主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由以下、控訴人らの呼称は別紙当事者目録に記載のものを用いる。 第1 控訴の趣旨 1 控訴人A⑴ 原判決中控訴人A敗訴部分を取り消す。 ⑵ 同取消しに係る被控訴人の控訴人Aに対する請求を棄却する。 2 控訴人B ⑴ 原判決中控訴人B敗訴部分を取り消す。 ⑵ 同取消しに係る被控訴人の控訴人Bに対する請求を棄却する。 3 控訴人C⑴ 原判決中控訴人C敗訴部分を取り消す。 ⑵ 同取消しに係る被控訴人の控訴人Cに対する請求を棄却する。 第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。) 1 本件は、北九州市内で飲食店(ラウンジ)を経営していた被控訴人が、指定暴力団五代目P会傘下の暴力団五代目Q組の構成員から刃物で顔面を切りつけられる等の襲撃行為(本件襲撃)を受けて負傷し、後遺障害が残存するなどの損害を受けたと主張し、①P会総裁である控訴人A及びP会会長である控訴人Bに対 しては、民法715条1項又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)31条の2に基づき、②Q組組長である控訴人Cに対しては、民法719条1項の共同不法行為責任又は同法715条1項に基づき、損害賠償金7973万5090円及びこれに対する本件襲撃の日である平成24年9月7日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年 5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。 原判決は、被控訴人の請求を、6155万0595円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払の限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却した。 2 前提事実、争点及びこれに対する当事 ある。 原判決は、被控訴人の請求を、6155万0595円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払の限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却した。 2 前提事実、争点及びこれに対する当事者の主張は、以下のとおり補正し、後記3のとおり控訴理由を追加するほか、原判決「事実及び理由」第2の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決4頁25行目の「資金獲得行為に係る事業の執行」を「資金獲得行為であるとともに、Q組及びP会の事業の執行」に改める。 ⑵ 原判決6頁14行目から15行目にかけての「(さや当て)」を削る。 ⑶ 原判決8頁17行目の「12月17日に」を「12月17日までに」に改める。 3 控訴理由⑴ 本件襲撃が、Q組組長である控訴人Cの指示に基づき、Q組の活動として行われた事実はない。(控訴人Cの主張)ア平成24年8月14日の放火事件(以下「本件放火事件」という。)はEが計画した事件であって、Q組が標章制度への対抗措置として組織として実 行したものではない(Fの刑事被告事件における同人の供述(乙ハ5))。 本件放火事件はE個人が計画した事件である。また、標章制度開始後にQ組組員のみかじめ料収入が減少したことはないから、組として動機がない。したがって、本件襲撃と本件放火事件との時期の近接から、本件襲撃が標章制度への対抗措置として行われたと推認することはできない。 イ控訴人CがHその他の者に本件襲撃の実行を指示した事実はない。 控訴人Cには本件襲撃事件の実行を指示する動機がない。控訴人Cと被控訴人との間にトラブルはない。被控訴人店舗への立入りを禁止されたことに控訴人Cが激怒した旨Fが話していたという、「男性G」の供述(甲20)は、作り話である。Fはその当時控訴人Cの子分 控訴人Cと被控訴人との間にトラブルはない。被控訴人店舗への立入りを禁止されたことに控訴人Cが激怒した旨Fが話していたという、「男性G」の供述(甲20)は、作り話である。Fはその当時控訴人Cの子分であり、控訴人Cを前記供 述にあるように「アニキ」と呼ぶことはない。なお、控訴人Cが被控訴人と 親交を持っていたこともない。 本件襲撃が、Hによる直接・間接の指示の下に準備され、H以下のQ組組員が関与して行われたとしても、そのことから控訴人Cの指示を推認することはできない。 ウ本件襲撃に関与したQ組組員が、その関与を理由にQ組内部で処罰、処分 を受けていないとしても、それは執行部の者が多数逮捕されたために、処分に関する執行部会の審議を行うことができなかったためにすぎない。 また、これらの関与をした組員が本件襲撃後に組内部で昇進した事実はない。昇進とされる異動は、前任者の体調不良やQ組の組織変更によるものである。 エ Iは本件襲撃の実行犯ではない。 