平成12(わ)865 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律違反等被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年3月3日 水戸地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-6239.txt

判決文本文43,279 文字)

主文 1 被告人会社Aを罰金100万円に処する。 2 被告人Bを禁錮3年及び罰金50万円に処する。同被告人においてその罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。同被告人に対し,この裁判が確定した日から5年間その禁錮刑の執行を猶予する。 3 被告人Cを禁錮3年に処する。同被告人に対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 4 被告人Dを禁錮2年に処する。同被告人に対し,この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 5 被告人Eを禁錮2年に処する。同被告人に対し,この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 6 被告人Fを禁錮2年6月に処する。同被告人に対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 7 被告人Gを禁錮2年に処する。同被告人に対し,この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 8 訴訟費用は,その7分の1ずつを各被告人の負担とする。 理由 (事故に至る経緯)第1 各被告人の履歴・業務等(なお,以下における役職等の記載は,特段の断りのない限り,被告人会社A東海事業所におけるものを意味する。) 1 被告人会社Aについて被告人会社Aは,東京都港区<略>に本店を置き,原子燃料の製造及び売買並びにウラン化合物の精製及び売買等を目的とする株式 A東海事業所におけるものを意味する。) 1 被告人会社Aについて被告人会社Aは,東京都港区<略>に本店を置き,原子燃料の製造及び売買並びにウラン化合物の精製及び売買等を目的とする株式会社であるが,もともとは,甲株式会社の核燃料加工事業部門であったものが,昭和54年10月1日に同社の子会社として独立して設立されたもので(当時の商号はA’。その後,2度の商号変更を経て,平成10年8月1日から現商号となる。),昭和55年9月17日に内閣総理大臣の許可を受けて核燃料物質の加工事業を始めた核燃料物質の加工事業者である。 被告人会社Aには,代表取締役社長が常駐して主に営業や許認可申請手続等の業務を行う東京事務所のほかに,茨城県那珂郡東海村<略>に東海事業所(「東海工場」等と称された時期もあるが,以下,時期にかかわらず「東海事業所」という。)があり(ちなみに,核燃料は,まずウラン鉱石から製錬された粗製錬産物(イエローケーキ)を六ふっ化ウランに転換して濃縮し,次に濃縮された六ふっ化ウランを核燃料に適した二酸化ウラン粉末に再転換し,さらに,燃料の形に成型加工するなどして製造するのであるが,東海事業所はこのうちの再転換に当たる工程に関連した施設である。),東海事業所には,核燃料加工施設として,第1加工施設棟,第2加工施設棟及び転換試験棟があるが,第1,第2加工施設棟は,六ふっ化ウラン(濃縮度5パーセント以下のもの)等から酸化ウラン粉末を製造する施設であり,転換試験棟は六ふっ化ウラン(濃縮度20パーセント未満のもの)等から酸化ウラン粉末又は硝酸ウラニル溶液を製造する施設である。 平成11年当時の東海事業所の組織として,東海事業所長の下に技術部,製造部及び総務部があり,さらに,技術部には製品の品質保証等を担当する品質保証グループ,一般安全 溶液を製造する施設である。 平成11年当時の東海事業所の組織として,東海事業所長の下に技術部,製造部及び総務部があり,さらに,技術部には製品の品質保証等を担当する品質保証グループ,一般安全衛生管理及び臨界管理等を担当する安全管理グループ,工場施設の製作・保全等を担当する工務グループ並びに技術管理や許認可申請業務等を担当する技術グループがあり,また,製造部には生産・工程計画の策定・管理や原料・製品の輸送等を担当する計画グループ及びウランの加工等を担当する製造グループがあり,各グループにはグループ長が置かれていた(ただし,安全管理グループは対外的には品質保証グループを兼ねており,安全管理グループ長が品質保証グループ長を兼務していた。)。製造グループの下には,第1,第2加工施設棟におけるウランの加工等に従事する4つの作業班のほかに,ボイラーやコンプレッサーの運転等を担当するユーティリティーと,排水処理,酸粉化作業,ウラン輸送用容器である30Bシリンダーの点検補助,固体廃棄物処理,転換試験棟におけるウランの加工等を担当するスペシャルクルー等が置かれていたが,ウランの加工等については同グループの職場長が統括管理していた。 2 被告人Bについて被告人Bは,昭和46年3月,××大学大学院工学研究科修士課程(原子核工学専攻)を修了し,同年4月,甲株式会社に入社したが,被告人会社Aの設立に伴い,昭和55年12月に被告人会社Aに出向し,被告人会社Aの許認可申請等に関わる業務に従事した。その後の昭和58年7月に安全管理室長兼技術課長,昭和60年8月に品質保証室長(平成2年7月以降は品質保証部長),平成3年8月に製造部長兼製造二課長に就任してそれらを歴任した後,平成6年7月に技術部長兼製造部長に就任した(同年10月以降は技術部長専任)。さらに, 品質保証室長(平成2年7月以降は品質保証部長),平成3年8月に製造部長兼製造二課長に就任してそれらを歴任した後,平成6年7月に技術部長兼製造部長に就任した(同年10月以降は技術部長専任)。さらに,平成7年6月に取締役技術部長,平成9年6月に常務取締役技術部長,同年8月に常務取締役技術部長兼技術グループ長に就任してそれらを歴任した後,平成11年6月29日に常務取締役東海事業所長兼技術部長に就任し,東海事業所における核燃料物質の加工等の業務全般を統括するとともに,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。なお,単に原子炉等規制法という場合は,各当時のそれを指す。)に基づく保安規定(以下「保安規定」という。)によって定められた東海事業所の安全主管者として,核燃料物質の加工等に関する保安を総括する業務に従事していた。また,東海事業所長就任と同時に総括安全管理者に選任され,東海事業所の安全管理及び衛生管理について,各部グループ長のほか労働安全衛生法に基づく安全管理者及び衛生管理者を指揮する業務に従事していた。 なお,被告人Bは,昭和49年に核燃料取扱主任者の資格を取得し,昭和50年には放射線取扱主任者第1種の資格を取得しているほか,平成元年6月1日から平成11年7月1日までの間,原子炉等規制法に基づく核燃料取扱主任者として,東海事業所における核燃料物質の取扱いに関して保安の監督を行う業務に従事していた。 3 被告人Cについて被告人Cは,昭和33年3月,○○工業高等学校工業化学科を卒業し,同年4月,甲株式会社に入社し,昭和48年2月に同社の核燃料事業部東海工場職場長に就任したが,被告人会社Aの設立に伴い,昭和55年12月に製造課長に就任した。その後の昭和58年7月に製造部製造一課長,昭和62年 株式会社に入社し,昭和48年2月に同社の核燃料事業部東海工場職場長に就任したが,被告人会社Aの設立に伴い,昭和55年12月に製造課長に就任した。その後の昭和58年7月に製造部製造一課長,昭和62年8月に安全管理室長,平成3年5月に製造副部長兼製造一課長,平成6年10月に製造部長兼製造二課長,平成8年11月に製造部長兼製造一課長兼製造二課長,平成9年6月に取締役製造部長兼製造一課長兼製造二課長に就任してそれらを歴任した後,同年8月に取締役製造部長兼製造グループ長に就任した。また,平成6年10月1日からは保安規定によって定められた製造管理統括者として,平成9年1月15日からは労働安全衛生法に基づく安全管理者として,東海事業所における核燃料物質の加工等の計画及びその実施について,同加工等の従事者に対する指導及び監督を行うとともに,同加工等に伴う危険を防止し,安全を確保する業務に従事していた。 4 被告人Dについて被告人Dは,昭和55年3月,△△大学工学部原子工学科を卒業し,同年4月,甲株式会社に入社したが,その後,被告人会社Aに移り,昭和61年4月に第2加工施設棟職場長,平成2年5月に技術部主任,平成3年5月に技術部技術課担当課長に就任してそれらを歴任した後,平成6年10月に製造部製造一課長に就任し,平成8年11月までの間,東海事業所における核燃料物質の加工等の計画及びその実施について,同加工等の従事者に対する指導及び監督を行うとともに,同加工等に伴う危険を防止して安全を確保する業務に従事した。その後,輸送業務室長を経て,平成9年8月1日に製造部計画グループ長に就任し,核燃料物質の加工工程を管理する業務に従事し,平成11年7月1日からは,原子炉等規制法に基づく核燃料取扱主任者として,東海事業所における核燃料物質の取扱いに関して保安の監 製造部計画グループ長に就任し,核燃料物質の加工工程を管理する業務に従事し,平成11年7月1日からは,原子炉等規制法に基づく核燃料取扱主任者として,東海事業所における核燃料物質の取扱いに関して保安の監督を行う業務に従事していた。 なお,被告人Dは,甲株式会社に入社後,放射線取扱主任者第1種の資格を取得しているほか,平成2年5月には核燃料取扱主任者の資格を取得している。 5 被告人Eについて被告人Eは,昭和45年3月,□□高等学校普通科を卒業し,同月,甲株式会社に入社し,昭和48年以降は当時の同社中央研究所及び東海工場の操業に従事し,被告人会社A設立後は東海事業所の第1,第2加工施設棟における操業に従事していたが,平成9年8月1日に製造部製造グループ職場長に就任し,平成10年4月からはスペシャルクルーの業務の監督を兼務し,ウランの加工作業等に従事する作業員を掌握して東海事業所における核燃料物質の加工等の作業を指揮及び監督する業務に従事していた。 6 被告人Fについて被告人Fは,平成5年3月,◇◇大学大学院工学研究科修士課程(応用原子核工学専攻)を修了し,同年4月,甲株式会社に入社し,同年5月から被告人会社Aにおいて品質保証部副主任として勤務を始め,平成7年4月に同部主任となり,平成8年7月ころから輸送業務室主任を兼務した後,平成9年8月1日に製造部計画グループ主任に就任し,核燃料物質の加工等について作業指示書を作成するなどして加工工程を管理するとともに,製品の品質を管理する業務に従事していた。 なお,被告人Fは,平成6年11月に放射線取扱主任者第1種の資格を取得しているほか,平成7年5月には核燃料取扱主任者の資格を取得している。 7 被告人Gについて被告人Gは,昭和38年3月, 被告人Fは,平成6年11月に放射線取扱主任者第1種の資格を取得しているほか,平成7年5月には核燃料取扱主任者の資格を取得している。 7 被告人Gについて被告人Gは,昭和38年3月,◎◎高等学校林業科を卒業後,合板製造会社に勤務していたが,昭和41年に甲株式会社に入社し,同社佐々連鉱業所において測量関係の仕事に従事し,昭和51年8月から同社核燃料事業部東海工場の製造課に勤務するようになり,後の第1加工施設棟において,六ふっ化ウランや八酸化三ウランを二酸化ウラン粉末に加工する作業に従事し,昭和58年ころからは製造課のユーティリティーに配属され,製造現場にウラン以外の副資材を供給する業務に従事した。平成2年に第1加工施設棟のリーダー,平成8年に第2加工施設棟のリーダーに就任してそれらを歴任した後,平成9年8月からはスペシャルクルーに配属され,平成10年8月にスペシャルクルー副長に就任し,同班員を指揮して転換試験棟における核燃料物質の加工等を行わせる業務に従事していた。 第2 核燃料加工事業者に課される義務等 1 臨界・核的制限ウランの原子核に中性子が衝突すると,同原子核が分裂し,そこから新たに中性子が放出されるが,その中性子が別のウランの原子核に衝突して核分裂を起こし,更に新たな中性子が放出され,別の核分裂を起こすというように,ウランのような核分裂物質を含む体系の中で核分裂が連鎖的持続的に発生する状態を「臨界」という。臨界により大量の熱エネルギーが放出されるほか,人体に有害な中性子線等の放射線が多量に放出される。 