令和4(ワ)11327 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月27日 大阪地方裁判所
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判決文本文40,797 文字)

主文 1 被告大阪市は、原告ら各人に対し、それぞれ55万円及びこれに対する平成30年1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らの被告大阪市に対するその余の請求及び被告教員ら(注:被告DないしG)に対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、原告らに生じた費用の500分の3及び被告大阪市に生じた費用の100分の3を被告大阪市の負担とし、原告ら及び被告大阪市に生じたその余の費用並びに被告教員ら(注:被告DないしG)に生じた費用を原告らの負担とする。 4 この判決は、1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求被告らは、原告らそれぞれに対し、連帯して、金1900万9464円並びに内金1570万9464円に対する平成30年1月27日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金330万円に対する訴状送達の日の翌日 (被告大阪市及び被告Fにつき令和5年2月3日、被告D及び被告Gにつき同月8日、被告Eにつき同年3月28日)から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨 本件は、被告大阪市(以下「被告市」という。)の設置する大阪市立a中学校(以下「本件中学校」という。)在学中に自宅マンションのベランダから転落して死亡したA(以下「本件生徒」といい、当該転落を「本件事故」という。)の父母である原告らが、(1)本件中学校の校長、教諭、教員が本件生徒に対するいじめを防止等すべき 安全配慮義務を怠り、その結果、本件生徒が自死に至った旨主張して、被告市 に対して国家賠償法1条1項に基づき、被告D、被告E、被告F及び被告G(以下、併せて「 対するいじめを防止等すべき 安全配慮義務を怠り、その結果、本件生徒が自死に至った旨主張して、被告市 に対して国家賠償法1条1項に基づき、被告D、被告E、被告F及び被告G(以下、併せて「被告教員ら」という。)に対して民法709条に基づき、原告らそれぞれにつき損害賠償金1570万9464円(本件生徒に生じた損害から受領した死亡見舞金を控除した残額の法定相続分及び原告ら固有の弁護士費用)及びこれらに対する平成30年1月27日(本件生徒が死亡した 日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、(2)被告教員らが本件生徒の自死後、自死の原因となったいじめについて調査し、保護者である原告らに報告すべき義務を怠った旨主張して、被告市に対して国家賠償法1条1項に基づき、被告教員らに対して民法709条に基づ き、原告らそれぞれにつき損害賠償金330万円(原告ら固有の損害及び弁護士費用)及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 なお、以下に記載する日付は、別段の記載がない限り、いずれも平成29年のものを指す。 2 前提事実(争いのない事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実を含む。)(1)当事者等ア原告ら本件生徒は平成17年▲月▲日生まれの男子であり、4月に本件中学校 に入学し、本件事故当時は本件中学校に1年生として在籍し、卓球部に所属していた。 原告Bは本件生徒の父であり(以下「原告父」という。)、原告Cは本件生徒の母である(以下「原告母」という。)。 イ被告ら 被告市は本件中学校の設置者 籍し、卓球部に所属していた。 原告Bは本件生徒の父であり(以下「原告父」という。)、原告Cは本件生徒の母である(以下「原告母」という。)。 イ被告ら 被告市は本件中学校の設置者である。その余の被告らはいずれも本件事 故当時本件中学校の教諭であり、被告Dは本件中学校の校長、被告Eは本件中学校1 年生である本件生徒のクラス(以下「本件クラス」という。)の担任、被告Fは本件中学校の2年生の担任兼学年主任及び本件生徒が所属していた卓球部の顧問、被告Gは本件中学校の1年生の学年主任を務めていた。 (2)本件生徒に対する他の生徒からの言動本件生徒は、本件中学校入学後平成30年1月に至るまでの間、他の生徒から「チビ」と呼ばれたり、プロレス技をかけられたり、「死ねや」「バーカ」等のメッセージをLINEで送信されたりすることがあった。 (3)いじめに関するアンケート等 ア本件中学校では、5月8日、被告Dが全校集会でいじめについて訓話を行った上で、全学年生徒を対象にいじめについてのアンケート(以下「5月8日アンケート」という。)を実施した(甲1、乙3、4、5)。 本件生徒は、同アンケートにおいて、これまでにいじめを受けたと感じたことがある旨の回答をした(乙5)。 イ本件中学校では、7月19日、本件中学校の1年生のみを対象として、「学校適応感尺度(ASSESS)」アンケート(以下「アセス」という。)が実施された。これは、公益社団法人学校教育開発研究所が作成した学校適応度の分析手法であり、生徒がアンケートに回答し、その回答結果から、当該生徒の学校における適応感を多面的に測定するものである。 (乙21) 本件生徒のアンケート結果を分析したところ、本件生徒は、本件クラス内で唯一、要対人 に回答し、その回答結果から、当該生徒の学校における適応感を多面的に測定するものである。 (乙21) 本件生徒のアンケート結果を分析したところ、本件生徒は、本件クラス内で唯一、要対人支援領域に位置付けられる結果となった(甲1)。 ウ保健室への来室本件生徒は、5月から10月にかけて、保健室に合計約20回来室していた。本件生徒が10月30日に来室した際に、養護教諭が本件生徒に対 して学校で嫌なことがあるのかと尋ねたところ、本件生徒は涙を流し、泣 き出した。(甲1)(4)本件事故の発生本件生徒は、平成30年1月27日未明、自宅マンション9階のベランダから転落して死亡した。 本件生徒は遺書を残していない。 (5)第三者委員会による調査平成30年5月22日、大阪市市長の委嘱による弁護士、臨床心理士、教育大講師等の4名(後に7名)を委員とする「児童等がその生命等に著しく重大な被害を受けた事案に関する第三者委員会平成30年大人事人第54号に関する部会」(以下、単に「第三者委員会」という。)が設置さ れ、調査の結果、令和2年3月26日付けで調査報告書が作成された(以下「本件調査報告書」という。)。本件調査報告書では、前記(2)記載の行為を含む複数の行為がいじめと認定され、本件事故が自死であることを前提に、当該いじめと本件生徒の自死との間には因果関係が認められると結論付けられていた(ただし、法的な相当因果関係の意味ではない旨の注 記がされている。)。また、本件中学校のいじめの発見・予防に関する措置が不十分であり、本件事故後の対応も不十分であったとの調査結果が示された。(甲1)(6)独立行政法人日本スポーツ振興センターによる死亡見舞金の給付令和2年5月、当時の本件中学校の に関する措置が不十分であり、本件事故後の対応も不十分であったとの調査結果が示された。(甲1)(6)独立行政法人日本スポーツ振興センターによる死亡見舞金の給付令和2年5月、当時の本件中学校の校長は、本件調査報告書に基づき、 本件事故は本件中学校でのいじめが原因であるとして独立行政法人日本スポーツ振興センターに死亡見舞金の請求を行った。その結果、同スポーツ振興センターから原告らに対し、2800万円の死亡見舞金が支払われた(甲12の1~3)。 (7)いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)の定め いじめ防止対策推進法には次のような定めがある。 第2条 「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。」 第3条いじめの防止等のための対策は、いじめが全ての児童等に関係する問題であることに鑑み、児童等が安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、学校の内外を問わずいじめが行われなくなるようにすることを旨として行われなければならない。 2 いじめの防止等のための対策は、全ての児童等がいじめを行わず、及び 他の児童等に対して行われるいじめを認識しながらこれを放置することがないようにするため、いじめが児童等の心身に及ぼす影響その他のいじめの問題に関する児童等の理解を深めることを旨として行われなければならない。 3 いじめの防止等のための対策は、いじめを受けた児童等の生命及び心身 を保護することが特に重要であることを認識しつつ、国、地方公共団体、学校、地域住民、 旨として行われなければならない。 3 いじめの防止等のための対策は、いじめを受けた児童等の生命及び心身 を保護することが特に重要であることを認識しつつ、国、地方公共団体、学校、地域住民、家庭その他の関係者の連携の下、いじめの問題を克服することを目指して行われなければならない。 第7条学校の設置者は、基本理念にのっとり、その設置する学校におけるいじめの防止等のために必要な措置を講ずる責務を有する。 第8条学校及び学校の教職員は、基本理念にのっとり、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、児童相談所その他の関係者との連携を図りつつ、学校全体でいじめの防止及び早期発見に取り組むとともに、当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する。 (保護者の責務等) 第9条保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、その保護する児童等がいじめを行うことのないよう、当該児童等に対し、規範意識を養うための指導その他の必要な指導を行うよう努めるものとする。 2 保護者は、その保護する児童等がいじめを受けた場合には、適切に当該児童等をいじめから保護するものとする。 3 保護者は、国、地方公共団体、学校の設置者及びその設置する学校が講ずるいじめの防止等のための措置に協力するよう努めるものとする。 4 第一項の規定は、家庭教育の自主性が尊重されるべきことに変更を加えるものと解してはならず、また、前三項の規定は、いじめの防止等に関する学校の設置者及びその設置する学校の責任を軽減するものと解してはなら ない。 3 争点(1)本件事故に至るまでの被告市の責任(安全配慮義務違反)ア本件生徒に対するいじめ防止対策推進法2条にいう「い びその設置する学校の責任を軽減するものと解してはなら ない。 