【DRY-RUN】○ 主文 一 被告A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同H、同I、同J、同K、同 L及び同Mは、それぞれ朝霞市に対して、別表(9)の該当欄記載の各金銭及びこ れに対する別表(10)の該当欄記載の日
○ 主文一被告A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同H、同I、同J、同K、同L及び同Mは、それぞれ朝霞市に対して、別表(9)の該当欄記載の各金銭及びこれに対する別表(10)の該当欄記載の日から完済までの年五分の金銭の支払をせよ。 二被告Aは、朝霞市に対して、金一九六四万五六〇〇円の支払をせよ。 三原告らの被告朝霞市長に対する訴を却下し、被告Aに対するその余の請求を棄却する。 四訴訟費用中、原告らと被告朝霞市長との間に生じたものは原告らの負担とし、原告らとその余の被告らとの間に生じたものは同被告らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求める裁判一原告ら 1 主文第一項と同じ 2 被告朝霞市長が、主文第一項記載の被告らに対し、朝霞市に対する同項記載の各金銭の返還請求を怠つている事実が違法であることを確認する。 3 被告Aは、朝霞市に対して、金一九六四万八九五〇〇円の支払をせよ。 4 訴訟費用は、被告らの負担とする。 二被告ら 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、原告らの負担とする。 第二当事者の主張一原告らの請求原因 1 原告らは、いずれも朝霞市の住民であり、被告Aは、昭和四二年三月から引続いて同市の市長の地位にある。 2 朝霞市は、同市立第三中学校の用地(以下「本件用地」という。)を買収する事業の一環として、別表(1)から(5)記載のとおり、昭和四六年一二月一〇日から昭和四七年二月一六日にわたり、それぞれN、O、被告G、同F、同L及び同Mの六名の地主との間に、同市<地名略>地内にある各所有土地について売買契約(以下、各契約をいずれも「本件売買契約」という。)を締結した。 3 被告市長は、本件売買契約には、契約締結後本件用地の買収事業完了までの間に、他の地主から買収する土地の価格が別表(5)記載の買収代金の価 下、各契約をいずれも「本件売買契約」という。)を締結した。 3 被告市長は、本件売買契約には、契約締結後本件用地の買収事業完了までの間に、他の地主から買収する土地の価格が別表(5)記載の買収代金の価格より値上りした場合には、その差額相当分の金銭を追加して支払う旨の特約(以下「本件特約」という。)があつたとして、前項記載の地主らに対する差額金名下で別表(7)記載の各金銭(以下「本件差額金」という。)を支出し、同(6)記載のとおり各人に支払つた。 4 その後、被告市長は、昭和四八年一二月一〇日の朝霞市同年第四回定例議会において、被告L及び同Mに支払つた本件差額金を過年度誤払返戻金として返還させたうえ、同被告らに対し、報償費としてそれぞれ同額の金銭を支払う旨の補正予算案を提出し、同月一五日これを可決する議決があつたので、同月二五日頃、同被告らから本件差額金の返還を受けるとともに、同被告らに対する報償金としてそれぞれ同額の金銭(以下「本件報償金」という。)を支出し、同被告らに支払つた。 5 しかし、まず、N、O、被告G及び同F(以下、この四名を「Nほか三名」という。)に対する本件差額金の支出は、いずれも次の理由により違法である。 (一) 本件特約は、具体的には、朝霞市とNほか三名間に作成された本件売買契約の各契約書第二条の二に「本契約締結後同事業計画完了までの間に他の土地代価について変動があつた場合は、所有権移転後といえども本代価を変動土地と同様増減するものとする。」と記載されているもの(以下、この記載を「本件特約条項」という。)であるが、本件特約条項によつては、差額金の金額を確定することができない。すなわち、当初、同市が本件用地として買収を予定した土地の面積は一万一三〇〇坪であつたが、その実現が容易でないことは、市当局も認めていたから、本件特約 つては、差額金の金額を確定することができない。すなわち、当初、同市が本件用地として買収を予定した土地の面積は一万一三〇〇坪であつたが、その実現が容易でないことは、市当局も認めていたから、本件特約条項に従うと、同市は、「事業計画完了までの間」、つまり、右面積の土地の買収が完了するまで半永久的に差額金の支払義務を負うことになり、また、右面積は理想で、適当な時期に買収を打切つて「事業完了」とするのであれば、同市は、いつでも任意の時を選んで「事業完了」の決定ができることになる。そうなると、差額金がいくらになるか、本件特約条項上判断できないことが明らかである。しかも、本件特約条項においては、差額金を算定する基準、方式が定められていないから、この点からも、差額金の金額は不確定である。 地方自治法二三四条五項には、地方公共団体を当事者とする契約は、契約書を作成しないと確定しない旨定めてあり、また、朝霞市契約規則一四条は、契約書を作成する場合に必ず記載しなければならないものとして、契約金額を掲げている。 本件売買契約の各契約書には、契約金額(別表(5))が記載されているが、本件特約条項を付することによつて契約金額が契約書上不明確なものになり、右各規定に違反する。 したがつて、そのような本件特約に基づいてされた本件差額金の支出は、その根拠を欠くことになる。 (二) 本件特約条項が契約書に記載されているのは、朝霞市の幹部職員と特別の関係にある者のみである。すなわち、Nは被告市長の父、Oは同市総務部長の父、被告Gは同部長の姉、被告Fは同市議会の与党議員である。 これに対し、同じく用地を売却しながら特別の縁故関係のない被告L、同Mその他の地主については、本件特約は付されず、契約書にも本件特約条項は記載されていない。 朝霞市が締結する同種の契約について、このよう に対し、同じく用地を売却しながら特別の縁故関係のない被告L、同Mその他の地主については、本件特約は付されず、契約書にも本件特約条項は記載されていない。 