この点に関する原判決の事実認定は、①Iと本件軽自動車(本件襲撃に用いられたかはさておき)との関係が裏付けられていないこと、②HがIに実行役を指示したことの直接証拠はないこと、③本件襲撃に関するEの供述(甲60)は自らの責任を免れるための作り話であること、④IがJに対し て本件襲撃を実行したことを示唆する発言をしたという趣旨のJの供述(甲61)も信用することができないことなどからして、誤りである。 ⑵ 本件襲撃が、暴力団立入禁止の標章掲示による暴排運動への威圧や、みかじめ料確保を目的としたものとは認められない。(控訴人A及び控訴人Bの主張)ア被控訴人はP会の幹部やQ組、R組の組員と緊密な関係を有しており、被 控訴人及び被控訴人店舗は、P会やQ組に かじめ料確保を目的としたものとは認められない。(控訴人A及び控訴人Bの主張)ア被控訴人はP会の幹部やQ組、R組の組員と緊密な関係を有しており、被 控訴人及び被控訴人店舗は、P会やQ組にとって、自らの組織に保護を求め、みかじめ料を支払う好ましい存在であって、前記標章を掲示したことによる変化はなかった。被控訴人店舗に標章を掲示したことについて、P会やQ組の関係者が被控訴人を咎めたり、撤去を働きかけたこともなかった。 被控訴人が暴力団組員を店に出入りさせないこととしたのは、組員が出入 りすると一般の客が減るという営業上の配慮にすぎず、暴力団との関係を断 ち、P会を排除する意図はなく、実際には暴力団組員を客として受け入れることもあった。なお、被控訴人はR組にみかじめ料を支払っていたが、このことについても、被控訴人とP会及びQ組との間で対立はなかった。 イ本件放火事件では、被控訴人店舗も、標章に赤色スプレーが吹き付けられるという被害に遭ったが、同ビルが標的となったのは、そのオーナーが暴排 運動に熱心で、入居店舗の多くが標章を掲示していたためであり、被控訴人が標的にされたわけではない。したがって、本件放火事件を根拠として、本件襲撃が被控訴人店舗の標章掲示への対抗措置であったということはできない。 ウ本件襲撃に関与したH、K、E、L、M、Iと被控訴人との間でトラブル があったと認められないとしても、これら以外の被控訴人に個人的な反感を抱く者による犯行の可能性、したがって、標章掲示への対抗措置ではない可能性は否定されない。 ⑶ 控訴人Aは、暴対法31条の2にいう指定暴力団の「代表者等」に当たらない。控訴人Aが「代表者等」に当たることの根拠として原判決が挙げた事情は、 以下のとおり根拠となり得ない 定されない。 ⑶ 控訴人Aは、暴対法31条の2にいう指定暴力団の「代表者等」に当たらない。控訴人Aが「代表者等」に当たることの根拠として原判決が挙げた事情は、 以下のとおり根拠となり得ない。(控訴人Aの主張)ア五代目P会の継承式で席改めが行われなかったとしても、控訴人Aが四代目を継承した際の継承式でも同様であったから、控訴人Aが「代表者等」に当たることの根拠とはならない。 イ P会が他団体に出した年賀状で冒頭に控訴人Aの名前が記載され、また、 新年会で控訴人Aが先頭を歩いたことは、控訴人Aが形式的には組織に残っていて、新年の儀式には顔を出すしきたりとなっているからであり、指揮権能の所在とは関係がない。 ウ控訴人Aの自宅が組員から総裁本家又は本家と呼ばれ、部屋住み等の費用をP会が負担し、毎朝組員の挨拶を受けたりしているのは、控訴人Aが、控 訴人Bに代を譲った後も組員から尊敬されているためであり、指揮権能とは 関係がない。 エ P会の組員に対する絶縁状が誤ってP会総裁A名義で発出されたことはあるが、組員の処分の権限を有するのは執行部であり、直ちに執行部名義の絶縁再通知状を発出している。 オ有限会社Sの代表取締役が二代目T一家又はP会の指揮権能を必ず有す るわけではない。P会館の売却に当たって控訴人Aが署名押印をしたのは、Sの登記簿上の代表取締役が控訴人Aであったからにすぎない。 ⑷ 被控訴人の顔面の傷(瘢痕)は後遺障害等級7級12号に該当しない。(控訴人ら全員の主張)顔面の線状痕は、長さ5㎝以上の場合に、後遺障害等級9級6号の「外貌に 相当程度の醜状を残すもの」に該当するにすぎない。後遺障害等級7級12号の「外貌に著しい醜状を残すもの」に該当する「鶏卵大の瘢痕」は、一般的に、 上の場合に、後遺障害等級9級6号の「外貌に 相当程度の醜状を残すもの」に該当するにすぎない。後遺障害等級7級12号の「外貌に著しい醜状を残すもの」に該当する「鶏卵大の瘢痕」は、一般的に、6㎝×4㎝程度のものをいい、被控訴人に残存した幅2㎜程度の線状痕はこれに当たらない。 また、外貌醜状の後遺障害については、後遺障害等級及び労働能力喪失率表 の喪失率をそのまま適用すべきではない。 ⑸ 被控訴人の非器質的精神障害は後遺障害等級9級10号に該当しない。(控訴人ら全員の主張)被控訴人がPTSDを発症したことはない。 ア被控訴人に対するPTSDの診断は、被控訴人が、犯罪被害者等給付金支 給申請用の意見書を作成するための面談で説明した自覚症状に基づくものであるが、被控訴人はどのように回答すれば重い症状と評価されるかを理解していたのであり、その説明を直ちに信用することはできない。