3 争点(1)本件事故に至るまでの被告市の責任(安全配慮義務違反)ア本件生徒に対するいじめ防止対策推進法2条にいう「いじめ」(以下、「いじめ」というときは、特に断わらない限り、同条にいう「いじめ」を指す。) 行為の存否(争点1)イ被告教員らの安全配慮義務違反の存否(争点2)(2)安全配慮義務違反と本件事故との相当因果関係(争点3)(3)本件事故と相当因果関係を有する損害(争点4)(4)本件事故発生後の被告市の責任(調査義務違反)(争点5) (5)調査義務違反と相当因果関係を有する損害(争点6)(6)被告教員ら個人の民法709条の損害賠償責任(争点7) 4 争点に対する当事者の主張(1)争点1(本件生徒に対する「いじめ」の存否)について(原告らの主張) ア本件生徒の受けた「いじめ」について いじめ防止対策推進法によれば、被害児童生徒が「心身の苦痛を感じているもの」は全て「いじめ」に該当する。そして、仮に、個々の行為だけでは、不法行為としてのいじめに該当しないものであったとしても、それが、「芽」や「兆候」といえるものであれば「いじめ」として認知しなければならない。 本件生徒は、下記①から⑨の各行為(以下、「本件行為①」、「本件行 為②」等といい、これらを併せて「本件各行為」という。)を本件中学校で受けていたが、これらは、上記のいじめの定義に該当し、少なくとも「いじめ」の「芽」や「兆候」に該当することは明らかである。 被告らは、本件各行為には「いじめ」でない「いじり」が含まれるとし、本件生徒は「いじられキャラ」で、いじりを喜ぶ生徒であったから、いじ りによって心身の苦痛は受けていない旨 明らかである。 被告らは、本件各行為には「いじめ」でない「いじり」が含まれるとし、本件生徒は「いじられキャラ」で、いじりを喜ぶ生徒であったから、いじ りによって心身の苦痛は受けていない旨主張するが、これはいじめる側の勝手な言い訳である。本件各行為は、極端な有形力の行使を伴うものではなかったにせよ、長期間にわたる一方的集団的な「いじめ」であり、本件生徒の人格を深く傷付け、大きな精神的苦痛を生じさせるものであった。 イ本件各行為について ① 本件生徒をチビ・メガネと呼んだ行為本件生徒は、身長が他の生徒に比べて低く、メガネを掛けていたところ、本件中学校入学当初から他生徒から「チビ」と言われることが多く、メガネについてもいじられることがあった。本件生徒を「チビ・メガネ」と呼ぶ行為は、入学当初から継続的に行われていたものと考えられる。 被告らは、これは単なる「いじり」であり、本件生徒もいつも「大丈夫」と言っていたことから、気にしていなかった旨主張するが、メガネや身長等身体的なことをいじられた場合、通常は精神的な苦痛を感じるのであり、本件生徒は嫌な顔をしていたとの報告もあり、心身の苦痛を感じていることは明らかである。しかも、担任の被告Eも、自ら「メガネつ ぶしたろか」等と揶揄し、上記の「いじめ」を助長した。 ② 本件生徒が6月7日頃作成したメモ記載の行為本件生徒は、6月7日頃に「6/7(水)今日も(関係生徒)にいじめられ(関係生徒)に笑われた。なにをさ」というメモ(以下「6月7日メモ」という。)を作成し、自らのかばんに入れていた。このことからすると、本件生徒は本件中学校で、6月7日メモで指摘された「いじめ」 (本件行為②)を受けており、5月8日アンケートに記載されたいじめも本件行為②を指してい らのかばんに入れていた。このことからすると、本件生徒は本件中学校で、6月7日メモで指摘された「いじめ」 (本件行為②)を受けており、5月8日アンケートに記載されたいじめも本件行為②を指している。 ③ 筆箱を投げられた行為本件生徒は、2学期中に複数回、本件クラスの男子生徒5名から筆箱を取り上げられ、投げられるなどされた。 ④ 卓球部員との言い合い本件生徒は、9月22日頃、部活動の練習中に、卓球部の他の部員で同学年の生徒と、ゲームを巡って言い争いになった。この言い争いの際、本件生徒がフェンスに倒れることもあった。 ⑤ 同級生からの発言 本件生徒は、10月頃、同級生から「いきっている」「上から目線やめてや」「遊ぶときもしきってるから嫌や」等と言われることがあった。 ⑥ 背中に付箋が貼られた行為本件生徒は、2学期の国語の授業時間中に、他の生徒から背中に付箋(被告Fの電話番号が記載され、被告Fが本件生徒に渡したもの)を貼 られ、これを見た本件クラスの生徒らに笑われていた。 ⑦ 国語辞典の回収本件生徒は、夏休み明け以降、3学期までの間、国語の授業が終わると、自分の国語辞典だけでなく他の生徒の国語辞典も回収し、教室内の本棚に返却していた。当初は、本件生徒が自発的に始めた行為であった ものの、その後は、国語辞典を本件生徒の机の上に置いていく生徒も出 始め、本件生徒が他の生徒の辞書を積み上げて持ち運んだ際、本件生徒の頭くらいの高さになっていることもあった。これは集団的ないじめである。 ⑧ 部活動におけるプロレス技等本件生徒は、卓球部所属の2年生の先輩生徒から、平成30年1月に 至るまで、複数回、プロレス技をかけられることがあり、この行為を止める周囲の生徒はいなかった。また、 部活動におけるプロレス技等本件生徒は、卓球部所属の2年生の先輩生徒から、平成30年1月に 至るまで、複数回、プロレス技をかけられることがあり、この行為を止める周囲の生徒はいなかった。また、同先輩生徒は本件生徒のメガネを取ることもあった。 ⑨ 同級生とのLINEにおけるやり取り本件生徒は、12月末から平成30年1月にかけて、LINEにおい て、他の生徒から「死ねや」「バーカバーカバーカバーカバーカバーカ」「黙れよ」「もうラインしてこんといて」などの厳しいメッセージを投げられた上、本件生徒からのメッセージに対して返答がされないという状況が続き、同級生から無視されていた。 (被告らの主張) ア本件生徒の受けた「いじめ」行為について原告らが「いじめ」であると主張する本件各行為の中には、そもそも「いじり」等にすぎず「いじめ」に該当しないものが含まれる。仮にこれに該当したとしても、それぞれ単発の出来事であって、反復継続して行われたものではなく、「一方的で集団的ないじめ」などではない。本件生徒は、性格も 明るく、学校の行事にも積極的に関わる生徒であり、いわゆる「いじられキャラ」であって、いじられることを受け入れていたから「いじめ」とまではいえない。 イ本件各行為について① 本件行為①(本件生徒を「チビ・メガネ」と呼んだ行為) 本件事故が発生した後、本件中学校の生徒に聴き取り調査を行ったと ころ、一部の生徒から本件生徒が「チビ・メガネ」と呼ばれていたという報告があった。また、卓球部の先輩が本件生徒に対して「チビ・メガネ」と言ったことがあった。ただし、本件調査報告書において、本件生徒が「チビ・メガネ」と呼ばれていた時的要素は特定されていないし、被告教員らは、本件生徒が「チビ の先輩が本件生徒に対して「チビ・メガネ」と言ったことがあった。ただし、本件調査報告書において、本件生徒が「チビ・メガネ」と呼ばれていた時的要素は特定されていないし、被告教員らは、本件生徒が「チビ・メガネ」と呼ばれているのを聞いた ことはない。 なお、被告Eは、本件生徒を含む本件クラスの生徒複数名に対して「メガネつぶしたろか」と発言したことはあったが、これは、漫才師の「つっこみ」のごとく周囲を笑わせる「鉄板ネタ」のようなものであり、このことは本件生徒も十分理解して一緒に笑っていた。このように、本件 生徒はいわゆるいじられキャラであり、仮に「チビ・メガネ」と呼ばれていても本件生徒自身は気にしていなかったといえるから「いじめ」には当たらない。 ② 6月7日メモ記載の行為同メモ記載に係る行為が何であるかは不明であるが、6月9日に実施 された体育大会の練習中に、本件生徒が失敗し、これを他の生徒らが指摘したことが発端で、本件生徒と同生徒らが揉めたことがあった。仮にこれを指すとしても、「いじめ」ではない。 ③ 筆箱を投げられた行為本件生徒の筆箱を投げられた行為があったことは認めるが、本件生徒 の筆箱だけが投げられていたのではないし、本件生徒も他の生徒の筆箱を投げており、生徒同士のじゃれあいの延長戦であって、「いじめ」ではない。 ④ 卓球部員との言い合い本件生徒が、9月22日に、同学年の他の生徒と言い合いになったこ とは認めるが、本件生徒と同部員の関係性やその内容からしても単なる けんかに過ぎず、「いじめ」ではない。同日以後、本件生徒と上記生徒は、仲直りをしていることを確認している。 ⑤ 同級生からの発言原告ら主張に係る事実があったことは認めるが、発言をした生徒は に過ぎず、「いじめ」ではない。同日以後、本件生徒と上記生徒は、仲直りをしていることを確認している。 ⑤ 同級生からの発言原告ら主張に係る事実があったことは認めるが、発言をした生徒は元々本件生徒と仲が良い生徒であり、日頃から仲良くしている中で、本 件生徒が上から目線で物を言ってくるように感じたことからそれを注意したに過ぎず「いじめ」ではない。 ⑥ 背中に付箋が貼られた行為被告Eは、国語の教科担当教員から、上記行為について報告を受けた。 そして、放課後のホームルームでも上記行為について生徒らから事情を 聴いた。本件生徒は背中に付箋を貼られたことを嫌だったと述べたため、被告Eは、関わった生徒らを指導した上、本件クラス全体も指導した。 ⑦ 国語辞典の回収本件生徒が他の生徒の国語辞典を回収することがあったことは認める。これは、本件生徒が自主的に行っていたことであり、むしろ本件生 徒が本件クラスに積極的に関わっていたことを示すものである。 ⑧ 本件生徒がプロレス技をかけられたこと卓球部の先輩が本件生徒にプロレス技をかけたことがあることは認める。本件生徒が、同級生からもプロレス技をかけられる、メガネを取られる行為を受けていたことについては否認する。上記プロレス技をかけ あっていた先輩部員は、ADHDと診断されており、他の生徒ともトラブルになることも多かったこと、本件生徒が同先輩部員に対してため口で話すなどしていたことなどからすれば、同先輩部員が本件生徒をいじめたというものではない。 ⑨ 同級生とのLINEのやり取り 原告らが主張するLINEのやりとりについては認めるが、なぜ「い じめ」に該当するのか調査報告書でも明らかにされてい のではない。 ⑨ 同級生とのLINEのやり取り 原告らが主張するLINEのやりとりについては認めるが、なぜ「い じめ」に該当するのか調査報告書でも明らかにされていない。 (2)争点2(被告教員らの安全配慮義務違反の存否)について(原告らの主張)学校は、保護者の委託を受けて教育する責務を負い、保護者から受託した生徒につき、学科について教育するだけではなく、学校における教育活 動及びこれに密接に関連する生活関係における生徒の安全を確保すべき義務を負うのであり、学校の支配下にある限り、生徒の生命、身体、精神及び財産等の安全を確保すべき義務を負う。そして、教員は学校のこれらの義務の履行を補助する者としての責任を負う。 本件各行為は、不特定多数の生徒の面前等で行われているものが多く、 生徒の証言も複数認められている。そのため被告教員らが認識できなかった事情はない。