臨界が発生するためには,当該ウランにおいて,ウランの同位体中ウラン235の割合(濃縮度)が一定以上であること,当該物質中のウランの割合(ウラン濃度)が一定以上であること,ウランを収容する容器が一定以上の大 発生するためには,当該ウランにおいて,ウランの同位体中ウラン235の割合(濃縮度)が一定以上であること,当該物質中のウランの割合(ウラン濃度)が一定以上であること,ウランを収容する容器が一定以上の大きさを有するものであること等の条件がそろわなければならないが,他方で,この条件を満たさないようにすることによって臨界の発生を防止することもできる。このように臨界の発生を防止するための各種制限を「核的制限」といい,その中には当該物質中のウラン濃度を一定以下にする「濃度制限」,ウランを収容する容器の形状等を一定以下にする「形状制限」,作業1回当たりのウラン取扱量(バッチ)の質量を一定以下にする「質量制限」等がある。 2 核燃料加工事業許可制度等ウランを取り扱う施設において,臨界により人体に有害な放射線が多量に放出されるような事故(以下「臨界事故」という。)が発生しないようにするために,原子炉等規制法に種々の規定が置かれているが,被告人会社Aが加工事業許可を取得した昭和55年当時の同法によれば,核燃料加工事業を行おうとする者は,加工施設の位置,構造及び設備並びに加工の方法等を記載した許可申請書を内閣総理大臣に提出し,その内容については科学技術庁(平成13年1月の省庁再編前のもの)において審査がなされ,その後,更に同庁から諮問された原子力安全委員会の核燃料安全専門審査会における調査審議がなされた上でなければ,内閣総理大臣の加工事業許可を取得することはできないとされていたばかりか,事業開始後においても,加工施設の位置,構造及び設備並びに加工の方法について変更する場合には,改めて内閣総理大臣の加工事業変更許可を得なければならないとされていた(加工事業許可を得た者を「加工事業者」という。)。 さらに,加工施設に関する設計及び工事の方法についても内閣総理大 更する場合には,改めて内閣総理大臣の加工事業変更許可を得なければならないとされていた(加工事業許可を得た者を「加工事業者」という。)。 さらに,加工施設に関する設計及び工事の方法についても内閣総理大臣の認可が必要であり,施設検査を経た後でなければ,加工施設として使用することはできないとされていた。 ところで,加工事業許可申請に対する審査は,原子力安全委員会決定である「核燃料施設安全審査基本指針」等に基づいて行われるところ,これらは,加工事業者に対して臨界事故防止のための各種核的制限を講じること(以下「臨界管理」という。)を要請しているほか,原子炉等規制法に基づく核燃料物質の加工の事業に関する規則(以下「加工規則」という。)は,その7条の5において,加工事業者がする核燃料物質の加工の操作に関して,「いかなる場合においても,核燃料物質が臨界に達するおそれがないように行うこと。」,「加工設備の操作に必要な知識を有する者に行わせること。」と規定していることから,加工事業者は臨界管理方法を遵守した加工作業を行うとともに,臨界管理等について作業員等を教育することが要請されている。また,原子炉等規制法22条によれば,加工事業者は内閣総理大臣の認可を受けた保安規定を定めなければならず,これに基づいた操業を行うことが義務づけられるとともに,そのために必要な指示・監督をすることも義務づけられ,さらに,加工規則8条によって,放射線業務従事者に対する保安教育に関する事項についても保安規定を定めなければならないとされている。なお,原子炉等規制法22条の2は,核燃料加工事業者に対して,核燃料取扱主任者の免状を有する者の中から核燃料取扱主任者を選任するとともに,選任した核燃料取扱主任者を内閣総理大臣に報告することを義務づけている。同法によれば,核燃料取扱主任者は,核燃 者に対して,核燃料取扱主任者の免状を有する者の中から核燃料取扱主任者を選任するとともに,選任した核燃料取扱主任者を内閣総理大臣に報告することを義務づけている。同法によれば,核燃料取扱主任者は,核燃料物質の取扱いに関して保安の監督を行うこととされるとともに,核燃料物質の取扱いに従事する者は核燃料取扱主任者がその取扱いに関して保安のためにする指示に従わなければならないとされている。 第3 転換試験棟の加工事業許可の内容 1 硝酸ウラニル溶液製造作業の内容前述のとおり,被告人会社Aは,昭和55年9月に内閣総理大臣の許可を受けて核燃料物質の加工事業を始めたが,転換試験棟については原子炉等規制法上の核燃料物質の使用許可を得た上で主に研究用の施設として使用していた。 昭和58年,当時の動力炉・核燃料開発事業団(後の「核燃料サイクル開発機構」。以下,時期を問わず「サイクル機構」という。)から高速増殖実験炉常陽(以下「常陽」という。)用の濃縮度約20パーセントの二酸化ウラン粉末及び硝酸ウラニル溶液の製造依頼を受けたことから,これに応えるため,昭和59年6月20日,転換試験棟において濃縮度20パーセント未満のウランの加工作業を行うことについて加工事業変更許可を受けた。 前記加工事業(変更)許可を受けた工程のうち,硝酸ウラニル溶液を製造するための加工作業(以下「溶液製造作業」という。)の工程については,その許可内容が明確に規定されていないが,加工事業許可において明示されていた二酸化ウラン粉末の加工工程からすると,その原則的な工程の概要は以下のとおりと考えられる。 すなわち,硝酸ウラニル溶液の原料である八酸化三ウラン粉末から不純物を除去して精製するため,溶解塔において八酸化三ウラン粉末に硝酸と純水を加えて溶解し(溶解工程),その溶液を抽出 えられる。 すなわち,硝酸ウラニル溶液の原料である八酸化三ウラン粉末から不純物を除去して精製するため,溶解塔において八酸化三ウラン粉末に硝酸と純水を加えて溶解し(溶解工程),その溶液を抽出塔等において有機溶媒と混合して不純物を吸着させた後,同溶媒を抽出して不純物を取り除き(溶媒抽出工程),この抽出液を貯塔内に一時貯留した後,沈殿槽においてアンモニアガスを加えて重ウラン酸アンモニウム(ADU)の形で沈殿させ(沈殿工程),これを仮焼炉において加熱する(仮焼工程)ことによって八酸化三ウラン粉末が精製され(以下,ここまでの工程を「第1工程」という。),さらに,第1工程で精製された八酸化三ウラン粉末に硝酸と純水を加えて溶解塔で再溶解させ(再溶解工程),これを混合して均一化する(混合均一化工程。また,第1工程の後からここまでの工程を「第2工程」という。)というものであった。 2 転換試験棟における核的制限の内容転換試験棟における上記各設備の核的制限として,溶解塔,抽出塔等については,その直径を17.5センチメートル以下とする形状制限がなされていたが,沈殿槽については,形状制限がなされておらず,濃縮度が16パーセントないし20パーセントのウランを取り扱う場合にその1回当たりのウランの取扱量(1バッチ)を2.4キログラムウラン以下とする質量制限のみがなされていたところ,質量制限をしたのみでは人的過誤による臨界事故発生の危険性が高いことから,沈殿槽に1バッチを超える量のウランの流入を防止するための措置として,前記質量制限に加えて,第1工程中の溶解から沈殿に至る一連の工程間に投入されるウランの総量を常に1バッチ以下にすべきこと(以下「1バッチ縛り」という。)とされた。 第4 転換試験棟における加工作業の変遷 1 1バッチ縛りについて 沈殿に至る一連の工程間に投入されるウランの総量を常に1バッチ以下にすべきこと(以下「1バッチ縛り」という。)とされた。 第4 転換試験棟における加工作業の変遷 1 1バッチ縛りについて上記のように,被告人会社Aは,昭和59年6月に転換試験棟に関し加工事業変更許可を受けたが,許可のとおりに1バッチ縛りを遵守すると,前の沈殿工程を終えるまでは,次のバッチ分のウランを溶解工程に投入できないことから,効率が非常に悪い上,配管等にウランが残存してしまうことから,必ずしも1バッチ分のウランを得ることができず,もし,すべての残存ウランを水等によって押し出すとなると,品質にも影響を及ぼす事態になるなど種々の問題が生じることが予想されたため,昭和60年8月から開始され,前記許可取得後初めて常陽用の二酸化ウラン粉末を製造することとなった常陽第3次操業においては,1バッチ縛りを遵守することなく複数バッチの連続操業を行い,その後の転換試験棟における加工作業においても複数バッチの連続操業を行っていた。 2 混合均一化工程について被告人会社Aは,昭和61年から開始された常陽第4次操業に際して,サイクル機構から初めて常陽用の硝酸ウラニル溶液の発注を受けたが,それまで転換試験棟では硝酸ウラニル溶液を製品として製造したことがなかったことから,その加工工程について検討したところ,硝酸ウラニル溶液の混合均一化作業をどのようにするかが問題となった。そこで,当時の転換試験棟主任であった乙らにおいて検討した結果,精製した八酸化三ウラン粉末を溶解塔で1バッチずつ溶解し,これを各バッチ毎に10本の容器へ均一分量ずつ取り分ける作業を,サイクル機構への1納入単位(ロット)に当たる6ないし7バッチ分繰り返し行い,それぞれの容器内で硝酸ウラニル溶液の混合を行ってその濃度等を れを各バッチ毎に10本の容器へ均一分量ずつ取り分ける作業を,サイクル機構への1納入単位(ロット)に当たる6ないし7バッチ分繰り返し行い,それぞれの容器内で硝酸ウラニル溶液の混合を行ってその濃度等を均一化するという,いわゆるクロスブレンド法が考案され,常陽第4次操業における溶液製造作業では混合均一化作業をこの方法で行った。この方法については,この操業後に作成された溶液製造作業の手順書に記載され,同操業以降,溶液製造作業における混合均一化作業はクロスブレンド法によりなされることとなった。 ところが,平成5年12月ころ,被告人会社Aは,サイクル機構から常陽第7次操業用の硝酸ウラニル溶液について従来の2倍の量を一度に出荷して欲しい旨依頼され,クロスブレンド法を使ったのではそれだけの分量を納期内に製造することは非常に困難であったことから,当時の製造部副部長兼製造一課長であった被告人Cは,乙に対し,形状制限のされた貯塔を使って混合均一化作業の効率化が図れるか検討するように指示した。そこで,乙において検討したところ,仮設配管を取り付け,ポンプで溶液を循環させることにより,貯塔で溶液を混合均一化することが可能であることが分かり,同人は,後任の転換試験棟主任である丙に貯塔で混合均一化作業を行う方法について更に検討するよう引継ぎをした。丙は,貯塔による混合均一化の作業方法について検討し,平成6年末から平成7年初めにかけて,仮設配管の設置方法等をまとめ,当時の製造部長であった被告人C,同じく製造一課長であった被告人Dらに報告し,同被告人の了承を得た。 同じころ,丙は,貯塔に仮設配管を設置することが許認可に反しないか等についての検討を技術課に依頼し,同課員から許認可上の問題はない旨回答を得たことから,同年5月,工務課に貯塔に仮設配管を設置する工事をするよう依頼し ,貯塔に仮設配管を設置することが許認可に反しないか等についての検討を技術課に依頼し,同課員から許認可上の問題はない旨回答を得たことから,同年5月,工務課に貯塔に仮設配管を設置する工事をするよう依頼し,その後,同工事が完了した。以上の経緯から,常陽第7次操業以降は,溶液製造作業に際して従来のクロスブレンド法による混合均一化作業は行われず,硝酸ウラニル溶液の混合均一化作業は貯塔を用いて行われるようになった。 3 溶解・再溶解工程について被告人会社Aは,常陽第4次操業においては,溶解塔を使用して八酸化三ウラン粉末を溶解していたところ,平成4年11月ころ,サイクル機構から常陽用の硝酸ウラニル溶液が急きょ必要になったとして,その発注(常陽第6次操業)を受けたものの,その製造量及び納期が従来よりも厳しいものになっていたため,そのころから平成5年初めにかけて,乙,当時の製造部副部長兼製造一課長であった被告人C,品質保証部の丁らにより溶液製造作業の短縮化が検討された。その結果,第2工程中の再溶解工程において行っている溶解塔の洗浄や検査に要する手間と時間を省くため,溶解塔に代えてステンレス製バケツを使用して再溶解作業を行う方法が考えられ,当時の製造部長であった被告人Bの了承の下,同方法が用いられることになった。平成5年1月23日ころ,被告人Cは,自ら転換試験棟の作業員に対してステンレス製バケツを用いた再溶解作業のやり方を教えた。この常陽第6次操業以降,第2工程における再溶解作業は,溶解塔ではなく,ステンレス製バケツを用いて行われるようになった。 その後,転換試験棟主任となった丙は,乙からステンレス製バケツを用いてウランの溶解を行っている旨の引継ぎを受けたが,これが第2工程の再溶解作業であるのか,第1工程における溶解作業をも含むのか明確でなかっ の後,転換試験棟主任となった丙は,乙からステンレス製バケツを用いてウランの溶解を行っている旨の引継ぎを受けたが,これが第2工程の再溶解作業であるのか,第1工程における溶解作業をも含むのか明確でなかったことから,丙は,第1工程における溶解作業においてもステンレス製バケツを用いるものと考え,常陽第7次操業においては,第1工程における溶解作業にもステンレス製バケツを使用し,以後,転換試験棟で行われるウランの溶解については,第1工程,第2工程ともステンレス製バケツが使用されるようになった。 