医師が把握した他覚的所見は、表情が暗いという程度で、被控訴人の説明の裏付けやPTSDの根拠とはなり得ない。心理療法士が実施したSDSやIES-Rの 心理検査も、どのように回答すれば点数が高くなるかが質問項目から明らか であり、被控訴人の回答は信頼性に乏しい。 イ甲58別添5の意見書中、「能力低下の状態」欄の「身辺日常生活」の項目は「適切又は概ねできる」とされているから、労働災害補償における非器質性精神障害の障害等級認定基準によれば、被控訴人は障害等級9級に該当しない。 被控訴人は、前記意見書の記載は誤記であり、「時に助言・援助を必要とする」が正しいと主張するが、「身辺日常生活」ができるとは、「入浴をすることや更衣をすることなど清潔保持を適切にすることができる」こと及び「規則的に十分な食事をすることができる」ことを意味 を必要とする」が正しいと主張するが、「身辺日常生活」ができるとは、「入浴をすることや更衣をすることなど清潔保持を適切にすることができる」こと及び「規則的に十分な食事をすることができる」ことを意味し(甲58別添5)、医療記録からは、被控訴人がこのような意味での身辺日常生活に他人の助言 や援助を必要とする状態にあったとは認められない。 ウ PTSDは一般的に回復可能性があると考えられており、労働能力喪失の継続期間は10年以内とすべきである。 ⑹ 傷害慰謝料1000万円及び後遺障害慰謝料1180万円は高額にすぎる。 (控訴人ら全員の主張) ⑺ 原審が、控訴人A及び控訴人Bの申し出た被控訴人本人尋問を採用しなかったことは違憲・違法である。(控訴人A及び控訴人Bの主張)本件では、被控訴人の損害に関し、被控訴人の顔面の傷を法廷で確認し、現在の稼働状況等についても尋問する必要がある。また、非器質性精神障害について、心的傷害の影響の変化や、診断書等の記載の正確性などについて、尋問 する必要がある。被控訴人本人尋問の申出を採用しなかった原審の訴訟指揮は、公平、公正な裁判を受ける控訴人らの権利を侵害している。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、被控訴人の請求は、控訴人らに対し、6155万0595円及びこれに対する本件襲撃の日である平成24年9月7日から支払済みまで年5% の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があると判断する。その 理由は、後記2のとおり補正し、後記3のとおり控訴理由に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 原判決の補正⑴ 原判決10頁12行目の「後日被告Cに」から同頁14行目末尾までを「暴 力団入店お断りと るほか、原判決「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 原判決の補正⑴ 原判決10頁12行目の「後日被告Cに」から同頁14行目末尾までを「暴 力団入店お断りという趣旨のステッカー(後記標章とは別のもの)を被控訴人店舗に掲示し、数日後控訴人Cに会った際、警察から控訴人Cが被控訴人店舗に来たとの連絡があったので、今後は控訴人Cに迷惑がかかるかもしれないから、被控訴人店舗に来ないでもらえるかという趣旨のことを言った。」に改める。 ⑵ 原判決11頁21行目の「原告店舗は」の後に「標章を掲示していた」を加える。 ⑶ 原判決18頁7行目の「原告の」から同頁8行目末尾までを「重傷病給付金120万円を給付するとの裁定をするとともに、被控訴人の身体上の障害の程度が後遺障害等級第6級に該当するとして、障害給付金415万4000円を 給付するとの裁定をした。」に、同頁9行目を「(甲44から甲58まで、甲71から甲73まで、甲76)」に、それぞれ改める。 ⑷ 原判決20頁12行目から13行目にかけての「NことJ」、同頁13行目から14行目にかけての「前記NことJ」及び同頁23行目から24行目にかけての「前記NことJ」をいずれも「J」に改める。 ⑸ 原判決21頁19行目の「親交があり、」を「交流があり、」に、同頁21行目の「購入する等していたこと」を「購入するなどの関係があったこと」に、それぞれ改める。 ⑹ 原判決21頁24行目から25行目にかけての「処罰される等した」を「Q組の内部において処分や処罰を受けた」に改め、同行目の「(かえって」から 同頁26行目の「参照)」までを削る。 ⑺ 原判決22頁19行目の「原告による」から20行目の「襲撃の」までを「、被控訴人が暴力団排 受けた」に改め、同行目の「(かえって」から 同頁26行目の「参照)」までを削る。 ⑺ 原判決22頁19行目の「原告による」から20行目の「襲撃の」までを「、被控訴人が暴力団排除に協力する姿勢を示し、また、控訴人Cの入店を断ったことを受けて、Fに本件襲撃の」に改める。 ⑻ 原判決26頁25行目及び27頁4行目の「U」を「S」に改める。 ⑼ 原判決29頁12行目から30頁19行目までを次のとおり改める。 