- 1 - 平成28年11月22日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成25年(ワ)第11642号貸金請求事件口頭弁論終結日平成28年9月6日判決 原告 P1 原告 C&Fシステック株式会社 上記2名訴訟代理人弁護士妹尾純充 被告 P2 被告東風情報技研株式会社上記2名訴訟代理人弁護士種村泰一同訴訟復代理人弁護士石田慎也主文 1 被告P2は,原告P1に対し,1750万円及びこれに対する平成25年11月28日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告東風情報技研株式会社は,原告C&Fシステック株式会社に対し,340万円及びこれに対する平成25年11月21日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 原告C&Fシステック株式会社のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,原告P1と被告P2との間に生じたものは被告P2の負担とし,原告C&Fシステック株式会社と被告東風情報技研株式会社との間に生- 2 - じたものはこれを5分し,その3を原告C&Fシステック株式会社の負担とし,その余は被告東風情報技研株式会社の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 主文第1項同旨 2 被告東風情報技研株式会社は,原告C&Fシステック株式会社に対し,840万円及びこれに対する平成25年11月21日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,①原告P1が,被告P2に対し,消費貸借契約に基づく貸金返 会社に対し,840万円及びこれに対する平成25年11月21日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,①原告P1が,被告P2に対し,消費貸借契約に基づく貸金返還請求権として,元金合計1750万円及びこれに対する平成25年11月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合の遅延損害金の支払を求め,②原告C&Fシステック株式会社(以下「原告会社」という。)が,被告東風情報技研株式会社(以下「被告会社」という。)に対し,消費貸借契約に基づく貸金返還請求権として,元金840万円及びこれに対する平成25年11月21日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合の遅延損害金の支払を求めている事案である。 被告会社は,原告会社が,被告会社の営業秘密を取得し使用するなどの不正競争防止法2条1項4号の不正競争をしたと主張し,その行為を理由とする同法4条に基づく損害賠償請求権を自働債権,上記②の債権を受働債権として対当額で相殺するとして争った(なお,被告P2は,原告P1の主張する上記①の貸付けは,全て被告会社に対する貸付けであるとして否認し,他方,被告会社もその貸付けが被告会社に対する貸付けであることを自認しているが,本件において,原告P1は,被告会社に対する上記①の貸付けに基づく請求はしていない。)。 1 判断の前提となる事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨に- 3 - より容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告会社は,日本信号株式会社(以下「日本信号」という。)の元社員である原告P1が平成23年7月8日に設立したコンピュータシステムの開発等を業とする株式会社であり,原告P1が代表取締役を務めている。 イ被告会社は,被告P2が平成21年1月15 いう。)の元社員である原告P1が平成23年7月8日に設立したコンピュータシステムの開発等を業とする株式会社であり,原告P1が代表取締役を務めている。 イ被告会社は,被告P2が平成21年1月15日に設立した原告会社と同業の株式会社であり,被告P2が代表取締役を務めている。 (2) 金銭の交付等ア原告P1は,被告会社の事業資金に充てることを目的として,被告P2又は被告会社に対し,次の金員を期限の定めなく貸し付けた(ただし,貸付①ないし⑤についてはどちらに貸し付けたのかについては争いがあり,さらに貸付①については当初から貸付けであったか否かについて争いがある。)。 (ア) 平成20年11月 100万円(以下「貸付①」という。)(イ) 平成22年12月29日 400万円(この貸付けについては既に元利金を返済済みであることは当事者間で争いがない。)(ウ) 平成23年6月30日 300万円(以下「貸付②」という。)(エ) 平成23年8月30日 300万円(以下「貸付③」という。)(オ) 平成23年12月26日 900万円(以下「貸付④」という。)(カ) 平成23年12月29日 150万円(以下「貸付⑤」という。)イ平成23年11月28日,原告会社は,被告会社に対し,840万円を期限の定めなく貸し付けた(以下「貸付⑥」という。)。 (3) ソフトウェアの開発委託契約ア宮城県は,平成24年8月20日,株式会社BSNアイネット(以下「BSNアイネット」という。)との間で,BSNアイネットを貸主,宮城県を借主として,宮城県警察本部交通部交通規制課(以下「宮城県警」という。)