朝霞市が締結する同種の契約について、このような差異を設けることは、公平であるべき地方公共団体運営の理念に反するから、本件特約は、公序良裕に反し無効である。 (三) 朝霞市は、本件差額金について、具体的にどんな数式あるいは係数を使用して相当な価格を算出したのかを全く明らかにしていない。そうだとすれば、本件差額金は、一種のお手盛りであつて、明確な契約上の基準に従つて金額を確定して支出したものではない。この点においても、支出の根拠を欠くことになる。 (四) 本件特約の締結は、地方自治法二一四条にいう予算で定めるべき債務負担行為に当る。しかし、その債務負担行為は、本件特約のされた予算年度である昭和四六年度予算において定められていないので、無効である。 6 次に、被告L及び同Mに対する本件報償金の支出は、いずれも次の理由により違法である。すなわち、朝霞市は、本件売買契約締結前に、同被告らとの間において本件特約が口頭で約束されていたと称して、同被告らに対しても、本件差額金を支払つた。しかし、同被告らとの間に本件特約は存在しないから、本件差額金の支払について、契約上の根拠がない。仮に、口頭による約束があつたとしても、地方自治法二三四条五項、朝霞市契約規則一四条の趣旨に照らすと、契約書が作成された場合には、契約事項は契約書に明記されるべきであつて、契約書に記載のない事項は効カがないから、いずれにせよ、右支払は、違法を免れないものであつた。 ところが、前記4のとおり、同市は、同被告らに支払つた本件差額金を返還させたうえ、改めて、同被告らに本件報償金を支払つたのであるが、その金額が本件差額金と等しいこと、報 違法を免れないものであつた。 ところが、前記4のとおり、同市は、同被告らに支払つた本件差額金を返還させたうえ、改めて、同被告らに本件報償金を支払つたのであるが、その金額が本件差額金と等しいこと、報償金としては異例の高額であること及びこれに関する議案提出理由からみて、本件報償金は、実質的に本件差額金と全く同一であることが明らかである。 したがつて、本件報償金の支出は、根拠のない差額金を支払うための脱法行為であつて、このことは、その支出について議会の議決を経たことによつて左右されるものではない。 7 仮に、本件差額金及び報償金の各支出がいずれも違法でないとしても、不当である。 8 したがつて、N、O、被告G、同F、同L及び同Mは、いずれも法律上の原因がないのに別表(7)記載の各金額と同額の利益を得ているから、右六名は、朝霞市に対して、右と同額の各金銭を返還する義務がある。 9 ところで、Oは、昭和四九年一月一一日死亡し、その債権債務は、相続人である被告H、同I、同J及び同Kが各四分の一の割合で承継した。 また、Nは、昭和五一年一月七日死亡し、その債権債務は、相続人である被告Bが三分の一、同A、同C、同D及び同Eが各六分の一の割合で承継した。 10 被告朝霞市長は、その余の被告らに対して、それぞれ本件差額金(但し、Nほか三名に支払つた分)及び報償金を同市に返還するよう請求すべき義務があるのに、これを怠つている。 11 被告Aは、朝霞市長として、本件差額金(但し、Nほか三名の地主に支払つた分)合計一三六四万三四〇〇円及び報償金合計六〇〇万五五五〇円を違法又は不当に支出し、同市に対して総計一九六四万八九五〇円の損害を与えた。 12 原告らは、昭和四八年一一月一六日、朝霞市監査委員に対して、本件売買契約及び差額金の支出について監査請求をしたところ、昭和四 不当に支出し、同市に対して総計一九六四万八九五〇円の損害を与えた。 12 原告らは、昭和四八年一一月一六日、朝霞市監査委員に対して、本件売買契約及び差額金の支出について監査請求をしたところ、昭和四九年一月一四日付で同監査委員から、Nほか三名に対する本件差額金の支払は有効である旨の通知を受けた。 更に、原告らは、同年八月二二日、同監査委員に対して、被告L及び同Mに対する本件報償金の支出について監査請求をしたところ、同年一〇月二日、同監査委員から、朝霞市に対して本件報償金の返還請求を勧告しない旨の通知を受けた。 13 よつて、原告らは、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、朝霞市に代位して、(一)被告市長を除くその余の被告らに対し、それぞれ同市に対する不当利得として、別表(9)の該当欄記載の各金銭及びこれに対する同(10)の該当欄記載の各起算日(いずれも訴状送達後の日)から完済までの年五分の遅延損害金、(二)被告Aに対し、同市に対する損害賠償として、一九六四万八九五〇円の各支払を求め、更に、同条同項三号に基づき、被告市長との間において、同被告がその余の被告らに対して右(一)の各金銭の返還請求を怠つている事実が違法であることの確認を求める。 二被告らの答弁(請求原因に対する認否) 1 請求原因1から4を認める。 2 同5について(一) のうち朝霞市とNほか三名との間の本件売買契約の各契約書第二条の二に本件特約条項が記載されていることは認めるが、その余は争う。 (二) のうち、原告ら主張の各人の身分、地位関係は認めるが、その余は争う。 (三) は争う。 (四) は争う。 本件特約は、地方自治法二一四条の債務負担行為には当らない。すなわち、朝霞市においては、本件用地取得のために歳出予算が組んであつたが、本件差額金は本件用地の取得費の一部である う。 (四) は争う。 本件特約は、地方自治法二一四条の債務負担行為には当らない。すなわち、朝霞市においては、本件用地取得のために歳出予算が組んであつたが、本件差額金は本件用地の取得費の一部であるから、その支払特約の締結は、歳出予算に係る支出負担行為である。 3 同6から8は争う。 4 同9を認める。 5 同10、11は争う。 6 同12を認める。 (被告らの主張) 1 本件売買契約締結の経緯(一) 朝霞市においては、昭和四五、六年頃、人口急増が著しく中学校進学者が増えることが予想されたのに、当時市立中学校が二校しかなかつたので、新たな中学校の設立が要望されていた。