令和6年4月16日宣告広島高等裁判所令和5年第92号公職選挙法違反被告事件原審広島地方裁判所令和4年(わ)第118号 主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人三宝明義(主任)及び同桑原崇共同作成の控訴趣意書に記載のとおりであるからこれを引用するが、論旨は、要するに、⑴原判決には不法に公訴を受理した違法があり(弁護人は、当審第1回公判期日において、控訴趣意書中の公訴権濫用に関する主張は、刑訴法378条2号の控訴理由を主張するものである旨釈明した。)、⑵原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある、というものである。 そこで、記録を調査して検討する。なお、弁護人の主張内容に鑑み、以下、控訴理由の論理的順序にかかわらず、事実誤認をいう論旨に対する判断を示した後に不法な公訴を受理した違法をいう論旨に対する判断を示すこととする(なお、略称については原判決のそれと同様である。)。 第1 事実誤認をいう論旨について 1 原判決の判断概要原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は、令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙に際し、広島県選出議員選挙の選挙人であり、同選挙に立候補する決意を有していたAの選挙運動者である被告人が、Aを当選させる目的で、同人への投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、Aの配偶者であるBから、⑴平成31年3月31日、自身の選挙事務所又はその周辺において現金50万円の供与を受け(原判示第1の事実)、さらに、⑵令和元年6月1日頃、自身の事務所において現金20万円の 供与を受けた(原判示第2の事実)、というものである(以下、年は特記しない限り平成31年又は令和元年であ 1の事実)、さらに、⑵令和元年6月1日頃、自身の事務所において現金20万円の 供与を受けた(原判示第2の事実)、というものである(以下、年は特記しない限り平成31年又は令和元年である。)。 原判決は、まず、原判示第1の現金50万円の交付時期について、B方から発見された広島市議会会派別一覧の印刷時期や手書きの状況、Bの秘書CとBの運転手DとのLINEのやり取り、被告人のホームページ記載の活動状況、遊説車日程表の記載といった客観的証拠は、交付時期が弁護人の主張する2月4日よりも3月31日であることに整合的であるとした上で、「3月下旬頃から4月初めまでの時期に被告人の選挙事務所又はその周辺で現金50万円を被告人に交付した」旨のBの証言は、前記の広島市議会会派別一覧の手書きの時期と整合的であり、客観的証拠に裏付けられたC及びDの証言に強く支えられていて信用性が高く、「3月31日午後に被告人の選挙事務所の事務所当番をしていた間、Bが被告人の選挙事務所に来たことはなかった」とのEの証言を考慮しても、Bらの証言が信用できるとの判断は変わらないとし、「2月4日午前9時頃、Bが事前連絡なく被告人の事務所に来訪し、50万円を渡された」との被告人の供述は信用できないとして、原判示第1の現金50万円の交付時期は3月31日であると認定したものである。 そして、原判決は、各金銭交付の趣旨について、本件選挙におけるAの置かれた状況、AとBとの関係、金銭交付の時期、交付した金額、本件各金銭交付を示す記載のあるリストの保存状況等に照らすと、Bが被告人に交付した各金銭に、本件選挙に関し、Aを当選させる目的で、Aへの投票や投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬が含まれていたことは明らかであるとし、この認定を前提とすると、被告人の選挙運 告人に交付した各金銭に、本件選挙に関し、Aを当選させる目的で、Aへの投票や投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬が含まれていたことは明らかであるとし、この認定を前提とすると、被告人の選挙運動者該当性もまた明らかであるとの判断を示し、さらに、各金銭交付の趣旨に対する被告人の認識について、被告人は、本件当時、広島県連の顧問で選挙対策委員会の委員であったから、本件選挙におけるAや