平成28(ワ)648 不正競争行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年3月5日 大阪地方裁判所
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判決文本文72,780 文字)

平成30年3月5日判決言渡同日判決原本領収裁判所書記官平成28年(ワ)第648号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成29年12月25日判決 原告株式会社富士薬品同訴訟代理人弁護士鳥飼重和同島村 謙同渡邉宏毅 被告 P1同訴訟代理人弁護士平川良仁 被告株式会社八光薬品 被告 P2 被告 P3上記3名訴訟代理人弁護士伊藤俊文主文 1 被告P1及び被告株式会社八光薬品は,原告に対し,連帯して,318万6491円及びこれに対する平成27年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告P1は,原告に対し,174万円及びこれに対する平成27年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告P2は,原告に対し,46万円及びこれに対する平成27年10月6日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告P3は,原告に対し,52万円及びこれに対する平成27年10月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告に生じた費用の100分の42,被告P1に生じた費用の2 分の1,被告株式会社八光薬品に生じた費用の10分の る金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告に生じた費用の100分の42,被告P1に生じた費用の2 分の1,被告株式会社八光薬品に生じた費用の10分の7,被告P2に生じた費用の20分の19,被告P3に生じた費用の20分の19を原告の負担とし,原告に生じた費用の100分の48及び被告P1に生じた費用の2分の1を被告P1の負担(ただし,原告に生じた費用の100分の31については被告株式会社八光薬品との連帯負担)とし,原告に生じた費用の100分の31及び被告株式会社八光薬品に生じた 費用の10分の3を被告株式会社八光薬品の負担(ただし,原告に生じた費用の100分の31については被告P1との連帯負担)とし,原告に生じた費用の100分の5及び被告P2に生じた費用の20分の1を被告P2の負担とし,原告に生じた費用の100分の5及び被告P3に生じた費用の20分の1を被告P3の負担とする。 7 この判決は第1項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨被告らは,原告に対し,連帯して,1025万3630円及びこれに対する被告P3は平成27年10月8日から,その余の被告は平成27年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,医薬品の配置販売等を業とし,株式会社明星薬品(以下「明星薬品」という。)から配置販売業の事業譲渡を受けた原告が,①いずれも明星薬品の元従業員であり,同社退職後に競合会社である被告株式会社八光薬品(以下「被告八光薬品」と いう。)の一員となった被告P1(以下「被告P1」という。)及び被告P3(以下 「被告P3」という。)並びに明星薬品の元従業員で 会社である被告株式会社八光薬品(以下「被告八光薬品」と いう。)の一員となった被告P1(以下「被告P1」という。)及び被告P3(以下 「被告P3」という。)並びに明星薬品の元従業員であり,同社退職後に被告八光薬品を設立し,その代表者となった被告P2(以下「被告P2」といい,これら3名を「被告ら3名」ということがある。)が共同して,明星薬品から示された顧客情報を不正使用し,被告八光薬品に開示し(7号),また,被告ら3名が明星薬品退職時に返却すべき顧客情報を不正取得,不正使用し,被告八光薬品に開示した(4号)と主 張して,被告ら3名には不正競争防止法2条1項4号,7号所定の不正競争行為,被告八光薬品には,不正競争防止法2条1項5号,8号所定の不正競争行為があるとして,被告らに対し,不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求として,損害金381万8630円及びこれに対する不法行為後の日である訴状送達日の翌日(被告P1,被告P2及び被告八光薬品は平成27年10月6日,被告P3は平成27年10月8 日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,②被告ら3名は,明星薬品退職時に,誓約書を作成して競業避止の合意をしたにもかかわらず,これに違反して競業を行った債務不履行又は不法行為があり,また,被告らは,共同で被告八光薬品の業として競業避止義務違反に当たる営業活動を行うことにより,競業避止合意により原告が被告ら3名に対して有する債権を妨害した債権侵 害の不法行為があると主張して,被告らに対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として,損害金643万5000円及びこれに対する請求日の翌日又は不法行為後の日である訴状送達日の翌日(被告P1,被告P2及び被告八光薬品は平成27年10月6日,被告 は不法行為に基づく損害賠償請求として,損害金643万5000円及びこれに対する請求日の翌日又は不法行為後の日である訴状送達日の翌日(被告P1,被告P2及び被告八光薬品は平成27年10月6日,被告P3は平成27年10月8日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実。なお,書証の枝番号は,特に記載しない限り,その全てを示す趣旨である。 以下,同様である。)(1) 当事者等ア原告は,医薬品,医薬部外品,健康食品等の製造,卸・小売販売及び輸出入並 びに医薬品配置販売業等を目的とする会社である。 イ医薬品,健康食品等の販売等を目的とし,原告の100%子会社であった明星薬品は,平成26年7月31日に解散し,医薬品配置販売業を原告に事業譲渡した。 ウ被告P1被告P1は,昭和51年11月1日から平成26年7月31日まで,明星薬品梅田営業所の従業員として医薬品の配置販売,医薬部外品,健康食品等の訪問販売を行っ ていたが,同日,明星薬品の解散に伴い退職した。 被告P1は,明星薬品退職後,被告八光薬品に入社し,現在まで被告八光薬品の一員として,医薬品の配置販売,医薬部外品,健康食品等の訪問販売を行っている。 エ被告P2被告P2は,平成2年3月に明星薬品に入社後,平成21年4月28日に取締役に 就任し(従業員兼務),平成26年5月26日に取締役を退任した。同年7月31日時点で,明星薬品梅田営業所の営業職の従業員として,医薬品の配置販売,医薬部外品,健康食品等の訪問販売を行っていたが,明星薬品の解散に伴い退職した。 被告P2は,同年7月23日に被告八光薬品を設立し,現在まで同 薬品梅田営業所の営業職の従業員として,医薬品の配置販売,医薬部外品,健康食品等の訪問販売を行っていたが,明星薬品の解散に伴い退職した。 被告P2は,同年7月23日に被告八光薬品を設立し,現在まで同社の代表取締役を務め,自らも医薬品の配置販売,医薬部外品,健康食品等の訪問販売を行っている。 オ被告P3被告P3は,平成19年12月に明星薬品に入社後,平成26年7月31日時点まで,明星薬品の従業員として医薬品の配置販売,医薬部外品,健康食品等の訪問販売を行い,堺営業所の所長を務めていたが,同日,明星薬品の解散に伴い退職した。 被告P3は,明星薬品退職後,被告八光薬品に入社し,現在まで被告八光薬品の一 員として医薬品の配置販売,医薬部外品,健康食品等の訪問販売を行っている。 カ被告八光薬品被告八光薬品は,平成26年7月23日に設立された医薬品,医薬部外品,健康食品等の販売等を目的とする株式会社である。 その構成員は,代表取締役である被告P2と,被告P1及び被告P3の3名である。 (2) 明星薬品は,原告との間で,平成22年9月27日,医薬品配置懸場所有権売 買契約を締結し,その2万7265軒の顧客が記載された懸場帳(医薬品配置業界における顧客名簿のこと。以下,「本件懸場帳」という。)を代金3億0050万9000円で原告に売り渡し(甲6),同時に,医薬品配置懸場賃貸借契約を締結し,本件懸場帳を原告から借り受けた(甲7)。 明星薬品は,平成26年7月31日に解散するに当たり,賃借していた本件懸場帳 を原告に返還し,本件懸場帳の顧客に対する営業権を原告に譲渡した。 (3) 誓約書の作成及び提出被告ら3名は,平成26年7月31日,明星薬品退職後の機密事項の守秘義務,競業避止義務等を負うこと等を内容とす 還し,本件懸場帳の顧客に対する営業権を原告に譲渡した。 (3) 誓約書の作成及び提出被告ら3名は,平成26年7月31日,明星薬品退職後の機密事項の守秘義務,競業避止義務等を負うこと等を内容とする誓約書(以下「本件誓約書」という。)に署名押印し,同誓約書を明星薬品に提出した(甲13)。同誓約書には次のような記載 がある。 「1 退職後も貴社が保有する一切の機密事項を他に漏えいしないことを誓約いたします。 2 退職後に発覚した不正行為により,貴社に対する損害が明らかとなった場合には,速やかに賠償いたします。また,その不正調査にも協力することを誓約いたし ます。 3 貴社のお客様が富士薬品に引き継がれることに鑑み,貴社を退職した後自ら医薬品配置販売業を自営する場合又は同業他社に従事者として勤務する場合においても,3年間は貴社で担当していたお客様に出入りし,置き合わせをいたしません。 万一これに反した場合は,一軒につき金3万円也を支払うことを約束いたします。 4 退職日現在における年次有給休暇の残日数については,その残日数に平均賃金を乗じた金額を受領いたします。但し,退職後に不正行為が発覚した場合には,その権利を放棄いたします。」(4) 明星薬品の顧客情報の管理状況ア明星薬品では,顧客の名前,住所,電話番号に加え,地図や使用履歴,好み, 家族構成,持病等の情報が記載された顧客情報を,懸場帳として一括してデータ管理 していた(証人P4)。 イ明星薬品では,毎月1回,顧客情報を紙媒体に打ち出したものを,「廻商リスト」及び「ルート一覧」として営業部員に配布していた(被告P1本人,被告P2本人,被告P3本人)。 ウ廻商リストは,顧客ごとに1枚の紙媒体に打ち出されたものであり,各顧客に 関し 「廻商リスト」及び「ルート一覧」として営業部員に配布していた(被告P1本人,被告P2本人,被告P3本人)。 ウ廻商リストは,顧客ごとに1枚の紙媒体に打ち出されたものであり,各顧客に 関し,懸場帳と同様の顧客情報全てが記載されていた。 営業部員は,これに新たな情報を手書きで加筆した場合には,これを事務員又はオペレータに提出し,オペレータが当該情報をデータ入力していた(証人P4,被告P2本人)。 エルート一覧は,営業部員の担当顧客の顧客名,住所,電話番号等が,ルートナ ンバーによるまとまりごとに紙媒体にプリントアウトされたものであり,営業部員は,これを持参して顧客訪問を行っていた(甲18,乙34,被告P1本人)。 (5) 原告による被告P1への事実確認(平成26年9月17日)ア原告では,被告P1が明星薬品の退職後に元担当顧客に対して被告八光薬品の営業をしており,原告の取引が中止になったとの報告を受けたことから,被告P1に よる違法行為の存否を確認するため,平成26年9月17日,原告の従業員であるP4(以下「P4」という。)その他の2名の原告の従業員は,被告P1を原告の西宮営業所に呼び出し,事情を聴取した(甲60)。 イ被告P1は,同日の事実確認の場で,事実報告書(甲16,以下,これを「P1自供書」という。)を作成し,P4に提出した。 P1自供書には,「7月31日以降,示談書に基づき8月以降には明星薬品のお客様の後は廻らないと約束をしていましたが,現売客先約20軒,約30万は商売しました。薬箱も後明星薬品の後に約20軒置きましたことは事実であります,誠に申し訳ありませんでした。今後リストUP表を出しお客様を再復活させ富士薬品の実績に継るよう努力します」,「元明星薬品の自分の上得意とその他担当の上得意 後に約20軒置きましたことは事実であります,誠に申し訳ありませんでした。今後リストUP表を出しお客様を再復活させ富士薬品の実績に継るよう努力します」,「元明星薬品の自分の上得意とその他担当の上得意にて,配 置販売,及び現売目的で,お客様情報を持ち出しました。」などと記載されている(甲 16)。 また,P1自供書末尾には,「P1自身お客様が一番大切と考え,現売品がどうしても富士薬品に無い商品特に鹿角霊芝のお客様が多く八光薬品に行けば商品は入ると聞き受けそちらの方に行ってお客様に継続出来ると考え,八光薬品へ行くことを決めました」と記載されている(甲16)。 (6) 被告P1による顧客リスト及び顧客名簿の提出(平成26年9月18日)平成26年9月18日,被告P1は,明星薬品退職後に所持していた明星薬品のルート一覧(甲18,以下「甲18ルート一覧」という。)及び被告P1が明星薬品退職後に営業行為をした顧客をリストアップした9月17日付け手書きのリスト(甲17,以下「P1手書きリスト1」という。)を原告の西宮営業所に持参し,提出した。 (7) 被告P1による再度の顧客リストの提出(平成26年9月19日)被告P1は,P1手書きリスト1への記載漏れを確認し,同年9月19日,自身が明星薬品退職後に営業した顧客のうちP1手書きリスト1に記載しなかった顧客をリストアップした手書きのリスト(甲19,以下「P1手書きリスト2」という。)を持参し,提出した。 (8) 甲18ルート一覧及びP1手書きリスト1,2に掲載された顧客ア甲18ルート一覧には,668軒の顧客名と住所,電話番号,得意先コード,訪問間隔,前回入替日等が記載されている。 これらはいずれも,明星薬品時代の被告P1の担当顧客である(甲18)。 イ P ア甲18ルート一覧には,668軒の顧客名と住所,電話番号,得意先コード,訪問間隔,前回入替日等が記載されている。 これらはいずれも,明星薬品時代の被告P1の担当顧客である(甲18)。 イ P1手書きリスト1には,尼崎市内の80軒の顧客の顧客名と住所,電話番号 に加え,販売した製品の数量及び金額が記載されている。 これらは,いずれも,明星薬品時代の被告P1の担当顧客であり,うち50軒が甲18ルート一覧にも記載がある(甲20)。 ウ P1手書きリスト2には,28軒(うち1軒はP1手書きリスト1と重複)の顧客の顧客名と住所,電話番号に加え,販売した製品の数量及び金額が記載されてい る。 そのうち12軒は,明星薬品時代の被告P1の担当顧客であり,そのうち3軒が甲18ルート一覧に記載がある。その余のうちの15軒は,明星薬品元従業員のP5,P6,P7,P8,及びP9の担当顧客である(甲20)。 同リスト記載の28軒のうち10軒は,尼崎市内の顧客である(甲19)。 エ P1手書きリスト1,2に記載されている顧客のうち,53軒は,甲18ルー ト一覧に記載された顧客である(甲20,弁論の全趣旨)。 (9) 仮処分命令申立事件(平成26年(ヨ)第20019号)の概要本件に先立ち,原告は,平成26年12月8日付で,大阪地方裁判所に,被告P1及び被告八光薬品を債務者として,不正競争防止法及び誓約書に基づき,営業の差止め等を求める仮処分命令の申立てを行った(以下,「本件仮処分申立て」といい,同 事件に係る手続を「本件仮処分手続」という。)。 本件仮処分手続では,平成27年7月9日,和解が成立した(甲3の1,甲4の1,以下「本件和解」という。)。 同和解の主な条項は,①被告P1及び被告八光薬品が,被告P1が甲18ル 手続」という。)。 本件仮処分手続では,平成27年7月9日,和解が成立した(甲3の1,甲4の1,以下「本件和解」という。)。 同和解の主な条項は,①被告P1及び被告八光薬品が,被告P1が甲18ルート一覧に記載された顧客及びP1手書きリスト1及び2の顧客に係る氏名及び住所に関 する顧客情報を使用して医薬品,医薬部外品,医療機器及び健康食品の販売に関する営業行為を行わないこと,②被告P1が,明星薬品時代の担当顧客1155軒に対し,和解成立日から1年6か月間,医薬品の配置販売を行わないこと,③被告P1と被告八光薬品は,和解成立後ただちに,①に係る顧客情報が記載されたルート一覧を廃棄することを約するものである(甲3の1)。 3 争点(1) 不正競争防止法に係る請求関係ア顧客情報の保有者(争点1)イ明星薬品の顧客情報につき,営業秘密性が認められるか(争点2)ウ被告らによる不正競争行為(争点3) エ被告らの不正競争行為により原告に生じた損害(争点4) (2) 競業避止義務違反に係る請求関係ア競業避止義務の内容及び範囲(争点5)イ本件誓約書に係る競業避止合意の有効性(争点6)ウ本件誓約書に係る競業避止義務の相手方(争点7)エ被告らによる競業避止義務違反行為及び被告らが支払うべき金額(争点8) 4 争点に関する当事者の主張(1) 顧客情報の保有者(争点1)(原告の主張)明星薬品は,平成22年9月27日,懸場帳を原告に売り渡すと同時に,原告から同懸場帳を賃借したため(甲7),解散する平成26年7月31日まで,引き続き, 営業秘密である顧客情報を保有する事業者(保有者)であった(甲25,14頁)。 明星薬品の解散に伴い,懸場帳が原告に返還されたため,現在は, 7),解散する平成26年7月31日まで,引き続き, 営業秘密である顧客情報を保有する事業者(保有者)であった(甲25,14頁)。 明星薬品の解散に伴い,懸場帳が原告に返還されたため,現在は,原告が,これらの顧客情報を営業秘密として管理している。したがって,営業秘密である顧客情報の現在の保有者は原告である。 (被告らの主張) 本件で問題となっている顧客情報は,被告ら3名が長年営業活動を行い,その情報を取得して事業主体者である明星薬品に提供することにより,明星薬品が保有し,蓄積することになったものである。したがって,被告ら3名自身が獲得した顧客に関する情報は,明星薬品とともに,被告ら3名自身も保有者である。 特に,被告P1は,明星薬品を退職する17年も前に,固定給の社員から,固定給 のない,売上額に応じた報酬のみの完全歩合制の請負社員に変更されており,報酬を得るために,単に自身の担当顧客を訪問して置き薬の代金を集金するだけではなく,担当顧客との親交を深めて様々な情報を得て,医薬部外品及び健康食品を販売していく必要があり,そうした中で,顧客の満足や信頼を得ながら,商品を効率良く販売するための情報やノウハウを独自に蓄積していった。 このように,被告P1は,社員とはいえ会社から相当に独立した立場にあり,顧客 との関係も,会社に割り振られた単なる集金先という関係ではなく,まさに「自分の顧客」であった。 (2) 明星薬品の顧客情報につき,営業秘密性が認められるか(争点2)(原告の主張)ア秘密管理性 (ア) 顧客情報へのアクセス制限明星薬品は,顧客名,住所及び電話番号からなる顧客情報をデータで管理していたため,明星薬品の従業員は,顧客情報にアクセスできるものの,外部の者はアクセスすること (ア) 顧客情報へのアクセス制限明星薬品は,顧客名,住所及び電話番号からなる顧客情報をデータで管理していたため,明星薬品の従業員は,顧客情報にアクセスできるものの,外部の者はアクセスすることができなかった。 また,明星薬品は,顧客情報を紙媒体でも管理しており,従業員に対してルート一 覧及び廻商リストとして配布していた。これら紙媒体は,従業員が営業業務上社外に持ち出す必要がある場合もあったが,原則,事業所外への持ち出しは就業規則等で禁止されていた(就業規則3条の2,5条4号,7条4号,12条の2の2項,甲10)。 このように,明星薬品において,顧客情報の十分な管理はなされていた。 (イ) 顧客情報が営業秘密であるという従業員の認識 医薬品の販売業は許可制となっており(医薬品医療機器等法24条1項),配置販売業は,販売業者があらかじめ消費者に医薬品を預けておき,消費者がこれを使用した後でなければ,代金請求権を生じない販売方法(先用後利)であって,現金行商は含まれないとされる。 そのため,医薬品配置販売業者は,新規契約をするためには,1軒1軒の個人の住 宅又は会社の営業所等への訪問が必要であり,どこの家庭が配置薬を利用しているかという情報は,大量の人的コストを投入して新規開拓した結果得られたものである。 したがって,医薬品配置業界において,薬箱を置いている顧客の住所,氏名,または連絡先等の情報を記載した顧客名簿は,業務の遂行上非常に有用なものであり,懸場帳と名付けられ,財産的価値のあるものとして取引の対象とされているほどであ る。 