そこで、同市は、昭和四六年二月二日、同市<地名略>地区に市立第三中学校を設立することを企図し、本件用地の先行取得として一万一三〇〇坪の用地買収を行なうことを決定した。 (二) 朝霞市は、本件用地買収のために、昭和四六年二月二日、同市役所において、関係地主二〇名を集めて買収説明会を開催した。その席上において、被告市長ほか市側職員が地主らに計画概要の説明を行なつたところ、地主らは、同計画の趣旨を了承し、用地買収について市側と折衝にあたる代表者一〇名を選出した。 また、その際、地主側から地価暴騰のおり最後まで売惜しみをした地主が利益を得るのではないかとの質問があつたのに対し、被告市長は、正直者が馬鹿を見ないように、計画完了までの間に買収価格が値上りしたときは、路線化方式に従つて、先の契約締結者に対してその差額を支払う旨を確答し、同月九日、同市と地主代表者との間において、各土地売買契約に本件特約を付する旨の合意が成立した。 (三) その後、朝霞市は、昭和四六年四月一五日と同年五月八日の両日、地主との打合わせ会を開いたが、売買価格について合意が成立しなかつたため、一時全体交渉を中断し、各地 を付する旨の合意が成立した。 (三) その後、朝霞市は、昭和四六年四月一五日と同年五月八日の両日、地主との打合わせ会を開いたが、売買価格について合意が成立しなかつたため、一時全体交渉を中断し、各地主との個別交渉を開始した。 そして、同市は、同年一〇月一四日、灘屋物産株式会社との間に、同市<地名略>ほか一三筆六八〇七平方メートルの土地について売買契約を締結し、次いで、被告L、O、N、被告G、同F及び同Mとの間に順次本件売買契約を締結し、灘屋物産株式会社を除くその余の地主との契約においては、同市と地主代表者間の先の合意に基づいて、本件特約を付するとともに、そのうちNほか三名の分については、各売買契約書に本件特約条項を記載した。 (四) 朝霞市は、昭和四七年四月三日、未買収地主の出席を得て、打合わせ会を再開し、最終的な買収単価である坪当り五万五〇〇〇円を提示したが、結局単価の折合いがつかなかつたため、全体交渉を最終的に打切るとともに、その席上において、地主側に対して、右金額を基準として差額金の支払をする旨を表明した。 (五) 朝霞市は、更に個別交渉を行ない昭和四七年四月五日から同月一三日にわたり、それぞれPほか二名との間に合計四三〇〇平方メートルの土地について売買契約を締結した後、同月一四日をもつて本件用地買収を打切つた。 2 本件差額金の支払について(一) 前記のとおり、Nほか三名との間の本件売買契約においては、本件特約条項を記載した契約書が作成されているから、本件特約が地方自治法二三四条五項を根拠に違法とされる余地は全くない。 そして朝霞市契約規則一四条は、その規則全体から明らかなように、競争契約が可能な場合における契約の締結に関して定めた規則であつて、本件のように、入札の方法による余地のない学校敷地の売買(市が買受人であり、売主は、市が買受 四条は、その規則全体から明らかなように、競争契約が可能な場合における契約の締結に関して定めた規則であつて、本件のように、入札の方法による余地のない学校敷地の売買(市が買受人であり、売主は、市が買受けたいと考える土地の所有者であつて、おのずから定まり、競争契約をする余地はない。)については、適用がない。 したがつて、仮に、契約金額が契約書上特定していないとしても、当該契約が無効となるか否かは、契約の一般理論から論ぜられるべきであつて、右各規定の問題ではない。 (二) 仮に、本件売買契約について朝霞市契約規則が適用されるとしても、同規則一四条二項にある「ただし、契約の性質又は目的により該当のない事項についてはこの限りではない。」の但書を併せ考えると、本件売買契約のような場合には、差額金額として具体的な数額を明記することまでも要求されるものではなく、差額金に関する定めが記載されていれば足りるものと解すべきである。 ところで、本件特約条項は、前記のように、本件用地の売渡人と買受人との間にすでに成立していた合意を、念のため一応文章にして付加したものにほかならず、この文言を加入することによつて新しい契約が締結されたものではない。 したがつて、その文言は、合意が成立した過程を考慮して合理的に解釈されるべきであつて、原告らの主張するような不確定なものではない。その理由を詳述すると、次のとおりである。 (1) 「事業計画完了までの間」とは、本件用地の買収につき一応計画したところまで終了した時点において、その時点を標準として計算をするという意味である。そして、「一応計画したところまで」とは、本件用地の取得が迅速、円満に進行している場合ならば、当初の予定計画どおり全部の用地の買収が完了した時点になるであろうが、本件では、地主は容易に買収に応じようとせず、一方朝 計画したところまで」とは、本件用地の取得が迅速、円満に進行している場合ならば、当初の予定計画どおり全部の用地の買収が完了した時点になるであろうが、本件では、地主は容易に買収に応じようとせず、一方朝霞市としても、無制限あるいは地主の要求額どおりにすべてを認容して契約することはできず、だからといつて、学校建設を途中で放棄することはなおさらできない状態に直面し、やむなく、最少限度の規模でも校舎と若干の運動場が確保でき、学校の運営が可能なところまで進行すれば、一応そこで当初の規模をあきらめて、その時点において用地買収手続を一旦打切ることになつた時点を指称する。 実際には、その時点は、前記のとおり、昭和四七年四月一四日であるが、税法上の特例措置として、同日までに買収が決まると一二〇〇万円の無条件控除があり、右期日を経過するとその措置が認められないという外的条件もあり、被告市長としては、右期日を一時点として打切ることに踏みきつた。 これを要するに、『事業計画完了までの間』とは、昭和四七年四月一四日までの間という意味である。 (2) 原告らは、「差額金算定の時期」がそうであるとしても、その具体的時期は契約締結の段階で定まらないから、差額金額もその段階では定まらないではないかと主張するかもしれないが、「具体的時期」及び具体的差額金額が契約締結の段階で定まらなければならないとする理由や要請はない(個々の地主と交渉した結果によつて決まることであるから、そもそも契約締結の段階で右時期及び差額金額を具体的年月日及び具体的数額をもつて決めることは不可能である)。そして、学校建設が可能であるとして本件用地買収を中止した時点に至れば、差額金算定において基準とすべき価格は確定するから、差額金額の算定も十分可能である。 (3) また、差額金算定方式については、土地の価格算 校建設が可能であるとして本件用地買収を中止した時点に至れば、差額金算定において基準とすべき価格は確定するから、差額金額の算定も十分可能である。 (3) また、差額金算定方式については、土地の価格算出のための公式があるものではないから、差額金が一定額に確定するような算定方式など書き表わしようがなく、特定の土地の価格は、過去における地価算定事例の積み重ね等によつておのずと決まるものである。そしてその算定においては、路線化方式も当然に加味されるが、このことは、契約書上に路線化方式の文言があるか否かにかかわりない。 およそ、契約文言は、信義に従い、常識をもつて解釈されるべきものであるから、本件売買契約の履行において常識と信義が失われなければ、差額金の算定には何の困難も生じない。 3 公序良俗違反の主張について(一) 朝霞市立第三中学校建設の要請に応じて自己の所有地を同市に売渡すことを承諾したのは、N、O、被告G、同F、同L、同M、P、Q及び灘屋物産株式会社の九名である。そしてそのうちで、差額金支払の必要があり、本件特約(口頭の分を含めて)が付されたのはO、被告G、N、被告F、同L及び同Mの六名であつた。P及びQは、『事業計画完了時』に密接する昭和四七年四月五日と同月一三日に契約し、同市の承諾しうる最大限度の価格である坪当り五万五〇〇〇円の割合で売買しているから、差額金の生ずる余地はなく、この両名については本件特約は付されていない。 また、灘屋物産株式会社については、同会社が不動産売買、仲介、幹旋を業とする営利法人であり、かつ、本件用地として売渡した土地は、すべて同会社がその直前に前所有者から買受けて仮登記をつけていたもののみであつたので、性質上、当初から差額金支払の点は問題とされなかつた。 (二) 本件特約が付されていたのに被告Lとの契約書に本 は、すべて同会社がその直前に前所有者から買受けて仮登記をつけていたもののみであつたので、性質上、当初から差額金支払の点は問題とされなかつた。 (二) 本件特約が付されていたのに被告Lとの契約書に本件特約条項が記載されていない理由は、本件特約について、将来の紛争及び第三者の誤解をさけるために、何らかの形で文章にしておいてもらいたいという要求が出されたのが、昭和四六年一二月一〇日Oとの間で契約書を作成する際、同人の代理人として列席した被告Hからであり、同日口との契約書は、その一ケ月前である同年一一月一〇日にすでに作成ずみであつたためである。もつとも、後日本件特約条項を附記することは、できないことではなかつたが、市当局としては、この点については、契約書に記載されていないとしても、すでにされた差額金支払の合意の効力には何らの消長もないという見解を持つていたので、特にその挙に出ることはしなかつた。 また、被告Mとの契約書に本件特約条項が記載されていないのは、事務処理上偶々その記載を脱漏しただけのことであつて、全く他意はない。 (三) 以上のとおりであつて、本件特約条項の記載してある契約書の地主が偶々朝霞市の幹部の関係者もしくは市議会議員であつたとしても、特にこれら特定の地主だけに差額金を支払おうと計画してされたものではない。同市としては、本件特約条項が記載されていようがいまいが、当事者間に成立した差額金支払の合意に基づいて、これを履行するつもりであつたし、また、そのとおり履行した。 4 差額金算定の根拠を欠くとの主張について土地の価格は種々の要素、要因によつて決定されるが、その要素の一つに、公道に直接面しているかどうか、すなわち、公道に面している土地を最も高く評価し、それに続く土地を順次低く評価してゆく方法がある(通常これを路線価方式と称している つて決定されるが、その要素の一つに、公道に直接面しているかどうか、すなわち、公道に面している土地を最も高く評価し、それに続く土地を順次低く評価してゆく方法がある(通常これを路線価方式と称している)。もちろん、これは、公道に面している部分が広いか狭いかということも加味される。また、本件のように、整理して学校用地に供する場合には、埋立費用の多寡、換言すれば、深い田であるか浅い田であるかなども価格決定につき考慮される要因の一である。そして、その他いろいろな要素が原因となつて、最終的には売買の双方当事者の合意に基づいて価格が決定される。 本件の場合においても、そのような諸要因につき、双方当事者間において、種々交渉を重ねた結果、価格に関する合意が成立し、契約締結に至つた。 この点は、本件差額金の具体的金額を定めるについても全く同じことであり、事業計画完了時もしくはそれに密接する時点において、地主Q及びPの各当該土地の坪当り金額が五万五〇〇〇円であるとすれば、それと比較考量して各売渡人の土地の売渡価格は結局においていくらが相当であるかを求め、その価格と契約書記載の価格との格差を計算すれば、差額金を確定することができるわけである。 したがつて、原告ら主張のように、本件特約条項によつて契約金額が不明確であるとはいえないし、本件差額金支払の根拠を欠くともいえない。 5 本件報償金の支払について(一) 各契約書に記載はなかつたが、被告L及び同Mとの間に差額金支払の合意はできていたから、朝霞市としては、右合意は書面に記載されていないため無効であるという理由で支払済の差額金を返還させ、あとは放置し、合意を信じて学校用地の買収に応じてくれた同被告らに対し何の救済措置も講じないということは、到底できることではなかつた。