主文 1 第1審原告A3,同A17の1訴訟承継人A17の2及び第1審原告A23の本件各控訴,第1審被告B8の1保険株式会社,同B1保険株式会社,同B10保険株式会社及び同B5保険株式会社の本件各控訴をいずれも棄却する。 2 原判決中,第1審原告A3,同A17の1訴訟承継人A17の2,第1審原告A23及び同A20を除く第1審原告らの控訴に基づき,同第1審原告ら関係部分を次のとおり変更する。 (1) 第1審原告A3,同A17の1訴訟承継人A17の2,第1審原告A23及び同A20を除く第1審原告らの主位的請求をいずれも棄却する。 (2) 予備的請求その2に基づき,第1審被告B1保険株式会社は,第1審原告A1に対し,74万5350円,第1審原告A2に対し,47万0582円,第1審原告A4の1訴訟承継人A4の2に対し,43万8771円,第1審原告A5に対し,54万4885円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (3) 予備的請求その2に基づき,第1審被告B2保険株式会社は,第1審原告A6に対し,64万8165円,第1審原告A7に対し,57万3375円,第1審原告A8に対し,9万9560円,第1審原告A9に対し,54万8475円,第1審原告A10に対し,97万2800円,第1審原告A11に対し,49万8630円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (4) 予備的請求その2に基づき,引受参加人は,第1審原告A9に対し,29万8245円,第1審原告兼第1審原告A12訴訟承継人A13に対し,14万9205円,第1審原告A14に対し,24万5200円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割 し,29万8245円,第1審原告兼第1審原告A12訴訟承継人A13に対し,14万9205円,第1審原告A14に対し,24万5200円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (5) 予備的請求その2に基づき,第1審被告B4の1保険株式会社は,第1審原告A14に対し,47万5300円,第1審原告A15に対し,54万8430円,第1審原告A16に対し,109万2055円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (6) 予備的請求その2に基づき,B6の2保険株式会社訴訟承継人第1審被告B6の1保険株式会社は,第1審原告A1に対し,36万9600円,第1審原告A18に対し,67万3132円,第1審原告A19に対し,39万1345円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (7) 予備的請求その2に基づき,第1審被告B7の1保険株式会社訴訟承継人B7の2保険株式会社は,第1審原告A2に対し,9万8860円,第1審原告A19に対し,78万5740円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (8) 予備的請求その2に基づき,第1審被告B9保険株式会社は,第1審原告A21に対し,9万9080円,同A22に対し,38万9120円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (9) 予備的請求その2に基づき,第1審被告B11保険会社は,第1審原告A24に対し,99万6900円及びこれに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (10) 第1審原告A3,同A17の1訴訟承 告B11保険会社は,第1審原告A24に対し,99万6900円及びこれに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (10) 第1審原告A3,同A17の1訴訟承継人A17の2及び同A20を除く第1審原告らのその余の予備的請求その2(原審の予備的請求)をいずれも棄却する。 3 当審において追加された,第1審原告A20を除く第1審原告らの予備的請求その1(地震保険契約に基づく請求)をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,(1) 甲事件について生じた控訴費用は,第1審被告B8の1保険株式会社の負担とする。 (2) 乙事件について生じた控訴費用は,第1審被告B1保険株式会社の負担とする。 (3) 丙事件について生じた控訴費用は,第1審被告B10保険株式会社の負担とする。 (4) 丁事件について生じた控訴費用は,第1審被告B5保険株式会社の負担とする。 (5) 戊事件について生じた控訴費用中第1審原告A3と第1審被告B1保険株式会社及び同B10保険株式会社との間に生じた分は,第1審原告A3の負担とし,第1審原告A17の1訴訟承継人A17の2と第1審被告B5保険株式会社との間に生じた分は,第1審原告A17の1訴訟承継人A17の2の負担とし,第1審原告A23と第1審被告B7の2保険株式会社との間に生じた分は,第1審原告A23の負担とする。 (6) その余の訴訟費用は,第1,2審を通じて,ア第1審被告B1保険株式会社と第1審原告A1との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A2との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし 0分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A2との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A4の1訴訟承継人A4の2との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A5の間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とする。 イ第1審被告B2保険株式会社と第1審原告A6との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A7との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A8との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A9との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A10との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A11との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とする。 ウ引受参加人と第1審原告A9との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告兼第1審原告A12訴訟承継人A13との間に生じた分はこれを10分し,その9を第1審原告兼第1審原告A12訴訟承継人A13の負担とし 負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告兼第1審原告A12訴訟承継人A13との間に生じた分はこれを10分し,その9を第1審原告兼第1審原告A12訴訟承継人A13の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A14との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とする。 エ第1審被告B4の1保険株式会社と第1審原告A14との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A15との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A16との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とする。 オ B6の2保険株式会社訴訟承継人第1審被告B6の1保険株式会社と第1審原告A1との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A18との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A19との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とする。 カ第1審被告B7の1保険株式会社訴訟承継人B7の2保険株式会社と第1審原告A2との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A19との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とする。 同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A19との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とする。 キ第1審被告B9保険株式会社と第1審原告A21との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とし,同第1審被告と第1審原告A22との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とする。 ク第1審被告B11保険会社と第1審原告A24との間に生じた分はこれを10分し,その9を同第1審原告の負担とし,その余を同第1審被告の負担とする。 5 この判決は,主文2の(2)ないし(9)について仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判(甲事件) 1 第1審被告B8の1保険株式会社(以下「第1審被告B8の1保険」という。)(1) 原判決中,第1審被告B8の1保険の敗訴部分を取り消す。 (2) 第1審原告A20(以下「第1審原告A20」という。)の第1審被告B8の1保険に対する請求を棄却する。 (3) 第1審原告A20と第1審被告B8の1保険との間で生じた訴訟費用は,第1,2審とも第1審原告A20の負担とする。 2 第1審原告A20(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は,第1審被告B8の1保険の負担とする。 (乙事件) 1 第1審被告B1保険株式会社(以下「第1審被告B1」という。)(1) 原判決中,第1審被告B1の敗訴部分を取り消す。 (2) 第1審原告A3(以下「第1審原告A3」という。)の第1審被告B1に対する請求を棄却する。 被告B1 原判決中,第1審被告B1の敗訴部分を取り消す。第1審原告A3(以下「第1審原告A3」という。)の第1審被告B1に対する請求を棄却する。訴訟費用は,第1,2審とも第1審原告A3の負担とする。 第1審原告A3 本件控訴を棄却する。控訴費用は,第1審被告B1の負担とする。 (丙事件) 第1審被告B10保険株式会社(以下「第1審被告B10」という。) 原判決中,第1審被告B10の敗訴部分を取り消す。第1審原告A3の第1審被告B10に対する請求を棄却する。訴訟費用は,第1,2審とも第1審原告A3の負担とする。 第1審原告A3 本件控訴を棄却する。控訴費用は,第1審被告B10の負担とする。 (丁事件) 第1審被告B5保険株式会社(以下「第1審被告B5」という。) 原判決中,第1審被告B5の敗訴部分を取り消す。第1審原告A17の1訴訟承継人A17の2(以下「第1審原告A17の2」という。)の第1審被告B5に対する請求を棄却する。訴訟費用は,第1審,2審とも第1審原告A17の2の負担とする。 第1審原告A17の2 本件控訴を棄却する。控訴費用は,第1審被告B5の負担とする。 (戊事件) 第1審原告A20を除く第1審原告ら 主位的請求ア原判決を次のとおり変更する。(ア) 第1審被告B1は,第1審原告A1(以下「第1審原告A1」という。)に対し,1500万円,第1審原告A2(以下「第1審原告A2」という。)に対し, 判決を次のとおり変更する。 (ア) 第1審被告B1は,第1審原告A1(以下「第1審原告A1」という。)に対し,1500万円,第1審原告A2(以下「第1審原告A2」という。)に対し,950万円,第1審原告A3に対し,1500万円,第1審原告A4の1訴訟承継人A4の2(以下「第1審原告A4の2」という。)に対し,880万円,第1審原告A5(以下「第1審原告A5」という。)に対し,1100万円,(イ) 第1審被告B2は,第1審原告A6(以下「第1審原告A6」という。)に対し,1300万円,第1審原告A7(以下「第1審原告A7」という。)に対し,1150万円,第1審原告A8(以下「第1審原告A8」という。)に対し,200万円,第1審原告A9(以上「第1審原告A9」という。)に対し,1100万円,第1審原告A10(以下「第1審原告A10」という。)に対し,2000万円,第1審原告A11(以下「第1審原告A11」という。)に対し,1000万円,(ウ) 引受参加人は,第1審原告A9に対し,600万円,第1審原告兼第1審原告A12訴訟承継人A13(以下「第1審原告A13」という。)に対し,300万円,第1審原告A14(以下「第1審原告A14」という。)に対し,500万円,(エ) 第1審被告B4の1保険株式会社(以下「第1審被告B4の1」という。)は,第1審原告A14に対し,1000万円,第1審原告A15(以下「第1審原告A15」という。)に対し,1100万円,第1審原告A16(以下「第1審原告A16」という。)に対し,2868万円,(オ) 第1審被告B5は,第1審原告A17の2に対し,1000万円,(カ) 第1審被告B10は,第1審原告A3に対し,25 告A16」という。)に対し,2868万円,(オ) 第1審被告B5は,第1審原告A17の2に対し,1000万円,(カ) 第1審被告B10は,第1審原告A3に対し,2500万円,(キ) B6の2保険株式会社訴訟承継人第1審被告B6の1保険株式会社(以下「第1審被告B6の2」という。)は,第1審原告A1に対し,1000万円,第1審原告A18(以下「第1審原告A18」という。)に対し,1350万円,第1審原告A19(以下「第1審原告A19」という。)に対し,800万円,(ク) 第1審被告B7の1保険株式会社訴訟承継人B7の2保険株式会社(以下「第1審被告B7の2保険」という。)は,第1審原告A2に対し,200万円,第1審原告A19に対し,1600万円,(ケ) 第1審被告B9保険株式会社(以下「第1審被告B9」という。)は,第1審原告A21に対し,200万円,同A22に対し,800万円,(コ) 第1審被告B7の2保険は,第1審原告A23(以下「第1審原告A23」という。)に対し,5200万円,(サ) 第1審被告B11保険会社(以下「第1審被告B11」という。)は,第1審原告A24(以下「第1審原告A24」という。)に対し,2000万円,及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 イ訴訟費用は,第1,2審とも第1審被告らの負担とする。 ウ仮執行宣言(2) 予備的請求その1別表1ないし同42の「第1審被告名」欄記載の各第1審被告は,それぞれ同表「第1審原告名」欄記載の各第1審原告に対し,同表「保険金額(合計)」欄記載の各金員の5 2) 予備的請求その1別表1ないし同42の「第1審被告名」欄記載の各第1審被告は,それぞれ同表「第1審原告名」欄記載の各第1審原告に対し,同表「保険金額(合計)」欄記載の各金員の50パーセントの金員,仮にしからずとするも,同各金員の40パーセントの金員,仮にしからずとするも同各金員の30パーセントの金員及び同各金員に対する平成7年3月20日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え(当審における追加請求)。 (3) 予備的請求その2別表1ないし同42の「第1審被告名」欄記載の各第1審被告は,それぞれ同表「第1審原告名」欄記載の各第1審原告に対し,同表「保険金額(合計)」欄記載の各金員,仮にしからずとするも,同表「2次的賠償請求額」欄1行目記載の各金員及び同各金員に対する平成7年3月20日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,第1審被告らとの間で個別に火災保険契約を締結した者若しくはその相続人又は被保険者である各第1審原告らが,阪神・淡路大震災発生の際に発生した火災により同各火災保険契約の目的物が焼失したとして,主位的に同各契約に基づく火災保険金の支払を求めるとともに,予備的に,地震保険契約に基づき,主位的請求の50パーセント,仮にしからずとするも40パーセント,仮にしからずとするも30パーセントの地震保険金の支払を求め(予備的請求その1),さらに予備的(予備的請求その2)に,契約締結過程において情報提供義務・説明義務の不履行があったとして,保険募集の取締に関する法律(平成7年法律第105号による廃止前のもの〔以下「旧募取法」という。〕。以下同じ。)違反等の不法行為,債務不履行又は契約締結上の過失責任,信義則違反に基づき,損害(主位的には火災保険 に関する法律(平成7年法律第105号による廃止前のもの〔以下「旧募取法」という。〕。以下同じ。)違反等の不法行為,債務不履行又は契約締結上の過失責任,信義則違反に基づき,損害(主位的には火災保険金額相当額等の財産上の損害。予備的に精神的苦痛に対する慰謝料)の賠償を求めた事案である。 2 前提となる事実(証拠等を掲げた事項以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア第1審原告ら(訴訟承継人の場合は,被承継人。以下同じ。)及び第1審原告A7被相続人は,平成7年1月17日の阪神・淡路大震災(以下「本件地震」という。)発生当時,別表1ないし42(以下,これらの別表全部を総称するときは,単に「別表」という。)の各第1審原告の「保険の目的」欄記載の各建物(以下,別表の番号を付して「本件建物1」「本件建物2」・・・のように表示し,これらを総称するときは「本件各建物」という。)又は家財等(以下,別表の番号を付して「本件家財1」「本件家財2」・・・のように表示し,これらを総称するときは「本件各家財等」という。)を,所有(共有)又は占有していた(以下,本件各建物と本件各家財等をまとめて「本件各目的物」という。)。 イ第1審被告らは,いずれも肩書地に主たる事務所を有し,火災等の保険事業等を主たる目的とする株式会社又は相互会社で,大蔵大臣の免許を受けた損害保険会社又はその一般承継人である。 (2) 火災保険契約の締結等ア別表の「第1審原告名」欄記載の各第1審原告は,本件地震が発生するよりも前に,同表「第1審被告名」欄記載の各第1審被告との間(ただし,第1審原告及び第1審被告とも,承継関係の生じている者については,いずれも被承継人が当事者)で,同表の契約内容の欄(「契約証番号」又は「領収証番号」,「保 被告名」欄記載の各第1審被告との間(ただし,第1審原告及び第1審被告とも,承継関係の生じている者については,いずれも被承継人が当事者)で,同表の契約内容の欄(「契約証番号」又は「領収証番号」,「保険の目的」,「保険金額」,「保険料」及び「保険期間」の各欄)記載の内容の火災保険契約(以下,別表の番号を付して「本件火災保険契約1」「本件火災保険契約2」・・・のように表示し,これらを総称するときは「本件各火災保険契約」という。)を,それぞれ締結した。 ただし,別表8の契約は第1審原告A7被相続人,が締結し(乙B20の1),同人が平成7年1月17日死亡したことにより第1審原告A7がその契約上の地位を相続したものである(弁論の全趣旨)。 イ本件各火災保険契約の種類は,次のとおりである。 (ア) 住宅総合保険本件火災保険契約4,同8,同19,同20,同23,同24,同25,同32,同42(イ) 住宅火災保険本件火災保険契約,同3,同11,同18,同28,同31(ウ) 長期総合保険本件火災保険契約7,同9,同21,同22,同26,同27,同29,同30,同33,同34(エ) 月掛住宅総合保険本件火災保険契約6,同10,同12(オ) 火災相互保険本件火災保険契約同13,同14,同15,同16,同17(カ) 住宅金融公庫融資住宅等火災保険本件火災保険契約1,同2,同5(キ) 店舗総合保険本件火災保険契約35,同36,同37,同38,同39,同40,同41(3) 本件地震の発生及び本件各目的物についての被害の発生ア平成7年1月17日午前5時46分,北緯 本件火災保険契約35,同36,同37,同38,同39,同40,同41(3) 本件地震の発生及び本件各目的物についての被害の発生ア平成7年1月17日午前5時46分,北緯34度36分,東経135度03分,深さ約14キロメートルを震源とするマグニチュード7.2の本件地震が発生した。 イ同日午後2時ころ,神戸市H区U町○丁目○番○号所在の株式会社Sの倒壊店舗(木造スレート葺モルタル塗平家建。以下「S店舗」という。)から出火して火災が発生し(以下「本件火元火災」という。),これが延焼・拡大して,本件各建物(ただし,延焼当時既に倒壊・滅失していたかどうかについては争いがある。)を含む85棟の住宅・店舗等の建物が全焼するなどの被害が発生した(以下,本件火元火災と延焼・拡大した火災を合わせて「本件火災」,その火災発生区域を「本件火災現場」という。)。 (4) 本件各目的物について損害が発生した旨の第1審原告による通知ないし第1審被告の了知ア別表の「第1審原告名」欄記載の各第1審原告(ただし,次のイ記載の者を除く。)は,同表「第1審被告名」欄記載の各第1審被告に対し,それぞれ遅くとも平成7年2月17日までに,本件火災により本件各目的物に損害が発生した旨通知した。 イ(ア) 第1審被告B2は,遅くとも平成7年2月17日までに,別表6ないし12の「第1審原告名」欄記載の各第1審原告につき,前記(3)イ記載の損害が発生したことを了知していた。 (イ) 第1審被告B4の1(ただし,旧商号であるB4の2保険株式会社の時点)は,遅くとも平成7年2月17日までに,別表18の「第1審原告名」欄記載の第1審原告につき,前記(3)イ記載の損害が発生したことを了知していた(弁論 ただし,旧商号であるB4の2保険株式会社の時点)は,遅くとも平成7年2月17日までに,別表18の「第1審原告名」欄記載の第1審原告につき,前記(3)イ記載の損害が発生したことを了知していた(弁論の全趣旨)。 (ウ) 第1審被告B7の2保険(ただし,承継前第1審被告B7の1の時点)は,遅くとも平成7年2月17日までに,別表27,28の「第1審原告名」欄記載の各第1審原告につき,前記(3)イ記載の損害が発生したことを了知していた。 (5) 地震免責条項の存在本件各火災保険契約についての各普通保険約款には,いずれも,下記のような地震免責条項(以下,単に「地震免責条項」という。)が定められている(住宅火災保険普通保険約款,住宅総合保険普通保険約款,月掛住宅総合保険普通保険約款,火災保険普通保険約款〔一般物件用〕,火災相互保険〔マルマル火災保険〕普通保険約款,店舗総合普通保険普通保険約款の各第1章2条2項,住宅金融公庫融資住宅等火災保険特約条項2条2項,長期総合保険普通保険約款Ⅰ損害条項第2章10条2項)。 記「 当会社は,次に掲げる事由によって生じた損害(これらの事由によって発生した前条(保険金を支払う場合)の事故が延焼または拡大して生じた損害,および発生原因のいかんを問わず前条(保険金を支払う場合)の事故がこれらの事由によって延焼または拡大して生じた損害を含みます。)に対しては,保険金を支払いません。」「(2) 地震もしくは噴火またはこれらによる津波。」(6) 保険金請求権についての質権設定本件各火災保険契約のうち,本件火災保険契約19及び同42に基づく各保険金請求権については,順にそれぞれ は噴火またはこれらによる津波。」(6) 保険金請求権についての質権設定本件各火災保険契約のうち,本件火災保険契約19及び同42に基づく各保険金請求権については,順にそれぞれ,C信用保証株式会社,D信用保証株式会社,E信用金庫,F信用株式会社,G信用保証株式会社,株式会社H,株式会社I,株式会社J銀行のために質権が設定され,第1審被告B4の1(本件火災保険契約19について)及び第1審被告B11(本件火災保険契約42について)は,それぞれ同質権設定を承認した。 (7) 引受参加人の債務引受引受参加人は,平成13年4月2日,脱退前第1審被告B3の2保険相互会社から免責的に一切の債務を引き受け,その地位を承継した。 (8) 承継前第1審被告B7の1保険株式会社の第1審被告B7の2保険(旧商号B7の3保険株式会社)への合併による地位の承継承継前第1審被告B7の1保険株式会社は,平成13年4月1日,第1審被告B7の2保険(旧商号B7の3保険株式会社)に合併され,同月2日その旨の登記を経由し,第1審被告B7の2保険は,それに伴い,同承継前第1審被告の有する一切の権利義務を包括承継した。 (9) 承継前第1審被告B6の2保険株式会社の第1審被告B6の2(旧商号B6の3保険株式会社)への合併による地位の承継承継前第1審被告B6の2保険株式会社は,平成13年10月1日,第1審被告B6の2(旧商号B6の3保険株式会社)に合併され,同日その旨の登記を経由し,第1審被告B6の2は,それに伴い,同承継前第1審被告の有する一切の権利義務を包括承継した。 3 争点(主位的請求)(1) 地震免責条項の効力(2) 地震免責条項の意味内容(3) それに伴い,同承継前第1審被告の有する一切の権利義務を包括承継した。 3 争点(主位的請求)(1) 地震免責条項の効力(2) 地震免責条項の意味内容(3) 地震免責条項の本件における適用の有無(4) 本件各目的物の滅失は,火災によって生じた損害といえるか(本件各目的物は,本件火災による滅失の前に既に本件地震により滅失していなかったか。)。 (5) 保険金請求権に質権が設定されていることは,被保険者が保険金を請求するにつき障害となるか。 (予備的請求その1〔当審における追加請求〕)(6) 第1審被告らは,第1審原告らに対し,地震保険契約に基づき地震保険金支払義務を負うか。 (予備的請求その2)(7) 第1審被告らは,地震免責条項,地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味についての情報提供義務・説明義務違反により損害賠償責任を負うか。 (第1審原告A3の当審における追加的請求原因)(8) 第1審被告B1及び同B10は,本件建物3について,第1審原告A3以外の共有者である訴外A3の妻,同A3の長女及び同A3の次女(共有持分各10分の1)の共有持分の関係においても同第1審原告に対して火災保険契約又は地震保険契約に基づく保険金支払義務を負うか。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(地震免責条項の効力)について(第1審被告らの主張)(1) 地震免責条項の拘束力ア保険は,高度の技術的基盤の上に立ち,かつ,団体的性格を有する制度であるから,個々の保険加入者との間に個別の折衝を行うことによって保険契約の内容を定めることは不可能であるし,また,契約内容が区々にわたることは許されず,保険料や保険金も全員にとって平 を有する制度であるから,個々の保険加入者との間に個別の折衝を行うことによって保険契約の内容を定めることは不可能であるし,また,契約内容が区々にわたることは許されず,保険料や保険金も全員にとって平等かつ公平でなければならない。 これらの要請を充足し,迅速かつ大量に保険契約を締結するためには,保険会社において,全保険加入者に一律に適用する公平な契約条項を予め定めておき,個々の保険加入者がこれに従う形式を採ることが必要である。 そのため,現在の損害保険契約においては,主務官庁の監督の下,詳細な標準的約款(普通保険約款)が保険会社によって作成され,保険加入者はこれに附合することによって保険契約を締結することとされ,保険約款に基づいて保険契約が締結されたときは,保険加入者の知・不知,主観的な意思,あるいは保険会社からの格別の開示や内容についての説明の有無とは関わりなく,強行法規に抵触しない範囲において保険約款が保険加入者を拘束するものとされている。 イ相手方において予期できないほどに慣行的でなく異常な内容をもった約款条項の効力が否定されるとしても,後述するとおり,地震免責条項は十分合理的な根拠を有する。また,火災保険は期間1年で更新されることが多く,新規加入及び更新の際に地震保険加入の意思確認が行われる取扱いも30年以上継続されているところ,保険会社が整備している事務処理システムのもとで,新規加入の場合であるか更新の場合であるかを問わず,火災保険の約款は必ず契約者に送付されており,これにより地震免責条項の存在を認識し得る状況が広く形成されている。このように,火災保険は広く一般に普及しており,地震免責条項は一般に認識可能な状態となっており,予測可能なもので,非慣行的なものではない。 (2) 存在を認識し得る状況が広く形成されている。このように,火災保険は広く一般に普及しており,地震免責条項は一般に認識可能な状態となっており,予測可能なもので,非慣行的なものではない。 (2) 地震免責条項の正当性ア以下に述べるとおり,再三にわたり地震免責条項の有効性が司法的に確認されているのみならず,新潟地震の後に立法的に創設された地震保険制度は,その目的及び制度上の特色から明らかなように,地震免責条項が有効であることを当然の前提としているのであり,地震免責条項の有効性については,もはや異論を差し挟む余地はない。 (ア) 地震免責条項の根拠地震が保険になじみにくい異常危険であることは,識者の一致して認めるところであるが,その理由としては,① 地震は異常に巨大なときがあり,その損害が日本の損害保険事業の担保能力をはるかに超えることも起こり得ること(地震損害の巨大性),② 地震は,かなりの長期間を取ってみても,その発生時期,規模,場所がいずれも不規則であり,かつ,同一規模の地震でも自然条件及び社会条件によって損害額が大きく左右され,そのため,地震災害には,保険の技術的前提である大数の法則が通用せず,平均損害額の算定ができないこと(発生予測の困難性),③ 地震は地域的に頻度差が大きく,また,いったん地震が発生すれば一定地域に長期に地震が反復する傾向もみられ,それゆえ,地震の危険を強く感じる地域の人だけが集中的に保険に加入したり,危機意識のある時期だけ保険に加入するなどの傾向が生じ,危険の平均化が難しいこと(逆選択の危険),が挙げられる。 そこで,地震多発地帯に位置する日本においては,民営の保険によって地震損害を填補することが極めて困難であるため,火災保険契約におい が難しいこと(逆選択の危険),が挙げられる。 そこで,地震多発地帯に位置する日本においては,民営の保険によって地震損害を填補することが極めて困難であるため,火災保険契約においても,その発足当初から地震免責条項が規定されており,その有効性に関しては,今日では,これを否定する学説は存在せず,多数の判例もこれを認めている(大審院大正15年6月12日判決・民集5巻8号495頁等)。 (イ) 地震保険制度の創設昭和39年の新潟地震を機に,昭和41年5月18日,地震保険に関する法律(以下「地震保険法」ということもある。)が制定されたが,そこでは,(ア)記載のような問題点を回避するため,① 保険の目的を居住用建物と生活用動産に限定し,保険金額に支払限度額を設け,かつ,1回の地震についての総支払額を制限して支払保険金が過大になることを回避し,② 保険会社が一定額まで損害を填補し,これを超える分については政府の再保険制度を採用して民営ベースに乗せ,③ 地震保険を火災保険に付帯させてのみ締結することにして逆選択の防止が図られている。 そして,地震保険の保険料率は,1498年から1964年までの467年間に,日本及びその周辺で発生し災害をもたらした331の地震を参考にし,地震保険制度発足当時の被害額を想定して算定された。昭和55年の地震保険制度改定の際にも,1494年から1978年までの485年間の349の地震を基礎に損害が推定され,保険料率が算定されている。 このように,地震保険は約5世紀にわたる,異常に長い期間を料率計算の前提にし,保険金の上限を課すなどの様々な制約を設けて初めて実現可能となったもので,このことは,地震損害を現在の火災保険によって付保 このように,地震保険は約5世紀にわたる,異常に長い期間を料率計算の前提にし,保険金の上限を課すなどの様々な制約を設けて初めて実現可能となったもので,このことは,地震損害を現在の火災保険によって付保することがおよそ不可能であること,それゆえに地震免責条項が合理性を有することを端的に示している。 イまた,以下に述べるとおり,地震免責条項が保険会社を不当に利する条項となることは構造的にあり得ず,まして,公序良俗違反の問題など生じる余地はない。 (ア) 保険の財政的基盤を維持し,保険を公平かつ有意ならしめるためには,収支相当の原則(徴収する保険料の総額と支払保険金の総額とは均衡していなければならないこと)及び給付反対給付均等の原則(個々の保険加入者の事故発生の危険率等に応じて保険料の額が割り振られ,保険加入者は,その支払った保険料に応じて,すなわち保険料と対価的均衡関係にある損害の範囲においてのみ保険金の支払を受けることができるということ)が必須の根本原則である。 そのうち,収支相当の原則からの帰結として,特定の危険を免責として保険の担保範囲から除外する場合には,その保険団体においては当該危険が担保されないことを前提に収支が均衡するよう保険料率が計算されなければならない。 (イ) この理は,地震火災による損害についても例外ではなく,火災保険においては,地震損害を填補しないことを前提に,単年度内で収支が均衡するよう高い精度をもって保険料率の計算がなされている。 したがって,火災保険においては,地震損害を填補するための原資が蓄積されておらず,地震火災による損害に対する保険金の支払を拒絶しても,保険会社に特段の利得が生ずることはあり得ない。 ウそもそ って,火災保険においては,地震損害を填補するための原資が蓄積されておらず,地震火災による損害に対する保険金の支払を拒絶しても,保険会社に特段の利得が生ずることはあり得ない。 ウそもそも,火災保険によって地震火災による損害をも填補すべきか否かという問題は,約款の拘束力や有効性に関する解釈論によって解決できるような性質の問題ではなく,すぐれて保険制度改革上の問題であり,現行地震保険制度は,火災保険によって地震火災損害を填補することの問題点について十分な熟慮がなされた上で制定,整備されてきたのであって,この基本的な枠組みは解釈論によって左右し得るものではない。 (第1審原告らの主張)(1) 地震免責条項が本件各火災保険契約の契約内容として取り入れられていないこと火災保険契約を締結する顧客は火災の原因を問わず火災によって目的物に生じた損害は填補されるとの期待を有しているところ,地震免責条項はこの期待に反するものであり,顧客にとって火災保険契約締結の意味を実質的に失わせることになり得るものである。かかる重要な条項については,契約締結に当たり顧客が当該条項の意義,内容を十分理解し納得の上でそれを選択するという意思表示が存在するのでなければ個別の火災保険契約の中へ取り込まれることはない。 第1審被告らは,第1審原告らに対し,地震免責条項につき,十分な開示・説明をしていないのであり,第1審原告らは地震免責条項の意義,内容を十分理解し納得の上で本件各火災保険契約を締結したものではないから,地震免責条項は本件各火災保険契約の内容として取り入れられていない。 (2) 地震免責条項が公序良俗に反し無効であること仮に,地震免責条項が,形式的には,本件各火災保険契約の契約内容として取 件各火災保険契約の内容として取り入れられていない。 (2) 地震免責条項が公序良俗に反し無効であること仮に,地震免責条項が,形式的には,本件各火災保険契約の契約内容として取り入れられるとしても,以下のとおり,地震免責条項は,現在においてはその存在理由に乏しく,また,規定自体が漠然不明確で免責範囲が不当に広く解されるおそれがあり,結局,損害保険会社を利するだけの条項であって,大企業がその経済的優位を背景として一方的に設定する約款の条項としては,著しく正義に反し,公序良俗違反により無効である。 ア地震免責条項の存在理由等について(ア) 被保険者側あるいは被害者側に特に帰責事由がないにもかかわらず,保険者や加害者を免責するような条項の存在理由は,結局のところ,当該事業をめぐるコストと収益のバランスに帰着する。つまり,あらゆる事態に対して責任を負わなければならないとすれば,その企業にとってリスクが大きすぎ,健全な育成が実現されないことから,一定範囲の事項について責任が生じないようにするというのである。しかし,当該企業がリスクに耐え得るほどに成長した場合には,免責条項の持つ意味は薄らぎ,消費者を犠牲にするだけの時代遅れの無用の規定ということにもなってくる。 地震免責条項は,明治以来日本の損害保険事業の健全育成のために存在してきたのであるが,今日における日本の損害保険会社は,多額の資産を蓄積し,産業基盤の確立した企業体であって,もはや健全な保護,育成を図るべき発展途上の企業ではない。したがって,今日においては,地震免責条項によって損害保険会社を保護すること自体,合理性がない。 (イ) 地震免責条項そのものの存在理由としてしばしばいわれているのは,地震 はない。したがって,今日においては,地震免責条項によって損害保険会社を保護すること自体,合理性がない。 (イ) 地震免責条項そのものの存在理由としてしばしばいわれているのは,地震による損害の巨大性や地震危険の予測不可能性等の特性から,地震危険は危険分散技術としての保険数理になじまないということである。 しかし,以下のとおり,この論拠は失当である。 a 関東大震災以後もかなり頻繁に大地震は発生しているが,損害保険会社の存立の基礎を危うくするほどの大火災は全く起きておらず,むしろ,保険の対象となるフェーン現象等による大火,風水害(台風等)による建物被害の方が大規模な場合が多く,地震火災のみが免責されなければならない必然性はない。 b 日本において,平成7年上半期は,本件地震があったにもかかわらず,平成6年上半期に比べ,建物火災件数は減少しており,焼損棟数も約5000棟の増加があるにすぎないのであって,本件地震の影響は限定的であり,火災に関していえば,保険会社の存立の基礎を揺るがすような大規模な災害ではない。 c 本件地震による被害の被災者は,頼りにしていた保険金を得られず,避難生活を強いられ,あるいは二重ローンに苦しんでいるにもかかわらず,損害保険会社は,かえって大幅増収を計上している。かかる非常識,非人道的な結果をもたらしたのは,第1審被告らの地震免責条項とその運用にほかならず,その合理性は極めて疑問である。 d 本件地震後の火災の延焼拡大の防止は不可能ではなく,消防水利の確保や消防力の不足という消防体制の不備がなければ,これほどまでに延焼拡大をもたらすことはなかった。つまり,今回の震災は,天災による不可抗力というより,人間の 拡大の防止は不可能ではなく,消防水利の確保や消防力の不足という消防体制の不備がなければ,これほどまでに延焼拡大をもたらすことはなかった。つまり,今回の震災は,天災による不可抗力というより,人間の手によって防ぎ得た人災の側面が強いものであった。 e 多くの先進国では,地震による火災についても,火災保険又はそれに自動付帯される地震保険により,通常の火災の場合と同額の保険金が支払われる制度が採られているのであって,地震が火災保険制度の中で特殊な取扱いを必要とする異常危険であるとの考え方は,むしろ排除されつつあるのが世界的な傾向である。 (ウ) また,生命保険の約款においては,死亡保険等の主契約において地震免責がないのはもちろんのことであるが,地震免責が認められている災害割増特約や傷害特約その他の特約においても,「被保険者が地震,噴火,津波または戦争その他の変乱により死亡しまたは高度障害状態に該当した場合で,その原因により死亡しまたは高度障害状態に該当した被保険者の数の増加がこの特約の計算の基礎に影響を及ぼすときは,会社は,災害死亡保険金もしくは災害高度障害保険金を削減して支払うかまたはこれらの保険金を支払わないことがあります。」という表現とするか,原則免責としながらも,他方で,「被保険者が地震,噴火,津波または戦争その他の変乱により災害割増保険金の支払事由に該当した場合でも,これらの事由により災害割増保険金の支払事由に該当した被保険者の数の増加がこの特約の計算の基礎に及ぼす影響が少ないと認めたときは,会社は,その程度に応じ災害割増保険金の全額を支払い,またはその金額を削減して支払います。」という条項を置く形を取っている。そして,生命保険各社は,今回の阪神・淡路大震災については,これらの規定の適用上,保険金 度に応じ災害割増保険金の全額を支払い,またはその金額を削減して支払います。」という条項を置く形を取っている。そして,生命保険各社は,今回の阪神・淡路大震災については,これらの規定の適用上,保険金の支払を削減したり不払いとしたりする場合には該当しないとして,特約に基づく保険金の支払を行った。 (3) 地震免責条項の内容の漠然不明確性について地震免責条項は,前記第2の2(5)記載のとおりの表現になっているが,法律の専門家が読んでも,わかりづらい条項であることは一見して明らかである。 そして,第1審被告らの論によれば,地震免責条項には時的場所的限定はなく,地震と火災との間に相当因果関係があればすべて免責となるように地震免責条項は作ってあるということであるが,このような論を前提とすれば,地震による影響が多かれ少なかれ社会生活上に残っているような状況下における火災は,すべて免責となりかねない。 このような漠然不明確な条項は,健全な企業の保護・育成とか,保険数理を超えた損害を不填補とするといった,損害保険会社の唱える地震免責条項の存在意義を前提としても,行き過ぎた解釈がなされ,恣意的な運用がなされるおそれのある不当な条項である。 2 争点(2)(地震免責条項の意味内容)について(第1審被告らの主張)(1) 地震免責条項の第2類型(次の〔第1審原告らの主張〕参照)の「地震によって生じた火元の火災」には,地盤の揺れによってガス管に亀裂が生じてガス漏れを生じ,そこにタバコの火が引火して火災が発生したというような場合も含まれるし,第3類型の「火元の火災が地震によって延焼又は拡大した場合」には,地震による社会的混乱により消防力が低下して火災が拡大した場合も含まれる。 が引火して火災が発生したというような場合も含まれるし,第3類型の「火元の火災が地震によって延焼又は拡大した場合」には,地震による社会的混乱により消防力が低下して火災が拡大した場合も含まれる。 (2) 地震免責条項の第3類型は,火元火災の発生原因が何であるか,また,出火時刻が地震の前後のいずれであるかを問わず,地震により延焼拡大した火災を免責とする趣旨であって,この解釈には,以下のとおり合理的理由と文理上の根拠があり,学説上も争いのないところである。 ア第3類型の表現には,火元火災の出火時刻を地震前に限定するような文言は一切用いられていない。 イ地震の際の火災は,地震による消防力の低下により,出火と地震発生の時間的先後関係にかかわらず,その影響で延焼拡大し得るものであるが,このような場合,地震特有の危険性が発現したものとして,地震免責条項に含めて免責とするのが合理的である。 (第1審原告らの主張)以下に述べる点にかんがみると,地震免責条項にいう「地震によって」とは「地盤の揺れによって」の意味であり,かつ,その場合の「地震」とは,「地震と同時に広範囲にわたって多発的に火災が生じ,被害額自体が損害保険会社の基礎を掘り崩し,企業の存立を危うくするような地震」を意味すると解すべきであり,次の2(2)の第3類型にいう「火災」は,地震が発生する前に既に発生していたものであることを要すると解すべきである。 (1) 地震免責条項の存在意義に限局した制限的解釈ア仮に地震免責条項が無効とまではいえないとしても,前記1(第1審原告らの主張)で述べたところからすれば,地震免責条項は,地震損害の巨大性,予測不可能性がもたらす結果から損害保険会社の経営基盤を保護するという存在意義を有する限りで えないとしても,前記1(第1審原告らの主張)で述べたところからすれば,地震免責条項は,地震損害の巨大性,予測不可能性がもたらす結果から損害保険会社の経営基盤を保護するという存在意義を有する限りで適用されるべく,制限的に解釈されるべきである。 イ商法は,被保険者側に帰責事由がない場合には,戦争又は戦争に準ずる場合以外のすべての火災による損害を填補するという考え方を採っているのであり(商法665条参照),この考え方から地震免責条項を解釈すると,約款中において免責事由とされている地震とは,戦争や変乱に匹敵する広範囲の火災被害を発生させ,損害保険会社の経営基盤を危うくするような大地震を意味すると解されるのである。 (2) 一般人の合理的意思に基づく解釈ア約款の拘束力の根拠を終局的には当事者の意思の推定におく限り,約款中の条項の意味をどう解釈するかは,当事者の合理的意思によるべきことになる。 そして,約款の画一的な処理の要請からすれば,この場合の「当事者の意思」とは,個別の当事者ではなく,一般人の通常の意思(一般人ならどう認識するか)を意味すると解すべきである。 イ地震免責条項については,一般保険契約当事者であれば,そこにいう「地震による火災」,「地震による延焼」という場合の「地震」という文言は,「震災」などと同義なのではなく,文字どおり,「地盤の揺れ」を意味すると理解するものと考えられる。 具体的には,火災による損害を,地震との関係で,① 地震によって生じた火元の火災が保険の目的に与えた損害,② 地震によって生じた火元の火災が延焼又は拡大して保険の目的に与えた損害,③ 出火原因のいかんを問わず何らかの原因によって生じた火元の火災が地震によって延焼又は拡大して保険の目的に与えた た損害,② 地震によって生じた火元の火災が延焼又は拡大して保険の目的に与えた損害,③ 出火原因のいかんを問わず何らかの原因によって生じた火元の火災が地震によって延焼又は拡大して保険の目的に与えた損害,の3類型に分類すると(以下,順に,それぞれ「第1類型」,「第2類型」,「第3類型」という。),以下のように理解される。 (ア) 第1,第2類型にいう「地震によって生じた火元の火災」とは,地盤の揺れによってストーブが倒れたり,炊事中のガスの火が家の中に燃え広がって火災が発生したような場合をいうのであり,地盤の揺れによってガス管に亀裂が生じてガス漏れを生じ,そこにタバコの火が引火して火災が発生したとか,電線の被覆が破れた状態で通電が行われたためにショートして火災が発生したというような場合は,火災の発生に人為的要素が介在するので,含まれないと解すべきである。 (イ) 第3類型にいう「火元の火災が地震によって延焼又は拡大」したとは,地震の前に既に火災が発生していた建物が,地盤の揺れによって崩れて周囲に燃え広がったような場合をいうのであり,地震によって消防力が多かれ少なかれ低下した状況下で消防活動がうまくいかずに延焼を生じたような場合は,地震時の対策を行政が普段より立てておけば防ぎ得たものであり,まさに人為的要素によって火災が拡大又は延焼したものということができるから,含まれないと解すべきである。 (ウ) 要するに,いずれの類型も,地震によって建物が倒壊したのと同様に評価できるような場合を指しているのである。 (3) 「疑わしきは作成者に不利に」の解釈原則による解釈約款の条項を解釈するに当たっては,作成者が一方的に自己に有利な約款を作成しかねないという実態から,解釈によって公正 。 (3) 「疑わしきは作成者に不利に」の解釈原則による解釈約款の条項を解釈するに当たっては,作成者が一方的に自己に有利な約款を作成しかねないという実態から,解釈によって公正さを保つため,当該条項の文言からは複数の解釈が考えられる場合には,作成者に不利に解釈すべきである。 地震免責条項にいう「地震」とは,「地盤の揺れ」そのものを意味するのか,それともより広く「震災」を意味するのか,いずれにも解釈できる余地があり,紛らわしいといわざるを得ない。このような場合には,作成者たる第1審被告らに不利に,「地盤の揺れ」を意味すると解釈すべきである。 3 争点(3)(地震免責条項の本件における適用の有無)について(第1審被告らの主張)本件火元火災は地震によって発生したものであり,第1審原告らの主張する損害は,地震免責条項の第2類型,すなわち「地震によって発生した火災が延焼又は拡大して生じた損害」に該当する。仮に,本件火元火災が地震によるものとは認められないとしても,第1審原告らの主張する損害は,地震免責条項の第3類型,すなわち「発生原因のいかんを問わず,火災が地震によって延焼又は拡大して生じた損害」に該当する。 (1) 本件火元火災の地震起因性(第2類型該当性)地震による混乱が継続している間に火災が発生した場合において,自然科学的な厳密な意味での火災原因の立証を求めることは不可能を強いるものであるから,保険者(第1審被告ら)が,客観的状況から当該火災が地震に起因することの蓋然性が高いことを主張・立証すれば,これに対する効果的な反証のない限り地震起因性が認められると解すべきである。 本件火元火災は,以下のとおり,場所的・時間的に本件地震と密接に関連する状態で発生 いことを主張・立証すれば,これに対する効果的な反証のない限り地震起因性が認められると解すべきである。 