「⑵ 外貌醜状被控訴人は、本件襲撃により左顔面切創及び左顔面神経損傷の傷害を負い、V病院において顔面の瘢痕を目立たなくするための拘縮切除術を受けたが(前提事実⑶イ、認定事実等⑺ア)、瘢痕を除去することはできず、頭部(毛髪部位)における長さ5㎝・幅2㎜の割創の縫合部分及び顔面(前額部・外眼角部・ 頬部)における長さ12㎝・幅2㎜の割創の縫合部分が瘢痕として残存しており、このうち顔面の瘢痕は、縫合部分の周囲において広く皮膚の色が変色しており、明らかに人目につくものとなっている(甲46、甲58、甲64、甲65)。 以上のとおり、被控訴人に残存した顔面の瘢痕は、その範囲が広く、鶏卵大 面以上の瘢痕と同程度に人目につく瘢痕であるということができるから、後遺障害等級7級12号の「外貌に著しい醜状を残すもの」に当たると認められる。 また、この外貌の後遺障害の症状固定日は平成25年9月24日である(甲50、甲58)。 ⑶ 非器質性精神障害 ア被控訴人は、本件襲撃において、深夜に突然刃物で襲撃されて顔面を切り付けられ、右臀部を突き刺されて、致命傷となりかねない傷害を負い、病院への救急搬送時には出血性ショックの状態に陥っており、これらの傷は症状固定まで約1年の治療を要した(認定事実等⑸、⑺ア、イ、前 り付けられ、右臀部を突き刺されて、致命傷となりかねない傷害を負い、病院への救急搬送時には出血性ショックの状態に陥っており、これらの傷は症状固定まで約1年の治療を要した(認定事実等⑸、⑺ア、イ、前記⑵)。このような本件襲撃の態様及びこれによる傷害の内容・程度からすれば、被控訴 人は、本件襲撃によって生命の危険を感じ、著しい恐怖を覚えたと推認され る。 イ被控訴人は、V病院に入院した平成24年9月11日以降、同病院の精神科において、精神療法、薬物療法、リラクゼーション等の治療を受けたが、抑うつ状態、不安、恐怖、身体症状(頭痛、動悸等)が継続し、フラッシュバック、不眠、人と会うことや人が後方に存在することに対する恐怖感など も生じた(認定事実等⑺ウ、甲73)。そして、被控訴人は、平成25年11月4日の時点で、抑うつ状態(憂鬱気分、思考・行動の制止。憂鬱気分が続き、自分を責めたり、考えも前に進まず、自宅に閉じこもりがちな生活。)、不安の状態(恐怖。エレベーターから降りたり、ちょっとした時にも、襲撃した人が来るかもしれないと恐怖感がある。)、意欲低下の状態(関心・自 発性の低下。「何もしたくない」と意欲乏しく、家事はほとんど母親が行っている。テレビなども興味持てない。)、慢性化した幻覚(不眠時、夢との区別は困難であるが、「殺すぞ」と声がすることがある。カーテンの陰などに誰かがいる感じがする。)、記憶・追想障害(聞いたことを忘れたり、同じことを繰り返すことが目立つ。火を止め忘れたこともある。)、焦燥感(子 どもに対してもいらいらして怒りやすくなっており、感情コントロールが困難。)といった症状が残存し、勤労意欲は低下しており、作業の持続や困難・失敗への対応などができず、身辺日常生活、他人との意思伝達、対人関 対してもいらいらして怒りやすくなっており、感情コントロールが困難。)といった症状が残存し、勤労意欲は低下しており、作業の持続や困難・失敗への対応などができず、身辺日常生活、他人との意思伝達、対人関係・協調性、身辺の安全の保持・危機の回避についてしばしば助言・援助が必要な状態であった(甲58[別添5、6]、甲73)。被控訴人の精神症状に ついては、同年12月17日に症状固定に至っており(甲58)、症状固定の時点における被控訴人の状態は同年11月4日の時点と同様であったと推認される。また、被控訴人は、現在でもパニック等の症状がある(甲69、甲70、甲76)。 ウ V病院精神科の医師は、被控訴人に対する診察やIES-Rの結果(認定 事実等⑺ウ)等を踏まえ、本件襲撃によって被控訴人がPTSDを発症した と診断したが、被控訴人に対しては、DSM-4又はDSM-5及びICD-10又はICD-11に基づく診断がされていない。しかし、前記の各症状が残存し、就労意欲や日常生活に関する能力の低下がみられることに加え、IES-Rの結果はいずれもPTSDハイリスク群の基準とされる25点を大幅に超えていること、V病院の医師が、平成25年11月12日にお ける被控訴人の診察において、被控訴人の抑うつ・不安の改善は乏しいと判断していること(甲73[295頁])からすると、被控訴人についてPTSDが発症したとの確定的な診断ができるか否かはともかく、被控訴人について、PTSDに準ずるような、抑うつ状態・不安障害の非器質性精神障害が発症していると認められる。 そして、症状の内容や能力の低下等の程度によれば、被控訴人は、後遺障害等級9級10号の「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるも と認められる。 そして、症状の内容や能力の低下等の程度によれば、被控訴人は、後遺障害等級9級10号の「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」に該当すると認められる。」