平成16(行コ)30 所得税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成12年(行ウ)第191号)

裁判年月日・裁判所
平成17年3月10日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文12,771 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 原判決主文第1項を取り消す。 (2) 上記取消しに係る被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 控訴の趣旨に対する答弁主文同旨第2 事案の概要1(1)ア被控訴人は,別件訴訟において,平成8年5月31日,Aとの間で,Aから原判決の別紙物件目録記載1の土地及び同目録記載2の土地(合計面積879.95㎡。以下,これらを併せて「本件土地」という。)を現状有姿のまま代金1億8350万円で買い受けることなどを内容とする裁判上の和解(以下「本件和解」という。)をした。被控訴人は,平成8年6月10日,本件土地から譲渡しない土地(全体の11.36%相当の100㎡。以下「本件非売土地」という。)を除く土地部分(779.95㎡。以下「本件譲渡土地」という。)を,株式会社ハウジング大興(以下「大興」という。)に対し2億4000万円で譲渡した。 イ被控訴人は,大興に対し2億4000万円で譲渡したことにより得た利益について,分離課税の長期譲渡所得として租税特別措置法31条(長期譲渡所得の課税の特例。以下「本件特例」という。)を適用して確定申告した。 ウこれに対し,控訴人は,平成10年6月30日付けで,同譲渡所得は分離課税の短期譲渡所得であり,本件特例の適用はないとして,短期譲渡所得金額を5694万9958円,納付すべき税額を2412万5200円とする更正処分(以下「本件更正」という。)及び過少申告加算税を276万2000円とする賦課決定処分(以下「本件賦課決定」という。)をし を5694万9958円,納付すべき税額を2412万5200円とする更正処分(以下「本件更正」という。)及び過少申告加算税を276万2000円とする賦課決定処分(以下「本件賦課決定」という。)をした。 エ被控訴人は,平成10年9月1日,本件更正及び本件賦課決定に対して異議を申し立てたが,同年12月3日異議を棄却する旨の決定を受けた。被控訴人は,平成11年1月5日,国税不服審判所長に対し審査請求をしたが,平成12年4月24日審査請求を棄却する旨の裁決を受けた。 (2) 本件は,被控訴人が控訴人に対し,短期譲渡所得としてされた本件更正には次の違法があると主張して,本件更正及び本件賦課決定の取消しを求めた事案である。 ア主位的主張本件和解は所有権移転過程と異なるものであり,要素の錯誤があるから無効である。被控訴人は,本件譲渡土地について2万4000分の5650の共有持分を有しており,本件非売土地はもともと被控訴人の所有である。したがって,上記共有持分権の譲渡に係る部分は,分離課税の長期譲渡所得に当たり,当該所得に本件特例の適用がある。 イ予備的主張被控訴人及びAは,立退料の性格を有する和解金の支払に代えて,本件土地の総額から当該和解金相当額を控除した額で被控訴人に譲渡した。その立退料相当の利得は一時所得に当たる。 (3) これに対し,控訴人は,次のとおり主張して争った。 ア主位的主張のうち,本件和解が無効であること,本件土地につき被控訴人が所有権ないし共有持分を有することを争う。被控訴人は平成8年中にAから本件土地を売買により取得し,同年中に本件土地の一部である本件譲渡土地を大興に譲渡した。したがって,当該譲渡に係る所得は分離課税の短期譲渡所得に該当し,また,本件建物に所有者として居住していた期間が 件土地を売買により取得し,同年中に本件土地の一部である本件譲渡土地を大興に譲渡した。したがって,当該譲渡に係る所得は分離課税の短期譲渡所得に該当し,また,本件建物に所有者として居住していた期間がないから,本件特例の適用はない。 イ予備的主張を否認ないし争う。 2 第1審裁判所は,次のとおり判断して,被控訴人の請求のうち,本件更正のうち税額998万8500円を超える部分及び本件賦課決定のうち税額64万1000円を超える部分をいずれも取り消す限度で認容し,その余を棄却した。 (1) 本件和解には何らの瑕疵もない。