- 1 -平成29年10月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成28年(行ウ)第73号川西市公有財産貸借差止等請求事件口頭弁論終結日平成29年7月11日判決 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求1⑴ 被告は,川西市を代表して,別紙物件目録記載の土地において幼保連携型認定こども園を整備する事業につき,負担金,補助及び交付金として一般財源から869万7000円を支出してはならない。 ⑵ 被告は,川西市を代表して,別紙物件目録記載の土地において幼保連携型認定こども園を整備する事業につき,負担金,補助及び交付金として地方債2970万円を起こしてはならない。 2 被告が,自ら又は補助機関に命じて,川西市と社会福祉法人子どもの家福祉会との間で締結された別紙物件目録記載の土地の賃貸借契約(定期借地権設定契約)を解除しないことが違法であることを確認する。 3 被告は,社会福祉法人子どもの家福祉会に対し,以下の金員を請求せよ。 ⑴ 平成28年10月から平成29年3月まで,毎月16万1233円⑵ 平成29年4月から平成35年3月まで,毎月16万1233円から別紙物件目録記載の土地の価額の1%相当額を12で除した金額を控除した金額⑶ 平成35年4月から平成79年3月まで,毎月16万1233円から別紙物件目録記載の土地の価額の2%相当額を12で除した金額を控除した金額第2 事案の概要 1 本件は,普通地方公共団体である川西市が,幼保連携型認定こども園を整備 - 2 -する事業を行うため,社会福祉法人に対して土地(普通財産)を貸与(平成28年10月から平成29年3月までは使用貸借,同年4月から平成7 体である川西市が,幼保連携型認定こども園を整備 - 2 -する事業を行うため,社会福祉法人に対して土地(普通財産)を貸与(平成28年10月から平成29年3月までは使用貸借,同年4月から平成79年3月までは賃貸借)したところ,同市の住民である原告らが,上記土地は上記事業の用地として不適当である,上記法人は適正な時価による貸付料を支払っていないなどと主張して,同市の執行機関である被告を相手に,① 地方自治法242条の2第1項1号に基づき,上記事業に係る支出及び地方債の起債の差止め(上記第1の1)を,② 同項3号に基づき,上記賃貸借契約を解除しないという怠る事実が違法であることの確認(同2)を,③ 同項4号に基づき,上記法人に対し,上記土地の適正な賃料に相当する額又はこれと上記賃貸借契約の実際の賃料との差額につき,損害賠償又は不当利得返還の請求をすること(同3)をそれぞれ求める事案(住民訴訟)である。 2 関係法令の定め⑴ 就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号。以下「就学前教育法」という。)「幼保連携型認定こども園」とは,義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとしての満3歳以上の子ども(小学校就学の始期に達するまでの者をいう。以下同じ。)に対する教育並びに保育を必要とする子どもに対する保育を一体的に行い,これらの子どもの健やかな成長が図られるよう適当な環境を与えて,その心身の発達を助長するとともに,保護者に対する子育ての支援を行うことを目的として,就学前教育法の定めるところにより設置される施設をいう(2条7項)。 幼保連携型認定こども園は,国,地方公共団体,学校法人及び社会福祉法人のみが設置することができる(12条)が,国及び地方公共団体以外の者は,幼保連携型認定こど 設置される施設をいう(2条7項)。 幼保連携型認定こども園は,国,地方公共団体,学校法人及び社会福祉法人のみが設置することができる(12条)が,国及び地方公共団体以外の者は,幼保連携型認定こども園を設置しようとするときは,都道府県知事の認可を受けなければならない(17条1項)。 ⑵ 社会福祉法 - 3 -「社会福祉法人」とは,社会福祉事業を行うことを目的として,社会福祉法の定めるところにより設立された法人をいう(22条)ところ,社会福祉事業には,幼保連携型認定こども園を経営する事業が含まれる(2条1項,3項2号の2)。 社会福祉法人は,社会福祉事業を行うに当たっては,日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して,無料又は低額な料金で,福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない(24条2項)。 