【DRY-RUN】主 文 原判決中上告人敗訴部分を破棄する。 右部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人花田啓一、同郷成文、同成瀬欽哉、同長屋
主 文 原判決中上告人敗訴部分を破棄する。 右部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 理 由 上告代理人花田啓一、同郷成文、同成瀬欽哉、同長屋誠の上告理由第一点につい て 原審は、被上告人担当のゼミナールの参加学生のストライキに端を発した上告人 学園の紛争解決のため、昭和四五年一二月六日、被上告人と上告人学園との間に原 判決末尾添付の別紙三記載と同一内容の念書(以下「本件念書」という。)が作成 され、被上告人から同別紙四のような上告人学園あての退職願が立会人Dに交付さ れた事実を認定しながら、被上告人と上告人学園とが「右条項(本件念書の第四項) の文言の下に表現しようとしたのは、控訴人(被上告人)が昭和四六年三月三一日 までに被控訴学園(上告人学園)を任意退職する代わり、被控訴人においてはそれ までに控訴人を責任をもつて適当な(一応満足しうるしかるべき)大学に転職させ るということであつた」から、「本件合意により、控訴人は被控訴人に対し昭和四 六年三月三一日までにDを通じて退職願を提出することにより大学を退職する旨の 意思表示をする義務を負い、他方、被控訴学園は右同日までに控訴人を客観的に相 当と認められる他の大学に教員として斡旋就職せしめるか、あるいは、斡旋先の意 向、事情により転職が遂に成功しなかつた場合においても、客観的な第三者から見 て控訴人も被控訴人からこれ程の斡旋の努力を払つてもらえば以て満足すべきであ ると認め得る程度の高度かつ誠実な斡旋の努力を尽すべき義務を負担するにいたつ たものというべきである。しかして、本件合意の成立の過程にかんがみれば、控訴 人の債務は被控訴人の債務に対しいわば対価ともいうべき関係に立ち、被控訴人に おいてその債務を履行しないときは、控訴人はこれを理由として自己の債務の履行 して、本件合意の成立の過程にかんがみれば、控訴 人の債務は被控訴人の債務に対しいわば対価ともいうべき関係に立ち、被控訴人に おいてその債務を履行しないときは、控訴人はこれを理由として自己の債務の履行 - 1 - を拒み、または本件合意を解除する権利を有するものと解するのが相当である。」 と判断している。 しかしながら、本件念書には、その第一項において、「乙(被上告人)は、甲( 上告人学園)経営にかかるE大学を昭和四十六年三月三十一日をもつて自発的に退 職する旨申し出で、甲はこれを認めた。但し、乙において右期日までに他職に転ず る場合は、転職の直前退職するものとする。」と記載され、また、第三項において、 「右退職にいたるまで(最長期昭和四十六年三月三十一日まで)甲は乙に対し現在 の給与額の支払いをなすものとする。但し、その間乙は休職措置を適用されること に異議はない。」と記載されているというのであるから、特段の事情のない限り、 上告人学園経営にかかるE大学を昭和四六年三月三一日をもつて自発的に退職する 旨の被上告人の任意退職の意思表示は、本件念書の作成によつて確定的に表示され たものというべきであつて、被上告人においてあらためて右同日までに大学を退職 する旨の意思表示をする債務を負うものと解することはできない。そして、本件念 書の第四項には、「右退職にいたるまで、乙は甲に対し、E大学の管理運営につい て誹謗をなさないことを約し、甲は乙に適当な職場を最大の努力と責任をもつて斡 旋することを約する。なお、甲は斡旋経過について立会人に対し、定期的に報告す るものとする。」と記載されているにとどまるというのであるから、特段の事情の ない限り、上告人学園が就職斡旋の努力を尽くすべき義務を履行したことが被上告 人の退職の意思表示の効力発生の条件であるとか、上告人学園の右義務と被上告人 いるにとどまるというのであるから、特段の事情の ない限り、上告人学園が就職斡旋の努力を尽くすべき義務を履行したことが被上告 人の退職の意思表示の効力発生の条件であるとか、上告人学園の右義務と被上告人 の退職の意思表示をする義務とが対価関係にあると解することはできないといわな ければならない。 してみれば、首肯するに足る特段の事情を示すことなく、当事者間の合意の内容 を記載した本件念書の文言に反して退職の意思表示をすべき被上告人の債務の存在 を認定し、これを上告人学園の就職斡旋の努力を尽くすべき債務と対価関係にある - 2 - ものとした原審の事実認定には、経験則の適用を誤つた違法があるものというべき であり、右違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は理 由があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、本件は、以上の点 につき更に審理を尽くさせるため、これを原審に差し戻す必要がある。 よつて、その他の上告理由について論及するまでもなく、原判決中上告人敗訴部 分を破棄し、これを原審に差し戻すこととし、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官 全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 本 林 讓 裁判官 大 塚 喜 一 郎 裁判官 栗 本 一 夫 裁判官吉田豊は退官につき署名押印することができない。 裁判長裁判官 本 林 讓 - 3 -
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