主文 1 被告は,原告に対し,4329万1607円及びこれに対する平成14年5月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の主位的請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その3を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求被告は,原告に対し,6184万5153円及びこれに対する平成14年5月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求(1) 被告は,原告に対し,2812万2546円及びこれに対する平成12年10月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 被告は,原告に対し,67万7250円及びこれに対する平成13年5月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,建物等の建築工事を注文した原告が,これを請け負った被告に対し,建築された建物には重大な瑕疵があるとして,請負人の瑕疵担保責任又は債務不履行責任に基づき,主位的に,建物の解体,再建築に要する費用相当額及び遅延損害金の賠償を,予備的に,建物の瑕疵の修補に要する費用相当額及び遅延損害金の賠償を請求する事案である。 1 争いのない事実等(1) 当事者原告は,肩書地において,車いす用緊急避難装置,ロープウェイ・ゴンドラ・リフト用救助装置等を制作,販売する日本レック株式会社を経営する者であり,被告は,肩書地において,住宅資材の製造販売,建築工事の請負及び設計施工等を業とする株式会社である。 (2) 契約締結までの経緯ア原告は,平成3年5月29日,別紙物件目録(略)記載1(1)ないし(4)の各土地(以下「本件土地」という。)を購入した。そして,原告は,個人及び上 する株式会社である。 (2) 契約締結までの経緯ア原告は,平成3年5月29日,別紙物件目録(略)記載1(1)ないし(4)の各土地(以下「本件土地」という。)を購入した。そして,原告は,個人及び上記日本レック株式会社の事務所兼保養所などとして利用するため,本件土地上に別紙物件目録(略)記載2の建物(以下「本件建物」という。)を建築する計画を立て,同年7月,被告に対し,本件建物の建築を発注することを決定した。原告は,本件建物建築の前作業として,本件土地の抜根及び整地工事,配水管移設及び擁壁工事等を発注し,被告はこれを受注した。 上記前作業としての工事は,同年10月中旬に終了し,原告は,被告に対し,同工事に関する請負工事代金として,被告の請求に従い246万8524円を支払った。 イ原告は,被告との間で,平成4年1月22日,次の約定による,本件土地上に本件建物を建築することを目的とする請負契約(以下「本件建物建築請負契約」という。)を締結した。 (ア) 注文者原告請負人被告(イ) 工事内容木造板金葺タイル貼2階建延床面積 1階床面積 112.00平方メートル2階床面積 160.00平方メートル工事面積 1階工事面積 165.10平方メートル(ウ) 着工時期平成4年1月22日(エ) 完成時期平成4年7月末日(オ) 引渡期日平成4年7月末日(カ) 請負代金工事価格(消費税を除く。) 4300万円(キ) 支払方法契約締結時 2400万円完成引渡時 1900万円なお,消費税相当額を併せて支払う。 ウ原告は,被告との間で,本件建物建築請負契約の締結と同時に,次の約定による,本件建物の暖房設備工事を目的とする請負契約を締結した(以下,この契約と本件建物建築請負契約とを併せて「本件請負契約」という。)。 (ア) 注文 ,本件建物建築請負契約の締結と同時に,次の約定による,本件建物の暖房設備工事を目的とする請負契約を締結した(以下,この契約と本件建物建築請負契約とを併せて「本件請負契約」という。)。 (ア) 注文者原告請負人被告(イ) 工事内容暖房設備工事(ウ) 着工時期平成4年1月22日(エ) 完成時期平成4年7月末日(オ) 引渡期日平成4年7月末日(カ) 請負代金工事価格(消費税を除く。) 870万円(キ) 支払方法契約締結時 580万円完成引渡時 290万円なお,消費税相当額を併せて支払う。 (3) 本件請負契約締結後工事完成までの経緯ア原告は,被告に対し,平成4年1月31日,本件請負契約に基づき契約締結時に支払うべき2980万円を支払い,また,同年7月7日には,残金の一部として2000万円を支払った。 イ本件請負契約に基づく工事は,着工後,その内容に若干の変更が生じたため,本件請負契約に基づく請負工事代金が次のとおり変更された。 (ア) 減少工事金額 92万4225円(イ) 増加工事金額 926万8063円ウ被告は,原告に対し,平成4年8月中旬ころ,本件建物が完成した旨連絡した。原告は,同月19日,本件建物において,被告の代表者であるAと会い,引渡しにおける依頼事項を「最終願事項」と題する書面(甲7)にまとめ,Aに対し,完成とするためには同書面に記載した点についてすべて対応してもらいたい旨伝えて同書面を交付し,Aはこれを承諾した。 エ原告は,被告に対し,平成4年8月20日,本件請負契約に基づく請負工事残代金の全額である1204万5153円を支払った。 オ原告は,被告から,上記エの後の平成4年8月末ころ,本件建物の引渡しを受けた(原告本人)。 (4) 工事完成後の経緯ア原告は,被告に対し,平成7年1月1 である1204万5153円を支払った。 オ原告は,被告から,上記エの後の平成4年8月末ころ,本件建物の引渡しを受けた(原告本人)。 (4) 工事完成後の経緯ア原告は,被告に対し,平成7年1月18日付け書面(甲9)を送付し,被告は,これに対し,同年2月3日付け書面(甲10)により回答した。 イ平成9年7月末ころ,強い雨のため,本件建物の2階天井裏から雨漏りが生じ,本件建物1階天井部分のボードが水を含んで広範囲にわたりはがれ落ちた(甲11の1,2。以下「本件漏水事故」という。)。 ウ原告は,平成11年8月26日,被告を相手方として,群馬県建設工事紛争審査会に対し,本件建物の補修,本件建物に関する最終配管系統図等の書面の引渡し及び慰謝料1050万円の支払等を内容とする調停を申し立てた。これに対し,被告が,①本件建物の屋根の構造は,原告の指示によるもので,被告に責任はない,②本件建物の雨漏りは,原告が屋根の排水溝の掃除を怠ったことによるもので,被告に責任はない,③瑕疵修補期間が経過している旨反論し争ったため,平成12年4月19日,群馬県建設工事紛争審査会による第3回目の調停において,本件建物の現地調査が実施された(以下「本件現地調査」という。)。 エその後,さらに,平成12年6月15日,同年8月3日及び同年9月20日の3回にわたり,群馬県建設工事紛争審査会により調停による話合いの場が設けられたが,原被告間の提案に大きな隔たりがあったことから,調停手続は打ち切られた。 オ原告は,被告に対し,平成12年10月27日に被告に送達された本訴状によって,別紙1(略)記載の本件建物の修補に要する費用2812万2546円及びこれに対する本訴状送達日の翌日である同月28日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を請求した。 カ て,別紙1(略)記載の本件建物の修補に要する費用2812万2546円及びこれに対する本訴状送達日の翌日である同月28日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を請求した。 カ原告は,被告に対し,平成13年5月18日に被告に送達された準備書面によって,別紙2(略)記載の本件建物の修補に要する費用に消費税相当額を加算した67万7250円及びこれに対する上記準備書面送達日の翌日である同月19日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を請求した。 キ原告は,被告に対し,平成14年5月24日に被告に送達された準備書面によって,本件建物の解体,再建築に要する費用として6184万5153円及びこれに対する上記準備書面送達日の翌日である同月25日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を請求した。 2 争点(1) 本件建物に被告の責めに帰すべき瑕疵が存するか。 (原告の主張)本件建物には,下記のとおり,被告の責めに帰すべき瑕疵が存するところ,これらの欠陥は,いずれも経時変化によって生じたものではなく,施工当時から存在していた欠陥である。そして,本件建物は,上記欠陥により,全体の構造上の耐力が不足しており,もはや個別の補修によって対応することはできず,建て直しを必要とする状態になっている。