このように,顧客情報は,明星薬品の会社の実情に応じた十分な管理がされていたし,顧客情報の高度な有用性から,被告らは,明星薬品が顧客情報を営業秘密として管理しているこ あ る。 このように,顧客情報は,明星薬品の会社の実情に応じた十分な管理がされていたし,顧客情報の高度な有用性から,被告らは,明星薬品が顧客情報を営業秘密として管理していることを当然認識していた。 (ウ) 顧客情報は就業規則等で営業秘密としての周知がされている顧客情報には高度の有用性があるため,明星薬品の機密事項・営業秘密であること は,被告ら3名を含む明星薬品の従業員にとって当然の認識であった。 また,明星薬品では,就業規則に「顧客…の個人情報を正当な理由なく開示し,利用目的を逸脱して取り扱い,又は漏洩してはならない。」(3条の2)と規定し,顧客の情報を会社の秘密として取り扱う規定を置き,顧客情報を営業秘密・機密事項として取り扱い,その漏洩,第三者に対する開示等を禁じていた(5条5号,同7条2 号,同7条の2第1項,同58条1項,90条2項13号)(甲10)。 さらに,被告ら3名は,平成26年7月31日,「退職後も貴社が保有する一切の機密事項を他に漏えいしないことを誓約いたします。」と,本件誓約書において,顧客情報の守秘を誓約している。 このように,明星薬品では,就業規則,及び誓約書等で顧客情報が営業秘密である ことを認識させる措置を講じていた。 イ有用性,非公知性前記のとおり,顧客情報は有用なものであり,非公知であることも明らかである。 (被告らの主張)ア秘密管理性 (ア) 明星薬品では,従業員に対し,顧客情報が掲載されているルート一覧,廻商リストを毎月月初めに配布しており,これらを社外に持ち出すことは特に禁じられていなかった。また,従業員に配布した顧客情報のリストを回収するための具体的措置も何ら採られておらず,古いルート一覧や廻商リストについては,各自,ゴミとして捨 れらを社外に持ち出すことは特に禁じられていなかった。また,従業員に配布した顧客情報のリストを回収するための具体的措置も何ら採られておらず,古いルート一覧や廻商リストについては,各自,ゴミとして捨てたり,裏紙をメモ用紙に使ったり,机の中に放置したりしていた。 (イ) 明星薬品では,顧客情報のデータ管理につきパスワード等による従業員らのア クセス制限を設ける措置は採られておらず,従業員は,自分の担当以外の顧客データも見られる状況にあった。 したがって,明星薬品では,顧客情報が営業秘密であると従業員らが認識できるような形で管理をしておらず,従業員に対して,顧客情報の管理に関する周知,教育も行われていなかった。 (ウ) また,顧客情報は,被告らが営業活動を行い,その情報を取得して事業主体者である明星薬品に提供することにより,明星薬品が保有することになったものであって,被告らが複数回営業活動を行うことにより,顧客との間で信頼関係が構築され,被告らの記憶に残るなどして,被告ら個人に帰属することとなる情報と重複するものである。 かかる顧客情報が営業秘密であるためには,このような個人に帰属する部分も含めて開示等が禁止される営業秘密であることが従業員らにとって明確に認識することができる形で管理される必要があるが,明星薬品においては,そのような管理はなされていなかった。 イ有用性,非公知性 争う。 (3) 被告らによる不正競争行為(争点3)(原告の主張)ア被告ら3名による顧客情報の持ち出し(ア) 被告P1は,平成26年9月17日,「元明星薬品の自分の上得意とその他担 当の上得意にて配置販売,及び現売目的でお客様情報を持ち出しました。」と記載された事実報告書を作成し(甲16),同月18日, P1は,平成26年9月17日,「元明星薬品の自分の上得意とその他担 当の上得意にて配置販売,及び現売目的でお客様情報を持ち出しました。」と記載された事実報告書を作成し(甲16),同月18日,原告に対し,自らが持ち出したとする甲18ルート一覧を返還している。 甲18ルート一覧は,1か月に1回又は2か月に1回訪問する優良顧客が中心の顧客名簿であるが,持ち出す顧客名簿について甲18ルート一覧に限る理由はないこと から,被告P1は,他のルート一覧も持ち出していることは明らかである。 被告P1は,明星薬品退職後,明星薬品時代の被告P1の担当顧客以外の15軒に対して営業活動を行ったことを認めていることから,これら顧客の情報が記載されたルート一覧を明星薬品から持ち出したことは明らかである。 (イ) 被告P1は,被告P2から被告P1の担当顧客以外のリストを渡されて,そこも営業しているとP4に申告しており,また,被告P2から依頼を受けて,被告P2 の担当顧客ではない●(省略)●に対して営業活動をしている。これは,被告P2が明星薬品の顧客リストを持ち出したことの証左である。 また,被告P3も,本来退職時に明星薬品に提出するべき「貸与物品返却書」や「退職者携帯端末チェックシート」を持ち出していることから,これらとともにルート一覧等の顧客名簿を持ち出したことは明らかである。 被告ら3名は,被告八光薬品の業として明星薬品の顧客に営業することを想定し,明星薬品を退職する直前に,多数の顧客について明星薬品との契約を不正に解除し,併せて,明星薬品の顧客名簿の持ち出しを行ったものである。 また,被告ら3名は,現在も,元担当顧客に対して営業行為を行っていることから,少なくとも,被告ら3名の担当顧客の顧客名簿を持ち出したことは明らかで ,明星薬品の顧客名簿の持ち出しを行ったものである。 また,被告ら3名は,現在も,元担当顧客に対して営業行為を行っていることから,少なくとも,被告ら3名の担当顧客の顧客名簿を持ち出したことは明らかである。 イ被告ら3名による原告の顧客情報の使用別紙「誤記等対比表」の「原告の主張」欄記載のとおり,明星薬品時代の被告P1の担当顧客に関する被告八光薬品の顧客カードと明星薬品の顧客名簿とを対比すると,誤記等が不自然に一致している。 また,被告P2及び被告P3は,顧客カード作成に当たり,直接顧客から名前や住 所を聞き取ると供述するが,経験則上不自然である。 このことから,被告ら3名が,明星薬品から持ち出した顧客名簿を被告八光薬品の顧客カードに転載し,これら顧客情報を参照して,被告八光薬品の業として顧客に対して訪問して営業していることは明らかである。 ウ被告ら3名による不正競争行為 (ア) 2条1項7号 明星薬品では,事務員が,毎月,原則として毎月の最初の営業日に,営業担当従業員に対し,廻商計画策定等のため,各担当分の顧客情報につき,ルート一覧という形式の紙媒体,及び廻商リストという形式の紙媒体を配布し,被告ら3名に示していた。 なお,被告P2は,取締役として明星薬品の営業を統括している立場にあったことや,明星薬品の解散時点において顧客名簿の返還を受ける管理者であったことから,明星 薬品の全顧客情報を示されていたといえる。 被告八光薬品と原告とは競業関係にあるから,被告らは,原告の顧客情報の使用により,原告の損失のもと利益を得ることは明らかである。 したがって,被告ら3名は,不正の利益を得る目的又は原告への加害目的で,示された情報を使用し,その顧客情報を被告八光薬品に開示した(不正競争防止法2条1 の損失のもと利益を得ることは明らかである。 したがって,被告ら3名は,不正の利益を得る目的又は原告への加害目的で,示された情報を使用し,その顧客情報を被告八光薬品に開示した(不正競争防止法2条1 項7号)というべきである。 (イ) 2条1項4号明星薬品は,従業員に対し,利用目的を逸脱して顧客情報を取り扱うこと,外部に開示することは禁止し(就業規則3条の2,第7条2号,第7条の2第1項)),顧客情報が記載された顧客名簿の持ち出しは禁止していた(就業規則第5条5号・6号, 第7条4号)(甲10)。また,就業規則58条3項で,「社員は,退職する場合,…会社から貸与された物品を返還し…なければならない。」と,貸与された物品については返還義務があることを規定しており(甲10),原告は,明星薬品を含む子会社に対して,退職者があった際は,顧客名簿の回収をするよう指示していた。 それにもかかわらず,被告ら3名は担当顧客の顧客名簿を退職時に返却せず,これ を被告八光薬品の業に使用するため共同して持ち出したのであるから,2条1項4号の「不正の手段」により営業秘密を取得したことは明らかである。 また,被告ら3名は,不正の手段により取得した名簿に記載された顧客情報を使用し,被告八光薬品に開示した。 エ被告八光薬品による不正競争行為 (ア) 2条1項8号 被告ら3名は,被告八光薬品の業として,法2条1項7号の不正開示行為があった明星薬品の顧客情報を使用して営業していた。よって,被告八光薬品は,不正開示行為であること又は不正開示行為の介在したことを知って,又は重大な過失により知らないで,その顧客情報を取得し,使用したといえる。 (イ) 2条1項5号 被告ら3名は,被告八光薬品の業として,法2条1項4号の不正 正開示行為の介在したことを知って,又は重大な過失により知らないで,その顧客情報を取得し,使用したといえる。 (イ) 2条1項5号 被告ら3名は,被告八光薬品の業として,法2条1項4号の不正取得行為があった明星薬品の顧客情報を使用して営業していた。よって,被告八光薬品は,不正取得行為が介在したことを知って,又は重大な過失により知らないで,その顧客情報を取得し,使用したといえる。 (被告らの主張) アルート一覧は,明星薬品から配布されていたものであり,社外への持ち出しも自由であった。 甲18のルート一覧は,1~6頁が平成25年12月2日にプリントアウトされ被告P1に配布,7頁は,平成26年5月1日にプリントアウトされ被告P1に配布,8~10頁,19~22頁は,平成26年4月1日にプリントアウトされ被告P1に 配布,11~18頁は,平成26年3月3日にプリントアウトされ被告P1に配布されたものであった。かかるルート一覧を所持していた経緯については,被告P1は,退職の時にルート一覧等を全部処分したつもりだったが処分忘れで車の中にあった,すなわち,処分を失念していただけである。ルート一覧を返却しなかったことが不正取得に当たるものでもない。 なお,P1自供書(甲16)は強制されて書かされたものにすぎない。 イ原告主張の誤記等は,別紙「誤記等対比表」の「被告らの主張」欄記載の理由により生じたものであり,何ら不自然な点はないことから,被告らによる明星薬品の顧客情報持ち出し及び転記を裏付けるものとはいえない。 ウ本件で問題とされている顧客情報については,明星薬品とともに被告ら3名も 保有者であるから,被告ら3名が明星薬品から顧客情報を「示された」とはいえない。 被告らは,ルート一覧の顧客情報を 問題とされている顧客情報については,明星薬品とともに被告ら3名も 保有者であるから,被告ら3名が明星薬品から顧客情報を「示された」とはいえない。 被告らは,ルート一覧の顧客情報を持ち出しておらず,それを用いて顧客を訪問しているものでもない。 また,被告らは,顧客情報を不正取得したわけではないから,同顧客情報を不正開示・不正使用した事実もない。 (4) 被告らの不正競争行為により原告に生じた損害(争点4) (原告の主張)ア被告P1は,甲18ルート一覧とともに,少なくとも別紙誤記等対比表⑤⑥⑦⑨⑩⑪⑯記載の顧客が掲載された別のルート一覧を持ち出し,これを被告八光薬品に開示し,使用したものである。 したがって,少なくともそれらのルート一覧に記載されている別紙損害計算シート 1,2記載の顧客に対する営業活動は,原告の顧客情報を不正に取得,使用又は開示して行ったものであり,それにより被告らが得た粗利の合計347万1482円が,被告らの不正競争行為により原告に生じた損害となる(不正競争防止法5条2項)。 また,被告らの不正競争行為と相当因果関係ある弁護士費用は34万7148円である。 したがって,原告が被告らの不正競争防止法違反により被った損害は,合計381万8630円である。 イ被告らは,原告と被告八光薬品の取扱商品の相違による推定覆滅を主張する。 しかし,被告ら取扱商品の原告における取扱状況は,別紙「原告における被告八光薬品取扱商品の取扱状況」記載のとおりである。 原告は,被告らが置き合わせ行為を始めたころは,明星薬品から引き継いだ商品在庫があったので,明星薬品で取り扱っていた商品を販売していた。被告P1が被告P1の利益の相当部分を占めると主張している鹿角霊芝についても,原告は平 わせ行為を始めたころは,明星薬品から引き継いだ商品在庫があったので,明星薬品で取り扱っていた商品を販売していた。被告P1が被告P1の利益の相当部分を占めると主張している鹿角霊芝についても,原告は平成28年8月10日に販売している。 原告は,明星薬品で取り扱っていた商品については富士薬品の同種同効のプライベ ートブランドに切り替えていく方針であったが,顧客が,特定の商品を要望する場合, 原告は,一部を除き,その特定の商品を仕入れていた。 原告は,取扱いのない商品についても,同別紙「原告取扱商品名」欄記載のとおり,主成分や効果が共通するなど,類似の商品を扱っていることから,被告らの取扱商品と原告の取扱商品は競合する。 ウ被告らは,原告が取引を終了した顧客についての推定覆滅を主張する。 しかし,原告の訪問実績(最終訪問日等)は,別紙「被告P1誓約書違反検討シート」の「最終訪問日」欄記載のとおりであり,ほとんどの顧客につき,明星薬品解散後間もなく訪問したものの,その最初の訪問において薬箱を下げざるを得なかった。 これは,すでに被告P1が不正競争行為により不当に顧客を奪取していたためと考えられる。 被告らが不正競争を行っていなければ,原告は,薬箱を下げなくともよく,同一の商品を販売することができたと考えられるから,これらの顧客から上げた利益は不正競争と相当因果関係にある損害である。 (被告らの主張)ア別紙損害計算シート2の顧客は,甲18ルート一覧に掲載されていない顧客で あるから,これら顧客に対する営業活動は不正競争行為に当たらない。 別紙損害計算シート1,2の顧客に対し,被告P1が医薬品等販売により得た粗利益の合計が347万1482円であることは認める。 イ本件には,次の①,②の事情があ 業活動は不正競争行為に当たらない。 別紙損害計算シート1,2の顧客に対し,被告P1が医薬品等販売により得た粗利益の合計が347万1482円であることは認める。 イ本件には,次の①,②の事情があり,不正競争防止法5条2項の推定が覆滅される。 ① 不正競争防止法5条2項が適用されるには,被告P1が取引した顧客と原告との間で,少なくとも医薬品配置販売契約(薬箱の設置)が締結されている必要がある。 かかる契約がなければ,原告に損害が発生する余地がないからである。 また,医薬品以外の健康食品等の販売については,薬箱を設置することによって利益が上がるわけではなく,現実に顧客を訪問しない限り利益は上がらないのであるか ら,原告が実際に訪問していない顧客との取引による利益分は,原告の損害から控除 されるべきところ,原告と顧客との取引終了日(最終訪問日がこれに当たる。)以降は,原告と顧客との取引が終了し,以後,原告が当該顧客から利益を得る余地がないことから,原告に損害が生じる余地はないというべきである。原告は,明星薬品解散後,訪問が煩わしい取引先について,一斉に取引を中止したにすぎないことから,取引終了後の売上げについては,被告らの行為と何ら因果関係ある損害に当たらないと いうべきである。 そうすると,別紙損害計算シート1の顧客分のうち,原告の取引終了以前のものとして損害算定の基礎となり得る粗利は,別紙被告損害計算シートのとおり,医薬品3万6828円,医薬品以外25万3252円の合計29万0080円となる。また,別紙損害計算シート2の顧客分についても同様のことが妥当する。 ②「医薬品以外」に関する被告らの利益のうち,原告が取り扱っていない商品に関するものは,そもそも原告が販売実績を上げ得る蓋然性がないから,推定規 ト2の顧客分についても同様のことが妥当する。 ②「医薬品以外」に関する被告らの利益のうち,原告が取り扱っていない商品に関するものは,そもそも原告が販売実績を上げ得る蓋然性がないから,推定規定は適用されない。 原告は,鹿角霊芝等の商品について,在庫があったとか,代替商品があると主張しているが,これらの商品が販売不可になったこと(少なくとも,被告P1の顧客が欲 しがっている商品が販売できないと言われたこと)が原告への転職を断念した決定的な理由であるから,原告の主張は虚偽である。 なお,特に鹿角霊芝は,高価で効用への信頼もあり,それだけに顧客にとって特別な品であるから,代替商品(三輝霊芝)を購入する顧客はいない(そもそも,名前が似ているだけで全くの別物であり,代替商品ともいえない)。 それ以外の商品も含めて,配置販売に供される医薬品や医薬品以外(健康食品)の購入者は,似通った商品の中から,使用経験や味の好み,販売者に対する信頼等を頼りに購入するのであり,厳密に,主原料,成分,効能等を選別して購入しているのではない。したがって,提示された代替商品に皆が乗り換えるわけではなく,むしろ,長年愛用してきた商品の継続使用を希望するのが通常である。 したがって,原告が被告ら取扱商品と主原料,成分,効能等が似通った商品を取り 扱っていたとしても,原告との競合はない。 被告P1は,原告が自社製品の医薬品の配置販売にこだわって,「医薬品以外」の物品(特に顧客から被告P1に取扱いの要望が多かった「鹿角霊芝」)を扱わなかったことから,被告八光薬品に勤務し,顧客と取引したものである。 別紙「原告における被告八光薬品取扱商品の取扱状況」記載の商品は,全て原告製 品ではないから,少なくとも被告P1が明星薬品を退社した たことから,被告八光薬品に勤務し,顧客と取引したものである。 別紙「原告における被告八光薬品取扱商品の取扱状況」記載の商品は,全て原告製 品ではないから,少なくとも被告P1が明星薬品を退社した当時は原告での取扱いはなかったものであり,かかる意味でも,被告らと原告との競合などあり得ない。 (5) 競業避止義務の内容及び範囲(争点5)(原告の主張)ア本件誓約書により競業として禁止される行為は,原告の顧客に対する医薬品, 医薬部外品,医療機器,健康食品等の販売行為である。 誓約書で守ろうとした原告の利益は資本を投下して獲得した顧客情報であり,その点は,医薬品に関してもその他の商品に関しても何ら変わることではなく,誓約書の競業禁止の範囲には医薬部外品,医療機器,健康食品の販売も含まれることは明らかである。 医薬品配置業界においては,事業者を退職した従業員は,一定期間,その事業者の顧客に立ち入り,その事業者が行っていた営業活動を行ってはならないという業界慣行があり,このような慣行に照らせば,明星薬品が被告ら3名に対し,医薬品の競業は禁止するが,あえてその他の商品の販売は禁止しないという内容の誓約書を提出させるはずがない。 そして,被告ら3名も,当然本業界慣行を知っていたものであるから,原告,明星薬品,被告ら3名において,競業禁止の範囲は明星薬品が取り扱っていた商品全体という合意が成立したことは明らかである。 イ 「置き合わせ」という言葉は,配置薬販売が先用後利の原則から,薬の置き売りを前提として生まれた言葉ではあるが,置き売りだけではなく現金販売も可能な健 康食品の販売が売上げの多くを占めるようになった現在の配置薬販売業においては, もはや薬箱があることを「置き合わせ」の条件とする意味はな るが,置き売りだけではなく現金販売も可能な健 康食品の販売が売上げの多くを占めるようになった現在の配置薬販売業においては, もはや薬箱があることを「置き合わせ」の条件とする意味はない。なお,薬箱の中には医薬品だけでなく,医薬部外品や健康食品が入っている場合もあり,文言だけからみても,対象を医薬品に限るという限定はされていない。 原告は,配置契約がいったん中止となった顧客に対しても,契約の再締結に向けて営業活動を行っていることからすれば,現に薬箱が置いていないから競業ではないと いうことにはならないし,被告らによる不正中止行為(自らが退職後に医薬品配置販売業を行う際の顧客とするために,明星薬品と担当顧客との契約を解除するなどして顧客のもとに置いてある薬箱を引き上げる行為)後の医薬品等販売が本件誓約書違反行為にならないというのは,解釈として妥当ではない。 また,薬機法上違法ではあるが,現場で医薬品を販売する行為も医薬品の販売には 変わりはないことから,仮に薬箱を設置せずに医薬品を販売したとしても,本件誓約書上の「置き合わせ」に当たることは明らかである。 ウ以上より,本件誓約書によって課される競業禁止の範囲は,医薬品のみならず,医薬部外品,医療機器,健康食品も含まれること,原告の薬箱が置いていない顧客も含まれることは明らかである。 (被告らの主張)ア本件誓約書により競業として禁止される行為は,現に原告の薬箱が設置されている顧客に対する薬箱の設置,すなわち医薬品の配置販売行為のみであり,原告の薬箱が現に設置されていない顧客に対する医薬品等の販売や,原告の薬箱が設置されている顧客に対する医薬品以外の商品販売まで禁止されるものではない。 