本件火元火災は,以下のとおり,場所的・時間的に本件地震と密接に関連する状態で発生した火災であるから,「地震による火災」との事実上の推定を受けるが,それだけでなく,科学的にも地震起因性が高度に推定される。 よって,第1審原告ら主張に係る損害については,地震免責条項(第2類型)が適用され,第1審被告らは免責される。 ア本件地震後の火災の特徴(ア)a 例年の建物出火件数(平成5年が396件,平成6年が420件)との対比から明らかなように,本件地震当日(平成7年1月17日)の神戸市内の建物の出火件数(103件)は異常に多く,この多数の火災の原因は本件地震をおいてあり得ない。 b 本件地震後には,本件地震直後のみならず,地震の揺れがおさまった後も数時間あるいは数日にわたって,電気やガスあるいはこれらの複合等を原因とした多数の火災が,いわば五月雨的に発生している(このような傾向は,近代都市における地震火災の顕著な特徴である。)。 c 本件地震発生から3日間に発生した火災の発生箇所は,おおむね震度7かそれ以上の帯状の地域に集中しており,震度の大きな箇所と火災発生箇所との間には,明らかな相関関係が認められる。 d 大規模・長時間の地震火災は出火原因の判定が困難であることから,地震後の建物火災においては,出火原因が不明である割合が際立って高く,地震後火災の特徴となっている(本件地震後の火災についても,その多くが出火原因を特定できていない。)。すなわち,不明火とされていることは,当該火災が地震によるものであることを否定する理由とはならない。 なっている(本件地震後の火災についても,その多くが出火原因を特定できていない。)。すなわち,不明火とされていることは,当該火災が地震によるものであることを否定する理由とはならない。 (イ) 本件火元火災は,消防調査では出火原因は不明とされてはいるが,本件地震当日,地震の揺れがおさまってから約8時間後に,震度7あるいはこれを超える最も震度の強い地域で発生したものであり,本件地震に起因するものといい得る。 イ具体的出火原因について(ア) 出火前の状況S店舗(木造建物)は,本件地震により倒壊し,構造木材がむき出しになり,着火しやすい状態になるとともに,屋内には商品であるスニーカー,ズック,ケミカルシューズ等の可燃物が多数散在していた。そして,付近では,都市ガスの配管が至るところで切断されてガス漏れが生じており,ガスがS店舗の屋内に滞留していた可能性がある。また,屋内には,石油ストーブや電気ストーブがあった。さらに,建物の倒壊により,電気配線の絶縁被覆がはがれたり断線したりして線間短絡(ショート)を起こしやすい状況であった。 (イ) 出火原因ー滞留ガスへの着火本件火元火災の出火原因は,出火状況等(ガス臭,ドーンという爆発音の存在,「青い火がビャーと走ってあっという間に燃え上がった」〔乙1の8の(3)〕こと等)からすると,本件地震で切断された配管から漏れた都市ガスが屋根の下に滞留し,この滞留ガスに何らかの火源が着火し発火に至ったというものである可能性が最も高い。 その発火源は,必ずしも特定はできないものの,本件地震で停止していた通電が再開されたことによって発生した電気の火花による可能性が最も高く(神戸市内への送配電系統 性が最も高い。 その発火源は,必ずしも特定はできないものの,本件地震で停止していた通電が再開されたことによって発生した電気の火花による可能性が最も高く(神戸市内への送配電系統の第1次変電所は,地震の影響をほとんど受けておらず,本件火災現場付近の配電用変電所である甲南変電所へは,第2次変電所の神戸変電所ルートにより地震当日午前8時45分以降に,また,正規の新神戸変電所ルートでも午後1時42分以降は送電されたはずである。そして,甲南変電所の配電設備には支障がなかったので,同変電所まで送電されれば自動的にそこから各家庭へと配電供給されたと考えられる。),また,静電気により発生した火花が発火源となり着火したことも十分考えられる(静電気発生の原因としては,① 火元関係者らの着衣が倒壊した建物の内部と摩擦して帯電し,静電誘導等によって人体が帯電したこと,② 同人らの衣服,手袋等の着脱による摩擦・剥離,又はナタ・スコップ等が建物と摩擦することによって帯電し,人体が帯電したこと,③ 同人らが屋根の上等を歩行する時に屋根等との摩擦によって履物が帯電し,人体が帯電したこと,④ 同人らの着衣や履物等との摩擦によって,建物の内部や屋根部分の絶縁された金属等の導体が帯電したこと,⑤ ナタ等による瓦や壁の破壊によって建物の一部が帯電したこと,等が考えられる。)。 (ウ) その他考えられる出火原因通電再開によって電気配線の損傷箇所がショートし,近辺の可燃物に着火した可能性,地震で多量の物品が落下散乱したためスイッチが入った電気ストーブに通電され,発火した可能性,石油ストーブが地震により転倒し,ストーブ内に残っていた灯油が漏れ,何らかの火源がこれに着火した可能性も否定できない。 なお,本 が入った電気ストーブに通電され,発火した可能性,石油ストーブが地震により転倒し,ストーブ内に残っていた灯油が漏れ,何らかの火源がこれに着火した可能性も否定できない。 なお,本件火元火災発生当時にS店舗にいた火元関係人らは,発火源となるようなものを持っていなかったのであるから,同人らの失火という可能性はない。 (2) 本件火元火災が延焼・拡大したことの地震起因性(第3類型該当性)本件火元火災が延焼・拡大した理由は,以下のとおり,① 本件地震のため,火元関係者等による覚知が遅れ,また,火元関係者等による初期消火ができなかったこと,② S店舗の建物はもとより,周辺建物も本件地震により倒壊しており,火災が延焼・拡大しやすい状況にあったこと,③ 本件地震による水道の断水や防火水槽の使用不能により消火のために用いる適切な水利が存在せず,また,火災が多発し,消防力の限界を超えていたことなど,いずれも本件地震に起因する点に求めることができる。よって,第1審原告ら主張に係る損害については,地震免責条項(第3類型)が適用され,第1審被告らは免責される。 ア火元火災の覚知の遅れ及び火元関係者等による初期の消火活動本件火元火災は,本件地震により倒壊したS店舗内で発生したものであり,人の出入りも困難で,内部の見通しも悪く,火災報知器も作動しなかったため,同建物内で作業をしていた火元関係者による火災発生の覚知が遅れ,火柱が立つ状態になってからはじめて覚知された。そして,倒壊した建物の中では思うような動作もできないので,消火器による消火活動等もできず,火災覚知後はただ逃げるしかなかった。そのため,通常時ならボヤ程度ですんでいたはずの小さな炎が,火災にまで至ったのである。 な動作もできないので,消火器による消火活動等もできず,火災覚知後はただ逃げるしかなかった。そのため,通常時ならボヤ程度ですんでいたはずの小さな炎が,火災にまで至ったのである。 また,本件地震による断水のため,付近住民等もバケツリレー等による初期消火活動を行っていない。 イ火災が延焼・拡大しやすい状況が作出されていたこと本件地震により,S店舗では,容易に燃焼する材質の靴が散乱し,また,モルタル壁の剥離した構造木材がむき出しになって折り重なっていたため,火災が極めて延焼・拡大しやすい状況にあった。その結果,本件火元火災の火のまわりは極めて速いものであった。 また,本件地震により,S店舗の北隣・東隣の各建物を含む周辺建物の多くが全壊し,S店舗で発生した火災は,容易に周辺の建物に延焼し得る状態となっていた。その結果,本件火元火災は,極めて速い速度で周辺建物に延焼・拡大していった。 ウ本件地震による消防力の低下及び消防力の限界を超える同時多発火災(ア) 本件地震による消防力の低下a 消防車両到着の遅れH消防署が,本件火災を覚知して,消防車両を出動させ,それが本件火災現場に到着した時点が,まず,通常の場合に比べ相当遅れていた。ただ,この時点では,本件火元火災は,S店舗全体には拡大していなかった。 b 地震による消火栓,防火水槽の使用不能しかし,H区内全域の水道が本件地震により断水していたため本件火災現場付近すべての消火栓が利用できず,火元から南へ約220メートルの位置にある川井公園の防火水槽(以下「本件防火水槽」という。)も,水槽から採水口に至る配管が本件地震 により断水していたため本件火災現場付近すべての消火栓が利用できず,火元から南へ約220メートルの位置にある川井公園の防火水槽(以下「本件防火水槽」という。)も,水槽から採水口に至る配管が本件地震による亀裂により採水不能の状態となっていたため,消火のための放水ができなかった。 このように,消火活動の基本である放水のための採水手段が本件地震により断たれ,その結果,放水するまでに長時間が経過しており,小さな炎の段階で火災を消し止めることができず,この間,火災は燃えるにまかせる状態で火勢は強くなる一方であった。 c 他の水利現場に到着した消防隊も,他の水利を探し,f小学校のプールや付近住民の井戸の利用の可能性について報告を受けたが,同プールは午前中に発生した他の火災の消火に使用されて減水しており,大量放水ができなかった上にホース延長に難点があり,井戸水も,その利用を試みたが,3,4分の放水で水が無くなり,次に水がたまるのを待たざるを得ない状況であったため,消防水利としては,大きな期待がもてなかった。 結局,水位がわずか1ないし2センチメートルしかない天上川を堰き止めて採水するほかなかったが,消防車両2台の4線放水に十分な水圧を確保することすらできない程度の水量しかなく,しかも,建物炎上火災には最低限16線放水が必要なところ,当初は2線放水ができる程度の消防隊員しか確保できないでいた。 (イ) 消防力の限界を超える同時多発火災本件火災の消火活動に当たったH消防署では,平常時には,建物炎上火災なら最低限消防車8台(放水線16線)を出動させて消火に当たるという体制がとられていた。 そして,H 本件火災の消火活動に当たったH消防署では,平常時には,建物炎上火災なら最低限消防車8台(放水線16線)を出動させて消火に当たるという体制がとられていた。 そして,H消防署の管轄内において,本件地震発生直後より本件火災発生までに,公的に記録されているだけでも15件の火災が発生しており,そのうち,本件火災発生時においても鎮火されていなかった火災が7件もあった。 そうすると,本件火災発生当時消防車両は最低限64台(8台×8か所)必要であったことになるが,現実には,H区には消防車両が9台しかなく,加えて,他の消防署も自らの管轄内において発生した火災の消防等の対応に追われていて,他の管轄内の火災の消火について応援を望める状態ではなかった。また,他の都道府県の消防署の応援もまだ到着していなかった。 したがって,当時の消防体制では,地震発生後に同時多発する火災に対しては,消防車両や放水線が圧倒的に不足していた。すなわち,このように平時には予想できない多くの火災が同時的に発生したことは,消防力の限界をはるかに超えるものであったのである。 エ本件火元火災の延焼・拡大は,人災的側面が強いとの第1審原告らの主張について(ア) 神戸市の防火体制第1審原告らは,神戸市の防火体制に不備があったから,本件火元火災の延焼・拡大は人災的側面が強いと主張するが,評価が一方的にすぎ,当を得ていない。 a 各自治体がその予算の中で,どのような点に力点を置いて防災体制を築くのかは,行政の合理的裁量にゆだねられている。 したがって,過去に大水 ていない。 a 各自治体がその予算の中で,どのような点に力点を置いて防災体制を築くのかは,行政の合理的裁量にゆだねられている。 したがって,過去に大水害による甚大な被害を受けてきた神戸市が,いつ発生するか分からない地震よりも,水害に力点を置いて対策を立てたとしても,市民の安全を確保する方策として,あながち人災とまで非難されるほどのことはない。 b 仮に消防車両を,他の都市並みに数多く配属させていたとしても,また,仮に本件防火水槽の水利が利用できたとしても,前記ウ(イ)記載のとおり同時多発していた火災に対し,放水線が圧倒的に不足していたため,延焼・拡大を食い止めることはできなかった。 (イ) 本件防火水槽の利用の可能性第1審原告らは,本件防火水槽に貯水されていた100トンの水を,上部のマンホールから直接揚水して,これを水利として使用すれば,本件火元火災の延焼・拡大を早期に阻止できたと主張するが,結果論の域を出ない。 a 本件火災当時,現場の消防隊員にとっては,本件防火水槽の採水口から揚水できない原因が不明であるのみならず,水が残存していたこと自体も不明であった。また,消防隊員は,採水口からの揚水が不能である場合にマンホールを掘り出して揚水するという揚水方法については経験もなく,指導や訓練も受けていなかった。 したがって,現場の消防隊員にとって,マンホールからの揚水を想起すること自体が不可能であった。 b 仮に,上部マンホールからの揚水を想起し得たとしても,地中に埋まっているマンホールの位置確認やその掘り出し作業に数時間(掘り出しだけでも2時間以上)を要したと考えられ,このよ b 仮に,上部マンホールからの揚水を想起し得たとしても,地中に埋まっているマンホールの位置確認やその掘り出し作業に数時間(掘り出しだけでも2時間以上)を要したと考えられ,このような作業を行ってこれを使用することが可能となった時点では,既に本件火災は相当広範囲に延焼が拡大していたと考えられる。また,本件防火水槽を利用して現実に放水できる消防車両が大きく不足しており,仮に上部マンホールからの揚水が可能となっても,有効な消火活動はできなかった。 (ウ) その他の水利による消火の可能性第1審原告らは,井戸水等を活用すれば,消火栓や本件防火水槽が利用できなくとも,本件火元火災の延焼・拡大を防止できたかのような主張をするが,家庭用の井戸は消防水利として必要な水量が確保できない。また,他の水利(①f小学校のプール,②s川,③海水)を利用しなかったことや,天上川の水利の利用の遅れについても非難するが,もともと,これらの水利は,前記のとおり,水量の絶対量が少ないとか,安定的かつ豊富な水の供給が望めないとか,水源が出火場所から離れており,消防車のホースが届かない,などの理由から,いずれも消防水利として不十分なものである。そもそも,これらのものに消防水利を求めること自体が,本件地震による断水や本件防火水槽の損壊により適当な消防水利が失われていたことを如実に示すものである。 (3) 第1審原告らの寄与度の主張に対する反論第1審原告ら主張の寄与度に応じた保険金額の算定の主張は,不法行為の損害賠償の一般論に基づくものであり,損害保険の保険事故を規定する免責条項の解釈とは無縁の主張である。 一般の火災保険は,一般の火災を計算して成立しており,保険金を地震損害に支払うこと 損害賠償の一般論に基づくものであり,損害保険の保険事故を規定する免責条項の解釈とは無縁の主張である。 一般の火災保険は,一般の火災を計算して成立しており,保険金を地震損害に支払うことは予定されていない。したがって,一般の火災保険に地震火災損害を計算に入れることができないことは明らかである。 (第1審原告らの主張)仮に地震免責条項が適用される余地があるとしても,本件火災の発生,延焼・拡大のいずれについても本件地震との間に相当因果関係は存しない。 (1) 本件火元火災は,地震によって発生した火災ではなく,地震免責条項の第2類型の適用の余地はない。 ア本件地震当日においては,地震直後の午前5時46分から午前6時までのわずか14分の間に,同日中に発生した火災件数109件の約半数に該当する54件の火災が集中して発生しているのに対し,午前6時以降は火災発生件数が激減し,特に午前9時以降は1時間に2件平均しか発生しなかったことから,地震から8時間以上も経過して発生した本件火元火災については,その発生と地震との因果関係につき事実上の推定を受けないというべきである。 イ第1審被告らが本件火元火災の出火原因と主張するところは,いずれも認められるものではない。 第1審被告らが可能性が最も高いと主張する滞留ガスへの着火の可能性も,全く存しない。 (ア) 都市ガスの滞留について① 本件火災発生地域への都市ガスの供給は午前11時50分には完全に停止されていたこと,② S店舗にはガスは引かれておらず,ガス器具もなかったこと,③ 仮に配管に残存していたガスがありそれが漏れたことがあったとしても,本件火災現場へ供給されていた天然ガスは空気よりも軽く,上昇す こと,② S店舗にはガスは引かれておらず,ガス器具もなかったこと,③ 仮に配管に残存していたガスがありそれが漏れたことがあったとしても,本件火災現場へ供給されていた天然ガスは空気よりも軽く,上昇するものであるから,ガス供給停止後約2時間も経過した午後2時ころまでには既に上昇してしまっているはずであること,④ 仮にS店舗内においてガスが漏洩したことがあったとしても,S店舗の屋根は壊れて穴があいており,ガスはこの穴から上昇拡散してしまっているはずであること等からすれば,S店舗内に都市ガスが滞留することはない。 仮に,出火当時,S店舗内に都市ガスの漏洩があったとしても,出火直前にガスの臭いはしていなかったことからすると,S店舗内において,ガスが爆発燃焼するほどの量の都市ガスは存在していなかった。また,ガスは空気よりも軽いため空気よりも上へと上昇しようとして拡散していくのであるから,「青い火がビャーと走る」というような,ガスが直線的に存在しているかのような現象は起こり得ないはずである。 加えて,そもそも,ガスが燃焼するためには,ガスが空気と混合しその濃度が燃焼限界内にあることと同時に,着火温度に達することが必要である。しかし,後記のとおり,静電気による着火の可能性は存在しないし,送電再開による着火の可能性もない。したがって,ガスが燃焼するための着火源が存在しないのであるから,そもそもガスの漏洩の有無にかかわらず,漏洩ガスへの着火の可能性も存在しない。 (イ) 送電再開による出火の主張について本件火災現場地域(神戸市H区U町○丁目○番○号を含む地域)へは,平成7年1月17日午前5時46分の地震発生と同時に送電が停止し,同地域への送電開始は配線を管理する変電所その他 本件火災現場地域(神戸市H区U町○丁目○番○号を含む地域)へは,平成7年1月17日午前5時46分の地震発生と同時に送電が停止し,同地域への送電開始は配線を管理する変電所その他関連施設が復旧した後の平成7年1月20日17時59分である。 第1審被告ら主張の,神戸変電所ルートにより地震当日午前8時45分以降に甲南変電所に送電されたという事実はない。系統の異なる上位変電所から送電されることはなく,神戸変電所系統と新神戸変電所系統との間で切り替えはあり得ないからである。 仮に,送電がなされたとしても,配電柱(変圧器)が倒れると市中変電所が感知して,直ちに送電をストップするところ,地震当時神戸市H区町○付近では数本の配電柱が倒壊しており,それを甲南変電所が感知して送電をストップしていたはずである。仮に,甲南変電所が配電柱の異常を感知せずそのまま送電され,屋内配線が断裂して,電線と電線が接触するなど異常があったとしても,ブレーカーが直ちに作動して電気は屋内へ流れない。 以上,いずれにしても,屋内に電流が流れることはないから,電気の火花が本件火元火災の発火源になり得ないことは明らかである。 (ウ) 静電気による出火の主張について本件において物理的及び電気的に静電気出火の可能性は全く存在しない(本件火元火災発生当時の客観的,物理的環境及び当時の気象状況からして,本件において静電気出火のために必要な最小着火エネルギー0・28mJ〔天然ガス,メタン〕の可燃性物質の発生限界である約30kVにも人体の帯電量が達するとは到底考えられない。また,S店舗の建物構造や物品販売業という使用形態からして,同建物が人体等との接触により容易に帯電し静電気 メタン〕の可燃性物質の発生限界である約30kVにも人体の帯電量が達するとは到底考えられない。また,S店舗の建物構造や物品販売業という使用形態からして,同建物が人体等との接触により容易に帯電し静電気出火するとは考え難いし,ナタ等による瓦や壁の破壊によって建物の一部が帯電して出火したのであれば,火元関係者がその状況を認識していたはずである。)。 また,本件火元火災の原因が第1審被告ら主張の静電気出火ということであれば,この静電気出火は極めて特殊な電気的環境条件から生じたものと考えざるを得ないから,本件火元火災は本件地震とは何ら因果関係のない火災ということになる。 (2) 本件火元火災の延焼・拡大は本件地震に起因するものではなく,地震免責条項の第3類型の適用の余地はない。 ア本件地震後に発生した火災の大半が本件地震当日中に鎮火され,時間の経過とともに消防力が回復していた状況の中で,本件地震から8時間以上も経過した後に発生した本件火災が,大規模な延焼となったこと自体本件地震後の火災として異常であり,地震以外の何らかの延焼要因が大きく関与していたとの事実上の推定ができる。 本件地震により同程度の揺れにさらされながら,西宮市内においては,焼損床面積が5000平方メートルを超える大規模火災は1件も発生しなかった。 西宮市の消防体制が特に近代化されていたわけではなく,通常の消防体制のもとにおいては,本件地震の火災に対する影響力は本来その程度のものにすぎなかったのである。にもかかわらず,神戸市内において本件地震後発生した大規模火災,とりわけ地震後8時間以上も経過した後に発生し,焼損延べ床面積6510平方メートルにも達した本件火災は,後記のとおり,本件防火水槽を利用できなかったことや天上川の水利利 件地震後発生した大規模火災,とりわけ地震後8時間以上も経過した後に発生し,焼損延べ床面積6510平方メートルにも達した本件火災は,後記のとおり,本件防火水槽を利用できなかったことや天上川の水利利用の決断が大幅に遅延した事実に象徴されるように,人災的側面の極めて強い災害であるというほかはない。 イ(ア) 本件防火水槽の使用懈怠本件防火水槽は,S店舗から約200メートルという近距離に位置し,その中には100トンの水が確保されていた。 本件防火水槽は,本件地震により水槽から採水口に至る配管に亀裂が入ったため採水口から吸水することはできなかったものの,本件防火水槽上には直径90センチメートルのマンホールの蓋が設けてあり,その蓋を開ければホースにより容易に吸水できる構造となっていた。 本件火災現場に駆けつけた消防隊員が1人でも同マンホールの蓋を探そうとしていれば,容易に探し出すことができ(採水口が壊れた場合に備えて,本件防火水槽の採水口付近にマンホールの蓋の位置の判る図面が備え付けられていれば,蓋の位置を探し出すことはより容易であり,また,消防隊員がスコップやツルハシ等を用いてマンホールを掘り出す作業をしていれば,ごく短時間で同蓋を開け採水することが可能であった。),本件防火水槽内の100トンの水により,2線放水で約100分,4線放水で約50分放水することができ,S店舗以外の建物への延焼を防げた蓋然性は極めて高かった。 しかるに,本件火災現場に駆けつけた消防隊員は,誰一人同マンホールを探そうともせずに,採水口から吸水できなかったということだけから,本件防火水槽の利用をいとも簡単に断念してしまった。同消防隊員がマンホールの蓋を探すという発想さえもた 防隊員は,誰一人同マンホールを探そうともせずに,採水口から吸水できなかったということだけから,本件防火水槽の利用をいとも簡単に断念してしまった。同消防隊員がマンホールの蓋を探すという発想さえもたなかったのは,神戸市消防局が,日頃の消防訓練等において,防火水槽の採水口が壊れた場合にマンホールから採水する方法を周知させようとしていなかったこと等による。 なお,図面が手許になくとも,本件防火水槽の上にはマンホールの直近に,水量を確認するための神戸市消防局のマーク入りの蓋のついた点検口が地表に設置されているのであって,同点検口の位置を確認さえすれば,それが水槽上にあり,かつ,その付近にマンホールの蓋があることは自明であるから,簡単にマンホールの蓋を見付けだすことができ,さらには水量も確認することが可能であった。 (イ) 井戸の使用状況U町○付近には,少なくとも7個の井戸があるところ,K方の井戸は使用されたが,他の井戸は,住民らが消防隊員に使用するよう要請したにもかかわらず,使用されなかった。 これに対し,S店舗の西側の延焼現場においては,井戸水を使用した付近住民のバケツリレーによって消火に成功している。 (ウ) 天上川の水利利用の判断の遅れ等本件火災は,本件火災現場東側を南北に流れる天上川の水を使用した消火活動が(第1審原告ら住民の要請により)なされたことにより,一層の延焼を免れ鎮火に至った。天上川の水利を利用した消火活動においては,第1審原告ら住民も,付近のマンションに置かれてあった土嚢や住民の持ち出した布団を使って,川の水の堰き止め,ホース延長作業,交通整理等の協力をした。 しかし,h橋上に消防車を止 第1審原告ら住民も,付近のマンションに置かれてあった土嚢や住民の持ち出した布団を使って,川の水の堰き止め,ホース延長作業,交通整理等の協力をした。 