そこで,原告は,被告に対し,請負人の瑕疵担保責任又は債務不履行責任に基づき,主位的には,下記(2)(原告の主張)アに記載された本件建物の解体及び再建築に要する費用相当額の損害賠償を請求する。 また,仮に,本件建物の建て替えをせずに補修によって下記の瑕疵を除去することができる場合であっても,原告は,被告に対し,請負人の瑕疵担保責任又は債務不履行に基づき,予備的に,別紙1(略)及び別紙2(略)に記載され 件建物の建て替えをせずに補修によって下記の瑕疵を除去することができる場合であっても,原告は,被告に対し,請負人の瑕疵担保責任又は債務不履行に基づき,予備的に,別紙1(略)及び別紙2(略)に記載された瑕疵修補に要する費用相当額の損害賠償を請求する。 なお,被告は,本件建物を設計図書を作成することなく建築したが,建物を建築するに当たり設計図書を作成することは,瑕疵のない建物を建築するために必要な最低限の要請であり,建築業者の基本的義務であるから,これを怠ったことは,それ自体被告の義務違反である。また,建築士法3条の2第1項は,「延べ面積が300平方メートルを超える木造の建築物」については,1級建築士又は2級建築士でなければその設計又は工事監理をしてはならないと規定するが,本件建物は,「延べ面積が300平方メートルを超える木造の建築物」であるのに,被告は,1級建築士又は2級建築士による設計及び工事監理をすることなく(仮に,本件建物が「延べ面積が300平方メートルを超える木造の建築物」に該当しないとしても,少なくとも木造建築士による設計及び工事監理が必要であるのに,被告は,木造建築士による設計及び工事監理もしていない。),本件建物を建築した。このことは,建築基準法及び建築士法違反であり,これを怠ったことは,それ自体被告の義務違反である。これら被告の義務違反は,いずれも本件建物について適切な設計及び施工がなされなかったことを示す証左となる。 ア屋根の構造及び排水桝等の構造(ア) 本件建物のような木造建築物において,屋根の形状を特定方向に傾斜させて雨水を屋根(片流れ屋根)の一方に集中させ,かつ,集中した雨水を建物内に設置した排水桝によって処理するような構造としたのは設計上の瑕疵である。なぜなら,木造建築物において上記のような構造とすると,建 水を屋根(片流れ屋根)の一方に集中させ,かつ,集中した雨水を建物内に設置した排水桝によって処理するような構造としたのは設計上の瑕疵である。なぜなら,木造建築物において上記のような構造とすると,建物内への漏水の危険性が高くなり,このような設計自体妥当でないからである。 (イ) 仮に,何らかの理由により建物内に排水桝を設置しなければならない事情がある場合には,漏水の危険を回避するため,厳密な雨量計算を行い,当該雨量計算の結果に基づいて,十分な容量のある排水桝を設置することが必要である。しかるに,本件漏水事故の状況をみると,本件建物に設置された排水桝が容量不足であったことは明らかである。加えて,本件建物には,更に次のような設計上の瑕疵が存し,これらの事情が相まって本件漏水事故に至った。 a 本件建物の屋根裏に設置された4つの排水桝のうち,雨水があふれ出た排水桝は両端の2つであるが,このことは,中央の2つの排水桝と両端の排水桝への雨水の流量に大きな差があったことを示している。つまり,上記4つの排水桝を結んでいる排水管の傾斜角度を誤った設計上の瑕疵が存する(漏水の危険を回避するためには,4つの排水桝に均等に水が流れる傾斜角度となるよう排水管を設置する必要がある。)。 b 排水桝の下側部分に取り付けられた排水管は,本件建物の外に向けてほぼ直角に曲がっているが,このような構造では,当然水の流れが悪くなり,漏水の危険性を更に高めることになるので,この点も設計上の瑕疵である。 c 本件建物の2階天井裏に設置されている排水桝の上部には,透き間が明いており,本件漏水事故の際,排水桝にたまった雨水が,この透き間から大量にあふれ出した。すなわち,この点も設計上の瑕疵である。 イ外壁内部の柱及び梁の構造本件建物には,外壁内部の柱及び梁の接着部分が金物で固定さ 漏水事故の際,排水桝にたまった雨水が,この透き間から大量にあふれ出した。すなわち,この点も設計上の瑕疵である。 イ外壁内部の柱及び梁の構造本件建物には,外壁内部の柱及び梁の接着部分が金物で固定されていない(仮に金物で固定されているとしても,金物の大きさが構造上必要な大きさに比して小さいか,又は,金物の数が構造上必要な数よりも少ない。)設計上の瑕疵がある。 本件建物の外壁は,その四隅がいずれも外側に広がっている(四隅の外側にはられたタイルに亀裂(クラック)が生じているのはそのためである。)。また,一部のサッシ取付部において,1センチメートル以上の透き間があり,本件建物が外側に開いている。その原因は,本件建物の外壁を支えている柱及び梁が構造上必要な金物で固定されているべきところ,現実には固定されていない(仮に金物で固定されているとしても,金物の大きさが構造上必要な大きさに比して小さいか,又は,金物の数が構造上必要な数よりも少ない。)ことによるものである。その結果,外壁に亀裂(クラック)が生じ,そこから本件建物内に雨水が漏れた。 ウ外壁のタイルと窓枠のサッシとの接着面の施工本件建物には,その施工上の瑕疵として,本件建物の外壁(タイル)への窓枠サッシの取付方法が不適切である点及びタイルとサッシの間のコーキングが不十分である点の瑕疵が存する。 本件建物の外壁(タイル)への窓枠サッシの取付部分をみると,例えば,サッシの下側部分がタイルの外に飛び出し,あるいは,サッシ回りに透き間があるなど,その取付方法が不適切であり,かつ,タイルとサッシの間のコーキングが不足している。その結果,タイルとサッシの間から本件建物内に雨水が漏れており,本件建物のサッシ回りの漏水はこれが原因である。 エ外壁構造体(タイル下,構造用合板及び柱・間柱)の施工方法本件建 グが不足している。その結果,タイルとサッシの間から本件建物内に雨水が漏れており,本件建物のサッシ回りの漏水はこれが原因である。 エ外壁構造体(タイル下,構造用合板及び柱・間柱)の施工方法本件建物には,外壁の構造体の施工方法が不適切である施工上の瑕疵が存する。本件建物の外壁のタイルは,かなりの部分で外側に膨れ,あるいは広い範囲で下がっている。このような状態になるのは,外壁の構造体の施工方法が不適切であることを意味している。 オ 2階中央部分(車庫の天井部分)の床の構造本件建物には,その2階中央部分(車庫の天井部分)の床を支える梁の大きさ及び数が不十分である設計上の瑕疵が存する。 上記床に相当のたわみが生じているが,これは,上記床の大きさに対して,これを支える梁の大きさ及び数が不十分な点に原因がある。上記床は,その下に車庫があるため,柱によって支えることができず,その結果,梁のみで支えなければならない構造である。このような構造にする場合,床の面積に応じて,構造計算上,十分な大きさ及び数の梁を設け,これによって床を支えなければならない。しかるに,本件建物においては,上記床を支える梁が細いため,上記床の大きさに対する梁としては不十分である。 カ 1階事務室の床の施工本件建物の1階事務室の床が水平でなく,大きくうねっているが,これは,1階事務室の床の施工が不適切であることによるものである。 (被告の主張)原告の主張する設計図書の不存在は,争う。被告は,本件建物建築に際して,1級建築士のBに依頼し,本件建物の平面図,立面図,電気設備図,機械室詳細図,衛生等の図面を作成して原告に交付した。なお,本件建物建築請負契約に係る契約書添付の見積書(設計・運搬費)の項目欄に,「設計・確認費は別途とする」と記載されており,ここでも建築士による設計が予定され 衛生等の図面を作成して原告に交付した。なお,本件建物建築請負契約に係る契約書添付の見積書(設計・運搬費)の項目欄に,「設計・確認費は別途とする」と記載されており,ここでも建築士による設計が予定されている。したがって,建築基準法及び建築士法違反についての原告の主張も争う。 原告が主張する個々の瑕疵についての被告の主張は,下記のとおりである。 なお,原告は,瑕疵修補に代わる損害賠償請求又は債務不履行に基づく損害賠償請求を選択的に主張しているが,民法634条以下の請負人の担保責任に関する規定は,同法559条の特則であるだけでなく,不完全履行に関する規定の特則でもあるから,請負人の担保責任の主張と不完全履行の主張を選択的にすることは許されない。 ア (原告の主張)アについて本件建物が,屋根の形状を特定方向に傾斜させて雨水を屋根(片流れ屋根)の一方に集中させ,かつ,集中した雨水を建物内に設置した排水桝によって処理するような構造であること,木造建築物において,建物内に排水桝を設置するような構造とすることがそれ自体として妥当でないこと及び本件建物には排水桝が4つ設置されていることは認めるが,その余は否認ないし争う。 (ア) (原告の主張)ア(ア)について被告は,当初屋根部分を寄棟か切妻で設計し,屋根材をアーバニー葦としたが,原告が,本件建物を,屋根部分を陸屋根に,外壁を総タイルばりにして,外観をビルのようにすることにこだわったため,被告においてこれを受け入れ,屋根部分を陸屋根に変更した上,屋根部分を外部に飛び出したような形状にし,屋根からの雨水の排水も建物外部で処理できるようにした。 ところが,本件建物建築請負契約の締結後,原告は,北側屋根の突出部分の外観にこだわり,被告に対し,同部分をカットして下部壁面のラインに合わせるよう要求した。被告は,原告の 部で処理できるようにした。 ところが,本件建物建築請負契約の締結後,原告は,北側屋根の突出部分の外観にこだわり,被告に対し,同部分をカットして下部壁面のラインに合わせるよう要求した。被告は,原告の設計変更によると,雨水の排水設備を建物外に設置できなくなり雨漏りの危険が大きくなるのでとても受け入れられない旨伝えたが,原告は納得せず,排水桝を屋根裏に取り込む構造にしてほしい旨要求し,被告をして排水桝を建物内に設置させた。ただ,被告は,上記構造にすることを無条件に承諾したわけではなく,排水内樋の掃除等のメンテナンスをきちんとすること,メンテナンスはしごを設置することの各条件を付した。原告は,被告に対し,本件建物に常駐する予定であり,また,メンテナンスはしごについては自ら設置し,排水内樋の掃除等を十分行い枯葉等で排水内樋が詰まらないように気を付ける旨確約したので,被告は上記設計変更に応じた。 このような経過にかんがみれば,本件建物内に排水桝が設置されたことは,被告の反対を押し切った原告の強い意向によるものであるから,被告の責めに帰すべき事由は存しない。 (イ) (原告の主張)ア(イ)について原告は,本件建物の排水桝及び排水管について設計上の瑕疵がある旨るる主張するが,原告が主張する点については,次のとおり,いずれも設計上の瑕疵はない。排水桝の容量については,本件建物に用いられた排水管は,群馬県の1時間当たりの最大雨量,本件建物の屋根の面積から割り出される排水管の必要管径よりも大きなものであるから,排水桝の容量不足ということもない。仮に,原告が主張する点について問題があったならば,本件漏水事故が発生した平成9年7月末ころ以前にも上記排水桝から漏水があったはずである。しかるに,原告の主張によれば,その間排水桝からの漏水はなかったというのである る点について問題があったならば,本件漏水事故が発生した平成9年7月末ころ以前にも上記排水桝から漏水があったはずである。しかるに,原告の主張によれば,その間排水桝からの漏水はなかったというのであるから,本件建物の排水桝には何ら瑕疵がなかったことが明らかである。 a 原告は,被告が排水管の傾斜角度を誤った旨主張するが,そのような誤りはない。両側の2つの排水桝付近は,両サイドの壁面の内側に位置するため,枯葉は中央部分よりも両端に多く積もる。そして,枯葉が詰まって本件漏水事故に至ったのであるから,被告の設計上の瑕疵が原因ではなく,原告のメンテナンス不足が本件漏水事故の原因である。 b また,排水桝の容量には全く不足はなく,排水管の角度も直角に近いが,下部はゆるやかに丸くなっているため,水の流れが悪くなることはあり得ない。 c 本件排水桝の上部はネットが設置され,木の葉等が樋内部に流入することを防いでいるが,上記ネット上に木の葉等が堆積し,これが雨で濡れて本件排水桝が上部から密閉状態となり,その結果排水桝内部が減圧状態になり,雨水の流れが悪くなる危険性があったため,本件排水桝にスリットを使用したもので,これは設計上の瑕疵とはいえない。 イ (原告の主張)イは否認ないし争う。 本件建物の外壁内部の柱及び梁等の接着部分は在来工法の接続金物工法(クレテック金物接合法)で施工されており,建物内全体の強度に全く問題はない。また,本件建物の梁等には,集成材が使用されているところ,同材は無垢材の1.5倍の強度を有しており,床のたわみの原因が梁の強度にあるとは考えられない。仮に,床にたわみがあったとすれば,漏水によるものと思われる。 なお,本件建物については,平成4年8月ころの引渡しから長期間が経過している。また,当初の予定に反し,本件建物はほとんど利用されて ない。仮に,床にたわみがあったとすれば,漏水によるものと思われる。 なお,本件建物については,平成4年8月ころの引渡しから長期間が経過している。また,当初の予定に反し,本件建物はほとんど利用されておらず,しかも,平成9年7月末ころ発生した本件漏水事故後はほとんど修理もされず,空き家のまま放置されている状況にある。このような管理状態では,本件建物の自然劣化も通常の建物(居住者が常駐している建物)に比べれば,著しく進行するはずである。このような事情にかんがみると,原告は,本件建物の現況を前提として主張をしているが,そこで主張される不具合は,このような自然劣化により生じたものである可能性が高い。 ウ (原告の主張)ウないしカは否認ないし争う。 (被告の主張に対する原告の反論)ア (被告の主張)の冒頭部分における,被告が,本件建物建築に際して,1級建築士のBに依頼し,本件建物の平面図,立面図,電気設備図,機械室詳細図,衛生等の図面を作成して原告に交付したとの点は否認する。 イ (被告の主張)アにおいて,被告は,原告が本件建物の構造について排水桝を建物内に設置するよう要求した旨主張するが,そのような事実は存しない。 原告は,本件建物の形状について,モデルハウスを見学した際に,当該モデルハウスの外壁が木造・総タイルばりであったため,「これと同じでよい」旨言ったこと,及び「三角形ではなくボックス型にしてほしい」旨言ったことは認めるが,それ以上に被告の主張するような具体的な要求はしなかった。原告は,建物の建築については素人であり,被告の主張するような具体的な要求をすることは不可能である。 また,仮に,被告の主張するように,被告から雨漏りの危険があるとの指摘を受けたとすれば,原告が雨漏りの発生する危険を冒してまで自らの要求を押し通すはずがない。さらに,被 をすることは不可能である。 また,仮に,被告の主張するように,被告から雨漏りの危険があるとの指摘を受けたとすれば,原告が雨漏りの発生する危険を冒してまで自らの要求を押し通すはずがない。さらに,被告は,原告が排水内樋の掃除を行う旨確約したなどと主張するが,実際の屋根の構造は,排水溝の上にネットが固定設置されており,掃除など全くできない構造になっている。そもそも,原告が,排水溝の掃除等のメンテナンスを十分に行わなければ雨漏りの発生するような建物の建築を依頼するはずがない。 (2) 本件建物の解体及び再建築又は修補に必要な費用(ないし原告の被った損害)の額及びこれと上記(1)の瑕疵との間の相当因果関係の存否(原告の主張)ア本件建物と同様の建物を再建築するためには,本件建物の解体費用及び本件建物の建築費用と同額の再建築費用を要するところ,原告は,被告に対し,前記争いのない事実等(3)記載のとおり,本件建物の建築費用として合計6184万5153円を支払った。したがって,原告は,被告に対し,少なくとも上記建築費用相当額の損害賠償請求権を有している。 イまた,本件建物には,上記(1)(原告の主張)記載の各瑕疵が存するところ,仮に,本件建物の建て替えをせずに補修によって上記瑕疵を除去することができる場合であっても,これらの瑕疵を修補するためには以下の作業が必要となり,これに要する各費用(ないし損害)の額は別紙1(略)及び別紙2(略)記載のとおりであり,作業全体を通じて必要となる別紙1(略)番号1ないし5,85及び86の各費用のほか,各瑕疵と必要となる作業及びこれに要する費用の対応関係は各項目において括弧書きで記載したとおりである。 (ア) 上記(1)(原告の主張)ア記載の瑕疵について本件建物の屋根は,その構造自体に欠陥があるため,その修繕のため 業及びこれに要する費用の対応関係は各項目において括弧書きで記載したとおりである。 (ア) 上記(1)(原告の主張)ア記載の瑕疵について本件建物の屋根は,その構造自体に欠陥があるため,その修繕のためには,屋根の構造そのものを変更する必要がある(別紙1(略)番号6ないし18)。 (イ) 上記(1)(原告の主張)イ記載の瑕疵について本件建物の内部構造がツーバイフォーと同様である場合において必要となる金物工事の代金分が必要な費用となる(別紙2(略))。 (ウ) 上記(1)(原告の主張)ウ記載の瑕疵について本件建物の雨漏りは,屋根の構造上の欠陥のみならず,本件建物の外壁工事が不適切であったことにも起因している。本来であれば,窓枠サッシの取付方法も補修すべきであるが,これを行うと本件建物の実質的な建て直しになってしまうため,サッシ回りコーキングに必要な費用のみを計上する(別紙1(略)番号25)。 (エ) 上記(1)(原告の主張)エ記載の瑕疵について上記(ウ)のとおり,本件建物の外壁工事の不適切な部分について必要な費用である(別紙1(略)番号19ないし24,26)。なお,外壁の修繕工事に関連して,玄関前の風除室を取り替える必要があり,これに要する費用も必要となる(別紙1(略)番号82ないし84)。 (オ) 上記(1)(原告の主張)オ記載の瑕疵について本件建物は雨漏りの結果,2階の床が全体にわたって腐食等の被害を受けており,また,設計仕様上は,「12ミリメートルのコンパネ下地に15ミリメートルのフロアー張り」とされていたにもかかわらず,実際には「15ミリメートルのフロアー張り」となっている箇所があるため,これを改修する必要がある(別紙1(略)番号27ないし33)。 (カ) 上記(1)(原告の主張)カ記載の瑕疵について本件建物は,雨漏りの結果,1階の ートルのフロアー張り」となっている箇所があるため,これを改修する必要がある(別紙1(略)番号27ないし33)。 (カ) 上記(1)(原告の主張)カ記載の瑕疵について本件建物は,雨漏りの結果,1階の事務室,ホール及び台所の床がゆがみ,腐食等の被害を受けており,これを改修する必要がある(別紙1(略)番号34ないし40)。 (キ) 本件漏水事故による被害箇所(内装部分)の補修上記(1)(原告の主張)記載の各瑕疵により発生した本件漏水事故により,窓枠サッシ額縁の取付け(別紙1(略)番号41)及び内装の修繕工事が必要となる(別紙1(略)番号42ないし81)。 (被告の主張)原告の主張する損害額については,いずれも争う。 ア (原告の主張)アについて仮に,原告の主張のとおり本件建物が修補不能であり建て替えを余儀なくされる状態であるとしても,本件建物がそのような状態に至ったのは,原告が,本件建物について修理を直ちに行わず,また,管理等も不十分なまま長期間にわたり本件建物を放置していたことにより,本件建物の老朽化が予想以上に進行したためである。したがって,本件建物が上記のような状態になった責任の大部分は原告にあるのであって,仮に,本件建物に瑕疵が認められるとしても,原告の主張する損害額との間には相当因果関係が認められない。 また,本件建物の建築当時と現在とで建築価額を比較すると,現在の方が建築単価が4割程度安くなっている。さらに,本件建物には利用可能な部分も多数あり,別紙3(略)記載のとおり利用不可能な部分の合計金額は1362万2324円にすぎず,本件建物を全面改築する場合でも,その費用は上記金額を上回ることはない。 イ (原告の主張)イについて本件建物の構造については,上記(1)(被告の主張)記載のとおり,原告の強い要望により変更を余儀なくされ を全面改築する場合でも,その費用は上記金額を上回ることはない。 イ (原告の主張)イについて本件建物の構造については,上記(1)(被告の主張)記載のとおり,原告の強い要望により変更を余儀なくされ,結局原告が指示したとおりの構造とされたものであるから,本件建物の構造に瑕疵が存するとしても,そもそも被告が責めを負うべき瑕疵ではない上,原告は,本件建物の構造を指示した際,排水桝の構造から雨漏りの危険が存することを十分承知し,雨漏りが発生しないよう,排水内樋の掃除を行う旨確約した。また,本件建物の構造上の欠陥が存するとすれば,本件漏水事故以前にも排水桝,飾り桝付近から漏水があるはずであるが,このような事実は認められない。 したがって,本件漏水事故は,原告が排水内樋の掃除等の必要なメンテナンスを怠ったために発生したものであり,原告が主張する修補に必要な費用ないし損害と本件建物の構造上の瑕疵との間に因果関係は認められない。 (被告の主張に対する原告の反論)ア (被告の主張)アについて被告は,原告が本件建物を放置していたと主張するが,原告は,本件漏水事故が発生した後も,頻繁に本件建物に足を運び,その維持管理に努めているから,被告の上記主張は事実に反する。 また,本件建物の建築費用が建築当時に比して4割程度安くなっていることや,被告が本件建物について利用可能と主張する部分が真に利用可能であることを裏付ける根拠はない。本件建物の建築用材料は,現在,およそ使用不可能である。 イ (被告の主張)イについて否認ないし争う。 (3) 特約による瑕疵修補期間ないし法定の除斥期間を徒過しているか。 (被告の主張)ア仮に,被告のなした本件建物の建築工事に瑕疵が存すると認められたとしても,原告が本件で主張する補修箇所については,いずれも本件請負契約において定める の除斥期間を徒過しているか。 (被告の主張)ア仮に,被告のなした本件建物の建築工事に瑕疵が存すると認められたとしても,原告が本件で主張する補修箇所については,いずれも本件請負契約において定める瑕疵修補期間を経過しているから,被告にはその修補義務はない。すなわち,アフターサービス基準適用の内容は,瑕疵修補期間の定めであり,瑕疵修補期間を引渡後1年又は2年以内に短縮した特約である。 イ仮に,上記特約が認められないとしても,原告の被告に対する本件建物の不具合に関する損害賠償の請求は,本件建物引渡時(平成4年8月)から5年を経過した後になされたものであり,民法638条1項所定の5年の除斥期間を経過しているから,被告に原告の主張する損害を賠償すべき責任はない。 また,この点をおくとしても,同条2項によれば,原告は,本件漏水事故及び原告が主張するその他の不具合の発生から1年以内に,被告に対し瑕疵修補請求権あるいは損害賠償請求権を行使しなければならないのに,前記争いのない事実等(4)ウ記載の調停申立てに至るまでこれらの請求権を行使せず,同条項所定の除斥期間を経過しているから,被告には,いずれにしても原告の主張する損害を賠償すべき責任は存しない。 (原告の主張)ア (被告の主張)アは争う。 被告の主張する「アフターサービス基準適用上の留意事項」に記載されている期間は,瑕疵修補期間とは全く異なるものである。建築請負契約において,民法の瑕疵修補請求の特約を定める場合があったが,この場合には,契約書の中で,具体的な条項として瑕疵修補請求の特約条項を設け,かつ,当該条項において具体的な瑕疵修補請求期間を明確に定めていた。これは,当該特約が,瑕疵修補請求期間を民法上の期間よりも消費者である注文者の不利益に変更するものだからである。 しかるに,本件請負契約に 該条項において具体的な瑕疵修補請求期間を明確に定めていた。これは,当該特約が,瑕疵修補請求期間を民法上の期間よりも消費者である注文者の不利益に変更するものだからである。 しかるに,本件請負契約に係る契約書には,このような明示の特約条項は存在せず,「瑕疵」という文言すら契約書のどこにも出てこない。したがって,本件請負契約では,民法上の瑕疵修補請求期間に関する特約は定められていないというべきである。 イ (被告の主張)イは争う。 瑕疵修補請求権を保存するためには,裁判上の行使のみならず裁判外の行使であってもよいとされており,裁判外で瑕疵修補請求権が行使された場合には,その時点から更に10年の消滅時効が完成するまで同請求権は存続するとされているところ,原告は,被告に対し,民法638条1項所定の除斥期間内に瑕疵修補請求を行った。すなわち,原告は,被告に対し,被告が本件建物の引渡時期として主張する平成4年8月当時から,雨漏りの事実を指摘してその修補を求め,さらに,平成7年1月には,被告に対し,改めて書面により修補請求を行ったから,これらの請求により瑕疵修補請求権は保存されている。本訴請求が,これらの請求から10年以内になされていることは明らかである。 また,被告は,同条2項も併せて主張するが,同条項は,従前分からなかった瑕疵が,建物の滅失または毀損によって初めて明らかになった場合に適用される条項であり,滅失又は毀損に至るまで瑕疵修補請求がなされていないことを当然の前提としている。したがって,本件のように,既に瑕疵の存在が明らかになっており,かつ,現に瑕疵修補請求がなされている場合には適用の余地がない。 そもそも,建築の専門家でありながら,本件建物のような重大な欠陥住宅を建築し,しかも,その後,誠実な対応を全く行おうとしない被告が,除斥期間の 瑕疵修補請求がなされている場合には適用の余地がない。 そもそも,建築の専門家でありながら,本件建物のような重大な欠陥住宅を建築し,しかも,その後,誠実な対応を全く行おうとしない被告が,除斥期間の主張を行うことは,信義則に反し,権利濫用として許されない。 (原告の主張に対する被告の反論)(原告の主張)イについて,原告は,本件漏水事故以前から本件建物の雨漏りについて指摘してきた旨主張するところ,確かに,平成7年1月に原告が作成した文書(甲9)には,「エクセル窓枠の雨漏り」,「1F事務室,2階LDK,風防室内エクセル窓枠の雨漏り」などの記載が認められるので,上記記載の範囲内での修補請求権は保存されていると見ることができるが,これを,その後に発生した本件漏水事故に関する修補請求と見ることはできず,本件漏水事故に関する修補請求権は全く行使されていない。