イ 「置き合わせ」とは,薬箱を置いてある顧客に対して重ね されていない顧客に対する医薬品等の販売や,原告の薬箱が設置されている顧客に対する医薬品以外の商品販売まで禁止されるものではない。 イ 「置き合わせ」とは,薬箱を置いてある顧客に対して重ねて薬箱を置くことであり,置き合わせの禁止とは,原告が薬箱を置いている顧客に対して重ねて薬箱を置くことを禁止することをいう。 したがって,原告がかつて薬箱を置いていた顧客であっても,既に引き上げた顧客に対して薬箱を設置することまで禁止されるものではない。 (6) 本件誓約書に係る競業避止合意の有効性(争点6) (原告の主張)ア医薬品配置販売業の態様には法的規制が存在し,医薬品配置販売業者は,あらかじめ消費者に医薬品を預けておき,消費者がこれを使用した後でなければ,代金を請求することができず(いわゆる先用後利),また,薬機法上,配置販売業者には薬の使用期限が超過しないように管理する義務があるため,配置販売業者は,顧客を定 期的に訪問しなければならない。 また,健康食品の訪問販売においても,明星薬品の業としての長期間の訪問によって人的関係が構築されるものである。 原告は,平成22年9月27日,明星薬品が多大な人的コストをかけて取得した懸場帳を,3億0050万900円を投じて購入した。 以上のように,原告・明星薬品が,多大なコストを投じて顧客情報を取得したにもかかわらず,これを退職従業員にフリーライドされてしまった場合の損害は非常に大きいことからすれば,明星薬品及び原告には,懸場帳に記載された顧客情報につき,守るべき利益が存在するというべきである。 イ本件誓約書の内容は,被告ら3名が読んで十分理解できる内容であるから,被 告ら3名は任意に本件誓約書に署名したというべきである。 P4は,同時期に解散し 利益が存在するというべきである。 イ本件誓約書の内容は,被告ら3名が読んで十分理解できる内容であるから,被 告ら3名は任意に本件誓約書に署名したというべきである。 P4は,同時期に解散した他のグループ社員にも誓約書を書いてもらうよう依頼しているが,その中にはこれを書かなかった社員が3人いたことは,明星薬品を含めたグループ会社の社員に関する本件誓約書の署名に任意性があったことの証左である。 なお,その3人の社員にも退職金の支払いや有休の買取りはなされている。 ウ本件誓約書は,従業員に対し,一般的な競業禁止規定ではなく,明星薬品の顧客に関し競業することを禁止するにすぎない。また,その対象も,原告の守るべき利益を侵害する蓋然性が大きい,各従業員の担当顧客に限定している。 明星薬品は,その解散時に約2万4000軒の顧客を有していたが,被告P1の退職時の担当顧客は,そのうちの約5%の1155軒にすぎない。 このように,原告にとって守るべき利益である懸場帳記載の顧客情報及びその顧客 との人的関係を保護するために,対象を退職従業員の退職時の担当顧客に限定して競業避止義務を課しているのであるから,原告の利益を守るために3年の競業禁止期間を課すことは,長すぎるものではないというべきである。 エ明星薬品は,会社整理に際しての社員の処遇改善に関し,労働組合との団体交渉を重ね,原告は,被告ら3名に対し,明星薬品時代の雇用条件をやや上回る合理的 条件を提示し,合理的条件での転職の機会を保障した。 被告ら3名は,そのような機会があったにもかかわらず,原告に入社しなかったのであるから,被告ら3名の解雇は,自由意思による退職と実質的に変わるところはなく,本件誓約書の合理性を支える事情となることは明らかである。 (被告らの があったにもかかわらず,原告に入社しなかったのであるから,被告ら3名の解雇は,自由意思による退職と実質的に変わるところはなく,本件誓約書の合理性を支える事情となることは明らかである。 (被告らの主張) ア被告ら3名は,退職日当日,突如誓約書に署名押印するように求められ,同誓約書に署名押印しなければ給与,退職金,有給の買い取り等をしないと言われ,やむを得ず署名押印したものである。すなわち,同誓約書は,被告ら3名の窮迫に乗じて差し入れられたものであり,公序良俗に反し無効というべきである。 また,被告P2については,その他に,本件誓約書は形式的なもので拘束力がない とのことで署名押印したものであるから,本件誓約書に拘束力があるということであれば,その意思表示に錯誤があり無効というべきである。 イ退職後の競業避止義務の効力は,経済的弱者の立場にある従業員が生計を立てる方法を閉ざすおそれがあるとともに,職業選択の自由や営業の自由を侵害することになるから,競業避止条項を設ける合理的理由がない限り,公序良俗に反し無効にな る。 被告ら3名の担当していた顧客のほとんどは,被告ら自身が長年にわたり開拓してきた顧客であり,個人的な関係により配置販売を継続している顧客も多数ある。 他方で,競業避止期間が3年とされ,その競業避止に見合う代償措置を何ら講じられていないことに鑑みると,本件において,競業避止条項を設ける合理的理由はなく, 本件誓約書は公序良俗に反し無効になるというべきである。 ウ懸場得意家は,1軒当たり1万1022円で売買されていることからすると,その3倍に当たる1軒当たり「3万円」の本件誓約書上の違約金の定めはあまりにも高額である。 エそもそも,被告ら3名は,明星薬品解散に伴う解雇によって退職 1022円で売買されていることからすると,その3倍に当たる1軒当たり「3万円」の本件誓約書上の違約金の定めはあまりにも高額である。 エそもそも,被告ら3名は,明星薬品解散に伴う解雇によって退職することになったのであり,誓約書を書かされる道理はなかった。 被告P1は完全歩合制の社員であり,それ故,明星薬品の担当者として以上の立場で積極的に開拓して,深い関係を築いてきた顧客との関係を,たかが1か月分の給与と有給の買取り程度のわずかな対価で放棄し,さらには過大な違約罰を受けることに真に同意するはずがない。 そもそも,被告P1は,明星薬品の解散後も顧客の求める明星薬品の商品の販売を 継続するため,同商品を取り扱わない原告への転職を断念したのに,同商品を販売するための顧客への出入りや置き合わせを行うことまで禁じられては,原告への転職を断念した意味がない。 (7) 本件誓約書に係る競業避止義務の相手方(争点7)(原告の主張) 被告ら3名が本件誓約書作成により負う義務の相手方は,原告である。 被告ら3名は,平成26年7月31日,明星薬品に対し,本件誓約書記載の誓約を行っている(甲13)。 明星薬品は,平成26年7月31日に解散するに当たり,原告から賃借していた懸場帳を返還し,懸場帳記載の顧客に対する営業権を原告に譲渡した。本件誓約書に「貴 社のお客様が富士薬品に引き継がれることに鑑み」と記載されているように,被告ら3名は,競業避止義務を負うべき契約上の地位が明星薬品から原告に移転することに同意していた。 したがって,被告ら3名は,原告に対し,本件誓約書に基づき競業禁止義務を負っている。 (被告らの主張) 本件誓約書の名宛人は,明星薬品であり原告ではない。 被告らは,明星薬品の解散に伴い 被告ら3名は,原告に対し,本件誓約書に基づき競業禁止義務を負っている。 (被告らの主張) 本件誓約書の名宛人は,明星薬品であり原告ではない。 被告らは,明星薬品の解散に伴い解雇されたのであり,明星薬品に対して負うべき競業避止義務などなかったのであるから,かかる義務を負うべき地位を原告が承継するなどあり得ない。 (8) 被告らによる競業避止義務違反行為及び被告らが支払うべき金額(争点8) (原告の主張)誓約書違反行為となるのは,原告の顧客に対する医薬品,医薬部外品,医療機器,健康食品等の販売行為である。 ア被告P1について合計333万円被告P1が本件誓約書に違反して訪問し,被告八光薬品の製品を販売した顧客とし て証拠上判明しているのは,別紙「被告P1誓約書違反検討シート」記載の顧客101軒であるが,後記のとおり,被告P1は少なく見積もっても10軒について過少申告しているものである。 したがって,被告P1の本件誓約書に違反した軒数は111軒であり,それにつき被告P1が支払うべき違約金は,333万円(3万円×111軒)である。 イ被告P2について合計123万円被告P2が本件誓約書に違反して訪問し,被告八光薬品の製品を販売した軒数のうち,証拠上判明しているのは,別紙「被告P2誓約書違反検討シート」記載の21軒であるが,後記のとおり,被告P2は少なく見積もっても20軒について過少申告しているものである。 したがって,被告P2が本件誓約書に違反した軒数は41軒であり,それにつき被告P2が支払うべき違約金は,123万円(3万円×41軒)である。 ウ被告P3について合計129万円被告P3が本件誓約書に違反して訪問し,被告八光薬品の製品を販売した軒数のう れにつき被告P2が支払うべき違約金は,123万円(3万円×41軒)である。 ウ被告P3について合計129万円被告P3が本件誓約書に違反して訪問し,被告八光薬品の製品を販売した軒数のうち証拠上判明しているのは,別紙「被告P3誓約書違反検討シート」記載の23軒で あるが,後記のとおり,被告P3は,少なく見積もっても20軒につき過少申告して いるものである。 したがって,被告P3が本件誓約書に違反した軒数は43軒であり,それにつき被告P3が支払うべき違約金は,129万円(3万円×43軒)である。 エ弁護士費用 58万5000円オなお,被告らの主張のように原告の薬箱の引上日を問題とする場合,原告の薬 箱の引上日は,以下のとおりである(各誓約書違反検討シートの「原告薬箱引上日に関する原告の主張」欄の記載内容の説明)。 ・「中止日」原告本社では,毎月15日(2月は10日)を締め日として,その日までに提出された一括削除依頼書につき,当月末日の2営業日前までに一括して中止処理をしてい た。 また,平成26年8月から約半年間,明星薬品を含めた5社から顧客を引き継ぐに当たり,取引が中止になった顧客については,原告本社において一括して中止処理を実施した。 各誓約書違反検討シートの「中止日」欄に記載されているのは,この中止処理を行 った日であって,原告従業員が実際に薬箱を引き上げた日はそれより前である。 ・「最終訪問日」最終訪問日の記録が平成26年8月1日以降となっているものについては,各誓約書違反検討シートの「最終訪問日」欄に記載されている日が,原告従業員が顧客を最後に訪問した日であり,かつ,原告が薬箱を引き上げた日である。 最終訪問日の記録が平成26年7月31日以前のものは,明星 検討シートの「最終訪問日」欄に記載されている日が,原告従業員が顧客を最後に訪問した日であり,かつ,原告が薬箱を引き上げた日である。 最終訪問日の記録が平成26年7月31日以前のものは,明星薬品の最終訪問日であり,原告による実際の最終訪問日ではない。原告が明星薬品から引き継いで顧客を訪問したが,箱がなかったりした場合等に入替業務ができなかったため,原告による最終訪問日が記録されなかったものであり,実際の最終訪問日は,早くて「中止日」の前月の16日,遅くて「中止日」の当月の15日である。 カ被告らによる過少申告(証明妨害) 被告P1は,明星薬品退職後に自ら営業行為を行った顧客のうち,被告P1の明星薬品時代の担当顧客である者の顧客カードとして86軒分を任意に提出したものであるが,求められた証拠の開示が遅れるなど,本件における被告P1の訴訟対応をみると,その全てを提出していないものと思われる。 また,被告P1が開示した顧客カードには,本件仮処分手続において疎明資料とし て提出したものと重複するものがあり,これらを対比すると,別紙「証明妨害検討シート」の「原告の主張」欄記載のとおり,仮処分手続時に提出されたものにはあった記載内容が修正液で削除されるなど変更が加えられ,また,顧客カードの書式が変更され,新たなものに差し替えられていたり,確認のために押印されるはずの被告P2の割り印がないものが相当数あったりするなど,不審な点が多々存在する。 また,被告P2及び被告P3は,明星薬品退職後に自ら営業行為を行った顧客のうち,明星薬品時代の担当顧客である者の顧客カードを任意に提出したものであるが,その軒数が被告P1に比して極端に少なく,全てを提出していないものと思われる。 以上からすれば,本件においては,被告らに ち,明星薬品時代の担当顧客である者の顧客カードを任意に提出したものであるが,その軒数が被告P1に比して極端に少なく,全てを提出していないものと思われる。 以上からすれば,本件においては,被告らによる証明妨害があったというべきであり,民事訴訟法224条の類推適用により,被告ら3名の競業避止義務違反の軒数に ついては,少なくとも原告の主張するとおりに認定されるべきである。 (被告らの主張)誓約書違反行為となるのは,原告の薬箱が設置されている顧客に対して重ねて薬箱を設置する行為である。 原告によれば,「最終訪問日」に明星薬品が設置していた薬箱が引き上げられたと いうことであるから,被告らが薬箱を設置した日がこれより遅い顧客については,誓約書違反には当たらない。 ア被告P1について別紙「被告P1誓約書違反検討シート」の「被告側の主張」欄のとおり,被告P1の誓約書違反に当たり得るのは,同別紙の顧客番号1,5,10,21,22,28, 44,51,69,84,102,103,106,111,117,180,27 8,1154の18軒のみである。(うち,顧客番号69及び111は,最終訪問日と被告P1による薬箱設置日が同日である。)イ被告P2について① 原告の最終訪問時と被告八光薬品の薬箱設置日から明らかに置き合わせ(薬箱設置の重複)に当たらないもの 別紙「被告P2誓約書違反検討シート」の顧客番号4,12,27,136,138,196,212,665,738,890,892は,同別紙の「被告側の主張」欄のとおり,原告最終訪問日後に被告八光薬品の薬箱が設置されていることから,明らかに置き合わせに当たらない。 ② 原告が主張する最終訪問日に誤りがあり,実際には置き合わせ(薬箱設置の重 欄のとおり,原告最終訪問日後に被告八光薬品の薬箱が設置されていることから,明らかに置き合わせに当たらない。 ② 原告が主張する最終訪問日に誤りがあり,実際には置き合わせ(薬箱設置の重 複)に当たらないもの・132:●(省略)●同顧客は,明星薬品存続中の平成26年7月2日に取引中止され,取引の復活をお願いしたが原状復帰されなかった顧客である。このことは,甲12の2で現状復帰の有無欄に「×」がついていることから明らかである。 ・607:●(省略)●同顧客は,明星薬品存続中の平成26年7月12日に取引が中止され,現状復帰できなかった顧客である。このことは,甲第12号証の2で現状復帰の有無欄に「×」がついていることから明らかである。したがって,平成26年7月末までに中止が復活したとする原告の主張は誤りである。 ③ 形式上置き合わせ(薬箱設置の重複)があったが,誓約書違反に当たらないと考えるもの・163:●(省略)●顧客からの連絡があったことにより薬箱の設置をしたものであり,被告ら自ら「出入りし,置き合わせ」をしたわけではない。 ・642:●(省略)●646:●(省略)● 被告P2とP4氏との間の約束で被告八光薬品と原告の商品が競合した場合,被告八光薬品が引き上げる約束になっていたところ,一度薬箱を置いたが,原告設置の薬箱の中身がほぼ同じだったのですぐに引き上げた(設置してから約10日後に引き上げた)。 なお,医薬品の販売は何らされていない。 ④ 置き合わせ(薬箱設置の重複)に当たるといえるもの被告P2の誓約書違反に当たりうるのは,同別紙顧客番号6,159,161,597,755の5軒のみである。 ウ被告P3について① 原告の最終訪問時と被 箱設置の重複)に当たるといえるもの被告P2の誓約書違反に当たりうるのは,同別紙顧客番号6,159,161,597,755の5軒のみである。 ウ被告P3について① 原告の最終訪問時と被告八光薬品の薬箱設置日から明らかに置き合わせ(薬箱 設置の重複)に当たらないもの別紙「被告P3誓約書違反検討シート」顧客番号7,382,390,396,448,462,1182は,同別紙の「被告側の主張」欄のとおり,原告最終訪問日後に被告八光薬品の薬箱が設置されていることから,明らかに置き合わせに当たらない。 ② 形式上置き合わせ(薬箱設置の重複)があったが,誓約書違反に当たらないと考えるもの・407:●(省略)●顧客からの連絡があったための薬箱の設置であり,自ら「出入りし,置き合わせ」をしたわけではない。 ・408:●(省略)●顧客からの連絡があったための薬箱の設置であり,自ら「出入りし,置き合わせ」をしたわけではない。 ・411:●(省略)●平成26年8月10日頃,同顧客から薬箱を置いて欲しいと言われたことにより平 成26年8月19日に薬箱を設置したが,その後,同年10月16日に一旦薬箱を引 き上げた。その時には原告の担当者はまだ来ていないとのことであった。 その後,同顧客が和泉市に引越した後である平成27年2月17日に,再度薬箱を置いて欲しいと言われたことから,再度設置することになった。 原告は,平成27年1月6日に同顧客を最終訪問したと主張するが,同顧客は,平成26年12月16日に他所に引っ越しており,原告が同顧客を訪問することはでき なかった。すなわち,原告主張の最終訪問日はデータ上のものであり,原告は,被告P3が訪問した平成26年8月10日以前より同 年12月16日に他所に引っ越しており,原告が同顧客を訪問することはでき なかった。すなわち,原告主張の最終訪問日はデータ上のものであり,原告は,被告P3が訪問した平成26年8月10日以前より同顧客に訪問などしておらず,最終訪問時は,同日以前ということになる。 ・433:●(省略)●平成26年12月4日に訪問した段階で,同顧客は,原告の担当者の訪問はないと 言っていた。同顧客に依頼され,被告P3は,平成27年1月7日に薬箱を設置するに至った。 原告の主張によると原告は平成27年1月14日に最終訪問したことになっているが,同日時は原告のデータ処理上のものであり,事実に反する。 ・576:●(省略)● 平成26年8月11日以降,被告八光薬品の薬箱は設置せず,Aビタグッドのみ配置している。 原告の主張によると原告は平成27年1月14日に最終訪問したことになっているが,同顧客によれば,原告は,明星薬品がなくなってから一切連絡も訪問もしていないとのことであり,実質的に被告P3がAビタグッド(医薬品扱いのドリンク剤) を納品した時点ではもはや取引がなかったというべきものであった。 ・1174:●(省略)●同顧客のもとには,もともと原告,モチノキ薬品,明星薬品の3つの薬箱があり,明星薬品時の平成26年6月ないし7月頃に明星薬品の薬箱は引き上げ済みであったのであるから,置き合わせに当たらない。 ・1183:●(省略)● 原告は,明星薬品がなくなってから同顧客に一切連絡も訪問もしていないのであり,実質的に被告P3が薬箱を設置した時点ではもはや取引がなかったというべきものである。 被告P3は,同顧客から連絡があったため薬箱を設置したのであり,自ら「出入りし,置き合わせ」をしたわけで あり,実質的に被告P3が薬箱を設置した時点ではもはや取引がなかったというべきものである。 被告P3は,同顧客から連絡があったため薬箱を設置したのであり,自ら「出入りし,置き合わせ」をしたわけではない。 ・1220:●(省略)●明星薬品時に既に明星薬品の薬箱が引き上げられた顧客である。明星薬品の薬箱は引き上げ済みであったのであるから,置き合わせに当たらない。 ・1229:●(省略)●原告は,平成27年2月3日に薬箱を引き上げるまで顧客に対して何らの連絡も訪 問もしておらず,実質的な取引は既に終了していたというべきものであった。 また,被告八光薬品の薬箱の設置は顧客の要望に基づくものであった。 ・1230:●(省略)●原告は,明星薬品がなくなってから,同顧客に一切連絡も訪問もしておらず,同顧客との取引は明星薬品時の薬箱の引き上げ時に実質的に終了していたとみるべきで ある。 ③ 置き合わせ(薬箱設置の重複)に当たるといえるもの被告P3の誓約書違反に当たりうるのは,同別紙顧客番号369,446,459,463,585,939の6軒分のみである。 エ被告らは,証明妨害などしていない。 被告P1が保有している顧客カードは,仮処分手続の際に提出した顧客カードの内容を転記したものであり,その後の取引により追記した分はあるが,以前に記載していた分は同じである。 なお,本件仮処分手続の際に提出した古いカードは廃棄してしまっているが,これは,代理人に原本を預けた際に,コピー等により保存されていると考えて単に古い物 を廃棄しただけで,他意はない。 よって,取引内容は,本訴で提出している顧客カード記載のとおりであるから,同カードを確認すれば足り,立証の妨害はない。 第3 当裁判 単に古い物 を廃棄しただけで,他意はない。 よって,取引内容は,本訴で提出している顧客カード記載のとおりであるから,同カードを確認すれば足り,立証の妨害はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(顧客情報の保有者)について平成26年7月31日まで,明星薬品がその顧客情報の保有者であったことにつき 当事者間に争いはない。 