【DRY-RUN】主 文 (一) 相手方株式会社竹中工務店との関係で原決定を取り消す。 (二) 抗告人が金二〇、〇〇〇、〇〇〇円の保証を立てることを条件 として次の仮処分を命ずる。
主文 (一) 相手方株式会社竹中工務店との関係で原決定を取り消す。 (二) 抗告人が金二〇、〇〇〇、〇〇〇円の保証を立てることを条件として次の仮処分を命ずる。 (1) 原決定に表示の本件土地(同地に有する工作物を含む)に対する相手方株式会社竹中工務店の占有を解き、これを抗告人の委任する執行吏に保管させる。 (2) 執行吏は現状を変更しないことを条件として右物件を相手方株式会社竹中工務店に使用させなければならない。 (3) 執行吏は相手方株式会社竹中工務店が右物件につき占有の移転、建築工事の続行その他現状を変更する処分をしたとき、又は次の(4)に掲げる場合には、右(2)の使用の許可を取り消さなければならない。 (4) 執行吏は抗告人が大阪地方裁判所昭和二六年(ヨ)第一四四〇号仮処分命令の執行として本件土地に存する工作物を除去したり、物的設備をしようとするときは、これを許容しなければならない。 (5) 執行吏は右(1)記載の物件がその保管に係るものであることを公示するため適当な方法をとらなければならない。 (三) 相手方株式会社竹中工務店が金五〇〇、〇〇〇、〇〇円を供託するときは右(二)の仮処分命令の執行の停止又はその執行処分の取消を求めることができる。 (四) 相手方梅田振興株式会社及び同株式会社梅田ビルデイングとの関係では抗告人の本件抗告を棄却する。 (五) 抗告費用中抗告人と相手方株式会社竹中工務店との関係で生じた部分は同相手方の負担とし、その他の部分は抗告人の負担とする。 理由 抗告代理人は「原決定を取り消す。原決定に表示の本件土地に対する相方方等の占有を解き、これを抗告人の委任する執行吏に保管させる。執行吏 他の部分は抗告人の負担とする。 理由 抗告代理人は「原決定を取り消す。原決定に表示の本件土地に対する相方方等の占有を解き、これを抗告人の委任する執行吏に保管させる。執行吏は相手方等が現状を変更しないことを条件として本件土地を相手方等に使用を許したままで保管することができる。右の各場合に執行吏はその保管に係る事実を公示するため適当な方法をとらなければならない。相手方等は本件土地につき占有の移転、建築工事の続行その他現状を変更する一切の処分をしてはならない。」との裁判を求めた。 抗告人の主張した抗告理由の要旨及びこれに対する相手方等の主張の要旨は別紙記載のとおりである。 そこで本件の問題点を被保全権利の存否と仮処分の必要性の有無の二点に分けて判断し、結論を導くことにする。 第一、 抗告人の被保全権利の存否について抗告人の疏明資料によれば抗告人は昭和二一年一〇月本件土地を所有者Aから賃借し、その頃Aと共に実地に臨んでその引渡を受けたことを認めるに足る。もつとも相手方等の疏明資料によれば、反対に抗告人は本件土地の引渡を受けなかつたと認めることもできるが、それによつては抗告人の右引渡についての主張並びに疏明を排斥し、抗告人は本件土地の引渡を受けていないことが明らかであるとまではいうことができない。されば当裁判所は抗告人は本件土地について占有権を承継取得したと一応認め、これを前提として本件を考察する。そして当事者間に争いのない事実及び本件記録によれば、抗告人は所有者Aを被申請人として昭和二三年六月八日「被申請人は抗告人が賃借権を有する本件土地につき板囲その他抗告人のなす建築に妨害となるべき一切の行為をしてはならぬ。」との旨の第一の仮処分を得て、国際倶楽部建築のために本件土地について地均しを施したこと、昭和二三年一二 借権を有する本件土地につき板囲その他抗告人のなす建築に妨害となるべき一切の行為をしてはならぬ。」との旨の第一の仮処分を得て、国際倶楽部建築のために本件土地について地均しを施したこと、昭和二三年一二月Aは相手方梅田振興に対して同会社の増資による現物出資として本件土地を譲渡し、昭和二四年四月三〇日その所有権移転登記を了したこと、抗告人は同会社を被申請人として昭和二六年一一月八日「被申請人は本件土地へ立ち入つたり、同地上へ建築は勿論板囲、小屋掛その他抗告人のする建築工事の妨害となる一切の行為をしてはならぬ。」