本件和解当時,被控訴人が本件土地に関して所有権や共有持分権を有していたとは認められない。 (2)ア本件和解を成立させる前提として,Aが被控訴人に対して有する本件土地について双方が客観的な時価と認識していた2億6000万円の代金請求権と,被控訴人がAに対して有する和解金(立退料)支払請求権が対当額で相殺され,その残額のみが本件土地の代金額1億8350万円として本件和解調書に記載されて本件和解が成立した。 被控訴人が,本件土地を取得するに当たって負担した費用は,Aに対して支払った1億8350万円(本件非売土地の代金相当額を除く。)に,被控訴人が本来受け取るべきであった立退料(ただし,本件土地全体に占める本件譲渡土地部分の割合に応じた金額)としての和解金額を加えた総額であった。被控訴人が受け取るべき立退料は,上記2億6000万円から現実にAに支払った1億8350万円との差額である7650万円であり,本件譲渡土地についての立退料は,地積比で算出すると6780万6324円になる。 イ被控訴人が本件譲渡土地の取得に要した費用は,2億3045万2866円である。また,本件譲渡土地の譲渡費用は,合計2040万 の立退料は,地積比で算出すると6780万6324円になる。 イ被控訴人が本件譲渡土地の取得に要した費用は,2億3045万2866円である。また,本件譲渡土地の譲渡費用は,合計2040万3500円である。本件譲渡所得は分離課税の短期譲渡所得であって,1085万6366円の損失が生じている。 ウ被控訴人は,Aから和解金として7650万円の支払を受けているものとみるべきところ(実際には本件土地の代金額と相殺されている),この和解金は本件土地及び本件居宅の明渡訴訟における立退料としての性質を有し,被控訴人の一時所得である。 (3) 被控訴人の納付すべき税額は998万8500円であるから,本件更正のうちこれを超える部分は取り消されるべきである。 (4) 被控訴人の納付すべき過少申告加算税の額は64万1000円であるから,本件賦課決定のうちこれを超える部分は取り消されるべきである。 これに対し,控訴人が上記判決について控訴した。 3 前提事実,争点,当事者の主張は,次のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の第2の1ないし3と同じであるから,これを引用する。 (付加)(1) 被控訴人の当審における予備的主張の追加本件和解において,Aが被控訴人に対し本件土地を1億8350万円で売却したのは,本件土地について被控訴人の使用借権が存することを考慮し,本件土地の時価2億6000万円から被控訴人の使用借権の価格分を控除したものである。したがって,その差額の7650万円は,被控訴人の本件土地についての使用借権の対価である。 (2) 控訴人の認否ア上記(1)の事実を否認する。 イ仮に被控訴人に使用借権があるとしても,使用借権は譲渡性,相続性に欠けるから,経済的価値はない。 用借権の対価である。 (2) 控訴人の認否ア上記(1)の事実を否認する。 イ仮に被控訴人に使用借権があるとしても,使用借権は譲渡性,相続性に欠けるから,経済的価値はない。 また,Bは,A及びCの申出により3か月以内に無断使用土地を無条件で明け渡すとの念書を交わしているから,これをBの本件土地についての使用借権とみるとしても,立退料を請求し得ないものである。しかも,B(及びその妻被控訴人)は昭和30年から平成7年まで約40年間本件土地の使用を継続しているから,Aは民法597条2項ただし書の規定により被控訴人に対して本件土地等の返還請求を求めることも可能であったとみるべきである。したがって,被控訴人の本件土地についての使用借権は,経済的価値がないから,その移転補償金相当の金銭の授受については贈与があったものとみなされ,贈与税の対象になるだけのことである。 第3 当裁判所の判断 1 事実関係証拠(甲2ないし6,8ないし13,24,乙1の1及び2,2ないし7,11,12の1及び2,14,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,本件和解に至る経緯等について,次の事実が認められる。 (1) 被控訴人の夫Bは,昭和30年ころから,本件土地上に存する原判決の別紙物件目録記載3の建物(以下「本件居宅」という。)に居住して,本件土地において植木屋を営むほか,共同住宅等4棟(以下「本件共同住宅」という。)