しかも、5月8日アンケートやアセスの内容、12月に本件生徒がクラスの生徒6名の机に「死」と記載されるという異常な事態が発生していたこと、保健室の利用回数等を慎重に検討していれば、被告教員らはいじめの可能性を認識できたはずである。そうすると、被告教員ら は、①本件生徒及び加害生徒らに対する十分な事情聴取、②本件生徒と同クラス・同学年の生徒からの聴き取り、③本件中学校の教員全員からの事情聴取及び相互の情報共有、④本件中学校の教員らによる、授業中及び休み時間等における、本件生徒及び加害生徒らに対する見回りの強化、⑤加害生徒らに対する十分な指導・教育、⑥加害生徒らの両親に対する情報提 供と、本件行為を中止するための家庭内教育の要請、⑦原告父及び原告母に対する情報共有と連携、⑧授業時間及び休み時間を通じた本件中学校の教員全 分な指導・教育、⑥加害生徒らの両親に対する情報提 供と、本件行為を中止するための家庭内教育の要請、⑦原告父及び原告母に対する情報共有と連携、⑧授業時間及び休み時間を通じた本件中学校の教員全員による見守り、⑨いじめ等の再発リスク解消までの分離措置、⑩本件生徒が心身に受けた被害の回復のための措置、必要な医療、心理カウンセラー等の提供、安全かつ安心な学校生活と信頼の回復、の措置(以下 「本件措置」という。)をとるべきであったにもかかわらず、被告教員ら はこれら本件措置をとるべき義務を怠った。したがって、被告教員らには安全配慮義務違反が認められる。 特に、被告Eは、12月19日の三者面談においては、原告母が着席するなり、被告Eは「いじめはありません。」と発言しながら、あえて5月8日アンケートの結果やアセスの結果には言及せず、原告母が本件生徒が部 活を休みがちであることから顧問の先生から何か聞いたら教えてほしいと要望したにもかかわらず原告母に報告しなかったなど、保護者との情報共有を行わなかった。かえって、本件生徒に対し「メガネつぶしたろか」などと自らも発言して、「いじめ」を助長したり、9月29日の文化発表会の日の展示企画の際に、被告Eは本件生徒を含む複数の生徒の展示を氏名 だけの展示にしたりして、本件生徒に辛い思いを強いていた。被告Eの上記行為は安全配慮義務違反であるといえる。なお、被告Eは、本件事故のわずか2か月後の平成30年3月17日本件中学校の女子トイレに侵入して洗面所にスマートフォンを置いたことが発覚し、逮捕、起訴され略式命令を受け、懲戒免職にまでなっているのであり、本件生徒のことなど考え ていなかったことは明らかである。 (被告らの主張)一般論として、学校の教員に原告ら主張に係る義務があること され略式命令を受け、懲戒免職にまでなっているのであり、本件生徒のことなど考え ていなかったことは明らかである。 (被告らの主張)一般論として、学校の教員に原告ら主張に係る義務があることは認めるが、本件において被告教員らに義務違反があるか否かは、個別具体的な事情を前提として判断しなければならない。 被告Eは、クラス内、学年集会及び全校集会で、他人の嫌がることは言ってはいけないことを繰り返しアナウンスした上で、本件各行為について関わった生徒を指導するとともに、クラス全体にも指導を行った上、学年会(クラスの担任、副担任、学年主任、当該学年所属の教科担当、人権教育担当ら約10名が参加し、定期的に開かれる会議)で共有するなどして、 本件生徒や関係生徒を注意深く見るなどの対応をとるなどしていた。本件 生徒に特に気をかけ、直接話しかけるなどしたが、本件生徒は大丈夫というのみであり、その他懇談の機会等でも被告Eに対して困っていることがあるなどの相談をしたことはなく、むしろ積極的に音楽コンクールの指揮者に立候補をしたり、運動会では大声で応援をするなどし、人を笑わせたり目立とうとする行動が多かった。このような本件生徒の態度から、被告 Eは、本件生徒を「いじられキャラ」であり、いじられることを受け入れて喜ぶ生徒であると判断していた。もっとも「いじめ」にならないよう注意は行っており、何らかの措置をとるべき義務があるにもかかわらずこれを怠ったということにはならない。さらに、被告Eの「メガネつぶしたろか」という発言は、その場にいた生徒は、本件生徒も含めて、被告Eの発 言が明らかに笑いをとろうとするものであり、冗談であるということを理解できていたもので、安全配慮義務違反とは関わりがない。 三者面談の際に、原告母が着席 徒は、本件生徒も含めて、被告Eの発 言が明らかに笑いをとろうとするものであり、冗談であるということを理解できていたもので、安全配慮義務違反とは関わりがない。 三者面談の際に、原告母が着席するなり、「いじめはありません。」と発言したことについては否認する。三者面談の前日に、生徒6名の机の上に「死」という文字が書かれている案件が発生していたため、これを説明す る意味で「いじめではないので安心してください。」と発言したものである。 展示会で本件生徒を含む複数の生徒について氏名のみの展示をしたのは、そもそも展示する「世界の国調べ」が夏休みの宿題であり、文化発表会までに提出しなければ氏名だけの展示になることは繰り返し説明していた。 したがって、原告らの主張する被告Eの行動・態度も安全配慮義務に違反 するものではない。 また、被告Fは、本件各行為のうち卓球部員が関係するものについて、直ちに本件生徒及び関係生徒に指導するとともに、被告Eに共有するなどしたことから、被告Fも安全配慮義務に違反したとはいえない。 被告Eが原告ら主張の事由で逮捕され、略式命令を受けたことは、本件 生徒に対する安全配慮義務違反とは無関係である。 (3)争点3(安全配慮義務違反と本件事故との相当因果関係)について(原告らの主張)被告教員らの安全配慮義務違反の結果、本件生徒は自死に追いやられたのであり、上記安全配慮義務違反と本件事故との間には相当因果関係がある。 すなわち、アセスでは、教師や友人からサポート感及び生活への適応感が低 下しており、学級内で唯一対人支援が必要で、否定的な友人関係について確認と早急な支援が必要との分析結果が出ていたことなどを考慮すると、本件各行為によって本件生徒が自死を選択せざるを得ない心理 下しており、学級内で唯一対人支援が必要で、否定的な友人関係について確認と早急な支援が必要との分析結果が出ていたことなどを考慮すると、本件各行為によって本件生徒が自死を選択せざるを得ない心理状況に追い込まれていたことは被告教員らにとって予見可能であったものであった。そして、被告教員らによって本件措置が適切に行われていれば、本件生徒の孤立感、 無力感の増長を防ぎ、本件生徒が自死することを阻止することが十分可能であったといえる。したがって、被告教員らの安全配慮義務違反と本件生徒の自死につながった本件事故との間には相当因果関係が認められる。 (被告らの主張)被告Eをはじめとして、被告教員らが本件生徒を注意深く見守ってきたが、 本件生徒は友人もおり、教員にも元気に挨拶し、授業、クラス活動、クラブ活動にも熱心に参加していた。本件生徒が亡くなる直前の日のクラスでの様子でさえ、いつもどおりであり、悩みを抱えている様子はなかった。そうすると、被告教員らには、本件生徒の自死を予見することは不可能であり、本件事故が被告教員らの安全配慮義務違反によるものであるとはいえない。 (4)争点4(本件事故と相当因果関係を有する損害)について(原告らの主張)被告教員らの安全配慮義務違反と相当因果関係のある損害は次のとおりである。 ア逸失利益 3655万8929円 本件生徒は、本件事故当時12歳の中学生男子であったから、賃金セン サス平成30年男子労働者・全年齢平均収入額558万4500円を基礎とし、生活費控除を50%、就労可能期間を18歳から67歳までの49年間として、その間の中間利息をライプニッツ方式により控除して算出するのが相当である。(558万4500円×(1―0.5)×(18.1687―5. を50%、就労可能期間を18歳から67歳までの49年間として、その間の中間利息をライプニッツ方式により控除して算出するのが相当である。(558万4500円×(1―0.5)×(18.1687―5.0757)=3655万8929円)(小数点以下切り捨て) イ本件生徒の慰謝料 2000万円本件生徒は、本件各行為の結果、精神的に追い詰められ、被告教員らの不適切な対応により、孤立感、無力感を募らせることとなり、最終的に本件事故に至った。これらの過程で本件生徒が受けた重大な精神的苦痛や、12歳という若さで自死を選択せざるを得なかった無念さ等も考慮する と、その慰謝料としては2000万円をくだらない。 ウ相続以上により、本件生徒に生じた損害は、合計5655万8929円であるところ、原告両名は、損害賠償請求権の各2分の1である2827万9464円を取得した。 エ既払金の控除 2800万円原告らに対しては、独立行政法人日本スポーツ振興センターから死亡見舞金として2800万円が支払われ、これを1400万円ずつ原告らの損害賠償請求権から控除する(控除後残:1427万9464円)。 オ弁護士費用原告ら各自につき143万円 カ合計原告ら各自につき1570万9464円(被告らの主張)否認ないし争う。 仮に、被告教員らの安全配慮義務違反及び損害が認められるとしても、原告らは、被告教員らに対して、本件生徒が辛さや苦しさを顔に出さない性質 を有していたことを伝えておらず、この点に大きな過失があることから、過 失相殺がされるべきである。 (5)争点5(本件事故発生後の被告市の責任(調査義務違反))について(原告らの主張)学校は、保護者に対し、預かった生徒 点に大きな過失があることから、過 失相殺がされるべきである。 (5)争点5(本件事故発生後の被告市の責任(調査義務違反))について(原告らの主張)学校は、保護者に対し、預かった生徒の学校生活上の安全に配慮して、無事に学校生活を送ることができるように教育・指導すべき立場にあるから、 生徒が自死し、それが学校生活上の問題に起因する疑いがある場合には、その原因が学校内のいじめや嫌がらせであるか否かを解明するために、他の生徒の健全な成長やプライバシーに配慮したうえ、必要かつ相当な範囲で、適時に事実関係の調査をして、保護者に対し、その結果を報告する義務を負う。 しかし、被告教員らは、本件事故後、自死ではなく事故死であるという認 識を固持して、恣意的な調査を行い、調査は遅々として進まなかった。被告教員らによる本件事故後の関係生徒への聴き取りは極めて不十分・恣意的なものであり、本件事故の原因がいじめである可能性を考慮しないで行われたものであった。被告教員らは、このように適正な調査報告をしなかったばかりか、いじめが本件事故の原因であることを隠ぺいするために、アセスのデ ータを削除した。 これら被告教員らの行為は、上記調査報告義務に違反するものである。 (被告らの主張)被告教員らは、真相解明のために調査を行う必要性はあると考えていたのであるが、重大事案であるだけに、他の生徒の心情にも配慮しながら慎 重に事を進める必要があった。このような慎重な対応が、結果的に原告らから対応が遅いという評価を受けることになったが、被告教員らが調査、報告を懈怠していたものではない。