なお,ステンレス製バケツによる再溶解作業の方法については,丁が被告人Cの指摘を踏まえた上で平成5年1月20日付けの手順書を作成し,また,貯塔を用いての混合均一化作業についても,丙により個人的に手順書が作成され,順次改訂されていたが,平成8年10月ころ,丙は,以上の事情を踏まえて第2工程についての手順書を作成し,被告人Cの承認を受けて,同年11月28日付けで,ステンレス製バケツによるウランの溶解や貯塔による混合均一化作業の方法が記載された手順書が発行された。その後,丙は,実際の作業方法と手順書の記載とを合わせるために手順書の見直しを行い,平成9年6月ころ,詳しい内容に書き換えた手順書を作成し,被告人Cの承認を受けた上で,平成9年10月27日付けで,新たな手順書が発行された。 4 スペシャルクルーについて(1) スペシャルクルー発足の経緯及びその業務内容等平成7年ころ,急激な円高の進行と電力事業自由化の流れを踏まえて,電力会社からのコストダウンの圧力が,核燃料の成型加工メーカーを通じて被告人会社Aにもかかるようになったことから,東海事業所では人員整理等の事業再構築(いわゆる「リエンジ」)を図るようになった。 これについては の圧力が,核燃料の成型加工メーカーを通じて被告人会社Aにもかかるようになったことから,東海事業所では人員整理等の事業再構築(いわゆる「リエンジ」)を図るようになった。 これについては,平成7年9月ころから,被告人Bが中心となって検討が進められ,その中で,常時稼働する施設を第2加工施設棟のみとして生産資源の集中化を図るとともに,加工施設棟の作業班を4班に削減し,班員数も減らすことによって人員の削減を図ることとされた。このため,減員された作業班が賄いきれない雑務を担当する別の作業班を設けることとなり,平成8年1月に丙が管理担当者を務め,戊らが班員となるスペシャルクルーが発足し,30Bシリンダーの点検補助,固体廃棄物処理等とともに,転換試験棟におけるウランの加工等をも担当することとなった。 そして,リエンジの一環としての平成9年8月ころに行われた組織改編により,それまで作業班の長の呼称であった「リーダー」が「副長」に改められるとともに,「リーダー」8名体制から「副長」4名体制に改編され,それに伴い,それまでリーダーを務めていた被告人Gと己はスペシャルクルーの班員へと異動した。平成10年3月に転換試験棟主任の丙が退職し,さらに,その後,第1,第2加工施設棟の作業班削減に伴い総合排水処理棟の排水処理作業もスペシャルクルーの業務内容に含まれることになった。この排水処理作業は24時間作業であるため,スペシャルクルーの班員は,それまでの昼間勤務から三交代制で夜間勤務もしなければならなくなり,持病のため夜間勤務に就けない戊は,これを機会にスペシャルクルーを離れて別会社に出向することとなった。そして,平成10年8月の異動で,庚,X及びYがスペシャルクルーの班員として異動してきた。また,そのころ,被告人Gはスペシャルクルーの副長に就任した。 ルクルーを離れて別会社に出向することとなった。そして,平成10年8月の異動で,庚,X及びYがスペシャルクルーの班員として異動してきた。また,そのころ,被告人Gはスペシャルクルーの副長に就任した。 (2) スペシャルクルーの班員の臨界等に関する知識・能力平成11年当時,被告人Gと己は,平成8年から平成10年にかけて実施された常陽第8次操業において,二酸化ウラン粉末を製造した経験はあるものの,溶液製造作業についての経験はなく,庚は,以前に転換試験棟における操業に関与したことはあるものの,濃縮度約20パーセントの硝酸ウラニル溶液の製造に関与したことはなかった。X及びYにおいては,転換試験棟における操業そのものが初めてであった。 被告人Gは,入社時に臨界について基本的な教育を受けた記憶はあるものの,その具体的な内容についての十分な理解はなく,また,ウランの入った容器を近づけると臨界が起きると聞いていたが,ウランの入った容器を間隔を空けずに置いても臨界にならなかったことから,次第に臨界についての危機意識が薄れていった。また,スペシャルクルーに配属された際には,転換試験棟で取り扱うウランの濃縮度が高いことから臨界について意識したものの,ウランの取扱いについて特段の違いがなかったことから,やはり次第に臨界についての危機意識が薄れていった。さらに,核的制限に関しては,形状制限,質量制限については知っていたものの,濃度制限については知らなかったことから,第1,第2加工施設棟における加水分解液貯槽や純硝酸ウラン液貯槽に溶液を大量に入れても臨界にならないのは,ウランが溶液のままでは臨界にならない性質を有しているためであるなどと誤解するとともに,沈殿槽になされた質量制限についても,沈殿させてADUとなった場合には臨界が起きるが,沈殿さ 臨界にならないのは,ウランが溶液のままでは臨界にならない性質を有しているためであるなどと誤解するとともに,沈殿槽になされた質量制限についても,沈殿させてADUとなった場合には臨界が起きるが,沈殿させずに溶液のままであれば臨界にならないと誤解していた。 被告人G以外の班員も,臨界及び核的制限,更には第1,第2加工施設棟と転換試験棟との間の臨界管理方法の違い等についての教育(以下,上記のような臨界等に関する教育訓練について,まとめて「臨界教育」ともいう。)を受けておらず,現実の操業においても臨界を意識した指導・監督がなされていなかったことから,被告人G同様に臨界及び核的制限等についての知識及び理解は非常に不十分なものであった。 第5 被告人会社Aにおける安全管理体制の実態 1 保安規定上の安全管理体制原子炉等規制法及び加工規則に基づいて制定された被告人会社Aの保安規定は,順次改訂が加えられ,その内容は一定ではないものの,東海事業所における核燃料物質加工に関する保安のための管理組織として,以下の各機関が設けられていた。 (1) 安全主管者及び各管理統括者保安規定に基づいて安全主管者及び各グループごとに管理統括者が置かれていた。安全主管者は,東海事業所長とされ,東海事業所における核燃料物質の加工に関する保安を総括するとともに,各管理統括者に対して保安を確保する措置を講ずるように指示・監督するとされている。また,各管理統括者は,各グループにおける保安に関する職務を行い,同グループ員に対し,核燃料物質の加工に関し保安上必要な指導・監督を行うとともに,毎日1回以上,加工設備等について巡視・点検を行うと規定されていた。さらに,各管理統括者は,加工施設の操作に必要な知識を有する者に操作させるとともに,加工施設の操作 上必要な指導・監督を行うとともに,毎日1回以上,加工設備等について巡視・点検を行うと規定されていた。さらに,各管理統括者は,加工施設の操作に必要な知識を有する者に操作させるとともに,加工施設の操作に必要な構成人員をそろえ操作させなければならないとされていた。 しかしながら,安全主管者である東海事業所長から各管理統括者に対し,保安を確保する措置を講ずる旨の指示・監督は特段なされていなかった。また,各管理統括者において行うとされていた加工設備等への巡視・点検は実施回数が規定よりも少なかった上,核燃料物質の加工に関し保安上必要な指導等が行われたことはほとんどなかった。さらに,各管理統括者において,作業員が加工施設の操作に必要な知識を有しているか否かについて確認する手続は存在しなかった。なお,前記保安規定によれば,安全主管者は,核燃料取扱主任者の意見を求めつつ教育訓練計画を定めることになっていたが,安全主管者において教育訓練計画を定めることはなく,安全管理グループが策定した教育訓練計画を決済するにすぎなかった。 (2) 安全専門委員会保安規定に基づいて安全主管者の保安に関する諮問機関として安全専門委員会が設置されていた。同委員会は,核燃料物質の加工に関する保安について審議する機関であるが,平成7年9月8日に,同委員会の委員長で,当時の技術部技術課長であった辛のほか,当時の技術部長・核燃料取扱主任者であった被告人B,当時の製造一課長であった被告人Dら同委員会の委員及び当時の製造部長兼製造二課長であった被告人Cが出席して開催された。この時の同委員会において,転換試験棟における臨界管理方法が議題とされ,現状として,溶解から沈殿に至る工程内に複数バッチが存在する連続操業が行われていること,加工事業許可内容と異なりステンレス製バ 。この時の同委員会において,転換試験棟における臨界管理方法が議題とされ,現状として,溶解から沈殿に至る工程内に複数バッチが存在する連続操業が行われていること,加工事業許可内容と異なりステンレス製バケツを使用して八酸化三ウランの溶解が行われていること,貯塔を用いて混合均一化がなされることなどについて報告がなされたが,このような方法でも臨界管理上問題にはならないことが確認されたことから,その後も上記のような操業を継続することで出席者一同が了承し,これを契機に,前記各作業方法が被告人会社Aにおいて承認された。 (3) 核燃料取扱主任者前記第2の2のとおり,原子炉等規制法により加工事業者は核燃料取扱主任者を選任することが義務づけられているが,前記保安規定によれば,核燃料取扱主任者は,安全主管者において選任するとされ,保安上必要な場合には安全主管者に意見具申をするとともに,核燃料物質の取扱いに従事する者に指示すること,教育訓練計画の作成に参画することとされ,また,安全主管者らは核燃料取扱主任者の意見を尊重しなければならないとされていた。 東海事業所においては,核燃料取扱主任者の免状を有する者の中から年次の古い順に核燃料取扱主任者が選任されていたものの,核燃料取扱主任者が担当すべき具体的な職務内容が明確ではなかったことから,核燃料取扱主任者において,安全主管者らに対し意見具申をするようなことはなかった。また,核燃料取扱主任者の交代に際しても,前任者からは特段の引継事項はなかった。なお,前記保安規定によれば,核燃料取扱主任者は,安全主管者に対し教育訓練計画について意見を述べることになっているが,核燃料取扱主任者において安全主管者に対し意見具申をすることはなく,安全管理グループが策定した教育訓練計画を決済するにすぎなかった。 主管者に対し教育訓練計画について意見を述べることになっているが,核燃料取扱主任者において安全主管者に対し意見具申をすることはなく,安全管理グループが策定した教育訓練計画を決済するにすぎなかった。 (4) 安全管理グループ(安全管理室)東海事業所においては,同事業所の一般安全衛生管理及び臨界管理を行い,従業員に対する教育訓練を行う機関として,所長直属の安全管理室を設置していたが,前記リエンジに伴う組織改編に際して,名称を安全管理グループと変更するとともに,技術部内の一部門として位置づけられた。また,安全管理グループ長は品質保証グループ長と兼任となり,所属員も両グループの業務を兼務することとなった。以上の組織改編の結果,安全管理グループには臨界に関する専門知識を有する者は配置されなくなり,また,臨界管理を行えるだけの人員も配置されていなかったことから,安全管理グループが臨界管理基準等の規定類や手順書等を審査することもなかった。そもそも被告人会社Aにおいては,製造現場で作業方法等を変更しようとする場合に,その許認可上又は臨界管理上の問題点を審査する手続が明確化されておらず,必要に応じて製造現場から技術課等に問い合わせがなされていたにすぎず,安全管理グループが被告人会社Aにおける臨界管理上の問題点について検討することはなかった。 2 被告人会社Aにおける臨界教育の実状安全管理グループは,毎年実施される全体教育訓練やグループ別教育訓練の企画等を担当していたが,全体教育訓練における臨界管理に関する教育は,平成4年8月17日に当時の製造部長であった被告人Bが数十分間行ったものが最後であり,その他にグループ別教育訓練として小規模に行われたことがあるものの,実際にウランの加工作業に当たる作業員らに対する臨界教育はほとんど行われ の製造部長であった被告人Bが数十分間行ったものが最後であり,その他にグループ別教育訓練として小規模に行われたことがあるものの,実際にウランの加工作業に当たる作業員らに対する臨界教育はほとんど行われていなかった。また,実地教育においても,何らの教材等も用意されていないばかりか,実地教育に当たるべき者においてすら臨界等についての知識が乏しく,十分な臨界教育はなされていなかった。さらに,ウランの加工作業に従事する作業員個人の能力,臨界に関する知識等を把握する方法も何ら採られていなかった。 