を同土地上に建築して賃貸収入を得るなどしていた。 被控訴人は,昭和62年ころからBと内縁関係となって本件居宅に居住し始め,平成5年10月7日Bと婚姻の届出をした。Bは,平成6年1月19日に死亡した。 (2) 本件土地は,もとEの所有であったところ,昭和9年5月28日売買によりBの兄Fに所有権移転登記がされ,昭 め,平成5年10月7日Bと婚姻の届出をした。Bは,平成6年1月19日に死亡した。 (2) 本件土地は,もとEの所有であったところ,昭和9年5月28日売買によりBの兄Fに所有権移転登記がされ,昭和45年3月30日に昭和30年7月3日F死亡による相続を原因として,Fの子であるG,H,I及びJに相続登記がされ,昭和58年8月9日に同年7月27日交換を原因としてFの長男Kに所有権移転登記がされ,平成2年2月9日に平成元年8月14日K死亡による相続を原因として,Kの妻Aに相続登記がされている。 本件居宅は,昭和45年3月30日に昭和30年7月3日F死亡による相続を原因として,Kに相続登記がされ,平成2年2月9日に平成元年8月14日K死亡による相続を原因として,Aに相続登記がされている。 (3) Bは,平成2年12月に本件土地上に本件共同住宅の一部の建築を始めたが,その際,A及びその子Cから要請を受けて,将来A及びCの申出があった場合,B又はその関係者は3か月以内に無条件にA又はCに同建物を引き渡すか,又はこれを取り壊して無断使用土地部分を明け渡すことを約す旨の念書を差し入れた。 (4) Aは,平成6年ころ,多額の相続税の納税に迫られ,本件土地を売却することによって納税資金を確保したいと考えたが,本件土地上には,被控訴人が居住する本件居宅と,B(同人の死亡後は被控訴人)が第三者に賃貸している本件共同住宅とが存在していたため,本件土地を売却することができないでいた。 被控訴人側はA側に対して,本件土地を被控訴人が買い取り,被控訴人が居住する土地だけ残して売却し,売却代金の半分をAに支払うという和解案を申し出ていたが,この話はまとまらなかった。 そこで,Aが,平成7年5月,本件土地上に存する本件居宅はAの所有であり,被 居住する土地だけ残して売却し,売却代金の半分をAに支払うという和解案を申し出ていたが,この話はまとまらなかった。 そこで,Aが,平成7年5月,本件土地上に存する本件居宅はAの所有であり,被控訴人は何らの権限もなく本件居宅に居住し本件土地を占有しているとして,本件土地及び本件居宅の明渡しを求める訴えを東京地方裁判所八王子支部に提起したところ,被控訴人は,本件土地について20年の取得時効の完成によって所有権を取得したとして,本件土地についての移転登記手続を求める反訴を提起した(以下「別件訴訟」という。)。 別件訴訟では,裁判所の勧告を受けて和解交渉が行われた。当初は,裁判官から「土地の使用借権だから,更地の1~2割が立退料の相場」との話もあって,Aも無償で立退きを求めるのは無理と考え,被控訴人に立退料を支払う方向で交渉が行われ,A側が2000万円程度の金額を提示したのに対し,被控訴人は,8000万円程度を要望していた。 しかし,和解交渉の過程で,Aは,本件土地上に被控訴人の居住する本件居宅と第三者に賃貸中の本件共同住宅が存在し,本件土地の境界確定に問題があったことから,本件土地売却の前提として,自らが共同住宅の賃借人と明渡交渉を行ったり,境界を確定させることは困難であると考えるようになり,他方,被控訴人も,本件土地から完全に立ち退くのでなく,老後の住居を確保するために本件土地のうちの30坪を取得し,かつ当座の生活費として少なくとも1000万円程度を取得できるような内容の和解を望むようになった。そこで,被控訴人の代理人L弁護士は,平成8年2月ころ,被控訴人が本件土地をいったん取得し,被控訴人の居住に必要な部分を残して,他の部分につき被控訴人において借家人との明渡交渉を行った上で売却し,売却代金の相当部分をAに支払うとい は,平成8年2月ころ,被控訴人が本件土地をいったん取得し,被控訴人の居住に必要な部分を残して,他の部分につき被控訴人において借家人との明渡交渉を行った上で売却し,売却代金の相当部分をAに支払うという枠組みを考案し,以後,このような方向で和解交渉が進行した。なお,双方の訴訟代理人とも,本件土地の当時の時価は坪100万円であり,全体として2億6000万円程度のものであると認識し,その前提で交渉していた。 