また、アセスは試験的に実施したものであり、個人情報保護の観点から、本件事故発生前にデータを削除しており、故意に隠ぺいしたものではない。 以上 員らが調査、報告を懈怠していたものではない。また、アセスは試験的に実施したものであり、個人情報保護の観点から、本件事故発生前にデータを削除しており、故意に隠ぺいしたものではない。 以上より、被告教員らの行為は調査報告義務に反するものではない。 (6)争点6(調査義務違反と相当因果関係を有する損害)について(原告らの主張)ア慰謝料原告ら各自300万円本件事故発生後の被告教員らの極めて不適切な対応、そのために第三者委員会の協力を必要としたことなどからすれば、原告らの慰謝料は各 自300万円を下らない。 イ弁護士費用原告ら各自30万円ウ合計原告ら各自330万円(被告らの主張)否認ないし争う。 (7)争点7(被告教員ら個人の民法709条の損害賠償責任)について(原告らの主張)国家賠償法上、公務員個人に対する損害賠償請求は否定されていない。 国家賠償法1条2項は、公務員に軽過失があるにすぎない場合には、国又は公共団体の当該公務員に対する求償権の行使を制限しているが、故意 又は重過失があって求償権の行使を受ける公務員にまで被害者に対する直接責任の免責という特別の保護を認める必要はない。そのため、少なくとも、公務員の加害行為が故意又は重過失による場合には、当該公務員は、被害者に対し、民法709条に基づいて損害賠償責任を負う。 (被告教員らの主張) 否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)本件生徒について 本件生徒は、4月に本件中学校 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)本件生徒について 本件生徒は、4月に本件中学校に入学し、同月21日から卓球部に所属していた。本件生徒は、習い事として、月曜日、水曜日、金曜日は、本件生徒の自宅マンションから徒歩で5分ほどの場所にある学習塾に、木曜日は、スイミングスクールに通っていた。 本件生徒の身長は、小学校4年生頃から、標準偏差(SD値)が-2と、低 身長が疑われる基準値辺りを推移しており、視力は、小学校3年生から低下し、メガネをかけ始めていた。 本件生徒の学業成績は、小学校の頃から必ずしも良いとはいえなかった。本件中学校での1、2学期の主な教科の学習成績は、5段階評価の中で2又は3にとどまっていた。 同級生や教員らからは、本件生徒は、明るく元気、優しい、面倒見がよい、人懐っこい等と評されていた。休み時間等にあえておどけた態度をとるなどして同級生の笑いを誘うような言動もしばしば行うような生徒であった。また、授業や委員会活動に対しても、積極的な姿勢で臨んでおり、1学期は学級委員に立候補をして落選したものの、6月の運動会では誰よりも積極的に大 きな声で応援をし、2学期9月の合唱コンクールでは、指揮者に立候補し、発表を成功させた。(甲1、乙16、被告E本人、被告F本人)他方で、教員らの中には、体格からいじめのリスクがある、喜怒哀楽が激しい、ちょっと落ち着きがない、ちょろちょろする、ちょっとしたトラブルはあったと思う、言動が幼いなどの印象を受けていた教員もいた。本件中学校への 小学校からの本件生徒についての申し送りにおいても同様な申し送りがあった。(甲1、被告E本人、被告F本人)(2)本 ったと思う、言動が幼いなどの印象を受けていた教員もいた。本件中学校への 小学校からの本件生徒についての申し送りにおいても同様な申し送りがあった。(甲1、被告E本人、被告F本人)(2)本件各行為本件各行為のうち、証拠上、少なくとも以下の行為は存在したことが認められる。 ア本件生徒を「チビ・メガネ」と呼んだ行為(本件行為①) 本件生徒は、身長が他の生徒に比べて低く、メガネを掛けていたことから、本件中学校入学後から平成30年1月に至るまで、少なくとも複数回、他の生徒から、「チビ」と呼ばれたり、メガネについてからかわれることがあり、12月には、本件生徒が他の教室に入っていくと、教室内にいる生徒らから「チビが来た」と言われたりしたことが2、3回あった。これに 対し、本件生徒は嫌な顔をしていることがあった(甲1、乙16添付資料9、証人H。また、担任である被告Eは、本件生徒がいじられキャラであり、いじられることを喜ぶ生徒であると考え、「鉄板ネタ」として、「メガネ潰したろか」と発言をし、皆を笑わせることを数回行っていた。そのような場面でも本件生徒は他の生徒と一緒に笑っており、これを拒否するよ うな態度を明確にしたことはなかった。(甲1、乙16、被告E本人、証人H)イ 6月7日メモ記載の行為(本件行為②)原告らは、平成30年1月30日、本件生徒のかばんの中に、本件生徒が作成したメモを発見した。当該メモには、「6/7(水)今日も(関係生徒) にいじめられ(関係生徒)に笑われた。なにをさ」と記載されていた。しかし、そのメモの対象とされている本件行為②が何であったかは明らかではない。(甲1)ウ筆箱を投げられた行為(本件行為③)本件生徒は、2学期のいずれかの日に、本件クラ 記載されていた。しかし、そのメモの対象とされている本件行為②が何であったかは明らかではない。(甲1)ウ筆箱を投げられた行為(本件行為③)本件生徒は、2学期のいずれかの日に、本件クラスの複数の生徒から、 筆箱を奪われ、本件生徒は返してほしいと述べていたにもかかわらず、同生徒らは、これを投げ合っていた。このことは、その日のホームルームにおいて学級代表から取り上げられ、被告Eは生徒たちに注意をした。 (甲1、乙16、被告E本人)エ卓球部員との言い合い(本件行為④) 本件生徒は、9月22日頃、卓球部の部活動中に、部員である同級生と、 自分の好みのドラゴンボールのキャラを言い合っているうちに言い争いとなり、お互いに押し合いになるかたちになり、本件生徒が倒れた。その後、本件生徒と同級生の様子を周囲で見ていた生徒が、職員室にいた被告Fを呼びに行き、被告Fが本件生徒らを指導した。(被告F本人)オ同級生からの発言(本件行為⑤) 本件生徒と仲が良かった同級生の生徒が、10月頃、本件生徒の態度に立腹し、本件生徒に対し、「上から目線やめてや」、「いきっている」、「遊ぶときもしきってるから嫌や」等と発言したことがあった(甲1、乙16添付資料10)。 カ背中に付箋が貼られた行為(本件行為⑥) 本件生徒は、2学期に部活動を休みがちになった。被告Fは、被告Eに報告し、11月頃、本件生徒に対して、部活動を休むときは連絡するように指導するとともに、被告Fの電話番号を書いた付箋を渡した(乙20、被告F本人)。 その後、国語の授業中に、本件生徒宛ての同付箋を他の生徒が取り、本 件生徒の背中に貼り付けた。国語の担当教員がこの状況を発見し、貼り付けた生徒に注意し、上記事実を被告E 0、被告F本人)。 その後、国語の授業中に、本件生徒宛ての同付箋を他の生徒が取り、本 件生徒の背中に貼り付けた。国語の担当教員がこの状況を発見し、貼り付けた生徒に注意し、上記事実を被告Eに報告した。被告Eは、本件クラスのホームルームで本件生徒等から事情を聴き、本件生徒が付箋を貼られて嫌な思いをした旨述べたことから、貼り付けた生徒に本件生徒へ謝罪させた(被告E本人)。 被告Eは、上記事実を学年会で共有したところ、学年会では保護者に報告するまでの事実ではないとの結論に至った(被告E本人)。 キ国語辞典の回収(本件行為⑦)本件生徒は、2学期から3学期にかけて、国語の授業後に国語辞典を本棚に返却する際、しばしば自分の国語辞典だけではなく、他の生徒の国語 辞典も回収して、教室内の本棚に返却していた。このような行為は、本件 生徒が自発的に始めたことであったが、他の多くの生徒から感謝され、そのことがホームルームで紹介されることがあり、被告Eもこの行動を認識していた。そのような中、次第に、本件クラスの生徒の一部は、本件生徒が回収することを念頭に、本件生徒の机の上に自分の国語辞典を置くようになり、本件生徒がこれらの生徒の辞書の片付けを行うようになったもの であった。(甲1、証人H)ク部活動におけるプロレス技(本件行為⑧)本件生徒は、卓球部所属の2年生の先輩生徒から、平成30年1月に至るまで、複数回、腕ひしぎ十字固めなどのプロレス技をかけられることがあり、嫌がる様子を示していた。また、同先輩生徒は本件生徒のメガネを 取ることもあった。同先輩生徒は、1年生在学中から、落ち着きがなく、行動の抑制が困難である等のADHDの特徴がみられる生徒であり、本件生徒以外の生徒複数名に対してもプロレス技をかけるこ ネを 取ることもあった。同先輩生徒は、1年生在学中から、落ち着きがなく、行動の抑制が困難である等のADHDの特徴がみられる生徒であり、本件生徒以外の生徒複数名に対してもプロレス技をかけることがあった。 被告Fは、同先輩生徒が1年生の後輩卓球部員複数名にプロレス技をかけることがあることを認識しており、このような出来事が生じたときは、 同先輩生徒に注意をするとともに、1年生の生活指導担当である被告Eに報告していた。また、被告Fは、他の卓球部員に対して、被告F不在の際に同先輩生徒が何らかの不適切な行動をとった場合にはすぐに被告Fに伝えるよう指示していた。(甲1、乙16添付資料11、被告F本人)ケ同級生とのLINEのやり取り(本件行為⑨) 本件生徒は、12月下旬、原告らからスマートフォンを買い与えられ、LINEを使って同級生らとメッセージの送受信を行いだした。 同級生から本件生徒に対しては、「何かおごれよ!」(12月24日10:21)、「約束破るんか?」(同日10:43)、「おごれよ!」(同日11:36)等と、金銭的要求に係るメッセージが送信されたり、「死ねや」「バ ーカバーカバーカバーカバーカバーカ」(平成30年1月7日12:36) といったメッセージが送信されることがあった。また、本件生徒は、他の同級生に平成30年1月4日、7日、9日、10日、21日、22日、24日、25日及び26日に「おはようございます」等とメッセージを送信したが、当該同級生からは何らの返信もなかった。(甲1)(3) 本件中学校における本件事故前の対応 ア 5月8日アンケートの実施(この時点で行われていた可能性のある本件各行為は本件行為①、②、⑧である。)被告市は、平成29年3月29日、大阪市内の学校 学校における本件事故前の対応 ア 5月8日アンケートの実施(この時点で行われていた可能性のある本件各行為は本件行為①、②、⑧である。)被告市は、平成29年3月29日、大阪市内の学校に対して、5月8日に『いじめについて考える日』を設定すること、同日の目的は、「いじめはいつでも、どの子どもにも、どの学校においても起こりうる」という認 識のもと、「いじめは生命をも脅かす行為であり、人間として絶対に許されない行為である」ことを学校全体で再認識すること、学校が中心となって取組を積み重ね、児童生徒・教職員のみならず家庭や地域全体で「いじめ防止」の意識を高めることを連絡し、本件中学校は同連絡に従って、5月8日に、被告Dが全校生徒に対し訓話をした上で5月8日アンケート を実施した(乙3、4、被告D本人)。なお、本件中学校は、毎年、同種のアンケートを行っている。 