以上のとおり,東海事業所における臨界教育が全くといってよいほどなされていなかったことから,同事業所においては臨界事故は起きないとの認識が蔓延し,臨界そのものに対する意識もほとんどないような状況であった。殊に,転換試験棟での操業は,サイクル機構からの不定期な発注に基づいて行われる上,その業務量も第1,第2加工施設棟のそれに比較すると微々たるものであったことから,転換試験棟における臨界管理についての意識は一段と低いものになっていた。しかも,転換試験棟については,第1,第2加工施設棟と異なり濃度制限がなされていないことから,形状制限のなされていない沈殿槽内に質量制限を超過する量のウランを含有する溶液を注入すれば,沈殿の有無にかかわらず臨界になり得るが,この臨界管理方法の相違点について教育する機会は全くなかった。 3 労働安全衛生法上の安全管理体制労働安全衛生法は,一定の業務及び規模の事業所に対し安全管理者を選任させ,その者に安全に関する技術的事項を管理させることを義務づけているが,東海事業所においても,同法に基づき安全衛生管理規定を定め,総括安全衛生管理者及び安全管理者について規定していた。それによれば,総括安全管理者は,東海事業所長とされ,東海事業 ることを義務づけているが,東海事業所においても,同法に基づき安全衛生管理規定を定め,総括安全衛生管理者及び安全管理者について規定していた。それによれば,総括安全管理者は,東海事業所長とされ,東海事業所における安全管理及び衛生管理について各部グループ長,安全管理者,安全管理グループ長を指揮して,安全衛生管理について指揮・管理する旨規定されていた。また,安全管理者は,東海事業所における施設等の点検・整備,危険がある場合の応急措置等に関すること,作業の安全についての教育訓練に関すること等の技術的事項を管理する旨規定されていた。 東海事業所においては,一般の労働災害防止のための各種教育訓練は行われていたものの,前述したとおり,核燃料物質の加工工程における臨界管理方法等についての教育訓練はほとんど行われていなかった。 第6 常陽第9次操業に至る経緯及び同操業の状況 1 常陽第9次操業の契約締結に至る経緯及び操業開始前の状況平成10年11月ころから,被告人会社Aは,サイクル機構との間で新たな常陽用の二酸化ウラン粉末又は硝酸ウラニル溶液受注についての交渉を行っていたところ,平成11年1月の被告人会社Aにおける生産・販売会議及び同年2月の管理職会議において,平成11年度の常陽用の硝酸ウラニル溶液と二酸化ウラン粉末の受注予定が報告された。その後の交渉の結果,同年8月31日,被告人会社Aとサイクル機構との間で常陽第9次操業についての合意が成立し(なお,正式な契約は同年9月8日付けで締結された。),このことは,被告人B,被告人Cらが出席して同月9日に開催された経営連絡会議において報告された。また,この席上で,被告人Cから,転換試験棟において同月中旬から濃縮度約18.8パーセントの硝酸ウラニル溶液を製造する予定である旨の報告がなされた(以下,常陽 催された経営連絡会議において報告された。また,この席上で,被告人Cから,転換試験棟において同月中旬から濃縮度約18.8パーセントの硝酸ウラニル溶液を製造する予定である旨の報告がなされた(以下,常陽第9次操業における硝酸ウラニル溶液の製造を「本件操業」という。)。 平成11年8月ころ,被告人Gは,被告人Eから,同年9月から本件操業を開始する予定であることを告げられ,同月13日から作業を始める旨答えてこれを了承した。溶液製造作業は,受注に応じて断続的かつ不定期にしか実施されないものであるばかりか,本件操業は,前回の同種操業から約2年10か月ぶりに行われることとなったものである上,本件操業時のスペシャルクルーの班員の中には戊など溶液製造作業に精通した作業員は誰もいなかったが,この際,被告人Gは,被告人Eに対し,溶液製造作業の経験はないけれども,手順書を見ればなんとかなる旨答えた。 被告人Fは,同月1日から3日ころまでの間に,本件操業に関し,質量制限等の核的制限を踏まえつつ,契約どおりの品質の製品が出来上がるようにするための製造条件を指示する作業指示書(PPS(プロセス・パラメータ・シート))を溶解,溶媒抽出,沈殿,仮焼,再溶解の各工程ごとに作成したが,混合均一化工程については作成しなかった。同月6日,被告人Fは,作成したPPSにつき被告人Eの審査を受けようと考え,同被告人にその旨連絡したが,同被告人は,転換試験棟での作業経験がなく,本件操業の具体的な作業方法を把握していなかったことから,実際に本件操業を担当する被告人Gも審査に立ち会わせることにした。同審査の席上で,被告人E,被告人F及び被告人Gは,被告人Fの作成したPPSについて検討し,本件操業について打ち合わせをし,被告人Fから被告人Gに対して作業指示書に記載してある各工程に ることにした。同審査の席上で,被告人E,被告人F及び被告人Gは,被告人Fの作成したPPSについて検討し,本件操業について打ち合わせをし,被告人Fから被告人Gに対して作業指示書に記載してある各工程について説明があったが,被告人Fが混合均一化はクロスブレンド法で行う旨説明したため,被告人Gから現在では貯塔を使って混合均一化している旨の指摘がなされた。その際にも,被告人Gは,被告人Fに対し,自分は溶液製造作業の経験はないが,作業経験のある戊に聞いたり,手順書を見ればなんとかなる旨答え,被告人F及び被告人Eにおいても,被告人Gに対し,分からないことがあったら戊に尋ねたり,手順書で確認するように告げた。 被告人Fは,被告人E及び被告人Gとの前記審査の後,被告人Dに対し前記PPSについての承認を求めた。被告人Dは,被告人Fから前回の操業と変わりはないと聞いたため,特段の検討もすることなくこれを承認し,その後,被告人Dが本件操業について指示等をすることはなかった。 被告人Eは,前記審査に立ち会ったものの,その後は本件操業の具体的な作業方法について検討しなかったばかりか,被告人Gらに対し,本件操業について特段の指示及び監督をすることもなかった。 被告人Gは,前述のとおり,被告人Eや被告人Fから本件操業について手順書で確認したり,戊に尋ねるように指示されていたものの,被告人Gが本件操業前に戊に尋ねたのは,ろ過するときのろ材として使用する物の種類や貯塔で混合した後の溶液の抜き取り方などその場で思い付いたことのみであり,また,被告人G自身が手順書に目を通すことはなかった。 2 本件操業開始から平成11年9月28日までの状況平成11年9月7日から同月10日までの間,スペシャルクルーは,30Bシリンダー定期検査の補助を行って 書に目を通すことはなかった。 2 本件操業開始から平成11年9月28日までの状況平成11年9月7日から同月10日までの間,スペシャルクルーは,30Bシリンダー定期検査の補助を行っていたが,同日の作業には2名が当たれば十分であったことから,被告人Gは,己,庚及びXに対し,同月13日に開始予定であった本件操業の準備作業にかかるよう指示をした。己らは,準備作業が完了したことから,本件操業を繰り上げて実施することとしたが,己は,前回の転換試験棟での操業の際に戊より教わった工程を思い浮かべながら,溶液製造作業の経験がない庚及びXに対し,原料の八酸化三ウラン粉末をステンレス製バケツに入れて純水と硝酸で溶解し,それをポリバケツに入れて濃度調整をし,ポンプを使って抽出塔へ送る溶媒抽出工程までの作業方法を教え,同日夕方までに,原料の八酸化三ウラン粉末を3バッチ分溶解し終えた。被告人Gは,同日夕方,己らが本件操業を開始したことを知ったが,スペシャルクルーでは常々その日のうちにできる仕事はその日のうちにすることにしていたことから,己らに対し,作業日程を無断で早めたことをとがめるようなことはしなかった。その後,被告人Gは,己,庚,X及びYの4名をローテーションに従って2名ずつ組ませ,それから同月28日までの間,7バッチ分のウランについて,同人らに第1工程の溶解,溶媒抽出,沈殿,仮焼の各工程の作業を行わせた。被告人Gは,第1工程が行われていた間,排水処理作業等を行っていたが,転換試験棟で作業している班員が休憩する時間を見計らって休憩室に行ったり,実際に転換試験棟内にまで行ったりするなどして本件操業の進行状況を確認していた。 同月28日,被告人Gがその翌日から始まる予定の第2工程の準備をするために転換試験棟に赴いたところ,Yにおいて第1工程で使 内にまで行ったりするなどして本件操業の進行状況を確認していた。 同月28日,被告人Gがその翌日から始まる予定の第2工程の準備をするために転換試験棟に赴いたところ,Yにおいて第1工程で使用した沈殿槽の洗浄を終え,Xにおいて第1工程最後の仮焼工程の作業を行っていたところであった。被告人Gは,最後の7バッチ分目が仮焼工程中であり,まもなく第2工程に入れることが分かったので,第2工程において混合均一化作業をするために使用する貯塔の準備をすることにした。 被告人Gは,保管してあった溶液循環用の仮設配管を取り出し,Yとともに同配管を貯塔に接続しようとしたが,手順書等によって検討していなかったこともあって,貯塔を使って混合均一化作業を行うに当たっては,同配管のほかに溶液の出し入れ用にもう1本仮設配管を接続しなければならないことに気付かなかった。被告人Gらは,硝酸ウラニル溶液の出し入れは貯塔につながっている配管のバルブから行うものと考えたが,そうするとバルブの位置が低すぎることや同バルブは貯塔から1メートルくらい離れた場所にあり,そのバルブから貯塔までの間にいわゆるデッドスペースが生じて同溶液が残存し,多量のスクラップが出ることから,Yに対し,「これでやるんだけど,デッドスペースが多いし,抜き口が低いからやりづらいよな。」などと言って,仮設配管を貯塔に接続して混合均一化作業をすることの問題点を指摘した。 これに対して,Yが,沈殿槽を使用して混合均一化作業をすることを提案し,Xも,沈殿槽にはかくはん機がある上,硝酸ウラニル溶液を入れるハンドホールもあり,溶液の抜き口も高いなどと言ってYの意見に賛成したことから,被告人Gにおいても,沈殿槽にはかくはん機が付いていて混合均一化作業が早くできる上,硝酸ウラニル溶液の出し入れも楽な姿勢でで ドホールもあり,溶液の抜き口も高いなどと言ってYの意見に賛成したことから,被告人Gにおいても,沈殿槽にはかくはん機が付いていて混合均一化作業が早くできる上,硝酸ウラニル溶液の出し入れも楽な姿勢ででき,デッドスペースもほとんど生じないとして,沈殿槽は7バッチ分のウランを含有する硝酸ウラニル溶液を一度に入れて混合均一化する設備として最適であると考えた。ただ,ハンドホールはそれほど大きなものではなかったことから,硝酸ウラニル溶液を沈殿槽に注入する際に同溶液を沈殿槽外にこぼすおそれがあったため,被告人Gは,ハンドホール内に漏斗を差し込んだ上,これを使って硝酸ウラニル溶液を注ぎ込めばいいと考えつき,それをY及びXにも伝えた。 他方,被告人Gは,これまで混合均一化作業に沈殿槽が使われていなかった理由について,沈殿槽内にADU等が残っていた場合に,製品である溶液にこれらが入り込み,品質上問題が生じるためであろうと考えるとともに,そうであるならば,沈殿槽に希硝酸溶液を張り込んだまま一晩置くなどして沈殿槽を十分に洗浄すれば,品質上の問題は解消し,混合均一化作業に沈殿槽を使うことは可能であると判断した。被告人Gは,これまでにも製品の品質について問題が生じた場合には,被告人Eを介することなく,品質管理の担当者である被告人Fに直接問い合わせをしていたことから,今回も被告人Fの承認を得る必要があると考えた。そこで,被告人Gは,Y及びXに希硝酸溶液を張り込んで沈殿槽を洗浄するよう指示するとともに,沈殿槽の洗浄が完了すれば混合均一化作業のために沈殿槽を使用する許可をもらいに行く旨告げた。 なお,被告人Gは,前述のとおり,臨界等についての十分な知識を有していなかったことから,転換試験棟の沈殿槽にいくら硝酸ウラニル溶液を入れても,溶液である限り臨界管理上の問 行く旨告げた。 なお,被告人Gは,前述のとおり,臨界等についての十分な知識を有していなかったことから,転換試験棟の沈殿槽にいくら硝酸ウラニル溶液を入れても,溶液である限り臨界管理上の問題は全くないと考えていた。 3 平成11年9月29日から同月30日までの状況平成11年9月29日午前10時30分ころ,被告人Gは,沈殿槽が十分に洗浄できたかどうかを確認するために転換試験棟に行ったところ,Yが十分に洗浄できている旨報告し,Xも第2工程で用いるろ過器を洗浄し終わっていたことから,被告人Fに,混合均一化作業のために沈殿槽を使用することについて承認を得ることにした。 同日午後零時すぎころ,被告人Gは,被告人Fに対し,貯塔を使うと時間がかかることや沈殿槽は十分洗浄してあるので品質に問題が出ることはないことなどを告げ,貯塔の代わりに沈殿槽を使用して硝酸ウラニル溶液を混合均一化したい旨言ったところ,被告人Fは,これに対して即答せず,昼休みが終わったら連絡する旨告げた。