L弁護士は,同月28日に大興の社員と接触を開始して本件譲渡土地を2億4000万円で購入する意向があることを確認し,本件和解の成立日の直前ころには,被控訴人が本件土地を取得し,そのうち本件非売土地を除いた残りの本件譲渡土地を大興に2億4000万円で売却し,この売却代金のうち1億8350万円をAに取得させ,残りの代金は被控訴人が取得し,その中から被控訴人が借家人の明渡し,更地化合分筆などに必要な費用(以下「更地化等処分費用」という。)を負担するという内容で了解を取り付けた。 (5) 別件訴訟において,被控訴人とAとの間で,平成8年5月31日に,次の内容の本件和解が成立した。 ア Aは被控訴人に対し,同日,本件土地を現状有姿のまま代金1億8350万円で売り渡す。 イ被控訴人はAに対し,前記アの代金を,平成8年6月10日限り支払い,これと引換えにAは本件土地につき前記アの売買を原因とする,被控訴人又は被控訴人の指定する第三者への所有権移転登記手続をする。 ウ Aは被控訴人に対し,平成8年6月10日限り,前記アの代金の支払を受けるのと引換えに,本件土地等についての抵当権設定登記を抹消した上,本件土地を現状有姿のまま引き渡す。 エ Aは,被控訴人から前記アの代金の支払を受けた日限り,被控訴人に対し本件居宅の所有権を放 るのと引換えに,本件土地等についての抵当権設定登記を抹消した上,本件土地を現状有姿のまま引き渡す。 エ Aは,被控訴人から前記アの代金の支払を受けた日限り,被控訴人に対し本件居宅の所有権を放棄し,被控訴人が本件居宅を被控訴人の費用で取り壊すことに異議がない。 (6) 被控訴人と大興は,平成8年5月31日,本件譲渡土地を代金2億4000万円で売却する旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し,その際に次の要旨の特約を締結した。 ア本件売買契約は,被控訴人が本件土地の登記名義人であるAから本件売買契約の諸条件の承認を受けることを停止条件として成立し,万一その承認が得られない場合,被控訴人は大興に受領済みの手付金を返還し,本件売買契約を白紙撤回することができるものとする。 イ被控訴人は内金の受領と同時に,大興に対して本件土地の所有権登記を移転する。 ウ大興は本件土地の合分筆完了後,本件非売土地の所有権登記を被控訴人に返還するものとする。 (7) 本件土地及び本件居宅について,Aから,被控訴人の指定する大興に対し,平成8年6月10日売買を原因とする所有権移転登記がされた。その後,本件非売土地について,同年11月7日付けで真正な登記名義の回復を原因として大興から被控訴人に対し所有権移転の登記がされた。 一方,被控訴人は,同年6月10日ころ,大興から本件売買契約の代金の一部として1億8500万円の支払を受け,Aに本件購入代金1億8350万円を支払った。Aは,これをもって滞納相続税の支払に充てた。 2 所得税の所得区分について(1) 被控訴人は,所得税の所得区分として,主位的に,a 本件土地の所有権移転過程は本件和解とは全く異なっているから,本件和解は要素の錯誤があり無効である,b 被控訴人 得税の所得区分について(1) 被控訴人は,所得税の所得区分として,主位的に,a 本件土地の所有権移転過程は本件和解とは全く異なっているから,本件和解は要素の錯誤があり無効である,b 被控訴人は,本件土地の所有権又は共有持分を有していたとの前提に立って,本件売買契約に係る所得は長期譲渡所得であり本件特例の適用があると主張する。 しかしながら,上記aの点について,本件和解に要素の錯誤があることを認めるに足りる証拠はない。上記bの点について,本件全証拠によっても,本件和解当時,被控訴人が本件土地について所有権や共有持分権を有していたことを認めるに足りない。 したがって,被控訴人の上記主張は,その前提において採用することができない。 (2) 被控訴人は,所得税の所得区分として,予備的に,a 被控訴人及びAは,立退料の性格を有する和解金の支払に代えて,本件土地の総額から当該和解金相当額を控除した額で被控訴人に譲渡した,b 本件土地についての使用借権を有する被控訴人が,Aからその底地所有権を,本件土地の時価2億6000万円からその使用借権分を控除した1億8350万円で購入したものであるとし,その差額は一時所得であると主張する。 