国及び地方公共団体は,社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して,社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう,福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策,福祉サービスの適切な利用の推進に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない(6条)。 国又は地方公共団体は,必要があると認めるときは,厚生労働省令又は当該地方公共団体の条例で定める手続に従い,社会福祉法人に対し,補助金を支出し,又は通常の条件よりも当該社会福祉法人に有利な条件で,貸付金を支出し,若しくはその他の財産を譲り渡し,若しくは貸し付けることができる(58条1項本文)。 ⑶ 地方自治法「行政財産」とは,普通地方公共団体において公用又は公共用に供し,又は供することと決定した財産をいい,「普通財産」とは,行政財産以外の一切の公有財産をいう(238条4項)。 普通財産は,これを貸し付けることができる(238条の5第 において公用又は公共用に供し,又は供することと決定した財産をいい,「普通財産」とは,行政財産以外の一切の公有財産をいう(238条4項)。 普通財産は,これを貸し付けることができる(238条の5第1項)。 普通地方公共団体の財産は,238条の4第1項の規定の適用がある場合を除き,条例又は議会の議決による場合でなければ,適正な対価なくしてこれを貸し付けてはならない(237条2項)。 ⑷ 川西市公有財産規則(平成4年川西市規則第17号。以下「公有財産規則」 - 4 -という。)(甲10)普通財産の貸付料は,適正な時価で定めなければならない(31条)。 ⑸ 川西市財産の交換,譲与,無償貸付等に関する条例(昭和39年川西市条例第13号。以下「無償貸付条例」という。)(甲13)普通財産は,他の地方公共団体その他公共団体又は公共的団体において公用若しくは公共用又は公益事業の用に供するときは,これを無償又は時価よりも低い価額で貸付けることができる(4条1号)。 3 前提事実以下に掲げる事実は,当事者間に争いのない事実,証拠又は弁論の全趣旨等により容易に認めることのできる事実である。 ⑴ 当事者及び関係者ア原告らは,いずれも川西市の住民である。(弁論の全趣旨)イ被告(川西市長)は,普通地方公共団体である川西市の執行機関である。 (弁論の全趣旨)ウ社会福祉法人子どもの家福祉会(以下「福祉会」という。)は,昭和41年12月12日に設立が許可された,幼保連携型こども園の経営等の第二種社会福祉事業を行うことを目的とする社会福祉法人である。(甲1)⑵ 福祉会に対する本件土地の貸付けの経緯等ア別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は,A中学校区内にある川西市の公有財産(普通財産)である。(争いのない事実,甲2, る。(甲1)⑵ 福祉会に対する本件土地の貸付けの経緯等ア別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)は,A中学校区内にある川西市の公有財産(普通財産)である。(争いのない事実,甲2,4)イ川西市は,平成27年3月,子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)61条,次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)8条に基づき,子ども・子育てに関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的として,「川西市子ども・子育て計画」を策定した。(乙4[6頁])川西市は,上記計画の中で,市立の幼稚園及び保育所は,私立の施設と - 5 -連携,協力を図りつつ,質の高い教育,保育を必要とするすべての児童に提供するとともに,子育てを支援する地域の拠点となるよう,その一体化を含め,適正な施設の配置を行う旨の基本方針に基づき,平成27年度から平成31年度までの間に,A中学校区に新たに民間保育所等を整備し,B幼稚園については廃園とすることを内容とする「A中学校区民間保育所等整備事業」(以下「本件事業」という。)を進める旨を定めた。(乙4[104~106頁])ウ川西市の議会は,平成28年度において,本件事業に対する負担金,補助及び交付金として,一般財源から869万7000円を支出するとともに,2970万円の地方債を起こす旨の予算を議決した。 (争いのない事実,甲5,9の2)エ川西市は,平成28年1月28日から同年2月29日までの間,本件事業として,以下の幼保連携型認定こども園を整備,運営する法人を募集した。