Aを応援するBの置かれた状況をよく理解し、現金を受領した際、Aの立候補表明から間もないこと、あるいは選挙が迫っていることを認識していたと認められ、加えて、被告人は、原判示第2の20万円入りの封筒を渡されそうになると、自ら、本件選挙においてAの応援はできない旨をBに伝えており、そのことは、その現金がAへの支援の報酬を含むものであることを感じ取ったからにほかならず、また、各現金について、領収証を交付せず、収支報告書上、BやⅩ支部からの寄附として処理していないなど、これまでとは異なる取扱いをしているのであり、以上によると、被告人において、Bが被告人に交付した各金銭に、本件選挙に関し、Aを当選させる目的で、Aへの投票や投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬が含まれていたことを認識していたことは明らかであるとの判断を示したものである。 2 原判示第1の事実について⑴ 所論は、現金50万円の交付時期は被告人の選挙事務所開きが行われる前の2月4日であり、その時点ではAはY党の公認も受けておらず立候補の意思表明もしていなかったのであるから、50万円に本件選挙におけるAの選挙運動の報酬の趣旨が含まれていたということはあり得ず、被告人においても本件選挙と関連付けることは全くなかったと主張し、その根拠として、①Bは、現金の交付時期、時間、場所、具 件選挙におけるAの選挙運動の報酬の趣旨が含まれていたということはあり得ず、被告人においても本件選挙と関連付けることは全くなかったと主張し、その根拠として、①Bは、現金の交付時期、時間、場所、具体的状況等について不明確で曖昧な証言に終始しており、広島市議会会派別一覧の手書き部分が3月20日以降になされたものであっても、現金の交付時期も同日以降であることを裏付けることにはならないし、Cの陣中見舞いの日程を組むメールも多数の候補者を対象とした一般的なものであり、被告人について事前の日程調整はされておらず、Bが3月31日に被告人を訪問したことを裏付けるものではない、②CがDに被告人の選挙事務所の住所を送信した午後5時4 6分の23分後である午後6時9分にDからCに「現状 F→C→F(いまここ)」のメッセージが送信されているが、Dは、Fの事務所から被告人の選挙事務所まで10分から15分くらい、被告人の選挙事務所に滞在した時間は10分弱と証言し、遊説車日程表には被告人が午後6時に選挙事務所に戻る旨の記載がされているのであるから、午後6時9分にFのところというのは説明がつかない、③Cは、Dから選挙事務所の住所について問合せがあったため、LINEでその住所を伝えたと証言し、他方、Dは、Cに住所を問い合わせておらず、唐突に住所が送られてきたがその情報を使わず選挙事務所予定地一覧の情報からグーグルマップで調べたというのであり、両者の証言は整合しない上、Dの把握していた情報では被告人の選挙事務所の場所を調べることは不可能であるから、Dは被告人の選挙事務所に行くことはできなかったというべきであり、Dは、被告人の選挙事務所に行ったことにしなければCの指示に背くことになるため、事実に反して「F→C→F」とのメッセージを送信したとも考えられ の選挙事務所に行くことはできなかったというべきであり、Dは、被告人の選挙事務所に行ったことにしなければCの指示に背くことになるため、事実に反して「F→C→F」とのメッセージを送信したとも考えられるなどと指摘して、現金50万円の交付時期を3月31日と認定した原判決の判断は誤っているというのである。 しかしながら、Bは、多くの点について覚えていないとしながらも、事前に訪問する相手を検討し、広島市議会会派別一覧にメモ書きをし、秘書に日程の調整を依頼したこと、Bの自宅から発見された広島市議会会派別一覧に「2019/3/20」と印字されていることについて、そのような検討をしたのは平成31年3月20日以降だと思う旨証言しており、その証言内容に不自然さはなく選挙のための活動として合理的な内容を述べているとみられるのであって、広島市議会会派別一覧の記載という客観的な事実にも裏付けられているということができる。また、Bは、常設事務所ではなくプレハブの選挙事務所に行 き、陣中見舞いとして渡したことを具体的に述べているのであり、Cも、Bの指示で統一地方選の広島県内の選挙日程を調べ、現職議員の名簿をBに提出し、Bが陣中見舞いに回りたい相手のところにチェックを入れ、それを基に陣中見舞いの日程調整をしたこと、日程調整の指示を受けたのが3月下旬頃であること、Bが陣中見舞いの訪問を開始したのが3月下旬であること、訪問当日に被告人及びFのアポイントが取れ、Dに連絡をとって被告人の選挙事務所の位置情報をLINEで送ったことを具体的に証言しているのである。