被告人Fも,被告人会社Aにおいて臨界等について十分な教育を受けておらず,第1,第2加工施設棟と転換試験棟との間では臨界管理方法が違っていることやその理由を知らなかったことなどから,被告人Gの提案に対して,主に製品の品質に問題が出ないかのみを検討し,同日午後1時ころ,被告人Gに電話をかけ,沈殿槽にADU等が残っている可能性はないか,沈殿槽を使わないと間に合わないのかなど製品の品質に影響しかねない点についてのみ確認した上,沈殿槽を使用しても製品の品質上何ら問題はないと考え,被告人Gに対し混合均一化作業のために沈殿槽を使用することを承認した。その際,被告人Fは,沈殿槽に硝酸ウラニル溶液を沈殿させると臨界発生の危険があると考え,沈殿工程で硝酸ウラニル溶液を沈殿させるため ,被告人Gに対し混合均一化作業のために沈殿槽を使用することを承認した。その際,被告人Fは,沈殿槽に硝酸ウラニル溶液を沈殿させると臨界発生の危険があると考え,沈殿工程で硝酸ウラニル溶液を沈殿させるために使うアンモニアを混合均一化工程中に誤って吹き込まないようにしなければならないと思い,被告人Gに対し,溶液なら大丈夫だが沈殿させると危ないのでアンモニアのバルブを開けないように注意をした。 被告人Gは,X及びYも第2工程における再溶解作業や混合均一化作業を経験したことがなかったことから,最初の一,二バッチ分の溶解と沈殿槽への注入までは自ら確認しておこうと考え,X及びYとともに転換試験棟に行き,同日午後1時すぎころから,同所において,X及びYをして再溶解作業を開始させた。X及びYは,被告人Gの指示に基づいて精製済みの八酸化三ウラン粉末を1バッチずつステンレス製バケツに入れて溶解し,同溶液をろ過器でろ過した後,沈殿槽のハンドホールに漏斗を差し込んだ上で,ステンレス製バケツ又はステンレス製ビーカーに入れた硝酸ウラニル溶液を順次4バッチ分沈殿槽内に注入し,残りの3バッチ分については,翌30日に作業を行うことにしてその日の作業を終えた。 翌30日午前10時ころ,被告人Gが転換試験棟に行ったところ,X及びYにおいて残り3バッチ分の再溶解作業を完了させていたことから,その後は,Xにおいて溶液のろ過を行い,Yにおいてろ過し終えた溶液をステンレス製ビーカーで沈殿槽内に注入し,被告人GにおいてYが注入しやすいようにハンドホールに差し込んだ漏斗を支えていた。残り1バッチ分の硝酸ウラニル溶液を注入する際に,Xがろ過の作業を終えたことから,被告人GはXと作業を代わり,沈殿槽内のウラン濃度の計算を行うことにした。同日午前10時35分ころ,Xが漏斗を支えた状態で 1バッチ分の硝酸ウラニル溶液を注入する際に,Xがろ過の作業を終えたことから,被告人GはXと作業を代わり,沈殿槽内のウラン濃度の計算を行うことにした。同日午前10時35分ころ,Xが漏斗を支えた状態で,Yが残り1バッチ分の硝酸ウラニル溶液を沈殿槽内に注入した。 (罪となるべき事実)第1 業務上過失致死について 1 各被告人の過失について(1) 被告人Bの過失被告人Bは,前記「事故に至る経緯」第1の2記載のとおり,東海事業所長及び保安規定上の安全主管者としての業務に従事していたものであるが,前記の経緯において,被告人G,X及びYらに本件操業を行わせるに当たっては,自ら又は被告人Cら部下職員をして,溶液製造作業の従事者に対して,内閣総理大臣の許可内容を遵守した加工作業を行うよう指示及び監督を行うとともに,第1,第2加工施設棟と転換試験棟との間の臨界管理方法の相違点を周知徹底させるなどの臨界教育を実施するなどの臨界事故発生を防止するための措置を講ずべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,何ら同措置を講じなかった過失がある。 (2) 被告人Cの過失被告人Cは,前記「事故に至る経緯」第1の3記載のとおり,製造部長兼製造グループ長,保安規定上の製造管理統括者及び労働安全衛生法に基づく安全管理者としての業務に従事していたものであるが,前記の経緯において,被告人G,X及びYらに本件操業を行わせるに当たっては,自ら又は被告人Eら部下職員をして,溶液製造作業の従事者に対して,内閣総理大臣の許可内容を遵守した加工作業を行うよう指示及び監督を行うとともに,第1,第2加工施設棟と転換試験棟との間の臨界管理方法の相違点を周知徹底させるなどの臨界教育を実施するなどの臨界事故発生を防止するための措置を講ずべき業務上の注意義 うよう指示及び監督を行うとともに,第1,第2加工施設棟と転換試験棟との間の臨界管理方法の相違点を周知徹底させるなどの臨界教育を実施するなどの臨界事故発生を防止するための措置を講ずべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,何ら同措置を講じなかった過失がある。 (3) 被告人Dの過失被告人Dは,前記「事故に至る経緯」第1の4記載のとおり,核燃料取扱主任者としての業務に従事していたものであるが,前記の経緯において,被告人G,X及びYらに本件操業を行わせるに当たっては,自ら,溶液製造作業の従事者に対して,内閣総理大臣の許可内容を遵守した加工作業を行うよう指示及び監督を行うとともに,第1,第2加工施設棟と転換試験棟との間の臨界管理方法の相違点を周知徹底させるなどの臨界教育を同従事者に対して実施するよう被告人Bらに意見具申若しくは助言又は協力をするなどの臨界事故発生を防止するための措置を講ずべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,何ら同措置を講じなかった過失がある。 (4) 被告人Eの過失被告人Eは,前記「事故に至る経緯」第1の5記載のとおり,製造部製造グループ職場長としての業務に従事していたものであるが,前記の経緯において,被告人G,X及びYらに本件操業を行わせるに当たっては,自ら転換試験棟における臨界管理方法を把握した上,溶液製造作業の従事者に対して,第1,第2加工施設棟と転換試験棟との間の臨界管理方法の相違点を周知徹底するとともに,転換試験棟における臨界管理方法を遵守した加工作業を行うよう指示及び監督を行うなどの臨界事故発生を防止するための措置を講ずべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,何ら同措置を講じなかった過失がある。 (5) 被告人Fの過失被告人Fは,前記「事故に至る どの臨界事故発生を防止するための措置を講ずべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,何ら同措置を講じなかった過失がある。 (5) 被告人Fの過失被告人Fは,前記「事故に至る経緯」第1の6記載のとおり,製造部計画グループ主任としての業務に従事していたものであるが,前記の経緯において,平成11年9月29日,東海事業所において,被告人Gから,本件操業における混合均一化作業を行うに当たって,貯塔に代えて沈殿槽に7バッチ分のウランを含有する硝酸ウラニル溶液を注入してかくはん・混合することの承認を求められた際,形状制限の施されていない沈殿槽内に1バッチを超えるウランを含有する硝酸ウラニル溶液を注入すると臨界が発生する危険性が極めて高かったのであるから,これを承認しないで,質量制限を遵守させて臨界の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,臨界発生の危険性を看過して被告人Gに上記承認を与えた過失がある。 (6) 被告人Gの過失被告人Gは,前記「事故に至る経緯」第1の7記載のとおり,スペシャルクルー副長としての業務に従事していたものであるが,前記の経緯において,X及びYを指揮して本件操業を行わせるに当たっては,手順書等を確認し,溶液製造作業の経験者に確認するなどして自ら転換試験棟における臨界管理方法を把握するとともに,同臨界管理方法を遵守した加工作業を行うようX及びYらに指示して本件操業を行わせるべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,平成11年9月29日,転換試験棟において,同人らに対し,合計約7バッチ分のウランを含有する硝酸ウラニル溶液を沈殿槽内に注入することを指示した過失がある。 2 本件臨界事故の発生等被告人B,被告人C,被告人D,被告人E,被告人F及び被告人Gは,前記の バッチ分のウランを含有する硝酸ウラニル溶液を沈殿槽内に注入することを指示した過失がある。 2 本件臨界事故の発生等被告人B,被告人C,被告人D,被告人E,被告人F及び被告人Gは,前記の経緯において,前記1のそれぞれの過失が競合したことにより,平成11年9月29日午後1時すぎころから同月30日午前10時35分ころまでの間,茨城県那珂郡東海村<略>所在の被告人会社A東海事業所の転換試験棟において,X(当時35歳)及びY(当時39歳)らをして,ステンレス製バケツ等を用いて合計約7バッチ分の濃縮度約19パーセントのウラン(合計約16.6キログラムウラン)を含有する硝酸ウラニル溶液を沈殿槽内に注入させ,同日午前10時35分ころ,臨界事故を発生させるに至らせ,X及びYに中性子線等の放射線を浴びさせて急性放射線症の傷害をそれぞれ負わせ,よって,Xを,同年12月21日午後11時21分ころ,東京都文京区<略>所在の東京大学医学部付属病院において,Yを,平成12年4月27日午前7時25分ころ,同病院において,前記傷害に起因する多臓器不全によりそれぞれ死亡するに至らしめた。 第2 原子炉等規制法違反について被告人B,被告人C及び被告人Dは,前記の経緯において,共謀の上,被告人会社Aの業務に関し,被告人会社Aが,原子炉等規制法に基づく内閣総理大臣の許可を受けていたところの,濃縮度が20パーセント未満のウランの加工に使用する溶解設備として転換試験棟に設置していた溶解装置(容器部分の直径の制限値を17.5センチメートル以下とする形状制限が施された溶解塔等で構成されているもの)につき,内閣総理大臣の許可を受けないで,平成7年9月18日から平成11年9月30日までの間,転換試験棟において,濃縮度約19パーセントのウランの化合物である硝酸ウラニル溶液及び 構成されているもの)につき,内閣総理大臣の許可を受けないで,平成7年9月18日から平成11年9月30日までの間,転換試験棟において,濃縮度約19パーセントのウランの化合物である硝酸ウラニル溶液及び二酸化ウラン粉末を製造するため八酸化三ウラン粉末を硝酸及び純水で溶解するに当たり,上記溶解装置に代えてステンレス製バケツを使用し,もって,内閣総理大臣の許可を受けないで加工施設の設備を変更した。 第3 労働安全衛生法違反について被告人Bは,前記の経緯において,被告人会社Aの業務に関し,平成11年6月29日から同年9月30日までの間,常時50人以上の労働者を使用して核燃料物質の加工業を営む事業場である東海事業所において,安全管理者であるCをして,スペシャルクルーの班員であるX及びYら労働者に対し,核燃料物質の加工工程における臨界の発生を防止するための形状制限,質量制限等の核的制限を遵守するなどの安全のための教育を実施させず,もって,安全に係る技術的事項を管理させなかった。 (法令の適用)被告人会社Aについて 1 罰条判示第2の行為核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律81条,平成11年法律第157号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律78条2号,平成11年法律第160号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律16条1項,平成12年政令第311号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令4条判示第3の行為労働安全衛生法122条,平成11年法律第45号による改正前の労働安全衛生法120条1号,平成11年法律第160号による改正前の労働安全衛生法11条1項,労働安全 行為労働安全衛生法122条,平成11年法律第45号による改正前の労働安全衛生法120条1号,平成11年法律第160号による改正前の労働安全衛生法11条1項,労働安全衛生法施行令3条 2 併合罪の処理刑法48条2項 3 訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文被告人Bについて 1 罰条判示第1の行為被害者ごとに平成13年法律第138号による改正前の刑法211条前段判示第2の行為刑法60条,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律81条,平成11年法律第157号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律78条2号,平成11年法律第160号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律16条1項,平成12年政令第311号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令4条判示第3の行為労働安全衛生法122条,平成11年法律第45号による改正前の労働安全衛生法120条1号,平成11年法律第160号による改正前の労働安全衛生法11条1項,労働安全衛生法施行令3条 2 観念的競合判示第1の罪について刑法54条1項前段,10条(犯情の重いXに対する業務上過失致死罪の刑で処断) 3 刑種の選択判示第1の罪について禁錮刑判示第2の罪について懲役刑 4 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文, ついて禁錮刑判示第2の罪について懲役刑 4 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条,47条ただし書,48条1項(判示第1及び第2の各罪については,重い判示第1の罪の刑に法定の加重をし,これに判示第3の罪の罰金刑を併科) 5 労役場留置刑法18条 6 刑の執行猶予禁錮刑について刑法25条1項 7 訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文被告人C及び被告人Dについて 1 罰条判示第1の行為被害者ごとに平成13年法律第138号による改正前の刑法211条前段判示第2の行為刑法60条,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律81条,平成11年法律第157号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律78条2号,平成11年法律第160号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律16条1項,平成12年政令第311号による改正前の核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令4条 2 観念的競合判示第1の罪について刑法54条1項前段,10条(犯情の重いXに対する業務上過失致死罪の刑で処断) 3 刑種の選択判示第1の罪について禁錮刑判示第2の罪について懲役刑 4 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条,47 禁錮刑判示第2の罪について懲役刑 4 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条,47条ただし書(重い判示第1の罪の刑に法定の加重) 5 刑の執行猶予刑法25条1項 6 訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文被告人E,被告人F及び被告人Gについて 1 罰条被害者ごとに平成13年法律第138号による改正前の刑法211条前段 2 観念的競合刑法54条1項前段,10条(犯情の重いXに対する業務上過失致死罪の刑で処断) 3 刑種の選択禁錮刑 4 刑の執行猶予刑法25条1項 5 訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文(量刑の理由)第1 本件臨界事故について本件は,被告人B,被告人C,被告人D,被告人E,被告人F及び被告人G(以下,被告人会社Aを除いた被告人全員をまとめて「各被告人」とも表記する。)が,前記判示の経緯において,それぞれの過失が競合したことにより,茨城県那珂郡東海村所在の被告人会社A東海事業所の核燃料加工施設である転換試験棟において,硝酸ウラニル溶液の製造中に臨界事故を発生させ,XとYの2名に中性子線等の放射線を浴びさせて急性放射線症の傷害を負わせて死亡させたという業務上過失致死の事案(判示「罪となるべき事実」第1),被告人B,被告人C及び被告人Dが,共謀の上,被告人会社Aの業務に関し,前記転換試験棟において,ウランを加工するに当たり,内閣総理大臣の許可を受けないで加工施設の設備を変更したと るべき事実」第1),被告人B,被告人C及び被告人Dが,共謀の上,被告人会社Aの業務に関し,前記転換試験棟において,ウランを加工するに当たり,内閣総理大臣の許可を受けないで加工施設の設備を変更したという原子炉等規制法違反の事案(同第2)及び被告人Bが,被告人会社Aの業務に関し,東海事業所において,安全管理者であるCをして,同所勤務の労働者に対し,核燃料物質の加工工程における臨界管理方法に関する安全のための教育を実施させなかったという労働安全衛生法違反の事案(同第3)である。 核燃料物質は,その取扱いによっては臨界事故等の重大な事態を引き起こし,その取扱者のみならず,周辺の住民や環境にも多大な被害・影響を及ぼしかねない非常に危険な物質であるため,許認可を得た特定の業者において,法規等に則った方法によってのみその取扱いが許されていることからも明らかなように,その取扱いには厳しい制限があり,その安全に対しては細心の注意と施策が求められている。それにもかかわらず,本件臨界事故の直接的な原因は,被告人Gが被害者両名に対し形状制限のなされていない沈殿槽内に合計約7バッチ分のウランを含有する硝酸ウラニル溶液を注入するよう指示し,被害者両名をして同作業をさせたことにあり,その過失は極めて単純かつ重大である。また,被告人G以外の各被告人においても,核燃料物質の危険性について十分認識せず,被告人Gの誤った指示を防止できなかったのであるから,本件臨界事故を引き起こした各被告人の刑責は重いというほかない。さらに,各被告人がこのような重大な過失を犯すに至った背景には,被告人会社Aの長年にわたる安全軽視の姿勢があったといわなければならない。 そして,被害者両名の貴い生命が奪われたという本件臨界事故の結果が重大であることはいうまでもない。被害者両名は,本件臨界 人会社Aの長年にわたる安全軽視の姿勢があったといわなければならない。 そして,被害者両名の貴い生命が奪われたという本件臨界事故の結果が重大であることはいうまでもない。被害者両名は,本件臨界事故によりいずれも急性放射線症の傷害を負い,Xにおいては35歳,Yにおいては40歳という人生で最も充実した時期に愛する家族を残して先立たなければならなかったのであり,被害者両名の無念は察するに余りある。被害者両名は,Xにおいては約3か月間,Yにおいては約7か月間にも及ぶ闘病生活を送った末に死亡し,被害者両名の家族においても,被害者らの回復を願いながらも,容態が悪化するのをなすすべもなく見守るしかなかった上,生前の各人の姿を想像することができないほど変わり果てた遺体と対面することになったもので,その結末はあまりにも残酷かつ悲惨というほかなく,残された遺族の悲嘆の念は極めて深い。確かに,被告人会社Aらは各遺族に対する慰謝の措置に努めており,同遺族らが各被告人について必ずしも厳しい処罰を望んでいないとの事情は認められるものの,本件臨界事故により一家の精神的・経済的支柱を失った遺族の生活・将来に与えた影響は重大である。 加えて,本件臨界事故により人体に有害な中性子線等が多量に放射され,東海事業所が立地する東海村の住民など数百人にも上る被ばく者を出したばかりか,周辺の住民に対し屋内退避要請が出され,周辺の道路・鉄道が途絶したほか,本件臨界事故以後,茨城県産の農水産物等の売上げが減少するなどの風評被害も相当程度に及んでいるなど,本件臨界事故が地域社会に与えた影響・衝撃は計り知れない。また,本件臨界事故が,核燃料加工事業のみならず原子力の安全性そのものに対する国民の信頼を著しく損ねた点で,我が国の原子力政策にも相当の悪影響を及ぼしており,我が国において初めて 衝撃は計り知れない。また,本件臨界事故が,核燃料加工事業のみならず原子力の安全性そのものに対する国民の信頼を著しく損ねた点で,我が国の原子力政策にも相当の悪影響を及ぼしており,我が国において初めての臨界事故である本件の影響は極めて深刻である。 以上のとおり,本件臨界事故の態様は悪質であり,その結果は重大であることを踏まえ,以下,被告人ごとにその責任について論ずる。 第2 被告人会社Aの責任について 1 原子炉等規制法違反の事実について被告人会社Aは,判示のとおり,許可を得ることなく加工施設の設備を変更しているが,これは許認可を受けた特定の業者のみに核燃料物質の取扱いを許し,その取扱いに厳格な規制を設けることにより核燃料物質等による災害を防止しようとした原子炉等規制法の趣旨を没却するものである上,その期間も約4年間と長期にわたるものであり,厳しい非難を免れない。 被告人会社Aは,判示「事故に至る経緯」に記載したように,昭和59年6月に1バッチ縛りを遵守する前提で加工事業変更許可を受けていながら,許可取得後初めての常陽用二酸化ウラン粉末の製造から1バッチ縛りを遵守せずに複数バッチの連続操業を行い,その後の硝酸ウラニル溶液等の製造においても複数バッチの連続操業を行っていたというのであるから,当初から許可内容を遵守しようという意識を欠いていたといわざるを得ない。 この点について,弁護人は,およそ遵守することが困難な1バッチ縛りを許可内容に含めること自体が問題であるばかりか,操業記録等を見れば1バッチ縛りが遵守されていないことは明白であったにもかかわらず,行政当局は適切な監督を行わなかったのであるから,行政当局の責任は軽視できない旨主張する。確かに,1バッチ縛りを遵守すれば,極めて非効率的で生産性の低い操業しか行い ことは明白であったにもかかわらず,行政当局は適切な監督を行わなかったのであるから,行政当局の責任は軽視できない旨主張する。確かに,1バッチ縛りを遵守すれば,極めて非効率的で生産性の低い操業しか行い得ないばかりか,製品の品質にも悪影響を及ぼすことになるが,これを許可内容として受け入れるかどうかは最終的には被告人会社Aの経営上の判断・選択であるばかりか,臨界事故解析を行うなど他の選択肢が全くなかったわけではないのであるから,この点をもって被告人会社Aに有利な事情とはいい難い。そもそも,被告人会社Aは,特定の企業にしか与えられない許可に基づいて核燃料加工事業を営んでいたのであるから,その許可内容を遵守することは当該企業が守るべき最低限の企業倫理であって,行政当局の監督が十分でないことを論難するのは自らの責任を他に転嫁するに等しいというべきである。 また,弁護人は,常陽第6次操業のための硝酸ウラニル溶液製造に際し,ステンレス製バケツによる再溶解作業が始められ,判示の原子炉等規制法違反の罪を犯すに至っている点について,ステンレス製バケツの使用等の転換試験棟における違法・逸脱操業の背景には,サイクル機構が,被告人会社Aに対し,作業の安全,許可内容の遵守,作業員の作業負担等について全く配慮することなく発注していたとの事情が存する旨指摘するが,サイクル機構が被告人会社Aの違法・逸脱操業の実態について認識した上で無理な発注を行っていたとの事実は認められず,むしろ,被告人会社Aの方で重要な顧客であるサイクル機構の意向にできる限り沿うべく無理を承知の上で受注していたとの事実が認められることからすると,この点をもって被告人会社Aに有利な事情とすることはできない。 以上の事情に加え,被告人会社Aにおいては,転換試験棟のみならず,第1,第2加工施設棟におい との事実が認められることからすると,この点をもって被告人会社Aに有利な事情とすることはできない。 以上の事情に加え,被告人会社Aにおいては,転換試験棟のみならず,第1,第2加工施設棟においても,許可を得ることなく加工施設の設備や加工工程を変更していたばかりか,科学技術庁の調査に際しては,その許可違反の設備等を撤去するなどの工作を行っていたことをも考慮すると,被告人会社Aは全社的に許可を尊重する意識・姿勢を欠いていたといわざるを得ない。被告人会社Aにおいて許可違反の実態を改善しようとする動きが全くなかったわけではないが,結局のところ,何ら有効な施策は取られず,その改善も見られなかったのであるから,被告人会社Aの安全軽視の姿勢は非常に根深いものというべきである。 以上のとおり,認可内容を遵守するとの意識の鈍麻が被告人会社A全体において核燃料物質を取り扱うことについての緊張感を弛緩させたといい得ることからすると,被告人会社Aの原子炉等規制法違反の責任は,単に適正な許認可手続を取らなかったという手続違反にとどまらない重大なものというべきである。 2 労働安全衛生法違反の事実について被告人会社Aにおいては,判示「事故に至る経緯」及び前項において述べたように,安全管理者らから作業員らに対し保安上必要な指示・監督がなされることはほとんどなく,また,臨界等に関する全体的な教育訓練はほとんど実施されていなかった上,各現場における実地教育においても系統立てた臨界教育はなされておらず,さらに,個々の作業員の能力や知識について検証する手だても講じられていなかった。