に設置する「交通規制情報管理システム」(以下「本件システム」という。)に関し,平成25年2月1- 4 - 日から平成30年1月31日までを賃 察本部交通部交通規制課(以下「宮城県警」という。)に設置する「交通規制情報管理システム」(以下「本件システム」という。)に関し,平成25年2月1- 4 - 日から平成30年1月31日までを賃貸借期間とし,賃貸借料総額3994万8300円(ただし,平成24年12月7日に4977万円に変更された。)とする「交通規制情報管理システム賃貸借」契約を締結した。(乙10の1及び2)イ BSNアイネットは,宮城県警に納入する本件システムの開発を株式会社ドーン(以下「ドーン」という。)に請け負わせ,さらにドーンは,平成24年10月頃,原告会社に対して同システム開発を下請けさせることとして,原告会社との間で同システムの開発のためのソフトウェア開発の委託契約を締結した。(甲12,甲21,甲22)ウ原告P1は,平成24年8月9日,本件システムの開発を原告会社が下請けとして受注することを前提に,被告会社に対し,ソフトウェアの開発を依頼する予定であることを伝え,被告会社も原告会社からこの発注を受ける前提でソフトウェアの開発を行っていた(以下,被告会社が作成していたソフトウェアを「被告作成ソフト」という。)。 しかし,ドーンの下請けとしての原告会社が被告会社との間で契約締結のための交渉を進めるに当たり,原告会社は,ドーンとの間の契約において,納入するソフトウェアのソースコードの開示を含み,著作権の譲渡を求められていたので,被告会社にも同様の条件で下請けするよう求めたが,被告会社は,その条件を了解せず,結局,同年10月19日頃,被告会社は原告会社からのソフトウェア開発を受注しないとの決定を行った。(甲14,甲17)(4) 宮城県警への納入原告会社は,被告らに無断で入手した被告作成ソフトを基に,これをドーンと共に改修してソフトウェアを作成 トウェア開発を受注しないとの決定を行った。(甲14,甲17)(4) 宮城県警への納入原告会社は,被告らに無断で入手した被告作成ソフトを基に,これをドーンと共に改修してソフトウェアを作成し(以下,その当初の成果物を「県警納入ソフト」という。),BSNアイネットは,これを,平成25年1月31日に宮城県警へ納入した。(乙11,乙12)(5) 被告会社による相殺の意思表示被告会社は,本件訴訟の平成26年1月29日第2回口頭弁論期日において,原- 5 - 告会社による不正競争防止法2条1項4号該当の不正競争を理由に原告に対して有すると主張する不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求権(損害額8413万1250円及び弁護士費用800万円)を自働債権,原告会社が被告会社に対して有する貸付⑥の貸金債権840万円を受働債権として,これと対当額で相殺する旨の意思表示をした。 2 争点(1) 貸付①ないし貸付⑤の借受人は被告P2か(争点1)(2) 不正競争防止法2条1項4号該当の不正競争を理由とする同法4条に基づく損害賠償請求の成否及びその額(争点2)ア被告作成ソフトは営業秘密か(争点2-1)イ営業秘密の不正取得行為,不正取得した営業秘密の使用行為の有無(争点2-2)ウ被告会社の損害額(争点2-3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(貸付①ないし貸付⑤の借受人は被告P2か)(原告P1の主張)(1) 原告P1は,貸付①ないし貸付⑤を,被告P2に対し貸し付けたものである。 (2) 被告P2は,貸付①が原告P1の被告P2への貸付けであることを否認し,被告会社への出資金である旨主張するが,原告P1は,被告会社の共同経営者ではなく,被告P2に対し,被告会社の設立資金を貸し付けただけであり,被告会社の 告P1の被告P2への貸付けであることを否認し,被告会社への出資金である旨主張するが,原告P1は,被告会社の共同経営者ではなく,被告P2に対し,被告会社の設立資金を貸し付けただけであり,被告会社の開発ソフトに関する営業活動も,原告会社の営業として行っていたにすぎない。 貸付②ないし⑤の貸付けも,被告P2に対する貸付けである。 原告P1は,被告会社の運転資金のために使用されるという認識はあったが,被告P2が,被告会社の借入金が多くなると支障があるとして,被告P2個人への貸付けを求めていた。いずれにしても,被告P2自身,本訴提起前はいずれの貸付けも個人に対する貸付けであることを認めていた。 - 6 - 被告P2は,原告P1が日本信号の社員であったために,被告P2個人の口座に振り込んだなどと主張しているが,原告P1は平成23年4月30日には日本信号を退社しており,被告P2の主張には理由がない。 (被告P2の主張)(1) 貸付①については,当初,原告P1の被告会社に対する出資金であったが,平成24年2月に原告P1が被告会社の共同経営者から退く意向を示した際に被告会社に対する貸付けに振り替えられたものである。 (2) 貸付②ないし貸付⑤については,貸付けの事実は認めるが,被告P2に対する貸付けであることは否認する。被告P2は,顕名はしていないが,被告会社を代表する意思で借り入れたものであり,商法504条の適用により,被告会社に対する貸付けであるといえる。 原告P1が被告会社の共同経営者として被告会社の運用資金に充てる趣旨で被告会社に貸し付けたもので,原告P1が被告P2の個人口座に振り込んだことがあるのは,原告P1が貸付け当時,日本信号の社員であった等の事情によるものである。 