このことは、信義則及び公平の原則からいつても当然 額金を返還させ、あとは放置し、合意を信じて学校用地の買収に応じてくれた同被告らに対し何の救済措置も講じないということは、到底できることではなかつた。このことは、信義則及び公平の原則からいつても当然の事理であろう。 (二) そこで、同市の担当者は、同被告らの救済を図るため、差額金と同額の金銭を支払うことにつき、住民の代表者をもつて構成される議会の議決を求め、これに基づき、同被告らに差額金と同額の金銭の支払をした。もともと、「合意は拘束する」との原則に基づけば当然支払うべき差額金であつたが、書面に記載しなかつたというミスによりその支払が是認されないものとなつたところから、その不都合を是正するために、自治体における最高の機関である議会の議決を求めて支払をしたのであつて、その支出が違法視されるべき理由はない。 (三) なお、会計手続上は、「報償金」という名目で議決を得たものであるところ、原告らは、報償金としては異例の高額である旨の主張もするが、報償金については上限の定めはないし、また、実体は、前述のものであり、議会の議決を求めた際に説明もしているから、「報償金」という費目が適切であつたか否か、報償金としては異例の高額であるかどうかなどということは、議会の議決に基づく支出を違法とする根拠にはなりえない。 6 損害の不存在本件売買契約によつて、朝霞市は、何らの損害も受けではいない。すなわち、本件特約は、この特約をしなくても、契約書に買収価格として記載されている代価をもつて土地が取得できたのにあえて付した特約ではなく、本件特約を付してはじめて右買収価格をもつて本件用地としての土地が買いえたのである。そして、同市は、本件差額金及び報償金の支払をすることによつて、買収土地につき、売主あるいはその相続人から所有権移転登記の抹消登記請求や返還請求を受けるこ つて本件用地としての土地が買いえたのである。そして、同市は、本件差額金及び報償金の支払をすることによつて、買収土地につき、売主あるいはその相続人から所有権移転登記の抹消登記請求や返還請求を受けることなく、本件用地として平穏にこれを使用しているのであつて、右支払による損失を上回る利益を得ているから、結局損失はない。 およそ、不当利得返還請求権の成立には、不当利得の返還を求める側に損失があることが必要であるところ、右のように、同市には損失がないから、不当利得返還請求権は成立しない。 したがつて、被告市長に対する怠る事実の違法確認請求も理由がなく、また、同Aに対する損害賠償請求も理由がない。 第三証拠(省略)○ 理由第一被告市長に対する請求について地方自治法二四二条及び二四二条の二によると、二四二条の二第一項三号に規定する違法確認の訴は、普通地方公共団体の職員等の違法な二種類の不作為、すなわち、(ア)公金の賦課、徴収を怠る事実、(イ)財産の管理を怠る事実についてのみ認められるのであつて、公金の支出等の積極的行為については、これを対象とすることができない。 ところで、被告市長に対する本件訴は、本件差額金及び報償金(ともに公金)の支出が違法であることに基づいて、同被告がその返還請求を怠つている事実の違法確認を求めるものである。 しかし、まず、右事実が(ア)に該当しないことはいうまでもない。次に、(イ)について考えると、地方自治法にいう「財産」とは、一般に、公有財産、物品及び債権並びに基金をいうものとされる(同法二三七条一項)けれども、同法二四二条及び二四二条の二の旧規定(改正前の二四三条の二)においては、住民による監査請求及び訴訟の対象が、公金の支出その他の積極的行為に限定されていたものを、昭和三八年の改正によつて、一定の不作為についてま 及び二四二条の二の旧規定(改正前の二四三条の二)においては、住民による監査請求及び訴訟の対象が、公金の支出その他の積極的行為に限定されていたものを、昭和三八年の改正によつて、一定の不作為についてまで拡張したという立法の経緯や、同法二四二条一項には「公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分・・・・・・」とあつて、「公金の支出」と「財産の管理」とを書き分けている点からみると、公金の支出によつて生じたところの不当利得その他の返還請求権(債権)についてまで違法確認を求めることは、同法二四二条の二第一項三号の規定の予想するところではなかつたというべきであり、したがつて、同号にいう「財産」の中には、公金はもちろんのこと、支払われた公金の変形たる債権は含まれないものと解するのが相当である(そのように解しても、もともと、「公金の支出」は、それ自体、住民による監査請求及び訴訟の対象となりうるのであるから、住民に対して公金又はその変形たる広義の財産の行方を追及させようとする本制度の意義、目的に反するものとはいえない)。 そうすると、原告ら主張の事実は、法の認める二種類の本作為のどれにも該当しないから、これを対象とする本件違法確認の訴は、不適法であるといわざるをえない。 第二その余の被告らに対する請求について一争いのない事実次の事実は、いずれも当事者間に争いがない。 1 原告らは朝霞市の住民であり、被告Aは、昭和四二年三月から同市の市長の地位にある。 2 朝霞市は、本件用地買収事業の一環として、別表(1)から(5)のとおり、昭和四六年一一月一〇日から昭和四七年二月一六日にわたり、それぞれN、O、被告G、同F、同L及び同Mとの間に、同市<地名略>地内にある各所有土地について、本件売買契約を締結した。 3 その後、本件売買契約に関して、被告市長の支出行為に 二月一六日にわたり、それぞれN、O、被告G、同F、同L及び同Mとの間に、同市<地名略>地内にある各所有土地について、本件売買契約を締結した。 3 その後、本件売買契約に関して、被告市長の支出行為により、別表(6)、(7)記載のとおり、昭和四七年一〇月二一日から昭和四八年五月三一日にわたり、右六名の地主に対して本件差額金が支払われた。 