との旨の第二の仮処分を得たこと、これより以前の昭和二六年九月一日相手方梅田振興は同竹中工務店に対し同工務店が建築工事を請け負つた第一生命ビル工事用材料置場及び仮事務所に使用のために本件土地を一時賃貸し右第二の仮処分命令の発せられた前後頃には同工務店が現実に本件土地の占有使用をなし、右賃貸借は契約更新によつて昭和二八年三月末まで続いたこと、その後同年七月二二日相手方梅田振興は同梅田ビルに対して本件土地を賃貸して同相手方はその占有を取得し、次で同月二七日同相手方は同相手方竹中工務店を工事請負人として請負代金九一六、〇〇〇、〇〇〇円、工事着手同年八月一日、建物引渡の時期昭和三〇年三月三一日と定め鉄骨鉄筋コンクリート建地上九階地下三階の梅田ビルデイングの新築工事を請け負わせて占有を移転し、相手方竹中工務店は現に本件土地を直接占有して該工事を続行中であること、相手方梅田ビルは相手方竹中工務店、同梅田振興及び同相手方の代表取締役であるB外四名の発起設立に係り、昭和二八年六月一三日設立登記を了して成立し、その代表取締役の一人は右Bであること、抗告人は相手方梅田振興に対しては占有回収の訴を既に提起し、目下大阪地方裁判所において係争審理中であることを認 り、昭和二八年六月一三日設立登記を了して成立し、その代表取締役の一人は右Bであること、抗告人は相手方梅田振興に対しては占有回収の訴を既に提起し、目下大阪地方裁判所において係争審理中であることを認めることができる。 以上の事実によれば、相手方梅田振興は昭和二六年九月一日本件土地を相手方竹中工務店に賃貸するに当り、その頃抗告人の占有を奪つて同相手方に引き渡し、同相手方の直接支配に委ね、昭和二八年七月上旬には本件土地を相手方梅田ビルに賃貸して引き渡し、その頃同相手方は請負契約に基いてその占有を相手方竹中工務店に移したもので、相手方梅田ビルは侵奪者の直接の特定承継人であり、相手方竹中工務店はさらにその者の特定承継人であるが、いずれも右侵奪の事実を知つて取得したものというべきである。されば、抗告人は民法第二〇〇条の規定により、右相手方両名に対しても占有回収の訴を提起し得る関係にあり、従つて抗告人は相手方三名に対し被保全権利として占有権を有するものと認めるのが相当である。この点に関し相手方等は本件土地の占有は昭和二六年九月以来終始相手方竹中工務店に属し、相手方等三名間に占有の移転、承継の事実はないと主張するが、右主張が単に現実の引渡の否認を意味するに止まるならばともかく、その他の方法による占有権の譲渡までも否定するものとすれば、到底容認し得ない主張であることは本件記録によつて明らかである。又相手方等は相手方竹中工務店は本件土地を昭和二六年九月おそくとも同年一二月二二日以来占有し、その占有は善意で、かつ占有開始後二年余を経過しているのに、まだ同相手方に対して占有回収の訴の提起がないから、抗告人は同相手方に対しては本件土地の占有権を主張し得ないと抗争する。なるほど民法第二〇〇条第二項の律意からすれば、一旦侵奪物が善意の特定承継人の占有に帰するとき して占有回収の訴の提起がないから、抗告人は同相手方に対しては本件土地の占有権を主張し得ないと抗争する。なるほど民法第二〇〇条第二項の律意からすれば、一旦侵奪物が善意の特定承継人の占有に帰するときは、その後悪意の特定承継人の占有に移つたとしても、その者に対して占有回収の訴を提起し得ない(昭和一三年一二月二六日大審院民一部判決)のである。しかし右特定承継人が占有代理人(賃借人、受寄者等)である場合は、事は自ら異つてくるものといわなければならない。なんとなればこの場合本人(賃貸人、寄託者等)が侵奪者であり、直接占有から間接占有に変つたとはいえ侵奪物は依然として侵奪者の占有にある事実に眼をふさぐわけにはいかないから、たとえ占有代理人が善意であつても右本人の占有の瑕疵は治癒されないものというべく、被侵奪者はこの占有代理人による占有者である侵奪者に対して占有回収の訴を提起し、占有物の返還を求めることができる(大審院昭<要旨第一>和五年五月三日民三部判決)から、このこととの関連において事態を考える必要がある。