2 争点2(不正競争防止法2条1項4号該当の不正競争を理由 たもので,原告P1が被告P2の個人口座に振り込んだことがあるのは,原告P1が貸付け当時,日本信号の社員であった等の事情によるものである。 2 争点2(不正競争防止法2条1項4号該当の不正競争を理由とする同法4条に基づく損害賠償請求の成否及びその額)(1) 被告作成ソフトは営業秘密か(争点2-1)(被告会社の主張)ア被告らが作成した被告作成ソフトは,被告会社の重要な資産に当たることから秘密として管理されていた。現に原告との間でそのソースコードの開示について交渉がされていたから,容易にアクセスできないよう,秘密として管理されていたことは明らかである。 イまた,被告作成ソフトは,宮城県警向けカスタマイズを終えていなかったが,基本ソフトとしては既に完成していたもので,この段階までの作成に相当のコストがかかっており,経済的価値の存する有用な技術情報であった。原告会社が無断で被告作成ソフトを用いていることからも,有用性が端的に裏付けられている。 - 7 - ウ被告作成ソフトは当然非公知であったもので,原告会社と被告会社との間でソースコードの開示を巡る交渉があったことからも明らかである。 エ原告会社は,Web化されていなかったなどと主張するが,Web化されたソフトウェアを求められて,Web化すらされていなかったことはあり得ない。Web化されているかどうかは,システム開発者であればソフトウェアを起動すれば容易に分かることであり,平成24年9月28日まで誰も気付かないということはあり得ない。 致命的エラーは,ソフトウェアに障害があることを示す兆候にすぎず,開発途中のソフトウェアにはよくあるものである。また,ドーン及び原告会社作成に係るプログラムの障害についての不具合・変更内容及びその対処内容を記録した「障害管理表」(甲 あることを示す兆候にすぎず,開発途中のソフトウェアにはよくあるものである。また,ドーン及び原告会社作成に係るプログラムの障害についての不具合・変更内容及びその対処内容を記録した「障害管理表」(甲24)は,平成25年3月25日以降のものであり,被告作成ソフトの問題点というよりも,原告会社あるいはドーンが加えたカスタマイズの問題点を指摘するものといえる。 (原告会社の主張)ア被告作成ソフトは営業秘密とはいえない。 イ被告会社の従業員は,原告会社が貸与したパソコン上に被告作成ソフトのファイルを残していたもので,原告会社に対して開示されているものである。 ウまた,被告作成ソフトは,宮城県警で行われた平成24年9月28日のデモンストレーションの際は何とか起動したものの,Web化されておらず,多数の問題点を指摘された(甲23)。その後改修を加えて平成25年1月に何とか納入したものの,同年3月から5月にかけても改修し続けたが(障害管理表(甲24)は問題点の一部),結局完成させることができないことからドーンに新たにソフトウェアの開発を依頼し,最終的にドーンが平成26年4月か5月に契約上のソフトウェアを宮城県警に納入したもので,このような経緯からすれば,被告作成ソフト自体,商品価値,有用性はなかった。原告会社が完成品を納入できなかったため,ドーンから原告会社への報酬は●(省略)●しかし,被告会社は①,②までしかやってお- 8 - らず,全く使いものにならなかった。 (2) 営業秘密の不正取得行為,不正取得した営業秘密の使用行為の有無(争点2-2)(被告会社の主張)ア平成24年10月初旬まで原告会社の事務所に被告作成ソフトが入ったパソコンがあったところ,原告P1の指示により,原告会社の社員と被告会社の元社員が当該パ -2)(被告会社の主張)ア平成24年10月初旬まで原告会社の事務所に被告作成ソフトが入ったパソコンがあったところ,原告P1の指示により,原告会社の社員と被告会社の元社員が当該パソコンのハードディスクを持ち出し,入っていた被告作成ソフトをコピーして不正取得した。 イ原告会社は,被告作成ソフトを使用して作成したソフトウェアを納入した。 (原告会社の主張)ア原告会社が被告作成ソフトを入手したのは,被告会社に貸し出したパソコンが原告会社に返却された際に被告会社が消し忘れたソフトウェアがあったもので,積極的に持ち出したものではない。 イ原告会社及びドーンが作成して平成25年1月末に宮城県警にいったん納入したシステムソフトウェアは,被告作成ソフトを改修した県警納入ソフトであったが,うまく起動しないため,同年5月10日まで原告会社においても改修を続けていたものの,結局改修作業から撤退することとなり,平成26年4月か5月頃にドーンにおいて新たに作成したソフトウェアを宮城県警に再納入した。 (3) 被告会社の損害額(争点2-3)(被告会社の主張)被告会社は,原告会社によって被告作成ソフトのソースコードをドーンに開示されたことにより,被告作成ソフトを販売する機会を奪われたから,被告作成ソフトの開発費相当額である8413万1250円(税込)及び弁護士費用800万円が原告会社の不正競争と因果関係のある損害である。 (原告会社の主張)被告会社はその開発したソフトウェア(被告作成ソフト)を販売することは可能- 9 - であり,販売する機会は失われていないから,損害はない。 被告作成ソフトの開発費が損害であるとする主張も,不正競争との因果関係が明らかでない。 被告会社は,被告作成ソフトのソースコードの開示を前提 であり,販売する機会は失われていないから,損害はない。 被告作成ソフトの開発費が損害であるとする主張も,不正競争との因果関係が明らかでない。 