したがって,本件漏水事故については,民法638条2項の適用があり,原告の本件漏水事故に基づく瑕疵修補請求権及び損害賠償請求権は除斥期間の経過により消滅している。 (被告の反論に対する原告の反論)争う。 (4) 過失相殺(被告の主張)被告は,本件排水設備に瑕疵があるものと認められた場合,これは,原告の指示により生じたものであるから,被告は民法636条によりその担保責任を負わない旨主張するものであるが,仮に,被告に担保責任が認められた場合には,上記(1)ないし(3)(被告の主張)記載のとおり,原告が本件瑕疵発生に寄与した割合は非常に大きいものと認められるので,過失相殺を主張する。 (原告の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件建物の瑕疵の有無)について(1) 原告は,被告に対し,本件建物の欠陥により損害を被ったとして,請負人の瑕疵担保責任に基づく瑕疵の修補に代わる損害賠償を求め 3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件建物の瑕疵の有無)について(1) 原告は,被告に対し,本件建物の欠陥により損害を被ったとして,請負人の瑕疵担保責任に基づく瑕疵の修補に代わる損害賠償を求めるのとは別に,本件請負契約の債務不履行(不完全履行)に基づく損害賠償も求めている。 しかしながら,請負人の瑕疵担保責任に関する民法634条以下の規定は,単に,同法559条により契約の性質が許さないときを除き売買契約以外の有償契約に準用される売主の担保責任に関する同法561条以下の特則であるのみならず,不完全履行の特則でもあって,請負契約における不完全履行の一般理論の適用を排除するものと解するのが相当である。なぜなら,請負契約は請負人による仕事の完成を目的とするものであり,完成された仕事の瑕疵は,単に材料の瑕疵からだけではなく,請負人の仕事のやり方の不完全なことによっても発生するものであるところ,請負契約についての瑕疵担保責任の規定は,瑕疵を生じた理由について何ら限定を加えておらず,また,同法635条は,契約の目的を達することができないほどの重大な瑕疵がなければ解除できない旨を規定していることに照らすと,同法634条以下の規定は,請負契約における瑕疵の特殊性に着眼し,請負人の担保責任を無過失責任とする一方で債務不履行の一般原則を排除することによって公平を保つとの考え方に立って,特別の内容を定めたものと解するのが相当であるからである。 したがって,前記争いのない事実等(3)オのとおり,本件建物が完成したものとして被告から原告に引き渡されている以上,仮に本件建物に欠陥があったとしても,注文者たる原告は,請負人たる被告に対し,同法634条以下の規定により瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求をするのはともかく,債務不履行(不完全履行)責任に基づく損害賠償請 建物に欠陥があったとしても,注文者たる原告は,請負人たる被告に対し,同法634条以下の規定により瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求をするのはともかく,債務不履行(不完全履行)責任に基づく損害賠償請求をすることはできないことになる。 そこで,次に,原告による本件請負契約の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求が認められるための前提として,本件建物に瑕疵が存するかどうかについて検討する。 (2) 甲11の1,2,甲12,13,27ないし30,鑑定の結果及び弁論の全趣旨によれば,本件建物について次の事実が認められる。 ア本件建物は,林地の中にあり,周囲には高木が茂っているので,落ち葉が屋根にたまりやすい状態にある。 イ本件建物は,2階建ての木造建築物であり,屋根の形状が南側から北側に向かって下って傾斜するいわゆる片流れ屋根となっており,屋根の最北端にはパラペットが垂直に立っている。そして,屋根に降った雨水は,北側の建物内に設置した排水溝及び排水桝によって処理する構造となっている。排水桝の上部には透き間があり,雨量が容量を超えた場合には容易に本件建物内部に雨水が流入する構造となっている。また,排水溝の上部には金網ネットが固定して取り付けられている。 ウ本件建物には,すべての方面の外壁に,タイルの浮き,はく離,膨張,亀裂(クラック),下がり等の不正常な部分がある。 エ本件建物は,1階・2階双方の数か所の窓枠のサッシとタイルの間から雨漏りが発生している。 オ本件建物の2階中央部分(車庫の天井部分)の床及び1階事務室の床には,共にたわみが見られる。 (3) 上記(2)の事実,甲12及び鑑定の結果によれば,本件建物の瑕疵の有無について,次のとおりと認められる。 ア排水桝等の排水設備の構造について(ア) 木造建築物であり,かつ,片流れ屋根である本件建物 上記(2)の事実,甲12及び鑑定の結果によれば,本件建物の瑕疵の有無について,次のとおりと認められる。 ア排水桝等の排水設備の構造について(ア) 木造建築物であり,かつ,片流れ屋根である本件建物においては,排水溝及び排水桝を建物の内部に設置すると,排水溝及び排水桝に雨水が大量に流入して漏水の危険性が増大するので,屋根の最北端のパラペットを設置せずに排水溝及び排水桝を建物の外部に設置すべきであった。したがって,本件建物において,排水溝及び排水桝が建物の内部に設置されていることは,本件建物の瑕疵であるといえる。 また,本件建物の2階天井裏に設置されている排水桝の上部には透き間があり,その箇所に防水設備が施されていないので,雨量が容量を超えた場合には,本件建物の内部に雨水が流入する構造になっている。したがって,排水桝の上部に透き間を設け,その箇所に防水設備が施されていない点も,本件建物の瑕疵であるといえる。 さらに,排水溝の上部に金網ネットが固定して取り付けられているが,取り外しのできない金網ネットが設置されているために排水溝の清掃が不可能な状態となっており,落ち葉が屋根にたまりやすい本件建物においては,排水溝が枯れ葉等で目詰まりを起こして屋根面に雨水がたまりやすくなり,漏水の危険性が増大する。したがって,排水溝の上部に金網ネットが固定して取り付けられている点も,本件建物の瑕疵であるといえる。 (イ) 被告は,本件建物建築請負契約の締結後,原告が,北側屋根の突出部分の外観にこだわり,被告に対し,同部分をカットして下部壁面のラインに合わせるよう要求してきたので,被告は,原告の設計変更によると,雨水の排水設備を建物外に設置できなくなり雨漏りの危険が大きくなるのでとても受け入れられない旨伝えたが,原告は納得せず,排水桝を屋根裏に取り込む構造に してきたので,被告は,原告の設計変更によると,雨水の排水設備を建物外に設置できなくなり雨漏りの危険が大きくなるのでとても受け入れられない旨伝えたが,原告は納得せず,排水桝を屋根裏に取り込む構造にしてほしい旨要求してきたので,やむを得ず排水桝を建物内に設置したと主張する。しかしながら,そもそも建物建築について素人である(原告本人)原告が,雨漏りの危険性の大きさを専門家である被告から警告されたにもかかわらず,それを無視してまで,被告に対し,排水桝を屋根裏に取り込む構造にするよう要求したとは考え難い。また,原告が被告に対し本件建物の屋根の形状をボックス型に変更するよう要請した際に被告作成の本件建物の図面に記入した屋根の形状は,屋根の下部壁面から外部に突出していること(乙2の1,2)からすると,原告が北側屋根の突出部分をカットして下部壁面のラインに合わせるよう被告に要求したとされる点も,その事実を認めることは困難である。さらに,本件請負契約書添付の図面においては本件建物の北側壁面に設置される排水管は2本となっているところ(甲2),その後にこれが4本に変更された点は,原告の関与のないまま被告自らの判断で決定された(被告代表者)ことからすると,排水桝の構造の変更も原告の関与のないまま被告独自の判断でなされたものと推認するのが自然である。なお,被告は,原告から調停申請書(甲13)添付の屋根の排水構造と題する図面(原告による手書きの書き込みのあるもの)と同一の図面を示されて,屋根の突出部分のカットと排水桝を屋根裏に取り込む構造に変更するよう要請されたと主張するが,被告の指摘する図面の書き込み部分は,原告が,前記争いのない事実等(4)ウ記載の調停を申し立てる際,代理人に本件建物の現状を説明するために書き込んだものと認められ(甲13,原告本人),被 張するが,被告の指摘する図面の書き込み部分は,原告が,前記争いのない事実等(4)ウ記載の調停を申し立てる際,代理人に本件建物の現状を説明するために書き込んだものと認められ(甲13,原告本人),被告のいうように屋根の突出部分のカットと排水桝を屋根裏に取り込む構造に変更するよう被告に要請した際に同図面を示したものと認めることはできない。