【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 理 由 本件控訴の趣意は、前橋地方検察庁高崎支部検察官検事得津良之助作成名義の控 訴趣意書記載のとおりであるからこれを引用し、こ
主文本件控訴を棄却する。 理由本件控訴の趣意は、前橋地方検察庁高崎支部検察官検事得津良之助作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるからこれを引用し、これに対し当裁判所は次のように判断する。 所論は要するに、原判決が本件について被告人を懲役三月に処し、三年間右刑の執行を猶予する旨の言渡をなし、右法令の適用として執行猶予につき刑法第二十五条第一項を挙げておる点を指摘し、これは法令の適用を誤つたもので、本件の場合は刑法第二十五条第二項及び第二十五条ノ二を適用すべきものであるとして原判決の擬律錯誤を主張するに帰着するものである。 よつて按ずるに、被告人が本件起訴日の昭和二十八年十月十日以前既に別件の覚せい剤取締法違反被告事件について同年九月二十二日原審において懲役八月但し三年間執行猶予の言渡を受け、該判決は同年十月七日確定したこと並びに原審が本件について認定した犯罪事実中第一及び第二の事実は前掲別件の判決言渡前の所犯であり、また同第三の事実は別件の判決言渡前の昭和二十八年九月二十日頃より言渡後の同年十月一日迄の継続した犯行であるが、そのいずれも右別件判決の確定した同月七日以前の所犯であることは本件訴訟記録上明らかなところである。この点に関し所論は原判決認定に係る本件第一、第二の犯罪事実と同第三の犯罪事実との間に差別を設けて論及しておるが、前述のとおりそのいずれも別件で言渡された前掲執行猶予の判決の確定前の犯行であることには、彼此いささかも変りなく即ち本件各犯罪は等しく右確定判決のあつた罪と刑法第四十五条後段の併合罪の関係に立つものであるから、本件第一乃至第三の各犯罪事実全部について前掲確定判決によつて執行猶予を言渡された罪の所謂余罪として論ずるになんら支障のないものである。而して所論は執行猶予 後段の併合罪の関係に立つものであるから、本件第一乃至第三の各犯罪事実全部について前掲確定判決によつて執行猶予を言渡された罪の所謂余罪として論ずるになんら支障のないものである。而して所論は執行猶予は言渡された犯罪の所謂余罪につき、さらに情状に因り執行猶予を言渡すことも可能であることを判示した最高裁判所の判例(昭和二五年(あ)第一五九六号、同二八年六月一〇日大法廷判決)は執行猶予中の者に対し一定の要件の下にさらに執行猶予の言渡をなし得ることを規定した改正刑法(昭和二十八年八月十日公布法律第百九十五号同年十二月一日施行)によつて変更されたものであるとの見解に基き本件被告人の如く現に前刑につき執行猶予の期間内にある者対しさらに執行猶予の言渡をする場合には原判決のように刑法第二十五条第一項によらないで、同条第二項を適用し、同時に刑法第二十五条ノ二に則り執行猶予期間中被告人を保護観察に付する措置をとらなければならない筋合であると主張する。然しながら余罪につきさらに執行猶予の言渡をすることも可能であることを認めた前掲最高裁判所の判決はその理由において「かような併合罪である数罪が前後して起訴されて裁判されるために、前の判決では刑の執行猶予が言渡されていて而して後の裁判において同じく犯人に刑の執行を猶予すべき情状があるにかかわらず、後の判決では法律上絶対に刑の執行猶予を付することができないという解釈に従うものとすれば、この二つの罪が同時に審判されていたならば一括して執行猶予が言渡されたであろう場合に比し著しく均衡を失し結局執行猶予の制度の本旨に副わないことになるものと言わなければならない。それ故かかる不合理な結果を生ずる場合に限り刑法第二十五条第一項の「刑ニ処セラレタル」とは実刑を言渡された場合を指すものと解するを相当とする。従つて本件のように或罪の なるものと言わなければならない。それ故かかる不合理な結果を生ずる場合に限り刑法第二十五条第一項の「刑ニ処セラレタル」とは実刑を言渡された場合を指すものと解するを相当とする。従つて本件のように或罪の判決確定前に犯しそれと併合罪の関係に立つ罪についても犯人の情状次第によつてその刑の執行を猶予することができるものと解すべきである」と説示しており、而して右判例は、所論のように改正前の刑法第二十五条第一項の「前ニ禁錮以上ノ刑ニ処セラレクルコトナキ者」とある条項に対する解釈ではあるがこの判例の趣旨とするところは、右法条をなんら変更を加えることなくそのまま存置したものと見られる改正後の刑法第二十五条第一項第一号に対する解釈としてこれ亦何等変更を加える余地のないものと謂うべきてあつて、このことは改正法が刑法第二十五条第二項を新設したことによつて差異を生ずるものでないと為すべきである。即ち所論で強調する改正後の刑法第二十五条第二項の規定の法意は従来改正前の刑法第二十五条第一項によつては執行猶予を言渡すことが不可能であつた執行猶予中の犯罪についても一定の条件の下に即ち「一年以下ノ懲役又ハ禁錮ノ言渡ヲ受ケ情状特ニ憫諒ス可キモノアルトキ」は再度の執行猶予の言渡を可能とするためのものであり、而してかような執行猶予中の犯罪に対する執行猶予であればこそ右の如く同条第一項の場合に比し特に厳重な条件を付すると共に右第二項の新設に伴い附加された刑法第二十五条ノ二に規定する必要的保護観察に付<要旨>する措置がとられなければならないものとしたのであつて、本件のように余罪について執行猶予を言渡す場合</要旨>には改正後の刑法第二十五条第二項に拠るものでなく従つて又同法第二十五条ノ二所定の保護観察に付する言渡をすべきでないと解すべきである。これを要するに、本件の如き余罪につい 猶予を言渡す場合</要旨>には改正後の刑法第二十五条第二項に拠るものでなく従つて又同法第二十五条ノ二所定の保護観察に付する言渡をすべきでないと解すべきである。これを要するに、本件の如き余罪について刑の執行を猶予する場合に関する前掲最高裁判所の判例は刑法の改正によつてなんら影響乃至変更を受くべき筋合のものでなく、従つて本件被告人に対し刑の執行を猶予するにあたり右判例の趣旨に従い刑法第二十五条第一項の規定を適用し、而してまた刑法第二十五条ノ二による保護観察に付する言渡をしなかつた原判決の法令の適用は相当であつて、原判決には所論のような擬律錯誤の点あるを見ない。論旨は理由がない。 よつて本件控訴は刑事訴訟法第三百九十六条に則り棄却すべきものと認め、主文のとおり判決する。 (裁判長判事小中公毅判事工藤慎吉判事渡辺辰吉)
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