被告会社は,被告作成ソフトのソースコードの開示を前提とした債務を履行しなかったために,他の販売機会を自ら困難にしたものである。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(貸付①ないし貸付⑤の借受人は被告P2か)(1) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告会社及び被告会社の設立の経緯等(ア) 被告P2は,同人が勤務していた会社から独立して会社を設立しようと計画した際,当初は原告P1と共に会社を設立する方向で,発起人を被告P2及び原告P1とする平成20年11月23日付けの会社定款を作成するなどしていた。 (乙1の2)(イ) しかし,設立を計画した会社は,その設立後に日本信号からの仕事も請け負う予定であったため,その当時,日本信号の社員であった原告P1は,設立を計画した会社の発起人や取締役となることはなく,また出資もせず,結局,平成21年1月15日,被告P2が一人で,被告会社を設立するところとなった。(甲2,原告P1,被告P2)(ウ) 原告P1は,平成23年4月30日に日本信号を退職した。原告P1は,退職後,被告会社に加わる予定であったが,被告会社の経営状況が厳しかったため,原告P1において別会社を設立し,同会社から被告会社に資金を融通することとし,同年7月8日に原告会社を設立した。(甲1,9,原告P1本,被告P2)イ貸付①ないし同⑤の状況等(ア) 原告P1は,貸付①ないし貸付⑤について,その金員を交付するに当たり,被告会社の運転資金等として使用されるものであることを認識していた。 しかし,原告P1は,被告会社の借入金を増やしたくないという被告P P1は,貸付①ないし貸付⑤について,その金員を交付するに当たり,被告会社の運転資金等として使用されるものであることを認識していた。 しかし,原告P1は,被告会社の借入金を増やしたくないという被告P2が,現- 10 - 金での交付を希望したことから,貸付①ないし貸付④については,原告P1あるいはその妻の預金口座から引き出した現金を,直接被告P2に交付し,貸付⑤については,原告P1自身の口座から被告P2の口座に送金した。そして,これらの金員については,被告会社の帳簿上借入金として処理されたものはなく,売上げという形で処理されていた。(甲3,甲18ないし甲20,原告P1,被告P2)(イ) 被告P2は,平成22年12月29日,原告P1から400万円を借り受け,同日付けで,被告P2が,被告会社の運転資金として,500万円を借用したとの借用証書を作成した。同借用証書(甲5)には,同年5月末に400万円を返済,同年7月末に100万円を返済する旨の記載があった。(甲5,争いがない事実)(ウ) 原告P1は,平成23年11月28日,貸付⑥の金銭交付の為,原告会社の口座から被告会社へ送金した。その入金は,被告会社の帳簿上,被告会社の原告会社に対する売上げという形で処理された。(甲4,被告P2)(エ) 原告P1は,平成23年12月29日に貸付⑤を貸し付けるに際し,被告P2に対し,平成24年6月までの資金計画表を求め,原告P1及び原告会社から借りている金員の借用書の出し直しを求めた。その際,原告P1は,被告P2に対し,被告P2及び被告会社だけでなく,資金計画を行ったとする被告会社の従業員の連名の捺印をしたものを求めた。 これに対し,被告P2は,個人名での借用書を出す旨応答し(乙2の1及び2),平成24年1月6日,原告P1に対し,被告P2が, 資金計画を行ったとする被告会社の従業員の連名の捺印をしたものを求めた。 これに対し,被告P2は,個人名での借用書を出す旨応答し(乙2の1及び2),平成24年1月6日,原告P1に対し,被告P2が,被告会社の運転資金として2890万円を借用したとする原告P1宛ての平成23年12月30日付けの借用証書を送付した。同借用証書(甲6の2)には,同額の内訳として,前記第2の1(2)ア(イ)の400万円と貸付②ないし同⑥が記載され,返済は別途協議するとして,被告会社の資金繰り表が添付された。また,注として,平成22年12月29日付けの借用証書相当分はこの文面に含まれますとされていた。(甲6の2)原告会社から被告会社に送金された貸付⑥の840万円については,帳簿上,被告会社の原告会社に対する売掛金として計上されて処理された。 (甲6の1,甲40,- 11 - 原告P1,被告P2)。 ウ被告P2は,平成25年3月1日頃,「C&F社との間にやりとりしている詳細は別紙の通りで,残高¥2,590万円ある。」との記載がある書面を作成し,その参照資料として,同年2月28日現在の原告会社又は原告P1との間のやりとりとして,「①初め ¥100万円,②300+300=¥600万円,③900+150=1050万円,④840,合計¥2590万円」との記載のある書面を作成した。同書面において,平成24年4月23日に「精算」済みとされている100万円及び平成25年2月28日済みと記載されている400万円については,被告会社から原告会社の口座へ振り込む形で返済された。(甲7の4,5,甲40)(2) 原告P1の被告P2に対する貸金返還請求につき,被告P2は,原告P1主張の金銭交付の事実自体は認めながら,貸付①ないし同⑤が,いずれも被告会社への貸付けであると 甲7の4,5,甲40)(2) 原告P1の被告P2に対する貸金返還請求につき,被告P2は,原告P1主張の金銭交付の事実自体は認めながら,貸付①ないし同⑤が,いずれも被告会社への貸付けであるとして,被告P2に対する貸付けあることを否認している。 