Dも、統一地方選の候補者を回った後、Bの指示でB宅に戻った頃に、Cから電話があり、被告人やFの選挙事務所を訪問してほしいと連絡があったので、Fの事務所へ行ったがBからFが戻っていないと言われ、 。Dも、統一地方選の候補者を回った後、Bの指示でB宅に戻った頃に、Cから電話があり、被告人やFの選挙事務所を訪問してほしいと連絡があったので、Fの事務所へ行ったがBからFが戻っていないと言われ、先に被告人の事務所へ向かい、その後、Fの事務所へ向かったと証言しているのであって、このようなC及びDの各供述は、やり取りされたLINEのメッセージにも符合しているのである。なお、Dが、被告人の選挙事務所の場所をCに尋ねておらず、同人は念のため被告人の選挙事務所の場所を送信してきたのであろうと述べているところは、Cの供述とは異なっているが、被告人の選挙事務所に向かうのでなければCがその場所をDに送信する理由はないし、Dが被告人の選挙事務所に行っていないのであれば、あえてCに嘘をついてまで行ったかのように装う首肯し得る理由も見出せないのである。Bが3月31日に被告人の選挙事務所を訪問し現金を渡したことを示すこれらの供述は、客観的証拠によく符合するものであり、所論が指摘するD供述とLINEとの時間的な不整合については、原判決も説示するとおり、その時間的なずれは感覚に基づく幅のあるものにすぎないとみられるのであって、原判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものとはいえない。 ⑵ また、原判決は、Bが2月4日に来訪し50万円を渡してきたとい う被告人の供述について、衆議院議員であるBが週始めの朝早く事前連絡なしで突然来訪するとは考え難く、同日Bは入院中の父親の見舞いに行くことになっていたからなおさらであるという説示をしているところ、所論は、①Bの立場からすれば広島市議会の重鎮である被告人との親交は重要であり、平日の午前9時頃であれば被告人は常設事務所にいるだろうと推測し、多忙な日程の中、事務所開きに出席する代わりに被告人を直接訪問し Bの立場からすれば広島市議会の重鎮である被告人との親交は重要であり、平日の午前9時頃であれば被告人は常設事務所にいるだろうと推測し、多忙な日程の中、事務所開きに出席する代わりに被告人を直接訪問して慰労しようと考え、時間の合間を縫って事前連絡なしに訪問したことに不自然さはない、②多忙なBが予定されていた父親の見舞いを早めに切り上げ、次の予定の時刻までの間に被告人の常設事務所を訪問することは、各地点の移動所要時間からも可能であり、Bが空き時間を活用して事前連絡なく被告人を訪問することは何ら不思議でない、③原判決は原判示第2の現金交付の際には事前連絡がされていると指摘するが、6月頃は、Bは多数の地方議会議員を訪問する日程をあらかじめ組んでいたのであり、その当時と2月頃とでは状況が異なる、④原判決は、被告人がBを示すものであると供述するホームページの2月4日の欄の「陣中見舞の来訪者あり」の記載は名前が特定されていないと指摘するが、2月9日に予定されていた事務所開きの前に陣中見舞いに訪れるのは、多忙かつ被告人と懇意にしているB以外になく、ホームページに記載するほどのインパクトのある人物ということからも、上記の「来訪者」とはBのことであり、現金の交付時期が2月4日であることを示すものであるなどと主張して、被告人の供述は信用できないと説示する原判決の判断は誤りであるというのである。 しかしながら、所論の指摘する事情は、2月4日にBが被告人と会ったことと矛盾しない事実ではあるが、Bが3月31日に被告人と会い、現金を交付した事実を否定するような事情とはいえない。そして、 前述したとおり、現金の交付時期が3月31日であることは、客観的証拠と整合し十分に裏付けられているとみられ、これに対し、被告人の供述は、3月20日に印刷され、被告 いえない。