(争いのない事実,甲2,3,9の2)定員数 1号認定につき30人以内,2・3号認定につき90人区域・用地本件土地を含むA中学校区内の土地開園時期平成29年4月1日オ福祉会は,上記エの法 事実,甲2,3,9の2)定員数 1号認定につき30人以内,2・3号認定につき90人区域・用地本件土地を含むA中学校区内の土地開園時期平成29年4月1日オ福祉会は,上記エの法人に応募したところ,平成28年3月13日,同法人に選定された。(争いのない事実,甲2,3,9の2)カ川西市は,平成28年9月30日,福祉会に対し,貸付期間を同日から平成29年3月31日までと定め,本件土地を無償で貸し渡した(以下「本件使用貸借」という。)。福祉会は,上記の貸付期間中,本件土地において,「Cこども園」という名称の幼保連携型認定こども園(以下「本件こども園」という。)を開設するための工事を行った。(争いのない事実,甲2,6,7,9の2,弁論の全趣旨)キ福祉会は,平成29年3月,兵庫県知事から本件こども園の設置につき - 6 -認可を受け,同年4月1日,本件土地において,本件こども園を開設した。 (甲7,9の2,弁論の全趣旨)ク川西市は,平成29年4月1日,福祉会に対し,以下の約定で,本件土地につき定期借地権を設定した(以下「本件賃貸借」といい,本件使用貸借契約と本件賃貸借契約を併せて「本件各貸借」という。)。(争いのない事実,甲2,9の2,弁論の全趣旨)期間平成29年4月1日から50年間賃料(年額)① 平成29年4月1日~平成35年3月31日前年の路線価により算出した本件土地の価額の1%に相当する額② 平成35年4月1日~平成79年3月31日前年の路線価により算出した本件土地の価額の2%に相当する額⑶ 本件訴えに至る経緯ア原告らは,平成28年9月6日,地方自治法242条1項に基づき,川西市監査委員に対し,主位的に,福祉会に対する本件土地の貸付け及び本件事業に対する公金の支出を差し止め ⑶ 本件訴えに至る経緯ア原告らは,平成28年9月6日,地方自治法242条1項に基づき,川西市監査委員に対し,主位的に,福祉会に対する本件土地の貸付け及び本件事業に対する公金の支出を差し止めること,予備的に,福祉会に対する本件土地の貸付けを改めるために必要な措置を講ずることを求め,住民監査請求をした。(争いのない事実)イ川西市監査委員は,平成28年10月26日,原告らに対し,上記アの住民監査請求には理由がない旨を通知した。(争いのない事実)ウ原告らは,平成28年11月18日,地方自治法242条の2第1項に基づく住民訴訟として,主位的に,①本件各貸借の差止め及び②本件事業に対する公金の支出の差止め(上記第1の1)を,予備的に,③本件各貸借の違法確認及び④福祉会に対する金員の支払請求(上記第1の3)を求める旨の本件訴えを提起した。(顕著な事実)エ原告らは,平成29年5月10日,本件訴えのうち本件各貸借の違法確 - 7 -認を求める部分(上記ウ③)を,本件各貸借を解除しないことの違法確認の請求(上記第1の2)に交換的に変更する旨の訴えの変更をした。被告は,同月16日,上記訴えの変更に同意した。(顕著な事実)オ原告らは,平成29年7月5日,本件訴えのうち本件各貸借の差止めを求める部分(上記ウ①)を取り下げた上,同月11日の本件口頭弁論期日において,本件訴えの各請求の関係を単純併合とする旨を陳述した。被告は,同期日において,上記訴えの一部取下げに同意した。(顕著な事実) 4 主たる争点⑴ 本件各貸借(本件使用貸借及び本件賃貸借)の締結は,いずれも違法な契約の締結に当たるか。 ⑵ 被告が本件賃貸借を解除しないことは,違法に財産(本件土地)の管理を怠る事実に当たるか。 第3 争点に対する当事者の主張 1 争 本件賃貸借)の締結は,いずれも違法な契約の締結に当たるか。 ⑵ 被告が本件賃貸借を解除しないことは,違法に財産(本件土地)の管理を怠る事実に当たるか。 第3 争点に対する当事者の主張 1 争点⑴(本件各貸借の違法性)について⑴ 原告らの主張本件各貸借の締結は,いずれも違法な契約の締結に当たる。 ア 「適正な時価」からの乖離普通財産である本件土地を貸し付ける場合には,適正な時価で貸付料を定めなければならない(公有財産規則31条)。この点,公有財産規則31条にいう「適正な時価」とは,同種の財産の貸付けについての相場的な価格を意味し,土地の場合には,一般的に固定資産税額の2~3倍程度である。 しかるところ,本件土地の固定資産税額(平成28年度)は1㎡当たり約726円である(=固定資産税路線価4万2700円/㎡×1.7%)ことからすると,本件土地の借地料の「適正な時価」(相場)は,1㎡当たり約1450円~2170円となる。 - 8 -しかし,本件賃貸借の借地料(年額)は,本件こども園の開園から6年間は前年度路線価により算出した価額の1%相当額,7年目以降は同価額の2%相当額であり,平成27年度の固定資産税路線価を基準に考えると1㎡当たり約430円~860円となる。 したがって,本件賃貸借の賃料(借地料)は,その「適正な時価」に照らし,低廉にすぎる。 イ福祉会の「公共的団体」への不該当被告は,福祉会が無償貸付条例4条1号にいう「公共的団体」に当たるから,本件各貸借は違法でない旨を主張する。 しかし,上記「公共的団体」とは,市町村の合併の特例に関する法律(平成16年法律第59号)58条6項所定の「公共的団体」と同様の団体,すなわち,社会福祉協議会,青年団又は婦人会のような,地方公共団体の区域内に存在して地方自 とは,市町村の合併の特例に関する法律(平成16年法律第59号)58条6項所定の「公共的団体」と同様の団体,すなわち,社会福祉協議会,青年団又は婦人会のような,地方公共団体の区域内に存在して地方自治の観点から公共的な性格を有した団体に限られるというべきである。 しかるところ,福祉会は,地方自治の観点から公共的な性格を有しておらず,一定の営利性を有する団体である以上,無償貸付条例4条1号にいう「公共的団体」に当たるとはいえない。したがって,川西市は,福祉会に対し,本件土地を無償又は時価よりも低い価額で貸し付けることはできない。 ウ小括以上によれば,本件各貸借の締結は,その貸付料が「適正な時価」ではないから,公有財産規則31条に違反する違法な契約の締結に当たるというべきである。 ⑵ 被告の主張本件各貸借の締結は,いずれも違法な契約の締結に当たらない。 ア福祉会の「公共的団体」該当性 - 9 -「公共的団体」の意義は,法規を横断して一貫したものではないから,問題となる法規ごとに個別に解釈されるべきである。 しかるところ,無償貸付条例は,4条1号において,「地方公共団体その他公共団体」及び「公共的団体」に対し,時価より低廉な価額で普通財産を貸し付けることを認め,6条及び7条において,「地方公共団体その他公共団体」及び「私人」に対し,時価より低廉な価額で物品を譲渡し又は貸し付けることを認めている。このように,無償貸付条例は,「公共的団体」という概念につき,「公共団体」よりは広く「私人」よりは狭い概念とするとともに,少なくとも公益に関する側面を有するものと想定していることは明らかである。そうすると,無償貸付条例4条1号にいう「公共的団体」は,いやしくも公共的な活動を行う全ての団体を含むのであって,公益法人であっても, 公益に関する側面を有するものと想定していることは明らかである。そうすると,無償貸付条例4条1号にいう「公共的団体」は,いやしくも公共的な活動を行う全ての団体を含むのであって,公益法人であっても,その具体的な活動が公共的なものに及ぶ限りは,上記「公共的団体」に含まれると解するのが相当である。 これを本件についてみると,福祉会は,社会福祉法に基づいて設立された社会福祉法人(公益法人)であって,社会福祉事業としての幼保連携型認定こども園の経営を目的とする団体である。この点,社会福祉法人は,社会福祉事業を行うに当たり,無料又は低額な料金で福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない(社会福祉法24条2項)。また,地方公共団体は,社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して,社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう,必要な各般の措置を講じなければならない責務を負っている(同法6条)。 したがって,福祉会は,無償貸付条例4条1号にいう「公共的団体」に当たることは明らかである。 イ本件各貸借の「公用若しくは公共用又は公益事業の用」該当性日本においては,現在,いわゆる待機児童の数が増加しており,安心して働きつつ子どもを産める環境を整備することが喫緊の課題であるとこ - 10 -ろ,川西市においても,待機児童等の問題を解消するため,平成27年3月に「川西市子ども・子育て計画」を策定した。 しかるところ,福祉会は,上記計画に基づく本件事業の一環として,川西市から本件土地の貸与を受けた上,本件こども園(幼保連携型認定こども園)を開設した。なお,幼保連携型認定こども園は,就学前教育法により,学校及び児童福祉施設として取り扱われている。また,同園を経営する事業は,社会福祉法2条3項2号の2により,社会福祉事業と こども園)を開設した。なお,幼保連携型認定こども園は,就学前教育法により,学校及び児童福祉施設として取り扱われている。