しかし,以下に検討するとおり,いずれも原告P1の被告P2に対する貸付けと認定されるべきである。 ア貸付①について被告P2は,貸付①は,当初は,原告P1の被告会社への出資金であったものを借入金としたものであると主張している。 確かに原告P1も当初,被告会社の発起人となる予定であったが,結局,発起人とはなっていないし,被告会社の出資者にもなっていない上,被告会社の帳簿上,原告P1からの貸付①に相当する借入金が計上されている事実も認められないことからすると,被告会社設立前である平成20年11月に被告P2に交付された現金100万円は,被告会社の設立準備資金として被告P2に貸し付けられたものと認めるのが相当である。 これに対し,被告P2は,被告P2が原告P1宛に借用金の詳細を明らかにするため作成した原告P1宛ての借用証書(甲5,甲6の2)には,貸付①の記載がないことを指摘して,貸付①が被告P2個人に対する貸付けでなかったことが分かる- 12 - ように主張するところ,確かにその趣旨で作成されたと理解される上記借用証書には,貸付①の金銭交付に相当する記載がないことから,貸付①が被告P2への貸付けではないように理解できる余地もある。しかし,その金銭交付がなされた時期は,そもそも被告会社設立前であるし,当初は被告会社への出資金であったものが貸付けに変えられたという被告主張に係る経緯について,これを具体的に認めさせる証拠はないから,この金銭交付は法的には被告P2に対する貸付けとみるのが 前であるし,当初は被告会社への出資金であったものが貸付けに変えられたという被告主張に係る経緯について,これを具体的に認めさせる証拠はないから,この金銭交付は法的には被告P2に対する貸付けとみるのが相当であり,被告P2の上記主張は採用できないというべきである。 したがって,貸付①は,原告P1の被告P2に対する貸付けと認定するのが相当である。 イ貸付②ないし同⑤について原告P1が被告P2に対して貸付②ないし同⑤のとおり貸付けの目的で金銭交付をしたことは当事者間に争いがないところ,被告P2は,商法504条の適用により,その貸付けの効果は被告会社に生じていると主張する。 確かに,それらの貸付けは,被告P2個人の資金借入れのためではなく,被告会社の運転資金のために借入れであり,そのことについての認識が原告P1にあったことは原告P1も認めるところであるが,貸付②ないし同④の貸付けが現金で交付でされたり,貸付⑤の貸付けが,原告P1個人の口座から被告P2個人の口座へ宛てて送金されたりしたのは,被告P2が,これらの金員の交付を受けるに際し,原告P1に対し,被告会社の借入金が多くなると支障があるとして,被告P2自身に対する現金での交付を依頼したためというのである。すなわち,これによると,被告P2は,原告P1に対し,その貸付けで調達した資金を被告会社のために用いるという目的ないし動機は表示しているが,それと同時に,その契約の効果が被告会社に帰属しないようにする意思を有し,そのことを積極的に表示していたというべきであり,またそうであるからこそ,原告P1も,これに応じて,上記のとおり高額の金銭を現金で交付するなどの不自然な対応をしたものと認められる。 そして,現に被告会社の帳簿上,いずれの金員も原告P1から被告会社への貸付- 13 - 金 も,これに応じて,上記のとおり高額の金銭を現金で交付するなどの不自然な対応をしたものと認められる。 そして,現に被告会社の帳簿上,いずれの金員も原告P1から被告会社への貸付- 13 - 金として計上されていないし,後に被告P2自らが原告P1宛に作成した借用証書(甲5,甲6の2)での借入主体が,いずれも被告P2となっているというのである。 すなわち,貸付②ないし同⑤の借入れの際,被告P2は,その消費貸借契約の効果を被告会社に帰属させる意思(代理意思)を表示しなかった,すなわち顕名をしなかったというだけでなく,かえって消費貸借契約の効果を自らに帰属させる意思を有し,その旨を貸主の原告P1に表示していたのであるから,被告会社ではなく,被告P2自身が当該契約の当事者と認めるべきものである。 したがって,貸付②ないし同⑤の貸付けは,いずれも原告P1の被告P2に対する貸付けであると認めるのが相当である。 なお,被告らは,上記貸付けの一部につき,被告会社の名義で原告P1に返済したものがあることも指摘するところ,確かに,そのような形で一部の返済が行われたことについては当事者間に争いはないが,原告P1から被告P2に対しては被告会社から借り入れて返済するよう求めていることや,もともと貸付金が被告会社の運転資金として使用されていたことを考慮すれば,当該事実をもって上記認定を左右するものとはいえない。 (3) 以上のとおりであるから,原告P1が,被告P2に対して交付した貸付①ないし同⑤の貸付けは,全て原告P1の被告P2に対する期限の定めのない貸付けであると認められる。 したがって,原告P1の被告P2に対する貸付①ないし同⑤の合計額1750万円及びこれに対する平成25年11月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定年5%の割合 であると認められる。 したがって,原告P1の被告P2に対する貸付①ないし同⑤の合計額1750万円及びこれに対する平成25年11月28日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定年5%の割合の遅延損害金の支払請求は全て理由がある。 