⑽ 原判決30頁21行目の「頭部及び」を削り、同行目から22行目にかけての「PTSDが」を「非器質性精神障害が」に改める。 ⑾ 原判決31頁16行目の「PTSDの症状固定日」を「非器質性精神障害の症状固定日」に改める。 ⑿ 原判決33頁3行目の「PTSDについても、」から同頁4行目の「相当長期を要すること」までを「本件襲撃が、客観的に被控訴人の生命に危険を及ぼすような傷害の結果をもたらすようなもので、被控訴人に著しい恐怖を与えた と認められることに加え、本件襲撃が暴力団による組織的なものであることも継続的な心理的負荷となる可能性があるというべきであって、被控訴人に発生した精神症状の改善には相当の長期間を要すると考えられること」に改める。 ⒀ 原判決33頁19行目から20行目にかけての「(甲54、55)」を「(認定事実等⑺エ)」に改める。 3 控訴理由に対する判断 ⑴ 控訴理由⑴について本件襲撃は、以下のとおり、Q組組長である控訴人Cの指示に基づき、Q組の活動として行われたと認められる。 ア本件放火事件は、被害に遭ったビルがQ組がみかじめ料を徴収していた地域に所在すること、そのうちの一つであるWビルでは複数のテナントが標章 を掲示していたこと、標章制度が開始された平成24年8月1日から間もない時期に発生したこと、放火とともに赤色のスプレーが建物に吹き付けられ、掲示されていた標章にスプレーが吹き付けられた店舗もあることからして、Q組が、標章制度への対抗措置として 4年8月1日から間もない時期に発生したこと、放火とともに赤色のスプレーが建物に吹き付けられ、掲示されていた標章にスプレーが吹き付けられた店舗もあることからして、Q組が、標章制度への対抗措置として実行したと認めるのが相当である。 Fの供述(乙ハ5)は、Eが現場に立って本件放火事件の音頭を取ると言 ったというものであって、Eが個人的にこれを計画したという趣旨であるかは疑問である上、仮にそのような趣旨であったとしても、動機を含め裏付けとなる事実や証拠がなく、採用することができない。他方、標章制度の開始直後に、爾後のみかじめ料収入を確保する目的で、暴力団排除の運動に対する対抗措置としてQ組の威力を誇示する行動を取ることは不自然ではない。 標章制度の開始後2週間程度の時点でみかじめ料収入が実際に減少していなかったとしても、その後影響が拡大することも考えられ、控訴人CないしQ組において前記のような行動を必要と考えることがあり得ないとはいえない。そして、この点は本件襲撃についても同様である。 イ原判決「認定事実等」(以下単に「認定事実等」という。)⑷ないし⑹の とおり、本件襲撃及びその準備等には複数のQ組組員が関与したと認められるところ、これらの組員が被控訴人に対する怨恨その他の個人的な襲撃の動機を有していたと認めるに足りる証拠はない。また、個人的動機のみに基づいて、複数の組員が関与して本件襲撃を組織的に行うことは、Q組の組織に及び得る悪影響及び上部の指示に基づかない行動により組に悪影響を及ぼ すことに対する制裁の可能性等を考慮するならば、著しく合理性を欠き、具 体的な根拠が認められない限り、考慮の必要はない。そうすると、本件襲撃の動機は、Q組やその上部団体であるP会の利害に関わるものと解され、具体的に 慮するならば、著しく合理性を欠き、具 体的な根拠が認められない限り、考慮の必要はない。そうすると、本件襲撃の動機は、Q組やその上部団体であるP会の利害に関わるものと解され、具体的には、本件襲撃直前の状況に照らし、暴力団排除のための標章制度に協力する者に対する威嚇以外に考え難い。 また、控訴人Cが被控訴人店舗を訪れた後に、被控訴人が認定事実等⑴ア のとおり控訴人Cに話し(婉曲に以後の来店を拒んだものと解される。)、かつ、被控訴人店舗に標章を掲示したことは、被控訴人が標章制度による暴力団排除に協力したと評価され得るものである上、Q組組長でありP会理事長である控訴人Cに対する来店拒否(このこと自体は控訴人Cも認める(乙ハ3)。)は、被控訴人を前記威嚇のための具体的標的とする理由として不 自然とはいえない。 本件襲撃までに、控訴人Cと被控訴人との間で交流があり、被控訴人が控訴人Cから物品(ハムなど)を購入し、控訴人Cの行う頼母子講に出資し、控訴人Cの誕生日祝いとして金銭を贈り、控訴人Cの母の花屋で花を購入していたこと及び控訴人Cが被控訴人店舗を客として訪れたことがあること は、認定事実等⑴ア及び原判決「事実及び理由」第3の2⑴イaに記載のとおりである。これらの点に関する被控訴人の複数の刑事事件の公判廷での証言(甲66、甲67、甲70)はいずれも具体的で、各証言の間で内容が齟齬することもない。被控訴人が虚偽の供述をして控訴人Cに罪を着せる動機も見当たらない。 また、被控訴人が控訴人Cの被控訴人店舗への立入りを禁止したことに控訴人Cが「ぶち切れ」た旨をFから聞いたという男性Gの供述(甲20)についても、同人に虚偽の供述をする具体的動機があったとは認められない。 その供述内容は具体性がある上、被控訴人が を禁止したことに控訴人Cが「ぶち切れ」た旨をFから聞いたという男性Gの供述(甲20)についても、同人に虚偽の供述をする具体的動機があったとは認められない。 