また,同園を経営する事業は,社会福祉法2条3項2号の2により,社会福祉事業と位置付けられている。 なお,近隣の9つの地方公共団体においても,保育所又は認定こども園の運営主体に対する公有財産の貸与条件につき,うち8つが無償であり,1つについても運営主体の希望で有償としているにすぎない。 したがって,本件各貸借(福祉会に対する本件土地の貸与)は,無償貸付条例4条1号にいう「公用若しくは公共用又は公益事業の用に供するとき」に当たることは明らかである。 ウ小括以上によれば,川西市は,無償貸付条例4条1号に基づき,福祉会に対し,本件土地を無償又は時価よりも低い価額で貸し付けることができる。 したがって,本件各貸借を締結したことは,違法な契約の締結に当たらない。 2 争点⑵(本件賃貸借を解除しないことの違法性)について⑴ 原告らの主張被告が本件賃貸借を解除しないことは,違法に財産の管理を怠る事実に当たる。 ア本件土地の危険性本件土地の前面道路は,住宅地等を行き来する車両の抜け道になっていること,隣接するバッティングセンター等の複合施設の利用客の車両が通 - 11 -行することから,その交通量が多い。また,平成30年度には,新名神高速道路の川西インターチェンジ(仮称)が供用開始になる予定であるため,上記道路の交通量が一層増加することが予想される。上記道路における1時間当たりの平日の交通量は,自動車が約150台,バイクが約25台,自転車が100台以上である(自動車とバイクについては土曜日も同様である。)。しかるに,上記道路は見通しが極めて悪いため,上記道路付近では交通事故が頻発しており,本件土地に近接 ,バイクが約25台,自転車が100台以上である(自動車とバイクについては土曜日も同様である。)。しかるに,上記道路は見通しが極めて悪いため,上記道路付近では交通事故が頻発しており,本件土地に近接する小学校及び中学校は,登下校時に上記道路を通行しないよう指導している。 しかるところ,本件こども園に入園する児童の登降園の際には,保護者や関係者の車両が出入りすることになるため,本件土地の前面道路に渋滞が発生し,交通事故が増加することが予想される。また,上記児童が保育時間中に外出する際にも,上記道路で交通事故が発生することが懸念される。さらに,本件こども園の行事が催される際には,長時間にわたって上記道路の交通量及び駐車車両が増加する危険がある。 以上のとおり,本件土地は,交通安全という観点からみて,幼保連携型認定こども園の用地としては不適である。 イ本件土地の狭隘性本件土地は,面積が1334㎡であるものの,うち約400㎡が法面であり,また,保護者の駐車場スペースを確保しようとすると,幼保連携型認定こども園の実質的な敷地面積としては1000㎡に満たない。しかも,本件土地の北東側が市街化調整区域にかかっており,同部分に建物を建築することができないため,園舎を本件土地の南西側に配置しなければならない。そうすると,本件土地では園庭が北向きに配置され,一日中,日照が遮られることになる。したがって,本件こども園に入園した児童に対し,のびのびとした教育と保育を一体的に行う良好な環境を確保することは不可能である。 - 12 -川西市は,当初,本件事業の用地として,本件土地に近い別の土地(地積3956㎡)を計画していたが,近隣住民の反対等に遭ったことなどから,これを本件土地に変更した。また,川西市は,他の土地にも幼保連携型認定こども園を 件事業の用地として,本件土地に近い別の土地(地積3956㎡)を計画していたが,近隣住民の反対等に遭ったことなどから,これを本件土地に変更した。また,川西市は,他の土地にも幼保連携型認定こども園を整備しているが,その敷地は3000㎡以上が確保されている。 他方で,本件事業で廃園することとされた市立B幼稚園の敷地(1826㎡)は,昭和49年の開設以来,児童の教育施設として活用されてきており,幼保連携型認定こども園の用地として適しているというべきである。 しかも,上記幼稚園を活用すれば,本件土地において幼保連携型認定こども園を開設する必要はないというべきであって,現に川西市の住民ら8885人がその存続を求める署名をしている。 以上からすると,本件土地は,就学前の児童をのびのびと保育及び教育するには狭隘にすぎるのであって,幼保連携型認定こども園の用地としては不適である。 ウ本件こども園の立地条件本件土地には,年中無休で営業しているバッティングセンター及びゴルフ練習場が隣接している。そのため,本件こども園に入園する児童らは,上記各施設から発される不規則な甲高い騒音により,精神的なストレスを受けることが懸念される。また,上記各施設からボールが高速で本件土地内に飛び出し,不測の事故が発生することも懸念される。 