しかし,h橋上に消防車を止め天上川の堰き止め作業が実際に開始されたのは,本件火災が発生し,消防車も到着してから既に約1時間近く経過した午後3時ころからと遅かった。 本件火災当日の天上川の水量は人間の足首辺りの深さまであったのであり,ホースで2階建の建物の屋根を越える位の圧力をかけられるだけの水量があった。実際,本件火災は天上川からの放水によって一層の延焼を止めることができたのであるし,その放水作業は4線放水が可能であった。 また,前記のとおり天上川の水の堰き止め作業はh橋上に止められた消防車により行われたのであるが,同橋よりも北側に位置するマンション「F」付近に消防車を止めて同じ作業を行っていれば,同マンションが火災現場から東に一直線のところにあるため,スムーズにホースをひくことが可能であった。しかし,消防車の位置の変更等は一切なされなかったため,ホースの接続に手間取り長時間を費やした。 (エ) その他さらに,本件火災現場にかけつけた消防隊員が,ホースのジョイントを間違えてH消防署に引き返し,無駄な時間を費やしたという事実もある。 ウ延焼拡大防止の可能性本件火災においては,火災発生後短時間内に数台の消防車が本件火災現場に到着していた。にもかかわらず天上川使用の決定に至るまでには長時間が経過しているのであり,この時間内にマンホールを使った本件防火水槽の使用及び天上川の使用による消火がなされていれば,延焼の防止は可能であった。 結局,消火栓の使用 るまでには長時間が経過しているのであり,この時間内にマンホールを使った本件防火水槽の使用及び天上川の使用による消火がなされていれば,延焼の防止は可能であった。 結局,消火栓の使用不能等地震による消防力の低下があったとしても,本件火災においては前記のとおり延焼拡大を防止するために実際に現場でとり得た手段が多数あった。にもかかわらず適切な消防活動がなされなかった。 このように本件火元火災が延焼した主な要因は,消防隊員の著しい怠慢(本件防火水槽のマンホールを探そうともしなかった初歩的なミス),判断ミス(天上川の水利利用の決断の大幅な遅延)等の人為的なものである。これらの人為的な延焼要因は,地震による消火活動の妨げとなる要因が存していたとしても,同要因に比較してより大きなウエイトを占めていたことが明白である。 したがって本件地震と本件火災(延焼・拡大)との相当因果関係は切断されており,本件火災は,地震とは関係のない人為的要因により発生したものであり,いわゆる人災である。 エ寄与度に応じた因果関係の認定仮に,本件火元火災の延焼・拡大につき本件地震の影響が否定できないとしても,その影響は微々たるものにすぎず,影響に応じた限度(寄与度)を超えて地震免責条項を全面的に適用することは許されない。 すなわち,本件火災の延焼拡大には,神戸市消防体制の不備,消防署員による防火水槽・f小学校のプールの水の不利用及び天井川の水の利用遅滞などの不手際等に起因するところが多く,かつ地震免責条項が難解であるのに第1審被告らからの説明が十分なされていないことなどを考慮すると,このような事案にあっては,信義則及び公平の見地から,寄与度に応じた因果関係の認定,寄与度減責,割合 かつ地震免責条項が難解であるのに第1審被告らからの説明が十分なされていないことなどを考慮すると,このような事案にあっては,信義則及び公平の見地から,寄与度に応じた因果関係の認定,寄与度減責,割合的認定,確率的認定の理論などを理論的根拠として,延焼に寄与した地震の寄与度と人為的な寄与度を考慮した保険金額の算定がなされるべきである。 4 争点(4)(本件各目的物の滅失は,火災によって生じた損害といえるか〔本件各目的物は,本件火災による滅失の前に既に本件地震により滅失していなかったか。〕。)について(第1審原告らの主張)本件火災によって,第1審原告らはそれぞれ,少なくとも別表「保険金額(合計)」欄記載の各金額に相当する損害を被った。 なお,本件各目的物のうち,第1審被告らが本件火災発生時既に滅失していたなどと主張するものの状況は,以下のとおりである。 (1) 第1審原告A1ア本件建物1本件地震の揺れにより,本件建物1の1階は西側事務所部分の天井が1部陥没し,2階部分が北西方向に傾いたものの,第1審被告B1が主張するように「2階部分が西側道路に崩れ落ちた状態」にはなっておらず,2階物干に至る階段には損傷がなく,その他,2階屋根外壁等についても損傷はなかった。 イ本件家財22第1審原告A1らは2階から直接外に出たので1階の家具の状況は確認していないが,2階南側廊下に掛けていた額縁,壁掛時計,東側和室に掛けていた色紙,西側洋間に掛けていた絵画はいずれも落下することなく無事であり,東側和室の洋服タンスは倒れたが布団の上であったので大した損傷は受けず,整理タンス,鏡台,本箱(ガラス戸付き)は倒れなかった。2階中央和室の和タンス,整理タンスも倒れなかっ することなく無事であり,東側和室の洋服タンスは倒れたが布団の上であったので大した損傷は受けず,整理タンス,鏡台,本箱(ガラス戸付き)は倒れなかった。2階中央和室の和タンス,整理タンスも倒れなかった。 (2) 第1審原告A2検甲1の写真から明らかなように,本件家財26が収容されていた建物(本件建物2)は本件地震後も倒壊していなかった。 (3) 第1審原告A19ア第1審被告B6の2関係本件建物24及び同25は,平成5年に屋根,外壁等を補修したばかりであり,検甲3の写真からも明らかなように本件地震後も倒壊することなく建っていた。 イ第1審被告B7の1保険株式会社訴訟承継人B7の2保険関係(ア) 本件建物28本件建物28は,平成5年に外壁をサイディングに張り替えたばかりであり,玄関ポーチ屋根南角が1部損傷した程度で,その他,大した損傷部分はなく,検甲3の写真からも明らかなように地震後も倒壊することなく建っていた。 (イ) 本件家財27本件家財27については,2階のテレビが転倒した程度で,タンス,冷蔵庫等は倒れず,電灯も落下しなかった。 (第1審被告らの主張)以下のとおり個別に主張するほか,第1審原告らが本件火災によりその主張に係る損害を受けたこと(本件各目的物が,本件火災による滅失の前に本件地震により滅失していなかったこと)は知らない。 (1) 第1審被告B1本件建物1(第1審原告A1関係)は,本件火災発生前に本件地震の地震動により1階部分が倒壊し,2階部分が西側道路に崩れ落ちた状態となっていたのであり,本件火災発生時には被保険利益のある目的物としてはもは 建物1(第1審原告A1関係)は,本件火災発生前に本件地震の地震動により1階部分が倒壊し,2階部分が西側道路に崩れ落ちた状態となっていたのであり,本件火災発生時には被保険利益のある目的物としてはもはや存在しておらず,そもそも火災保険金請求権自体が発生していない。 (2) 第1審被告B6の2本件建物24(同25も同一の建物)(第1審原告A19関係)は,本件火災発生前に本件地震の地震動により重大な損傷を受け,建物としての本来の機能及び価値を滅失していたのであり,本件火災発生時には被保険利益のある目的物としてはもはや存在しておらず,そもそも火災保険金請求権自体が発生していない。 (3) 第1審被告B7の1保険株式会社訴訟承継人B7の2保険本件家財26(第1審原告A2関係),本件家財27及び本件建物28(第1審原告A19関係)は,いずれも,本件火災発生前に本件地震によりその全部が滅失したものとみられる。 (4) 第1審被告B8の1保険第1審原告A20の損害評価について本件建物29は,昭和60年5月10日に新築されたもので,本件震災時点で10年近く経っており,再調達価格は1500万円であり,敷地62.57平方メートルと共に購入され,設定されている根抵当権の極度額2500万円から推定しても,建物価格は1500万円を上回ることはない。新築後約10年で,定額法で0.46,定率法で0.65の減価償却をすると,本件震災の時点における同建物の価格は,750万円程度にすぎない。また,周囲の建物が本件震災によって全半壊状態になっている点よりしても,さらに5割程度の減価をすべきである。 5 争点(5)(保険金請求権に質権が設定されていることは,被保険者が保険金を請求するにつ ,周囲の建物が本件震災によって全半壊状態になっている点よりしても,さらに5割程度の減価をすべきである。 5 争点(5)(保険金請求権に質権が設定されていることは,被保険者が保険金を請求するにつき障害となるか。)について(第1審被告らの主張)仮に第1審被告が保険金支払義務を負うとしても,火災保険金請求権に質権が設定されている場合には,当該火災保険金は直接質権者に支払われるべきものであるから,本件各火災保険契約のうち,前記第2の2(6)記載の各火災保険契約に係る第1審原告らは,火災保険金の給付を請求することができない。 (第1審原告らの主張)本件訴訟の訴訟物たる保険金請求権につき質権が設定されていることは,以下のとおり,当該第1審原告らが保険金の給付を請求するにつき障害とならない。 質権の設定によって質権設定者は質入債権を取り立てることができなくなるなどと説かれることがあるが,この質権設定者に対する拘束は,質入債権についての質権者の利益保護を目的としているものであって,同目的を超えて質権設定者の行為を制限するものでない。したがって,質権設定者が質入債権の取立てをすることができなくなるとの拘束を受けるとは,同拘束に反する行為を質権設定者が行っても質権者に対抗し得ないことを意味するにとどまり,質権設定者は,質入債権につき,第三債務者に対し給付の訴えを提起し,無条件の勝訴判決を得ることができるものである(最高裁昭和48年3月13日第三小法廷判決・民集27巻2号344頁参照)。 6 争点(6)(第1審被告らは,地震保険契約に基づく保険金支払義務を負うか〔当審において追加された予備的請求その1〕。)について(第1審原告らの主張)(1) 請求原因ア第1審原告らは,第1審被告らと 地震保険契約に基づく保険金支払義務を負うか〔当審において追加された予備的請求その1〕。)について(第1審原告らの主張)(1) 請求原因ア第1審原告らは,第1審被告らとの間で,それぞれ別表記載の本件火災保険契約に付帯して地震保険契約を締結した。 イ第1審原告ら所有の本件建物ないし動産は,平成7年1月17日,地震を直接又は間接の原因とする火災によって焼失し,第1審原告らは,それぞれ別表「保険金額」欄記載の各火災保険金額の各50パーセントに当たる地震保険金額以上の損害を被った。 ウ第1審原告らは,第1審被告らに対し,平成7年2月17日までに,本件火災による損害の発生を通知した。 エ第1審被告らは,第1審原告らに対し,前記地震保険契約に基づき,通知の日から30日以降に当たる平成7年3月19日には地震保険金支払義務を負担するに至った。 オよって,第1審原告らは,第1審被告らに対し,第1次的に別表記載の各火災保険金額の各50パーセントに当たる地震保険金,第2次的に各火災保険金額の各40パーセントに当たる地震保険金,第3次的に各火災保険金額の各30パーセントに当たる地震保険金及び各金員に対する平成7年3月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。 (2) 地震保険契約の成立について(原則付帯方式)ア契約者において,保険会社から開示説明された情報をもとに,特に,①地震保険を取り外した場合の危険性,すなわち極めて広範な免責を規定する地震免責条項が火災保険約款中に存在するため,地震後の火災には保険金は一切支払われないことになるであろうという,地震保険付帯の動機付け要因と,② 地震保険を取り外した場合のメリット な免責を規定する地震免責条項が火災保険約款中に存在するため,地震後の火災には保険金は一切支払われないことになるであろうという,地震保険付帯の動機付け要因と,② 地震保険を取り外した場合のメリット,すなわち地震保険を取り外すとその分だけ保険料が安くて済むという,地震保険不付帯の動機付け要因とを比較考量の上,不填補の危険を覚悟で地震保険不付帯を決意した場合には,「地震保険を申し込みません」との欄に押印がなされ,これが地震保険契約不付帯の申し出となる。 すなわち,地震保険を不付帯にするについては,特別の意思表示が必要となる。 イ地震保険契約の締結には,家計火災保険契約締結の意思表示とは別個の意思表示を要するものでないことは,地震保険契約について法律上単独では申し込むことができず,必ず他の家計火災保険に付帯されるものとされており(地震保険法2条2項3号),しかも地震保険の引受方式に関する約款上,その引受方式として原則付帯方式という販売方法が採られている結果,火災保険契約申込みの意思表示がなされると同時に,それに包含される形で地震保険契約の申込みの意思表示がなされる仕組みとなっているのであるから,保険契約者が家計火災保険のみに着目し,地震保険を意識しなかったとしても,地震保険が付帯された火災保険契約が成立する。 (3) 地震保険不付帯の意思表示についてア地震保険確認欄の趣旨地震保険確認欄は,保険契約者の意思をより明確に確認することによって,地震保険の契約漏れを防止する一方,災害時の保険金支払に当たって地震保険付帯の有無に係るトラブル発生の未然防止を図る目的で導入されたものである。 この契約を付帯しない旨の申し出は,必ず地震保険確認欄への押印の方法によらなけ 保険金支払に当たって地震保険付帯の有無に係るトラブル発生の未然防止を図る目的で導入されたものである。 この契約を付帯しない旨の申し出は,必ず地震保険確認欄への押印の方法によらなければならないとされる一種の要式行為である。 イ地震保険確認欄への押印(ア) 押印と意思表示の関係第1審被告らが,地震保険の存在・内容,地震保険確認欄への押印の意味等の情報提供義務の履行を怠った状況下で,第1審原告らないしその代行者が地震保険確認欄に印鑑を押捺したとしても,それをもって,第1審被告らが本争点に関する「第1審被告らの主張」の(4)で主張する事業方法書所定の「この契約を付帯しない旨の申し出」がなされたとみることはできない。 (イ) 第1審原告らは,地震保険確認欄への押印という表示行為によって,地震保険不付帯の法律効果をもたらそうという内心的効果意思を有しておらず,また,第1審被告らに対してこの効果意思を表示しようとする表示意思をも有していなかった。 すなわち,第1審被告らは,第1審原告らに対し,情報面での著しい格差,地震保険及び損害保険会社の公共性,旧募取法を初めとする実定法規の趣旨,原則付帯方式の採用などの結果,地震保険の存在とその内容及び地震保険確認欄への押印によって地震保険不付帯の法律効果が生じることについて情報を提供するべき信義則上の義務を負担していたにもかかわらず,この情報提供を行わなかった。そのため第1審原告らは,地震保険の存在はもとより,地震保険確認欄への押印の法的意味も知らなかった。第1審原告らは,地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味について了知する機会を一切与えられていなかったからである。本件における地震保険確認欄への押印は 保険確認欄への押印の法的意味も知らなかった。第1審原告らは,地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味について了知する機会を一切与えられていなかったからである。本件における地震保険確認欄への押印は,意思表示として不成立・無効であるから,地震保険不付帯の法律効果を発生させない。 (ウ) 第1審原告らの地震保険確認欄への押印と私文書の真正の推定が働かないことについて以下のとおり,第1審原告ら名義の地震保険確認欄への署名押印は,地震保険不付帯の意思表示として不成立か無効である。 a 第1審原告らの手又は印鑑による署名押印でないもの第1審原告A11,同A5,同A9の地震保険確認欄への印影は,いずれも各第1審原告らの所持する印鑑によって顕出されたものではない。また,第1審原告A6については,地震保険確認欄に押印がなく,保険代理店が勝手にした手書きのサインがあるのみである。 b 保険代理店が預託されていた第1審原告らの印鑑を,委任の趣旨に反して押印したもの第1審原告A7,同A6,同A13,同A9,同A8の各地震保険確認欄の印影は,いずれも,同原告らが一般の火災保険契約締結のために保険代理店に預託した印鑑を保険代理店が情報提供・説明義務に違反して,無断で,地震保険確認欄に押捺したものである。 c 保険代理店から委託された金融機関が預託されていた第1審原告らの印鑑を,委任の趣旨に反して押印したもの第1審原告A1,同A2の各地震保険確認欄の印影は,いずれも,同原告らが一般の火災保険契約締結のために保険代理店から委託を受けた金融機関の従業員に預託した印鑑を,同従業員らが情報提供・説明 第1審原告A1,同A2の各地震保険確認欄の印影は,いずれも,同原告らが一般の火災保険契約締結のために保険代理店から委託を受けた金融機関の従業員に預託した印鑑を,同従業員らが情報提供・説明義務に違反して,無断で,地震保険確認欄に押捺したものである。 d 盲判ないし捨印類似の事案第1審原告A15,同A17の2,同A16,同A22,同A21,同A2,同A10,同A19,同A14,同A18,同A24の各地震保険確認欄の印影は,同原告ら自らないしはその委託を受けた者らが自ら押印したものである。しかしながら,同人らは,いずれも第1審被告らからの情報提供・説明を受けることなく,地震保険の存在・意味すら知らないまま押印をしたのであるから,各押印は,意思表示としての実質を欠き,意思の欠缺ないしは表示上の錯誤に当たるから,地震保険不付帯の法律効果を生じない。 (4) 地震保険金額の選択ア地震保険契約の保険金額は,それが付帯される主契約の30ないし50パーセントに相当する範囲内で(地震保険法2条4号),かつ,保険目的物が居住用建物の場合には1000万円,生活用動産の場合には500万円を上限として(地震保険約款4条2項),決定される仕組みとなっている。 イ第1次的には,主契約の約定保険金額の50パーセント相当額が黙示的に選択されていると主張する。 第2次的には,第1審原告らが,地震保険金額について特定していないとすれば,民法401条1項が,種類債権について当事者が品質を定めなかった場合に中等の品質の給付を求めている趣旨にかんがみ,これを類推して地震保険契約の保険金額が主契約の約定保険金額の30パーセントから50パーセントの範囲内とされているところから,そ 品質を定めなかった場合に中等の品質の給付を求めている趣旨にかんがみ,これを類推して地震保険契約の保険金額が主契約の約定保険金額の30パーセントから50パーセントの範囲内とされているところから,その「中等」として,主契約の約定保険金額の40パーセント相当額が選択されていると主張する。 第3次的には,第1審原告らが地震保険不付帯の意思表示をしていない以上,ともかく地震保険契約は成立しているところ,地震保険金額については最下限でも主契約の約定保険金額の30パーセントとされているのであるから,これが選択されていると主張する。 (5) 地震保険料についての弁済の提供本件のような地震保険金請求にあって,第1審被告ら損害保険会社が,地震保険契約の成立を前提としつつ,地震保険約款2条3項(当会社は,保険期間が始まった後でも,この保険契約の保険料とこの保険契約が付帯されている保険契約の保険料とを合算した保険料領収前に生じた事故による損害に対しては,保険金額を支払いません。)を抗弁として援用することは許されない。 (第1審被告らの主張)第1審原告らは,一般の火災保険契約において,地震保険確認欄への押印による不付帯の意思表示が不成立であったり,瑕疵がある場合には,自動的に地震保険契約が成立するとして,「原則付帯」方式が採られている旨主張するけれども,そのような解釈を採り得ないことは以下のとおりである。 (1) 地震保険は,国民一般の生活の安定に資するために,昭和41年に成立した地震保険法によって運営されており,国が関与し,大蔵省が責任をもっているものである。地震保険は大数の原則に乗らないため,本来民営事業として成立しないところを,国民生活の安定を図るため国が関与する形で現行の地震保険制度が作られ おり,国が関与し,大蔵省が責任をもっているものである。地震保険は大数の原則に乗らないため,本来民営事業として成立しないところを,国民生活の安定を図るため国が関与する形で現行の地震保険制度が作られた。 (2)ア地震保険は,一般の火災保険と同時にしか加入できず保険金額は火災保険のそれの半額以下とされる,一般の火災保険とは別個の保険で,別個の保険料の支払が必要である。 イ地震保険契約の締結について法令が定めるところは次の2点である。 a 特定の損害保険契約に付帯して締結されること(地震保険法2条2項3号)b 特定の損害保険契約とは,火災保険,火災相互保険,建物更新保険,満期戻長期保険であること(同法施行規則1条2項)すなわち,法令上,地震保険契約は単独では締結せず,必ず特定の損害保険契約に付け添えて締結する旨定められているけれども,特定の損害保険に加入すれば当然に地震保険契約が成立する旨定めるものはない。 ウしたがって,特定の損害保険に加入すれば当然地震保険が成立する旨の第一原告らの主張は,その法的根拠を欠く。 (3) 事業方法書各保険会社は,事業方法書において,地震保険契約の締結方法について概ね,次のとおり定めている。 「当会社は,地震保険の元受保険を法第2条第2項第3号の規定に従い,普通か再保険に付帯して引き受ける。ただし,保険契約者からこの契約を付帯しない旨の申し出があった場合はこの限りではない。」この規定の趣旨は,特定の火災保険契約を締結する時にそれに付け加える形で地震保険契約を引き受けることを明示し,強制加入の制度は採用しないことを規定するものにすぎない。 (4) 損害保険契約の成立要件 の趣旨は,特定の火災保険契約を締結する時にそれに付け加える形で地震保険契約を引き受けることを明示し,強制加入の制度は採用しないことを規定するものにすぎない。 (4) 損害保険契約の成立要件保険金額と保険料とを確定することは損害保険契約成立のための最低限度の要件であり,この定めがない限り損害保険契約が成立する余地はない。 地震保険契約の制定後,昭和55年7月の法改定によって,その保険金額は主たる契約の30パーセントから50パーセントの間で任意に選択できることとなった(地震保険法2条2項4号)から,地震保険については別途,保険金額及び保険料の確定を要することとなった。 したがって,地震保険契約の成立要件をみても,主たる契約である火災保険契約が成立したからといって当然に地震保険契約が成立するはずがない。 (5) 地震保険確認欄を火災保険申込書に設けたのは,2つの保険の申込みを同一の書面で行うための書式にすぎない(単独の地震保険は存在しないのであるから,地震保険単独の申込書は煩瑣になる。)。このように,地震保険の契約締結の書式が通常の火災保険と同一の申込書面上に記載されているとしても,地震保険の加入には独立の意思表示が必要であることはいうまでもない。 (6)ア第1審原告らは,① 地震保険は,法律上単独で申し込むことができず,他の火災保険に付帯させるものとされており,② 引受方式は原則付帯方式であるから,火災保険契約申込みの意思表示がなされると同時に,それに包含される形で地震保険契約の申込みの意思表示がなされる仕組みとなっている旨主張する。 しかしながら,①の方式が採られているのは,地震保険単独では募集コストが保険料に上積みされ,地震保険制度の存立がほとんど不可能とな の意思表示がなされる仕組みとなっている旨主張する。 しかしながら,①の方式が採られているのは,地震保険単独では募集コストが保険料に上積みされ,地震保険制度の存立がほとんど不可能となるため,募集コスト削減のため同一の機会に加入する制度としているにすぎないのであるから,他の火災保険に加入すれば,当然に地震保険にも加入することを意味するものではない。 イ実際上,地震保険契約の成立のためには,付保額を30パーセントから50パーセントの間で額を選択する必要があるところ,第1審原告らはその選択をしていないのみならず,第1審原告らは,すべて,地震保険に加入しない欄に押印をしているのであるから,常識的に見ても地震保険契約の締結はあり得ない。 ウ第1審原告ら主張の原則付帯方式のような定めは,一般の火災保険の約款及び地震保険の約款のいずれにも存在しない。 エ昭和55年以来,地震保険を自動付帯とする火災保険種目は存在しない。 7 争点(7)(第1審被告らは,地震免責条項,地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味についての情報提供義務・説明義務違反により損害賠償責任を負うか〔予備的請求その2〕。)について(1) 地震免責条項の情報提供・説明義務について(第1審原告らの主張)ア仮に地震免責条項の適用によって第1審被告らに火災保険金の支払義務が認められないとしても,第1審被告らは,第1審原告らに対し,保険契約締結時又は更新時に地震免責条項に関して説明をしなかったこと(情報提供義務の不履行)により,損害賠償責任を負う。