したがって,排水桝を本件建物の内部に設置したのは原告の指示による旨の被告の主張は採用することができない。 また,被告は,排水桝を本件建物の内部に設置する構造にすることを無条件に承諾したわけではなく,原告が排水溝の掃除等のメンテナンスをきちんとすることを条件にし,原告がその条件を承諾したので,排水桝を本件建物の内部に設置する構造に変更した旨主張する。しかし,前記(2)イのとおり,排水溝の上部には被告によって金網ネットが固定して取り付けられており,排水構内を清掃することは不可能な状態になっているのであるから,原告が排水溝の掃除等のメンテナンスをすることを条件にしたとする被告の上記主張内容は,金網ネットを排水溝の上部に固定して取り付けた被告自身の行動と明らかに矛盾する不合理なものであるから,到底採用することはできない。 イ本件建物の外壁について(ア) 本件建物には,すべての方面の外壁に,タイルの浮き,はく離,膨張,亀裂(クラック),下がり等の不正常な部分があるところ,これらが生じた原因は,構造用合板とラス網下地(ステップル)の取付不良及び間柱の断面が小さいことにあるものと認められ,かかる構造用合板とラス網下地(ステップル)の取付けが不良であること及び間柱の断面が小さいことは,本件建物の瑕疵であるといえる。 (イ) 被告は,本件建物の外壁に不正常な部分が生じた原因について,原告による本件建物のずさんな管理の ップル)の取付けが不良であること及び間柱の断面が小さいことは,本件建物の瑕疵であるといえる。 (イ) 被告は,本件建物の外壁に不正常な部分が生じた原因について,原告による本件建物のずさんな管理のため,本件建物の自然劣化が著しく進行したことにあると主張する。しかし,被告の上記主張は,本件建物の外壁に不正常な部分が生じた原因が構造用合板とラス網下地(ステップル)の取付不良等の本件請負契約に基づく工事の不備にあるとする鑑定の結果と明らかに矛盾する。また,前記のとおり,本件建物のすべての方面の外壁に,タイルの浮き,はく離,膨張,亀裂(クラック),下がり等の不正常な部分が存するところ,このような広範囲にわたる本件建物の外壁の不正常な部分が自然劣化のみによって形成されることを裏付ける客観的な証拠はない。そうすると,原告の管理方法の不備が,本件建物の外壁に不正常な部分が生じたことに影響を与えていないのかどうかについてはしばらくおくとしても,被告による本件請負契約に基づく工事の不備が本件建物の外壁に不正常な部分が生じたことの原因になっていることは否定することができないから,被告の上記主張は採用することができない。 ウ外壁のタイルと窓枠のサッシとの接着面の施工について原告は,本件建物の1階・2階双方の数か所の窓枠のサッシとタイルの間から雨漏りが発生していることについて,本件建物の外壁への窓枠サッシの取付方法が不適切である点及びタイルとサッシの間のコーキングが不十分である点の瑕疵があることが原因であると主張する。 しかしながら,窓枠のサッシとタイルの間から雨漏りが発生することについては,ラス網と構造用合板の浮きが原因となっていることがうかがわれ,本件建物の外壁への窓枠サッシの取付方法が不適切であることに原因があることを認めるに足りる証拠はない。また 漏りが発生することについては,ラス網と構造用合板の浮きが原因となっていることがうかがわれ,本件建物の外壁への窓枠サッシの取付方法が不適切であることに原因があることを認めるに足りる証拠はない。また,コーキングは,時の経過とともに効果が薄れていく性質があるから(被告代表者,鑑定の結果),本件請負契約に基づく工事の段階からコーキングが不十分であったものとまでは認めるに足りないものといわざるを得ない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 エ 2階中央部分(車庫の天井部分)の床について本件建物の2階中央部分の床にはたわみが見られるが,この原因は,2階中央部分の床を支える梁及び根太の断面が不足していること並びに床材に構造用合板を使用していないことにあるものと認められる。 したがって,2階中央部分の床を支える梁及び根太の断面が不足していること並びに床材に構造用合板を使用していない点で,本件建物には瑕疵があるといえる。 オ 1階事務室の床について本件建物の1階事務室の床にはたわみが見られるが,この原因は,1階事務室の床を支える梁及び根太の断面が不足していること並びに床材に構造用合板を使用していないことにあるものと認められる。 したがって,1階事務室の床を支える梁及び根太の断面が不足していること並びに床材に構造用合板を使用していない点で,本件建物には瑕疵があるといえる。 2 争点(2)(原告の被った損害及びこれと本件建物の瑕疵との間の相当因果関係の有無)について(1) 建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には,注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要する費用相当額を損害としてその賠償を請求することができると解するのが相当である(最高裁平成14年(受)第605号同年9月24日第三小法 るを得ない場合には,注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要する費用相当額を損害としてその賠償を請求することができると解するのが相当である(最高裁平成14年(受)第605号同年9月24日第三小法廷判決・判例時報1801号77頁参照)。 (2) 前記争いのない事実等,上記1の認定事実及び鑑定の結果によれば,次の事実が認められる。 原告から注文を受けて被告が建築した本件建物は,その全体にわたって極めて多数の欠陥箇所がある上,主要な構造部分について本件建物の安全性及び耐久性に重大な影響を及ぼす欠陥が存するものであった。すなわち,排水溝及び排水桝の構造に重大な欠陥があるため雨水による漏水を防止することができず,そのため本件建物の全体にわたって雨漏りが生じ,これによって本件建物全体の強度を弱めている(現に,本件漏水事故により,本件建物の1階天井部分のボードが広範囲にわたって崩落している。)ばかりか,本件建物の外壁工事の施工不良により,本件建物のすべての方面の外壁にタイルの浮き等の不正常な部分が広範囲に生じており,さらに,床を支える梁及び根太の断面が不足していることなどの欠陥から,本件建物の1階部分・2階部分共に床にたわみが生じており,その影響で床全体に共振状態が起きている。このため,本件建物については,個々の継ぎはぎ的な補修によっては根本的な欠陥を除去することはできず,これを除去するためには,本件建物を全面的に改修する必要があり,結局,技術的,経済的に見ても,本件建物を建て替えるほかない。 (3) 被告の主張について被告は,仮に,本件建物が修補不能であり建て替えを余儀なくされる状態であるとしても,本件建物がそのような状態に至ったのは,原告が,本件建物について修理を直ちに行わず,また,管理等も不十分なまま長期間にわたり本件建物を放置していたこ あり建て替えを余儀なくされる状態であるとしても,本件建物がそのような状態に至ったのは,原告が,本件建物について修理を直ちに行わず,また,管理等も不十分なまま長期間にわたり本件建物を放置していたことにより,本件建物の老朽化が予想以上に進行したためであり,したがって,本件建物が上記のような状態になった責任の大部分は原告にあるのであって,仮に,本件建物に瑕疵が認められるとしても,それと原告の主張する損害額との間には相当因果関係が認められないと主張する。 しかしながら,前記1(3)のとおり,本件建物には,建築当初から多数の設計・構造上の欠陥箇所があったのであり,これが本件建物の不具合の原因であるといえ,取り分け,本件建物全体の強度を弱めた主要な要因といえる雨漏りを生じるような欠陥箇所を作出した責任は被告のみにあるから,被告が作出した本件建物の瑕疵と本件建物が建て替えを余儀なくされる状態になったこととの間には相当因果関係があるというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用しない。 (4) 本件建物の建て替えに要する費用相当額について前記(2)のとおり,本件建物には重大な瑕疵があるためこれを建て替えざるを得ないから,原告は,被告に対し,本件建物の建て替えに要する費用相当額を損害としてその賠償を請求することができる。 そこで,本件建物の建て替えに要する費用相当額について検討するに,前記争いのない事実等に記載のとおり,原告は,被告に対し,本件建物を建築するために合計6184万5153円を支払っている。