本件生徒は、5月8日アンケートにおいて、「(1)あなたは今までに、いじめを受けたと感じたことはありますか。」という質問に対して「ある」という選択肢に丸をつけ、「(2)どんないじめを受けました か。[複数回答可]」という質問に対して「持ち物をかくされた」「とじこめられた」という選択肢に丸をつけ、「(3)いじめを受けた時、どんな気持ちがしましたか。」という質問に対して「最悪でしたし怖かったしもう泣きました。」と回答し、自由記載欄に「なぜいじめはなくならないしなぜいじめをするのだろうと思います。なぜそこまでおいつ めるのだろうと思います」と回答した(乙5)。 被告Eは、5月8日アンケート実施後、本件生徒に対してアンケート記載のいじめに関する詳細を聴き取った。すると、本件生徒は、小学校のときにいじめられたことがあり、そのことをアンケートに記載したが、 被告Eは、5月8日アンケート実施後、本件生徒に対してアンケート記載のいじめに関する詳細を聴き取った。すると、本件生徒は、小学校のときにいじめられたことがあり、そのことをアンケートに記載したが、今は大丈夫である旨返答した。この返答を聞いた被告Eは、それ以上深堀りする必要はないと考え、具体的な内容を何ら聴き取ることなく、面 談を終えた(甲1、被告E本人)。 本件中学校では、例年、5月8日アンケートと同様のいじめアンケートを実施していたが、その際は、学年会で、いじめを受けたことがあると答えた生徒について、いじめが継続的である、不登校につながる、保護者に伝えなければならないなどの重篤な事案であるか否かを協議し、 重篤であるという判断がされた事案についてのみ被告Dに報告され、それ以外のものについては特に報告はされないのが通例であった。本件生徒についても、学年会において、本件生徒がいじめを受けたことがあるとの回答をしているものの、被告Eが本人から事情を聴いた結果、いじめを受けたのは小学校のときであると述べていることが共有され、検討 の結果、校長や保護者と共有するべき重篤な事案であるとは判断されず、被告Eらにおいてしっかりと見守っていくという結論となり、被告Dら管理職や原告ら保護者に報告されなかった(被告D本人、被告E本人)。 イアセスの実施(この時点までに行われていた可能性がある本件各行為は、本件行為①、②、⑧である。) 本件中学校では、7月19日、養護教諭の発案により、本件中学校の1年生のみを対象として、アセスが実施された。これは、公益社団法人学校教育開発研究所が作成した分析手法であり、複数の質問に対して生徒が回答し(回答は、あてはまる、ややあてはまる、どちらでもない、ややあてはまらない、あてはまらない 実施された。これは、公益社団法人学校教育開発研究所が作成した分析手法であり、複数の質問に対して生徒が回答し(回答は、あてはまる、ややあてはまる、どちらでもない、ややあてはまらない、あてはまらないの5択である。)、その回答結果を専用ソフ トウェアで分析し、当該生徒の学校における適応感を多面的に測定するも のである。アセスでは、アンケート結果を専用ソフトウェアで分析し、①生活満足感、②教師サポート、③友人サポート、④向社会的スキル(友人関係を作るスキル)、⑤非侵害的関係(無視や意地悪等の否定的友人関係がないと感じている程度)、⑥学習的適応の6つの項目について、適応度を得点化し、得点が高いほど適応的であるとされる。得点が「<40」で ある場合は要支援領域であるとされており、注意を促すコメントが示される。(甲1、乙21)本件生徒は、「いやなことがあったとき、友だちは慰めたり励ましたりしてくれる」との質問に「ややあてはまらない」、「仲間に入れてもらえないことがある」との質問に「あてはまる」、「陰口を言われているよう な気がする」との質問に「あてはまる」、「友だちにからかわれたり、バカにされることがある。」との質問に「あてはまる」、「友だちにいやなことをされることがある」との質問に「あてはまる」、「友だちから無視されることがある」との質問に「あてはまる」、「友だちは、私のことをわかってくれている」との質問に「あてはまらない」とそれぞれ回答した (甲1)。 本件生徒の回答結果を分析したところ、上記①~⑥それぞれの得点は、①38、②39、③37、④47、⑤28、⑥45であり、①には「生活全般への適応感がやや低くなっています。生活や他の適応度を確認しましょう。」とのコメントが、②には「教師からの支援感がやや低くなって ①38、②39、③37、④47、⑤28、⑥45であり、①には「生活全般への適応感がやや低くなっています。生活や他の適応度を確認しましょう。」とのコメントが、②には「教師からの支援感がやや低くなってい ます。声かけなどを通し様子を確認しましょう。」とのコメントが、③には「友だちからの支援感がやや低くなっています。友だち関係を確認しましょう。」とのコメントが、⑤には「否定的な友だち関係がかなり見られます。友だちとのかかわりの確認、早急な支援が必要です。」とのコメントがそれぞれ示されていた。また、本件生徒は、本件クラスで唯一、要対 人支援領域に位置付けられていた。(甲1) 被告Eは、8月31日頃の夏休み明けに、アセスの結果を踏まえて、生徒と1対1で話し合う教育相談を実施したが、その際にも本件生徒から特に困っていることの訴えはなかったことから、問題はないものと考えて、特段の措置はとらなかった(被告E本人)。 1年生の担当教員及び養護教諭の間では、アセスの実施は試験的なもの と位置付けられており、実施に際して、被告D等の管理職への報告はされなかった。また、上記結果について、1年生の学年会では情報共有されたが、原告ら保護者や被告D等の管理職への報告は行われなかった。(被告E本人)ウ 5月から10月末までの保健室への来室及びこれに対する11月にお ける対応(この期間中に、行われていた本件各行為は、本件行為④、⑤、⑥、⑦であり、また、行われていた可能性があるのは、本件行為①、③、⑧である。)本件生徒は、5月から10月にかけて、腹痛や頭痛等を主訴として、合計約20回保健室に来室した。本件生徒が10月30日に頭痛を主訴と して保健室に来室した際、養護教諭が何か心配なことはないか等尋ねたところ、本件生徒は涙を かけて、腹痛や頭痛等を主訴として、合計約20回保健室に来室した。本件生徒が10月30日に頭痛を主訴と して保健室に来室した際、養護教諭が何か心配なことはないか等尋ねたところ、本件生徒は涙を流して泣き出した。養護教諭が涙を流した理由を聞こうとしたが、本件生徒は理由を話そうとしなかった。本件生徒は、10月30日以降、保健室に来室しなくなった。(甲1)被告E及び本件クラスの副担任の教員は、養護教諭から10月30日 の保健室での出来事を聞き、副担任は同日中に、被告Eは11月1日に、上記事実を踏まえ、本件生徒に対応し「何か嫌なことがあったんちゃうの。」等と尋ねた。しかし、本件生徒は何もない旨返答した。(甲1、被告E本人)上記事実は学年会でも共有されたが、原告ら保護者や被告Dら管理職 に伝えられることはなかった(被告E本人)。 このような中、11月中には本件行為⑥が発生し、このことは、国語教諭から被告Eに知らされたが、被告Eは特段の措置をとらなかった。 エ三者面談等(この時点までに行われていた本件各行為は、本件行為①から⑧である。)12月19日、被告E、本件生徒及び原告母の三者面談があり、被 告Eは、原告母に対して、本件生徒の学校生活の様子や成績の他、部活動を休みがちであること等を伝えた。被告Eは、5月8日アンケート、アセスの結果及び本件生徒が保健室で泣いたことや11月に生じた本件行為⑥についても、「中学生であるし、逐一細かいことまで報告しなくても大丈夫だろう」と考え、原告母に伝えなかった。原告らか らも、本件生徒がいじめられているかどうか等について特段質問はされなかった。(原告母本人、被告E本人)オ三者面談以降本件事故まで(この期間に行われた本件各行為は本件行為⑧、 。原告らか らも、本件生徒がいじめられているかどうか等について特段質問はされなかった。(原告母本人、被告E本人)オ三者面談以降本件事故まで(この期間に行われた本件各行為は本件行為⑧、⑨、行われていた可能性がある行為は、本件行為①、⑦)三者面談後頃、本件生徒はスマートフォンを買い与えられたが、12 月下旬には、他の生徒との間でLINEでの本件行為⑨のやりとりがあった。また、平成30年1 月になっても、本件行為①、⑧は継続していた可能性がある。 しかし、三者面談以降本件事故に至るまでの間、原告らは、本件生徒がいじめられているとの認識を有していなかったことから、被告教員ら に対して本件生徒がいじめられていないかどうかの確認等をすることはなく、被告教員らから原告らに対し、本件生徒がいじめられている可能性があることやアンケートやアセスの結果等の情報が伝えられることもなかった。(原告母本人、被告E本人)(4)本件事故の発生 ア本件生徒は、平成30年1月26日、本件中学校に登校した。原告母 が18時頃に帰宅したところ、体操服を着た本件生徒が原告母に対して「部活行ってきたよ」と告げたが、自宅にいた本件生徒の弟が原告母に本件生徒が部活動に行っていたという話は本件生徒の嘘であり、実際は部活動に行かずに帰宅し自宅でゲームをしていたということを告げたため、原告母は本件生徒に対して、嘘をついたこと、ゲームは1日1時間と いうルールを破ったこと、塾の宿題をしていなかったことを叱責し、すぐに塾に行って宿題をやるように促した。本件生徒は、原告母に対して謝った後、19時頃に夕食をとることなく塾へ向かい、19時30分から22時まで授業を受けた。 本件生徒は、塾での授業終了後、自宅マンションの1階ロビーに やるように促した。本件生徒は、原告母に対して謝った後、19時頃に夕食をとることなく塾へ向かい、19時30分から22時まで授業を受けた。 本件生徒は、塾での授業終了後、自宅マンションの1階ロビーにまで 帰ってきたが、9階に所在する自宅には入ろうとせず、同ロビーで原告父の帰宅を待っていた。原告父が22時30分頃に同ロビーに到着したことから、本件生徒と原告父は一緒にエレベーターに乗って自宅に帰ることとした。その際、本件生徒は「部活を休んでお母さんに怒られた。」旨話していた。本件生徒は、原告父と一緒に夕食をとった後、テレビを見 始めた。原告父は、本件生徒に早く寝るように言い、先に就寝した。(原告母本人、原告父本人)イ本件生徒は、翌27日午前1時頃、自宅マンションのベランダから自らの意思で飛び降り、死亡した(本件事故)。 原告らは、同日午前3時頃、自宅を来訪した警察官から本件生徒と思わ れる子どもが病院に運ばれていることなどを伝えられ、本件事故の発生を知るに至った。(原告母本人、原告父本人)(5)本件中学校における本件事故後の対応(甲1、乙16)ア被告Dは、原告らから本件事故の発生を伝えられ、平成30年1月28日、教職員らに本件生徒に関連する資料収集を指示した。被告Eは、同指 示に基づき、5月8日アンケート等を被告Dに提出したが、アセスについ ては提出せず、実施の事実の報告もしなかった(被告E本人)。 