおり,本件明細書等の実施例及び比較例(段落【0053】~【0068】)を参酌すると,長さ1.4mから4mまでの長さの細管を使用した場合には本件訂正発明の課題を解決することができ,0.8m以下の長さの細管を使用した場合には同課題を 例(段落【0053】~【0068】)を参酌すると,長さ1.4mから4mまでの長さの細管を使用した場合には本件訂正発明の課題を解決することができ,0.8m以下の長さの細管を使用した場合には同課題を解決することができないことが示されているが,長さが0.8mより長く,1.4mより短い細管については,本件訂正発明の課題を解決し得るような水素水を得られるとの結果は示されていない。 エ前記のとおり,本件訂正後の請求項1は,長さが0.8mを超える細管を含むところ,本件明細書等には,細管の長さが0.8mから1.4mの範囲において,過飽和状態が維持されるとされる2.0ppmより大きい水素濃度となることが示されているということはできないので,当業者が当該範囲において本件訂正発明の課題を解決し得ると認識することはできないというべきである。そして,細管の長さが0.8mから1.4mの範囲において過飽和状態が維持されることが本件特許出願時の技術常識であったと認めるに足りる証拠もない。 そうすると,本件訂正発明は,当業者が発明の課題を解決できると認識できない部分を含むものであるから,サポート要件に違反するものというべきである。 オこれに対し,原告は,本件訂正により,長さ0.8m以下の長さの細管が「降圧移送手段としての管状路」から除かれたので,サポート違反は解消されたと主張するが,これは発明の課題を解決し得ないことが明らかな細管の長さを除外したにすぎず,本件明細書等には,細管の長さが0.8mから1.4mの範囲の場合の具体例は示されておらず,発明の課題を解決し得ると当業者が認識し得ないことは前記判示のとおりである。 また,原告は,本件明細書等の比較例2において水素の濃度は1.8ppmとされており,30分は過飽和の状態を維持できるのであるから,0. 決し得ると当業者が認識し得ないことは前記判示のとおりである。 また,原告は,本件明細書等の比較例2において水素の濃度は1.8ppmとされており,30分は過飽和の状態を維持できるのであるから,0. 8m以下の細管を除外すれば,過飽和の状態を安定に維持できる気体溶解装置であると評価し得ると主張する。 しかし,長さが0.8mの細管を使用した比較例2における水素の濃度は1.8ppmであり,本件明細書等において過飽和状態を維持し得るとされる2.0ppmに達していないにもかかわらず,同比較例の気体溶解装置において,細管の長さを例えば0.8mより少し長くして,同一の条件の下,これを稼働させたとき,直ちに2.0ppmを超える水素水を得られるとは考え難い。 したがって,原告の上記主張はいずれも理由がない。 (3) 次に,細管の長さ及び内径以外の条件,特に細管の内径(Xmm)と加圧型気体溶解手段により加えられる圧力(YMPa)のXY比に関するサポート要件違反の主張について検討する。 ア本件訂正後の特許請求の範囲には,細管の内径については記載があるものの,XY比については規定されていないことから,XY比については特に限定なく,少なくとも特許出願時の技術常識の範囲内であれば含まれる ものと解される。 他方,本件明細書等には,XY比について,「X/Yの値が,1.00~12.00であることを特徴とするものであり,さらに,X/Yの値が,3.30~10.0であることが好ましく,4.00~6.67であることがより好ましい。気体を過飽和で溶存させている液体が,かかる条件で細管5a中を層流状態で流れて降圧移送されることで,気体を過飽和の状態で液体に溶解させ,さらに過飽和の状態を安定に維持し移送することができる」とする記載がある(段落【0031】)。 そ かる条件で細管5a中を層流状態で流れて降圧移送されることで,気体を過飽和の状態で液体に溶解させ,さらに過飽和の状態を安定に維持し移送することができる」とする記載がある(段落【0031】)。 そして,本件明細書等に開示された実施例及び比較例におけるXY比を計算すると,過飽和の状態を維持し得たとする実施例のXY比は1.00から12.00の範囲に収まるのに対し,これを維持し得なかったとする比較例のXY比は,その範囲から外れているものと認められる。 イそうすると,本件発明の課題解決をするためには,XY比は前記の範囲(1.00~12.00)に収まる必要があり,XY比の値によっては,発明の課題を解決することができない場合があるということができる。しかるに,本件訂正発明の特許請求の範囲は,この点を何ら限定していないのであるから,特許請求の範囲に記載された発明は,当業者が,発明の課題を解決することができると認識することができない範囲のものを含むというべきである。そして,XY比が上記の範囲にあることにより過飽和状態が維持されることが本件特許出願時の技術常識であったと認めるに足りる証拠もない。 ウこれに対し,原告は,XY比の範囲が1.00~12.00であれば本件訂正発明の課題を解決できることが明らかであると主張するが,上記のとおり,XY比の範囲が1.00~12.00であれば水素水を過飽和状態に維持できるという技術常識が存在したと認めるに足りる証拠はなく,また,XY比の値によって発明の課題解決上の効果が異なり得ることは実 施例及び比較例からも明らかである。 エ以上のとおり,本件訂正発明は,XY比が1.00~12.00の範囲ではないものを含むので,同発明の課題を解決できると当業者が認識することができない範囲のものを含むものであって,サポ かである。 エ以上のとおり,本件訂正発明は,XY比が1.00~12.00の範囲ではないものを含むので,同発明の課題を解決できると当業者が認識することができない範囲のものを含むものであって,サポート要件に違反するというべきである。 (4) 以上のとおり,本件訂正後の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるということはできないから,特許法36条6項1号に違反する。したがって,本件訂正により本件発明に係る無効事由は解消されていないというべきであり,本件発明に係る特許は,特許法123条1項4号により特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,特許法104条の3第1項により,本件発明に係る特許権を行使することができない。 3 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 三井大有 裁判官 𠮷野俊太郎 (別紙)被告製品目録 1 型番「HDY-H1」の水素水サーバー 2 型番「HDY-K1」の水素水サーバー

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る