また,本件土地には,市立A中学校が隣接している。そのため,同中学校の野球部の活動により,生徒が打ったボールが本件土地内に飛来する可能性がある。また,大風の発生時には,上記中学校のグラウンドから運動会等で使うテントが本件土地内に飛来する可能性もある。 さらに,本件土地は,隣接するA中学校の敷地よりも約7m高く,同敷地との境界は法面となっている。本件こども園においては,法面へのはね - 13 -出し方式(片持ち梁,片持ちスラブ 性もある。 さらに,本件土地は,隣接するA中学校の敷地よりも約7m高く,同敷地との境界は法面となっている。本件こども園においては,法面へのはね - 13 -出し方式(片持ち梁,片持ちスラブ)で人工地盤を作って敷地面積を確保しているが,土砂崩れが発生した場合には,はね出しの根元部分が崩落し,危険である。 以上のとおり,本件土地は,児童の安全の確保という観点からしても,幼保連携型認定こども園の用地としては不適である。 エ小括以上のとおり,本件土地は,交通安全,面積,立地条件の観点から,幼保連携型認定こども園の用地としては不適である。 そうすると,被告が本件賃貸借を解除しないことは,違法に本件土地という財産の管理を怠る事実に当たるというべきである。 ⑵ 被告の主張被告が本件賃貸借を解除しないことは,違法に財産の管理を怠る事実に当たらない。 就学前教育法及びこれに基づく条例等は,幼保連携型認定こども園を設置する場所につき何らの規制も設けておらず,当該場所の選定は,これを設置しようとする地方公共団体の自由な裁量に委ねられている。したがって,その判断が違法となるためには,上記裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められなければならない。 しかし,原告らの主張は,本件各貸借(福祉会に対する本件土地の貸与)が不当である旨を主張するにとどまり,本件各貸借の締結につき,その裁量権を逸脱し又これを濫用した違法があることを基礎付けるに足りるものではない。 したがって,本件賃貸借の締結に違法があるとはいえず,被告がこれを解除すべき根拠はないから,被告が同解除をしないことが違法に財産の管理を怠る事実に当たるとはいえない。 第4 当裁判所の判断 - 14 - 1 争点⑴(本件各貸借の違法性)について⑴ 前提事実⑵カ及びク ないから,被告が同解除をしないことが違法に財産の管理を怠る事実に当たるとはいえない。 第4 当裁判所の判断 - 14 - 1 争点⑴(本件各貸借の違法性)について⑴ 前提事実⑵カ及びクによれば,川西市は,福祉会に対し,① 平成28年9月30日,貸付期間を同日から平成29年3月31日までの間と定め,本件土地を無償で貸し渡した(本件使用貸借)こと,② 同年4月1日,賃貸期間を同日から50年間,賃料(借地料)を平成29年4月1日から平成35年3月31日までは前年の路線価により算出した本件土地の価額の1%に相当する額,同年4月1日から平成79年3月31日までは上記価額の2%に相当する額と定め,本件土地につき定期借地権を設定したこと(本件賃貸借)が認められる。 しかるところ,原告らは,本件賃貸借の賃料が「適正な時価」ではないなどとして,本件各貸借の締結が公有財産規則31条に違反する旨を主張する。 これに対し,被告は,福祉会に対する本件土地の貸与が「公共的団体」による「公用若しくは公共用又は公益事業の用に供する」場合に当たるから,無償貸付条例4条1号により,本件各貸借は違法でない旨を主張する。 ⑵ そこで検討すると,福祉会は,社会福祉法に基づいて設立された,社会福祉事業である幼保連携型こども園の経営(社会福祉法2条3項2号の2参照)等を行うことを目的とする社会福祉法人である(前提事実⑴ウ参照)。そして,本件各貸借は,「川西市子ども・子育て計画」(子ども・子育て支援法61条所定の市町村こども・子育て支援事業計画,次世代育成支援対策推進法8条所定の市町村行動計画)に基づく本件事業を推進すべく,福祉会が幼保連携型認定こども園(本件こども園)を整備,運営するため,その敷地を提供する目的で締結された契約であるということができる(前提事実⑵参照 定の市町村行動計画)に基づく本件事業を推進すべく,福祉会が幼保連携型認定こども園(本件こども園)を整備,運営するため,その敷地を提供する目的で締結された契約であるということができる(前提事実⑵参照)。 しかるところ,福祉会は,社会福祉法人として,本件こども園を経営するに当たり,同園に入園している児童(満3歳以上の子ども及び満3歳未満の保育を必要とする子ども)の保護者に対し,無料又は低額な料金で,教育又は保育に係るサービスを積極的に提供するよう努めなければならない(社会 - 15 -福祉法24条2項,就学前教育法2条7項,11条参照)。