昭和40(う)1894 業務上過失致死同傷害被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和41年3月16日 大阪高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。          理    由  本件控訴の趣意は、弁護人和島岩吉、同岡田忠典が連名で作成した控訴趣意書に 記載してあるとおりであるから、これを引用する。

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判決文本文5,600 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人和島岩吉、同岡田忠典が連名で作成した控訴趣意書に記載してあるとおりであるから、これを引用する。 控訴趣意第一点について。 論旨は、原審における訴訟手続の法令違反を主張し、原審第三九回公判における弁論再開手続は刑事訴訟法三一三条に違反するというのである。 よつて、本件記録を調査するに、原裁判所が、昭和三九年一〇月九日第三七回公判において弁論を終結し、判決宣告期日を同年一二月一八日午前一〇時と指定告知したが、同日第三八回公判において職権により右期日を昭和四〇年二月二〇日午前一〇時に変更し、更に弁護人の請求により同期日を同年三月二日午後一時に変更したところ、右三月二日第三九回公判において職権により弁論を再開したうえ、検察官の口頭による予備的訴因の追加を許可し、結局原裁判所が被告人に対し右予備的訴因について有罪の判決をしたことは、所論のとおりである。しかし、訴因の追加、撤回又は変更の時期については刑事訴訟法上別段の制限がないから、一旦弁論を終結した後でも、再開のうえ訴因の追加、撤回又は変更を許すことはなんら違法ではない。所論は、訴因の追加、変更等のために弁論を再開するのは違法であるというが、元来、法が弁論の再開を認めたのは、一旦弁論を終結した以上、必ず終結当時の訴因、証拠関係に基づき判断しなければならないとすることが、審理を硬直にし、ひいては実体的真実発見の理想にもとる結果を招来する場合があることにかんがみ、審理を弁論終結前の状態にもどし、訴因の追加、変更、新証拠の取調を可能にして審理を補充させる機会を与えるためであると考えられるから、原裁判所が、終結した弁論を再開して予備的訴因の追加を許したからといつて、その再開手続を違法とする理由はな 加、変更、新証拠の取調を可能にして審理を補充させる機会を与えるためであると考えられるから、原裁判所が、終結した弁論を再開して予備的訴因の追加を許したからといつて、その再開手続を違法とする理由はない。また、所論によると、右弁論再開手続は、原裁判所が自ら訴因の追加、変更の釈明ないし勧告をするためにとられたものであるから、現行刑事訴訟手続の当事者主義的構造に照らし明らかに不当であるというのであるが、現行刑事訴訟法は、訴訟における正義と公平とを維持しながら当事者主義の背後に職権主義を留保し、前者との均衡を失わないようにして刑事訴訟の理想とする実体的真実発見を意図しているものと理解すべきであり、これを本件についてみるに、原裁判所は、審理の経過にかんがみ適当と認めて弁論を再開し、検察官に予備的訴因の追加を許し、その点について、被告人並びに弁護人に意見陳述の機会を与え、かつ、弁護人に被告人に対する質問を許し、なお、弁護人の請求により鑑定を採用しているのであるから、原裁判所の措置は、訴訟における正義公平と実体的真実発見の要請との均衡を失つたものとはいえない。従つて、所論のいうように、弁論再開手続が、原裁判所において検察官に訴因の追加、変更の釈明又は勧告をするためとられたものであるとしても、これを不当とすべきいわれは少しもない。原審の訴訟手続に所論のような違法の点はなく、論旨は理由がない。 控訴趣意第二点について。 所論は、要するに、原判決摘示の注意義務は、電車運転士の注意義務の内容を不条理に拡張し、不能と危険とをしいるものでとうてい是認できないのであつて、原判決には、この点において理由のくいちがいがあるか法令の解釈適用を誤つた違法があるというのである。 所論にかんがみ、本件記録を調査し、原審において取り調べたすべての証拠を検討するに、原判決の挙 原判決には、この点において理由のくいちがいがあるか法令の解釈適用を誤つた違法があるというのである。 