4 ところが、本件差額金のうち被告L及び同Mに対する分については、昭和四八年一二月の朝霞市議会において、これを過年度誤払返戻金として退還させたうえ、同被告らに対し、報償費として同額の金銭を支払う旨の補正予算案が提出、可決され、同月二五日頃、同被告らから本件差額金の返還を受けるとともに、被告市長の支出行為により、同被告らに対して本件報償金が支払われた。 5 原告らは、それぞれ主張の日に、朝霞市監査委員に対して、本件売買契約及び差額金の支出について、更に、本件報償金の支出について、各監査請求をしたところ、いずれも原告ら主張のとおりの通知があつた。 二本件用地買収の経過成立に争いのない甲第一号証、第三号証の一から三、第四号証の一、二、証人Rの証言から成立を認める乙第一号証から第一六号証、証人S、同Rの各証言、被告H、同A本人の各供述及び弁論の全趣旨を総合すると、次の経過を認めることができる。 1 朝霞市においては、昭和四五、六年頃、人口が急増して、中学校進学者の増加が予想されたのに、当時市立中学校が二校しかなかつたので、新たな中学校の設立が要望されていた。そこで、同市は、市立第三中学校の設立を検討していたところ、灘屋物産株式会社が同市<地名略>地内に約二五〇〇坪の土地を所有して、これを市に売却したい意向を持つていたこと、また、同地区が他の二校の中間にあつて、場所も適当であつたことから、昭和四六年一月末頃には、同 産株式会社が同市<地名略>地内に約二五〇〇坪の土地を所有して、これを市に売却したい意向を持つていたこと、また、同地区が他の二校の中間にあつて、場所も適当であつたことから、昭和四六年一月末頃には、同地区において、学校用地として一万一三〇〇坪の土地を買収したうえ、生徒数一〇〇〇人程度の第三中学校を設立する方針が決定された。 2 朝霞市は、同年二月二日、同市役所において、買収予定地の地主約二〇名を集めて買収説明会を開催し、被告市長ほか市側担当職員が出席して、買収事業計画の概要を説明して、地主側に協力を求めた。そして、地主側は、以後代表者を通じて市と買収に閏する団体交渉をすることとし、代表者一〇名を選出した。 3 その後、同月九日及び同年四月一五日、同市と地主側代表者との打合わせ会が開催され、団体交渉が行なわれた。二月九日の会合においては、地主側の要請に応じて、市側は、買収単価として坪当り三万五〇〇〇円を提示したが、問題にされなかつた。なお、上記の会合の際(正確な時期は確認できない。)、被告市長が、挨拶あるいは地主との質疑中において、買収の前後によつて単価に差があつた場合、先に売つた者が馬鹿を見ないような方法をとる趣旨の発言をした事実はあつた。 4 更に、同年五月八日、打合わせ会が開催された。席上、市側は、買収単価として五万円ないし五万五〇〇〇円を提示したが、地主側に容れられなかつたので、団体交渉を中止して各地主との個別交渉を行なうこととし、その旨を地主側に伝えた。 5 朝霞市は、同年一〇月一四日、灘屋物産株式会社との間に、前記地区内の土地合計六八〇七平方メートルについて売買契約を締結し、次いで、同年一一月一〇日から昭和四七年二月一六日にわたり、順次個別交渉によつて、被告L、O、N、被告G、同F及び同Mとの間に本件売買契約を締結した。なお、Nの分 方メートルについて売買契約を締結し、次いで、同年一一月一〇日から昭和四七年二月一六日にわたり、順次個別交渉によつて、被告L、O、N、被告G、同F及び同Mとの間に本件売買契約を締結した。なお、Nの分については、被告Aが、同市長として朝霞市を代表するとともに、みずから父Nを代理して契約の調印に当つている。 ちなみに、本件売買契約における買収代金の坪当り単価は、次のとおりであつた。 被告L 四万五〇〇〇円O 四万六〇〇〇円と四万七〇〇〇円N 五万二〇〇〇円被告G 四万二〇〇〇円同F 四万六〇〇〇円同M 四万八〇〇〇円 6 ところで、昭和四六年一二月一〇日、朝霞市とOとが契約する際、同人の代理人である被告Hから、将来の紛争を避けるために、先の打合わせ会において被告市長のした発言を明文にしてもらいたいとの申出があつたため、同市の担当職員であつたR(総務部企画財政課長)は、上司の了解を得たうえで、契約書に、第二条の二として「本契約締結後同事業計画完了までの間に他の土地代価について変動があつた場合は、所有権移転後といえども、本代価を変動土地と同様増減するものとする。」との本件特約条項を挿入し、その後に締結されたN、被告G及び同Fとの本件売買契約においても、各契約書に同様に本件特約条項が記載された(Nほか三名との各契約書にのみ本件特約条項が記載された点は、被告らの認めるところである)。 7 朝霞市は、昭和四七年四月三日、未買収地主との間に打合わせ会を再開し、席上、最終的な買収単価として坪当り五万五〇〇〇円を提示したが、結局、地主側との折合いがつかなかつたため、団体交渉を打切つた。そして、更に個別交渉を行なつた結果、同月五日から一三日にわたり、P、灘屋物産株式会社及びQとの間に、合計四三〇〇平方メートル したが、結局、地主側との折合いがつかなかつたため、団体交渉を打切つた。そして、更に個別交渉を行なつた結果、同月五日から一三日にわたり、P、灘屋物産株式会社及びQとの間に、合計四三〇〇平方メートルの土地について売買契約を締結した。なお、右各売買契約における坪当り単価は、P及びQについてともに五万五〇〇〇円、灘屋物産について五万円と五万五〇〇〇円であつた。 8 他方、買収地主に対して租税特別措置法に基づく特例措置が適用される期限は、同月一四日であつた。朝霞市としては、右期限経過後に買収することは実際上困難であり、また、既買収土地だけでも第三中学校建設が可能であると判断したため、同日をもつて、本件用地買収事業を打切ることに決定した。 三本件差額金支出の適否そこで、Nほか三名に対する本件差額金の支出について検討する。 本件差額金がNほか三名との本件売買契約の各契約書に記載された特約条項、すなわち本件特約に基づいて支出されたことは、当事者間に争いがない。そして、前項6の認定によると、朝霞市とNほか三名との間には、おそくとも本件売買契約締結に際して、それぞれ本件特約が成立したものということができる。 