本件労働安全衛生法違反の事実は,このような被告人会社Aにおける長年にわたる安全軽視の姿勢の現れといえ,その犯情は極めて悪い。 さらに,この臨界教育軽視の風潮が,臨界に対 じられていなかった。本件労働安全衛生法違反の事実は,このような被告人会社Aにおける長年にわたる安全軽視の姿勢の現れといえ,その犯情は極めて悪い。 さらに,この臨界教育軽視の風潮が,臨界に対する意識を低下させ,東海事業所においては臨界は発生しないとの「神話」を作り上げ,最終的には末端の作業員から幹部に至るまで,臨界事故発生の危険性についてほとんど意識しないまま日常の職務に当たるような状態になり,本件臨界事故を招来するに至ったというのであるから,被告人会社Aの労働安全衛生法違反の責任も重大というほかない。 3 まとめ以上のとおり,被告人会社Aの犯した原子炉等規制法違反及び労働安全衛生法違反の各事実は,単なる一時的なものではなく,長年にわたり被告人会社A全体を支配してきた安全軽視の姿勢の現れというべきであり,核燃料加工事業者としての緊張感を欠いたその姿勢は厳しく責められなければならない。 これらの事情にかんがみれば,被告人会社Aにおいて,起訴に係る事実関係を争わず,その代表者が本件臨界事故を発生させたことについて陳謝していること,被告人会社Aが本件臨界事故を発生させたことにより核燃料物質の加工事業許可の取消処分を受けていること,前記のように本件臨界事故により死亡した被害者両名の遺族に対し慰謝の措置に努め,同人らとの間で示談が成立していること,風評被害等による損失についてもできるだけ補償すべく努力していること等の被告人会社Aに有利な事情を最大限に考慮しても,なお,被告人会社Aに対しては,およそ法が許すところの最高の刑罰をもって臨むほかない。 第3 被告人会社A以外の各被告人の責任について 1 被告人Bについて被告人Bは,本件臨界事故当時の東海事業所長であり,また,保安規定によって定められた安全主管者として,核 むほかない。 第3 被告人会社A以外の各被告人の責任について 1 被告人Bについて被告人Bは,本件臨界事故当時の東海事業所長であり,また,保安規定によって定められた安全主管者として,核燃料物質の加工等を行う際の保安を総括する業務に従事していたのであるから,同所における操業についての最高責任者といえる。加えて,その学歴・資格や社内における経験・履歴等からも明らかなように,被告人Bは核燃料物質の取扱いについて十分な知識と経験を有していたと認められることからすれば,被告人Bは,本件臨界事故当時の東海事業所の最高責任者として,作業員に対する臨界教育を始めとする臨界事故の防止に向けた諸施策を講じなければならない責務を負っていたのであり,かつ,それが可能な地位と能力を有していたというべきである。 また,被告人Bは,昭和59年当時,技術課長として加工事業変更許可の取得に関与した際,1バッチ縛りの遵守が困難であることを十分認識しながら,1バッチ縛りを許可内容に含めることを了承していること,常陽第6次操業における再溶解工程においてステンレス製バケツの使用が検討された際にも,製造部長としてこれを了承していること,平成7年9月の安全専門委員会に技術部長として出席した際,1バッチ縛りが遵守されていない事実,ステンレス製バケツを使用してウランを溶解している事実,貯塔を用いて混合均一化作業が行われる事実等が報告されたが,これを了承していることなどの事情が認められるが,これによれば,被告人Bは,前述した被告人会社Aの長年にわたる安全軽視の姿勢が形成される過程に深く関与してきたといえる。 以上によれば,被告人Bの刑事責任は極めて重い。 しかしながら,被告人Bの具体的な刑を量定するに当たっては,以下の事情についても検討する必要がある。 深く関与してきたといえる。 以上によれば,被告人Bの刑事責任は極めて重い。 しかしながら,被告人Bの具体的な刑を量定するに当たっては,以下の事情についても検討する必要がある。 すなわち,被告人Bは,本件操業の従事者に対し誤った指示・命令等を出すなどして臨界を発生させたなどという本件臨界事故に直接結び付く過失があったとしてその責任が問われているのではなく,許可内容を遵守した加工作業を行うよう指示・監督するとともに,臨界教育等を行って臨界事故の発生を防止すべき注意義務を果たさなかったという監督・管理責任が問われているのである。そして,臨界教育等を実施して被告人会社Aにおける安全管理体制をしっかり根付かせることは一朝一夕にできるものではないことからすれば,被告人会社Aの歴代の幹部,殊に歴代の東海事業所長においても安全管理体制を構築してこなかった責任の一端があるというべきである。以上の事情からすれば,本件臨界事故が発生した当時の東海事業所長であるということで,被告人Bに過大な責任を負わせることはできないというべきである。 次いで,被告人Bが,東海事業所長として,本件臨界事故の発生を防止するためにいかなる方策をとり得たかを具体的に検討すると,常陽第9次操業における硝酸ウラニル溶液等の製造については平成10年11月ころから交渉が始まり,平成11年1月及び2月の被告人会社Aにおける会議において受注予定が報告されたとの事実が認められるところ,被告人Bは,その後の同年6月に東海事業所の所長に就任し,その後2か月余りで本件操業が開始され,さらに,それからわずか3週間後に本件臨界事故が発生しているのである。以上の事実経過からすれば,被告人Bは,本件臨界事故当時,東海事業所長の立場にあったものの,常陽第9次操業を行うことは既に会社の方針 らに,それからわずか3週間後に本件臨界事故が発生しているのである。以上の事実経過からすれば,被告人Bは,本件臨界事故当時,東海事業所長の立場にあったものの,常陽第9次操業を行うことは既に会社の方針として決定されていたことであり,しかも被告人会社A以外に常陽用の硝酸ウラニル溶液を製造できる核燃料加工事業者がいない中で,急きょその受注を中止ないし延期して作業員に対する臨界教育等を実施し,長年にわたる被告人会社Aにおける安全軽視の姿勢及びこれにより培われた作業員の安全軽視の意識を改革・改善して安全管理体制を構築することは,現実的には困難であったといわざるを得ない。確かに,作業員に対し内閣総理大臣の許可内容を遵守した加工作業を行うよう指示・監督することはさほど困難ではないものの,その許可の背景にある臨界や核的制限等について十分な教育訓練をしておかなければ,被告人Gのように効率性を求める余り許可内容から逸脱した作業を行う作業員が出て来る可能性が十分あったのであるから,本件臨界事故の発生を防止するためには,単に許認可を遵守するよう指示・監督するのみでは足りず,臨界教育等を実施して安全管理体制を構築することが不可欠であったというべきである。 以上の点は,被告人Bの刑責を否定するものではないけれども,その刑を量定するに当たっては無視することのできない事情というべきである。 さらに,前述のとおり,被告人Bが被告人会社Aの安全軽視の姿勢の形成過程に深く関与していた事実が認められるものの,その関与はあくまでも被告人会社Aという組織の一員としてのものであって,被告人Bの一存により判示のような許可内容から逸脱した操業が実施されたものでもない。 そして,以上の事情のほかにも,被告人Bは,捜査段階から一貫して本件各犯行についての事実関係をすべて認 ,被告人Bの一存により判示のような許可内容から逸脱した操業が実施されたものでもない。 そして,以上の事情のほかにも,被告人Bは,捜査段階から一貫して本件各犯行についての事実関係をすべて認め,十分に反省している様子がうかがえること,個人的にも被害者両名の遺族に対して慰謝の措置を講じ,同遺族らにおいても被告人Bについて必ずしも厳しい処罰を望んでいるわけではないこと,本件各犯行により被告人会社Aを懲戒解雇されているほか,本件臨界事故が広く報道され,当時の東海事業所長として社会的な非難を受けるなど,相当の社会的制裁を受けていること,被告人Bには前科前歴がなく,今まで犯罪行為とは無縁の生活を送ってきたことなど被告人Bに有利な事情が認められる。 以上の諸事情を総合考慮すれば,被告人Bの本件各犯行における責任は非常に重く,主文のとおりの禁錮刑及び罰金刑を科すべきであるが,被告人Bに有利な前記の事情を考慮して,その禁錮刑の執行を5年間猶予するのが相当と判断した。 2 被告人Cについて被告人Cは,平成9年8月に製造部長兼製造グループ長に就任し,併せて平成6年10月からは原子炉等規制法に基づく保安規定によって定められた東海事業所の製造管理統括者として,平成9年1月からは労働安全衛生法に基づく安全管理者として,東海事業所における核燃料物質の加工等の業務全般を統括し,同加工等の計画及びその実施について,同加工等の従事者に対する指導及び監督を行うとともに,同加工等に伴う危険を防止し安全を確保する業務に従事していたことに加え,被告人会社Aにおいてはほぼ一貫して製造部に勤務していたことからも明らかなように,溶液製造作業の内容や転換試験棟の作業状況等についても十分な知識を有していたことが認められる。以上の事情によれば,被告人Cは,本件臨界事 てはほぼ一貫して製造部に勤務していたことからも明らかなように,溶液製造作業の内容や転換試験棟の作業状況等についても十分な知識を有していたことが認められる。以上の事情によれば,被告人Cは,本件臨界事故当時,製造部門の最高責任者として,東海事業所において被告人Bに次ぐ地位にあって,被告人Bと同様に,作業員に対する臨界教育を始めとする臨界事故の防止に向けた諸施策を講じなければならない責務を負っていたのであり,かつ,それが可能な地位と能力を有していたというべきである。 また,被告人Cは,平成5年12月ころ,製造部副部長兼製造一課長として,混合均一化工程の効率化を検討した際,当時の転換試験棟主任に対して貯塔を用いた混合均一化の作業方法の検討を指示し,これに応えて提案された貯塔に仮設配管を設置して行う混合均一化の作業方法について了承していること,硝酸ウラニル溶液の製造期間の短縮が問題となった際,自ら転換試験棟の作業員らに対しステンレス製バケツを使用した再溶解作業のやり方を指導していること,平成7年9月の安全専門委員会に出席した際,1バッチ縛りが遵守されていない事実,ステンレス製バケツを使用してウランを溶解している事実,貯塔を用いて混合均一化作業が行われる事実等が報告されたが,これを了承していること,溶解作業や混合均一化作業についてステンレス製バケツや貯塔による旨記載された手順書について承認を与えていることなどの事情が認められるが,これによれば,時として積極的に許認可違反の工程を自ら指導するなど,同被告人もまた被告人Bと同等に被告人会社Aにおける安全軽視の姿勢が形成される過程に深く関与していたものと認められる。 以上によれば,被告人Cの刑事責任は重大というべきである。 しかしながら,被告人Bの責任について説明したのと同様に,被告 姿勢が形成される過程に深く関与していたものと認められる。 以上によれば,被告人Cの刑事責任は重大というべきである。 しかしながら,被告人Bの責任について説明したのと同様に,被告人Cは,本件臨界事故当時,製造部門の最高責任者ではあったものの,本件臨界事故発生に直接結び付く過失があったとしてその責任が問われているのではなく,臨界教育等を行って本件臨界事故の発生を防止すべき注意義務を怠ったという監督・管理責任が問われていることに加え,被告人Cのみがこのような注意義務を負っていたわけでもない。また,被告人Cが被告人会社Aの安全軽視の姿勢の形成過程に以前から深く関与していた事実が認められるものの,その関与はあくまでも被告人会社Aという組織の一員としてのものであって,被告人Cの一存により判示のような許可内容から逸脱した操業が実施されたものでもないとの事情も認められる。 そして,以上の事情のほかにも,被告人Cは,捜査段階から一貫して本件各犯行について事実関係をすべて認め,十分に反省している様子がうかがえること,個人的にも被害者両名の遺族に対して慰謝の措置を講じ,同遺族らにおいても被告人Cについて必ずしも厳しい処罰を望んでいるわけではないこと,本件各犯行により被告人会社Aを懲戒解雇されているなど,相当の社会的制裁を受けていること,被告人Cには前科前歴がなく,今まで犯罪行為とは無縁の生活を送ってきたことなど被告人Cに有利な事情が認められる。 以上の諸事情を総合考慮すれば,製造部門の最高責任者としての被告人Cの刑事責任は重大であり,被告人Bと同じ刑期の禁錮刑を言い渡すべきであるが,被告人Cに有利な前記の事情を考慮して,その刑の執行を猶予するのが相当と判断した。 