そして、 前述したとおり、現金の交付時期が3月31日であることは、客観的証拠と整合し十分に裏付けられているとみられ、これに対し、被告人の供述は、3月20日に印刷され、被告人の欄の横に「50」と手書きされている広島市議会会派別一覧と整合的とはいえず、CとDとのLINEのやり取りとも整合しないのであって、被告人が、取調べの当初、現金の交付時期を1月終わりから2月初め頃と供述し、また、交付場所は3月下旬には閉鎖されていた被告人の常設事務所であったと一貫して供述していたなどという所論の指摘を考慮してみても、被告人供述の信用性に関する原判決の判断に誤りがあるなどとはいえない。 ⑶ その他、所論は、①Fと面会約束をしたというCの証言は曖昧であり、面会約束をしているのにFの事務所を二度訪問し結局面会できていないというのは不自然であって、不在のためFの息子に現金を渡しており二度訪問した記憶はないというBの証言とも齟齬している、②原判決は「3月31日午後の当番の間Bは被告人の選挙事務所に来ていない」というEの証言は記憶が定かなものではないというが、著名人であるBが来所すれば鮮明に記憶しているはずであり、EはBの来所をはっきりと否定しており、Bとの面会を知り得ないほど長時間不在にすることは考えられないし、LINEの送信状況からするとBは午後6時の10分以上前には被告人の選挙事務所に到着しているはずであるから、午後6時までの当番であるEと入れ違う可能性はなく、Bは3月31日午後に被告人の選挙事務所には来ていないというほかはない、などともいうのである。 しかしながら、Bが3月31日に被告人の選挙事務所を訪問したこと自体は、前述したとおり客観的証拠に裏付けられているのであって、上記所論①の指摘する事情は、選挙運動期間の最 どともいうのである。 しかしながら、Bが3月31日に被告人の選挙事務所を訪問したこと自体は、前述したとおり客観的証拠に裏付けられているのであって、上記所論①の指摘する事情は、選挙運動期間の最中であるといった状 況等に照らせば不自然とまでいえず、Bも、Fを訪問した回数はよく覚えていないというのみで、二度訪問したことを積極的に否定しているわけではない。上記所論②のEの供述についてみても、Bは選挙事務所に被告人を訪ねた後、そこで現金を渡したか自宅へ誘導されてそこで渡したかはっきりしないと述べており、Bが終始選挙事務所にいたとは限らないし、Bが訪問した時間もEの勤務時間も厳密に特定できるものではないから、所論の指摘は原判決の事実認定の核心部分を揺るがすものとはいえない。 ⑷ 客観的証拠にも整合的であるとしてB並びにC及びDの各証言ないし供述の信用性を認め、原判示第1の現金交付時期を3月31日と認定した原判決の判断に誤りはなく、本件選挙の状況等のほか、金銭交付の時期や交付した金額、金銭交付を示す記載のあるリストの保存状況等に照らし、原判示第1の現金50万円には、本件選挙に関し、Aを当選させる目的で、Aへの投票や投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬が含まれており、被告人としてもそのような趣旨の金銭交付であることを認識していたと認定した原判決の判断に特段不合理なところは認められない。 3 原判示第2の事実について⑴ 所論は、金銭交付の趣旨について、被告人は立場上Aを支援する余地はなく、現金を差し出された際にAの応援はできない旨を明確に伝えており、Bにおいても被告人にAの応援を期待できないことを認識したのであるから、Bが被告人に交付した20万円に選挙運動の報酬の趣旨が含まれていなかったことは明らかである、など できない旨を明確に伝えており、Bにおいても被告人にAの応援を期待できないことを認識したのであるから、Bが被告人に交付した20万円に選挙運動の報酬の趣旨が含まれていなかったことは明らかである、などというのである。 しかしながら、原判決も説示する本件選挙におけるAの置かれた状況、AとBとの関係、金銭交付の時期、交付した金額、リストの保存 状況等に加え、Bは帰る間際に、「見てやってくれ」といってAの宣伝資料が入った手提げ袋を置いていったというのであり、このような事実関係ないし事情に対し、交付した現金の趣旨がAの選挙支援とは全く関係がないものであることを示す事情は何ら見受けられないのであるから、被告人はBに対しAの応援はできない旨を明確に伝えたという所論を踏まえてみても、Bが被告人に交付した金銭に本件選挙に関しAへの選挙運動をすることの報酬が含まれていたことは明らかというべきであり、原判示第2の金銭交付について、Aの選挙運動をすることの報酬の趣旨が含まれると認定した原判決の判断に誤りはない。 ⑵ また、所論は、被告人の認識について、被告人はBから封筒を差し出された際、その現金がAへの支援の報酬を含むものであることを感じ取っていたこと自体は否めないが、その上で、Bに対し、明確にAの応援はできないことを伝え、Bも納得した様子を見せたのであるから、被告人は、選挙報酬の趣旨を含む現金は受け取るつもりはないことをBが理解したものと受け止め、改めて差し出された現金をBが述べたとおり当選祝いとして受け取ったのであり、領収証を交付しなかったのはBから求められなかったからにすぎず、政治資金収支報告書に事実と異なる記載をしたのも特段の意味はないから、交付された現金について報酬の趣旨が含まれていたことを被告人が認識していたと認定 かったのはBから求められなかったからにすぎず、政治資金収支報告書に事実と異なる記載をしたのも特段の意味はないから、交付された現金について報酬の趣旨が含まれていたことを被告人が認識していたと認定した原判決の判断には誤りがある、などというのである。 しかしながら、原判決も説示する本件選挙におけるAやBの置かれた状況、本件選挙が迫ってきているという交付時期についての被告人の認識や理解に加え、被告人が、封筒を渡されそうになって自らAの応援はできない旨を伝えたということは、その現金がAの支援の報酬を含むものであることを感じ取ったからにほかならないというべき であり、そして、Bは、帰り際に見てやってほしいとしてAの宣伝資料とうかがわれる手提げ袋を置いていったというのであって、そのようなBの言動等に照らせば、その現金に依然として選挙報酬としての趣旨が含まれており、それが否定されたわけではないことを被告人も分かっていたと認められるのであり、そのことは、受領した現金についてこれまでのBからの現金受領とは異なる扱いをしていることにも裏付けられているというべきである。現金20万円にAの選挙運動をすることの報酬の趣旨が含まれていたことを被告人としても認識していたと認定した原判決の判断に誤りはない。 4 その他原判決の認定判断を縷々論難する所論を踏まえて検討してみても、原判決の認定判断に、論理則、経験則等に照らし、特段不合理なところはなく、原判決に事実の誤認があるとは認められない。 事実誤認をいう論旨は理由がない。 第2 不法に公訴を受理した違法をいう論旨について所論は、要するに、本件において、公訴権を独占する検察官が、不起訴を示唆して被告人に検察官が描いた構図に沿う供述をさせたにもかかわらず、突然態度を翻して、そ を受理した違法をいう論旨について所論は、要するに、本件において、公訴権を独占する検察官が、不起訴を示唆して被告人に検察官が描いた構図に沿う供述をさせたにもかかわらず、突然態度を翻して、そのように不当に獲得された供述に基づいて公訴を提起したのであり、もはや公平公正な公訴の遂行は不可能で本件公訴は重大な訴追裁量権の逸脱があったといえるから、本件公訴は棄却されるべきであるというのである。 しかしながら、捜査段階において、検察官が不起訴を示唆して意図する供述を引き出そうとし、被告人が検察官の不起訴を期待してその意図に沿う供述をしたものであったとしても、原判決も説示するとおり、本件公訴提起は検察審査会において起訴相当との議決が出たことを踏まえてなされたものであり、検察官において、検察審査会の対象となり被告人について起訴相当の議決が出ることを想定した上で被告人から不 当に供述を獲得し、予定したとおりに検察審査会の審査及び議決を経て本件公訴を提起したなどということは、現実問題としておよそ考え難いというべきであるから、本件公訴提起が公訴を棄却すべきほどの違法を有するものとはいえず、ましてや公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に当たるとはいえないと説示する原判決の判断に誤りはない。 不法に公訴を受理した違法があるという論旨も理由がない。 よって、刑訴法396条により本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 令和6年4月16日広島高等裁判所第1部裁判長裁判官森浩史 裁判官家入美香 裁判官富張真紀は転補のため署名押印することができない。 森浩史 裁判官家入美香 裁判官富張真紀は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官森浩史
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