- 1 -平成21年(む)第32号証拠開示に関する裁定請求(証拠開示命令請求)事件 主文 本件証拠開示命令請求を棄却する。 理由 第1本件証拠開示命令請求の趣旨及び理由並びに検察官の意見 本件証拠開示命令請求の趣旨検察官が,弁護人に対し,司法警察員Aが被告人に対する取調べ時に作成した取調べメモ,ノート,手控え等備忘録のすべてを開示するよう命じる決定を求める。 本件証拠開示命令請求の理由(要旨)(1) 上記取調べメモ等備忘録(以下,「本件取調べメモ」という。)は,証拠開示の対象となる証拠に該当する。主に被告人の取調べに当たった司法警察員A(以下,「取調官」という。)が異動に際して本件取調べメモを廃棄し,存在しないという検察官の主張は,本件をめぐる手続の経過等に照らして信用することができず,本件取調べメモは現に保管されていると推認される。 (2) 弁護人は,被告人の自白は取調べの経過に照らして信用できないと主張する予定である。すなわち,①被告人があいまいな供述しかすることができず,その内容には客観証拠との間で矛盾が多くあったこと,②取調官は,被告人の供述を正そうとして,取調べが長時間多数回に及んだこと,③被告人の供述には変遷,訂正が多く存在するところ,これは,取調官の誘導により虚偽の供述をしたことが原因であることなどに照らせば,被告人の自白には信用性がない。本件取調べメモは,上記予定主張と高い関連性があり,防御の準備のために必要である上,その開示により弊害が生じるものではない(なお,検察官,弁護人双方より,被告人の取調べ状況に関して,取調官の証人尋問請求がされている。)。 検察官の意見(要旨)本件に関する備忘録は存在しないから,本件証拠開示命令請求には理由がない。取調官は,本件に関する被告人の取調べ及び供述 状況に関して,取調官の証人尋問請求がされている。)。 検察官の意見(要旨)本件に関する備忘録は存在しないから,本件証拠開示命令請求には理由がない。取調官は,本件に関する被告人の取調べ及び供述録取に当たり,私費で購入した大学ノートに被告人の供述内容等を記載したが(本件備忘録),平成21 年3 月23 日ころ,異動の内示を受けてこれを廃棄した。第2当裁判所の判断 いわゆる取調べメモなど取調べ状況に関する記載のある書面は,それが捜査の過程で作成され,公務員が職務上現に保管し,かつ,検察官が容易に入手し得るものである限り,犯罪捜査規範13 条にいう備忘録として証拠開示の対象となる場合がある(最高裁判所第三小法廷平成19 年12 月25 日決定等)。本件では,弁護人の予定主張との関連性のほか,現段階で,取調官の証人尋問請求が実施される予定であることにもかんがみると,同取調官作成に係る本件取調べメモのうち,本件に関連する記載部分の開示は,弁護人の防御の準備に必要であり,かつ,それにより弊害が生じることが想定し難いものであって,相当と認められる。しかしながら,検察官は,取調官に対する照会の結果,上記取調べメモは廃棄済みで,現存しないと回答しており,これに疑いを差し挟む余地は乏しい。検察官やその照会を受けた取調官は,その職責や立場を十分認識しながらこのような回答をしたものであ- 2 -ろうから,その真実性に疑念を抱かせるような具体的事情がない限り,本件証拠開示命令請求の判断に当たっては,本件取調べメモは存在しないことを前提とせざるを得ない(もっとも,取調官が本件取調べメモを廃棄したことの当否や,そのことが訴訟手続全体においてもつ意味は別論である。すなわち,本件は,遅くとも平成21 年2 月12 日ころまでに,被告人が犯行を否認し,弁護人 とも,取調官が本件取調べメモを廃棄したことの当否や,そのことが訴訟手続全体においてもつ意味は別論である。すなわち,本件は,遅くとも平成21 年2 月12 日ころまでに,被告人が犯行を否認し,弁護人もこれに沿って事実関係を争うという見通しが明らかになり,公判前整理手続に付されることがほぼ間違いない状況にあった。そうすると,捜査機関は,本件取調べメモの保全に努める必要があったというべきであり,これを怠ったことは,犯罪捜査規範13 条の趣旨や,取調べメモ等の証拠開示に関する累次の最高裁決定等の趣旨を軽んじるもので,直ちに容認し得るものとは思われない。)。 以上から,本件証拠開示命令請求には理由がないから,刑事訴訟法316 条の26 第1 項により,主文のとおり決定する。平成21年7月14日富山地方裁判所刑事部裁判官坂田正史
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