被告Dは、被告E等から提供された5月8日アンケート及び保健室の来室記録を確認した後、原告らにもこれらの資料を提供した。 本件事故後の対応は校長である被告Dらを中心とする複数の教員で行われた(以下、対応した教員らを「被告Dら」という。)。 イ被告Dらは、同月29日、本件中学校の1年生全生徒 料を提供した。 本件事故後の対応は校長である被告Dらを中心とする複数の教員で行われた(以下、対応した教員らを「被告Dら」という。)。 イ被告Dらは、同月29日、本件中学校の1年生全生徒を対象に、「本件生徒を偲んで」と題するアンケートを実施し(乙16の添付資料9。以下「1月アンケート」という。)、別途、本件生徒が所属していた卓球部の部員を対象とするアンケートも実施した(乙16の添付資料9。以下「卓球部アンケート」という。)。これらアンケートは、本件生徒の様子で気にな ったことや、悩みごとの相談がされたことはないか等を聞く内容となっていた。被告Dらは、同月29日から2月1日にかけて、上記各アンケートの回答をした生徒のうち数名の生徒に対しては更に聴取り調査を実施し、原告らへの開示の可否及び方法についての協議の上、原告らに対する説明を行った。また、同年1月30日には原告らが6月7日メモを発見し、被 告Dらにこれを示したことから、被告Dらは、2月2日から16日にかけて、6月7日メモに関連する生徒らに対する聞き取り調査を実施し、その結果も踏まえ原告らに対して説明した。 ウ平成30年2月11日頃、本件学校の教員を名乗る人物から匿名の文書が原告らに届けられた。同文書には、本件中学校の内部文書が添付された 上で、本件中学校では本件生徒に対するいじめはなかったとの方向で調査をしようとしているので、本件中学校を信用してはならないなどと本件中学校の対応を非難する情報の記載があった。(甲10の1)上記文書を契機として、原告らと被告Dらの関係性は悪化することとなった(原告母本人)。 エ 1月アンケートは、本件事故の原因に絞って事実関係を調査する内容で はなかったことから、原告らは、被告Dらに対し、本件 被告Dらの関係性は悪化することとなった(原告母本人)。 エ 1月アンケートは、本件事故の原因に絞って事実関係を調査する内容で はなかったことから、原告らは、被告Dらに対し、本件事故の原因に絞ったアンケートを行うこと、アンケートの文書の内容として「自殺」という文言を入れることを要望したが、被告Dらは、当該時点において、本件事故が自殺であると警察が断定していないので自殺と記載することはできないとして、これを断っていた。 最終的に、同年3月23日付けで、大阪市教育委員会により、本件生徒が自殺したことを明記した上で、自殺の原因について気になったことを記載するアンケートが生徒に対して実施された(甲3。以下「3月アンケート」といい、1月アンケート及び卓球部アンケートと併せ「事故後アンケート」という。)。 オ事故後アンケートの回答内容事故後アンケートでは、本件生徒について気になったことはないか等の質問があったところ、これら質問への回答書には、本件行為①、③、⑤、⑥、⑦及び⑧に関する具体的な裏付けとなる記載があったほか、以下の記載があった(甲3、乙16添付資料9)。 (ア)「くらすぜんたいからいじめがあったようにおもいます。クラスがちがったのでふだんのようすはあまりわかりませんが。クラスでいじめにあっているように思い(だいじょうぶ?)ときいたことがありましたが、Aくんは、だいじょうぶといっていました。」(イ)「同じ部活のメンバーにきらわれていた」 (ウ)「自分が見ているときは楽しそうでしたが、時々思いつめたような表情をしていました」「『担任と気が合わない。』と一度言っていたのを聞きました。」(エ)「塾が同じで同級生に無視されている所をよく見る。 見ているときは楽しそうでしたが、時々思いつめたような表情をしていました」「『担任と気が合わない。』と一度言っていたのを聞きました。」(エ)「塾が同じで同級生に無視されている所をよく見る。」(6)第三者委員会による調査 平成30年3月19日、大阪市教育こども委員会において、市議会議員か ら本件事故に関する質疑があり、同年5月18日、本件事故に関する事実関係の調査、本件中学校等の対応の適否等について、第三者委員会による調査を行う旨の諮問がなされた。このような経緯を経て平成30年5月22日に設置された第三者委員会は、最終的には弁護士4名、臨床心理士2名(うち1人は大学教授)、教育大学講師の合計7名で構成され、本件中学校から提出さ れた事故後アンケートの資料や原告らから提出された5月8日アンケート、アセス等の資料を精査するだけでなく、本件生徒と関りのあった生徒延べ33名、教職員等延べ25名、原告らへの聴き取り調査を実施し、委員間で合計37回の会議を経た上で、令和2年3月26日付けで調査報告書(本件調査報告書)を作成した。 もっとも、アセスの資料については、前記(5)アのとおり被告Eが被告Dに対してアセスの存在を伝えていなかったことから、当初は本件中学校から第三者委員会に提供されていなかった。しかし、第18回会議(平成31年4月18日)において第三者委員会が本件中学校にアセス実施の有無について問い合わせた結果、本件中学校から、養護教諭がクラス担任に結果を提供 済みであることからデータは不要であると判断して平成29年2学期中にデータを削除していたがデータを復元できた旨の説明があり、第19回会議(令和元年5月8日)において提出された。 (7) 本件調査報告書ア本件生徒の特性に関し、本件中学校の 成29年2学期中にデータを削除していたがデータを復元できた旨の説明があり、第19回会議(令和元年5月8日)において提出された。 (7) 本件調査報告書ア本件生徒の特性に関し、本件中学校の概要、認定事実(1)と同旨の 本件生徒の身上、身体・発達上の特性、小学校、本件中学校での状況、教職員や同級生が受けていた本件生徒に対する印象等の聴取結果が認定されているほか、「資料等からの心理学的分析による、本人の性格や行動特性」として、以下のような分析がされている(第2章「当該校の概要と本人の特性」、第3章「入学前後から亡くなるまでの評価の前提 となる事実」)。 本件生徒は、身長の低さや理解力表現力の弱さ、学習成績等から自信を持ちにくい状況になりやすかった、このような自信のなさや失敗感は、自分の世界に閉じこもったり、気後れや抑うつ感として表現されなかったわけではないが、むしろ小学校のころから得ていた明るく元気という周囲の評価を発展させる形で、ふざけたりちょっかいを出したりという 道化師的振る舞いとしての「おちょけ」や、能力以上のことを引き受ける(学級代表や指揮者に立候補する)行動として表現されていたようである。こういった行動を、ムードメーカーとして肯定的な評価をする者もいれば、お調子者と思われてしまったり、いじられたりすることがあった。そして、いじられても皆の前では傷ついたりした様子を見せず、 笑うことしかできなかった。これは、感じている不安や抑うつ感情に耐えることが難しい時に、まるで不安を感じておらず傷ついてもないというように過剰に表現するという防衛機制を働かせることで心の安定を図っていたためと考えられる。 イ本件各行為については、以下のような評価がされている(第6章「本 件生徒の死亡の経緯お いというように過剰に表現するという防衛機制を働かせることで心の安定を図っていたためと考えられる。 イ本件各行為については、以下のような評価がされている(第6章「本 件生徒の死亡の経緯および背景」、第8章「課題と評価」等)。 本件行為①(チビ・メガネと呼んだ行為)、②(6月7日メモ記載の行為)、③(筆箱を投げられた行為)、④(卓球部員との言い合い)、⑤(同級生からの発言)、⑥(背中に付箋が貼られた行為)、⑦(国語辞典の回収)及び⑨(同級生とのLINEのやり取り)についてはいずれも「い じめ」に該当する。これらいじめと本件生徒の自死との間には因果関係が認められる(ただし、法的な相当因果関係の意味ではない旨の注記がされている。)。 ウ本件事故の原因については、大要、以下のような評価がされている(第8章「課題と評価」等)。 被告教員らには、ⓐ本件生徒と一部関係教員との関係は、力ずくの厳し い指導による上下関係であって、本件生徒にとっては安心して相談ができるような関係が培われていなかったこと、ⓑ本件生徒が学校生活に適応しようとすればするほど孤立感を深める悪循環に置かれていたことに対する教員の認識が極めて不十分であったこと、ⓒそのために教員による対応もむしろ本件生徒の孤立感を深めてしまったこと、ⓓ本件生徒に関する情 報と判断は一部関係教員にのみ限られ、他の教員や保護者には伝えられていないこと等の課題があり、これら課題によって本件生徒の孤立化、透明化、無力感化が増長され、心理的視野狭窄に陥って本件事故が起きた。 エ本件事故後の本件中学校の対応については、大要、次のように評価されている(第8章「課題と評価」等)。 ⓐ機動性と効率を重視したため、組織として機能しておらず、場当たり的であった、ⓑ事故 エ本件事故後の本件中学校の対応については、大要、次のように評価されている(第8章「課題と評価」等)。 ⓐ機動性と効率を重視したため、組織として機能しておらず、場当たり的であった、ⓑ事故死という認識を前提に対応した、ⓒ調査と報告が恣意的であった可能性があるなどとして、本件事故発生当初に対応した組織体制に問題があること、当該校学校基本方針に定められた組織系統は徹底されず本件中学校では方針が機能しなかった。 2 争点1(本件生徒に対する「いじめ」行為の存否)について(1)いじめ防止対策推進法における「いじめ」いじめ防止対策推進法2条1項は、「いじめ」について、「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネッ トを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。」と定義し、同法7、8条において、学校設置者や教員等に対し、同法3条の基本指針に沿って「いじめ」の防止のために必要な措置を講ずる責務を課している(前提事実(7))。 そこで、被告教員らの安全配慮義務違反の有無を判断する前提として、原告 らが主張する本件各行為が、いじめ防止対策推進法2条1項にいう「いじめ」 に該当する行為か否かを検討する。 (2)本件各行為の「いじめ」該当性認定事実(2)アないしケを踏まえた本件各行為の「いじめ」該当性の判断は、以下のとおりである。 ア本件行為①(本件生徒を「チビ・メガネ」と呼んだ行為) 前記認定のとおり、本件生徒は、1年生在学中に、複数回、複数の生徒から、「チビ」「チビが来た」などと呼ばれたり、メガネにつ ア本件行為①(本件生徒を「チビ・メガネ」と呼んだ行為) 前記認定のとおり、本件生徒は、1年生在学中に、複数回、複数の生徒から、「チビ」「チビが来た」などと呼ばれたり、メガネについてもからかわれたりしていたことが認められる。