このような情報提供義務不履行による損害賠償責任は,主としてワラント取引や変額保険取引において論じられてきたものであるが,保険契約においても妥当する。 不履行)により,損害賠償責任を負う。このような情報提供義務不履行による損害賠償責任は,主としてワラント取引や変額保険取引において論じられてきたものであるが,保険契約においても妥当する。 (ア) 地震免責条項に関する情報提供義務の根拠損害保険会社である第1審被告らは,消費者たる第1審原告らに対し,以下に述べる自己決定権の保障,事業者の社会的責任,約款作成者の責任の各観点から,地震免責条項に関する情報につき提供すべき義務がある。 a 自己決定権の保障現代社会における契約内容の複雑化・専門化,製品・サービスの専門化,約款取引の一般化,そこにおける事業者と消費者との間の情報量及びその分析能力の格差を考えるならば,必要な情報収集は自己の責任において行うべきものとする私的自治の原則をすべての契約について適用すると,情報力において劣る当事者(消費者)は,自己の目的に適合的な契約を選択する自由を実質的に奪われる。このような自己決定権を剥奪された状況下での意思表示によっては,消費者が契約的拘束を受けることを正当化することはできない。そこで,対事業者取引における消費者の自己決定権を保障し,私的自治を実質的なものにする観点から,事業者に情報提供義務が課される。 b 事業者の社会的責任事業者は,当該事業に精通した専門家として,それに関する知識のない一般消費者を顧客として事業を展開し利益をあげているのであり,消費者が事業者に寄せる社会的信頼に応え,情報面で事業者に依存せざるを得ない消費者に対し情報を提供すべき責任がある。 特に,損害保険事業は,免許がなければ営むことができない事業であり(旧保険業法〔平成7年法 応え,情報面で事業者に依存せざるを得ない消費者に対し情報を提供すべき責任がある。 特に,損害保険事業は,免許がなければ営むことができない事業であり(旧保険業法〔平成7年法律第105号による改正前の保険業法をいう。以下同じ。〕1条,新保険業法〔平成7年法律第105号による改正後の保険業法をいう。以下同じ。〕3条1項),免許に基づき特別の社会的地位を得て保険事業を営む損害保険会社としては,事業者の責任として,消費者に対して自らが販売する商品である保険の内容につき情報を提供すべき義務がある。 また,旧募取法16条1項(新保険業法300条1項)は,保険契約者の保護の目的で,保険会社の情報提供義務を明示的に規定しているものと解されるが,これは,情報力における消費者と保険会社との構造的格差を前提として,消費者の保険会社に対する依存の必然性から,保険会社に寄せられる社会的信頼を保護するため,保険会社の義務として情報提供の責任を明文で課したものである。 c 約款作成者の責任さらに,保険のような約款が使用される取引では,約款作成者たる保険会社とその顧客たる消費者との間で約款条項に関する情報量には格段の差があり,この格差は約款作成者たる保険会社によって作り出されたものであるから,保険会社は,当事者間の情報における平等を回復すべく,より高度の情報提供義務を負う。したがって,保険会社が約款を使用して消費者と契約をする場合は,消費者が契約を締結するかどうかの判断に影響を与え得る事実について,約款内容を具体的に説明する義務を負うべきものである。保険会社として約款中に免責条項を定める場合には,当該免責条項発動の必要性及び可能性についても調査し,消費者に対し,説明すべき 得る事実について,約款内容を具体的に説明する義務を負うべきものである。保険会社として約款中に免責条項を定める場合には,当該免責条項発動の必要性及び可能性についても調査し,消費者に対し,説明すべき責務がある。 (イ) 損害賠償責任の根拠約款内容の重要事項につき情報提供義務の不履行があった場合,保険会社は,消費者に対し,旧募取法11条1項,不法行為,債務不履行又は契約締結上の過失責任に基づき,損害賠償責任を負う。 そして,地震免責条項は,保険金の支払の有無に直接関わる,保険の内容の最も基本的な部分であり,第1審被告らは,第1審原告らに対し,地震免責条項に関し,説明を全くしなかったり,不十分な説明をしたにすぎなかったものであるから,損害賠償責任を負う。 イ損害額第1審被告らは,地震免責条項に関する情報提供義務違反により,第1審原告らに対し,次の(ア)のとおり,地震免責条項がなかった場合に火災保険契約上支払われるべき火災保険金額相当額の損害賠償をなすべきものである。仮に,火災保険金相当額の損害賠償が認められないとしても,少なくとも,次の(イ)のとおり,地震保険金額相当額から地震保険料相当額を控除した額の損害賠償をなすべきものである。 (ア) 火災保険金額相当額不明瞭で意味の判読が困難な約款条項を作成し,かつ,その約款条項の内容説明を怠った保険会社は,当該約款条項は本件のごとき場合には適用がないと信頼して保険契約を締結した消費者に対し,その信頼を惹起せしめたことの帰責性から,当該約款条項の適用がない旨の消費者の信頼どおりの損害賠償責任を負うべきである。すなわち,地震免責条項により火災保険契約上の火災保険金の支払義務 費者に対し,その信頼を惹起せしめたことの帰責性から,当該約款条項の適用がない旨の消費者の信頼どおりの損害賠償責任を負うべきである。すなわち,地震免責条項により火災保険契約上の火災保険金の支払義務がないとされる場合であっても,地震免責条項に関する情報提供義務の不履行があったときは,保険会社は,地震免責条項は本件のごとき火災には適用がないと信じていた消費者たる保険契約者に対し,その信頼を保護すべく,旧募取法16条1項,11条1項等に基づき,火災保険金額相当額の損害賠償義務を負うべきである。 第1審原告らは,地震の際の火災であっても火災保険金が受領できるものと信じていたものであり,第1審被告らは,地震免責条項に関する情報提供をせずに第1審原告らの信頼を温存し,火災保険契約を締結したのであるから,第1審原告らの信頼に応えるべき責務がある。 (イ) 地震保険金額相当額から地震保険料相当額を控除した額地震免責条項の適用により極めて広い範囲で火災保険金の支払が受けられないとの説明が事前になされていれば,消費者は,合理的判断により,地震保険に加入しないとの意思表示はしないはずである。反対に,地震免責条項についての説明がなく,あるいはそれが不十分であった場合には,消費者において,地震免責条項の適用範囲を,保険会社が予定していたよりも狭く理解し,特に地震免責条項の解釈類型中の第2,第3類型に当たるものとして保険会社側が考えるような場合であっても,当然火災保険金の支払を受け得ると考え,地震保険には加入する必要はないとの判断を導くこととなる。そうすると,保険会社の地震免責条項に関する情報提供義務の不履行は,消費者から,自らの合理的判断により地震保険という商品を選択する機会を奪うことになる。 要はないとの判断を導くこととなる。そうすると,保険会社の地震免責条項に関する情報提供義務の不履行は,消費者から,自らの合理的判断により地震保険という商品を選択する機会を奪うことになる。 損害保険会社たる第1審被告らは,地震免責条項についての情報提供を怠ったことにより,消費者たる第1審原告らが地震保険に加入するという自己決定をする機会を喪失せしめたものであり,この自己決定権侵害による損害額は,第1審原告らが地震保険に加入していたならば得られたであろう地震保険金額相当額から地震保険料相当額を控除した額となる。 (第1審被告らの主張)ア地震免責条項に関する情報提供義務について(ア) 地震免責条項に関する情報提供義務の根拠として第1審原告らが主張するものは,いずれもその根拠とはなり得ない。 a 自己決定権の保障について第1審原告らは,自己決定権の保障を説明義務の根拠として主張するが,同主張は,その観点は異なるものの,結局は,地震免責条項は,契約者が地震免責条項の意義・内容を十分理解し納得の上でそれを選択するという意思表示が存在するのでなければ個別の火災保険契約の中へ取り込まれることはないとの,前記の地震免責条項の拘束力に関する主張と同質のものであり,前記同様附合契約の本質と相容れない。 b 事業者の社会的責任について事業者の社会的責任それ自体はいわゆる道義的責任に属するものであって,保険会社に対し,地震免責条項の意味内容並びにその発動の必要性及び可能性につき説明をすべきことを法的に義務付ける根拠にはなり得ない。 また,旧募取法16条1項は,保険会社の役員・使用人等が不当 震免責条項の意味内容並びにその発動の必要性及び可能性につき説明をすべきことを法的に義務付ける根拠にはなり得ない。 また,旧募取法16条1項は,保険会社の役員・使用人等が不当勧誘・募集行為を行うこと等を禁止し,これを取り締まるためのいわゆる取締法規であって,直ちに債務不履行又は不法行為の基礎となる注意義務までを課すものではない。 c 約款作成者の責任について第1審原告らが引用するものを含め,ワラントについての説明義務を認めた裁判例は,商品の構造が一般人にとって容易に理解できるようなものではなく,極めて高いリスクを内包するというワラントの危険性に照らし,商品の構造や危険性についての説明を十分にしないままその購入を強く勧誘することに違法性を見い出し得るとしたものである。 これに対し,火災保険の基本構造そのものは単純で,その性質上収益を生むことはないが,危険もない。第1審原告らは,保険商品は,証券商品以上に抽象的で一般消費者に理解が困難なものであるというが,火災保険において理解が困難な部分があるとすれば,料率計算の手法等,保険契約の要素とならない部分であり,保険料の額,受領できる保険金の額,保険事故の範囲等,保険契約の中核的部分は固定的かつ明瞭である。 このように,ワラントと火災保険とではその商品としての性質に著しい違いがあるから,ワラントについての説明義務を認めた裁判例があるからといって,火災保険について同様に考えることはできず,第1審原告ら主張の情報提供義務の根拠とすることはできない。 (イ)a 変額保険やワラント取引に関する裁判例においても,当該商品の概要及び当該取引に伴うリスクに関する情報提供の方法, 第1審原告ら主張の情報提供義務の根拠とすることはできない。 (イ)a 変額保険やワラント取引に関する裁判例においても,当該商品の概要及び当該取引に伴うリスクに関する情報提供の方法,態様及び程度は,債務不履行又は不法行為の成否に関する重要な判断材料ではあるが,その状況の如何のみで,証券会社又は生命保険会社側の損害賠償責任の有無が判断されているわけではない。これらの裁判例において問題とされているのは,勧誘の違法性であり,その社会的な逸脱性である。 したがって,保険約款の各条項の意味内容を説明しなかったというだけで直ちに保険会社に損害賠償責任が発生するものとし,勧誘行為の違法性,反社会性の主張を欠く第1審原告らの主張は,主張自体失当といわざるを得ない。 b また,地震免責条項は火災保険の創設とともに火災保険の保険約款の一部を構成し,その歴史は100年以上に及んでいるところ,過去の論争及び裁判等を経て地震免責条項を含む約款の拘束力ないし有効性は確立している。他方,地震免責条項による火災保険の担保範囲の空白を埋めるものとして昭和41年に地震保険法が制定されたことにより,地震による損害は地震保険が,その他の損害は火災保険がそれぞれ担保するという役割分担が法的な制度として確立している。 そのような状況の下において,地震免責条項について,契約締結前に,保険申込書あるいは契約のしおり等の書面に基づき申込者が十分理解するに至るまで,繰り返し口頭で説明する私法上の注意義務が保険会社にあるとする趣旨の第1審原告らの主張は,保険契約が附合契約であることと真っ向から矛盾するものであり,到底受け入れることができない法理論である。 さらに,火災保険普通保険約款 あるとする趣旨の第1審原告らの主張は,保険契約が附合契約であることと真っ向から矛盾するものであり,到底受け入れることができない法理論である。 さらに,火災保険普通保険約款には,地震免責条項のほか多数の免責条項が規定されており,そのいずれも重要でないものはないと考えられるところ,第1審原告らの主張に従えば,保険会社は,契約締結前に,すべての免責条項につき申込者が十分理解するに至るまで詳細に説明することが必要となり,かつ,すべての免責条項につき申込者が十分理解したことの証拠を確保しなければならないこととなる。これは,合理性・迅速性といった附合契約における現代的要請を無視する理論である。 イ損害額に関する第1審原告らの主張について(ア) 火災保険金額相当額の主張不法行為法における損害の範囲は本来客観的に画されるべきものであり,被害者が主観的に獲得できるであろうと期待していた金額が法律上の損害となることはない。 また,火災保険に地震免責条項があることを知った場合に保険申込者が採るべき方法としては,地震免責条項の存在を承知で火災保険に加入するか,火災保険に加入するのを断念するしか選択の余地がないはずである。 いずれにしても,第1審原告らは,地震免責条項のない火災保険に加入することはできず,地震による火災により保険の目的が損害を被った場合に火災保険金を受け取ることは制度上全く不可能であった。 したがって,第1審原告らは,第1審被告らから地震免責条項の意味内容並びにその発動の必要性及び可能性についての説明を受けていたとしても,火災保険金を受け取ることはできなかったのであるから,火災保険金額相当額が第1審原告ら は,第1審被告らから地震免責条項の意味内容並びにその発動の必要性及び可能性についての説明を受けていたとしても,火災保険金を受け取ることはできなかったのであるから,火災保険金額相当額が第1審原告らの損害となることはない。 (イ) 地震保険金額相当額の主張第1審原告らの主張する自己決定権の内容には,第1審原告らが,説明を受けたとしてもなお地震保険に加入しないという意思決定をする可能性があることが含まれているのであるから,同権利の侵害と地震保険金額相当額の損害との間に因果関係がないことは理論上明白である。 殊に,平成7年の本件地震発生以前の阪神間における地震保険加入率が非常に低い状況にあったことは周知のとおりであり,仮に第1審原告らが地震免責条項につき口頭で説明を受けていたとしても,第1審原告らが地震保険に加入した可能性は著しく低かったものといわざるを得ない。 したがって,第1審被告らが第1審原告らの求めるとおりに地震免責条項について詳細な説明を尽くしたとしても,第1審原告らが地震保険金を受領できた蓋然性を認めることはできないから,地震保険金額相当額が第1審原告らの損害であるとする第1審原告らの主張は失当である。 (2) 地震保険,地震保険確認欄への押印の意味に関する情報提供・説明義務について(第1審原告らの主張)ア地震保険に関する情報提供義務以下のとおり,第1審被告らには地震保険に関する情報提供・説明義務があることは,理論的に,① 保険約款において情報面での格差が著しいこと,②地震保険に関する情報が重要であること,③ 地震保険制度が公共性を有すること,④ 損害保険事業が公共性の高い事業であることから基礎付けら 理論的に,① 保険約款において情報面での格差が著しいこと,②地震保険に関する情報が重要であること,③ 地震保険制度が公共性を有すること,④ 損害保険事業が公共性の高い事業であることから基礎付けられる。 また,第1審被告ら損害保険会社の地震保険に関する情報提供義務は,地震保険意思確認欄制度及び原則付帯方式によって,制度的にも確立され,法的義務となっていた。 (ア) 地震保険に関する情報提供義務の理論的根拠a 情報面での格差保険は,無形不可視の役務商品であり,その内容は保険会社が一方的に作成した約款により定型化されているところ,顧客側は,膨大複雑な約款を一読して理解することができない状況にある。 地震保険においては,一般の消費者は,説明を受けなければ火災保険約款における地震免責条項も,地震保険制度の存在すらも知らないのが通例である。 b 地震保険に関する情報の重要性地震保険に関する情報は,消費者が地震災害にどのように対処するかを決定するについて不可欠の情報であり,旧募取法16条1項1号所定の「保険契約の契約条項のうち重要な事項」に該当する。 保険会社が営む保険業は,公共性があり,大蔵省を主務官庁としてその監督を受けているところ,旧募取法の規定を受けて,大蔵省は,保険会社に対して,昭和58年1月に,契約者に対して正確適切な情報を提供する上で募集文書の果たす役割はより重要になってきており,契約者に本来提供すべき情報を提供しなかったために契約者の判断を誤らせることのないように厳に留意すること,平成5年5月には,保険募集に際しては,契約者に商品内容の説明を十分に行うことを てきており,契約者に本来提供すべき情報を提供しなかったために契約者の判断を誤らせることのないように厳に留意すること,平成5年5月には,保険募集に際しては,契約者に商品内容の説明を十分に行うことを指導し,また,代理店による契約者に対する商品内容の説明には,齟齬を来すことのないよう指導の徹底を図るべきこと,保険会社は,公共性の高い免許法人であり,社会的批判を招くことがないように,各種法令の遵守に特段の努力を払うべきことを指導している。 (イ) 制度的根拠a 地震保険意思確認欄制度同制度は,損害保険会社において保険契約者に必ず地震保険制度を説明し,これを付帯するか否かについての意思決定の機会を与えようとする制度的保障をしたものと位置付けられる。 b 原則付帯方式制度地震保険は,原則付帯方式により引き受けされる。原則付帯方式とは,保険会社において契約時に必ず地震保険の説明を行い,契約者が地震保険を付帯しない旨の意思表示を行わない限り地震保険が付帯されるという方式である。したがって,同方式は,端的に損害保険会社に地震保険の説明を義務づけた制度であると評価し得る。 昭和54年6月14日付保険審議会答申において,地震保険の引受方法に関して,その普及を目的に,「家計火災保険のすべてに原則的に自動付帯する方式を採ることとすべきである」との答申がなされたことを受けて,従前は,住宅総合保険・店舗総合保険に対する自動付帯,長期総合保険に対する原則自動付帯,普通火災保険に対する任意付帯の3方式が併存したのを統合し,地震保険の引受方式は,原則自動付帯方式に一本化されることとなった。具体的には,各損害保険会社は,保険事業の免許を受 に対する原則自動付帯,普通火災保険に対する任意付帯の3方式が併存したのを統合し,地震保険の引受方式は,原則自動付帯方式に一本化されることとなった。具体的には,各損害保険会社は,保険事業の免許を受けるために主務大臣に提出すべきものとされている事業方法書(旧保険業法1条2項2号)の中で,「地震保険の元受保険を地震保険法2条2項3号の規定に従い,普通火災保険(住宅火災保険を含む),住宅総合保険,店舗総合保険,長期総合保険又は団地保険に付帯して引き受ける。ただし,保険契約者から地震保険を付帯しない旨の申し出があった場合はこの限りではない。」という規定をしている。 イ情報提供義務違反と第1審原告らとの間の因果関係(ア) 第1審被告らには,地震免責条項に関する説明義務違反のみならず,地震保険に関する情報提供義務違反が存在した。 地震保険に関する情報提供義務の内容は,① 地震免責条項の存在・内容に関する情報,② 地震保険制度の存在及びその内容に関する情報,③ 地震保険の付帯方式に関する情報,すなわち,地震保険確認欄への押印の意味に関する情報等を提供することである。 (イ) 第1審被告らが地震保険に関する情報提供義務を怠り,第1審原告らに地震保険の加入・不加入の意思決定の機会を与えないまま,地震保険確認欄への押印を慫慂するという作為・不作為が,全体として信義則違反による違法の評価を受ける。 すなわち,第1審被告らは,第1審原告らに対し,何の説明もなしに,地震保険意思確認欄への押印を促した。第1審被告らが上記(ア)①ないし ③についての情報の提供及び説明をし,地震保険意思確認欄への押印慫慂行為をしなければ,第1審原告らは,地震保険意思確認欄への押印などしたりはせず, への押印を促した。第1審被告らが上記(ア)①ないし ③についての情報の提供及び説明をし,地震保険意思確認欄への押印慫慂行為をしなければ,第1審原告らは,地震保険意思確認欄への押印などしたりはせず,原則付帯方式の帰結として,自動的に地震保険に加入していたはずである。したがって,このような第1審被告らの情報提供義務違反と第1審原告らの後記損害との間には因果関係がある。 ウ損害について(ア) 第1審被告らは,地震保険に関する情報提供義務を懈怠したまま地震保険確認欄への押印を慫慂したことにより,第1審原告らが地震保険付帯を求める機会を奪ったもので,損害額は,同保険に加入していたならば第1審原告らが受領したはずの地震保険金と保険料相当額との差額である。 (イ) 損害についての予備的主張ー自己決定権侵害による慰謝料第1審原告らは,第1審被告らの上記情報提供・説明義務違反及び地震保険確認欄への押印の慫慂行為により,地震保険加入についての意思決定の機会及び地震保険に加入していれば自己の財産の損害を担保することができた可能性という財産的な利益を違法に侵害されて精神的苦痛を被ったものであるから,これに対する慰謝料としては,上記各差額金相当額が相当である。 (第1審被告らの主張)ア契約申込書一般の火災保険契約は,その構造が精緻であり,膨大な数の契約者を平等に扱わなければ保険制度として機能しない。そのため,契約者の個性に従い個別に決定するもの(保険の目的〔火災保険でいえば付保される建物等の特定〕,保険金額とそれに対応する保険料など)は,保険の申込書に記載し,保険契約者に共通するルールは約款として定め,契約申込書(契約書)には,その契約の内容となるべき約款を特定して記載するにと 等の特定〕,保険金額とそれに対応する保険料など)は,保険の申込書に記載し,保険契約者に共通するルールは約款として定め,契約申込書(契約書)には,その契約の内容となるべき約款を特定して記載するにとどめている。 このように,保険申込書によって契約が成立すれば,その契約は申込書に記載されているもの以外は,特定の約款を内容とする契約が締結されたということになる。 イ約款当事者双方が特に普通保険約款に依らない旨の意思を表示せずに契約したときは,反証のない限り,その約款に依る意思をもって契約したものと推定するのが相当である。 保険契約の基本的構造及び共通する部分が約款に定められていることは公知の事実である。そして,保険契約の都度,約款が遅滞なく送付されているのであるから,保険加入者がそのつもりになりさえすれば,約款の内容を容易に見ることができる。 一般の火災保険が地震危険を担保しないことも公知である。そして,一般の火災保険の申込みの際には,地震保険の普及を図るため地震保険に不加入の場合は不加入の印を求めている。 ウ第1審原告ら主張の説明義務について近時,極めてリスクの大きい金融投資案件(変額保険,ワラント債など)について,信義則を適用する際の補助概念として「説明義務」の理論が登場している。 これら説明義務の適用が問題となる事案は,リスクの大きな投資商品に関するもので,比較的最近に日本社会に導入され,一般人がそれらに関する知識を必ずしも持ち合わせていないという認識が前提にある。これに対し,一般の火災保険契約にあっては,せいぜい保険料が数千円から数万円の額にとどまり,前提が異なる。第1審原告らの説明義務の主張は,ありふれた一般の火災保険契約に,すべ という認識が前提にある。これに対し,一般の火災保険契約にあっては,せいぜい保険料が数千円から数万円の額にとどまり,前提が異なる。第1審原告らの説明義務の主張は,ありふれた一般の火災保険契約に,すべての契約時に口頭で重要事項を説明することを求めるもので,附合契約を否定するに等しい。 エ旧募取法における,「重要事項説明義務」附合契約,約款は,日常生活のほぼすべての分野に及んでいる。保険は,通常,電気,ガス,水道の供給規定と並んで附合契約の典型であり,保険業法によりその事業自体が行政規制を受け,各火災保険の普通保険約款は,幾度も司法審査を受けており,地震免責条項については,大審院以来その合理性は十分検証されている。 旧募取法16条1項1号(現保険業法300条1項1号)は,「保険契約の条項のうち重要な事項を告げない行為」を罰則をもって禁止しており,第1審原告らは,同規定をもって,保険会社側が必ず重要事項を説明する義務があると主張している。しかし損害保険等が,いわゆる通信販売の方式で契約の締結がなされ,また,航空機に関するものについて空港で自動販売機の加入手続で契約の締結がなされており,このような保険では,保険会社側の説明が予定されていない。このことについて何人も不信感を持っていないし,監督官庁である金融庁も契約の際に契約者に約款のすべてにわたり説明するように行政指導をしてはいない。 前記法律は,積極的に虚偽のことを告げて被保険者を錯誤に陥れることを禁じるのみならず,被保険者が錯誤に陥っている状況を利用してはならず,積極的に錯誤を正すことを求めているのである。 