その供述内容は具体性がある上、被控訴人が、被控訴人店舗への暴力団関係者の立入りを禁止し、前記のとおり一定の交流のあった控訴人Cにも、婉曲 にではあるが被控訴人店舗に来ないよう求めたことに対し、控訴人Cが立腹 することは不自然ではない。なお、男性Gは、Fが控訴人Cを「アニキ」と呼んだと断言しているわけではないし、Fの言い間違いや男性Gの記憶違いの可能性も否定できず、同人の供述の信用性を否定すべき事情とはいえない。 ウ本件襲撃に関与したQ組組員が、関与を理由にQ組内で処罰、処分を受け た事実は認められず、このことから、本件襲撃はQ組及びその組長である控訴人Cにとって問題とすべき行為ではなかったといえる。 関与した組員の一部は、本件襲撃後にQ組内の地位が変更されたが(甲4[資料2])、この変更が昇進であるかはともかく、少なくとも降格であるとは認められない。また、このような変更があったことに照らすと、Q組が、 その執行部に属する者が多数逮捕されたために処分を行えない状態にあったかは疑わしい。 エ本件軽自動車の調達、ナンバープレートの交換及び本件軽自動車の処分がいずれもQ組の若頭であるHの指示によるものである事実(認定事実等⑷ウからまで、同⑹イ、甲4)から、Hが本件襲撃の指示役を担っていたと 認められる。また、このことから、HのEに対するボストンバッグの受取り及び処分の指示も本件襲撃に関するものであったと認められる。そして、Eが、本件襲撃の約20分後である平成24年9月7日午前1時10分から15分頃にHからボストンバッグを受領したこと、この中に 受取り及び処分の指示も本件襲撃に関するものであったと認められる。そして、Eが、本件襲撃の約20分後である平成24年9月7日午前1時10分から15分頃にHからボストンバッグを受領したこと、この中に出刃包丁や黒色の作業着(本件襲撃の際に実行犯が着用していたものと同色)が入っていたこ と、その他原判決「事実及び理由」第3の2⑴アの、に挙げられた事実によれば、Iが本件襲撃の実行犯であると認められる。 これらの事実に関するEの刑事事件における供述(甲60)及びJの刑事事件における供述(甲61)の信用性に疑いを入れるべき事情は認められない。 オ以上の事情を総合すれば、Q組の組長である控訴人Cが本件襲撃を指示し たと認定することができ、この認定を左右する事情は認められない。前記認定に反する控訴人Cの刑事事件における供述(乙ハ3)は採用することができない。 ⑵ 控訴理由⑵について本件襲撃が、暴力団立入禁止の標章を掲示してP会を排除する活動に対抗 し、P会傘下のQ組が、その縄張りである繁華街の飲食店等からのみかじめ料収入を確保する等の目的で威力を誇示するために実行されたものであると認められることは、原判決「事実及び理由」第3の2⑴イ及び前記⑴ア、イの説示のとおりである。 本件襲撃は、暴力団排除を意味する標章を掲示した店舗の関係者、さらにQ 組の縄張りの繁華街の飲食店等の関係者に対し、暴力団排除の活動に参加した者には本件襲撃のような危害を加えることがあるとの姿勢を示し、これらの者が、今後も暴力団排除をすることなく、みかじめ料を支払い続けることを確保する目的で行われたと認められるのであって、被控訴人個人に対して以後のみかじめ料支払を継続させることを意図したものとは認められないから、被控訴 人が となく、みかじめ料を支払い続けることを確保する目的で行われたと認められるのであって、被控訴人個人に対して以後のみかじめ料支払を継続させることを意図したものとは認められないから、被控訴 人が本件襲撃の当時みかじめ料を支払っていたことや、みかじめ料に関してP会又はQ組と対立や紛争が生じていなかったことは、本件襲撃がみかじめ料収入確保目的であることと矛盾しない。同様に、P会ないしQ組関係者が本件襲撃以前に被控訴人店舗の標章の撤去を求めたことがなく、また、被控訴人店舗に暴力団組員が客として入店したことがあったとしても、被控訴人が前記威力 誇示としてなされる暴力の対象となることと矛盾するとはいえない。他方、被控訴人が、標章制度の導入前に、それまで一定の交流があったQ組組長の控訴人Cに対し被控訴人店舗への来店を拒んでいたことは、被控訴人がこのような示威行為の標的とされることの理由として不自然ではない。 また、本件放火事件が標章制度への対抗措置として実行されたと認められる ことは、原判決「事実及び理由」第3の2⑴イb及び前記⑴アの説示のとお りであり、本件襲撃が本件放火事件と時期が近く、加害側及び被害側の事件の関与者も重複していることは、本件襲撃が標章制度への対抗措置として実行されたことを根拠付ける事情の一つである。本件襲撃に関与した組員において被控訴人に対する怨恨その他の個人的な動機を有していたと認めるに足りる証拠はなく、このような個人的動機のみに基づいて、組員が複数関与して組織的 に襲撃を行うとも考え難いことは、前記⑴イのとおりである。 ⑶ 控訴理由⑶についてP会の総裁である控訴人Aは、以下のとおり、暴対法31条の2の「代表者等」に該当すると認められる。 