所論にかんがみ、本件記録を調査し、原審において取り調べたすべての証拠を検討するに、原判決の挙示する各証拠を総合すると、原判決認定のように、被告人は、昭和三二年九月一九日午後一〇時四三分、A電鉄株式会社京都線淡路駅発梅田行電車を運転して、右淡路駅を出発し、崇禅寺駅を経て南方駅に到着し、午後一〇時四七分ごろ同駅を発車したのであるが、右発車直前に同駅駅掌Bから「十三駅裏手のほうに火事があるから注意するように」と警告を受け、自らも停車中の右電車運転席から同線十三駅に向う一直線上の線路やや左側の方向に夜空が明るくなつているのを認めたが、その当時、大阪市a区b町c丁目d番地C加工業D方から発生した火災により、同人方およびこれに隣接する民家約五戸(合計約八〇坪)が燃えている最中であつて、右D方は同電鉄京都線下り軌道から南に約三二・七メートルを隔てているに過ぎず、更に右火災現場東北方付近の同町e丁目f番地先には右京都線第一高槻踏切があり、火元のD方を基準にすると、同人方北側の東西に通ずる道路を東へ約三四・五メートルの地点において、右道路と交差する南方に通ずる道路を北に約三〇メートルで右第一高槻踏切の南側に達するか、右踏切は第二種踏切で警報器の設置はなく、踏切警手の勤務は午前七時から午後七時までとなつており、右火災当時踏切警手は不在であつた。一方、右電車軌道は、南方駅からほぼ西方に約八五〇メートルの地点付近まで一直線であり、本件火災現場付近にある前記第一高槻踏切は右直線軌道上南方駅の西方約六五八メートルの地点にあり、特に進路前方の見通しをさえぎるものはなかつたけれども、被告人の運転席と火災現場との見通し線上に家屋があるため、直接その火災を認めることが 踏切は右直線軌道上南方駅の西方約六五八メートルの地点にあり、特に進路前方の見通しをさえぎるものはなかつたけれども、被告人の運転席と火災現場との見通し線上に家屋があるため、直接その火災を認めることができず、ただ進路左前方に夜空が赤く染まり、赤黒い煙が立ちのぼるのが見えただけで、右火災の場所を正確に認識することが困難な状況にあり、被告人は、右火災が実際の現場の西方にある十三駅付近であると誤つて判断していたことが認められる。所論は、このような状況のもとで、電車運転士としては、右火災現場が、あるいは自己の推測する地点よりもずつと近く、従つて右軌道に近接する沿線地域である前記火災現場付近に存在し、その結果右地域の近くの警手不在の右軌道上の踏切が火災のため諸車、歩行者等で混雑し、踏切外の軌道内にもいつ消防士、警察官あるいは一般民衆等が立ち入るかも知れないことが予測されると指摘した原判決の判断は不合理であると主張する。しかし、一般に夜間に発生した火災の位置を正確に認識することの困難であることは経験則上明らかであるのみならず、本件において、被告人は、前記認定のように、夜空が赤く染まり赤黒い煙が立ちのぼるのを見て、間接に火災現場の位置を判断したのに過ぎないのであるから、右の判断はあくまで主観的な推測の範囲を出でず、全面的に信頼をおき難いものであることは、通常人の容易に理解できるところであると考えられ、加えるに、前記認定のとおり、南方駅から第一高槻踏切を経て同駅西方約八五〇メートルの地点付近までは一直線であつて見通しをさえぎるものはないうえ、本件火災が電車軌道から約三二・七メートルぐらいしか離れていない軌道沿線に近接した場所に発生したもので、殊に、原審第一一回公判調書中証人Eの供述部分により、同人が本件事故直前第一高槻踏切から撮影したと認められる火災現 ら約三二・七メートルぐらいしか離れていない軌道沿線に近接した場所に発生したもので、殊に、原審第一一回公判調書中証人Eの供述部分により、同人が本件事故直前第一高槻踏切から撮影したと認められる火災現場の写真(証第一号の一)によれば、本件事故直前の火勢にはし烈なものがあり、燃え上る火災のため第一高槻踏切付近はかなり明るくなつている状況が認められることをも考慮すると、被告人に、火災現場が自己の推測よりはるかに近い軌道沿線であるかも知れない旨の原判決指摘のような予測可能性を期待するこ<要旨>とは、決して被告人のような電車運転士に難きをしいる不合理なものとは考えられない。そして、右のように</要旨>電車軌道沿線付近に火災があると予測される場合には、原判決指摘のとおり、消防署から消防士が消防自動車に乗つて多数現場に急行して直ちに消火活動にあたり、警察署からはパトロールカー等によつて多数の警察官が現場に来て公共の危険防止、人の身体財産等を保護する措置をとり、一方被災者は家財道具の搬出や避難等で火災現場付近を右往左往し、近隣の居住者や付近を通りあわせた者等は火災の成行を気づかいながら、火災現場付近でこれを見守り、あるいはいわゆる野次馬が多数集りこれらの者が付近の踏切や電車軌道敷内を往来したり同所に立ち入つたりし、いずれも火災という緊急事態に心を奪われ、踏切、軌道敷内の往来、立入による電車との衝突の危険に対処する注意力が平素よりも薄れている旨予測しうべきことは、条理上当然であるといわなければならない。