このように,旧募取法は附合契約を禁止するものではなく,募集する際に積極的及び消極的に保険契約者の錯誤に乗じてはならないこと してはならず,積極的に錯誤を正すことを求めているのである。 このように,旧募取法は附合契約を禁止するものではなく,募集する際に積極的及び消極的に保険契約者の錯誤に乗じてはならないことを規定しているのであり,それを超えて約款のすべてを説明しなければならないことまでを規定してはいない。 オ上記のとおり,第1審原告ら主張の情報提供義務及び説明義務は存在しない。のみならず,損害保険会社は,地震保険法に基づく地震保険のPRのための努力をしているし,申込書の要式も工夫し,契約の際にも地震保険加入を勧める努力をしている。 8 争点(8)(第1審被告B1及び同B10は,本件建物3について,第1審原告A3以外の共有者である訴外A3の妻,同A3の長女及び同A3の次女(共有持分各10分の1)の共有持分の関係においても同第1審原告に対して火災保険契約又は地震保険契約に基づく保険金支払義務を負うか。 (第1審原告らの主張)(1) 本件建物3は第1審原告A3とそれ以外の者ら(A3の妻,A3の長女,A3の二女。以下「A3の家族」という。)との共有であり,その持分は第1審原告A3が10分の7,A3の家族が各10分の1であるところ,A3の家族の持分については,第1審原告A3は,A3の家族から委任を受けた上,第三者である同人らのためにする保険契約を第1審被告らとの間で締結した。 また,保険契約締結の際,客観的に不正行為の行われる危険性がなかったと認められる場合には,委任がなく,かつ委任を受けていないことの通知がなくても,他人のためにする保険契約は有効であると解されているところ,本件では,保険契約者と被保険者とが強い家族関係のある共有者という立場にあり,不正行為の危険は皆無であったから,この点からも,A3の妻,A3の長女 ためにする保険契約は有効であると解されているところ,本件では,保険契約者と被保険者とが強い家族関係のある共有者という立場にあり,不正行為の危険は皆無であったから,この点からも,A3の妻,A3の長女,A3の二女の共有持分に関しては,他人のためにする保険契約が成立している。 (2) A3の家族の保険金請求権はこれらの者に直接帰属することになるが,同人らの保険金請求については,第1審原告A3が任意的訴訟担当により訴えを提起し得る。 すなわち,本件において,第1審原告A3とA3の妻とは夫婦,A3の長女及びA3の二女とは親子であり,しかも一個の火災保険契約の目的とされた建物を共有している関係にあり,社会的・経済的一体性が認められるのであるから,当該建物が火災に遭ったことを理由とする保険金請求訴訟において,保険契約者である第1審原告A3が共有持分権者であるA3の家族をそれぞれ任意的訴訟担当することは当然に許されるというべきである。 (3) よって,火災保険の目的とされた建物について共有持分を有する第1審原告A3が,保険契約を締結したことを理由に当該建物全部に関しての保険金請求訴訟を提起することには何ら問題がなく,被保険利益が存するものである。 したがって,第1審原告A3の本件建物3についての請求に対しては損害額全額(1500万円。もっとも第1審判決の事実認定によれば800万円)が認容されるべきである。 (第1審被告B1及び同B10の主張)(1) 他人のためにする保険契約は,保険契約者と契約における受益者すなわち被保険者とが異なる保険契約をいうものであり,それが有効に成立するためには,契約当事者間において,契約者と被保険者とが異なる者であることについて明確な合意が成立していることを要する。 ところ 者とが異なる保険契約をいうものであり,それが有効に成立するためには,契約当事者間において,契約者と被保険者とが異なる者であることについて明確な合意が成立していることを要する。 ところが,第1審原告A3に関する本件保険契約申込書及び保険証券には,保険契約者と被保険者とは同一人であると表示されており,被保険利益の10分の3についてA3家族を被保険者とする旨記載されていないのであるから,本件保険契約に,他人のためにする保険契約を含むものと認める余地はなく,第1審原告A3の主張は失当である。 (2) のみならず,保険金を請求できるのは被保険者であって,契約者である第1審原告A3ではないから,同第1審原告の任意的訴訟担当を理由とする請求部分は失当である。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(地震免責条項の効力)について(1) 地震免責条項は本件各火災保険契約についての各普通保険約款に定められているところ(前記第2の2(5)),一般には,保険契約者は,個別具体的な約款条項の内容につき熟知していない場合であっても,普通保険約款によって火災保険契約を締結するという意思を有しているのが通常であることにかんがみると,当事者双方が特に普通保険約款によらない旨の意思を表示しないで火災保険契約を締結した場合には,特段の事情がない限り,同当事者は普通保険約款によるという意思をもって火災保険契約を締結したものと推認するのが相当である。これに反する第1審原告らの主張は,採用することができない。 ただし,普通保険約款によって火災保険契約が締結されたとしても,当該約款中に強行法規や公序良俗に反するような条項がある場合には,同条項は効力を有せず,契約当事者を拘束しない。したがって,地震免責条項が公序良俗に反するならば,地震免責条 約が締結されたとしても,当該約款中に強行法規や公序良俗に反するような条項がある場合には,同条項は効力を有せず,契約当事者を拘束しない。したがって,地震免責条項が公序良俗に反するならば,地震免責条項は契約当事者を拘束しないことになる(地震免責条項が強行法規に反するとは解されない。)。 以下,検討する。 (2) 本件全証拠によるも,本件各火災保険契約締結に際し,当事者双方が普通保険約款によらない旨の意思を表示したとの事実は認められない(かえって,証拠〔乙A5の1・2,13ないし25〔枝番を含む〕,乙B16ないし28〔枝番を含む〕,乙C5ないし12,乙D13ないし20〔枝番を含む〕,乙E3,8ないし12,乙F1ないし3〔枝番を含む〕,乙G5ないし8,乙H1の1,3の1・2,5,乙Iの11・2,2,乙J1,2,乙K3,乙L3ないし11,M2)及び弁論の全趣旨によれば,本件各火災保険契約の契約の申込みには,「貴会社の普通保険約款および特約事項を承認し,下記のとおり保険契約を申し込みます。」などと記載されている火災保険契約(更改)申込書が用いられていることが認められる。)。 (3) そこで,地震免責条項が公序良俗に反するか否かについて検討する。 ア地震免責条項の存在理由の合理性について(ア) 地震による損害については,第1審被告ら主張のように,① 地震は異常に巨大なときがあり,その損害が日本の損害保険事業の担保能力をはるかに超えることも起こり得ること(地震損害の巨大性),② 地震は,かなりの長期間を取ってみても,その発生時期,規模,場所がいずれも不規則であり,かつ,同一規模の地震でも自然条件及び社会条件によって損害額が大きく左右され,そのため,地震災害には,保険の技術的前提である大数の法 間を取ってみても,その発生時期,規模,場所がいずれも不規則であり,かつ,同一規模の地震でも自然条件及び社会条件によって損害額が大きく左右され,そのため,地震災害には,保険の技術的前提である大数の法則が通用せず,平均損害額の算定ができないこと(発生予測の困難性),③ 地震は地域的に頻度差が大きく,また,いったん地震が発生すれば一定地域に長期に地震が反復する傾向もみられ,それゆえ,地震の危険を強く感じる地域の人だけが集中的に保険に加入したり,危機意識のある時期だけ保険に加入するなどの傾向が生じ,危険の平均化が難しいこと(逆選択の危険)等の理由により,保険という制度になじみにくく,これを無限定に損害保険の対象とすると,損害保険制度が成り立たなくなるおそれもあるということができる。そのため,通常の火災保険契約には地震免責条項が設けられている。そして,日本では地震が多いことから,地震による損害に対応した保険制度の創設が強く求められたため,通常の火災保険をいわば補完するものとして,火災保険に原則自動付帯方式で締結される地震保険制度が設けられたものである。 そうすると,このような地震保険を含む火災保険制度全般の制度趣旨にかんがみれば,地震免責条項の存在には合理性があるということができる。 (イ) 第1審原告らは,地震免責条項が存在理由に乏しい根拠として種々主張するが,第1審被告らを含む損害保険会社各社が本件地震による損害を填補することができるだけの資力を有するからといって,その資力では填補し得ないような損害をもたらす地震が発生する可能性がないとはいえないこと,フェーン現象等による大火,風水害による損害と地震による損害とは,(ア)に挙げたような地震の特異性からみて同列には論じられないこと,本件震災の際の具体的な損害状 発生する可能性がないとはいえないこと,フェーン現象等による大火,風水害による損害と地震による損害とは,(ア)に挙げたような地震の特異性からみて同列には論じられないこと,本件震災の際の具体的な損害状況を理由として一般的に地震免責条項が存在理由に乏しいものと解することはできないこと,諸外国の損害保険制度についてはそれぞれの国ごとの地震に関する事情が異なり,日本の損害保険制度と諸外国の損害保険制度を単純に比較することはできないこと,生命保険と損害保険とでは各保険の目的・約款・構造を異にするから,両者を単純に比較することはできないこと,火災保険の保険料は,地震損害については保険金を支払わないことを前提にその料率が算定され,地震損害以外の損害の填補に充てられることが予定されているものであること,日本の火災保険制度では地震損害は地震保険により填補されることが予定されていること,などの事情にかんがみるならば,地震免責条項が存在理由の乏しい根拠として第1審原告らが主張するところは,いずれも,一般的に地震免責条項の存在理由の合理性を否定するに足りる根拠とはなりえず,また,本件地震による損害について適用される限りにおいて地震免責条項は合理性がない,ということも困難である。 イ地震免責条項の内容が漠然不明確であるとの点について地震免責条項は前記第2の2(5)記載のとおりのものであり,一読しただけで理解することが容易であるとはいえないけれども,一般通常人の理解を基準としても,その意味が全く漠然としていて不明確であるとまでいうことはできない。 なお,地震免責条項が適用されるためには,火災の発生ないし火災の延焼・拡大と地震との間に相当因果関係が認められることが必要なのであって,地震による影響が多かれ少なかれ社会生活 い。 なお,地震免責条項が適用されるためには,火災の発生ないし火災の延焼・拡大と地震との間に相当因果関係が認められることが必要なのであって,地震による影響が多かれ少なかれ社会生活上に残っているような状況下における火災がすべて免責されることになるわけではない。 ウしたがって,地震免責条項が公序良俗に反する理由として第1審原告らが主張するところはいずれも採用することができず,加えて,現行の一般の火災保険と地震保険とを統一的にみるならば,前者の保険約款に設けられている地震免責条項が不合理なものとはいえないし,同条項によって第1審被告ら損害保険会社が不当な利益を得たり,保険契約者が違法な損害を被っているともいえないのであるから,地震免責条項が公序良俗に反するということはできない。 (4) よって,地震免責条項は,本件各火災保険契約の内容として,各火災保険契約当事者ないし被保険者を拘束するといわなければならない。 2 争点(2)(地震免責条項の意味内容)について(1) 普通保険約款中の条項の文言は,一般通常人の認識・理解を基準にして解釈すべきところ,地震免責条項の文言は,① 地震によって生じた(火元)火災による損害(第1類型),② 地震によって生じた(火元)火災が延焼・拡大したことによる損害(第2類型),③ (火元)火災(その出火原因を問わない)が地震によって延焼・拡大して生じた損害(第3類型)に対しては保険金を支払わない旨を定めているものと解される。 (2)ア第1審原告らは,第1類型及び第2類型にいう「地震によって生じた(火元)火災」とは,地盤の揺れによってストーブが倒れたり,炊事中のガスの火が家の中に燃え広がって火災が発生したような場合をいうのであり,地盤の揺れによってガス管に亀裂が にいう「地震によって生じた(火元)火災」とは,地盤の揺れによってストーブが倒れたり,炊事中のガスの火が家の中に燃え広がって火災が発生したような場合をいうのであり,地盤の揺れによってガス管に亀裂が生じてガス漏れを生じ,そこにタバコの火が引火して火災が発生したとか,電線の被覆が破れた状態で通電が行われたためにショートして火災が発生したというような場合は,火災の発生に人為的要素が介在するので,含まれないと解すべきである旨主張する。 しかし,「地震によって生じた(火元)火災」をもって,特に第1審原告らのいうような限定的なものと解すべき根拠は見当たらず,地震による物理的被害の結果として発生した火災全般を指し,第1審原告らが含まれないとして挙げる,地盤の揺れによってガス管に亀裂が生じてガス漏れを生じ,そこにタバコの火が引火して火災が発生したとか,地盤の揺れによって電線の被覆が破れた状態で通電が行われたためにショートして火災が発生したというような場合も含まれると解するのが相当である。 イまた,第1審原告らは,第3類型にいう「(火元)火災が地震によって延焼・拡大」したとは,地震の前に既に火災が発生していた建物が,地盤の揺れによって崩れて周囲に燃え広がったような場合をいうのであり,地震によって消防力が多かれ少なかれ低下した状況下で消防活動がうまくいかずに延焼を生じたような場合は,地震時の対策を行政が普段より立てておけば防ぎ得たものであり,まさに人為的要素によって火災が拡大又は延焼したものということができるから,含まれないと解すべきである旨主張する。 しかし,本件地震のような大地震が発生した場合,地震直後から同時多発的に火災が発生し,すべての火災に迅速に対応することは困難になること,交通や通信の途絶・混乱 きである旨主張する。 しかし,本件地震のような大地震が発生した場合,地震直後から同時多発的に火災が発生し,すべての火災に迅速に対応することは困難になること,交通や通信の途絶・混乱が消防活動を阻害すること,水道管の破損による断水が原因で消火栓が使用不能となり消防活動が阻害されることなど様々な理由によって,平常時よりも広範に火災が延焼・拡大する事態は容易に予測されるところであって,たとえ防火体制がより充実していれば延焼・拡大の範囲が異なっていたはずであるという場合であっても,平常時においてすら通常の火災の延焼・拡大を防ぐことができないような状況でない限り,このような防火体制の不足をもって人為的な延焼・拡大であるというのは相当でなく,地震によって火災が延焼・拡大したものと評価すべきである。したがって,第3類型は,このような事態による保険事故も免責とするものと解され,特に第1審原告らのいうような限定的なものと解するのは相当でない。 3 争点(3)(地震免責条項の本件における適用の有無)について(1) まず,本件火災による損害が地震免責条項の第2類型に該当するか否か,すなわち,本件火元火災は本件地震により発生したものであるか否かについて判断する。 ア第1審被告らは,本件火元火災は,場所的・時間的に本件地震と密接に関連する状態で発生した火災であるから,「地震による火災」との事実上の推定を受ける旨主張するところ,地震による大きな揺れの直後に火災が発生し,他に出火原因が想定し得ないような場合であれば,地震による火災であると事実上推定することも相当と考えられるが,少なくとも,本件火元火災のように,本件地震発生の約8時間も後に発生し,また,後記のとおり,火元となった当該建物内で荷物の運び出し等の作業が行われて であると事実上推定することも相当と考えられるが,少なくとも,本件火元火災のように,本件地震発生の約8時間も後に発生し,また,後記のとおり,火元となった当該建物内で荷物の運び出し等の作業が行われていたような場合については,様々な出火原因が想定し得るから,このような推定が働くとはいい難い。 この点に関し,第1審被告らは,乙第33号証(神戸市消防局編集の「阪神・淡路大震災における火災状況ー神戸市域)」中に,本件震災と関係のある火災として10日間に起こったもの175件中,地震直後の同日午前6時までのものが54件(31パーセント),17日中で109件(62パーセント)である旨が記載されていることを理由に,地震直後の火災のみならず本件火元火災であるSの出火も本件震災による火災と推定されるべきであると主張するけれども,他方,同号証では,これら175件の火災が本件震災と関係のある火災とする理由を必ずしも明示しているわけではないことを考えると,同号証の前記記載をもって直ちに,本件火元火災であるSの出火が本件震災によるものであると事実上推定することは困難である。第1審被告らの主張は採用の限りでない。 イそこで,本件火元火災の具体的出火原因について検討する。 (ア) 証拠(甲49の4,74,137,乙1〔枝番を含む〕,36,40,乙H17,18,乙J6ないし8,証人T2)及び弁論の全趣旨によれば,次のaないしdの事実が認められる(日時は,特に断りのない限り,すべて平成7年1月17日である。次の(イ)においても同じ。)。 a 本件地震後のS店舗の状況S店舗は東西に長い切妻屋根の平家建であったが,本件地震により,壁,柱が倒壊し,屋根が押しつぶされたようにほとんど全部地面に崩 a 本件地震後のS店舗の状況S店舗は東西に長い切妻屋根の平家建であったが,本件地震により,壁,柱が倒壊し,屋根が押しつぶされたようにほとんど全部地面に崩落した状態で,全体的にやや北側方向へ倒壊した。ただし,東端部分においては,北側部分は,隣家の2階部分が倒れかかってきて押しつぶされるような形になっており,南側部分も,この倒れかかった隣家の2階部分に邪魔されるような形になって,北側方向への倒壊はしておらず,東端部分を除く部分とは倒壊状況が少し異なっている。また,屋根には,このように倒壊状況の異なる東端部分とそれ以西の部分との間に亀裂が入って損壊し,西側部分にも損壊して穴が生じた部分ができ,店舗内に天井部分からも外光が入る状態となった。そして,店舗内部には,このように建物自体が倒壊した上に,商品の靴,倒れた陳列台のガラス,天井のベニヤ板,壁等が散乱し,いわばがれきの山のような状態になった。なお,本件地震により倒壊する前のS店舗の内部は,別紙「株式会社S平面図」のとおりであるところ,紳士サンダルの棚の付近の壁に設置されていた配電盤は,本件地震により壁と一緒に店舗内側に向けて倒れ込んだ状態となった。 bS店舗への人の出入り等株式会社Sの経営者であるT1は,午前10時ころ,N区の自宅から,妻のT2と2人でS店舗の状況を見に行ったが,a記載のとおり倒壊していたため,いったん自宅に帰り,午前11時ころ,スコップ等を用意して,T2及び高校生の長男と一緒に,再度,S店舗に行った。そのころには既に,周辺では,被災者による後片付けや生き埋めになった人の救助等が行われていた。 T1ら3人は,店舗南西角付近の西側シャッターと建物本体との間に生じ に行った。そのころには既に,周辺では,被災者による後片付けや生き埋めになった人の救助等が行われていた。 T1ら3人は,店舗南西角付近の西側シャッターと建物本体との間に生じた隙間からいったん店内に入ってみたが,前記aのような散乱状態であったため,ほどなく店舗の外に出た。そして,T1と長男は,屋根の上を歩いてS店舗の東端部分に行き,屋根の損壊部分から店舗内に入り,散乱した壁や柱,商品等をのけて通り道を作った上で,事務室・書類置場から支払関係の書類等を取り出すなどの作業をした。その間,T2も,現金を探したり,商品を入れる袋や近所の人にあげる靴を取り出したりするために,前記南西角付近の隙間から店舗内に数回出入りし,また,T1ないし長男から書類を受け取ったりするために,屋根の上を歩いて店舗東端部分まで行ったりした。 なお,S店舗内には,電気ストーブはなく,石油ストーブは4台あったが,電気の冷暖房機器を設置したため,3年ほど前から使用されていなかった。また,T1ら3人は,いずれも,S店舗内でタバコを吸うことはしなかった。 c 本件火元火災の出火及びその発見時の状況午後2時ころ,T2がT1ないし長男の指示を待って,店舗中央やや東寄り付近の屋根上で東を向いて立っていた際,店舗西側の道路上で近所の者が2,3回「火事だ。」と叫んだので,振り向くと,店舗内の子供運動靴の棚ないしその少し西側付近の上に当たる屋根の部分から炎混じりの煙が立ち上がっていた。 T2は,店舗内にいたT1と長男に「火事だ。」と言って,炎混じりの煙が立ち上がっていた部分のすぐそばを通って,店舗西側の路上に避難した。長男も,T2の声を聞いてすぐに避難した。T1は,しばらく店舗内に留まっていたが,煙 T1と長男に「火事だ。」と言って,炎混じりの煙が立ち上がっていた部分のすぐそばを通って,店舗西側の路上に避難した。長男も,T2の声を聞いてすぐに避難した。T1は,しばらく店舗内に留まっていたが,煙が店舗西側部分から立ち込めてきたので,避難した。 その後,火勢がかなり強くなり,第1審原告A23が家から消火器2本を持ち出して消火に当たったが消火できず,ほどなく店舗全体から炎が吹き出すような状態になった。 d ガスの供給,送電の状況① ガスの供給S店舗では,都市ガス・プロパンガスとも使用しておらず,店舗内にガスの配管はなかった。なお,店舗周辺においては,本件地震直後,都市ガスが漏洩していたが,午前11時50分には,本件火災現場を含む神戸第2ブロックへの都市ガスの供給は完全に停止されていた。 ② 送電の状況S店舗では,本件地震直後に送電が停止された。これは,本件火災現場を含む地域への配電用変電所(甲南変電所)への供給変電所(新神戸変電所)が本件地震によって被害を受けたことによる。しかし,甲南変電所は,午前8時45分から午前9時までの間に別の系統の変電所(神戸変電所)から送電を受け,午後1時42分には,本来の送電系統が復旧した。 ただし,H区内では多くの配電線路が被害を受けており,本件火災現場地域への送電再開時刻についての弁護士法23条の2に基づく照会に対し,関西電力株式会社神戸支店は1月21日午後4時,同社三宮営業所は1月20日午後5時59分とそれぞれ回答している。 また,1月31日にH消防署員が行った本件火災のり災者に対する現場 式会社神戸支店は1月21日午後4時,同社三宮営業所は1月20日午後5時59分とそれぞれ回答している。 また,1月31日にH消防署員が行った本件火災のり災者に対する現場聞込調査において,複数のり災者が,本件火災発生時は停電中であったと回答している。 (イ) (ア)で認定の事実に基づき検討する。 aT2はS店舗内に5回入ったうちの5回目の時点で南の方から漂ってきたガスの臭いを感じた旨証言するが,S店舗では,都市ガス・プロパンガスとも使用しておらず,店舗内にガスの配管はなかったこと,店舗周辺においては,午前11時50分には,本件火災現場を含む神戸第2ブロックへの都市ガスの供給は完全に停止されており,都市ガスは空気より軽い(都市ガス13Aの比重は空気を1として0・65である〔甲136〕)から,近隣から漏出したガスが本件火元火災発生時まで付近に残っているとは考え難いこと,T1は店舗内でガスの臭いを感じたことはない旨述べていること(甲74の2)からすれば,本件火元火災発生時にS店舗内に(出火原因となる程度の)ガスが滞留していたという可能性は小さいものと推認される。 また,本件火災現場を含む地域への配電用変電所(甲南変電所)は,午前8時45分から午前9時までの間に別の系統の変電所から送電を受け,午後1時42分には本来の送電系統が復旧したものの,H区では多くの配電線路が被害を受けており,本件火災現場地域への送電再開時刻について,関西電力株式会社神戸支店は1月21日午後4時,同社三宮営業所は1月20日午後5時59分とそれぞれ回答していること,H消防署員が行った現場聞込調査において,複数のり災者が本件火災発生時は停電中であったと回答していること等に照らすと,本件火元 時,同社三宮営業所は1月20日午後5時59分とそれぞれ回答していること,H消防署員が行った現場聞込調査において,複数のり災者が本件火災発生時は停電中であったと回答していること等に照らすと,本件火元火災発生時において,S店舗に通電が再開されていたとは認め難い。 この点に関し,第1審被告らは,午後1時42分に甲南変電所が本来の送電系統の復旧をみた時点で,同変電所に接続するUの地域配電網にも電気が流されたことになるから,本件火元火災の出火原因として通電による可能性を否定できないと主張し,これに沿う乙第80号証も存在するけれども,甲南変電所が送電を再開した時点において,H区で多くの配電線路が被害を受けていたことは前記で認定のとおりであって,甲南変電所から末端のS店舗に至るまでの複数の配電線路が切断されていたことや,再開後の送電がS店舗に至るまでの配電線路のショートにより保護装置が作動して遮断されたことも十分考えられるのであるから,第1審被告らの主張は採用できない。 