次に、成立に争いのない乙第二〇号証の一によると、朝霞市契約規則(昭和三九年四月一日施行)は、「市の契約に関する事務については、法令その他別に定めるものを除くほか、この規則の定めるところによる。」(第一条)とし、「契約の内容が軽微で、かつ、その履行の確保が容易と認められる契約で、その金額が三〇万円をこえないとき」及び「物品を売り払う場合において、買受人が直ちに代金を納付してその物品を引き取るとき」以外には、市長は、「契約の締結につき、契約書を作成するものとする。」(一四条一項、一五条一項)と規定したうえ、その一四条二項には、契約書に掲げるべき事項として 金を納付してその物品を引き取るとき」以外には、市長は、「契約の締結につき、契約書を作成するものとする。」(一四条一項、一五条一項)と規定したうえ、その一四条二項には、契約書に掲げるべき事項として「一契約の当事者、二契約の目的、三契約金額、四契約の履行の方法、期限又は期間及び場所、五契約保証金、六契約金の支払の時期及び方法(七以下省略)」が挙げられていることが認められる。 被告らは、右規則は、競争契約が可能な場合における契約の締結に関するものであつて、本件には適用されない旨主張するが、同規則一四条一項には「市長は、一般競争入札若しくは指名競争入札により落札者を決定したとき又は随意契約の相手方と決定したときは、当該契約の締結につき、契約書を作成するものとする。」と定められており、その文言自体、同規則は、競争契約が可能な場合における契約の締結のみに限定したものでないことが明らかであるから、被告らの右主張は採用できない。 ところで、地方自治法二三四条五項は、地方公共団体が契約につき契約書を作成する場合においては、長又はその委任を受けた者が相手方とともに契約書に記名押印しなければ、当該契約は確定しないものとすると規定しているが、同規定は、地方公共団体を当事者とする契約の公共性に鑑み、契約書を作成する場合の契約成立時期を明定するとともに、特に、契約書の作成によつて契約が成立する旨をも定めたものと解される。そして、同規定と朝霞市契約規則の前掲各規定とをあわせると、朝霞市長が契約につき、契約書の作成を義務づけられる場合においては、契約金額、契約金支払の時期及び方法等の事項は、契約書上に具体的かつ明確に記載されるべきであり、契約書上の文言によつてその金額が確定できないようなものは、その限度において、契約としての効力を生じたいものと解する 金支払の時期及び方法等の事項は、契約書上に具体的かつ明確に記載されるべきであり、契約書上の文言によつてその金額が確定できないようなものは、その限度において、契約としての効力を生じたいものと解するのが相当である。 本件についてみると、契約書の作成を省略しうる場合に当らないことは明らかである。そして、Nほか三名との本件売買契約の各契約書には、契約金(買収代金)が具体的数字をもつて表示されているものの、これらに付された本件特約条項は、要するに、今後他の買収土地の単価が値上りした場合には、それと買収代金との差額を支払う(より端的にいうならば、買収代金の定めにかかわらず、今後の買収事例中の最高単価を基準として実際の買収代金とする)との趣旨に帰着するのであつて、契約書上、その差額金を算定すべき具体的時期及び方法については、何ら記載されていない。 被告らは、その具体的時期は昭和四七年四月一四日であり、算定方法は路線化方式であると主張するようであるが、これに関する証人S、同Rの各証言、被告H及び同A本人の各供述は、いずれも曖昧であつて採用しがたく、他に、前項認定の朝霞市、地主側間の団体及び個別交渉の過程において、差額金の算定時期及び方法が明確に話合われた事実については、これを確認するに足りる証拠はない。 なお、本件差額金は、実質的には買収代金の一部であり(証人Rも同趣旨を述べている。)、したがつて、本件売買契約における重要な契約金であることはいうまでもない。 そうだとすると、本件特約(特約条項)にいうところの差額金は、結局、契約書上確定することができないものであり、本件特約は、地方自治法二三四条五項及び朝霞市契約規則一四条一、二項に違反し、その効力を生じないというべきである。 したがつて、本件特約に基づいてされたNほか三名に対する本件差額金の支出は、違 あり、本件特約は、地方自治法二三四条五項及び朝霞市契約規則一四条一、二項に違反し、その効力を生じないというべきである。 したがつて、本件特約に基づいてされたNほか三名に対する本件差額金の支出は、違法を免れない。 四本件報償金支出の適否次に、被告L及び同Mに対する本件報償金の支出について検討する。 被告らは、まず、同L及び同Mに支払われた本件差額金について、各契約書に本件特約条項の記載がないことを認めながら、昭和四六年二月九日の朝霞市、地主代表者間の打合わせ会において、本件特約を付する旨の合意が成立したと主張し、証人S、同Rの各証言や、被告H、同A本人の各供述中にはこれに添う部分がある(但し、その時期については必ずしも一致しない)。 しかし、(ア) 前掲甲第三号証の一から三によると、被告市長は、昭和四八年六月開催された朝霞市議会の定例会において、議員から本件差額金の支出に関して追及された際、地主代表者との間に本件特約が成立している点については全く触れていないことが認められる。 (イ) 本件用地買収に関する市長の基本的姿勢を表明するというのであればとも角、地主側との団体交渉が緒についたばかりの時点において、被告市長が個別的な買収単価の差額支払を約束すること自体、理屈に合わないし、容易に納得しがたい。 (ハ) 地主代表者との間に合意が成立したというが、その代表者の氏名及び権限については、証拠上明らかにされていない。 (ニ) また、仮に、右合意が認められるとすれば、地主代表という以上、地主の一人である灘屋物産株式会社についても、本件特約の効力が及ぶべきであるのに、前記各証人及び本人は、いずれも同会社との間には差額金の特約がないという点で一致している。しかし、第二項に認定した団体交渉の過程において、同会社が格別除外されていた形跡は認められないの であるのに、前記各証人及び本人は、いずれも同会社との間には差額金の特約がないという点で一致している。