そして,明星薬品は同日解散し,配置販売業を原告に譲渡したことに伴い,それに必須となるその顧客情報も原告に返還ないし譲渡されたのであるから,同日以降,同顧客情報の保有者は原告であると認められる。 被告らは,被告ら3名が平成26年7月31日に明星薬品を退職するまで,明星薬 品とともに,被告ら3名も同顧客情報の保有者であったと主張する。しかし,被告ら3名は,明星薬品の従業員として稼働していた者であり,明星薬品の営業として顧客を開拓し,医薬品等の販売を行うことによって明星薬品から給与を得ていたものであり,被告ら3名が営業部員として集めた情報は,明星薬品に報告され,明星薬品の事務員がデータ入力して一括管理していたのである。そうすると,実際に顧客を開拓し, 顧客情報を集積したのは被告ら3名であっても,それは,被告ら3名が明星薬品の従業員としての立場で,明星薬品の手足として行っていたものにすぎないから,被告ら3名が集積した顧客情報は,明星薬品に帰属すべきものというべきであり,被告ら3名が独自に顧客情報の保有者となり得る地位にあったとは認められない。 したがって,廻商リストやルート一覧として配布された情報はもとより,そのおお もとである,被告P1自身が集積した顧客情報を含む明星薬品の懸場帳そのものについても,被告ら3名の保有する情報ではなく,明星薬品から示された情報というべきである。 情報はもとより,そのおお もとである,被告P1自身が集積した顧客情報を含む明星薬品の懸場帳そのものについても,被告ら3名の保有する情報ではなく,明星薬品から示された情報というべきである。 2 争点2(明星薬品の顧客情報につき,営業秘密性が認められるか)について(1) 明星薬品の顧客情報の有用性,非公知性 医薬品配置販売とは,配置販売業者が予め消費者に医薬品を預けておき(いわゆる 置き薬),消費者が使用した分につき,代金請求をするものである(甲21)。この販売方法では,営業部員が定期的に顧客のもとを訪れ,使用の有無や医薬品の入替え等を行うという特殊性から,新規の顧客開拓には多大な人的コストがかかるところ,顧客情報があれば,効率的に顧客開拓をし,人的コストを軽減することができるといえる(甲37)。 このような意味で,医薬品配置販売業を営んでいた明星薬品の顧客情報(顧客名,住所及び電話番号)は,同種の販売業を行う事業者にとって有用な情報であると認められる。そして,医薬品配置販売業界においては,顧客名簿である懸場帳が現に売買の対象とされ,業界紙上でその広告もなされており(甲26の1),原告自身も明星薬品から懸場帳を3億円以上の対価を払って取得していることからすると,その有用 性は高いと認められる。 また,これらの顧客情報は,配置販売サービスを受けたことのある顧客の個人情報であることから,一般には知られていない非公知の情報であると認められる。 (2) 明星薬品の顧客情報の秘密管理性ア証拠によれば,次の事実が認められる。 (ア) 明星薬品は,資本金の額2000万円の会社であり,本部の他,梅田営業所,堺営業所,枚方営業所を有しており,解散時には,本部に1名(パート従業員),梅田営業所に 事実が認められる。 (ア) 明星薬品は,資本金の額2000万円の会社であり,本部の他,梅田営業所,堺営業所,枚方営業所を有しており,解散時には,本部に1名(パート従業員),梅田営業所に6名(正社員5名,パート従業員1名),堺営業所に8名(正社員7名,パート従業員1名),枚方営業所に4名(正社員3名,パート従業員1名)の従業員が所属していた(甲2)。 (イ) 明星薬品の就業規則には,「顧客…の個人情報を正当な理由なく開示し,利用目的を逸脱して取り扱い,又は漏洩してはならない。在職中はもとより,退職後においても同様とする」(3条の2),「個人情報保護法のセキュリティとして営業計画日報に未記入の客先OA 伝及びG カードの持ち出しは禁止とする」(5条5号)などと規定されていた(甲10)。 (ウ) 被告ら3名は,平成26年7月31日,「退職後も貴社が保有する一切の機密 事項を他に漏えいしないことを誓約いたします。」(甲13)などと記載した誓約書に署名押印して明星薬品に提出した。 (エ) 原告は,平成25年10月30日,明星薬品を含む傘下のグループ企業の事業所(被告P2を含む。)に対し,「退職手続チェックシート」を作成したので,今後に退職者があったときにはこの用紙を使用するよう通知した。同用紙には,「確認事 項」の欄に,「廻商リスト,顧客カードの回収(担当していた全カード確認)」という記載がある(甲35)。 (オ) 明星薬品においては,他の営業所の顧客情報へのアクセスは制限されていたが,所属営業所内では,営業部員は少なくとも自分の担当顧客に関するデータは,パソコン上で確認することができた(証人P4)。また,顧客情報が廻商リスト及びル ート一覧という形で紙媒体に打ち出されて営業部員に配布された後 業部員は少なくとも自分の担当顧客に関するデータは,パソコン上で確認することができた(証人P4)。また,顧客情報が廻商リスト及びル ート一覧という形で紙媒体に打ち出されて営業部員に配布された後の扱いは営業部員に任せられ,その回収や廃棄確認等も行われておらず,メモ用紙に使用されたり,放置されたりしていた(被告P3本人,被告P2本人,被告P1本人)。 (カ) 原告の就業規則には,「故意又は過失の有無にかかわらず,会社の機密,取引先の機密及び…営業情報並びに個人情報などが他人に知られる結果を招く行為をし てはならない。」(12条(20))との定め,「会社の機密及び個人情報を漏らしたとき,又は漏らそうとしたとき」を懲戒事由とし(77条(21)),「業務上重要な秘密及び個人情報を外部に漏らし,会社に損害を与え,又は業務の運営を阻害したとき」を懲戒解雇事由とする定め(78条(15))がある(甲58の1)。 イ前記のとおり,明星薬品では,本部において顧客情報を一元化してデータ管理 しており,就業規則において顧客情報の開示等を禁止することに加え,退職従業員に対しても,顧客情報を漏えいしないことを誓約させるなど,規範的な管理がなされていたというべきである。 そして,このような規範的な管理に加え,前記のような配置販売業者にとっての顧客情報の重要性に鑑みれば,従業員らにとっても,それが秘密管理の対象とされるべ きものであることは容易に理解し得ることであり,実際,被告P1自身も,ルート一 覧のようなものは,退職時に返還すべきものとわかっていた(被告P1本人)というのであり,被告P3,被告P2も,退職に当たって,手元にあったルート一覧や廻商リストは廃棄したこと(被告P2本人,被告P3本人)からすれば,実際にその認識もあったと かっていた(被告P1本人)というのであり,被告P3,被告P2も,退職に当たって,手元にあったルート一覧や廻商リストは廃棄したこと(被告P2本人,被告P3本人)からすれば,実際にその認識もあったというべきである。 もっとも,明星薬品の所属営業所内での顧客情報へのアクセス制限の程度は明らか でない。しかし,明星薬品は,営業所も近隣に3か所しかなく,各営業所の従業員数も数人ずつにすぎない小規模な会社であり,従業員のほとんどが営業部員であると推認されるところ,小規模の事業所では各従業員が業務遂行に当たって顧客情報を自由に使用できる必要があるから,営業所内でアクセス制限が設けられていないとしても,それをもって対社外的にも秘密でない扱いがされていたとはいえない。 また,明星薬品では,顧客情報が廻商リスト及びルート一覧という形で紙媒体に打ち出されて営業部員に配布された後の扱いは営業部員に任せられ,その回収や廃棄確認等も行われておらず,メモ用紙に使用されたり,放置されたりするなど,顧客情報に関し,物理的な管理が徹底されていたとはいいがたい事情がある。しかし,前記のような規範的な管理に加え,配置販売業者にとっての顧客情報の重要性に鑑みれば, 従業員らにとっても,なおそれが秘密管理の対象とされるべきものであると認識できるだけの措置は執られていたというべきである。 以上によれば,明星薬品は,顧客情報に接した者にそれが秘密であると認識し得るようにしていたといえることから,明星薬品の秘密として管理されていたというべきである。そして,原告も,自社の就業規則で営業情報及び個人情報の漏洩を禁止し, 後記のとおり明星薬品に対して退職する従業員から本件誓約書を徴求するよう指示し,そこで機密事項の漏洩を禁止していることからすると,明星薬品から事業 業規則で営業情報及び個人情報の漏洩を禁止し, 後記のとおり明星薬品に対して退職する従業員から本件誓約書を徴求するよう指示し,そこで機密事項の漏洩を禁止していることからすると,明星薬品から事業譲渡を受けた原告においても,明星薬品から受け継いだ顧客情報を秘密として管理していたと認められる。 ウ以上に対し,被告らは,原告のいう営業秘密は,もともと被告ら3名が取得し てきたものであるから,被告ら3名に帰属する部分もあるとした上で,明星薬品にお いては,その部分も含め,顧客情報全体が明星薬品の営業秘密であることが認識可能な状態で管理されていなかったと主張するが,先に争点1で述べたとおり,この主張は採用できない。 また,被告ら3名は,退職手続チェックシートを見たことがないと主張し,確かに被告ら3名が退職するに当たって作成された同シートは証拠として提出されていな い。しかし,仮に明星薬品において退職手続チェックシートが使用されていなかったとしても,前記のとおり被告ら3名自身も退職時にはルート一覧等を返還すべきものと認識し,又は実際に廃棄しているのである上,前記のような規範的管理がされているから,その点は前記認定を左右しない。 (3) 以上より,明星薬品の顧客情報は原告の営業秘密であると認められる。 3 争点3(被告らによる不正競争行為)について(1) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告P1が明星薬品退職に至る経緯(乙34,被告P1本人)(ア) 被告P1は,昭和51年11月1日に明星薬品に入社して以降,営業部員として稼働し,38年間にわたって大阪府下,神戸市内全区域を担当し,そのうち23年 間は,主に尼崎市地区を担当し,顧客の開拓及び営業に当たってきた。 (イ) 被告 薬品に入社して以降,営業部員として稼働し,38年間にわたって大阪府下,神戸市内全区域を担当し,そのうち23年 間は,主に尼崎市地区を担当し,顧客の開拓及び営業に当たってきた。 (イ) 被告P1は,平成9年8月1日からは明星薬品の請負社員として勤務を続けており,完全歩合給であった。 (ウ) 被告P1は,平成26年5月頃に,明星薬品が解散することを知るとともに,原告は,明星薬品で取り扱っていた商品を扱わないという方針を知り,特に,自らが 明星薬品の営業部員として顧客に販売していた鹿角霊芝という商品を取り扱えなくなることを懸念して,原告に再就職はしないこととした。 (エ) 被告P1は,平成26年7月20日頃,被告P2が被告八光薬品を設立すること,同社では鹿角霊芝(乙15)を始め,明星薬品で取り扱っていた商品を扱うことができることを知り,同社に入社することを決意した(P1自供書(甲16)の記載)。 なお,被告らは,平成29年6月28日付け被告ら第6準備書面において,被告P1 は被告八光薬品の従業員ではなく個人事業主であると主張するが,平成28年2月29日付けの被告らの答弁書においては,被告P1は被告八光薬品の完全歩合制の請負従業員であると主張しており,その変遷に合理的理由も認められないから,被告P1は被告八光薬品の従業員であると認めるのが相当である。 (オ) 原告は,明星薬品から事業譲渡を受けるのと同時期に,他のグループ会社につ いても解散の上で事業譲渡を受けたが,それらグループ会社の顧客の中には,グループ会社が取り扱う商品を原告が取り扱わないことから,契約を解消する者もあった(証人P4)。 イ被告P2が明星薬品退職に至る経緯(乙35,被告P2本人)(ア) 被告P2は,平成2年3月に明星薬品に入社し り扱う商品を原告が取り扱わないことから,契約を解消する者もあった(証人P4)。 イ被告P2が明星薬品退職に至る経緯(乙35,被告P2本人)(ア) 被告P2は,平成2年3月に明星薬品に入社し,配置薬の営業に従事していた。 (イ) 被告P2は,平成26年4月ないし5月頃,明星薬品の代表者及びP4から,明星薬品が解散することを告げられ,取扱商品は原告の商品に切り替えられることを告げられた。 (ウ) 被告P2は,商品の継続使用を希望する顧客のために,自ら会社を立上げて独立し,それら商品の継続販売を行うことを決意した。 ウ被告P3が明星薬品退職に至る経緯(乙36,被告P3本人)(ア) 被告P3は,平成19年12月に明星薬品に入社し,配置薬の営業に従事していた。 (イ) 被告P3は,明星薬品が解散することを告げられ,二度面談を受ける中,原告への再就職を勧められたが決めかねていたところ,平成26年7月中旬頃,被告P2 からの誘いを受け,同人が立ち上げる予定の会社に入ることを決意した。なお,被告P3についても,平成28年2月29日付けの被告らの答弁書により,被告八光薬品の従業員と認めるのが相当である。 エ被告ら3名の明星薬品に対する事実報告(ア) 被告ら3名は,平成26年7月30日,原告に求められ,明星薬品の梅田営業 所において,同年5月1日から7月31日までに明星薬品との取引が中止となった担 当顧客の軒数(被告P1は72軒,被告P2は19軒),「反省の弁」等を記載した事実報告書を作成した(甲8)。被告P3は,当初,取引中止となった担当顧客の軒数を記載していなかったが,同月31日頃に再度呼び出しを受け,促されて84軒と追加記入した(乙36)。 (イ) 被告ら3名が提出したいずれの事実報告書に 告P3は,当初,取引中止となった担当顧客の軒数を記載していなかったが,同月31日頃に再度呼び出しを受け,促されて84軒と追加記入した(乙36)。 (イ) 被告ら3名が提出したいずれの事実報告書にも,「反省の弁」として,「会社 の財産を搾取するという事実ですが,そこまでの考えは無く,安易に中止をしてしまいました,明星薬品退職後も中止したお客様に再置きをお願いし,富士薬品へカードを返却したあとも責任を持って協力させていただきます。」と記載され,被告P1及び被告P2が提出した報告書には,これに続けて,「8月に支給される給与その他の金員は手渡しにて支給する事を承諾します。この件に関しては会社の処分に従いま す。また,今後発生した損害に関しても責任を持って(必ず)弁済いたします」と記載されている。 (ウ) この事実報告書作成に当たって,被告ら3名は,明星薬品から見本(乙32)を示され,これに沿って作成するように指示されており,被告ら3名作成の事実報告書の「反省の弁」は,いずれも,この見本どおりに引き写されたものである(被告P 1,被告P2,被告P3本人)。 また,同見本には,中止行為の「理由」として,「①退職後に独立して自分で廻る為に中止しました,②自分で廻るために別の箱を置きました,③○○さんが起業するので紹介するために中止しました。④本来であれば職務にて中止止めをしなければいけないのですが,安易に中止しました。」という記載もあるが,被告ら3名の事実報 告書の「理由」欄には,被告P2が「退職して独立し自分で廻るために中止しました」と見本どおりの記載をしているほかは,「今回の件で担当が変るからもう引き上げて」,「使用している薬が変るのが嫌やで引き上げて」(被告P1,甲8の1),「知人の会社」,「親せき,おじ,おば」,「 た」と見本どおりの記載をしているほかは,「今回の件で担当が変るからもう引き上げて」,「使用している薬が変るのが嫌やで引き上げて」(被告P1,甲8の1),「知人の会社」,「親せき,おじ,おば」,「担当者変わる為」,「明星解散でP10社長と関係なくなるため」(被告P2,甲8の2),「モチベーションが下がってしま い,中止を止める努力を怠りました」,「担当者が変わるならいらないといわれた」 (被告P3,甲8の3)など,自分なりの言葉で記載されている。 オ原状回復措置被告ら3名は,平成26年7月31日頃,原告から,明星薬品の薬箱を引き上げた顧客に再度薬箱を設置するよう指示され,被告ら3名の顧客のうち,平成26年5月以降に明星薬品との取引が中止された顧客を抽出したリスト(甲12の1ないし3) を交付された。 被告ら3名は,これら顧客に対して薬箱の再設置に努め,同リストに,原状回復状況を記入した報告書を作成し,同年8月,原告に提出した(甲12の1ないし3)。 被告P3は,交付されたリストに掲載されていなかった同年7月25日から28日までの中止顧客13軒を自ら加筆した上で,これらに対する原状回復状況も併せて報 告した(乙36)。 カ被告ら3名の示談書の作成,提出平成26年8月1日,原告,明星薬品及び被告ら3名は示談書を作成した。 同示談書には,同年7月30日付事実報告書記載のとおり,被告ら3名による不正行為が存在した事実の確認,これにより懸場帳の所有者である原告に生じた損害額の 確認(被告P1は256万8715円,被告P2は264万6504円,被告P3は404万円),懸場帳の賃借人である明星薬品は原告に対し,また,被告ら3名は,明星薬品に対し,それぞれ,同損害額につき損害賠償義務を負っていることの確認, 円,被告P2は264万6504円,被告P3は404万円),懸場帳の賃借人である明星薬品は原告に対し,また,被告ら3名は,明星薬品に対し,それぞれ,同損害額につき損害賠償義務を負っていることの確認,並びに,明星薬品が被告ら3名に対する損害賠償債権を原告に譲渡し,被告ら3名はこれを承諾すること,被告ら3名が,平成26年8月31日までに不正中止行為によ って生じた損害を回復する行為を行い,原告がこれを確認,了承したときは債務を免除することが記載されている(甲11の1ないし3)。 (2) 被告P1による明星薬品の顧客情報の持出し・使用についてア前提事実記載のとおり,被告P1は,原告に対し,P1自供書(甲16)において明星薬品の顧客情報を持ち出したことを認めた上で,退職後の営業先のリストと してP1手書きリスト1(甲17)及びP1手書きリスト2(甲19)を,退職後も 所持していたルート一覧として甲18ルート一覧(甲18)を提出している。 これらについて,被告P1本人は,P1自供書はP4らから本件誓約書による違約金の額が900軒で合計2700万円プラス弁護士費用になるなどと脅されて,P4が言うとおりに記載したものであり,甲18ルート一覧はP4らに言われて自家用車を探したところ返却が漏れていたものが見つかったものであり,明星薬品時代の主要 な担当顧客の住所等は概ね頭に入っていると供述している。 イこれに対し,原告は,P1手書きリスト1及び2の顧客のうち,別紙「誤記等対比表」整理番号①ないし⑱の明星薬品時代の被告P1の顧客について,原告(明星薬品)の懸場帳の記載と被告八光薬品の顧客カードの記載とが,誤記を含め不自然なほど一致していることを指摘し,これは,被告P1が明星薬品から顧客名簿を不正に 持ち出し, 顧客について,原告(明星薬品)の懸場帳の記載と被告八光薬品の顧客カードの記載とが,誤記を含め不自然なほど一致していることを指摘し,これは,被告P1が明星薬品から顧客名簿を不正に 持ち出し,転記して被告八光薬品の顧客カードを作成し,使用していることの証左であると主張するので,まずこの点について検討する。 原告(明星薬品)の懸場帳及び被告八光薬品の顧客カードの記載内容に関し,別紙「誤記等対比表」の「証拠」欄記載の証拠により,「事実」欄記載の事実が認められる。これを前提に,原告が指摘する誤記の一致等から,被告P1による顧客情報の持 出し,使用を推認することが可能かにつき検討する。 (ア) 市外局番の誤り(別紙整理番号①,②,⑧)市外局番の変更に伴い,例えば,「●(省略)●」という電話番号の場合,従前は冒頭の4桁である「0727」までが市外局番であったのが,冒頭3桁の「072」までが市外局番とされたものであるが,全10桁の電話番号そのものは変更されてい ないものである。 そうすると,顧客が自らの電話番号を,従前の市外局番を前提とした区切りで記憶し,それを被告P1に告げることは十分に考えられるというべきである。 (イ) 町名の誤り(別紙整理番号③)「神田南町」と「宮内町」とが隣接することは公知の事実であることからすれば, 被告P1が,③の顧客の町名を「宮内町」と認識していた可能性は否定できず,また, 顧客から町名を聞き取ることなく,番地だけを聞き取って記入したという被告P1の主張に不自然な点もないというべきである。 (ウ) 郵便番号の誤り(別紙整理番号④)郵便番号が「666-0000」となっているが,冒頭3桁のみ知っていたため,ひとまずそれを記入し,下4桁には「0000」と記入しておい うべきである。 (ウ) 郵便番号の誤り(別紙整理番号④)郵便番号が「666-0000」となっているが,冒頭3桁のみ知っていたため,ひとまずそれを記入し,下4桁には「0000」と記入しておいたという被告P1の 主張は不自然なところはない。 (エ) 契約終了済みの電話番号の記載(別紙整理番号⑤,⑦)⑤についてこの顧客の電話番号として記入されている番号の契約は,平成24年3月8日に終了したことが認められる。被告P1は,現在でもこの番号が使われていると主張する が,それを裏付ける証拠はないことからすると,これを採用することはできない。 ⑦についてこの顧客の電話番号として記入されている番号の契約は,平成21年8月25日で終了していることが認められる。 被告P1は,顧客が告げた番号をそのまま記載したものと主張,供述するが,契約 終了から5年程度経過した時点において,顧客が,従前の電話番号を告げるとは考え難く,それを裏付ける証拠もないことからすると,被告P1の当該主張を採用することはできない。 (オ) 地番の間違い(別紙整理番号⑥)被告P1は,記憶していた当該顧客の番地をそのまま記載したものであると主張す るが,一般に,町名程度であればともかく,他人の番地まで記憶しているとは考え難く,本件においては,それが被告P1の住まいの近くであるなど,この顧客の番地を記憶していたと認めるべき特段の事情も認められないから,被告P1の当該主張を採用することはできない。 (カ) マンション名の誤り(別紙整理番号⑨) ●(省略)●というマンション名は,●(省略)●の聞き間違いであると推認され るところ,被告P1が,それ自体何らの意味も有しない●(省略)●というマンション名を記憶していたとは考え難く, ●(省略)●というマンション名は,●(省略)●の聞き間違いであると推認され るところ,被告P1が,それ自体何らの意味も有しない●(省略)●というマンション名を記憶していたとは考え難く,本件における本人尋問で,マンション名を問われた際に,被告P1はこれを記憶していなかったことからすれば,この点に関する被告P1の主張を採用することはできない。 (キ) 番地の記載間違い(別紙整理番号⑩) 被告P1は,この製作所の社長が番地を記憶していなかったことから,近くに掲示されていた番地を記入したものと主張する。しかし,自宅ではないにせよ,事業を行う者が事業所の番地を記憶していないとは考え難く,被告P1の主張や供述を補強する証拠もないことからすれば,被告P1の当該主張を採用することはできない。 (ク) 郵便番号の間違い(別紙整理番号⑪) 被告P1は,この顧客から聞き取った郵便番号をそのまま記載したものと主張するが,一般に,自宅の郵便番号を間違って記憶しているとは考え難いところであり,本件においては,この顧客が引っ越し直後であるなど特殊な事情も認められないことからすれば,この点に関する被告P1の主張を採用することはできない。 (ケ) 店名の表記(別紙整理番号⑫) この店は,もともと●(省略)●という店名であったが,●(省略)●と店名を変更したものと推認されるところ,被告P1がもとの店名である●(省略)●を記憶していたとしても不自然ではなく,そうであれば,いったん●(省略)●と記入した後で,顧客に現在の店名を確認した結果,店名変更が判明したことから,店名の冒頭に●(省略)●と付け加え,●(省略)●部分を削除したという被告P1の主張を不自 然ということはできない。 (コ) 店名の表記(別紙整理番号⑬)この店の正 更が判明したことから,店名の冒頭に●(省略)●と付け加え,●(省略)●部分を削除したという被告P1の主張を不自 然ということはできない。 (コ) 店名の表記(別紙整理番号⑬)この店の正式名称は●(省略)●であるところ(甲52),●(省略)●が営んでいることから,特に確認することなく漢字表記の●(省略)●であると思い,記憶のとおり記入したとする被告P1の主張を不自然ということはできない。 (サ) 店名の表記(別紙整理番号⑭) この店の商号は●(省略)●であるが(甲53),このうち,「有限会社」と「商事」の部分は,比較的印象に残りにくいということができ,したがって,同店の商号を●(省略)●と記憶しており,それをそのまま記入したという被告P1の主張を不自然ということはできない。しかも,明星薬品の懸場帳の●(省略)●とは異なり,●(省略)●と記入したものであるから,被告P1の主張を不自然ということはでき ない。 (シ) 店名の表記(別紙整理番号⑮)この店が,店名を●(省略)●とするコーヒー専門店であること(甲54)からすると,第三者が●(省略)●と呼び,被告P1がそのように記憶していたとしても何ら不自然ではない。 (ス) 店名の表記(別紙整理番号⑯)この店舗は,お好み焼き店である(甲54)ところ,被告P1は,訪問時,改めて店名を聞き取ることなく,以前の店名を記入したものと主張する。 他方で被告P1は,●(省略)●の場合など,店名の変更がうかがわれるような場合には,店名を聞き取った上で,カードの記載を修正しているものであり,本店舗の ように,店舗の業種自体が変更されており,それに伴って店名も変更されたことが明らかであるにもかかわらず,それを確認せずに従前の店名のままカードを記入したとい 修正しているものであり,本店舗の ように,店舗の業種自体が変更されており,それに伴って店名も変更されたことが明らかであるにもかかわらず,それを確認せずに従前の店名のままカードを記入したというのは,不自然であるにとどまらず,被告P1の態度としても一貫しないものである。 したがって,この点に関する被告P1の主張を採用することはできない。 (セ) 顧客名の登録が夫婦名でなされているもの(別紙整理番号⑰)医薬品の配置販売は,家庭に薬箱を設置し,それを利用者が利用するという業態であることから,同サービスを夫婦ともに利用することは特段珍しいことともいえず,顧客登録が夫婦でされることも同様というべきである。したがって,夫婦で登録されている点で一致したとしても,それは,顧客がそのように希望した結果というべきで あり,不自然であるということはできない。 (ソ) 「開拓日」の記載(別紙整理番号⑱)被告八光薬品の顧客カードには,●(省略)●の開拓日として,明星薬品による開拓日が記載されている(甲30)。被告P1は,これは,同店に設置されていた明星薬品の薬箱に入っていた控えに記載されていた明星薬品の開拓日をそのまま記載したものと主張供述するところ,開拓日が平成24年とさほど古くない時期であること からして,明星薬品の箱に控えが残されていても特に不自然ともいえず,他に被告P1の主張を疑うべき事情もない。 (タ) なお,被告P1は,被告八光薬品の顧客カードは,携帯電話に記録されていた顧客情報を転記して作成したものであると主張し,これに沿う供述するが,それを裏付ける証拠はない上,同様の指摘がされていた本件仮処分手続ではその旨を主張して いないことから,これを採用した上で前記誤記の合理性を判断することはできない。 し,これに沿う供述するが,それを裏付ける証拠はない上,同様の指摘がされていた本件仮処分手続ではその旨を主張して いないことから,これを採用した上で前記誤記の合理性を判断することはできない。 ウ以上のとおり,原告が指摘する誤記等の一致について合理的説明がつかないものは,別紙「誤記等対比表」の整理番号⑤,⑥,⑦,⑨,⑩,⑪,⑯の7軒であり,それらにおける誤記等の一致が偶然に生じるとは考え難いから,被告P1は,これら顧客の顧客情報が掲載された明星薬品の顧客名簿を転記したものと推認することが できる。 そして,この場合に被告P1が転記の元とした顧客名簿としては,ルート一覧と廻商リストが考えられるが,被告P1は,明星薬品退職後も甲18ルート一覧を所持していた反面,廻商リストを保持していたような事情を認めるには足りないことからすると,被告P1は,上記の7軒の顧客が記載された退職当時のルート一覧(うち1軒 は甲18ルート一覧に記載されているので,厳密にはその余の6軒の顧客が記載されたルート一覧)を持ち出し,営業に使用したと認めるのが相当である。なお,原告は当時のこのルート一覧を,上記の7軒の顧客の住所の近隣に所在し,なおかつ,訪問頻度が同一である顧客を基準に再現している(原告の平成29年1月16日付け準備書面6添付の表)が,このような再現方法はルート一覧の再現方法として合理的であ るから,原告による再現はこれを信用することができる(以下,このルート一覧を「再 現ルート一覧」という。)。 以上に対し,被告P1は,甲18ルート一覧は唯一手元にあるのを失念していたものを原告に任意に返却したものであり,それ以外に明星薬品から持ち出したものはないと主張する。 この点,被告P1が原告に呼び出され,明星薬品退職後の営業先顧 ート一覧は唯一手元にあるのを失念していたものを原告に任意に返却したものであり,それ以外に明星薬品から持ち出したものはないと主張する。 この点,被告P1が原告に呼び出され,明星薬品退職後の営業先顧客をリストアッ プするよう指示されたのを受けて提出したP1手書きリスト1には,当初,それに該当する全ての顧客が記載されていなかったことから,該当顧客を記載したP1手書きリスト2を追加提出することになったところ,そのことについて,尼崎地区の顧客だけリストアップすればよいと思っていたのでP1手書きリスト1だけを提出したとする被告P1の説明は,P1手書きリスト2にも尼崎地区の顧客が存在することを踏 まえると不合理なものというべきであるから,被告P1は,P1手書きリスト1,2に関しては非協力的な態度をとっていたといわざるを得ないところであり,このような被告P1の態度も併せ考慮すれば,被告P1が任意に甲18ルート一覧を提出したことをもって,被告P1が持っていたルート一覧がこれに尽きるということはできない。 エ次に,甲18ルート一覧の持出しと使用について検討する。 被告P1は,明星薬品の退職後も甲18ルート一覧を所持していたものである。 この点につき被告P1は,甲18ルート一覧は,たまたま自家用車に積載されたままになっていたものであり,意図的に持ち出したものではなく,使用もしていないという趣旨の主張をし,これに沿う供述をする。 前記のとおり,ルート一覧は,明星薬品から月1回,営業部員に配布され,営業部員が営業に供していたものであるが,配布後の取扱いは各営業部員に任されており,営業部員らは,これをメモ用紙に使ったり,机の引き出しに放置したままであったり,時には廃棄したりしていたという状況で,少なくとも,明星薬品が回収するなど が,配布後の取扱いは各営業部員に任されており,営業部員らは,これをメモ用紙に使ったり,机の引き出しに放置したままであったり,時には廃棄したりしていたという状況で,少なくとも,明星薬品が回収するなど,意識的な管理はされていなかったものであり,月に1回配布されることからすると,被 告P1のいうように,営業に使用する自家用車に放置したままであっても,業務上, 特に不都合は生じないものと思われる。 また,甲18ルート一覧がプリントアウトされ,被告P1に交付された日付は,平成25年12月,平成26年3月,4月,5月であり(甲18),そのほとんどが,被告P1が明星薬品の解散を知った平成26年5月より前の時期のものであることからすると,被告P1が明星薬品退職後に使用するために,退職前からこのような以 前の時期のものを意図的に持ち出し又は手元に留保しておいたとは認め難い。 しかし,前記のとおり,被告P1は,一部の顧客についてのルート一覧(再現ルート一覧)を持ち出したと認められ,甲18ルート一覧に記載されている別紙「誤記等対比表」整理番号⑤の顧客についても,甲18ルート一覧から転記して被告八光薬品の顧客カードを作成したものと認められることからすると,被告P1は,甲18ルー ト一覧についても,少なくとも手元にあることを知りつつ,敢えてこれを使用したものと推認されるというべきである。 オ次に,上記以外の顧客名簿の持出しについて検討する。 (ア) 原告は,被告P1が明星薬品退職後,明星薬品時代の担当顧客に加え,担当顧客以外の明星薬品の顧客を訪問し,営業活動をしていること自体が,明星薬品の懸場 帳を不正取得又は不正使用したことの証左であるという趣旨の主張をする。 前記のとおり,被告P1は,明星薬品退職後,平成26年9月17日 客を訪問し,営業活動をしていること自体が,明星薬品の懸場 帳を不正取得又は不正使用したことの証左であるという趣旨の主張をする。 前記のとおり,被告P1は,明星薬品退職後,平成26年9月17日までに,明星薬品時代の担当顧客のうち合計93軒,担当顧客以外の明星薬品の顧客15軒に対し営業行為を行ったものである。また,原告によるヒアリング調査の結果,被告P1は,それ以外に,明星薬品の他の営業部員の担当顧客37軒(うち25軒は被告P2の明 星薬品時代の担当顧客)に対して営業行為を行ったことが判明したものである(甲20)。 しかし,まず,被告P1は38年間という長期間にわたり明星薬品の営業部員として勤続し,そのうち23年間はほぼ同一の地域を担当し,定期的にこれら顧客を訪問していたことからすると,被告P1が,主要な担当顧客名又はその大まかな住所につ いて記憶していたとしても不自然ではなく,自らの記憶をもとにそれら顧客を訪問 し,営業をすることは可能であったというべきである。 次に,被告P1の明星薬品時代の担当顧客以外の顧客に対する営業として判明しているのは併せて52軒にすぎず(甲20),その中には,被告P1が他の営業部員の研修に同行して訪問した先も含まれているということであるから(乙4),それら顧客の大まかな住所等を被告P1が記憶していたとしても不自然ではない。また,被告 P1が,特定の地域について,1軒1軒新規顧客の開拓に当たるローラーがけと呼ばれる営業スタイルを採っていたこと(被告P1本人)からすれば,この程度の軒数であれば,そのような営業方法により訪問した先がたまたま明星薬品の顧客であった可能性を否定することはできない。 したがって,被告P1が,かつての担当顧客及び担当顧客以外の明星薬品の顧客に 営業 あれば,そのような営業方法により訪問した先がたまたま明星薬品の顧客であった可能性を否定することはできない。 したがって,被告P1が,かつての担当顧客及び担当顧客以外の明星薬品の顧客に 営業を行っている事実自体は,被告P1が前記以外の明星薬品の顧客情報を持ち出し又は使用したことを推認させる事情とはいえない。 (イ) また,原告は,P1自供書に,他人の担当顧客の情報持ち出しを認める記載があることが,被告P1が担当顧客以外の顧客情報を持ち出した証左であると主張する。 確かに,前記のとおり被告P1は甲18ルート一覧と再現ルート一覧を持ち出し又は使用したと認められることからすると,それに沿う上記のP1自供書の記載には一定の信用性が認められる。しかし,P1自供書には,持ち出した顧客名簿の数量や範囲も明記されていない上,被告P1が原告に提出したP1手書きリスト1及び2は,P4らが,被告P1に対し,退職後に営業した先を全部書き出すよう求めて記載させ たものであるにすぎないから,P1自供書をもって前記以外の顧客名簿を持ち出したと認めることはできない。 そして,他に被告P1が前記以外の顧客名簿を持ち出し又は使用したと認めるに足りる証拠はない。 カ以上からすると,被告P1が持ち出し又は使用した顧客情報として合理的根拠 をもって認められる範囲は,上記認定の甲18ルート一覧及び再現ルート一覧が限度 であって,それを超えて,被告P1が明星薬品の顧客情報を不正取得又は不正使用したと認めることはできない。 (3) 被告P2及び被告P3は,明星薬品の顧客情報を持ち出したか被告P2及び被告P3が明星薬品の顧客情報を持ち出したことを認めるに足りる証拠はない。 被告P3は,退職時に明星薬品に提出すべき「貸与物品返却 告P3は,明星薬品の顧客情報を持ち出したか被告P2及び被告P3が明星薬品の顧客情報を持ち出したことを認めるに足りる証拠はない。 被告P3は,退職時に明星薬品に提出すべき「貸与物品返却書」及び「退職者携帯端末チェックシート」を,未提出のまま所持していたものであるが(乙5,6),これは明星薬品からの貸与物品の返却を確認する内容のものにすぎず,そのことから,被告P3が明星薬品の顧客情報を持ち出したことを推認することはできない。 原告は,被告P2及び被告P3が明星薬品時代の顧客に営業行為をしていることが 明星薬品の顧客情報持ち出しの証左であるという趣旨の主張をするが,被告P2は24年間,被告P3も6年間,明星薬品で営業部員として勤務していたものであり,定期的に顧客を訪問していたことからすれば,担当顧客名又はその大まかな住所について記憶していたものと推認され,その記憶をもとにそれら顧客を訪問し,営業することは可能であったというべきであるから,原告の主張は採用できない。 また,被告P2が自分の明星薬品時代の担当顧客ではない●(省略)●に営業するよう被告P1に依頼した件についても,同顧客から被告八光薬品に電話が掛かってきたことにより,被告P2が被告P1に対し同顧客を訪問するよう依頼したという経緯があったとする被告P1本人の供述からすれば,その事実から,被告P2が明星薬品の顧客情報を持ち出したものと推認することはできない。 さらに,原告は,被告P2が被告P1に対し,同人の明星薬品時代の担当顧客以外の顧客リストを渡し,同リスト記載の顧客に営業をするように指示した旨主張し,これに沿うP4の証言があるが,被告P1はこれを否定しており,これ裏付ける的確な証拠もないことからすると,P4の証言を採用することはできず,これを認 スト記載の顧客に営業をするように指示した旨主張し,これに沿うP4の証言があるが,被告P1はこれを否定しており,これ裏付ける的確な証拠もないことからすると,P4の証言を採用することはできず,これを認めることはできない。なお,前記のとおり,被告P1は,被告P2の明星薬品時代の顧客が掲 載された顧客リストがなくても,これら顧客に対して営業行為をすることは可能とい うべきであるから,被告P1による被告P2の担当顧客に対する営業行為が,被告P2がこれら顧客に係る顧客リストを持ち出したことを裏付ける事情とはいえない。 このほかに原告は,被告P2及び被告P3が,かつての顧客から再度氏名及び住所等を聞き取って新たな顧客カードを作成することは経験則上あり得ず,明星薬品の顧客情報を持ち出し,転記したものと主張するが,明星薬品を退職したことにより,再 度,顧客カードを作成する必要を説明するなどしてこれら情報を聞き取ることはむしろ当然のことというべきであり,原告の主張は失当である。 なお,被告P2及び被告P3が,前記被告P1によるルート一覧の持ち出しの事情を認識していたと認めるに足りる証拠はないことから,両名が被告P1と共同して,甲18ルート一覧及び再現ルート一覧を持ち出したと認めることはできない。 (4) そのほかの原告の主張について原告は,被告ら3名が,明星薬品退職直前に,明星薬品と顧客との契約を不正に解除させる不正中止行為をしたと主張し,これは,被告ら3名による明星薬品の顧客情報の不正取得等を裏付ける事情であると主張する。 この点,原告から不正中止行為を指摘され,平成26年7月30日に被告ら3名が 作成し,提出した事実報告書のうち,被告P2の事実報告書には,「退職後の自分の利益のためにやりました」との記載があるもの 点,原告から不正中止行為を指摘され,平成26年7月30日に被告ら3名が 作成し,提出した事実報告書のうち,被告P2の事実報告書には,「退職後の自分の利益のためにやりました」との記載があるものの,これは原告が示した見本の文章そのままである上,それ以外に,担当や会社が変わるのであれば引き上げてもらいたいと顧客から言われたことや,原告と以前にトラブルがあったことから,原告に引き継がれるのであれば引き上げてもらいたいと言われたこと,被告ら3名の親族など,人 的関係から契約していた者から,中止を求められたことなど,様々な事情から中止に至ったことが記載されており(甲8の2),被告P2の報告書の記載をもって,被告らが自らの利益のために意図的に中止を勧めたとまで認めることはできない。そして,被告P3が,多数の契約解除の理由として,契約継続に対する自らのモチベーションの低下を挙げるように(甲8の3),多くの場合,明星薬品との契約中止を希望 したのは顧客であり,明星薬品を去る被告ら3名としては,顧客の申し出を断り,契 約の継続を説得する特段の動機がなく,むしろ明星薬品との契約が中止になれば,いずれ被告らの顧客になる可能性があるという意味で,自らの利益につながるという認識も持ちつつ,安易に中止に応じたものと認めるのが相当であり,前記被告P2の事実報告書の記載も,その趣旨であると解するのが相当である。 したがって,原告の主張の前提となる不正中止行為自体が認められないことから, 原告の主張を採用することはできない。また,仮に不正中止行為があったとしても,そこから直ちに顧客情報の持出しを推認することはできない。 (5) 被告らの不正競争行為ア被告P1被告P1は,甲18ルート一覧及び再現ルート一覧のうち自己の担当客分を被告 あったとしても,そこから直ちに顧客情報の持出しを推認することはできない。 (5) 被告らの不正競争行為ア被告P1被告P1は,甲18ルート一覧及び再現ルート一覧のうち自己の担当客分を被告八 光薬品の営業に使用し,これに掲載された顧客情報を新たな顧客カードに転記したものと認められる。そして,被告P1が使用したそれらのルート一覧は,明星薬品から月に1回配布されていたものの一部であると推認されることから,被告P1は,そこに記載された顧客情報を当時の保有者である明星薬品から示されていたというべきである。そして,これを被告八光薬品の営業時に使用することにより,顧客に対する 効率的な営業が可能となることは明らかであることからすれば,被告P1は,不正の利益を得る目的で原告の営業秘密を使用し,被告八光薬品に開示したものと認められ,2条1項7号の不正競争行為も成立する。 また,再現ルート一覧のうち他の営業員の担当客分については,被告P1は,不正の手段により営業秘密を取得し,これを使用し,被告八光薬品に開示したものであり, 2条1項4号の不正競争行為が成立する。 イ被告P2及び被告P3前記のとおり,被告P2及び被告P3が,被告P1による明星薬品のルート一覧の不正取得を認識していたとは認められない。 そして,証拠(被告P3本人,被告P1本人)によれば,被告八光薬品において, 被告ら3名の担当エリアは特に決められていないが,自らが開拓し,担当する顧客を 他の者が訪問することは原則としてないということであり,被告ら3名は,互いにそれほど頻繁に顔を合わせ,営業のことを報告し合うこともないというのであるから,被告八光薬品においては,被告ら3名がそれぞれ独立して,営業活動を行っていることが認められる。 そうする 名は,互いにそれほど頻繁に顔を合わせ,営業のことを報告し合うこともないというのであるから,被告八光薬品においては,被告ら3名がそれぞれ独立して,営業活動を行っていることが認められる。 そうすると,仮に何らかの事情で,被告P2又は被告P3が被告P1の担当エリア の顧客を訪問することがあり,被告P1作成の顧客カードを使用することがあったとしても,特段の事情のない限り,当該顧客カードの記載内容が明星薬品のルート一覧から転記されたものであることを認識することはできないというべきであるところ,本件において,そのような特段の事情は認められない。 したがって,被告P2及び被告P3が,被告P1による明星薬品の顧客情報の不正 取得又は不正使用,不正開示の事実を認識していたと認めることはできず,被告P1と共同して不正競争行為を行ったと認めることもできない。 ウ被告八光薬品前記のとおり被告P1は,明星薬品から示され,又は不正取得した顧客情報を使用して被告八光薬品の営業を行い,また,一部顧客に関しては,明星薬品から不正取得 した顧客情報を転記して顧客カードを作成し,当該顧客に対する営業に使用したものである。 被告P1は被告八光薬品の従業員として,被告八光薬品の事業の一環として顧客カードを作成し,それを使用して営業に当たっており,それによって被告八光薬品が収益を上げているものであり,これら顧客カードに記載された顧客の情報は被告八光薬 品の顧客情報として集積されるものであることからすれば,当該顧客カード及びそれに記載された顧客情報の保有者は被告八光薬品であるというべきである。 したがって,被告P1が明星薬品から持ち出したルート一覧を転記して顧客カードを作成し,またはこれを用いて営業活動をしたことにより,明星薬品の営業秘密を被告八 は被告八光薬品であるというべきである。 したがって,被告P1が明星薬品から持ち出したルート一覧を転記して顧客カードを作成し,またはこれを用いて営業活動をしたことにより,明星薬品の営業秘密を被告八光薬品に開示し,これにより,被告八光薬品は当該営業秘密を取得したものとい うべきである。 また,被告P1による明星薬品から持ち出したルート一覧を使用しての営業活動は,被告八光薬品の事業として行っているものであるから,被告八光薬品が当該情報を使用したものと評価すべきである。 そして,被告八光薬品の代表者である被告P2は,被告P1とともに明星薬品の従業員として稼働していたものであり,明星薬品において,ルート一覧の回収廃棄が徹 底されていなかったことを熟知しており,退職時においてもそれらが回収された記憶がないというのであるから,明星薬品を退職するに当たり,被告P1が明星薬品のルート一覧等を持ち出し,その後使用する可能性があることは認識していたものというべきであるにもかかわらず,被告P2が,被告八光薬品の代表者として被告P1に対して明星薬品のルート一覧の廃棄を命じ,被告八光薬品の営業に使用することを禁じ るなどして不正競争行為を防止するべき特段の措置を講じた事情は認められない。 したがって,被告P2が代表者を務める被告八光薬品には,被告P1が不正取得した顧客情報を被告P1から取得し,使用したことにつき重過失があったというべきである。 また,同様の理由で,被告八光薬品は被告P1による不正開示行為を知らなかった ことにつき重過失があったというべきである。 以上より,被告八光薬品には,2条1項5号の不正使用及び不正取得並びに2条1項8号の不正取得,不正使用の不正競争行為が成立し,被告P1及び被告八光薬品には故意又は過失 失があったというべきである。 以上より,被告八光薬品には,2条1項5号の不正使用及び不正取得並びに2条1項8号の不正取得,不正使用の不正競争行為が成立し,被告P1及び被告八光薬品には故意又は過失が認められるから,同被告らは,原告に対し,不正競争防止法4条の損害賠償責任を負い,両者の行為は実質的に見て相重なり合うから,同被告らについ て共同不法行為が成立すると認められる。 4 争点5(競業避止義務の内容及び範囲)について(1) 証拠によれば,次の事実が認められる。 ア原告は,平成19年に買収してグループ会社とした明星薬品の赤字が続くことから,解散して整理の上,事業譲渡を受けることとし,他のグループ会社についても 同じ時期に同様に整理することとした。この方針を受けて,明星薬品は,平成26年 5月10日,従業員らに対し,明星薬品が解散予定であることを告げるとともに,希望者は原則として原告に従業員として雇用するとの方針を示して労働組合に対し団体交渉を申し入れ,明星薬品解散後の従業員の処遇等についての交渉を開始した(甲57の1及び2,甲60,証人P4)。 イ明星薬品では,同月26日に原告の取締役であるP11が代表取締役に就任し (甲1の1及び2),労働組合との交渉を続けた結果(甲57の3ないし5),明星薬品の営業担当従業員15名のうち,8名が原告及びその子会社に転職することとなり,被告ら3名を含む7名は退職することになったが,明星薬品退職時の誓約書の作成については,交渉はされなかった(証人P4)。 ウこれらの過程で,明星薬品は被告P1に対し,原告への転職を希望する場合の 原告入社後の雇用条件を提示するとともに,原告への転職を希望しない場合,会社整理時に年次有給休暇の残日数に平均賃金を乗じた金額(満額 で,明星薬品は被告P1に対し,原告への転職を希望する場合の 原告入社後の雇用条件を提示するとともに,原告への転職を希望しない場合,会社整理時に年次有給休暇の残日数に平均賃金を乗じた金額(満額であれば54万1360円)を退職金の代わりに支給することを提示した。 被告P1については,完全歩合制請負社員のため退職金規程による退職金の支給はなく,提示された額も0円であった(甲57の9)。 エ明星薬品は,被告P2に対し,原告への転職を希望する場合の原告入社後の雇用条件を提示するとともに,原告への転職を希望しない場合,会社整理時に年次有給休暇の残日数に平均賃金を乗じた金額(満額であれば55万8840円)を退職金の代わりに支給することを提示した。 また,被告P2に退職金規程に基づく支給すべき退職金として提示された金額は, 163万1667円であった(甲57の10)。 オ明星薬品は,被告P3に対し,原告への転職を希望する場合の原告入社後の雇用条件を提示するとともに,原告への転職を希望しない場合,会社整理時に年次有給休暇の残日数に平均賃金を乗じた金額(満額であれば33万3792円)を退職金の代わりに支給することを提示した。 また,被告P3に退職金規程に基づく支給すべき退職金として提示された金額は, 15万2417円であった(甲57の11)。 カ原告では,入社時に従業員から退社後3年間は競業をしない旨の誓約書を徴求していたことから,明星薬品を含むグループ会社の解散に当たっても,それらの会社を退職する従業員から同様の誓約書を徴求することとしたが,そのための各会社への連絡は退職の直前になって行われた(証人P4)。 キ被告P2は,平成26年7月31日,仕事を終えて帰宅しようとしたところ,営業所の事務員 の誓約書を徴求することとしたが,そのための各会社への連絡は退職の直前になって行われた(証人P4)。 キ被告P2は,平成26年7月31日,仕事を終えて帰宅しようとしたところ,営業所の事務員から,本件誓約書に署名押印するよう指示するメールが来ていたと言われたことから,P4に問い合わせたところ,署名押印を求められた(乙35,被告P2本人)。 被告P3は,同日,退職のあいさつ回りを終えて帰社したところ,退職書類ととも に誓約書が机上に置かれていたことから,梅田営業所に電話で問い合わせたところ,署名押印を求められた(乙36,被告P3本人)。 被告P1は,同日,梅田営業所において,誓約書への署名押印を求められた(被告P1本人)。 ク被告ら3名が本件誓約書に署名するに当たり,その内容等について,原告又は 明星薬品の担当者から口頭での補充説明はなかった(被告P1本人,被告P2本人,被告P3本人)。 ケ明星薬品と同時期に解散した他のグループ社員130人のうち,3名が本件誓約書に署名しなかったが,その3名の社員にも退職金の支払や有給の買取りはされた(証人P4)。 (2) 本件誓約書に基づく競業避止の合意内容ア本件誓約書においては,「自ら医薬品配置販売業を自営する場合又は同業他社に従事者として勤務する場合においても,3年間は貴社で担当していたお客様に出入りし,置き合わせをいたしません」とされており,文言上,従前の担当顧客に対する「置き合わせ」を禁止するものとしている。 イ 「置き合わせ」とは,薬の置き売りを前提とする言葉であり,本件誓約書にお いても,医薬品配置販売業が対象とされている。また,医薬部外品や健康食品は訪問による現金販売が可能であり,むしろ現金販売が通常の販売方法である(弁論の全 提とする言葉であり,本件誓約書にお いても,医薬品配置販売業が対象とされている。また,医薬部外品や健康食品は訪問による現金販売が可能であり,むしろ現金販売が通常の販売方法である(弁論の全趣旨)一方で,医薬品は訪問による現金販売が禁止されていること(甲21)に照らせば,本件誓約書の文言を素直に解する限り,「置き合わせ」とは,医薬品(薬箱)が配置されている顧客のもとに,重ねて医薬品(薬箱)を配置することを指すものとい うべきであり,医薬部外品や健康食品を販売することは含まれないと解される。 ただし,医薬品(薬箱)が配置されている顧客に対して訪問により医薬品を現金販売する行為も,違法ではあるがそれが行われる場合には,薬箱の重ね置きと同様に原告の営業と競合することは明らかであるところ,医薬品の現金販売は違法とされていることに鑑みると,本件誓約書敢えて記載されなかったとしても無理からぬところが あり,また,本件誓約書に記載するまでもなくこれが禁止されることは被告ら3名にも容易に了解可能であったというべきである。 したがって,「置き合わせ」とは,医薬品(薬箱)が配置されている顧客に対して,医薬品を販売する行為をいうものと解するのが相当である。 以上に加え,本件誓約書のその他の文言からすると,本件誓約書に署名押印したこ とにより,被告ら3名が負う競業避止義務の内容は,被告ら3名が明星薬品に勤務していた時代に,自らの担当顧客であった顧客のうち,現に明星薬品の医薬品(薬箱)が配置されている者に対して,医薬品(薬箱)を配置し,又は訪問により医薬品を販売する行為をいうものと解するのが相当である。 ウ以上に対し,原告は,本件誓約書は,医薬品のみならず,医薬部外品や健康食 品の販売も競業避止の対象とするものであると主張する により医薬品を販売する行為をいうものと解するのが相当である。 ウ以上に対し,原告は,本件誓約書は,医薬品のみならず,医薬部外品や健康食 品の販売も競業避止の対象とするものであると主張する。 しかし,本件誓約書に係る競業避止合意は,労働者である被告ら3名の職業選択の自由を制限するものであるから,その内容については厳格に解するべきものである。 また,本件誓約書は,被告ら3名が明星薬品を退職する日になって,明星薬品又は原告の担当者から突然求められて署名押印し,提出したものであるところ,被告ら3名 が署名押印をするに当たって,「置き合わせ」の意味を始め,本件誓約書作成によっ て負うこととなる競業避止の範囲や対象について,明星薬品又は原告から何らかの具体的な説明を受けたような事情は認められず,被告ら3名が,本件誓約書に署名押印をして提出した以外に,競業避止の範囲や対象について何らかの意思表示をしたような事情も認められない。 これらからすると,本件誓約書の内容は,その文言から一読して明確に理解し得る 限度でのみその意味を解釈するのが相当であり,「置き合わせ」という語の本来の意味や,被告ら3名にとって一読して明確に理解可能な前記認定の限度を超えて,本件誓約書による競業避止の対象に,医薬部外品や健康食品の販売も含むと解することはできず,被告ら3名がその旨合意したと認めることもできない。仮に原告のいうように,薬箱に医薬部外品や健康食品が入っている場合があるとしても,同結論を左右す るものではない。 また,原告は,現に医薬品(薬箱)が配置されていない顧客に対する医薬品等の販売行為や営業行為も,競業として禁止されると主張する。しかし,「置き合わせ」という語は,文言上,医薬品が配置されている顧客のもとに重ねて医薬品を配置す 薬箱)が配置されていない顧客に対する医薬品等の販売行為や営業行為も,競業として禁止されると主張する。しかし,「置き合わせ」という語は,文言上,医薬品が配置されている顧客のもとに重ねて医薬品を配置することを指すものと解されるのは前記のとおりである。また,本件誓約書における「お客 さまに出入りし,置き合わせをいたしません」との文言についても,違約金をもって賠償すべき顧客の奪取は「置き合わせ」によって初めて生じることからすると,「置き合わせ」と無関係に客先への出入り自体までを禁止する内容とは明確に理解し得ない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 なお,顧客に置かれている薬箱が明星薬品のものではなく,従来から原告の薬箱が 置かれていた場合にも「置き合わせ」になるか否かについても,原告と被告らとの間で争いがあると解される。これについては,明星薬品宛に提出する本件誓約書において,「担当していたお客様」に対する「置き合わせ」を禁止する趣旨として誓約書の記載から明確に理解できるのは,被告ら3名が明星薬品の従業員として担当していた顧客の情報をよく知る立場にあることから,それを利用して明星薬品から原告に引き 継がれる顧客を奪うことを防止するという限度であり,明星薬品の顧客を原告が引き 継ぐこと以上に原告独自の利益を保護する趣旨は読み取れない。このことからすると,明星薬品と顧客との取引が終了した後は,従来から原告の薬箱が独自に置かれていた場合であっても,その顧客に営業をすることが被告ら3名が明星薬品時代に得た顧客情報を利用して明星薬品から引き継がれた顧客を奪うことにはならないから,本件誓約書が禁止の対象とする「置き合わせ」には当たらないと解するのが相当である。 5 争点6(本件誓約書に係る競業避止合意の有効性)につ 星薬品から引き継がれた顧客を奪うことにはならないから,本件誓約書が禁止の対象とする「置き合わせ」には当たらないと解するのが相当である。 5 争点6(本件誓約書に係る競業避止合意の有効性)について(1) 被告らは,本件誓約書に係る競業避止合意が,被告ら3名の職業選択の自由を不当に制限し,公序良俗に違反するものとして無効であると主張する。 そこで,検討するに,まず,本件において,明星薬品と被告ら3名との間で競業避止の合意をした目的は,明星薬品及びその事業譲渡を受けた原告の営業上の秘密であ る顧客情報やそれを基礎とする取引先の維持にあると解されるから,本件誓約書による競業避止の合意は,使用者の正当な利益の保護という正当な目的のためになされたものというべきである。 そして,本件誓約書により被告ら3名が負う競業避止義務の対象は,明星薬品時代の各人の担当顧客に限られる上,さらにそのうち原告が現に医薬品(薬箱)を配置し ている顧客に対して,重ねて医薬品を販売する行為に限定されている。これらに加え,明星薬品での売上げは医薬品より健康食品の方が多く,特に被告P1においては医薬品と健康食品の売上比は概ね2対8であること(被告P1本人)からすれば,本件誓約書により被告ら3名が制約を受ける営業行為の範囲は相当程度限定されているものというべきである。 以上に加え,医薬品配置販売業における顧客情報の重要性に鑑みると,3年間の競業避止義務期間が必ずしも短期間とはいい難く,被告ら3名に対して通常より多額の退職金が支払われるなど競業避止の合意の代償措置が講じられたとは認められないことを考慮しても,本件誓約書に基づく競業避止の合意が,公序良俗に反し無効であるとまではいえない。 (2) なお,被告ら3名は,本件誓約書に署名押印しな 代償措置が講じられたとは認められないことを考慮しても,本件誓約書に基づく競業避止の合意が,公序良俗に反し無効であるとまではいえない。 (2) なお,被告ら3名は,本件誓約書に署名押印しなければ,7月分の給与の支払 や有給休暇の買取り,退職金の支払をしないとの説明を受け,やむを得ず署名したと主張する。 しかし,被告ら3名の労働の対価である給与や退職金の支払義務と,本件誓約書への署名押印によって被告ら3名が将来にわたり競業避止義務を新たに負うこととは全く別の問題であって,被告ら3名が本件誓約書への署名を拒否したからといって, 明星薬品が既に発生している給与支払義務や退職金支払義務を免れるといった関係にないことは明らかであり,現に原告のグループ会社の元従業員で誓約書の署名押印を拒否した3名についても退職金等は支払われているから,仮に,担当者がこのような発言をしたとしても,本件誓約書への署名押印の任意性が失われるほどのものということはできない。 また,有給休暇の買取予定額は,被告P1は54万1360円(甲57の9),被告P2は55万8840円(甲57の10),被告P3は33万3792円(甲57の11)と比較的多額ではあるが,当時,既に競業を営むことが決定していた被告ら3名にとっては,有給休暇の買取が拒まれる不利益よりも,本件誓約書への署名によって競業避止義務を負うことの方がより重大であったというべきであるから,仮に, 担当者が,本件誓約書への署名押印を拒めば有給休暇の買取ができないという発言をしたとしても,それによって,被告ら3名が真意に基づかずに本件誓約書への署名押印をしたとは考え難いことから,この点は,署名押印の任意性が失われるほどのものということはできない。 さらに,本件誓約書によって被告ら3 によって,被告ら3名が真意に基づかずに本件誓約書への署名押印をしたとは考え難いことから,この点は,署名押印の任意性が失われるほどのものということはできない。 さらに,本件誓約書によって被告ら3名が負うこととなる競業避止義務の範囲は限 定的であり,これによって,特に被告P1が懸念していた鹿角霊芝(医薬部外品)の販売が禁じられるものでもないことからすれば,本件誓約書の内容自体が,被告ら3名の署名押印の任意性を疑わせる事情ということはできない。 (3) また,被告P2は,P4から,本件誓約書は形式的なものであり,効力はないと言われ,それを信じて本件誓約書に署名押印したものであるとして,錯誤無効の主 張をする。 しかし,仮にそのような発言があったとしても,明星薬品が退職従業員らに対し,敢えて本件誓約書への署名押印を求めていることに加え,原告にとって退職従業員らに競業避止義務を負わせ,営業上の秘密や取引先を維持することが重要であることは明らかであり,また,本件誓約書が,退職従業員らに競業避止義務を課し,これに反した場合の違約金の合意までさせる内容のものであることからして,本件誓約書が何 らの効力も有しない形式的なものなどということはあり得ないのは明らかであるから,被告P2が本件誓約書に署名押印した動機に錯誤があったとは認められない。 6 争点7(本件誓約書に係る競業避止義務の相手方)について本件誓約書の宛先は文面上,明星薬品とされており(甲13),その作成時点ではまだ明星薬品は存在しているから,本件誓約書に係る競業避止合意の当事者は,被告 ら3名と明星薬品であると解される。 しかし,明星薬品は,本件誓約書が作成された当日である平成26年7月31日に解散するのであるから,本件誓約書への署名押印時にお 止合意の当事者は,被告 ら3名と明星薬品であると解される。 