さらに,静電気火災が発生するためには,爆発限界範囲内の濃度をもつ可燃性混合物が存在し,かつ,これに着火するだけの放電エネルギーを放出する静電気放電が起こることが最低限必要であるところ(甲138),このような状況にあったことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件地震で切断された配管から漏れた滞留ガスに通電の再開あるいは静電気によって発生した火花が着火したことが本件火元火災の出火原因であるとは認められない。 b 上記で認定説示のとおり本件火元火災発生時においてS店舗に通電が再開されていたとは認め難い以上,電気配線の損傷箇所がショートして近辺の可燃物に着火したとか,電気ストーブに通電され b 上記で認定説示のとおり本件火元火災発生時においてS店舗に通電が再開されていたとは認め難い以上,電気配線の損傷箇所がショートして近辺の可燃物に着火したとか,電気ストーブに通電され,発火したとは認められない(そもそも電気ストーブは店舗内になかった。)。また,店舗内にあった4台の石油ストーブは3年ほど前から使用されていなかったのであって,その中に灯油が残っていたことを認めるに足りる証拠はないから,石油ストーブが本件地震により転倒し,ストーブ内に残っていた灯油が漏れ,何らかの火源がこれに着火したことが本件火元火災の原因であると認めることもできない。 ウ以上によれば,結局,本件火元火災は本件地震により発生したものとは認められないから,本件火災による損害は地震免責条項の第2類型に該当するということはできない。 (2) 次に,本件火災による損害が地震免責条項の第3類型に該当するか否か,すなわち,本件火災は本件火元火災が地震によって延焼・拡大したものであるか否かについて判断する。 ア証拠(甲73,乙1,46,48〔以上いずれについても枝番のあるものは枝番を含む。〕)及び弁論の全趣旨によれば,次の(ア)ないし(ク)の事実が認められる。 (ア) 同時多発火災H消防署(本件火災の消火に当たった消防署)に配属されていた消防車は,小型ポンプ車4台,ポンプ付救助車1台,化学車2台,屈折はしご車1台,はしご車1台であった(なお,その他の消火機材としては,小型動力ポンプ3機及び市民消火隊用の小型動力ポンプ4機が配属されていた。)。そして,平時の火災の際には,火災通報があれば通常ポンプ車等の放水を担当する車両を4台出動させ,家屋が炎上している場合には,さらに4台を追加し,合計 消火隊用の小型動力ポンプ4機が配属されていた。)。そして,平時の火災の際には,火災通報があれば通常ポンプ車等の放水を担当する車両を4台出動させ,家屋が炎上している場合には,さらに4台を追加し,合計8台が出動する(ポンプ車等は最低4人が乗車して出動し,2線延長を原則としている。)体制がとられていた。 しかし,H消防署管内においては,本件地震の当日,午前中に14件の火災が発生しており,本件火元火災の発生した午後2時ころにおいても,そのうち5件及び午後1時20分ころに発生した1件の計6件の火災が未消火の状態であった(H消防署の覚知時刻が午後2時より遅い1件を除く。)ため,本件火災にポンプ車及び消防隊員を集中させることはできなかった。また,他の消防署管内でも火事が多発していたため,その応援を求めることもできなかった。 (イ) 消防車到着の遅れH消防署では,119番通報受信前に本件火元火災を覚知したので(本件火災現場から黒煙が上昇しているのを発見した。),指令により消防車両が本件火災現場に向かったが,幹線道路は渋滞し,脇道も倒壊建物により通れないところがあり,さらに,人命救助の要請に対応したりしたため,消防車両が現場に到着するまでの時間は,通常の場合よりも長くかかった。 (ウ) 消火栓利用不能H区内全域の水道が本件地震により断水していたため,本件火災現場付近の消火栓はいずれも利用できなかった。 (エ) 本件防火水槽の不使用消防隊員は,本件火元から南西へ約220メートルの位置にある本件防火水槽(耐震性。容量約100トン)の採水口からの揚水を試みたが,防火水槽から採水口に至る配管に,本件地震により亀裂が生じていたため 消防隊員は,本件火元から南西へ約220メートルの位置にある本件防火水槽(耐震性。容量約100トン)の採水口からの揚水を試みたが,防火水槽から採水口に至る配管に,本件地震により亀裂が生じていたため(このことは後日判明した。),採水口から揚水することができなかった。 (オ) 井戸水の利用その後,消防隊員は,井戸水を使用してもらいたいとの付近住民の要請を受けたので,H消防署から小型動力ポンプを搬送してきて,付近のK方の井戸から採水して放水したが,3,4分放水すると井戸水が無くなって放水不能となり,井戸水の溜まるのを待って3回程度放水したが,消火に対する効果に期待が持てなかったため,放水を中止し,K方以外の井戸は利用しなかった。 (カ) 小学校のプールの水の不使用いったんはf小学校のプールの水を利用することも検討されたが,延焼が拡大して大量の水が必要となり,後記のとおり,本件火災の消火のために消防車が現場に到着した時点においては,午前中に発生した他の火災の消火のために使用されて,貯水量の少なかったプールの水量だけでは消火は困難と判断されたので,天上川を堰き止めて(もともと流量が少なく〔川底から1,2センチメートル〕,そのままでは揚水することができなかった。)そこから揚水することに決定され,結局は同プールの水は消火に使用されなかった。 (キ) 天上川からの揚水午後3時ころから,消防隊員や付近住民が,h橋付近において,土嚢や布団等を用いて天上川の流れを堰き止めた。そして,2台のポンプ車から各1線採水し,本件火災現場までの間に分岐器を用いてホース延長をし,本件火災現場においては合計4線で放水した。ただし,天上川の水量は流れを堰き止めた後 川の流れを堰き止めた。そして,2台のポンプ車から各1線採水し,本件火災現場までの間に分岐器を用いてホース延長をし,本件火災現場においては合計4線で放水した。ただし,天上川の水量は流れを堰き止めた後でも十分ではなかった(川底から踝ぐらいまで)ため,放水の圧力を上げることはできなかった。 (ク) 本件火災の鎮圧本件火災の包囲体制が取れたのは発生後数時間経過した夜になってからのことであり,その時点では既に大規模に炎上し,火勢も拡大の一途をたどっていたため,本件火災が鎮圧されたのは,翌18日午前10時ころであった。 イ上記アで認定の事実に基づき検討するに,本件地震の影響により,消防車両が本件火災現場に到着するのが遅れ,本件火災現場付近の消火栓が断水したり,本件防火水槽の採水口が使用不能となるなどのことがなければ,あるいは,本件火災にポンプ車及び消防隊員を集中させることができ,また,他の消防署の応援を求めることができていれば(同時多発火災のために,いずれもできなかった。),本件各建物のうちのほとんどは延焼しなかった蓋然性が高いということができる。したがって,後記S店舗の南側に隣接する建物以外の第1審原告ら建物への延焼は本件地震によって生じたというのが相当である。 ウところで,証拠(甲49の1,甲49の4,甲73,74〔いずれも枝番を含む。〕,乙1の1ないし8〔枝番のあるものはそれらを含む〕,証人A20の夫)に弁論の全趣旨を総合すると,本件火元火災の延焼の経過は次のとおりであったことが認められる。 (ア) 午後2時ころ火災が発生し,H消防署は,午後2時5分本件火災を覚知した。 直ちに,小型ポンプ車「H5」に出動を指令した。 (イ) れる。 (ア) 午後2時ころ火災が発生し,H消防署は,午後2時5分本件火災を覚知した。 直ちに,小型ポンプ車「H5」に出動を指令した。 (イ) H5は,午後2時10分ころ,第1審原告A17の2宅南側に到着したが,既に火元建物から盛んに火炎と黒煙が上昇しているのが確認された。 また,火災覚知直後,H消防署からポンプ車「H3」が出動し,「H5」到着後数分で川井公園南側に配置につき,隊員がホース延長作業をしながら火元付近に到着した時には,S店舗及び南側建物数軒から黒煙と炎を確認した。 (ウ) A20の夫は,午後2時ころ,第1審原告A20所有(共有)に係る本件建物29内において,「えらいこっちゃ。」というSの経営者の妻T2の声を聞いて外を見たところ,S建物から白い煙が上がっており,間もなく10メートルほどの,先端に赤い炎のある黒煙に変わるのが見えたので,自宅2階にいた妻である第1審原告A20に降りてくるように叫んでいるうちに,S店舗に接する自宅北側台所に黒煙が入りだしたため,2階に駆け上がって同第1審原告を連れて屋外に避難したが,その時点において既に同台所に火が入り初めていた。A20の夫は,上記火元火災を見てから約5分後に最初の消防車が到着したのを見た。 (エ) S店舗内にあった大量の靴のゴム底・ケミカルシューズや靴墨は可燃性の素材であったことから,本件火元火災の火勢は当初から強く,かつ火の回りも早いものであった。 (オ) S店舗の南西角付近が出火場所であるところ,同出火場所と本件火災により全焼ないし半焼した建物の配置は,おおむね別紙「焼損建物配置図」のとおりである(〔乙1の1・4〕。ただし,氏名に付された数字は,本件における第 角付近が出火場所であるところ,同出火場所と本件火災により全焼ないし半焼した建物の配置は,おおむね別紙「焼損建物配置図」のとおりである(〔乙1の1・4〕。ただし,氏名に付された数字は,本件における第1審原告番号とは関係がない。)。 これらの事実,すなわち,S店舗内にあった靴の素材などは可燃性のものであったことから,本件火元火災の火勢は当初から強く,かつ火の回りも早いものであったこと,その出火場所であるS店舗の南西角付近と本件火災により全焼ないし半焼した建物との位置関係が別紙建物焼損配置図のとおりであること,第1審原告A20夫婦が本件火元火災の発生に気が付いて避難した時点で,既に本件火元火災の火は第1審原告A20共有に係る本件建物29のS店舗に接する北側台所に入っていたこと,A20の夫が火元火災を見てからH5が到着するのを見た時までの経過時間が5分程度であること,H5が本件火災現場に到着したのが午後2時10分ころであることなどを総合すると、H5の消防車が現場に到着した時には既に南側隣家への延焼が始まっていたか,遅くともその到着と同時ころに延焼が始まったことになる。 これらの認定説示にかんがみるならば,S店舗の南側に接する建物についてのみは,本件地震が起きていない平常時であっても延焼していた可能性を否定することはできず,前記で認定説示の,本件地震による影響がなければ延焼しなかった蓋然性が高いとまでいうことはできないから(なお,乙1の8の(5)の各写真が本件火元火災発生からどのくらいの時間経過後に撮影されたものであるかについては,これを認めるに足りる証拠はないから,これらの写真によって隣接家屋への延焼時刻を推定することはできない。),本件建物3・同32(第1審原告A3関係),本件家財21が収容された建物 あるかについては,これを認めるに足りる証拠はないから,これらの写真によって隣接家屋への延焼時刻を推定することはできない。),本件建物3・同32(第1審原告A3関係),本件家財21が収容された建物(第1審原告A17の1訴訟承継人A17の2関係),本件建物29(第1審原告A20)は,本件地震によって延焼・拡大した火災によって滅失したものと認めることはできず,これら延焼と本件地震との間には相当因果関係がないというべきである。 エ第1審原告らは,本件火元火災の延焼・拡大は,本件防火水槽を利用できなかったことや,k小学校のプールの水を使用しなかったこと及び天上川の水利利用が大幅に遅延した事実に象徴されるように,人災的側面が強く,本件地震との間に相当因果関係がない旨主張する。 (ア) しかし,各自治体がその予算の中で,どのような点に力点を置いて防災体制を築くのかは,行政の合理的裁量にゆだねられていると解すべきところ,神戸市は,地震対策よりも風水害対策に重点を置いていたというのであり(乙47),神戸市の地震対策が他の都市に比して若干遅れていたからといって,本件地震と本件火元火災の延焼・拡大との間の相当因果関係が直ちに否定されるということはできない。 (イ)a 本件防火水槽については,これが使用できていれば,本件火元火災が延焼・拡大した範囲はより狭いものであったものと推認することができる(甲73の1・2)。 しかし,前記ア(エ)で認定のとおり,本件防火水槽から採水口に至る配管に地震による亀裂が生じていたために,同水槽から揚水することができなかったのであり,また,採水口から約3メートル離れた位置に埋設されている(甲71)防火水槽上部のマンホールを掘り出して(地面を約20センチメートル 裂が生じていたために,同水槽から揚水することができなかったのであり,また,採水口から約3メートル離れた位置に埋設されている(甲71)防火水槽上部のマンホールを掘り出して(地面を約20センチメートルほど掘ることになる。)そこから揚水することは可能であったものの,同マンホールを掘り出すにはその位置が分かっていた場合でも30分程度はかかること(甲75,141,証人(n),前記(2)認定のように,本件火元火災の火勢は当初から強いものであり,火はどんどん燃えているという状況であったこと(甲73の1),そのような状況の中で,本件火災現場にいた消防隊員らは,マンホールの所在位置を知らず,その所在位置を示す図面も所持しておらず(H消防署内の事務室も,ロッカー,机等が倒れて書類が散乱し,ロッカー内に保管されていた同図面を容易に探し出すことができない状況であった。),マンホールを掘り出すのにどれだけの労力と時間を要するのか分からなかったこと(甲73の1・2,弁論の全趣旨),仮に揚水可能となっても当初は消防隊員の数の関係で2線放水しかできなかったであろうこと(甲73の1・2),前記(1)認定のとおり他の水利の利用を検討していること等の事情に照らすと,消防隊員が本件防火水槽を利用しなかったからといって,本件地震と本件火元火災の延焼・拡大との間の相当因果関係が否定されるということはできない。 b 前記ア(オ)で認定したように,消防隊員はK方の井戸から採水して放水したが,効果が期待できなかったため放水を中止したというのであるから,K方以外の井戸を利用しなかったことをもって,消防隊員に落度があるとまでいうことはできない。 c 前記ア(キ)で認定したように,天上川の水量はもともと少なく,流れを堰き止めた後でも十分ではなく,放水 しなかったことをもって,消防隊員に落度があるとまでいうことはできない。 c 前記ア(キ)で認定したように,天上川の水量はもともと少なく,流れを堰き止めた後でも十分ではなく,放水の圧力を上げることはできなかったのであり,本件火災が鎮圧されたのは火災発生の翌日の午前10時ころであること,本件地震による断水のため消火栓が利用できなかったり,本件地震により配管に亀裂が生じていたため本件防火水槽の採水口から揚水できなかったりしたこと等のために,もともと流量の少ない天上川を利用せざるを得なくなったこと等の事情に照らすと,他の水利の利用を検討するなどしていて直ちには天上川を利用するとの決断に至らなかったからといって,本件地震と本件火元火災の延焼・拡大との間の相当因果関係が否定されるとまでいうことはできない。 df小学校のプールの水を利用しなかった点についてみると,証拠等(乙46及び公刊物であり当裁判所にその存在が顕著な神戸市消防局編集の「阪神・淡路大震災における消防活動の記録(神戸市域)」)によれば,1月17日午前,H消防署の8個小隊のうちのH3小隊及びH14小隊は,P○丁目の火災現場へ出動して鎮火させた後,M町○丁目の火災現場において,f小学校のプールの水でこれを鎮圧させ,更に0○丁目の火災現場に赴いたが,同プールの水が減水したため,H14小隊は青木フェリーセンターへ移動し,海水で放水したことが認められるのであり,これによれば,f小学校のプールの水は,本件地震直後である1月17日午前中に発生したM町○丁目の火災の消火活動のため,既に利用されてしまっており,本件火災の時点においては消火用水としては使用が困難であったことが推認される。したがって,消防署員が同プールの水を利用しなかった人為的要因があることを前提 火活動のため,既に利用されてしまっており,本件火災の時点においては消火用水としては使用が困難であったことが推認される。したがって,消防署員が同プールの水を利用しなかった人為的要因があることを前提とする,本件火元火災の第1審原告ら建物への延焼と本件地震との間に相当因果関係が認められない旨の第1審原告らの主張は採用の限りでない。 オところで,第1審原告らは,①神戸市における消防体制の不十分なことや,②防火水槽の水・f小学校のプールの水の不使用及び天井川の水使用の遅れなどをもって,割合的因果関係の認定・寄与度減責などの理論が適用されるべきである旨主張するところ,②については,それは大規模地震の際に通常起こり得る消防活動への支障であって,神戸市消防署員に特段の過失があったとか,人為的要因に当たるとまで認められないことは前記で認定説示のとおりであり,①については,本件地震当時の神戸市の消防体制が必ずしも十分とはいえない面のあったことを否定できないと評価されるとしても,また,他市との比較において消防力の不足等が地震により発生した火災の延焼・拡大に影響を与えたと評価されるとしても,本件地震の規模及びそれによる同時多発的かつ多様な被害状況に照らすならば,これらの点が,本件火災が延焼・拡大して本件各建物を焼損するに至ったことについて,人災と評する程の原因をなしたとまでいうことはできないとみるのが相当であるから,第1審原告らの主張する理論を適用して,割合的な認定等をすることは相当でない。したがって,第1審原告らのこの点に関する主張は採用できない。 カ以上によれば,仮に本件各目的物が本件地震により滅失していなかったとすれば,本件建物3・同32及び本件家財32(第1審原告A3関係。なお,本件建物3と同32は同一性のある建物であり, カ以上によれば,仮に本件各目的物が本件地震により滅失していなかったとすれば,本件建物3・同32及び本件家財32(第1審原告A3関係。なお,本件建物3と同32は同一性のある建物であり,2階建の本件建物3の状態で本件火災保険契約3を締結し,3階を建増しした後の本件建物32の状態で本件火災保険契約32を締結したものである〔甲119〕。)。本件家財21(第1審原告A17の1訴訟承継人A17の2関係)並びに本件建物29(第1審原告A20関係)は,本件火元火災が本件地震によって延焼・拡大した火災により滅失したとはいえない(すなわち,地震免責条項の第3類型には該当しない)ものの,その余の本件各目的物は,本件火元火災が本件地震によって延焼・拡大した火災により滅失した(第3類型に該当する)といわなければならない。 (3) したがって,本件において,本件建物3(同32)及び本件家財32(第1審原告A3関係),本件家財21(第1審原告A17の1訴訟承継人A17の2関係)並びに本件建物29(第1審原告A20関係)の焼失については地震免責条項は適用されないが,その余の本件各目的物の焼失については地震免責条項が適用されることになる。 そうすると,これら3名の第1審原告を除く各第1審原告の火災保険金の支払を求める主位的請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないというべきである(なお,これら3名の第1審原告に係る本件火災保険契約3,32,21,29に基づく各保険金請求権については,質権が設定されていないから,争点(5)については判断する必要がない。)。 4 争点(4)(本件各目的物の滅失は,火災によって生じた損害といえるか〔本件各目的物は,本件火災による滅失の前に既に本件地震により滅失していなかったか。〕。)につい は判断する必要がない。)。 4 争点(4)(本件各目的物の滅失は,火災によって生じた損害といえるか〔本件各目的物は,本件火災による滅失の前に既に本件地震により滅失していなかったか。〕。)について(1) 証拠(甲85,94,119,133,乙A9,乙K1,乙H17ないし19,乙J6ないし8〔枝番を含む〕)及び弁論の全趣旨によれば,本件火災現場の周辺地域においては,本件地震により多数の建物が倒壊したところ,前記3名の第1審原告の関係では,次の(1)ないし(3)の各事実が認められる。 ア第1審原告A3関係本件建物3(同32)は,第1審原告A3が共有持分10分の7を有する建物であったところ,本件地震により倒壊することなく,本件火災発生時において建物としての基幹部分を保持していた。 イ第1審原告A17の1訴訟承継人A17の2関係本件家財21が収容されていた建物は,本件地震により,屋根の一部に瓦がめくれる損傷が生じたが,倒壊することなく,本件火災発生時において建物としての基幹部分を保持していた。なお,本件家財21は,K生協との間の火災共済契約の目的物にもなっており,A17の1がK生協に対して共済金の支払を求めた別件訴訟(神戸地方裁判所平成7年(ワ)第1705号共済金請求事件)において,平成11年4月28日,同人は本件火災によって400万円の損害を被ったとして,K生協に400万円の共済金の支払を命じる判決が言い渡された。 ウ第1審原告A20関係本件建物29は,第1審原告A20が共有持分2分の1を有する建物であったところ,本件地震により倒壊することなく,本件火災発生時において建物としての基幹部分を保持していた。 (2)ア本件火災保険契約 29は,第1審原告A20が共有持分2分の1を有する建物であったところ,本件地震により倒壊することなく,本件火災発生時において建物としての基幹部分を保持していた。 (2)ア本件火災保険契約3,同32,同21及び同29の契約締結時期及び保険金額に照らせば,本件地震前の同各契約目的物の評価額は,本件建物3(同32)は1000万円,本件家財32は1500万円,本件家財21は1000万円,本件建物29は1200万円であったと推認するほかなく,これを動かすに足りる的確な証拠はないところ,前記各建物は,(1)で認定したようにいずれも建物としての基幹部分を保持していたわけではあるが,本件火災現場の周辺地域における本件地震の震動が激甚なものであったことを考慮すると,本件地震によりある程度の損傷を受けていたものと推認され,本件火災発生時における残存評価額は,本件建物3(同32)は本件地震前の評価額の8割程度,それに収容されていた本件家財32は本件地震前の評価額の6割程度,本件家財21は本件地震前の評価額の4割程度,本件建物29は本件地震前の評価額の8割程度であると認めるのが相当である。 したがって,各契約目的物の本件火災による損害の額は,それぞれ,800万円(本件建物3〔同32〕),900万円(本件家財32),400万円(本件家財21),960万円(本件建物29)となる。 イそうすると,第1審原告A3に対して支払うべき保険金額は,本件建物3(同32)については,同第1審原告の共有持分が10分の7であり,そして,第1審被告B1との間及び第1審被告B10との間で重複して火災保険契約が締結されているから,約款の規定により,第1審被告B1が280万円,第1審被告B10が280万円(合計560万円)となり,本件家財32につい 1との間及び第1審被告B10との間で重複して火災保険契約が締結されているから,約款の規定により,第1審被告B1が280万円,第1審被告B10が280万円(合計560万円)となり,本件家財32については900万円(第1審被告B10)となる。なお,第1審原告A3の当審における追加的請求原因についての判断は後記7のとおりである。 第1審被告B5が本件家財21につき第1審原告A17の2に対して支払うべき保険金額は,K生協との間の火災共済契約と重複して保険契約が締結されているから,約款の規定により200万円となる。 第1審被告B8の1保険が本件建物29につき第1審原告A20に対して支払うべき保険金額は,同第1審原告の本件建物29の共有持分が2分の1であるから,480万円となる。 第1審被告B8の1保険は,第1審原告A20の本件建物29の損害につき,土地とともに設定されている根抵当権極度額から建物購入時の価格を想定して,これに定額法・定率法による減価をした上,本件震災直前の価格を推定すべきであると主張しているけれども,この推定手法が上記の推定に比べてより合理的であるともいい難いので,同第1審被告の主張は採用しない。 5 争点(6)(第1審被告らは,第1審原告らに対し,地震保険契約に基づき地震保険金支払義務を負うか〔予備的請求その1〕。)