2 争点2(不正競争防止法2条1項4号該当の不正競争を理由とする同法4条に基づく損害賠償請求の成否及びその額)(1) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア交通規制管理システムの開発等- 14 - (ア) 原告P1の日本信号在籍当時,日本信号は,有限会社コアネットと共に,基本システムを開発して高知県警察本部に納入した。 (イ) ●(省略)●(ウ) 被告会社は,平成21年4月頃から,上記のとおり,基本システムのWeb化を始め,平成22年4月頃までの間,相当の費用をかけて作業を行っていた。そして,原告会社が設立された後の平成23年9月頃から再び開発を始め,原告会社からソフトウェア開発業務を請け負うことを拒絶した平成24年10月頃まで開発を継続していた。被告会社は,被告作成ソフトをネット対応で作成しており,原告の依頼を拒絶するまでに,被告作成ソフトは,現実の発注者の仕様に合わせるために改修する前の段階にあった。 (甲40,乙24,乙25の1ないし25,被告P2)(エ) 被告会社は,平成24年8月9日,原告P1から,原告会社が宮城県警への交通規制管理システムの開発に係るソフトウェア開発を請け負うこととなり,これを被告会社に依頼する旨の連絡を受けた。(甲14)被告P2は,原告P1との間で,同ソフトウェア開発に関する条件等について連絡を取り合い,同月22日には,●(省略)●そのうち原告会社の取り分が70万円であることについては了解したが,被告会社への支払条 告P2は,原告P1との間で,同ソフトウェア開発に関する条件等について連絡を取り合い,同月22日には,●(省略)●そのうち原告会社の取り分が70万円であることについては了解したが,被告会社への支払条件に関しては了解できず,前払いとする必要がある旨を連絡した。(甲16)また,被告P2は,同月29日,原告P1に対し,被告会社が被告作成ソフトを開発してきたものであるからその費用を回収する必要はあること,ソースコード開示に関しては慎重に検討しなければならないことを伝え,その後も同年9月にかけてソースコード開示について契約だけでは無理で原告P1の担保を求めたりするなどの意向を伝えるなどしていた。(乙2の4,乙4の1,乙5)(オ) 原告会社は,同年10月初め頃,ドーンから,宮城県警の交通規制管理システムの開発に係るソフトウェア開発について,同年9月20日付けの注文を受け,同日付けの契約書(甲12。以下「開発委託契約書」という。)に基づき,ソフトウェアの開発委託契約を,●(省略)●として締結した。開発委託契約書には,第1- 15 - 2条において,「成果物の知的財産権」として,成果物に関する著作権については特別な定めがない限り,ドーンに移転するものとするなどと定められていた。 (甲12,甲21,甲22,乙4の2)(カ) 被告P2は,同年10月19日,開発委託契約書において,被告会社が納入するソフトウェアに関する著作権がドーンに移転するという形となり,ソースコードを開示することにつき了承できず,原告会社から,同ソフトウェア開発を受注することを正式に拒絶した。(甲17,乙4の1,2,乙5,原告P1,被告P2)イ宮城県警への納入に至るまでの経緯(ア) 原告会社が開発委託契約書によりドーンから委託を受けた業務は,次のとおりの納入条 正式に拒絶した。(甲17,乙4の1,2,乙5,原告P1,被告P2)イ宮城県警への納入に至るまでの経緯(ア) 原告会社が開発委託契約書によりドーンから委託を受けた業務は,次のとおりの納入条件等が定められていた。(甲12)a 第1次成果物① 納入期限:平成24年10月18日(検収完了予定日:同月19日)② 成果物:要件定義書(仕様書)●(省略)●b 第2次成果物① 納入期限:平成24年12月20日(検収完了予定日:同月28日)② 成果物:研修用操作マニュアル●(省略)●c 第3次(最終)成果物① 納入期限:平成25年1月15日(検収完了予定日:同月31日)② 成果物:設計書,試験仕様書,試験結果報告書,操作マニュアル,ソフトウェアソース●(省略)●(イ) BSNアイネット,ドーン及び原告会社は,平成24年9月28日,宮城県警との第4回目の打合せにおいて,本件システムの機能仕様書(変更頁のみ)の交付を受けると共に仕様確認がされ,次回の同年10月下旬の打合せにおいて,確定- 16 - 仕様を提出する予定とされた。(乙7)原告会社は,同月18日,ドーンに対して第一次成果物を納入し検収を受けた。 (甲37の1ないし3)(ウ) 原告会社は,平成24年10月19日,被告会社がソフトウェア開発から外れることが確定したものの,ドーンへの納入時期に間に合わせるため,同月末には,ソフトウェア開発のために被告会社に貸与していた原告会社のパソコンに残されていた被告作成ソフトを探し出し,同ソフトを使用して改修を加える形で開発を始めた。(原告P1)(エ) 原告会社は,ドーンに対し,同年12月20日,第二次成果物としての研修用操作マニュアルを納入したが,同月28日,システム機能の一部につい 用して改修を加える形で開発を始めた。(原告P1)(エ) 原告会社は,ドーンに対し,同年12月20日,第二次成果物としての研修用操作マニュアルを納入したが,同月28日,システム機能の一部について掲載されていない部分があるとして,未完成と判断され,修正した上再度納入するよう求められた。