しかし,明星薬品は,本件誓約書が作成された当日である平成26年7月31日に解散するのであるから,本件誓約書への署名押印時において,明星薬品自身には,もはや被告ら3名に競業を禁止する意味はなく,明星薬品から医薬品配置販売業を譲り受けて引き継ぐことになる原告にこそ,引継元の明星薬品の退職従業員となる被告ら 3名の競業を禁ずる必要性があることは明らかである。また,本件誓約書の本文に,「貴社のお客様が富士薬品に引き継がれることに鑑み・・・置き合わせをいたしません」と記載されているのも,明星薬品の医薬品配置販売業が原告に譲渡されることを前提に,顧客の引継先の原告のために競業避止義務を定める趣旨が表されていると解される。これらからすると,本件誓約書は,被告ら3名が明星薬品に対して競業避止 義務を負うこととともに,事業譲渡に伴いその義務の相手方を原告に承継させて,その義務の相手方を原告とすることを内容とするものと解するのが相当である。そして,そのことは,明星薬品が解散し,同社の医薬品配置販売業が原告に引き継がれることを十分認識している被告ら3名にとっても容易に理解し得たはずのことであるから,被告ら3名は本件誓約書によりその旨を合意したものと認めるのが相当であ る。 そして,明星薬品と原告との間で,被告ら3名との間での競業避止合意を原告が承継する旨を合意していることは,本件誓約書作成の経緯から明らかであるから,被告ら3名は,原告に対して前記内容の競業避止義務を負うと認められる。 7 争点8(被告らによる競業避止義務違反行為及び被告らが支払うべき金額)について (1) 被告ら3名の本件誓約書違反行為以上によれば,本件誓約書に係る競業避止合意 を負うと認められる。 7 争点8(被告らによる競業避止義務違反行為及び被告らが支払うべき金額)について (1) 被告ら3名の本件誓約書違反行為以上によれば,本件誓約書に係る競業避止合意により禁止される行為は,被告ら3名が明星薬品に勤務していた時代に自らの担当顧客であった顧客のうち,明星薬品の医薬品(薬箱)が配置されている者に対して,医薬品(薬箱)を配置し,又は医薬品を販売する行為であるから,原告が顧客との取引を解消した後に被告ら3名が医薬品 (薬箱)を配置し又は販売しても,競業避止には触れない。以下,このことを前提に,被告ら3名の本件誓約書違反に当たる行為を検討する。 ア原告の契約解除日証拠(甲66,甲69,甲71ないし74)及び弁論の全趣旨によれば,原告と顧客との契約が解除された場合の処理手順は,まず,顧客から契約解除の申し出があっ た場合,営業部員が顧客のもとを訪れ,顧客のもとに設置された薬箱に貼付されているバーコードをスキャンすること,そうすると,その訪問日時が原告本社に転送され,本社において「最終訪問日」として記録されること,何らかの理由でスキャンができなかった場合は,訪問時間は記録されず,データベース上に「白紙精算」と記録されることが認められる。 また,証拠(甲67,甲71ないし74)及び弁論の全趣旨によれば,契約中止処理については,平成26年8月から半年間は,明星薬品を含めた5社から引き継いだ顧客についての中止処理も,原告の本社で一括して行っていたこと,中止処理は,毎月15日(2月は10日)を締め日として,その日までに提出された一括削除依頼書につき,当月末日の2営業日前までに一括して行っていたこと,最終訪問日が平成2 6年7月31日以前(明星薬品解散前)となっているものは,その後 締め日として,その日までに提出された一括削除依頼書につき,当月末日の2営業日前までに一括して行っていたこと,最終訪問日が平成2 6年7月31日以前(明星薬品解散前)となっているものは,その後,原告の営業部 員が訪問したが,既に箱が引き上げられていたなどの理由で,最終訪問日として前記バーコードのスキャンによる記録ができなかったものであり,実際の最終訪問日は,「中止日」前月の16日から「中止日」当月の15日(2月については,1月11日から2月10日)であることが認められる。 したがって,最終訪問日が平成26年8月1日以降となっているものは,「最終訪 問日」が契約解除日であり,同年7月31日以前であるものは,「中止日」前月の16日から「中止日」当月の15日までのいずれかの日が契約解除日であることが認められる。 イ被告P1の競業避止義務違反行為(ア) 被告P1が退職後に薬箱を設置し又は医薬品を現金販売した従前の担当顧客 として認めているのは,別紙「被告P1誓約書違反検討シート」記載の1154番までの86軒である。これに対し,原告は,同別紙のその余の15軒もそれらに該当する顧客であると主張するが,同別紙に掲記された証拠によって,被告P1が薬箱を設置し又は医薬品を現金販売した顧客と認められるのは,119,1144,914,1115の顧客のみであるから,原告の上記主張はその限度で認められるにとどま る。そして,それらの顧客に対する原告又は明星薬品による最終訪問日は,同別紙の「原告薬箱引上日に関する原告の主張」欄の「最終訪問日」欄記載のとおりであると認められ(各「最終訪問日甲号証」欄記載の証拠),弁論の全趣旨により,中止日は同欄の「中止日」欄記載のとおりであると認められる。 そうすると,前記アで認定した処理手順 訪問日」欄記載のとおりであると認められ(各「最終訪問日甲号証」欄記載の証拠),弁論の全趣旨により,中止日は同欄の「中止日」欄記載のとおりであると認められる。 そうすると,前記アで認定した処理手順により,各顧客との契約解除日は,同別紙 の「認定」欄の「原告薬箱引上日」欄記載のとおりであると認められる。 (イ) 被告P1の担当顧客101軒に関し,被告P1が被告八光薬品の薬箱を設置した日については,被告P1は,同別紙の「被告側の主張」欄の「被告薬箱設置日」欄のとおり主張する(なお同欄の×は薬箱を設置していないという趣旨である。)ところ,その中には,被告P1関係での被告八光薬品の顧客カード(乙79ないし167) から明確であるものと明確でないものがある。しかし,明確でないものについても, 他に被告P1が薬箱を設置したことの有無及び設置日を認めるに足りる的確な証拠がないことからすると,被告P1の主張のとおり認めるほかないというべきである。 なお,被告P1関係での被告八光薬品の顧客カードには,「契約日」欄に日付の記入があるものがあり,被告P1自身が被告八光薬品の薬箱設置日と主張する日は,多くの場合,「契約日」欄に記入されている日付と合致する(乙114,乙127,乙1 39,乙144,乙154,乙157等)が,それ以外の場合に「契約日」として記載した日付の趣旨は明らかでなく,被告P1の販売商品の主力が健康食品であり,経費を度外視して見込みの乏しい客にも薬箱を設置するとも限らないこと(被告P2本人)も考慮すると,「契約日」欄の日付をもって被告P1が薬箱を設置した日であると認めることはできない。 次に,前記のとおり,薬箱を設置しなくとも,医薬品を現金販売した場合には,本件誓約書に係る競業避止合意に違反すると解されると もって被告P1が薬箱を設置した日であると認めることはできない。 次に,前記のとおり,薬箱を設置しなくとも,医薬品を現金販売した場合には,本件誓約書に係る競業避止合意に違反すると解されるところ,被告P1が最初に医薬品を販売した日及び販売商品名は,被告側の主張及び上記顧客カードから,それぞれ,同別紙の「認定」欄の「被告医薬品販売日」欄,「左欄の販売医薬品名」欄記載のとおりであると認められる。 (ウ) 以上からすると,証拠上認められる被告P1による「置き合わせ」行為は,同別紙の「認定」欄記載の「原告薬箱引上日」欄の日と,「被告薬箱設置日」欄と「被告医薬品販売日」欄の日のうちの早い方の日とを比較して,前者が後者よりも後れる場合に認められ,同別紙「置き合わせ」欄に「○」と記載した43軒であると認められる(なお両者が同一日の場合は置き合わせと断定できないことから×としてい る。)。 ウ被告P2の競業避止義務違反行為(ア) 被告P2が退職後に薬箱を設置し又は医薬品を現金販売した従前の担当顧客として認めており,証拠上も認められるのは,別紙「被告P2誓約書違反検討シート」の21軒であるところ,これらの顧客に対する原告又は明星薬品による最終訪問日 は,被告P1の場合と同様の各欄記載のとおりであると認められる。 そうすると,前記アで認定した処理手順により,各顧客との契約解除日は,同別紙の「認定」欄の「原告薬箱引上日」欄記載のとおりであると認められる。 (イ) 被告P2の担当顧客21軒に関し,被告P2が被告八光薬品の薬箱を設置した日,及び被告八光薬品の薬箱設置日より前に医薬品を販売した日,販売医薬品名は,被告P1の場合と同様,同別紙の各欄記載のとおりであると認められる。 原告は,被告P2に関しては 品の薬箱を設置した日,及び被告八光薬品の薬箱設置日より前に医薬品を販売した日,販売医薬品名は,被告P1の場合と同様,同別紙の各欄記載のとおりであると認められる。 原告は,被告P2に関しては,ほとんどが顧客カードの「契約日」欄記載の日に被告八光薬品の薬箱が設置されていることを指摘し,それとは異なる日を薬箱設置日であるとする被告らの主張(同別紙12,196,665,738,890)は虚偽である旨主張するが,これら顧客の被告八光薬品の顧客カード(「証拠」欄記載の証拠)には,契約日とは異なる日(同別紙の「被告側の主張」欄の「被告薬箱設置日」欄記 載の日)に薬箱を設置したことが明記又はそれをうかがわせる記載がされており,これらの記載が虚偽であると疑うには足りないことから,この点に関する原告の主張を採用することはできない。 (ウ) 以上からすると,被告P2による「置き合わせ」行為は,被告P1について述べたのと同様にして,同別紙「置き合わせ」欄に「○」と記載した14軒であると認 められる。 なお,132の顧客について,被告らは,同顧客と明星薬品との取引は,平成26年7月までに解除されたと主張するところ,証拠(甲12の2)によれば,同顧客と明星薬品との取引は,平成26年7月2日に中止され,同月31日までに回復されなかったことが認められる。もっとも,同顧客の顧客カードにも,「明星薬品箱引上げ 済み」と記載されており(乙41),同年8月1日から被告P2がビタグッドを販売した同年8月5日までの間に,原告が薬箱を設置したと認めるに足りる証拠はないことからすれば,同顧客に対して「置き合わせ」があったとは認められない。 また,607の顧客について,被告らは,同顧客と明星薬品との取引は,平成26年7月に解除され,同月末までに再度契約 拠はないことからすれば,同顧客に対して「置き合わせ」があったとは認められない。 また,607の顧客について,被告らは,同顧客と明星薬品との取引は,平成26年7月に解除され,同月末までに再度契約締結などされていないと主張するところ, 証拠(甲12の2)によれば,同顧客と明星薬品との取引は,平成26年7月12日 に中止され,同月31日までに回復されなかったことが認められる。また,同顧客の顧客カード(乙50)には,平成27年8月11日に原告が薬箱を引き上げた旨の記載があることから,平成26年8月1日以降,同顧客と原告との契約が締結され,その後,平成27年8月11日に近接する時期に原告の薬箱が引き上げられたものと推認されるが,平成26年8月1日から被告P2が同顧客に対して薬箱を設置した同月 12日までに,原告が同顧客に対し薬箱を設置したと認めるに足りる証拠はないことからすれば,同顧客に対して「置き合わせ」があったとは認められない。 (エ) 被告らの主張について被告らは,163,642,646の顧客に対して,顧客からの連絡を受けて薬箱を設置した,又は設置後すぐに引き上げたものであり,実際に販売はされていないと 主張するが,薬箱を設置するに至った経緯や,設置期間は,競業避止義務違反の成否に無関係である。 エ被告P3の競業避止義務違反行為(ア) 被告P3が退職後に薬箱を設置し又は医薬品を現金販売した従前の担当顧客として認めており,証拠上も認められるのは,別紙「被告P3誓約書違反検討シート」 の23軒であるところ,これらの顧客に対する原告又は明星薬品による最終訪問日は,被告P1の場合と同様の各欄記載のとおりであると認められる。 そうすると,前記アで認定した処理手順により,各顧客との契約解除日は,同別紙の ,これらの顧客に対する原告又は明星薬品による最終訪問日は,被告P1の場合と同様の各欄記載のとおりであると認められる。 そうすると,前記アで認定した処理手順により,各顧客との契約解除日は,同別紙の「認定」欄の「原告薬箱引上日」欄記載のとおりであると認められる(なお,1174及び1220の顧客については後記のとおりである。)。 (イ) 被告P3の担当顧客23軒に関し,被告P3が被告八光薬品の薬箱を設置した日,及び被告八光薬品の薬箱設置日より前に医薬品を販売した日,販売医薬品名は,被告P1の場合と同様,同別紙の各欄記載のとおりであると認められる。 原告は,被告P3の同別紙7の顧客への訪問は,平成26年9月5日よりも前であると主張するが,そのように認めるに足りる証拠がないばかりでなく,同日より前に 被告P3が医薬品を販売した事実も被告八光薬品の薬箱を設置した事実も認めるに 足りる証拠がないことからすると,この点は前記認定を左右しない。 (ウ) 以上からすると,被告P3による「置き合わせ」行為は,被告P1について述べたのと同様にして,同別紙「置き合わせ」欄に「○」と記載した16軒であると認められる。 (エ) 被告らの主張について a 被告らは,407,408,411の顧客に対して,顧客からの連絡を受けて薬箱を設置した,又は設置後すぐに引き上げたものであり,実際に販売はされていないと主張するが,薬箱を設置するに至った経緯や,設置期間は,競業避止義務違反の成否に無関係である。 b 被告らは,411の顧客について,被告P3が訪問した平成26年8月10日 以前から,原告は,同顧客を訪問していないなどと主張する。 しかし,競業避止義務違反の成否に関係するのは,原告の薬箱の設置の有無であり,訪問の頻度は無関係 P3が訪問した平成26年8月10日 以前から,原告は,同顧客を訪問していないなどと主張する。 しかし,競業避止義務違反の成否に関係するのは,原告の薬箱の設置の有無であり,訪問の頻度は無関係であるところ,証拠(乙63)によれば,同顧客の懸場帳には,平成26年8月19日の欄の下に,「かぶせた!明星ガムテープ止めした」との記載があり,同日時点で明星薬品の薬箱が設置されていたことは明らかである。したがっ て,同日,同顧客に対して被告八光薬品の薬箱を設置した行為は競業避止義務違反に当たる。 c 被告らは,433の顧客について,被告P3が訪問した平成26年12月16日時点で,原告は,同顧客を訪問していなかったなどと主張する。しかし,競業避止義務違反の成否に関係するのは,原告の薬箱の設置の有無であり,訪問の頻度は無関 係であるところ,被告側の主張(被告八光薬品・被告P2・被告P3の平成29年10月11日付け第8準備書面)によっても,明星薬品の薬箱が置かれている状況下で被告八光薬品の薬箱を置き合わせしたと認められる。 したがって,平成27年1月7日に,同顧客に被告八光薬品の薬箱を設置した被告P3の行為は競業避止義務違反に当たる。 d 被告らは,576の顧客について,平成26年7月31日以降,原告は同顧客 を訪問していなかったなどと主張する。しかし,競業避止義務違反の成否に関係するのは,原告の薬箱の設置の有無であり,訪問の頻度は無関係であるところ,被告側の主張(被告八光薬品・被告P2・被告P3の平成29年10月11日付け第8準備書面)によっても,明星薬品の薬箱が置かれている状況下で被告八光薬品の薬箱を置き合わせしたと認められる。 したがって,平成26年8月11日に同顧客に医薬品を販売した被告P3の行為は 第8準備書面)によっても,明星薬品の薬箱が置かれている状況下で被告八光薬品の薬箱を置き合わせしたと認められる。 したがって,平成26年8月11日に同顧客に医薬品を販売した被告P3の行為は,競業避止義務違反に当たる。 e 被告らは,1174の顧客について,明星薬品の薬箱は平成26年6月ないし7月に引上げ済みであったと主張する。そして,甲12の3の報告書によれば,この顧客について明星薬品の薬箱は平成26年7月24日に引き上げられたと認められ, 同顧客の顧客カード(乙73)には,「元々フジ有,明星引上げ」との記載があることからすれば,被告P3が被告八光薬品の薬箱を設置した平成26年8月中旬頃までには,明星薬品の薬箱が引き上げられ,以前から設置されていた原告の薬箱のみが設置されていたものと認められる。したがって,被告P3がその頃に被告八光薬品の薬箱を設置した行為は「置き合わせ」には当たらず,競業避止義務違反にならない。 f 被告らは,1183の顧客について,平成26年7月31日以降,原告は,同顧客を訪問していなかったなどと主張する。しかし,競業避止義務違反の成否に関係するのは,原告の薬箱の設置の有無であり,訪問の頻度は無関係であるところ,被告側の主張(被告八光薬品・被告P2・被告P3の平成29年10月11日付け第8準備書面)によっても,明星薬品の薬箱が置かれている状況下で被告八光薬品の薬箱を 置き合わせしたと認められる。 また,営業行為を行うに至った経緯が競業避止義務違反の成否に無関係であることは前記のとおりである。 したがって,被告P3が平成26年9月22日に医薬品を販売した行為は競業避止義務違反に当たる。 g 被告らは,1220の顧客について,明星薬品時代に薬箱が引き上げられた顧 客で したがって,被告P3が平成26年9月22日に医薬品を販売した行為は競業避止義務違反に当たる。 g 被告らは,1220の顧客について,明星薬品時代に薬箱が引き上げられた顧 客であると主張する。この点,甲12の3の報告書には,この顧客について明星薬品の薬箱が平成26年7月3日に引き上げられたとの記載と,同月末の時点で,同顧客の欄に「フジ有」との記載があり,また,その顧客カード(乙76)には,「元々フジあり明星引上済」との記載があるから,前記の1174の顧客と同様,平成27年6月8日に同顧客に医薬品を販売した被告P3の行為は,「置き合わせ」に当たら ず,競業避止義務違反にならない。 h 被告らは,1229の顧客について,平成27年2月3日の薬箱引き上げまで,原告は,同顧客を訪問していなかったなどと主張する。しかし,競業避止義務違反の成否に関係するのは,原告の薬箱の設置の有無であり,訪問の頻度は無関係であり,被告側の主張(被告八光薬品・被告P2・被告P3の平成29年10月11日付け第 8準備書面)によっても,明星薬品の薬箱が置かれている状況下で被告八光薬品の薬箱を置き合わせしたと認められる。また,営業行為を行うに至った経緯が競業避止義務違反の成否に無関係であることは前記のとおりである。 したがって,被告P3が平成26年10月3日に,同顧客に対して被告八光薬品の薬箱を設置した行為は競業避止義務違反に当たる。 i 被告らは,1230の顧客について,平成26年7月31日以降,原告は,同顧客を訪問していなかったなどと主張する。しかし,競業避止義務違反の成否に関係するのは,原告の薬箱の設置の有無であり,訪問の頻度は無関係であるところ,被告側の主張(被告八光薬品・被告P2・被告P3の平成29年10月11日付け第 と主張する。しかし,競業避止義務違反の成否に関係するのは,原告の薬箱の設置の有無であり,訪問の頻度は無関係であるところ,被告側の主張(被告八光薬品・被告P2・被告P3の平成29年10月11日付け第8準備書面)によっても,明星薬品の薬箱が置かれている状況下で被告八光薬品の薬箱を 置き合わせしたと認められる。 したがって,被告P3が平成26年8月18日に同顧客に対し被告八光薬品の薬箱を設置した行為は競業避止義務違反に当たる。 オ原告は,上記の被告らが認める薬箱を設置し又は医薬品を現金販売した顧客は過少申告であると主張する。 (ア) そこでまず,被告P1について見ると,被告P1は,退職後に取引を行ったこ とがある従前の担当顧客は別紙被告P1誓約書違反検討シートの1154までの86名であるとしながら,そこには被告P1手書きリスト1及び2で営業先として列挙し,医薬品を販売している顧客が漏れていると認められる。 また,本件仮処分手続において疎明資料として提出された被告P1関係での被告八光薬品の顧客カードと,本件において書証として提出された被告P1関係での被告八 光薬品の顧客カードとを対比すると,別紙「証明妨害検討シート」記載のとおり,書式,記載内容,被告P2の割り印の有無等に差異が認められる。 このうち,同一の顧客カードが使用され続けているにもかかわらず,「布亀富士」の「富士」の記載が修正テープで消されているもの(39(同別紙左欄の番号,以下同様。))や「フジあり」との記載が修正液で消されているもの(76),もともと なかった「富士なし」との記載が加筆されているもの(25,47,51)があり,これらが,原告の薬箱設置の有無に関する記述であり,被告P1による置き合わせ軒数の認定に影響するもので,なおか と なかった「富士なし」との記載が加筆されているもの(25,47,51)があり,これらが,原告の薬箱設置の有無に関する記述であり,被告P1による置き合わせ軒数の認定に影響するもので,なおかつ,被告P1に有利な変更であるとの観点から重要な点であるにもかかわらず,その理由について,被告P1により合理的な説明はなされていない。 