【DRY-RUN】主 文 本件各上告を棄却する。 理 由 弁護人重松蕃、同樋口幸子の上告趣意第一点および弁護人重松蕃の上告趣意補充 について。 刑訴法一六一条一項は、証言拒否
主文 本件各上告を棄却する。 理由 弁護人重松蕃、同樋口幸子の上告趣意第一点および弁護人重松蕃の上告趣意補充について。 刑訴法一六一条一項は、証言拒否罪の成立要件について、「正当な理由がなく……証言を拒んだ者」と規定している。ここに、「正当な理由がなく」とは、同法一四六条、一四七条、一四九条所定の事由がある場合のように、証言の拒否が適法とされる場合が少なくないために、そのような事由のない違法なものについてだけ証言拒否罪が成立するものであることを明らかにしたものであつて、同罪の構成要件は、証人が証言を拒んだということであると解すべきである。したがつて、証人が尋問に対して証言を拒めば、ただちに同罪の構成要件を充足し、右拒否が前記の適法とされる事由にあたる場合にのみ違法性が阻却され、同罪が成立しないことになるだけのことである。 もつとも、刑訴規則一二二条は、「証言を拒む者は、これを拒む事由を示さなければならない。証言を拒む者がこれを拒む事由を示さないときは、過料その他の制裁を受けることがある旨を告げて、証言を命じなければならない。」と規定しているが、これは、証人尋問の手続を円滑、迅速に進行させるための手続的な規定であるに過ぎず、この規定に違反して、証人が証言を拒む事由を示さなかつたからといつて、ただちに、前記の適法とされる事由がないことにはならないし、反対に、裁判官が証言を命じなかつたからといつて、適法とされる事由があることにはならないわけである。なお、もし、証人が、前記の適法とされる事由がない場合であるのに、事実上法律上の判断を誤つて証言を拒んだ場合に、証言拒否罪が成立するか否かは、他の一般の犯罪についての錯誤の問題と同様であつて、証言拒否罪だけを別- 1 -異に取り扱う必要はみあたらない るのに、事実上法律上の判断を誤つて証言を拒んだ場合に、証言拒否罪が成立するか否かは、他の一般の犯罪についての錯誤の問題と同様であつて、証言拒否罪だけを別- 1 -異に取り扱う必要はみあたらない。 以上のとおりであつて、同罪の構成要件が明確を欠くものとはいえず、また、証人に対して刑事上の責任を問われる虞のある事項について供述を強要するものともいえないから、所論憲法三一条、三八条一項違反の主張は、前提を欠き、その余は、単なる法令違反の主張であつて、上告適法の理由にあたらない。 弁護人樋口幸子の上告趣意(補充を含む。)第二点のうち、憲法一四条違反をいう点は、本件起訴が、被告人らが労働者または労働組合員であることを理由にしてなされたものであると認めるに足りる証跡がないから、前提を欠き、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第三点ないし第五点は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いずれも上告適法の理由にあたらない。 また、記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 昭和四六年三月二三日最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官飯村義美裁判官田中二郎裁判官下村三郎裁判官松本正雄裁判官関根小郷- 2 - 根小郷
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