また,本件建物の建て替えに要する費用としては,本件建物と同一の建物を建築するための費用とは別に,本件建物を取り壊すための費用が掛かることになる。そうすると,本件建物の建て替えに要する費用相当額は,上記の原告が被告に対し本件建物を建築するために支払っ と同一の建物を建築するための費用とは別に,本件建物を取り壊すための費用が掛かることになる。そうすると,本件建物の建て替えに要する費用相当額は,上記の原告が被告に対し本件建物を建築するために支払った6184万5153円を下回らないものと推認することができる。 この点,被告は,本件建物の建築当時と現在とで建築価額を比較すると,現在の方が建築単価が4割程度安くなっており,さらに,本件建物には利用可能な部分も多数あり,別紙3(略)記載のとおり利用不可能な部分の合計金額は1362万2324円にすぎず,本件建物を全面改築する場合でも,その費用は上記金額を上回ることはないと主張する。 そこで検討するに,被告は,現在の方が本件建物の建築当時と比較して建築単価が安くなっていることを裏付けるものとして,群馬県勢多郡内にある在来木造家屋の坪当たりの価格が52万8500円であるとの記載がある書証(乙9)を提出し,この価格は本件建物の建築に要した費用額を下回ると主張するが,上記価格はあくまでも平均値にすぎず,これには個々の建物の個性が反映されていないから,乙9によっては,建築単価の下落により本件建物の建て替えに要する費用額が上記6184万5153円を下回るものとは認められず,ほかに本件建物の建て替えに要する費用額が上記6184万5153円を下回ることを裏付けるに足りる客観的な証拠はない。また,本件建物の利用不可能な部分の合計金額は1362万2324円にすぎないとする被告の主張についても,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はなく,前記(2)の事実によれば,やはり本件建物を建て替えるほかないというべきである。したがって,被告による上記主張は採用することができない。 以上によれば,後記争点(3)及び同(4)の判断いかんによって,原告は,被告に対し,本件建物の建て替え 建て替えるほかないというべきである。したがって,被告による上記主張は採用することができない。 以上によれば,後記争点(3)及び同(4)の判断いかんによって,原告は,被告に対し,本件建物の建て替えに要する費用相当額である6184万5153円を損害としてその賠償を請求することができる可能性があることになる。 3 争点(3)(特約による瑕疵修補期間ないし法定の除斥期間を徒過しているか。)について(1) 特約による瑕疵修補期間徒過の主張について被告は,本件建物建築請負契約に係る契約書(甲2)添付の「アフターサービス規準適用上の留意事項」と題する書面に記載されたアフターサービス期間が瑕疵修補期間を定めたものであることを前提に,原告が同期間内に被告に対し本件建物に関する瑕疵修補請求をしなかったので,原告に対し本件建物の瑕疵に基づく損害賠償義務を負わないと主張する。 そこで,検討するに,上記アフターサービス期間が瑕疵修補期間を定めたものであるかどうかは,本件建物建築請負契約の当事者である原告と被告の合理的な意思解釈によって決すべきものである。そして,①上記アフターサービス期間は半年ないし2年に限定されていて,木造建物である本件建物の瑕疵修補請求権の法定の除斥期間である5年(民法638条1項)を大幅に下回る期間となっているため,上記アフターサービス期間が瑕疵修補期間を定めたものとすると原告は大きな不利益を被ること,②上記「アフターサービス規準適用上の留意事項」と題する書面には,上記アフターサービス期間を経過した場合に瑕疵修補請求ができなくなることが明記されていないこと,③上記アフターサービス期間の対象となる「アフターサービス」が何を指すのかが必ずしも明確になっていないことなどの諸事情にかんがみると,本件建物建築請負契約の当事者である原告と被告の意 ていないこと,③上記アフターサービス期間の対象となる「アフターサービス」が何を指すのかが必ずしも明確になっていないことなどの諸事情にかんがみると,本件建物建築請負契約の当事者である原告と被告の意思としては,上記アフターサービス期間が瑕疵修補期間を定めたものであり,同期間が経過すると原告が瑕疵修補請求をすることができなくなることにするまでの意思はなかったものと解するのが合理的である。したがって,上記アフターサービス期間が瑕疵修補期間を定めたものとは認められないから,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 瑕疵修補請求権の除斥期間徒過の主張についてア被告は,原告の被告に対する本件建物の不具合に関する損害賠償請求は,本件建物の引渡し時である平成4年8月から5年を経過した後になされたものであり,民法638条1項所定の5年の除斥期間を経過しているから,被告に原告の主張する損害を賠償すべき責任はないと主張する。 そこで,検討するに,前記争いのない事実等,甲7,9,原告本人及び被告代表者によれば,次の事実が認められる。 (ア) 原告は,被告に対し,平成7年1月18日付け書面(甲9)を送付して本件建物に関する瑕疵の修補を請求し,上記書面は,そのころ,被告に到達した。 (イ) 上記書面には,次のような記載がある。 a 「タイル貼はコーナーが亀裂を起し,その後,亀裂の拡大は起っていないようです。併し現在シャッター部分に亀裂が発生しています。」b 「エクセル窓枠の雨漏り,1F流し場前,雨漏り理由が建築時色々ありましたが,強い雨のたびに依然として漏り続けています。」c 「1F事務室,2FLDK,風防室内エクセル窓枠も雨漏りが最初から続いています。」(ウ) 原告は,本件建物の引渡しを受けた平成4年8月末ころから前記争いのない事実等(4)ウ記載の調 います。」c 「1F事務室,2FLDK,風防室内エクセル窓枠も雨漏りが最初から続いています。」(ウ) 原告は,本件建物の引渡しを受けた平成4年8月末ころから前記争いのない事実等(4)ウ記載の調停を申し立てた平成11年8月26日までの間は,上記書面の送付による瑕疵修補請求以外に,被告に対し,本件建物に関する瑕疵の修補請求をしなかった。 以上の事実によれば,原告は,被告に対し,民法638条1項所定の5年の除斥期間内に,前記1(3)ア記載の排水桝等の排水設備に関する瑕疵及び同イ記載の本件建物の外壁に関する瑕疵については瑕疵修補請求をしたものの,同エ記載の2階中央部分(車庫の天井部分)の床に関する瑕疵及び同オ記載の1階事務室の床に関する瑕疵については瑕疵修補請求をしたとは認められない。 原告は,前記争いのない事実等(3)ウのとおり,被告に対し,平成4年8月19日,「最終願事項」と題する書面(甲7)を交付したが,これが被告に対する瑕疵修補請求に当たると主張する。しかし,原告が被告に対し上記書面を交付したのが本件建物の引渡し前であることは,前記争いのない事実等から明らかなところ,請負人の担保責任の除斥期間の起算点は,請負契約の仕事の目的物の引渡しを要する場合には仕事の目的物が請負人から注文者に引き渡された時であると解すべきであるから,本件建物の引渡し前になされた上記書面の交付が請負人の担保責任の除斥期間内になされた瑕疵修補請求権の行使であるということはできない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。 よって,原告は,本件建物の2階中央部分(車庫の天井部分)の床に関する瑕疵及び1階事務室の床に関する瑕疵については,瑕疵の修補に代わる損害賠償請求をすることはできない。 イまた,被告は,民法638条2項によれば,原告は,本件漏水事故 分(車庫の天井部分)の床に関する瑕疵及び1階事務室の床に関する瑕疵については,瑕疵の修補に代わる損害賠償請求をすることはできない。 イまた,被告は,民法638条2項によれば,原告は,本件漏水事故及び原告が主張するその他の不具合の発生から1年以内に,被告に対し瑕疵修補請求権あるいは損害賠償請求権を行使しなければならないのに,前記争いのない事実等(4)ウ記載の調停申立てに至るまでこれらの請求権を行使せず,同条項所定の除斥期間を経過しているから,被告には,原告の主張する損害を賠償すべき責任は存しないと主張する。そこで,被告の上記主張の当否について,以下検討する。 (ア) そもそも民法638条2項が,土地の工作物がその瑕疵によって滅失又は毀損した場合に,注文者はその滅失又は毀損の時から1年以内に同法634条に規定する瑕疵修補又は損害賠償の請求をしなければならないとして,同法638条1項の請負人の担保責任の除斥期間を短縮したのは,土地の工作物が滅失又は毀損した場合には,その瑕疵の存在が明白になるため,注文者が請負人に対し担保責任を追及することが容易になるからであると解される。 