しかし、第二項に認定した団体交渉の過程において、同会社が格別除外されていた形跡は認められないのである。 これらの点を考慮すると、被告らの前記主張に添う前掲各証言及び供述は採用することができないし、他に、これを裏付けるに足りる証拠はない。 また、証人S、同R、被告M及び同A本人は、いずれも、被告L及び同Mとの本件売買契約の際、当事者間において口頭で本件特約がされた旨を述べているが、それが各契約書に記載されなかつた理由については、説得力のある説明がなく、採用することができない。 仮に、朝霞市と被告L及び同M間に、口頭による本件特約があつたとしても、先に判示したとおり、本件差額金は、本件売買契約における重要な契約金であるから、朝霞市契約規則一四条の規定によつて、契約書に記載しなければその効力を生じないものである。 したがつて、口頭による本件特約の有無にかかわりなく、同被告らに対する本件差額金の支出は、その根拠を欠くものであつて違法である。 次に、成立に争いのない甲第二号証の三、四によると、昭和四八年一二月の朝霞市議会に提出された補正予算案中には、本件報償金(合計六〇〇万六〇〇〇円)が報償費の名目で記載され、かつ、これについて「用地提供者謝金」という説明が加えられていたことが認められ、他方、証人Sの証言及び被告A本人の供述によると、被告L及び同Mに対する本件差額金の支出については、すでに監査委員の月例出納検査において不適当であると指摘されていたこと、そのため、その差額金の支払を正当化するよう、市理事者らが善後策を講じた結果、右補正予算案中に報償費の費目を作つて予算化し、議会の議決を得たうえ、報償金という形で処理することになつたことが認められ、その め、その差額金の支払を正当化するよう、市理事者らが善後策を講じた結果、右補正予算案中に報償費の費目を作つて予算化し、議会の議決を得たうえ、報償金という形で処理することになつたことが認められ、その反証はない。 およそ、地方公共団体の議会が法の認める権限に基づき財産の処分(地方自治法九六条一項七号)について議決した場合においては、もとよりその議決は尊重されるべく、司法審査の対象外であることは当然であるが、本件は、そのような財産処分に関するものではなく、単に、長の提出したところの報償費を含む予算案について議決したにとどまるから、報償費自身に違法性があるときは、これに対する議会の議決があつても、その支払が適法な支出になる理由はない。 右に認定した事実からすると、本件報償金は、もともと違法であつた被告L及び同Mに対する本件差額金の支出を形式的に合法化するためにとられた便法にすぎず、両者は実質上全く同一である。したがつて、本件報償金の支出は、いわゆる脱法行為に当り、違法といわざるをえない。 五被告市長を除くその余の被告らの不当利得以上判示したところによると、N、O、被告G、同F、同L及び同Mは、いずれも法律上の原因がなく、朝霞市から本件差額金(前四者)又は報償金(後二者)の支払を受け、他面、同市は、右各金銭を支出したことによつて、同額の損害を蒙つたことになる。 被告らは、同市が現に本件用地を使用することによつて、本件差額金及び報償金の支出による損失を上廻る利益を得ている旨主張するが、仮に、そのような利益があるとしても、それは、無効な本件特約がなくても取得できたものであるから、右主張は理由がない。 そこで、上記六名は、不当利得金として、同市に対して、別表(7)記載の各金銭を返還すべき義務があるところ、Oが昭和四九年一月一一日死亡し、その権利義務を できたものであるから、右主張は理由がない。 そこで、上記六名は、不当利得金として、同市に対して、別表(7)記載の各金銭を返還すべき義務があるところ、Oが昭和四九年一月一一日死亡し、その権利義務を被告H、同I、同J及び同Kが各四分の一ずつ承継したこと及びNが昭和五一年一月七日死亡し、その権利義務を被告Bが三分の一、同A、同C、同D及び同Eが各六分の一ずつ承継したことは、当事者間に争いがない。 したがつて、原告らは、地方自治法二四二条の二第一項四号により、朝霞市に代位して、被告市長を除くその余の被告らに対して、別表(9)記載の各金銭とこれに対する同(10)記載の各起算日(いずれも本件訴状送達後の日である。)から各完済までの年五分の遅延損害金の支払を求めることができる。 六被告Aの不法行為上記判示したところによると、被告Aは、朝霞市長として、本件差額金(但し、Nほか三名に対する分)合計一三六四万五〇円と本件報償金合計六〇〇万五五五〇円を違法に支出して、同市に対して同額の損害を与えたものであり、これについて、少なくとも過失があることは明らかであるから、民法七〇九条により、同市に対して、総計一九六四万五六〇〇円の損害賠償をすべき義務がある。なお、市長については、その文理上地方自治法二四三条の二第一項の規定は適用されないものと解する。 したがつて、原告らは、同法二四二条の二第一項四号により、朝霞市に代位して、被告Aに対して、右総計金の支払を求めることができる。なお、原告らの請求する一九六四万八九五〇円は、計算違いと考える。 第三むすび以上のとおりであつて、原告らの被告B、同C、同D、同E、同H、同J、同K、同G、同F、同L及び同Mに対する請求は、いずれも正当であるから認容し、同Aに対する請求は、別表(9)の該当欄記載の金銭と第二、第六項記載の つて、原告らの被告B、同C、同D、同E、同H、同J、同K、同G、同F、同L及び同Mに対する請求は、いずれも正当であるから認容し、同Aに対する請求は、別表(9)の該当欄記載の金銭と第二、第六項記載の総計額との支払を求める限度において正当であるから、これを認容し、その余の部分を棄却し、同市長に対する請求は、不適法として却下することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官橋本攻一宮なほみ並木正男)別表(省略)
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