についてまず,弁論の全趣旨によれば,一般火災保険が,その対象となる保険事故である火災について,大数の法則にのっとり,保険金額,保険料率などが決定される保険であるのに対し,地震保険は,その対象となる保険事故である地震について,同法則の適用がなく,その損害の巨大性,予測困難性及び逆選択の危険性などのために,一般の火災保険に免責条項を置いて地震を保険事故から外 のに対し,地震保険は,その対象となる保険事故である地震について,同法則の適用がなく,その損害の巨大性,予測困難性及び逆選択の危険性などのために,一般の火災保険に免責条項を置いて地震を保険事故から外す一方,保険金額の支払限度額の設定及び一定額を超える損害についての国による再保険制度の採用などによって,地震保険法に基づき創設されたものである。したがって,地震保険は,一般の火災保険とは異なる保険であって,基本的にその契約の締結には別途の意思表示を要するといわなければならない。 ところで,地震保険法において,地震保険契約は一般の火災保険と同時にしか加入できないこととされており,各保険会社は,事業方法書に基づき,申込者が一般の火災保険契約申込書の地震保険意思確認欄への押印によって,その不付帯の意思表示をなす方式を採っているものの(弁論の全趣旨),同法において保険金額は一般の火災保険などの30ないし50パーセントと定められ,申込者の申込みによって,一般の火災保険と別途に保険金額・保険料支払の合意を要することが予定されていることは明らかである。現に,第1審被告らの一般火災保険契約申込書(乙A5,13,14,乙B16,乙B25〔いずれについても枝番のあるものはそれらを含む〕など)には,一般の火災保険の保険金額,保険料などの欄に並列して,地震保険のためのこれらの欄が設けられており,地震保険意思確認欄への押印をしない申込者との間では,合意したところに基づき,地震保険金額等の記載がなされている。そして,地震保険法及び同法施行規則中には,地震保険契約が単独では締結できず,特定の損害保険契約に付帯して締結する旨の定めはあるものの,特定の損害保険に加入すれば当然に地震保険契約が成立する旨定める条項はない。 上記で認定説示したところによれば,本件 は締結できず,特定の損害保険契約に付帯して締結する旨の定めはあるものの,特定の損害保険に加入すれば当然に地震保険契約が成立する旨定める条項はない。 上記で認定説示したところによれば,本件各火災保険契約において,その申込みの過程で地震保険意思確認欄への押印がなかったり,同押印について何らかの瑕疵があったとしても,それ故に自動的に,一般の火災保険とは別の保険である地震保険についての契約が締結されたということは到底できない。 したがって,第1審原告らの予備的請求その1は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 6 争点(7)(第1審被告らは,地震免責条項,地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味についての情報提供義務・説明義務違反により損害賠償責任を負うか〔予備的請求その2〕。)について(1) 第1審原告らは,損害保険会社である第1審被告らは消費者たる第1審原告らに対し,自己決定権の保障,事業者の社会的責任,約款作成者の責任の各観点から,地震免責条項,地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味に関する情報を提供し説明すべき義務があるのに,第1審被告らは第1審原告らに対し,保険契約締結時又は更新時に地震免責条項,地震保険契約及び火災保険契約申込書中の地震保険意思確認欄への押印の意味に関して説明をしなかったことにより,旧募取法11条1項,不法行為,債務不履行又は契約締結上の過失責任,信義則違反に基づき,地震免責条項は本件のごとき火災には適用がないと信じていた第1審原告らの信頼を保護して火災保険金額相当額の損害又は地震保険金から保険料相当額を控除した差額金相当額の損害を賠償すべき義務を負い(予備的請求その2の1次的主張),そうでないとしても,消費者たる第1審原告らが地震保険に加入するという自己決定をする機会 震保険金から保険料相当額を控除した差額金相当額の損害を賠償すべき義務を負い(予備的請求その2の1次的主張),そうでないとしても,消費者たる第1審原告らが地震保険に加入するという自己決定をする機会を喪失せしめたという自己決定権侵害による精神的損害を賠償すべき義務を負う(予備的請求その2の2次的主張)旨主張するので,以下検討する。 (2) まず,上記のうち地震免責条項に関する説明義務(予備的請求その2の1次的主張)についてみることとする。 前記1で説示のとおり,本件のように当事者双方が特に普通保険約款によらない旨の意思を表示しないで火災保険契約を締結した場合には,これらの当事者は普通保険約款によるという意思をもって火災保険契約を締結したものと推認するのが相当であり,たとえ保険契約者が個別具体的な約款条項の内容につき熟知していない場合であっても,それは火災保険契約の内容として保険契約者ないし被保険者を拘束するところ,本件各火災保険契約を締結した者(第1審原告ら)が,地震免責条項に関して説明を受けていたとしても,地震免責条項を含まない約款に基づく火災保険契約を締結できたと認めるに足りる証拠はなく,地震免責条項を含む約款に基づく火災保険契約を締結するかしないかの選択権を有していただけであって,火災保険契約を締結する以上は地震免責条項を含む約款に基づく火災保険契約を締結するほかはなかったのであるから,第1審原告らの予備的主張その2の1次的主張のように,第1審被告らは地震免責条項は本件のごとき火災には適用がないと信じていた第1審原告らの信頼を保護して火災保険金額相当額の損害を賠償すべき義務を負うとするのは,火災保険契約が前記のような性格(いわゆる附合契約)であることと相容れないものであって,採用することができず,ただ,第1審被告 信頼を保護して火災保険金額相当額の損害を賠償すべき義務を負うとするのは,火災保険契約が前記のような性格(いわゆる附合契約)であることと相容れないものであって,採用することができず,ただ,第1審被告らを含む損害保険会社は,次項(3)のとおり,地震保険に関する情報提供義務・説明義務の一環として,地震免責条項について説明義務を負うにとどまるというべきである。 (3) 損害保険会社の,地震保険及び火災保険契約申込書における地震保険確認欄への押印に関する,一般的な情報提供義務及び説明義務違反,それによる損害の有無について(予備的請求その2の2次的主張)ア保険会社は,公共性の高い免許法人であり,その営む保険業は,公共性がある故に,主務官庁である大蔵省(現財務省)の監督を受けている。 本件における地震保険の内容は第1審被告らの作成した保険約款により定型化されており,顧客側である第1審原告らは,一読しただけでは理解しにくい立場にある。 イ損害保険業界は,昭和52年7月1日,地震保険意思確認欄制度を設けたが,その経緯は以下のとおりである。 すなわち,地震保険の付帯方式は,① 住宅総合保険・店舗総合保険に対する自動付帯(制度発足時),② 長期総合保険等に対する原則自動付帯(昭和47年5月実施),③ 普通火災保険等に対する任意付帯(昭和50年4月実施)の3方式が採られ,制度上は,すべての家計火災保険に地震保険を付帯できることとなっていた。しかし,②と③の保険については,地震保険の付帯率が低く,普及率の伸張はみられなかったため,契約者の意思をより明確に確認することによって,地震保険の契約漏れを防止する一方,災害時の保険金支払に当たって地震保険付帯の有無に関するトラブル発生の未然防止を図るこ 率の伸張はみられなかったため,契約者の意思をより明確に確認することによって,地震保険の契約漏れを防止する一方,災害時の保険金支払に当たって地震保険付帯の有無に関するトラブル発生の未然防止を図ることとした。 この地震保険加入についての契約者の意思確認方法としては,②,③の各保険の申込書には地震保険確認欄を設け,付帯を希望しない契約者には押印してもらうこととした。(以上につき,甲152,155,弁論の全趣旨)ウ原則付帯方式とは,保険会社において契約時に必ず地震保険の説明を行い,契約者が地震保険を付帯しない旨の意思表示を行わない場合には,地震保険の保険金額の選択と保険料の合意をした上で地震保険が付帯される方式と解されるところ,昭和54年6月14日付け保険審議会の答申を受けて昭和55年の地震保険法の第4次改正によって,地震保険の引受方式は,前記イの①②③の3方式から,この原則付帯方式に一本化された。(以上につき,甲152,弁論の全趣旨)エ地震保険法の第4次改正に先だって昭和54年6月14日に行われた保険審議会の答申において,地震保険について消費者に対する周知方法が不十分であり,今後,損害保険業界をあげてその周知に全力を尽くすべきであることが指摘されており,また,昭和55年5月に行われた衆議院・参議院各大蔵委員会においても,地震保険の損害を査定する要綱等が募集段階で一般に分かるようにしなければならないこと,昭和53年6月12日発生した宮城沖地震のときは,消費者に正確に地震保険の中身が伝わっていなかったという面もあったこと,最も大切なことは,地震保険に対する正しいPR,内容を正確に国民一般つまり契約者に知らせることであること,保険を巡るトラブルが,契約段階で十分内容が知らされていなかったような事例が 面もあったこと,最も大切なことは,地震保険に対する正しいPR,内容を正確に国民一般つまり契約者に知らせることであること,保険を巡るトラブルが,契約段階で十分内容が知らされていなかったような事例が相当見られるので,損害査定要綱を含めて,地震保険の新制度の内容を契約者に十分周知徹底させるために,PR,パンフレット,契約のしおりについて重要な事項を的確に表現する必要があること等について政府委員による答弁・指摘がなされている。(以上につき,甲153,甲154の1ないし3,弁論の全趣旨)オ旧募取法16条1項1号(現保険業法300条1項1号)は,「保険契約の条項のうち重要な事項を告げない行為」を罰則をもって禁止しているところ,地震保険及び火災保険契約申込書における地震保険確認欄への押印に関する情報は,消費者が地震災害にどのように対処するかを決定するに当たって不可欠の情報であり,旧募取法16条1項1号(現保険業法300条1項1号)所定の「保険契約の契約条項のうち重要な事項」に該当するものと解される。 とりわけ,地震によって生ずる損害は,一般の火災保険においては地震免責条項によって担保されないこととされている一方,前記(2)で説示のとおり,地震保険は一般の火災保険に付帯してのみ申込みが可能であり,したがって,一般の火災保険の申込者は,その申込みに当たって,地震保険意思確認欄への押印の意味を知ることなく,自らこれを行ったり,あるいは火災保険契約申込書への押印を損害保険会社代理店などの従業員に委任したりしたような場合には,地震保険契約締結の申込みをする機会を失い,ひいてはその後地震に遭遇した場合の損害の填補を受けられなくなる立場に立たされることになる。 カこのように,保険会社と消費者との間において,地震保険に 契約締結の申込みをする機会を失い,ひいてはその後地震に遭遇した場合の損害の填補を受けられなくなる立場に立たされることになる。 カこのように,保険会社と消費者との間において,地震保険に関する情報面での格差が著しいこと,原則付帯方式及び地震保険意思確認欄への押印による地震保険不付帯の意思の確認が行われる地震保険法及びその運用方式は,保険会社又はその代理店による地震保険・意思確認欄への押印についての情報提供・説明を当然の前提としており,同法の上記改正の際の審議会答申・委員会での質疑応答でも,この説明の重要性を指摘しており,旧募取法(現保険業法)などにおいて保険会社に説明義務が課せられている重要事項にも当たると解されることなどを総合するならば、損害保険会社である第1審被告らは,第1審原告らが本件火災保険の申込みをするに当たって,地震保険の内容及び地震保険意思確認欄への押印の意味すなわち同欄への押印によって地震保険不付帯の法律効果が生じることについての情報提供・説明をすべき信義則上の義務があるといわなければならない。 (4) そこで,第1審被告らの上記情報提供・説明義務違反の有無及び第1審原告ら主張の,予備的請求その2の1次的,2次的主張の損害の有無について検討する。 まず,これら義務違反の点についてみると,証拠(甲81,83,87,90,94,97,99,101ないし103,106,107,110,111の1,2,甲113,129ないし132,乙A5の1,乙A13,14,22,25,乙B17の1,乙B18,20の1,乙B24の1,乙B27,28の1,乙C6ないし9,乙D13,15,乙D19,乙E10,乙F1の1,乙F3の1,2,乙G5,乙I1の1,2,乙I2,乙L5,7,8,乙M2)に弁論の全趣旨を総合する 乙B24の1,乙B27,28の1,乙C6ないし9,乙D13,15,乙D19,乙E10,乙F1の1,乙F3の1,2,乙G5,乙I1の1,2,乙I2,乙L5,7,8,乙M2)に弁論の全趣旨を総合すると、第1審原告らの本件火災保険契約申込書の地震保険確認欄に押印又はサイン(第1審原告A6のみ)がされているもののうち,第1審原告A6のサイン並びに同A11,同A5及び同A9の各押印は同原告らの手又は印鑑によるものではないこと,第1審原告A7,同A6(乙B18の分),同A13,同A9(乙C6,7の分),同A8,同A1,同A2,同A10,同A14の各押印は,いずれも同原告らの印鑑によるものであるけれども,これらの印鑑は,第1審原告らが保険代理店又は保険代理店から委託を受けた金融機関の従業員らに渡し,これらによって押捺されたものであること,第1審原告らの地震保険確認欄への押印に先立ち,第1審原告らが第1審被告ら又はその委託を受けた者らから,地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味内容について情報の提供及び説明を受けたことはないこと,ところで第1審原告A23については,同第1審原告は,本件建物38,本件家財36,同39について地震保険契約を締結して地震保険金を受領済みであり,地震保険について,第1審被告B7の2保険の合併前会社であるB7の3保険株式会社又は,その保険代理店従業員から説明を受けた可能性があること,以上の事実が認められる。 これらの事実によれば,第1審被告らには,第1審原告A23を除くその余の第1審原告らに対する関係で,上記情報提供・説明義務に違反する点があったというべきである。 ところで,第1審原告らの予備的請求その2の1次的主張は,第1審被告らは消費者たる第1審原告らが地震保険に加入するという自己決定をする機 説明義務に違反する点があったというべきである。 ところで,第1審原告らの予備的請求その2の1次的主張は,第1審被告らは消費者たる第1審原告らが地震保険に加入するという自己決定をする機会を喪失せしめたとの自己決定権侵害により,第1審原告らが地震保険に加入していたならば得られたであろう地震保険金額相当額から地震保険料相当額を控除した額の損害を賠償すべき義務を負う,というものであるから,それは本件各火災保険契約を締結した者(第1審原告ら)が地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味に関して説明を受けていたとすれば,各々が,地震保険に加入していたであろうということが前提となるところ,一般の火災はいつ起こるか分からず,それによって自己の建物や家財が被害を受けるおそれがあるものの,地震国といわれる日本においても,本件地震のような巨大な地震が自己の住む地域で起こることはまずはないであろうと考えるのが,少なくとも阪神・淡路大震災以前においては阪神間における通常人の認識であったと考えられること,阪神間における地震保険加入率が阪神・淡路大震災以前は非常に低い状況にあったこと(弁論の全趣旨),地震保険に加入するには火災保険の保険料に比べて高額の保険料の負担を伴うこと等の事情にかんがみると,本件各火災保険契約を締結した者(第1審原告ら)が地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味に関して説明を受けていたとしても,その各々が,地震保険に加入していた蓋然性が高いとまでは認め難く,したがって,第1審原告らの主張する,地震保険金額から地震保険料相当額を控除した金額全額をもって,前記第1審被告らの情報提供・説明義務違反によって生じた損害ということは困難である。 しかしながら,第1審原告A23を除く第1審原告らは,第1審被告らの情報提供・説明義 全額をもって,前記第1審被告らの情報提供・説明義務違反によって生じた損害ということは困難である。 しかしながら,第1審原告A23を除く第1審原告らは,第1審被告らの情報提供・説明義務の履行によって,一般の火災保険に加えて,地震保険確認欄への押印をすることなく,第1審被告らからの説明に基づき保険金額及び保険料の選択をして地震保険契約締結の申込みをした可能性も否定できないのであって,この自己決定の機会を喪失したことによる同第1審原告らの精神的苦痛に対する慰謝料は,これをもって第1審被告らの義務違反と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。そして,その金額は,前記で認定のとおり,第1審被告らの義務違反が故意に地震保険及び地震保険確認欄への押印の意味内容を秘匿した上,同欄への押印を要求した態様のものとまでは認め難く,不作為の違法にとどまっていると解せられること,同第1審原告らが地震保険契約を締結していたならば得られたであろう地震保険金額と保険料との差額などを総合考慮すると,同第1審原告らの慰謝料としては,各差額の10分の1(ただし,円未満切り捨て)をもって相当と認める。 ところで,第1審原告A17の2,同A3及び同A20について,これら慰謝料額を超えて,主位的請求である本件火災保険契約に基づく保険金額を認容すべきことは前記で認定説示のとおりであるから,予備的請求に係る慰謝料を重ねて認容することはできない。 7 争点(8)(第1審原告A3の当審における追加的請求原因)について第1審原告A3は,本件保険の目的について,A3の家族が有する共有持分についても同第1審原告によって他人のためにする保険契約が締結されていると主張する。 まず,第1審被告B10との関係においてこれを見ると,証拠(乙K 目的について,A3の家族が有する共有持分についても同第1審原告によって他人のためにする保険契約が締結されていると主張する。 まず,第1審被告B10との関係においてこれを見ると,証拠(乙K3)と弁論の全趣旨によれば,同第1審被告宛の本件保険契約申込書には,被保険者としてA3の家族の名前が記載されていないことが認められるから,同第1審原告が同第1審被告との間で,A3の家族を被保険者とする他人のためにする保険契約を締結したとは認め難い。次に,第1審被告B1との関係においてこれを見ると,証拠(乙A19)によれば,同第1審被告宛の本件保険契約申込書に被保険者としてA3の家族の名前が記載されていることがうかがわれるので,第1審原告A3主張のA3の家族のためにする保険契約が締結されていると認め得る余地が存するけれども,A3の家族共有持分について保険金を請求できるのは被保険者であるA3の家族であって同第1審原告ではないことが明らかであるところ,A3の家族において自らその共有持分に係る保険金を請求することに何らの支障もうかがえない本件にあっては,同第1審原告の任意的訴訟担当云々の主張は,少なくともこれを認めるべき合理的必要性を是認することができない点において失当である。 第1審原告A3のA3の家族共有持分に係る追加的主張は理由がない。 第5 結論よって,第1審原告らの第1審被告らに対する本訴請求は,第1審原告A3の第1審被告B1に対する主位的請求のうち,280万円及びこれに対する平成7年3月20日から支払済みまで商事法定利率(以下同じ)年6分の割合による金員の支払を求める限度で,同第1審原告の第1審被告B10に対する主位的請求のうち,1180万円及びこれに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を )年6分の割合による金員の支払を求める限度で,同第1審原告の第1審被告B10に対する主位的請求のうち,1180万円及びこれに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で,第1審原告A17の2の第1審被告B5に対する主位的請求のうち,200万円及びこれに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で,並びに第1審原告A20の第1審被告B8の1保険に対する主位的請求のうち,480万円及びこれに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度でそれぞれ理由があり,第1審原告A3,同A17の2及び同A20のその余の主位的請求,その余の第1審原告らの主位的請求はいずれも失当であるから棄却し,第1審原告らの予備的請求その2は,第1審被告B1に対し,第1審原告A1が74万5350円,第1審原告A2が47万0582円,第1審原告A4の2が43万8771円,第1審原告A5が54万4885円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払を求める限度で,第1審被告B2に対し,第1審原告A6が64万8165円,第1審原告A7が57万3375円,第1審原告A8が9万9560円,第1審原告A9が54万8475円,第1審原告A10が97万2800円,第1審原告A11が49万8630円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で,引受参加人に対し,第1審原告A9が29万8245円,第1審原告兼第1審原告A12訴訟承継人A13が14万9205円,第1審原告A14が24万5200円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で,第1審 審原告兼第1審原告A12訴訟承継人A13が14万9205円,第1審原告A14が24万5200円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で,第1審被告B4の1に対し,第1審原告A14が47万5300円,第1審原告A15が54万8430円,第1審原告A16が109万2055円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払を求める限度で,第1審被告B6の2に対し,第1審原告A1が36万9600円,第1審原告A18が67万3132円,第1審原告A19が39万1345円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で,第1審被告B7の1保険株式会社訴訟承継人B7の2保険に対し,第1審原告A2が9万8860円,第1審原告A19が78万5740円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で,第1審被告B9に対し,第1審原告A21が9万9080円,同A22が38万9120円及びこれらに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で,第1審被告B11に対し,第1審原告A24が99万6900円及びこれに対する平成7年3月20日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で,それぞれ理由があるから認容し,第1審原告A3,同A17の2,同A20を除く第1審原告らのその余の予備的請求その2,第1審原告A3,同A17の2及び同A20の予備的請求その2はいずれも失当であるから棄却すべきである。 よって,原判決中これと一部結論を異にする部分は不当であるから,第1審原告A20,同A3,同A17の2及び同A23を除く第1審原告らの控訴 その2はいずれも失当であるから棄却すべきである。 よって,原判決中これと一部結論を異にする部分は不当であるから,第1審原告A20,同A3,同A17の2及び同A23を除く第1審原告らの控訴に基づき上記のとおり変更し,第1審原告A20を除く第1審原告らの当審において追加された予備的請求その1はいずれも失当であるから棄却し,第1審原告A3,同A17の2及び同A23の本件各控訴,第1審被告B8の1保険,同B1,同B10及び同B5の本件各控訴はいずれも失当であるから棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法67条1項,2項,61条,65条1項,64条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第九民事部 裁判長裁判官根本眞裁判官鎌田義勝裁判官松田亨(別紙当事者の表示、別表及び図面省略)
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