そうだとすれば、被</要旨第一>侵奪者が侵奪者に対する訴の提起を保留して、悪意の占有代理人のみに対して占有回収の訴を提起するには、侵奪のときから一年以内にこれをなすことを要するが、すでに侵奪者に対して占有回収の訴が提起され、それが維持されつつある間に、又は右訴が被侵奪者の勝訴に帰した場合においては、占有代理人に対する占有回収の訴についての侵奪のときより一年以内という出訴期限は、自ら履践されているものと解するのが、事理上当然であるといわなければならない。されば、この場合においての占有代理人に対する占有回収の訴は侵奪のと<要旨第二>きから一年を経過した後にでも、これを提起することを得るものと解するのが相当である。次に占有代理人の</要旨第二>善意 されば、この場合においての占有代理人に対する占有回収の訴は侵奪のと<要旨第二>きから一年を経過した後にでも、これを提起することを得るものと解するのが相当である。次に占有代理人の</要旨第二>善意悪意は占有取得当時を標準として決すべきことは論を俟たないが、占有の移転が行われたときはその都度善意悪意を問題としなければならないのである。侵奪者甲から占有を奪つた侵奪者乙のために占有代理人丙(たとえば賃借人)が善意で代理占有をなし、次では侵尋者乙から占有の譲渡を受けた他の占有代理人丁のために代理占有をなし、そのときは既に侵奪の事実を知つていたとすれば、右丙の直接占有が当初から引き続いているとしても、右丁のために代理占有をしたのは、そのときに再び目的物の特定承継人になつたものというべきであるから、丙はなお悪意の特定承継人というに妨げないのである。されば抗告人は相手方等三名に対し本件土地の占有権を主張し得ると解する次第である。 これと反対の見解に立つ相手方等の主張は失当として排斥する。 第二、 仮処分の必要性の有無について抗名人は昭和二六年一一月八日相手方梅田振興に対して前記のとおり第二の仮処分を得ているから、本件仮処分はそれと重復する限りにおいて必要性のないことは明らかであり、又他の相手方両名に対して第二の仮処分につき承継執行文の付与がたやすく(訴の提起なくして)なされるならば同断である。ところで民事訴訟法第七五六条第七四九条によれば、仮処分命令については命令後債務者の承継がありこれに対して執行する場合に承継執行文の附記のなさるべきことは、疑いの余地がなく、右承継は一般承継に限らず特定承継を含み、その承継には占有の承継を含むと解すべきことは、民事訴訟法第七四八条第五一九条第四九七条ノニの規定上格別<要旨第三>異論のないところである。ただ仮処分 なく、右承継は一般承継に限らず特定承継を含み、その承継には占有の承継を含むと解すべきことは、民事訴訟法第七四八条第五一九条第四九七条ノニの規定上格別<要旨第三>異論のないところである。ただ仮処分の特定承継の場合においては保全処分の特質から鑑みて、承継人との関</要旨第三>係においても仮処分の必要の存するときに限つて承継執行文は付与さるべく、この必要性が存しないときは承継執行文の付与は許されないものと解すべきである。しかしこの一点を外にしては、承継執行文の付与について仮処分たると一般の強制執行たるとにより別異に扱うべき理は全然ないものというべきである。単純な不作為を命ずる仮処分は執行を要しないものであるから、特別の定めのない場合には、強制執行は許されず、従つて執行文の附記は許されないという相手方等の主張はあたらない。けだし単純な不作為を命じた仮処分は、債務者が義務違反をしない以上執らし得ないことはもとより当然だか、このことは不作為義務を命じた一般の債務名義の場合においても少しも異なるところはないのである。不作為を命じた仮処分の執行は民事訴訟法第七五六条、七四八条、七三三条、七三四条、民法第四一四条に則り、代執行、間接強制等によつてこれをなすことを得るのであるから、相手方等の主張は採用できない。又単純な不作為を命じた仮処分は債務者が義務違反をしない以上執行もできないのであるから、執行期間を定めた民事訴訟法第七四九条第二項の規定は準用の余地がないものと解する外はない(不作為を命じた仮処分の執行としての除却命令等の執行については右執行期間の制限が存し、又執行機関による執行処分を要する仮処分について承継執行文の付与があつたときは、そのときから右執行期間の準用があるものと解すべきであろう。)