もとより、通常の場合専用軌道を進行する高速度交通機関である電車に踏切の優先通行権があり、踏切を横断しようとする車両、歩行者等は、衝突のおそれのない時期を選択して踏切に進入することを要し、衝突の危険があるときは電車が踏切を通過するのを待つて進入すべく、道路交 に踏切の優先通行権があり、踏切を横断しようとする車両、歩行者等は、衝突のおそれのない時期を選択して踏切に進入することを要し、衝突の危険があるときは電車が踏切を通過するのを待つて進入すべく、道路交通法三三条一項は、踏切通過の車両等について特に踏切直前の一旦停止及び安全確認義務を課しているのであるから、電車運転者は、踏切を横断するものにおいてかような危険防止のための必要な注意を払うものと期待して進行することが許され、電車が通過しようとするにもかかわらず踏切に進入するというような万一の事態を予測して、危険防止のためあらかじめ減速、急停車の措置をとるべき義務のないことはいうまでもないが、通行人等が電車の接近を意に介せず踏切を横断しようとし又は踏切や軌道敷内に立ち入るおそれのあることが予測される特別の事情がある場合には、その者等に過失があると否とにかかわらず、電車運転者において衝突を避けるため、減速、急停車等臨機応変の措置をとるべき安全運転の義務があるものといわなければならない。本件は、まさに、前記認定のとおり、通行人等が電車の進行に注意を払わないで踏切を横断しようとし、又は、踏切や軌道敷内に立ち入るおそれのあることが予測される特別の事情がある場合にあたるから、電車運転者たる被告人に、危険を認めたときはいつでも急停車をして事故を未然に防止できるよう徐行して進行すべき義務を課してもなんら不当であるということはできない。(被告人自身も、原審第三六回公判において「あれくらい近くで火事があつたことがわかつておればもつと徐行(二〇ないし二五キロメートル毎時)するつもりであつた」旨供述している(一〇八一丁裏)。)これを要するに、本件事故は、火災現場に至る道路が狭いため本件の被害消防車が先行の消防車二台に続き右踏切下り線(梅田方面)軌道上に停車して消防活 るつもりであつた」旨供述している(一〇八一丁裏)。)これを要するに、本件事故は、火災現場に至る道路が狭いため本件の被害消防車が先行の消防車二台に続き右踏切下り線(梅田方面)軌道上に停車して消防活動を行い、上り線(京都方面)電車はすでに右踏切西方で停車していた際に被告人が火災現場を実際よりはるかに遠方であると誤信し、前記のような予測可能の事態に注意を払わず、前記安全運転の義務を怠り通常の時速六三キロを約五五キロに減じたのみで漫然進行し、懐中電燈の振られているのを認めて急停車の処置をとつた時にはすでに遅く、右踏切の下り線軌道上の消防車に自己の運転する電車を衝突させ、約二〇メートルの間消防車を押して行き、消防士三名を死亡させ、消防士二名と警備中の警察官一名に重傷を負わせたのであつて、被告人は、本件業務上過失致死傷罪の刑事責任を免れることはできない。所論によると、本件事故は、電車運行時間中の踏切内に、事前に危険予防の措置をとらないで消防車を乗り入れたことにその原因があると主張する。なるほど消防車側において、いかに消火作業のため緊急を要する場合であつたにしても、踏切内に消防車を進入させるにあたつて、同所を通過する電車との衝突を避けるため適当の措置を講じなかつたことに過失があることは否定できないが、そうであるからといつて被告人の過失責任が阻却される理由はない。このことは、本件事故による被害者が消防車に乗つて本件踏切に立ち入つた消防士ばかりでなく、十三警察署から本件火災現場に急行するよう指示を受け、同署g町派出所から急行し右踏切にはいつた警察官Fをも含んでいることに徴しても明らかである。以上のとおり注意義務の内容に関する原判決の判断は正当であつて、原判決には所論のような理由のくいちがいないし法令の解釈適用の誤は認められない。この点の論旨も理由がな いることに徴しても明らかである。以上のとおり注意義務の内容に関する原判決の判断は正当であつて、原判決には所論のような理由のくいちがいないし法令の解釈適用の誤は認められない。この点の論旨も理由がない。 よつて、刑事訴訟法三九六条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官山崎薫裁判官竹沢喜代治裁判官浅野芳朗)

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