主文 本件控訴を棄却する。理由 弁護人諫山博が陳述した控訴趣意は記録に編綴の同弁護人提出の控訴趣意書記載のとおりであるからこれを引用し、次のとおり判断する。弁護人の控訴趣意第一について。原判決の挙示する証拠を綜合すると、被告人は昭和三二年五月二四日Aの運転する原判示貨物自動車の運転台に同人の左側に席を占め、直方市から田川市に向け進行し、同日午前二時三〇分頃福岡県田川郡a町b附近にさしかかつた際、法令に定められた運転の資格を持たないのにいきなりAが握持していたハンドルの上に手をやつて、これから先は道がよくなつたから俺にハンドルを貸せといつて自ら運転を申出たので、Aはこれを承諾し、同人はただアクセル、ブレーキ、チエンジレバーを操作するだけでハンドルを被告人に委せたこと、そこで被告人はハンドルを握持し、自らの意思に従い、これを操作しながら、時速三〇粁の速度で福岡県町郡c町d丁日B方前附近道路まで約二粁間右貨物自動車を走行させた事実を肯認することができる。およそ、自動車の運転とは自動車に設けられた各種装置の操作により発進、一定方向及び速度の維持若くは変更、停止など自動車の走行について必要な措置をとることを指称するのであ<要旨>るから、自動車の走行に際し、甲者がアクセル、ブレーキ、チエンジレバーを操作し、乙者がハンドルを握持</要旨>してこれを操作した場合、その両者はそれぞれ自動車を運転したものといわなければならない。してみると、前記説示のようにハンドルを操作して操向操作の措置をとつた被告人の所為は、すなわち、自動車を運転したものに外ならないので、原判示のごとく被告人が原判示貨物自動車を運転した事実を認定しこれを原判示法令に問擬した原判決は正当である。所論援用の証拠によるも、被告人が単にハンド すなわち、自動車を運転したものに外ならないので、原判示のごとく被告人が原判示貨物自動車を運転した事実を認定しこれを原判示法令に問擬した原判決は正当である。 を操作して操向操作の措置をとつた被告人の所為は、すなわち、自動車を運転したものに外ならないので、原判示のごとく被告人が原判示貨物自動車を運転した事実を認定しこれを原判示法令に問擬した原判決は正当である。所論援用の証拠によるも、被告人が単にハンド すなわち、自動車を運転したものに外ならないので、原判示のごとく被告人が原判示貨物自動車を運転した事実を認定しこれを原判示法令に問擬した原判決は正当である。所論援用の証拠によるも、被告人が単にハンドルを握つていただけで操向操作の措置をとつたものでなかつた事実を認めることはできないし、又Aだけが本件貨物自動車を運転していたものであるとの事実も肯認できない。そうだとすると、原判決には所論のような事実誤認も、亦法律解釈適用の誤もないので、論旨は理由がない。同控訴趣意第二点について。しかし、さきに認定したとおり、被告人は自ら希望して夜道を約二粁もの間ハンドルを操作してともかくも貨物自動車を運転していること、並びに原審証人Aの供述により明らかなとおり、被告人の操縦上の過失から貨物自動車を前記B方家屋に衝突させたが、その直後被告人は大変なことをしたといつて現場附近の路傍上の石の上に座り頭をかかえこんでいたことに徴すると、たとえ所論の各証拠によつて被告人が当時飲酒していた事実が認められるにせよ被告人の本件犯行時の意識は相当明確であり、衝突事故についても後悔の態度を示しているのであるから、被告人が当時是非善悪の判断力を全く欠如して心神喪失の状態にあつたものはいえないのは勿論、是非善悪の判断力が著しく減退した心神耗弱の状態にあつたものとも認められない。そこで原判決には所論のごとき事実誤認はないものということができるので論旨は理由がない。よつて刑事訴訟法第三九六条に則り本件控訴を棄却することとし主文のとおり判決する。(裁判長裁判官藤井亮裁判官中村荘十郎裁判官生田謙二) 村荘十郎裁判官 生田謙二
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