したがって,同条2項の「毀損」に当たるためには,土地の工作物の瑕疵の存在が明白であるといえる程度に土地の工作物が毀損することが必要である。 (イ) 本件建物の外壁の瑕疵について甲9及び原告本人によれば,本件建物の外壁には,被告から原告への本件建物の引渡し当時から,既にタイルの亀裂等の不正常な部分が存在していたことが認められる。そして,このように引渡し当時から本件建物の外壁にタイルの亀裂等が生じていることによれば,本件建物の外壁の下地の取付け等に瑕疵が存在することが明白であるといえる。したがって,上記の本件建物の引渡し当時に存在した本件建物外壁の亀裂等の不正常な部分 タイルの亀裂等が生じていることによれば,本件建物の外壁の下地の取付け等に瑕疵が存在することが明白であるといえる。したがって,上記の本件建物の引渡し当時に存在した本件建物外壁の亀裂等の不正常な部分は民法638条2項の「毀損」に当たるといえ,また,前記アのとおり,原告は,被告に対し,本件建物引渡し時である平成4年8月末ころから平成7年1月ころまで,本件建物の外壁に関する瑕疵について修補請求をしなかったのであるから,原告は,同項所定の除斥期間内に本件建物の外壁に関する瑕疵について,修補請求をしなかったことになる。よって,原告は,被告に対し,本件建物の外壁の瑕疵について,損害賠償請求をすることはできない。 (ウ) 本件建物の排水桝等の排水設備の瑕疵についてa 甲9及び原告本人によれば,被告から原告への本件建物の引渡し当時から,本件建物には雨漏りが生じていたものと認められる。しかし,建物の漏水については,雨水が建物のどの部分から内部に入り込み,どの部分から室内に漏水として現れるかを特定することが極めて困難であるから(被告代表者),本件建物の単なる雨漏りによっては,本件建物の排水桝等の排水設備に関する瑕疵が存在することが明白であるということはできない。したがって,本件建物の単なる雨漏りは,民法638条2項の「毀損」には当たらないから,前記アのとおり,原告が,被告に対し,本件建物引渡し時である平成4年8月末ころから平成7年1月ころまで,本件建物の排水桝等の排水設備の瑕疵について修補請求をしなかったからといって,同項の除斥期間を徒過したことにはならない。 b 前記争いのない事実等(4)イのとおり,平成9年7月末ころ,強い雨のため,本件建物の2階天井裏から雨漏りが生じ,本件建物1階天井部分のボードが水を含んで広範囲にわたりはがれ落ちる本件漏水事故が b 前記争いのない事実等(4)イのとおり,平成9年7月末ころ,強い雨のため,本件建物の2階天井裏から雨漏りが生じ,本件建物1階天井部分のボードが水を含んで広範囲にわたりはがれ落ちる本件漏水事故が発生したところ,かかる本件漏水事故によって,本件建物の排水桝等の排水設備に関する瑕疵が存在することが明白となったといえるから,本件漏水事故による本件建物1階天井部分のボードの崩落は,民法638条2項の「毀損」に当たる。 ところで,前記(ア)のとおり,同項が,土地の工作物がその瑕疵によって滅失又は毀損した場合に,同法638条1項の請負人の担保責任の除斥期間を短縮したのは,土地の工作物が滅失又は毀損した場合には,その瑕疵の存在が明白になるため,注文者が請負人に対し担保責任を追及することが容易になるからであり,また,既に瑕疵修補請求権が行使されているにもかかわらず,改めて瑕疵修補請求権を行使することを要求することは無意味である。したがって,同条2項は,従前には明らかとならなかった瑕疵が土地の工作物の滅失又は毀損によって初めて明らかになった場合に適用される条項であり,土地の工作物が滅失又は毀損するまでに既にその工作物の瑕疵について修補請求権が行使されている場合には適用されないものと解すべきである。 そして,前記アのとおり,原告は,被告に対し,平成7年1月ころ,本件建物の雨漏りに関し,「エクセル窓枠の雨漏り,1F流し場前,雨漏り理由が建築時色々ありましたが,強い雨のたびに依然として漏り続けています。」,「1F事務室,2FLDK,風防室内エクセル窓枠も雨漏りが最初から続いています。」と主張して瑕疵修補請求をしているところ,上記aのとおり,建物の漏水については,雨水が建物のどの部分から内部に入り込み,どの部分から室内に漏水として現れるかを特定することが 最初から続いています。」と主張して瑕疵修補請求をしているところ,上記aのとおり,建物の漏水については,雨水が建物のどの部分から内部に入り込み,どの部分から室内に漏水として現れるかを特定することが極めて困難であるから,注文者に対し,いちいち雨漏りの原因を特定させて瑕疵修補請求することを求めるのは極めて酷であり,また,鑑定の結果によれば,本件建物の雨漏りの主要な原因が本件建物の排水桝等の排水設備に関する瑕疵であることが認められるから,原告による上記瑕疵修補請求には,少なくとも,本件雨漏りの主要な原因である本件建物の排水桝等の排水設備に関する瑕疵をその対象に含んでいると見るのが合理的である。そうすると,原告は,被告に対し,本件漏水事故の前に既に本件建物の排水桝等の排水設備の瑕疵についてその修補請求をしていたことになるから,本件漏水事故後1年以内に原告が被告に対し本件建物の排水桝等の排水設備に関する瑕疵の修補を請求しなかったからといって,民法638条2項の定める除斥期間を徒過したことにはならない。 c 以上によれば,原告は,被告に対し,本件建物の排水桝等の排水設備に関する瑕疵に基づく損害について,賠償請求をすることができる。そして,鑑定の結果によれば,本件建物を建て替えざるを得ない状態になった主要な原因は,本件建物の雨漏りであったと認められ,本件建物の雨漏りの主要な原因は,上記bのとおり,本件建物の排水桝等の排水設備に関する瑕疵である。そうすると,本件建物の排水桝等の排水設備の瑕疵と本件建物を建て替えざるを得ない状態になった損害との間には相当因果関係があるというべきである。 したがって,結局,前記2(4)のとおり,原告は,被告に対し,本件建物の建て替えに要する費用相当額である6184万5153円を損害としてその賠償を請求することができる 果関係があるというべきである。 したがって,結局,前記2(4)のとおり,原告は,被告に対し,本件建物の建て替えに要する費用相当額である6184万5153円を損害としてその賠償を請求することができる可能性があることになるというべきである。 4 争点(4)(過失相殺)について前記3(2)ア(ウ)のとおり,原告は,平成4年8月末ころ被告から本件建物の引渡しを受けた後,前記争いのない事実等(4)ウ記載の調停を申し立てた平成11年8月26日までの間は,平成7年1月ころに瑕疵の修補を請求したほかは,被告に対し,本件建物に関する瑕疵の修補請求をしなかった。また,原告本人によれば,上記期間中,原告は,被告以外の第三者に対し,本件建物の雨漏り等の修繕の依頼を一切していないことが認められる。そして,前記3(2)イ(ウ)cのとおり,本件建物を建て替えざるを得ない状態になった主要な原因が本件建物の雨漏りであり,本件建物の雨漏りの主要な原因が本件建物の排水桝等の排水設備に関する瑕疵ではあるものの,鑑定の結果によれば,原告が上記のとおり本件建物の雨漏り状態を修繕しようとせず放置したことが,本件建物に関する損害の拡大に寄与したことは否定できない。 そうすると,損害の負担について公平を図る見地から,本件については過失相殺を行うのが相当であり,原告の被った損害につき,3割を減じるべきである。 したがって,原告が被告に対し請求し得る損害賠償金は,前記3(2)イ(ウ)c記載の本件建物の建て替えに要する費用相当額である6184万5153円の7割である4329万1607円となる。 第4 結論以上によれば,原告は,被告に対し,前記第3の4記載の4329万1607円及びこれに対する前記争いのない事実等(4)キに記載された準備書面送達日の翌日である平成14年5月25日から支払済みま 結論 以上によれば,原告は,被告に対し,前記第3の4記載の4329万1607円及びこれに対する前記争いのない事実等(4)キに記載された準備書面送達日の翌日である平成14年5月25日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。なお,上記の主位的請求に係る認容額が予備的請求に係る請求額を上回るため,原告の予備的請求の当否については判断しない。 したがって,原告の主位的請求は,被告に対し4329万1607円及びこれに対する平成14年5月25日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の主位的請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 前橋地方裁判所民事第2部裁判長裁判官東條宏裁判官原克也裁判官高橋正幸
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