加えて,川西市は,福祉会と協力して,本件事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう,必要な各般の措置を講じなければならない(社会福祉法6条参照)ところ,必要があると認めるときは,条例で定める手続に従い,福祉会に対し,通常の条件よりも福祉会に有利な条件で,財産を貸し付けることができるのである(同法58条1項本文参照)。 以上からすると,福祉会が本件土地を本件こども園の敷地として使用することは,無償貸付条例4条1号にいう「公共的団体において…公共用又は公益事業の用に供するとき」に当たるから,川西市は,上記の目的で,福祉会に対し,本件土地を無償又は時価よりも低い価額で貸し付けることができると解される。 そして,無償貸付条例4条1号にいう「公共的団体」を,原告らの主張するように,地方自治の観点から公共的な性格を有する団体に限定すべき根拠は見当たらない。 ⑶ 以上のとおり,川西市(代表者である被告又はその補助機関)が福祉会との間で本件各貸借(本件使用貸借,本件賃貸借)を締結したことは,無償貸付条例4条1号に基づくものであるから,違法な契約の締結に当たるということはできない。 2 争点⑵(本件賃貸借を解 )が福祉会との間で本件各貸借(本件使用貸借,本件賃貸借)を締結したことは,無償貸付条例4条1号に基づくものであるから,違法な契約の締結に当たるということはできない。 2 争点⑵(本件賃貸借を解除しないことの違法性)について⑴ 原告らは,本件土地の前面道路が交通の面から危険であること,本件土地が幼保連携型認定こども園の用地としては狭隘であること,本件土地が児童の安全の観点から不適であることなどからすれば,被告が本件賃貸借を解除しないことは,違法に財産(本件土地)の管理を怠る事実に当たる旨を主張する。 ⑵ そこで検討すると,福祉会は,平成29年3月,就学前教育法17条に基づき,兵庫県知事から,本件こども園の設置につき認可を受けたことが認め - 16 -られる(前提事実⑵キ参照)。しかるところ,同知事は,本件こども園が法令の定める設備及び運営の基準(就学前教育法13条1項,認定こども園の認可等に関する条例(平成18年兵庫県条例第63号)3条,幼保連携型認定こども園の学級の編制,職員,設備及び運営に関する基準(平成26年内閣府,文部科学省,厚生労働省令第1号),法令の規定により条例に委任された社会福祉施設等施設の基準等に関する条例(平成24年兵庫県条例第4号)7条等参照)を満たすとして,上記認可をしたものと認められる。そして,川西市は,平成29年4月1日,福祉会に対し,本件こども園の敷地である本件土地につき定期借地権を設定したこと(本件賃貸借)が認められる(前提事実⑵ク参照)。 しかし,幼保連携型認定こども園の敷地についての基準(敷地の所在,敷地面積等)を定めた法令の規定が存在しないことなどを踏まえると,原告らの上記主張をもって,① 上記認可が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存 の所在,敷地面積等)を定めた法令の規定が存在しないことなどを踏まえると,原告らの上記主張をもって,① 上記認可が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存する,あるいは,② 川西市(代表者である被告又はその補助機関)が本件土地を本件こども園の用地として選定したことにつき,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるとは認め難い。そして,他に,上記①及び②の各点を認めるに足りる的確な証拠もない。 また,本件全証拠によっても,本件賃貸借の賃貸人(借地権設定者)である川西市が,本件賃貸借の解除権を有していると解すべき法令上の根拠を見いだすこともできないというほかはない(地方自治法238条の5第4項,6項,公有財産規則37条等参照)。 ⑶ 以上のとおり,川西市(代表者である被告又はその補助機関)が福祉会との間で締結した本件賃貸借を解除しないことは,違法に本件土地という財産の管理を怠る事実に当たるということはできない。 3 結論 - 17 -よって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官山口浩司 裁判官和久一彦 裁判官日巻功一朗 - 18 -(別紙)物件目録 所在川西市ab 丁目地番 c 番d地目宅地地積 1334.35㎡
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