その頻度は必ずしも明らかではないが、第三者委員会の調査においては、本件生徒はチビ、メガネと呼ばれることが多かったと結論付けられ、これをもって「いじめ」であると認定されてい るところ、同調査は、生徒延べ33名、教職員等延べ25名、原告らへの聴き取り調査を実施の上、7名の専門家により、2年間にわたり、合計37回の会議を経て実施されているのであり(認定事実(6))、一定の信用性を有しているといえる。また、事後アンケートでも、本件生徒がクラスに入ってきた時周りのみんなから「おい、チビ来んなや」と言われていた旨の具体 的な回答があり(乙16)、その後の聴き取りでもおおむねこれに符合する回答があったこと、被告側証人である証人Hも、本件生徒がチビと呼ばれたことがあること自体は認めていること、実際にも、本件生徒は身長が低くメガネをかけている特徴があり、教員の中にも体格からいじめのリスクがあるとの印象を有する者がいたこと(認定事実(1))、アセスでの結果 でも、本件生徒は「友達にからかわれたり、バカにされることがある」について「当てはまる」と回答していること等を総合すると、本件生徒が「チビ」「メガネ」あるいはこれに類する言葉でからかわれたことは、一定の有意な頻度であったものと認められる。そして、そもそも「チビ」「メガネ」という言葉は、身体的特徴やこれに起因する状態を揶揄するものであり、 このように呼ばれた者は心身に苦痛を感じるのが通常であって、ましてや 中学1年生の本件生徒にとっては 「チビ」「メガネ」という言葉は、身体的特徴やこれに起因する状態を揶揄するものであり、 このように呼ばれた者は心身に苦痛を感じるのが通常であって、ましてや 中学1年生の本件生徒にとっては当然に、このように呼ばれることにより人格は傷つけられ、心身の苦痛を感じたというべきであるから、本件行為①は「いじめ」に該当する。 被告らは、本件生徒は、いつも明るく振舞っている「いじられキャラ」であり、被告Eが定期的に「何か困ったことはないか」等と聞いた際に「大 丈夫」と答えていたこと、被告Eが「メガネ潰したろか」と述べた際もいつも笑っていたこと等から、仮に「チビ」「メガネ」等の発言があったとしても、これを気にしてなかった旨主張する。しかし、いわゆる「いじられキャラ」であるからといって「いじめ」に当たらないなどとはおよそいえないことは後記コのとおりであるし、そもそも、上記のとおり「チビ」等の発言は 身体的特徴を揶揄するものであり、本件生徒が多感な中学1年生で、実際に低身長が疑われる程度に身長が低いことや、小学3年生の時期から眼鏡をかけていたこと等の状況を考慮すると、単に本件生徒が一緒に笑っていたとか、被告Eの声掛けに大丈夫と言っていたとしても、そもそも被告Eが具体的にどのような声掛けをしていたのかさえ判然としない以上、その ことのみでこれを気にしていなかったなどとは到底判断できるものではない。 したがって、本件行為①は「いじめ」に該当する。 イ本件行為②(6月7日メモ記載の行為)6月7日メモの記載内容からすれば、同日頃、本件生徒において心身の 苦痛を感じる何らかの出来事が発生したことが推認されるが、原告らの主張を踏まえても、本件生徒が受けた行為の内容は判然とせず、具体的な「いじめ」行為を認定することはできな 件生徒において心身の 苦痛を感じる何らかの出来事が発生したことが推認されるが、原告らの主張を踏まえても、本件生徒が受けた行為の内容は判然とせず、具体的な「いじめ」行為を認定することはできない。 ウ本件行為③(本件生徒の筆箱を投げ合った行為)自身の筆箱を取られ、これを投げられることは、心身の苦痛を感じる行 為であり、「いじめ」に該当する。 被告らは、本件生徒も他の生徒の筆箱を投げており、ふざけ合いの域を超えるものではなかった旨主張し、被告E本人も生徒からそのように聞いた旨供述する。しかし、本件行為③に関しては、生徒からの申告でホームルームでも取り上げられていること、被告E自身厳しく指導したと供述していること、実際、本件行為③を目撃した生徒が3月アンケートに対し「休み 時間に何人かの男子がAくんの筆箱でキャッチボールをしていて、Aくんは返せとは言っていたが、その男子達は笑いながらキャッチボールを続けていて、いじめのように見えた。」と回答していること(甲3の4)などを総合すると、本件行為③は、決して些細なふざけ合いであったとは考えられず、少なくとも本件生徒は心身の苦痛を感じていたと認められ、「いじめ」 に該当する。 エ本件行為④(卓球部員との言い合い)本件生徒は、卓球部員と言い争いになり、倒れるにまで至ったのであるから、本件生徒は心身の苦痛を感じたと認められ、本件行為④は「いじめ」に該当する。 オ本件行為⑤(同級生からの発言)「上から目線やめてや」、「いきっている」、「遊ぶときもいきってるから嫌や」等との発言は、相手の日常の態度や性格を非難、攻撃する言葉であって、これにより、本件生徒は心身の苦痛を感じたと認められるから、本件行為⑤は「いじめ」に該当 いる」、「遊ぶときもいきってるから嫌や」等との発言は、相手の日常の態度や性格を非難、攻撃する言葉であって、これにより、本件生徒は心身の苦痛を感じたと認められるから、本件行為⑤は「いじめ」に該当する。 カ本件行為⑥(背中に付箋が貼られた行為)本件行為⑥については、授業中に、被告Fに連絡をするために必要な事項が記載されている付箋を取り上げて、本件生徒やそのほかの生徒の背中に付箋を貼りつけていたというのであるから、それ自体、本件生徒の部活動や授業に支障を来す行為であり、「安心して学習その他の活動に取り組むこと(い じめ防止法3条1項)」を妨害していることは明らかである。実際、本件生徒 は、被告Eに対して、付箋を背中に貼られて嫌な思いをした旨述べ、これを受け、被告Eは付箋を貼った生徒による謝罪が必要であると判断し謝罪をさせている。本件行為⑥は、本件生徒の心身に苦痛を与える「いじめ」に該当する(なお、被告E本人は、本件生徒も他の生徒に付箋を貼り返していた旨供述するが、仮に同事実があったとしても、上記説示に係る事情を踏まえる と、「いじめ」に該当するという判断は左右されない。)。 キ本件行為⑦(国語辞典の回収)本件生徒が回収することを念頭に本件生徒の机の上にわざと国語辞典を置く生徒も存在したものと考えられるから、本件行為⑦が真に本件生徒の自由な意思に基づき行われていたものか疑問がなくはない。しかし、国語辞典 の回収は本件生徒が自発的に開始したものであること、本件生徒の行為に対し多くの生徒が感謝の意を示していたこと、事故後アンケートにおいて本件生徒が国語辞典の回収を強制されていたり、嫌がっていたりした旨の記載がないこと(乙16添付資料9)等の事情を踏まえると、本件行為⑦により本 生徒が感謝の意を示していたこと、事故後アンケートにおいて本件生徒が国語辞典の回収を強制されていたり、嫌がっていたりした旨の記載がないこと(乙16添付資料9)等の事情を踏まえると、本件行為⑦により本件生徒が心身の苦痛を感じていたとまで認めるには足りず、本件生徒が、皆 に喜ばれたいという気持ちから自主的に行っていた可能性は否定できない。 したがって、本件行為⑦は「いじめ」に該当するとまでは認めるに足りない。 ク本件行為⑧(部活動におけるプロレス技)本件生徒は、先輩に当たる当時中学2年生であった生徒に、複数回腕ひし ぎ十字固めなどのプロレス技をかけられたり、メガネを取られるなどされており、嫌がる様子を示していたところ、かかる行為は、本件生徒に対する有形力の行使を伴う物理的な攻撃であり、本件生徒が嫌がる様子を示していることからしても、本件生徒の心身に深刻な苦痛を与えたものであるといえるから、本件行為⑧は「いじめ」に該当する。 ケ本件行為⑨(同級生とのLINEのやり取り) 「おごれよ!」等として金銭的要求を受けることや、「死ねや」「バーカバーカバーカバーカバーカバーカ」等のメッセージを受けることにより、本件生徒は強い精神的苦痛を受けたものといえる。また、本件生徒が送信したメッセージに対して返信がない事態が多数回続いたことにより、本件生徒は無視されたとして疎外感を感じ、これによっても精神的苦痛を受けたものといえ る。 したがって、本件行為⑨は「いじめ」に該当する。 コ小括以上によれば、認定事実(2)記載の本件行為①、③ないし⑥、⑧、⑨は、本件生徒が「いじめ」に該当するというべきである(以下、これらを併せ「本 件いじめ行為」という。)。 これに対し、被告らは、本件いじ ば、認定事実(2)記載の本件行為①、③ないし⑥、⑧、⑨は、本件生徒が「いじめ」に該当するというべきである(以下、これらを併せ「本 件いじめ行為」という。)。 これに対し、被告らは、本件いじめ行為の中には、本件行為①のみならずその余の行為についても、単なる「いじり」にすぎないものが多く含まれており、本件生徒が、いわゆる「いじられキャラ」で、いじられることを受け入れていたこと、音楽コンクールの指揮者に立候補するなど積極的な 姿勢であったことからすると、本件生徒が本件いじめ行為の全てで精神的苦痛を感じていたとはいえないと主張し、被告Eも、これに沿う供述をする。 確かに、外形上心身に苦痛を感じる性質の行為であったとしても、それが信頼関係を有する対等な友人間でのふざけ合いの一環ないしいわゆる 「いじり」として行われる場合には、当該行為を受けた生徒において、心身の苦痛を感じないこともあり得るとはいえる。しかし、本件いじめ行為がそのような友人間におけるふざけ合いの一環や「いじり」として行われたものであることを示す的確な証拠はなく、かえって、本件生徒はアセスへの回答において「仲間に入れてもらえないことがある」、「陰口を言われているよ うな気がする」、「友だちにからかわれたり、バカにされることがある」、 「友だちにいやなことをされることがある」等の質問にいずれも「あてはまる」と回答し、「友だちは、私のことをわかってくれている」との質問に「あてはまらない」と回答するなど、他の生徒に対する被侵害的感情を示していたことや、事故後アンケートで「くらすぜんたいからいじめがあったようにおもいます。」と回答する生徒がいたことなど、本件では、本件いじめ行為 を行った生徒と本件生徒との間には、対等な人間関係が存在していなかったこと ケートで「くらすぜんたいからいじめがあったようにおもいます。」と回答する生徒がいたことなど、本件では、本件いじめ行為 を行った生徒と本件生徒との間には、対等な人間関係が存在していなかったことを示す事実が存在する。また、本件生徒が音楽コンクールで指揮者に立候補するなどして本件クラスに積極的に関わる姿勢を示していた行為は、本件生徒が本件いじめ行為により心身の苦痛を感じていたことと決して矛盾するものではなく、本件生徒が少しでもクラスに馴染み、自分の存在を認 めてもらいたい気持ちから、このような姿勢を示していた可能性もあり、それにもかかわらず、本件いじめ行為が「いじめ」でなく「いじり」であるなどとして、本件生徒が本件いじめ行為により心身の苦痛を感じていなかったと判断することはできない。 よって、被告らの主張は採用できず、本件いじめ行為は、その全てが「い じめ」であると評価すべきである。 