そこで,検討するに,本件土地上には,B(同人の死亡後はその妻である被控訴人)が居住する本件居宅と,B(同人の死亡後は被控訴人)が第三者に賃貸している本件共同住宅とが存在しており,B(同人の死亡後は被控訴人)が本件土地及び本件居宅を無償で使用してきたことは前示のとおりである。そうすると,Bは,本件土地上にある本件居宅に無償で居住しており,本件居宅の使用借権を有していたこと,また,本件土地上の一部に本件共同住宅を所有し,使用借権を有していたこと,B死亡後は,その妻である被控訴人が本件土地等に 土地上にある本件居宅に無償で居住しており,本件居宅の使用借権を有していたこと,また,本件土地上の一部に本件共同住宅を所有し,使用借権を有していたこと,B死亡後は,その妻である被控訴人が本件土地等についての使用借権を有していたものと認められる。 そして,① Aが,被控訴人を相手方として,本件土地の所有権に基づき,本件居宅に居住して本件土地及び本件居宅の明渡しを求める別件訴訟を提起したこと,② 被控訴人とAは,別件訴訟において,裁判官の勧告を受けて和解交渉に入り,その過程で,被控訴人代理人L弁護士が,いったん被控訴人が本件土地を買い受けてこれを第三者に売却する方式を考案して,その方向で和解の話を進め,大興と接触して本件譲渡土地を2億4000万円で購入する意向があることを確認した上で,本件和解の成立日の直前ころ,被控訴人が本件土地を取得し,そのうち本件非売土地を除いた残りの本件譲渡土地を大興に2億4000万円で売却し,この売却代金のうち1億8350万円をAに取得させ,残りの代金は被控訴人が取得し,その中から被控訴人が借家人の明渡し,更地化等処分費用を負担するという内容で了解を取り付けたこと,③ 平成8年5月31日,別件訴訟において,Aが被控訴人に本件土地を現状有姿のまま代金1億8350万円で売り渡すことなどを内容とする本件和解が成立したこと,④ 被控訴人と大興は,平成8年5月31日付けで本件譲渡土地について本件売買契約を締結したこと,⑤ 本件土地及び本件居宅について,Aから被控訴人の指定する大興に対し平成8年6月10日売買を原因とする所有権移転登記がされ,その後,本件非売土地について,同年11月7日付けで真正な登記名義の回復を原因として大興から被控訴人に対し所有権移転の登記がされたことは前示のとおりである。 これらの事実を総 移転登記がされ,その後,本件非売土地について,同年11月7日付けで真正な登記名義の回復を原因として大興から被控訴人に対し所有権移転の登記がされたことは前示のとおりである。 これらの事実を総合すると,控訴人の予備的主張のa事実は認め難いものの,本件土地の使用借権を有する被控訴人が,本件和解において,本件土地所有者のAから使用借権負担付きの所有権(使用借権底地)を買い取ることとし,本件土地の時価2億6000万円から本件土地の使用借権負担解消費用相当分と更地化等処分費用負担の補てん分とを控除して,使用借権負担付きの所有権を1億8350万円で購入したものと解される。 そうすると,被控訴人が本件土地を購入したことによって得た,本件土地の時価と本件購入額との差額7650万円は,本件土地の第三者への即売却によって解消させる被控訴人の本件土地についての使用借権の負担解消に伴う損失補償的金員(いわゆる対価性のない立退料)と更地化等処分費用の負担の補てん分であるとみるのが相当である。このうちの少なくとも前者の所得は,譲渡所得以外の所得であって,労務その他の役務の対価でなく,資産の譲渡の対価としての性質も有しないから,所得税法34条1項所定の一時所得に該当するというべきである。そして,このうちの後者の利得分は,本件譲渡土地の譲渡のための必要経費の補てん分であっても,一体の処分として行われる後の譲渡費用の経費として取り扱えば足りるから,被控訴人の本件土地取得の段階では一時所得としてみるのが相当である。 (3)アこれに対し,控訴人は,a 被控訴人の申告に従い,本件譲渡土地との取得とその後の転売という事実経過に即して短期譲渡所得とみて処分を行ったにすぎず,申告納税制度の下で当然の処分を行ったものである,b 被控訴人に使用借権があるとしても,使 告に従い,本件譲渡土地との取得とその後の転売という事実経過に即して短期譲渡所得とみて処分を行ったにすぎず,申告納税制度の下で当然の処分を行ったものである,b 被控訴人に使用借権があるとしても,使用借権に経済的価値はない,cBは,A及びCの申出により3か月以内に無断使用土地を無条件で明け渡すとの念書を交わしているから,これをBの本件土地についての使用借権とみるとしても,立退料を請求し得ないものであり,しかも,昭和30年から平成7年まで約40年間使用を継続しているから,Aは民法597条2項ただし書の規定により被控訴人に対して本件土地等の返還請求を求めることも可能であったとみるべきであり,本件土地についての使用借権は経済的価値がないから,それに対して支払われた立退料的金員は贈与であると主張する。 