「総裁」は、一般的には、組織の全体を総括し、 前記⑴イのとおりである。 ⑶ 控訴理由⑶についてP会の総裁である控訴人Aは、以下のとおり、暴対法31条の2の「代表者等」に該当すると認められる。 「総裁」は、一般的には、組織の全体を総括し、一定の決定(決裁)権限を 有する者に付される名称であるといえる。P会は暴対法3条の指定暴力団に指定されており(前提事実⑴イ)、当該暴力団を代表する者又はその運営を支配する地位にある者(代表者等)の統制の下に階層的に構成されている団体であることが指定の要件の1つであるから(同条3号)、P会も代表者等の統制の下に階層的に構成されている団体であると認められる。そうすると、P会に おいて「総裁」とされる者が何ら決定(決裁)の権限を有しないとは考え難い。 そして、代表者等の統制の下に階層的に構成されている団体であるP会において、原判決「事実及び理由」第3の2⑵イ、に挙げた事情、すなわち、①五代目P会の継承式典の際、媒酌人が、控訴人Aは引退せず、席改め(会長となった控訴人Bが控訴人Aの上座に座ること)もしない旨宣言したこと、② P会が他団体に送った年賀状において、控訴人Aの名前が冒頭に記載されていたこと、③事始め式(新年会)において控訴人Aが控訴人Bの前を歩き、幹部組員等による挨拶も、会長である控訴人Bより先に控訴人Aに対して行われたこと、④控訴人Aの自宅が、P会組員から「本家」と呼ばれ、控訴人Aが総裁となった後も、二次団体の組員が24時間交代制の当番及び部屋住みとして身 の回りの世話等をしていたこと、⑤控訴人B、控訴人Cその他のP会幹部組員 が、頻繁に朝の挨拶のために控訴人Aの自宅を訪れていたこと、⑥控訴人A及び控訴人Bと他団体への挨拶に赴いた組員が、控訴人Aの紹介を失念したことを理由に絶縁処分を受け、絶縁 会幹部組員 が、頻繁に朝の挨拶のために控訴人Aの自宅を訪れていたこと、⑥控訴人A及び控訴人Bと他団体への挨拶に赴いた組員が、控訴人Aの紹介を失念したことを理由に絶縁処分を受け、絶縁状が総裁である控訴人Aの名義で作成されたこと(これら①から⑥までの事情が存在することについて控訴人Aは争っていない。)が認められることからすれば、控訴人AはP会において「当該暴力団を 代表する者又はその運営を支配する地位にある者」(暴対法3条3号)、すなわち「代表者等」に当たると認められる。 ①について、四代目P会継承式典の際においても同様に席改め等がなかったことを認めるに足りる証拠はない。前記媒酌人の宣言は、継承の在り方が通常と異なることを推認させるものである。また、⑥について、他の名義で作成さ れるべき絶縁状が誤って控訴人A名義とされたと認めるに足りる証拠はない。 再通知状(乙イ4別紙4)が現実に送付されたものかは明らかではなく、仮にそうであったとしても、先の絶縁状が誤りであることを前提とするものとは認められない。 ⑷ 控訴理由⑷について 以下のとおり、被控訴人の顔面の瘢痕は後遺障害等級7級12号に該当すると認められる。また、顔面の傷であるために、被控訴人に認められる労働能力喪失率が、後遺障害等級7級で一般に認められる労働能力喪失率よりも低いと評価することはできない。 ア被控訴人の顔面の割創の縫合部分は長さ12㎝・幅2㎜であるが、その周 囲において広く皮膚の色が変色しており(補正後の原判決「事実及び理由」第3の3⑵)、その部分の幅は必ずしも2㎜にとどまらないから(甲58、甲64、甲65)、瘢痕の程度を前記縫合部分の長さと幅あるいはそれらの積(面積)だけで判断することは相当ではない。また、そもそも割創の長さが 、その部分の幅は必ずしも2㎜にとどまらないから(甲58、甲64、甲65)、瘢痕の程度を前記縫合部分の長さと幅あるいはそれらの積(面積)だけで判断することは相当ではない。また、そもそも割創の長さが12㎝に及ぶこと自体審美的に大きな問題というべきである。そうする と、これを鶏卵大面以上の瘢痕あるいはこれと同程度に人目につく瘢痕と評 価し、後遺障害等級7級12号の「外貌に著しい醜状を残すもの」に当たるとすることが不当とはいえない。 イ被控訴人は、平成10年頃から本件襲撃時まで長期間にわたり、スナック等の接客業に従事し又は自らスナックやラウンジの店舗を経営していたのであり(認定事実等⑴、原判決「事実及び理由」第3の4⑷ア)、本件襲撃 がなければ店舗経営を継続していたと考えられる。接客業に従事する者において顔面に「著しい醜状」と評価できる瘢痕が残存すれば、業務の遂行・継続を心理的に著しく困難にし、また、客観的にも不利な条件であることは否定できないから、顔面の瘢痕残存による被控訴人の労働能力喪失率について、当該後遺障害の等級に関して一般的に認められる労働能力喪失率(労働 省労働基準局長通牒(昭32・7・2基発第551号)別表労働能力喪失率表に定められた労働能力喪失率)よりも低いものとすべきとは解されない。 また、被控訴人が接客業以外の仕事に従事していたと認めるに足りる証拠はなく、被控訴人の年齢(本件襲撃時点で35歳)等にも照らすと、他の職業に就くことには一定の困難が伴い、収入が減少する可能性もある上、他の 職業でも必ずしも外貌の影響がないとはいえないから、転職の可能性をもって前記説示は左右されない。 ⑸ 控訴理由⑸について被控訴人の非器質性精神障害は後遺障害等級9級10号に該当すると認められる。 も必ずしも外貌の影響がないとはいえないから、転職の可能性をもって前記説示は左右されない。 ⑸ 控訴理由⑸について被控訴人の非器質性精神障害は後遺障害等級9級10号に該当すると認められる。 被控訴人の自覚症状に関するIES-R等の検査の回答や診察での医師に対する説明によれば、被控訴人には多様な症状が残存し、就労意欲の低下があって就労ができず、様々な能力の低下もあることが認められ、これらを総合すれば、被控訴人の非器質性精神障害が「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの」と して後遺障害等級9級10号に当たると認められることは、補正後の原判決 「事実及び理由」第3の3⑶の説示のとおりである。 これらの回答や医師に対する説明が、受領する犯罪被害者等給付金の金額を増やすための虚偽の内容であったと認めるに足りる証拠はない。控訴人らの主張は具体的根拠を欠く。また、被控訴人が、夜間に突然刃物で顔面及び臀部に危害を加えられ、生命に危険を及ぼすような傷害が生じたという本件襲撃の態 様等からすれば、前記回答や説明にある自覚症状の発生・残存が不自然とはいえない。なお、医師作成の「非器質性精神障害の後遺障害の状態に関する意見書」(甲58の別添5。平成25年11月14日付け)の「能力低下の状態」の項の「身辺日常生活」が「適切又は概ねできる」という記載は誤りであって医師は「時に助言・援助が必要」に該当すると判断している旨の聞取り(甲5 8の別添6)が虚偽ないし誤りであり又は警察官の強要等によるものであることを認めるに足りる証拠はない。前記「身辺日常生活」に関する記載が他の事項の記載と整合性がとれないため確認を求めたという聞取りの経緯も特段不自然とはいえない あり又は警察官の強要等によるものであることを認めるに足りる証拠はない。前記「身辺日常生活」に関する記載が他の事項の記載と整合性がとれないため確認を求めたという聞取りの経緯も特段不自然とはいえないし、診断日及び作成日を同年10月7日とする傷病診断書(甲58の別添2)で「家庭内での単純な日常生活はできるが、時に援助が必 要である。」の項が選択されていることとも整合的である。なお、医療記録(甲73)上、症状固定時付近で身辺日常生活に関し助言・援助を要した具体的事例の記載は乏しいが、他方で、問題がなかった旨の記載もない。清潔保持や規則的な食事が身辺日常生活に関する能力を判断する重要な要素であるとしても、医師が前記回答や説明に基づきその他の要素を考慮して「時に助言・援助 が必要」と判断することが妨げられるとは解されない。 一般的には非器質性精神障害に回復可能性があるとしても、本件襲撃の態様や負傷の内容等に照らし、被控訴人の非器質性精神障害の改善には相当の長期間を要すると考えられることは、補正後の原判決「事実及び理由」第3の4⑷イの説示のとおりであり、被控訴人につき67歳に至るまでの30年間を通じ て67%の労働能力喪失が認められるとして後遺障害逸失利益を算出したこ とは相当である。 ⑹ 控訴理由⑹について被控訴人は、何ら非がないにもかかわらず、突然襲撃され、顔面及び臀部を刃物で複数回にわたり攻撃され、出血性ショックにより死の危険がある状態に陥り、複数回の手術を受けるなど長期間の入通院を余儀なくされ、身体面及び 精神面の両方の後遺障害が残存したのであって、これらの事情その他本件で認められる事情を総合すれば、傷害慰謝料として1000万円、後遺障害慰謝料として1180万円を認めることが相当である。 ⑺ 控 精神面の両方の後遺障害が残存したのであって、これらの事情その他本件で認められる事情を総合すれば、傷害慰謝料として1000万円、後遺障害慰謝料として1180万円を認めることが相当である。 ⑺ 控訴理由⑺について被控訴人に残存した後遺障害については、取調べ済みの証拠から関連する事 実を認定し、労働能力喪失率を判断することが可能であり、原審が被控訴人本人尋問の必要性がないと判断したことについて違法な点は認められない。 ⑻ 以上のとおり、控訴人らの主張は採用することができない。 4 その他、原審及び当審における当事者双方の主張及び証拠の内容を検討しても、当審における上記認定判断(原判決引用部分を含む。)は左右されない。 第4 結論以上によれば、被控訴人の請求のうち6155万0595円及びこれに対する平成24年9月7日から支払済みまで年5%の割合による金員の連帯支払を求める限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官久保田 浩 史 裁判官穗苅学 裁判官水野正則は、転補により署名押印することができない。 裁判長裁判官久保田 浩 史
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