被告P1は,これらについて,従前の顧客カードから新しい顧客カードに転記したことによるものや,営業活動において顧客カードを使用する中で加筆したものであると主張するが,特に39や76の顧客カードにおける,修正液や修正テープでの文字の削除についての合理的説明といえないことは明らかである。 なお,その他にも,原告の薬箱が設置されていることを指すと推認される「富士あ り」の記載がなくなっているものが5軒,被告八光薬品との契約日の記載がなくなっているものが1軒認められるが,これらはいずれも,転記された顧客カードに関するものであることに加え,他に,被告らにとって有利と思われる「富士なし」との記載がなくなっているものが相当数認められることも併せ考慮すると,これらが過失による転記漏れである可能性を排除することはできない。 以上からすると,本件においては,一定数,被告P1による顧客カードの不合理な 書き換えがあったことが認められ,このような行動からすると,被告P1が,本件において,競業避止義務違反に当たる顧客に係る顧客カードの全てを開示していない疑いが濃厚である。 そうすると,本件は,原告が,被告P1の競業避止義務違反行為により生じた損害額の立証に必要な事実である,被告P1による「置き合わせ」の軒数を立証すること が極めて困難な場合に当たるというべきである。 したがって,不正競争防止法 1の競業避止義務違反行為により生じた損害額の立証に必要な事実である,被告P1による「置き合わせ」の軒数を立証すること が極めて困難な場合に当たるというべきである。 したがって,不正競争防止法9条を類推適用し,弁論の全趣旨により,被告P1による競業避止義務違反行為は,前記認定の軒数43軒に10軒を加えた,合計53軒と認定するのが相当である。 (イ) なお,原告は,被告P2及び被告P3についても顧客カードの開示拒否を主張 するが,その根拠とするのは,これら2名について認定できる誓約書違反行為が被告P1に比して少ないというにすぎず,その点についての具体的立証はないことから,これを認めることはできない。 (2) 以上より,被告ら3名の競業避止義務違反により生じる違約金の額は,被告P1につき159万円(3万円×53軒),被告P2につき42万円(3万円×14軒) 被告P3につき48万円(3万円×16軒)である。 なお,後記のとおり,競業1軒当たり3万円の違約金の定めは,競業避止義務違反行為による損害額の予定であると解されるところ,労働者の使用者に対する労働契約の不履行に基づく違約金又は損害賠償額の予定を禁止する労働基準法16条は,それにより労働者から退職の自由を奪い,又は当該労働関係における使用者への人格的隷 属を強いることになることを防止する趣旨であるから,退職後の競業避止義務違反を定め,この違反に対する損害賠償額の予定を定めることは同条に違反しないと解される。また,被告らは,この違約金の定めが公序良俗に反し無効であると主張するが,退職後の競業行為は購入金額の大きい得意先を対象として行われることが多いことを考慮すると,3年間にわたる競業避止義務違反行為によって原告に生じる損害額が 1軒当たり3万円を超えることは るが,退職後の競業行為は購入金額の大きい得意先を対象として行われることが多いことを考慮すると,3年間にわたる競業避止義務違反行為によって原告に生じる損害額が 1軒当たり3万円を超えることはあり得るものと推認され,また,原告が明星薬品か ら,さまざまな顧客が記載された2万7265軒に及ぶ懸場帳について,懸場得意家1軒当たり1万1022円で購入したこと(3億0050万9000円/27265軒=11021.7円。甲6)に照らしても,この金額が公序良俗に違反するほどに不当に高額であるということはできない。 また,競業避止義務違反を理由に債務不履行に基づく損害賠償を請求するに当たっ ては,不法行為に基づく損害賠償請求をする場合と同様,競業避止合意の内容及び有効性のほか,競業避止義務違反行為を特定して主張立証する責任を負うのであるから,訴訟上で請求をするには弁護士に委任することを必要とする類型の請求権であるということができ,その弁護士費用相当額は,競業避止義務違反と相当因果関係ある損害というべきである。そして,本件での被告ら3名の競業避止義務違反と相当因果 関係ある弁護士費用としては,被告P1につき15万円,被告P2につき4万円,被告P3につき4万円の限度で認めるのが相当である。 8 争点4(被告らの不正競争行為により原告に生じた損害)について(1) 損害額の推定(不正競争防止法5条2項)ア別紙損害計算シート1記載の顧客は,甲18ルート一覧に記載された顧客と, 別紙誤記等対比表の⑤⑥⑦⑨⑩⑪⑯の顧客(なお⑤は甲18ルート一覧中にも含まれる。)であることから,これら顧客に対する営業行為は,被告P1及び被告八光薬品による不正競争行為に当たるものである。 そして,これら各顧客に対する医薬品等の販売により被告 18ルート一覧中にも含まれる。)であることから,これら顧客に対する営業行為は,被告P1及び被告八光薬品による不正競争行為に当たるものである。 そして,これら各顧客に対する医薬品等の販売により被告八光薬品が得た粗利益は,同シート記載のとおりであることにつき当事者間に争いはなく,本件においては, これ以外に経費を要したことを認めるに足りる証拠はない。 イ別紙損害計算シート2記載の顧客は,再現ルート一覧の顧客のうち,被告P1が営業活動を実際に行ったものとして原告が損害賠償請求の対象とする24軒の顧客である。被告P1が,甲18ルート一覧とは別に,再現ルート一覧を持ち出し,使用したと認められることは前記検討のとおりであるから,当該ルート一覧に掲載され ていたと認められる別紙損害計算シート2記載の顧客に対する営業行為は,被告P1 及び被告八光薬品による不正競争行為に当たるものである。 そして,これら各顧客に対する医薬品等の販売により被告八光薬品が得た粗利益は,同シート記載のとおりであることにつき当事者間に争いはなく,本件においては,これ以外に経費を要したことを認めるに足りる証拠はない。 (2) 推定覆滅事由の有無 ア被告らは,①原告との取引が終了した顧客に対する医薬品等の売上げについては,原告が利益を得る可能性がないことから,被告らの利益が原告の損害との推定が働かない,②被告八光薬品の取扱商品のうち相当数について原告において取扱いがないことから,両者は競合関係にないと主張し,これらの事情により,不正競争防止法5条2項の損害額の推定は覆滅されると主張する。 イ ①(原告と取引が終了した顧客)について本件のような医薬品の配置販売及び健康食品等の訪問販売という販売方法の特質からすると,被告P1が退職後に 損害額の推定は覆滅されると主張する。 イ ①(原告と取引が終了した顧客)について本件のような医薬品の配置販売及び健康食品等の訪問販売という販売方法の特質からすると,被告P1が退職後に顧客に訪問営業活動をするより前に,当該顧客と原告との取引が終了している場合には,取引終了後にも原告が当該顧客に対して営業活動をしていたなどの事情が認められない限り,原告は,被告P1が営業活動をしなか ったとしても,当該顧客に係る販売利益を得ることはできなかったはずであると考えられるから,その場合には,当該顧客について推定が覆滅されると解するのが相当である。他方,被告P1の訪問営業活動が原告の取引終了以前に行われた場合には,被告P1が営業活動をしなければ原告が当該顧客に係る販売利益を得られた可能性があるから,取引終了後のものも含めて,なお推定は覆滅されないと解するのが相当で ある。 この観点から検討すると,原告又は明星薬品による別紙損害計算シート1及び2の顧客に対する最終訪問日及び中止日は,別紙推定覆滅検討シートの「認定」欄の各欄のとおりであり,これからすると,原告による薬箱の引上日(すなわち取引終了時)は,同別紙の「認定」欄の「原告薬箱引上日」欄のとおりであると認められる。他方, 被告P1が初めてそれらの顧客に対して営業活動をした日は,同別紙の「甲17,甲 19により認定される最初の被告P1訪問日」欄のとおりであるから,この日が上記の「原告薬箱引上日」欄の日よりも後れる場合には推定は覆滅され,同別紙の6,11,23,58,●(省略)●と24がこれに当たる。なお,1106については,最初のP1訪問日が中止日よりも遅いが,最終訪問日がそれより遅くなっていることから,取引終了後の営業活動がされた可能性があるため,推定は覆 ●(省略)●と24がこれに当たる。なお,1106については,最初のP1訪問日が中止日よりも遅いが,最終訪問日がそれより遅くなっていることから,取引終了後の営業活動がされた可能性があるため,推定は覆滅されない。 なお,914の●(省略)●については,甲17,甲19から最初の被告P1の訪問日を認定することはできないが,仮に「被告ら主張による最初の販売日」である平成26年11月13日が最初の訪問日であったとしても,これが「原告薬箱引上日」より遅いとは認められないことから,推定は覆滅されない。 ウ ②(取扱商品の相違)について (ア) 証拠によれば,次の事実が認められる。 a 被告八光薬品の取扱商品のうち,原告における現在の取扱状況,直近の取扱日は別紙「原告における被告八光薬品取扱商品の取扱状況」の「取扱の可否」欄,「直近の取扱日」欄記載のとおりである(同別紙「甲号証」欄記載の証拠)。 b 被告八光薬品の取扱商品の中で,原告において取扱いがない又は不明なもの は,ビタグッド,鹿角霊芝,ヘッドバランス,スッポンピュア,元気グルコサミン,国産青汁,だし醤油,シャンプーである。 cbのうちビタグッドの主な成分は,タウリン3000㎎の他,イカリソウエキス,クコシ流エキス,チアミン硝化物等であり,効果効能は,滋養強壮,虚弱体質,肉体疲労等とされている(乙12)。 他方,原告が代替品と主張するカーク3000EXの主な成分は,タウリン3000㎎の他,チアミン硝化物,リボフラビン,イノシトール等であり,効果効能は,虚弱体質,滋養強壮とされている(甲70の2)。 dbのうち鹿角霊芝とは,原料をマンネンタケ(鹿角霊芝)末,ショ糖脂肪酸エステル,セラックとする健康補助食品であり,健康維持,又は不規則な食生活等を送 る 強壮とされている(甲70の2)。 dbのうち鹿角霊芝とは,原料をマンネンタケ(鹿角霊芝)末,ショ糖脂肪酸エステル,セラックとする健康補助食品であり,健康維持,又は不規則な食生活等を送 る人に効くとされている(乙15)。 他方,原告が代替品と主張する三輝霊芝とは,マンネンタケ(霊芝)加工食品であり,でんぷん,乳糖,霊芝,糊料を原料とし,特に熟年層の健康に効くとされている(甲70の1)。 ebのうちヘッドバランスは,体脳バランスに最適として紹介される健康食品であるが,その成分は不明である(甲70の4)。 他方,原告が代替品と主張する若雅(イチョウ葉エキス加工食品)の成分は,シソ油,イチョウ葉エキス,ビタミンE含有植物油等であり,脳神経細胞の活性に効果があるとされる健康補助食品である(甲70の3)。 fbのうちスッポンピュアの成分等は不明である。 他方,原告が代替品と主張するスッポンDXとは,グラニュー糖,果糖ブドウ糖液 糖,はちみつ,スッポンエキス等を主な成分とする清涼飲料水である(甲70の5)。 gbのうち元気グルコサミンとは,グルコサミン,N-アセチルグルコサミン,ヒアルロン酸を主な成分とする栄養補助食品(錠剤)であり,元気な生活のために,と宣伝されている(甲76の1)。 他方,原告が代替品と主張するふじゲンサポートPROとは,グルコサミン,サケ 軟骨抽出物,ヒアルロン酸を配合した栄養補助食品(錠剤)であり,健康な生活のサポートに役立つと宣伝されている(甲76の1)。また,ふじゲンサポートⅢとは,グルコサミン,コンドロイチン硫酸,ヒアルロン酸等を原料とする栄養補助食品(錠剤)であり,健康な生活のために,と宣伝されている(甲76の1)。 hbのうち国産青汁の成分等は不明である。 は,グルコサミン,コンドロイチン硫酸,ヒアルロン酸等を原料とする栄養補助食品(錠剤)であり,健康な生活のために,と宣伝されている(甲76の1)。 hbのうち国産青汁の成分等は不明である。 他方,原告が代替品と主張する大麦若葉青汁とは,乳酸菌を加えた青汁であり,主な原料は大麦若葉末,還元麦芽糖水飴,夕顔果実粉末である(甲76の2)。 ibのうちシャンプーについては,原告の現在の取扱状況は不明であるが,別紙「原告における被告八光薬品取扱商品の取扱状況」のとおり,平成27年12月30日の時点までは取り扱っていた(甲69の19)。 (イ) 以上のとおり,被告八光薬品が取り扱う商品の多くは,原告においても取扱い が可能であり,実際に,平成28年以降に販売された実績もあることが認められ,ビタグッド及び鹿角霊芝についても,これらを被告P1が最後に販売した平成27年9月又は同年8月以降においても,原告により販売された実績があることが認められることから,少なくとも被告P1が顧客に販売した時点においては競合状態にあったものというべきであり,シャンプーについても,被告P1が唯一販売した平成27年8 月3日(別紙損害計算シート2の106の顧客)の時点では競合状態にあったものといえる。 また,前記(ア)で認定の成分及び効果効能からすれば,ビタグッドはカーク3000EXと,鹿角霊芝は三輝霊芝と,それぞれ代替性があるものと認められ,その他,前記認定の事実及び弁論の全趣旨によれば,ヘッドバランスは若雅と,スッポンピュ アはスッポンDXと,元気グルコサミンはふじゲンサポートPRO及びふじゲンサポートⅢと,国産青汁は大麦若葉青汁と,それぞれ成分及び効果効能が類似であるものと認められ,シャンプーについても同様であり,それぞれ代替 DXと,元気グルコサミンはふじゲンサポートPRO及びふじゲンサポートⅢと,国産青汁は大麦若葉青汁と,それぞれ成分及び効果効能が類似であるものと認められ,シャンプーについても同様であり,それぞれ代替性があるものと認められる。 このように,被告八光薬品の取扱商品のうち,原告で取扱いがない又は不明な商品 (ビタグッド,鹿角霊芝,ヘッドバランス,スッポンピュア,元気グルコサミン,国産青汁,シャンプー)について,原告において成分及び効果効能において代替性がある商品を取り扱っているところ,本件では,個別の顧客について,それら代替商品では購入する可能性がないなどの特段の事情について具体的な立証はない。したがって,被告P1によるこれら商品の販売がなければ,これら顧客が原告の代替商品を購 入した可能性を否定することはできない。 また,被告らは,少なくとも被告P1の明星薬品退職直後において,原告は,自社ブランド以外扱わないという方針のもと,被告八光薬品取扱商品を扱っておらず,被告八光薬品と競合関係になかったと主張するが,別紙「原告における被告八光薬品取扱商品の取扱状況」の「直近の取扱日」欄記載の各日において原告による被告八光薬 品取扱商品の取扱履歴があり,それより前の時点で原告による取扱いがなかったこと を認めるに足りる証拠もないことから,この点に関する被告らの主張は採用できない。 以上からすれば,被告P1の認識に関わらず,原告と被告八光薬品とは,ほとんど全ての取扱商品において競合関係にあるものと認められる。 ただし,だし醤油については原告における取扱いがなく,この販売利益を原告が得 ることはなかったと認められるから,この販売利益については推定の覆滅を認めるのが相当である。 (3) 不正競争行為により生じる損害と本 いては原告における取扱いがなく,この販売利益を原告が得 ることはなかったと認められるから,この販売利益については推定の覆滅を認めるのが相当である。 (3) 不正競争行為により生じる損害と本件誓約書に係る競業避止義務違反により生じる損害の関係本件誓約書における違約金の定めは賠償額の予定と推定され(民法420条3項), この推定を覆すに足りる事情は認められないところ,前記認定のとおり,本件誓約書により原告が被告ら3名に競業避止義務を負わせた目的は,明星薬品及びその事業譲渡を受けた原告の営業上の秘密である顧客情報の保護を図り,その取引先を維持することにより,原告の投下資本を回収することにあるから,その違反に対して賠償されるべき損害としては,販売減少による逸失利益が想定されていると解される。他方, 本件での被告P1の不正競争行為に係る損害賠償請求に係る損害も,前記のとおり販売減少による逸失利益であるから,両者はその性質上重複し,相互に補完し合うものというべきである。 そして,本件誓約書による競業避止合意は,原告の顧客情報を不正競争防止法よりも強固に保護するための特別合意であると認められるから,同一顧客に対する医薬品 の販売行為については本件誓約書による競業避止義務違反が優先的に適用され,不正競争防止法違反による損害はそれに吸収されると解するのが相当である。したがって,不正競争行為に該当する医薬品販売により被告P1が得た利益が3万円を超える顧客については,医薬品の販売利益額から3万円を差し引いた額につき不正競争行為たる医薬品販売による損害として支払義務が生じ,不正競争行為に該当する医薬品販 売により被告P1が得た利益が3万円に満たない顧客については,不正競争行為たる 医薬品販売による損害の支払義務 薬品販売による損害として支払義務が生じ,不正競争行為に該当する医薬品販 売により被告P1が得た利益が3万円に満たない顧客については,不正競争行為たる 医薬品販売による損害の支払義務は生じず,違約金3万円の支払義務のみが発生するというべきである。 (4) 以上からすると,被告P1及び被告八光薬品の不正競争行為により生じた損害のうち,違約金の他に支払われるべき損害金の額は別紙損害計算シート1及び2の各「損害額」欄記載の金額となり,合計289万6491円となる。 また,本件に現れた事情に鑑み,被告P1及び被告八光薬品の不正競争行為と相当因果関係ある弁護士費用は,29万円と認めるのが相当である。 9 本件においては,前記のとおり,被告P1と被告八光薬品の不正競争行為に係る責任は共同不法行為を構成すると認められるから,被告P1及び被告八光薬品は,原告に対して,連帯して前記損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払義務を負 うこととなる。 他方,被告ら3名による競業避止義務違反行為は,もともと,それぞれが原告との関係において個別に負う競業避止義務に違反したにとどまり,本件に現れた一切の事情を考慮しても,被告らが意を通じて競業避止義務違反行為に及び,又は共同して原告の債権妨害を図るなどしたと認めるに足りる証拠はない。 したがって,違約金については,被告ら3名が,それぞれ自らの競業避止義務違反行為により生じた前記違約金額につき,債務不履行に基づき損害賠償義務を負うにとどまるというべきである(なお,競業避止義務違反による不法行為に基づく損害賠償請求については,債務不履行に基づく請求と選択的併合の関係にあると解されるところ,債務不履行による以上の損害が発生したとは認められないから,それについては 判断の必要が 法行為に基づく損害賠償請求については,債務不履行に基づく請求と選択的併合の関係にあると解されるところ,債務不履行による以上の損害が発生したとは認められないから,それについては 判断の必要がない。)。 10 以上の次第で,原告の請求は,①被告P1及び被告八光薬品に対し,不正競争防止法4条に基づき連帯して318万6491円の損害賠償及びこれに対する不法行為後の日である平成27年10月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,②被告P1に対し,競業避止義務違反の債務不履行に基 づく174万円の損害賠償及びこれに対する請求の日の翌日である平成27年10 月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,③被告P2に対し,競業避止義務の債務不履行に基づく46万円の損害賠償及びこれに対する請求の日の翌日である平成27年10月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,④被告P3に対し,競業避止義務の債務不履行に基づく52万円の損害賠償及びこれに対する請求の日の翌日である平成27年10月8 日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容することとし,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 髙松宏之 裁判官 野上誠一 裁判官 大川潤子

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