(甲38の1ないし3)(オ) 原告会社は,平成25年1月15日,ドーンに対し,第二次成果物を修正したもの及び第三次成果物を納入したが,一部試験結果が掲載されておらず,テスト不足の為,納入物が未完成として修正後再度の納入を求められた。(甲39の1ないし3)(カ) 原告会社は,同月31日,ドーンに対し,修正した第二次成果物及び第三次成果物(県警納入ソフトはこれに含まれる。)を納入し,検収を終了し,その後,これらはBSNアイネットを介して宮城県警に納入された。 (甲38の4,甲39の4,乙11,乙12,乙14,乙15)ウソフトウェアの修正等ドーンと原告会社は,宮城県警に納入後も平成25年5月頃まで,納入したソフトウェアについて,エラー等に対応して修正を加えるなどした。(甲23,甲24,甲27ないし甲30)エドーンから原告会社への支払等原告会社は,ドーンに対し,開発委託契約の成果物の検収後,●(省略)●支払- 17 - った。(甲25,甲26,甲37の4,甲38の5,甲39の5)原告会社は,同年2月5日付けで,ドーンに対する281万8200円(税込)の注文書を作成し,同年4月1日,同社に対し,281万7800円を送金した。 (甲26,甲34)(2) 争点2-1(被告作成ソフトは営業秘密か)についてア非公知性・秘密管理性原告会社と被告会社との間でのソフトウェア開発の業務委託契約が締結に至らなかったのは,被 甲26,甲34)(2) 争点2-1(被告作成ソフトは営業秘密か)についてア非公知性・秘密管理性原告会社と被告会社との間でのソフトウェア開発の業務委託契約が締結に至らなかったのは,被告P2が,原告会社に対し,被告会社の著作権の譲渡及びそれに伴うソースコードの開示につき難色を示して折り合いが付かなかったというのであり,そもそもソフトウェアのソースコードは,一般に非公開とされているものであり,また上記経緯に照らし,被告作成ソフトのソースコードを原告らのみならず第三者が知る手段を持っていなかったことも明らかであるから,被告作成ソフトは非公知であり,秘密として管理されていたものといえる。 原告会社は,被告作成ソフトが原告会社のパソコンに残っており,結果として原告会社に開示された旨主張して秘密管理性を否定するが,原告会社のパソコンに被告作成ソフトが残されていたのは,被告会社の何らかの過失によるとしか考えようがないから,被告会社が積極的に開示しようとしたものではない以上,上記のような一回限りの出来事をもって,被告作成ソフトの秘密管理性に影響を及ぼすものとはいえない。 イ有用性被告作成ソフトは,ネット対応で作成され,現実の発注者の仕様に合わせるために改修する前の段階にあったが,原告会社が平成25年1月31日にドーンに第三次成果物として納入したソフトウェアは,被告作成ソフトを一部改修したものにすぎないというのであるから,被告作成ソフトが有用なものであったことは明らかといえる。 原告会社は,県警納入ソフトについて,致命的な問題が生じたのは被告作成ソフ- 18 - トに問題があったからであるとして,その有用性を否認するが,ドーンの担当者からの指摘や納入後の不具合について指摘するものの(甲23,甲24),被告作成ソフトの たのは被告作成ソフ- 18 - トに問題があったからであるとして,その有用性を否認するが,ドーンの担当者からの指摘や納入後の不具合について指摘するものの(甲23,甲24),被告作成ソフトの具体的な問題点については明らかでなく,また,納入後の不具合は,被告作成ソフトを改修した県警納入ソフトに関するものであるから,これらの指摘が直ちに基となった被告作成ソフトの問題であると認めることはできないし,それだけで被告作成ソフトの有用性を否定できるものでもない。 なお,原告会社は,被告作成ソフトを使用して完成させた県警納入ソフトが結局使い物にならなかったため,ドーンにおいて別途作成したソフトウェアを使用している旨主張し,そのため報酬を返還したとするが,原告会社の指摘するドーンへの支払は未だ改修を行っていた時期にされたものであることからして原告会社の主張する趣旨のものか明らかではなく,他にこれを裏付ける証拠は何ら提出されておらず,むしろ,弁護士法23条の2第2項に基づく照会に対し,納入を受けた宮城県警察本部交通部交通規制課長は,当初の機器装置納入後に,納入された機器装置が使用不能となり新たなものが提供されたことはない旨の回答をし(乙11,乙12),元請けであるBSNアイネットにおいてもそもそも当初のプログラムを含む機器装置が使用不能となった事実もない旨の回答をしている(乙14,乙15,乙18)ことからすれば,被告作成ソフトが有用性を欠くものではないことは明らかである。 ウしたがって,被告作成ソフトは,営業秘密であるといえる。 (3) 争点2-2(営業秘密の不正取得行為,不正取得した営業秘密の使用行為の有無)について原告会社は,被告会社に貸与した原告会社のパソコンにあった被告作成ソフトを使用したものであるが,まず被告作成ソフトが営業 (営業秘密の不正取得行為,不正取得した営業秘密の使用行為の有無)について原告会社は,被告会社に貸与した原告会社のパソコンにあった被告作成ソフトを使用したものであるが,まず被告作成ソフトが営業秘密に当たることは,上記(2)で検討したとおり,そのソフトウェア自体の性質上,原告会社に明らかなことであったと認められる。 