3 被告人Dについて被告人Dは,平成9年8月に 被告人Bと同じ刑期の禁錮刑を言い渡すべきであるが,被告人Cに有利な前記の事情を考慮して,その刑の執行を猶予するのが相当と判断した。 3 被告人Dについて被告人Dは,平成9年8月に製造部計画グループ長に就任し,核燃料物質の加工工程を管理する業務に従事し,平成11年7月からは,原子炉等規制法に基づく核燃料取扱主任者として,東海事業所における核燃料物質の取扱いに関して保安の監督を行う業務に従事していたところ,本件臨界事故当時,東海事業所における核燃料取扱主任者として,加工事業における核燃料物質の取扱いに関し,誠実にその職務を遂行し,その取扱いにつき保安の監督を行わなければならないにもかかわらず,必要な措置を講じなかったものであり,このような被告人Dの対応は,加工事業者に核燃料取扱主任者の選任を義務付け,同主任者により核燃料加工事業における安全を実現しようとした原子炉等規制法の趣旨を没却するものといえる。そればかりか,平成7年9月の安全専門委員会に出席した際,1バッチ縛りが遵守されていない事実,ステンレス製バケツを使用してウランを溶解している事実,貯塔を用いて混合均一化作業が行われる事実等が報告されたが,これを了承するなど,被告人会社Aの安全軽視の姿勢の形成過程への関与も認められる。 以上によれば,被告人Dの刑事責任には重いものがある。 しかしながら,東海事業所において,核燃料取扱主任者は独立した職務となっているわけではなく他の職務との兼職とされていた上,核燃料取扱主任者が担当すべき具体的な職務内容が明確ではなかったことから,被告人D以前の歴代の核燃料取扱主任者において安全主管者らに対し意見具申をするようなことはなかったし,また,核燃料取扱主任者の交代に際しても,前任者からは特段の引継事項はなかったとの事情が認めら ら,被告人D以前の歴代の核燃料取扱主任者において安全主管者らに対し意見具申をするようなことはなかったし,また,核燃料取扱主任者の交代に際しても,前任者からは特段の引継事項はなかったとの事情が認められる。そのような中で,被告人Dは,本件臨界事故のわずか3か月前に核燃料取扱主任者に就任したとの事情にかんがみれば,その短期間に臨界事故防止に向けた諸施策を安全主管者らに助言することは,現実的には必ずしも容易ではなかったというべきである。 そして,以上の事情のほかにも,被告人Dは,捜査段階から一貫して本件各犯行について事実関係をすべて認め,十分に反省している様子がうかがえること,個人的にも被害者両名の遺族に対して慰謝の措置を講じ,同遺族らにおいても被告人Dについて必ずしも厳しい処罰を望んでいるわけではないこと,本件各犯行により被告人会社Aから出勤停止10日間の処分を受けるなど,相応の社会的制裁を受けていること,被告人Dには前科前歴がなく,今まで犯罪行為とは無縁の生活を送ってきたことなど被告人Dに有利な事情が認められる。 以上の事情を総合考慮すれば,被告人Dに対しては,主文の刑を量定した上で,その執行を猶予するのが相当と判断した。 4 被告人Eについて被告人Eは,平成9年8月に製造部製造グループ職場長に就任し,平成10年4月からはスペシャルクルーの業務の監督を兼務するようになり,ウランの加工作業等に従事する作業員を掌握して核燃料物質の加工等の作業を指揮及び監督する業務に従事していたところ,溶液製造作業が受注に応じて断続的かつ不定期にしか実施されないもので,今回は約2年10か月ぶりの操業であった上,本件操業時のスペシャルクルーの班員の中には濃縮度20パーセント未満の硝酸ウラニル溶液の製造作業に精通した作業員は誰もいなかっ 定期にしか実施されないもので,今回は約2年10か月ぶりの操業であった上,本件操業時のスペシャルクルーの班員の中には濃縮度20パーセント未満の硝酸ウラニル溶液の製造作業に精通した作業員は誰もいなかったのであるから,製造グループの職場長としては本件操業を担当する被告人Gらスペシャルクルーの班員の知識・能力を見極め,適切な指示・監督を行うべきであったにもかかわらず,これを怠って本件臨界事故を招来しているのであるから,その刑事責任には重いものがある。 しかしながら,被告人Eは,沈殿槽を用いて混合均一化作業を行うことについて,被告人Gから事前に了承を求められていなかったことに加え,被告人Eが,本件操業について被告人Gと打ち合せた際,被告人Gに対して,手順書を確認するなどの指示を行い,被告人Gにおいても,溶液製造作業の経験はないものの,作業経験のある者に聞いたり,手順書を見ればなんとかなる旨答えているなど,不十分ではあるにしても被告人Eなりに本件操業における安全管理について考慮していたとの諸事情を考慮すると,被告人Eの過失が本件臨界事故発生に寄与した度合いは,他の各被告人のそれと比較してそれほど強いとはいえない。 そして,以上の事情のほかにも,被告人Eは,本件臨界事故の収束作業において,自らその危険な作業に当たっていること,捜査段階から一貫して本件犯行について事実関係をすべて認め,十分に反省している様子がうかがえること,個人的にも被害者両名の遺族に対して慰謝の措置を講じ,同遺族らにおいても被告人Eについて必ずしも厳しい処罰を望んでいるわけではないこと,本件犯行により被告人会社Aから出勤停止10日間の処分を受けるなど,相応の社会的制裁を受けていること,被告人Eには前科前歴がなく,今まで犯罪行為とは無縁の生活を送ってきたことなど被告人Eに有利 いこと,本件犯行により被告人会社Aから出勤停止10日間の処分を受けるなど,相応の社会的制裁を受けていること,被告人Eには前科前歴がなく,今まで犯罪行為とは無縁の生活を送ってきたことなど被告人Eに有利な事情が認められる。 以上の事情を総合考慮し,被告人Eに対しては,主文の刑を量定した上で,その執行を猶予するのが相当と判断した。 5 被告人Fについて被告人Fは,平成9年8月,製造部計画グループ主任に就任して以降,核燃料物質の加工等について作業指示書を作成するなどの加工工程を管理するなどの業務に従事していたところ,被告人Gから貯塔の代わりに沈殿槽を用いて硝酸ウラニル溶液を混合均一化することの承認を求められた際,臨界発生の危険性について十分検討することなく極めて安易にこれを承認しているが,被告人Fが被告人Gに対して上記の承認を与えなければ,本件臨界事故は発生しなかったと認められることからすると,被告人Fの刑事責任は重大である。 しかしながら,被告人Fは,製造部計画グループ主任にすぎず,その職務内容は核燃料物質の加工等について作業指示書を作成するなどの工程管理等であり,そもそも被告人Gらスペシャルクルーの作業を監督する立場にはなかったこと,被告人Eと同様に,被告人Gに対して,本件操業について分からないことがあれば手順書を確認し,作業経験のある者に尋ねるよう助言していること,被告人Fは,核燃料物質について一定の知識は有していたものの,東海事業所における臨界管理方法,特に転換試験棟における臨界管理方法等について被告人会社Aから十分な教育を受けていなかったこと等の事情が認められる。 そして,以上の事情のほかにも,被告人Fは,捜査段階から一貫して本件犯行につき認め,真摯に反省している様子がうかがえること,個人的に 分な教育を受けていなかったこと等の事情が認められる。 そして,以上の事情のほかにも,被告人Fは,捜査段階から一貫して本件犯行につき認め,真摯に反省している様子がうかがえること,個人的にも被害者両名の遺族に対して慰謝の措置を講じ,同遺族らにおいても被告人Fについて必ずしも厳しい処罰を望んでいるわけではないこと,被告人会社Aの社員として入社以来まじめな勤務を続けており,道路交通法違反の罰金前科1犯を有するのみでその他に前科前歴はないこと,本件犯行により,被告人会社Aを諭旨解雇されるなど,相当の社会的制裁を受けていることなど被告人Fに有利な事情が認められる。 以上の事情を総合考慮すると,被告人Fに対しては,本件臨界事故発生に直結する過失を犯したという点から,被告人B及び被告人Cに次いで重い禁錮刑を科した上で,同被告人に有利な前記の事情を考慮して,その執行を猶予するのが相当と判断した。 6 被告人Gについて被告人Gは,平成9年8月からスペシャルクルーに配属され,平成10年8月以降はスペシャルクルーの副長として同班員を指揮して転換試験棟における核燃料物質の加工等を行わせる業務に従事していたところ,本件操業に当たって,自らが溶液製造作業の経験がなく,実際にもその作業方法を十分には把握していなかったにもかかわらず,手順書等を検討したり,作業経験のある者から作業方法を聴取したりすることなく,安易に本件操業を開始し,混合均一化作業に貯塔を用いずに沈殿槽を用いることにし,被告人Fの承認を得た上,被害者両名に対し合計7バッチ分のウランを含有する硝酸ウラニル溶液を沈殿槽内に注入することを指示して本件臨界事故を発生させたとの事実関係に照らすと,本件臨界事故発生の直接の原因は被告人Gの過失にあるといえる。本件操業を実際に担当する従事者と 有する硝酸ウラニル溶液を沈殿槽内に注入することを指示して本件臨界事故を発生させたとの事実関係に照らすと,本件臨界事故発生の直接の原因は被告人Gの過失にあるといえる。本件操業を実際に担当する従事者としては,手順書に目を通し,本件操業の内容を検討・把握してこれに従った作業をすることが最低限の職務として求められているにもかかわらず,被告人Gは,この最低限の職務すら怠り,本件臨界事故を引き起こしたもので,その過失はあまりに単純かつ重大なものである。 以上によれば,被告人Gの刑事責任は重いというほかない。 しかしながら,被告人Gは,転換試験棟における臨界管理方法等について被告人会社Aから全くといっていいほど教育を受けておらず,そのような被告人会社Aの安全管理体制の不備が被告人Gの過失の背景にあること,本件臨界事故により被告人G自身も放射線を浴びるなどして約3か月間入院していること等の事情が認められる。 そして,以上の事情のほかにも,被告人Gは,捜査段階から一貫して本件犯行につき認め,十分に反省している様子がうかがえること,個人的にも被害者両名の遺族に対して慰謝の措置を講じ,同遺族らにおいても被告人Gについて必ずしも厳しい処罰を望んでいるわけではないこと,被告人会社Aの社員としてこれまで長年にわたってまじめな勤務を続けており,前科前歴もなく,およそ犯罪行為とは無縁な生活を送ってきたこと,本件犯行により,被告人会社Aから出勤停止14日間の処分を受けるなど,相応の社会的制裁を受けていることなど被告人Gに有利な事情が認められる。 以上の事情を総合考慮すると,被告人Gに対しては,主文の刑を量定した上で,その執行を猶予するのが相当と判断した。 第4 結論本件は,我が国において初めての臨界事故に関するものであるが,本件臨 の事情を総合考慮すると,被告人Gに対しては,主文の刑を量定した上で,その執行を猶予するのが相当と判断した。 第4 結論本件は,我が国において初めての臨界事故に関するものであるが,本件臨界事故により被害者両名が死亡するという重大な結果が生じたばかりか,本件臨界事故が地域社会のみならず日本の社会全体に与えた衝撃も極めて大きく,核燃料加工事業,更には原子力の安全性に対する国民の信頼が大きく揺らいだといっても過言ではない。このような極めて重大な事故を引き起こした背景には,被告人会社Aにおける長年にわたるずさんな安全管理体制があったことが認められ,被告人会社Aの安全軽視の姿勢は厳しく責められなければならない。また,各被告人もそれぞれの地位・役職に応じて本件臨界事故の発生を未然に防止すべき職務を負っていながら,臨界管理の重要性に思いを致すことなく,漫然とその職務に従事していたため本件臨界事故を惹起しており,いずれの被告人の刑責も重大であって,その安全軽視の姿勢は厳しく非難されなければならない。 他方,前述したように,本件臨界事故は,長年にわたるずさんな安全管理体制下にあった被告人会社Aの企業活動において発生したものであり,当該企業の一員であった各被告人だけが本件臨界事故発生に寄与したわけではないことからすると,本件臨界事故の結果が極めて重大であるからといって,過度に重い刑をもって各被告人個々人の責任を問うことは本件臨界事故の実態を反映させることにはならないというべきである。 以上の事情を総合考慮すると,被告人会社Aに対しては,およそ法が許す限り最高の刑罰を科すのが相当であるが,各被告人については,主文の刑をそれぞれ量定した上で,禁錮刑についてはその執行を猶予することとした。 よって,主文のとおり判決する。 平成 が許す限り最高の刑罰を科すのが相当であるが,各被告人については,主文の刑をそれぞれ量定した上で,禁錮刑についてはその執行を猶予することとした。 よって,主文のとおり判決する。 平成15年3月3日水戸地方裁判所刑事部裁判長裁判官鈴木秀行裁判官下津健司裁判官江口和伸

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る