これと反対の見解に立つ相手力の主張は採用しない。法益権 し、又執行機関による執行処分を要する仮処分について承継執行文の付与があつたときは、そのときから右執行期間の準用があるものと解すべきであろう。)これと反対の見解に立つ相手力の主張は採用しない。法益権衡から承継執行文の付与を否定すべきであるとする相手方等の主張も当らない。それは右第二の仮処分取消の事由としての事情変更又は特別事情に該当するにすぎないのである。さて、前記第二の仮処分の後に、その債務者である相手方梅田振興から相手方梅田ビルに、更に相手方竹中工務店にそれぞれ本件土地の占有移転承継のあつたことは前に述べたとおりであつて、それは執行裁判所に明白であり、又証明書を以て証し行るとことである。従つて前記第二の仮処分について相手方梅田ビル及び同竹中工務店に対して承継執行文はたやすく付与せらるべき関係にある。抗告人は原裁判所に右承継執行文の付与を申請したが、またその許否の決定がないから、本件仮処分は全面的にその必要性がある主主張するが、このことは第二の仮処分と重複する範囲内の本件仮処分に必要性を認める法律上の理由となすを得ない。されば本件仮処分は相手方三名に対する関係において、本件土地につき建築工事の続行その他現状変更の処分の禁止を求める部分はその必要がないものと認めるのが相当である。 次に相手方等の占有の解止とその執行吏保管を求める仮処分は、前記のとおり本件土地の直接占有をしている者は相手方竹中工務店だけであり、他の相手方二名は間接占有者であるから、相手方竹中工務店に対してのみ求むべく、且つこれを以て足るものというべく、従つてその余の相手方両名に対しての右仮処分申請は理由がない。そして相手方竹中工務店は現に本件土地を占有して建築工事を続行中であり、これによつて抗告人の将来の強制執行による権利の実現が不能又は著しく困難となることは多言を要 対しての右仮処分申請は理由がない。そして相手方竹中工務店は現に本件土地を占有して建築工事を続行中であり、これによつて抗告人の将来の強制執行による権利の実現が不能又は著しく困難となることは多言を要しないから、同相手方に対しては仮処分をなす必要があるといわねばならない。 第三、 結論そうすると、相手方竹中工務店に対する関係において抗告人の仮処分申請を却下した原決定は取消の要があり、同相手方に対する関係では金二〇、〇〇〇、〇〇〇円の保証を立てることを条件として、抗告人の権利を保全するに足る適当な仮処分をなす必要があるものと認める。そして当裁判所は前記第二の仮処分の執行せられる場合のあることも勘案し、主文第(二)項(1)乃至(5)の方法によりその目的を達し得るものと認める。 <要旨第四>ところで、抗告人の本件土地についての権利は占有権と賃借権であり、右賃借権は一般の第三者に対しては</要旨第四>対抗力を有しないものである。 その権利は執行不能又は困難になつたとしても、金銭的補償を得ることにより終局の目的を達し得べきものであつて、民事訴訟法第七五九条にいわゆる特別の事情に該当するものと認められ、一方相手方竹中工務店が建築中のビルデイングは鉄骨鉄筋コンクリート建の地上九階地下三階の大建築で相当程度の進捗を見ており、今この工事の続行を禁止されることは、たとえ損害の保証が十分あるとしても堪え得ないことであるわけである。従つて民事訴訟法第七四三条を準用し、右仮処分命令につき主文第(三)項のとおりその執行を免れることを得させるために供託すべき金額を記載するのが相当であると認める。 相手方梅田振興及び同梅田ビルに対す本件仮処分は理由がなく、これを却下した原決定は相当であるから、右関係では本件抗告は棄却すべきである。 そこで抗告費用の負担について民事 のが相当であると認める。 相手方梅田振興及び同梅田ビルに対す本件仮処分は理由がなく、これを却下した原決定は相当であるから、右関係では本件抗告は棄却すべきである。 そこで抗告費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり決定する。 (裁判長判事田中正雄判事神戸敬太郎判事平峯隆)
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