そして,そうであれば,原告会社と被告会社との間で業務委託契約が締結に至らなかった以上,被告会社から承諾を得た等の事情もない状況下で,原告会社のパソ- 19 - コンにあった被告作成ソフトを原告会社が無断で取得し使用する権限があるはずもなく,したがって,原告会社が被告会社に無断で営業秘密であることを容易に認識できる被告作成ソフトを取得して使用した行為は,不正競争防止法2条1項4号の「不正の手段により営業秘密を取得する行為」に当たるといえる(なお,原告会社は,被告作成ソフトを基にして原告会社がドーンに納入したソフトウェアを作成したことは認めているのであるから,不正取得した営業秘密を使用したことは明らかである。)。 (4) 争点2-3(被告会社の損害額)についてア被告会社は,原告会社がドーンに被告作成ソフトのソースコードを開示したことにより,被告会社が被告作成ソフトを販売する際には販売価格の設定において原告会社及びドーンのものより高額になるから,実質的に販売が不可能となったとして,被告作成ソフトの開発費用全額が無駄となり,その相当額8413万1250円の損害を受けたように主張する。 証拠(乙19,乙20の1ないし4,乙24,乙25の1ないし25)によれば,被告会社が被告作成ソフトの開発に費やした費用は,その主張するとおり8000万円を超えるものであると認められ,また被告会社が,被告作成ソフトを他に販売し 4,乙24,乙25の1ないし25)によれば,被告会社が被告作成ソフトの開発に費やした費用は,その主張するとおり8000万円を超えるものであると認められ,また被告会社が,被告作成ソフトを他に販売していないことも事実であるが,交通規制情報の管理システムとして使用される被告作成ソフトの販売先が,県警等に限られているとはいえ,被告会社がこれを宮城県警以外の県警に別途販売することは法的にも実際にも可能なことのはずである。 そうであるのに,被告会社による被告作成ソフトの販売が全くなされていないのは,被告P2自身が,原告会社と関係なく被告作成ソフトを販売することは事実上無理だと判断したからにすぎないものと認められるから(被告P2),これでは被告作成ソフトが販売できなくなったとはいえないし,さらにこのことをもって原告会社の不正競争と因果関係がある損害として被告作成ソフトの開発費用相当額の損害が生じたとはいえないことは明らかである。 イしかし,本件においては,原告会社の被告作成ソフトの無断使用により宮城- 20 - 県警との関係での取引が不可能となったことは明らかであり,したがってその限度で販売先の一つが奪われて被告作成ソフトの価値がその限度で棄損されたといえるから,原告会社には,それにより生じた損害があるものということができる。 そこで,そのような観点で損害額について検討してみると,●(省略)●②上記金額は,宮城県警で納入実績を作って他で販売先を増やしていくための赤字見込みの金額であったこと,③県警納入ソフトは,被告作成ソフトを基礎とし,原告会社において改修を加えたものであるが,その改修期間は約2か月強にすぎないから,県警納入ソフトの大部分は被告作成ソフトがそのまま使われていると推認されること,④最終的に宮城県警で問題なく使用されるようになっ いて改修を加えたものであるが,その改修期間は約2か月強にすぎないから,県警納入ソフトの大部分は被告作成ソフトがそのまま使われていると推認されること,④最終的に宮城県警で問題なく使用されるようになったソフトウェアもなお被告作成ソフトの一部を改修したものにすぎないことなど,これら事実関係からすると,被告会社が,被告作成ソフトを原告会社によって無断で取得,使用されたことによって受けた損害の額は,●(省略)●その損害と認めるのが相当である。 ウしたがって,被告会社は,原告会社の不正競争により,500万円の損害を受けたものと認められる。 3 相殺についての判断(1) 被告会社は,原告会社に対する上記不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求権を自働債権とし,原告会社が被告会社に対して有する840万円の貸金返還請求権を受働債権として相殺の意思表示をしているところ,上記2(1)イ(ウ)によれば,原告会社が被告作成ソフトを不正に取得したのは平成24年10月末日と認められるから,同日が自働債権である不法行為に基づく損害賠償債権の弁済期ということになり,他方,受働債権である840万円の貸金返還請求権は期限の定めのない債権であるから,平成24年10月末日が相殺適状時となり,対当額で相殺することにより,被告会社は500万円の限度でその債務を免れることになる。 (2) したがって,原告会社の被告会社に対する貸付⑥の貸付けに基づく請求は,相殺後の340万円及びこれに対する平成25年11月21日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で- 21 - 理由があり,その余は理由がない。 4 以上のとおりであるから,原告P1の被告P2に対する貸金返還請求は認容し,原告会社の被告会社に対する貸金返還請求は, の支払を求める限度で- 21 - 理由があり,その余は理由がない。 4 以上のとおりであるから,原告P1の被告P2に対する貸金返還請求は認容し,原告会社の被告会社に対する貸金返還請求は,上記3(2)の理由がある限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項を適用して主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官田原美奈子 裁判官林啓治郎
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