イしかしながら,上記aの点について,本件和解において,本件土地の使用借権を有する被控訴人が,本件土地所有者のAからその使用借権負担付きの所有権を買い取ることとし,本件土地の時価2億6000万円から本件土地の使用借権負担解消費用相当分等を控除して1億8350万円で購入したこと,本件土地の第三者への即売却によって得た本件土地の時価と本件購入額との差額7650万円は,本件土地の使用借権負担消滅のための損失補償的金員相当分と更地化等処分費用負担の補てん分であって,一時所得に当たることは前示のとおりである。被控訴人の申告内容が上記認定と異なるからといって,客観的事実判断の下に一時所得に当たるとする判断を否定することはできない。 ウ上記bの点について,土地の使用借権は,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱第12条などにみられるように,使用借主が立ち退く際に補償を要する法的利益のある権利として取り扱われ,また,使用借権負担付きの土地所有権を売 ,土地の使用借権は,公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱第12条などにみられるように,使用借主が立ち退く際に補償を要する法的利益のある権利として取り扱われ,また,使用借権負担付きの土地所有権を売買等取引する際にも使用借権負担分が取引制約要因として正当な減価要因として不動産評価されているものであり,これらの評価において使用借権は借地権の3割くらいで算定されている実例が多いことにかんがみても,土地使用借権は経済的利益のある権益であるというべきである。使用借権が譲渡性,相続性を欠くことをもってその経済的価値を否定することは,少なくとも本件のような所得税課税処理上は相当でない。 エまた,上記cの点について,BがA及びCに念書を交わした事実や,昭和30年から平成7年まで約40年間使用を継続した事実から,直ちにBが本件土地についての使用借権につき,立退料を請求しないとか,経済的価値がないと認めるのは相当でない。 オしたがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 (4) 以上のとおり,被控訴人の上記所得は一時所得である。そうすると,本件売買契約に係る所得を短期譲渡所得としてされた本件更正及び本件賦課決定はいずれも違法であり,取消しを免れない。 3 被控訴人の所得税及び過少申告加算税の各税額(1) 被控訴人の短期譲渡所得被控訴人が,本件譲渡土地の取得に要した費用は,2億3045万2866円〔本件土地の時価2億6000万円に,本件土地に占める本件譲渡土地の地積比の割合(779.95/879.95)を乗じたもの〕とみることができる。 また,証拠(甲17)によれば,本件売買契約に要した譲渡費用は,2040万3500円〔内訳:① フラップに支払った仲介手数料747万円,② フラップを仲介人として本件土地上に存し ができる。 また,証拠(甲17)によれば,本件売買契約に要した譲渡費用は,2040万3500円〔内訳:① フラップに支払った仲介手数料747万円,② フラップを仲介人として本件土地上に存していた本件共同住宅の借家人に対して支払った立退料及び立退きに伴う労務手数料500万円,③ 有限会社佐藤清運に支払った立退料458万3500円,④ Mに支払った境界確認及び現況測量費35万円,⑤ L弁護士に支払った弁護士報酬300万円(L弁護士の上記報酬は別件訴訟の代理人としての報酬であるから,その一部は被控訴人の一時所得に係る費用であるが,これを分けるのは困難である上,これを分けても分けなくても,本件土地の取得と本件譲渡土地の譲渡は実質的には一体の処分であるので,費用の損益通算をすることによって税額は同じになるから,ここで一括して計上する処理をする。)〕であると認められる。 (2) 被控訴人の一時所得上記のとおり,被控訴人が得た本件土地についての使用借権負担分の解消に伴う損失補償的金員相当分及び更地化等処分費用の経費等補償分7650万円(本件土地の時価2億6000万円から本件購入額1億8350万円を控除した額)は,一時所得である。 (3) 被控訴人の所得税額以上を前提として,本件における被控訴人の所得税及び過少申告加算税の各税額について検討する(原判決の別紙平成8年分の被控訴人の納付すべき所得税額のとおり)。 ア雑所得の金額 2万2400円イ一時所得の金額 7600万0000円ただし,被控訴人が本件土地の使用借権負担分の解消に伴う損失補償的金員相当分及び更地化等処分費用の経費等補てん分としてAから得た7650万円か 7600万0000円ただし,被控訴人が本件土地の使用借権負担分の解消に伴う損失補償的金員相当分及び更地化等処分費用の経費等補てん分としてAから得た7650万円から所得税法34条2項の特別控除額50万円を控除した額ウ分離課税の短期譲渡所得の金額 △1085万6366円ただし,本件譲渡土地の売却金額である2億4000万円から,本件譲渡土地の取得に要した費用2億3045万2866円及び本件譲渡土地の譲渡費用2040万3500円の合計額を控除した額エ総所得金額 3259万4217円ただし,所得税法69条1項,同施行令198条2号の定めによりイの金額からウの金額を控除した後の金額に所得税法22条2項2号により2分の1を乗じて算出した金額に,アの金額を加えた額オ所得控除金額 45万6400円カ課税総所得金額 3213万7000円ただし,前記エから前記オを控除した後の額(国税通則法118条1項により,1000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)キ納付すべき税額 998万8500円ただし,前記カに対し,所得税法89条の税率を適用し,さらに平成8年分所得税の特別減税のための臨時措置法(平成8年法律第18号)4条による特別減税額5万円を控除した額(国税通則法119条1項により,100円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)(4) 本件更正の違法本件更正は被控訴人の納付すべき税額を2412万5200円としているところ,前記認定のとおり被控訴人の納付すべき税額は998万8500円であ の金額である。)(4) 本件更正の違法本件更正は被控訴人の納付すべき税額を2412万5200円としているところ,前記認定のとおり被控訴人の納付すべき税額は998万8500円である。したがって,本件更正のうちこれを超える部分は取り消されるべきである。 (5) 本件賦課決定の違法被控訴人の納付すべき過少申告加算税の額は,64万1000円〔内訳:① 被控訴人が新たに納付すべきことになった税額570万円(被控訴人の納付すべき税額998万8500円から期限内申告税額428万1200円を控除した金額。ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てたもの)に,同法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額57万円,② 同条2項の規定に基づき,新たに納付すべき税額のうち期限内申告税額428万1200円を超える部分に相当する税額142万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てたもの)に,100分の5の割合を乗じて算出した金額7万1000円〕となる。 したがって,本件賦課決定276万2000円のうち64万1000円を超える部分は取り消されるべきである。 4 結論以上によれば,本件更正のうち,税額998万8500円を超える部分,また,本件賦課決定のうち,税額64万1000円を超える部分はいずれも取り消すべきであり,被控訴人のその余の請求は理由がないから棄却すべきであり,これと結論を同じくする原判決は相当である。 よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部裁判長裁判官鬼頭季郎裁判官納谷 件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部裁判長裁判官鬼頭季郎裁判官納谷肇裁判官畠山稔

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