3 争点2(被告教員らの安全配慮義務違反の存否)について(1)教員の安全配慮義務学校の教員は、学校における教育活動によって生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負っており、この一環として、学校教育活動ない しこれに密接関連する生活関係において、生徒に対するいじめその他の加害行為が現に生じ又は将来生じ得ることを認識し得た場合には、これらを発見・防止し、生徒の安全を確保すべき義務を負うものと解される。 (2)被告Eの安全配慮義務違反の有無前記認定事実(3)ア、イのとおり、被告Eは、5月8日アンケート及び これに関する本件生徒からの聴き取り結果から、少なくとも、本件生徒が過 去にいじめられた経験を有していることは認識したのであり、そうである以上、被告Eも、「今後同様の事態が生じないようしっかりと見守 に関する本件生徒からの聴き取り結果から、少なくとも、本件生徒が過 去にいじめられた経験を有していることは認識したのであり、そうである以上、被告Eも、「今後同様の事態が生じないようしっかりと見守っていく必要がある」旨認識していたというのである。そのような中で、本件生徒は、7月下旬に実施されたアセスにおいて、「友だちにからかわれたり、バカにされることがある。」、「友だちにいやなことをされることがある」等の質問 に「あてはまる」と回答し、分析の結果、「否定的な友だち関係がかなり見られます。友だちとのかかわりの確認、早急な支援が必要です。」とのコメントが付された上で、本件クラスで唯一、要対人支援領域に位置付けられる結果が示された。さらに、前記認定事実(3)ウのとおり、本件生徒は、10月30日には、かねてより頻回に来室していた保健室において、心配事が ないか尋ねる養護教諭に対して涙を流して泣き出すに至った。これらは、本件生徒が本件いじめ行為その他の「いじめ」を受けていることを強くうかがわせる事実であったというべきである。しかも、被告Eは、それまでに、少なくとも2学期に生じた本件行為③、④があったことは担任として把握していたはずである。加えて、被告Eは、これらの本件いじめ行為の徴憑となる 事実を把握する中、翌11月には、本件行為⑥の発生を知り、本件生徒から嫌な思いをした旨を直接聞いたことが認められる。以上からすると、被告Eは、遅くとも11月末日までには、本件生徒の心身に苦痛を与える本件いじめ行為が現に生じ、又は将来生じ得ることを認識し得たというべきである。 そして、被告Eが、現にいじめが生じている可能性があるとの認識を持っ て本件生徒や他の生徒の動向を注視し、自ら又は他の教員をして本件生徒及び関係する生徒から し得たというべきである。 そして、被告Eが、現にいじめが生じている可能性があるとの認識を持っ て本件生徒や他の生徒の動向を注視し、自ら又は他の教員をして本件生徒及び関係する生徒から丁寧に複数回事情聴取を行ったり、必要に応じて原告ら保護者に相談をするなどの対応をとっていれば、本件いじめ行為が行われたことを早期に発見し、保護者である原告らや他の教員とも連携して、これらにより被った本件生徒の精神的苦痛を緩和し、併せて、他の児童等にも働き かけていじめの問題に関する理解を深めさせるなどして、更なる本件いじめ 行為の発生を防止できた蓋然性は高く、前記(1)に照らせば、被告Eにはそのような対応をとるべき法的義務があったというべきである。 しかるに、被告Eは、アセスの結果や保健室での出来事を把握した後に、自ら又は副担任をして、個別に本件生徒に事実確認をしたものの、いずれも本件生徒が、大丈夫である旨答えたというだけで、問題はないと考え、それ以上 に、その真意を確かめるための個別の状況確認の機会を設けることなどもせず、本件生徒に対して、「いじめ」の可能性を念頭に置いた特段の対応を取っていなかった。それどころか、被告Eは、本件生徒が、からかわれても笑っているという一面を見ただけで、「いじられキャラ」であって、いじられることを喜んでいるなどと軽信し、自らも、本件生徒に対し、クラスの笑いをとるた めの「鉄板ネタ」として、複数回、「メガネ潰したろか」との発言をするなど(争いがない)、他の生徒による本件行為①(「チビ・メガネ」と呼ぶ行為)を助長するような言動に及んでいたもので、到底、本件生徒に対する安全配慮義務を尽くしていたとはいえない。 この点、被告Eは、アセスの結果等を受けて、意識的に本件生徒の様子に注 意を払い 為)を助長するような言動に及んでいたもので、到底、本件生徒に対する安全配慮義務を尽くしていたとはいえない。 この点、被告Eは、アセスの結果等を受けて、意識的に本件生徒の様子に注 意を払い、頻回に声をかけるようになった旨供述するが、同供述には客観的裏付けはない上、果たしてどのような注意を払い、どのような声掛けをしていたのか何ら具体性もないのであって、そのままには信用できない。むしろ、被告Eは本件事故を受けて被告Dから関連資料の提出を指示された際にも、アセスの資料の存在を失念して提出していなかったというのであるから(被 告E本人)、アセスの結果を重視していたとは考え難い。 以上によれば、被告Eは、遅くとも11月末日の段階において、本件いじめ行為を発見・防止し、本件生徒の安全を確保すべき義務に違反したと認められる。 (3)被告E以外の被告教員らの安全配慮義務違反の有無 ア被告Dについて 前記(2)説示のとおり、被告Eは、5月8日アンケートの回答内容、アセスの結果、10月30日の保健室での出来事、及び、本件行為⑥等を把握していたのであるから、遅くとも11月末日の段階では、本件生徒の心身に苦痛を与える本件いじめ行為が現に生じ、又は将来生じ得ることを認識し得たというべきであるが、前記認定事実(3)のとおり、これら本件い じめ行為の徴憑は学年会で共有されたにとどまり、校長である被告Dに対し伝えられることはなかった。その他、被告Dにおいて本件いじめ行為の存在を知り得べき事情は証拠上認められず、また、校長である被告Dが、1年生の生徒の日々の状況の把握に関しては、一次的には被告Eや学年会に委ね、自らはその報告から状況を把握することを原則としていることにも 合理性があり、裁量の範囲内 また、校長である被告Dが、1年生の生徒の日々の状況の把握に関しては、一次的には被告Eや学年会に委ね、自らはその報告から状況を把握することを原則としていることにも 合理性があり、裁量の範囲内であるといえることからすると、本件の事情の下で、被告Eないし学年会からの報告がないにもかかわらずこれを調査、認識すべき特段の事情があったとまではいえず、認識していなかったことに過失があるともいえない。 イ被告Fについて 2年生の担任及び学年主任である被告Fについても、被告D同様、学年会を通じた上記各事実の伝達はされておらず、11月末日時点において、本件行為⑧(プロレス技をかける行為)を除いては、本件いじめ行為を認識し得たとはいえない。 認定事実(2)クのとおり、卓球部の顧問である被告Fは、本件行為⑧ の事実があること、その後も同様の行為が行われる可能性があることを認識していたとはいえるが、被告Fはその都度同先輩生徒を指導していたことや、同先輩生徒の特性を踏まえ他の卓球部員に必要な指示を出していたこと、上記のとおり本件生徒に関するアセスの結果、2学期におけるクラス内での出来事等の情報を認識していなかったことを踏まえると、本件行 為⑧に関し、被告Fに安全配慮義務違反があるとまでは認められない。 ウ被告Gについて被告Gは、1年生の学年主任として、被告Eが学年で共有した情報を把握していたとはいえるが、具体的に把握した情報の内容は証拠上明らかではなく、本件生徒の直接の担任ではない被告Gにおいて、本件いじめ行為を認識し得たとまでは認められない。 エ小括以上より、被告D、被告F及び被告Gについては、本件いじめ行為についての安全配慮義務違反を認めることはできない。 じめ行為を認識し得たとまでは認められない。 エ小括以上より、被告D、被告F及び被告Gについては、本件いじめ行為についての安全配慮義務違反を認めることはできない。 4 争点3(安全配慮義務違反と本件事故との相当因果関係)について(1)前記説示のとおり、被告Eは、11月末日の段階において、本件いじめ行 為を発見・防止し、本件生徒の安全を確保すべき義務に違反したと認められるから、本件中学校の設置者である被告市は、かかる被告Eの安全配慮義務違反と相当因果関係を有する本件生徒の損害につき国家賠償法1条1項に基づき賠償義務を負う。 (2) そこで、上記安全配慮義務違反と本件事故による本件生徒の自死との相当 因果関係について検討する。確かに、前記認定事実によれば、本件いじめ行為の内容や程度は、本件生徒の心身を傷つけるに十分なものであったということはできるから、本件いじめ行為と本件生徒の本件事故による自死との間に条件関係が認められる可能性はある。しかし、仮にそうであるとしても、上記認定事実によれば、主としては複数の生徒から心理的な攻撃であり、物理的 な攻撃は一部にとどまり、その態様は苛烈で執拗なものとまではいえないこと、それらも長期間にわたり反復継続されていたとまでは認められないことなどからすると、本件生徒が本件いじめ行為により自死に至るのが通常起こるべきことであるとは認められない。そして、以上の事情のほか、本件生徒は日頃から明るく積極的な態度をとっており、本件いじめ行為が多発するよう になった2学期でさえ、本件生徒はクラス行事である音楽コンクールに指揮 者として積極的に立候補し、クラスでもこれが受け入れられ発表を成功させていること(甲1)、本件生徒が希死念慮を吐露したことはなく、 た2学期でさえ、本件生徒はクラス行事である音楽コンクールに指揮 者として積極的に立候補し、クラスでもこれが受け入れられ発表を成功させていること(甲1)、本件生徒が希死念慮を吐露したことはなく、原告ら保護者も含めて誰にも本件いじめ行為により深刻な精神的苦痛を被っていることを相談していなかったことも併せて考えると、被告Eにおいて、本件いじめ行為によって本件生徒が自死することまでを予見し得たとは認められない。 したがって、被告Eの安全配慮義務違反と本件生徒の自死との間に相当因果関係を認めることはできない。 5 争点4(本件事故と相当因果関係を有する損害)について(1)上記のとおり、被告Eの安全配慮義務違反と、本件生徒の死亡との間に相当因果関係が認められないから、原告らは、本件生徒の死亡による損害を請 求することはできない。しかし、本件生徒の生前の精神的苦痛による慰謝料請求については、前記説示のとおり、被告Eが上記安全配慮義務を尽くしていれば、遅くとも11月末日時点で生じていた本件いじめ行為により被った本件生徒の精神的苦痛を緩和し、併せて、更なる本件いじめ行為の発生を防止できたというべきであるから、このような対応がなされなかったことによ り本件生徒が被った心身の苦痛は、被告Eの安全配慮義務違反と相当因果関係ある損害と認められる。そして、前記説示に係る本件いじめ行為の内容及び程度、本件いじめ行為により本件生徒が受けた屈辱感、疎外感等の精神的苦痛の重大性を踏まえると、本件生徒の上記苦痛を慰謝すべき金額は100万円をもって相当というべきである。 そうすると、原告らは、本件生徒の死亡により、上記損害賠償請求権をそれぞれ50万円ずつ相続し、本件に顕れた諸事情を考慮すると、原告らそれぞれにつき、5万円ずつの弁護士費用 うべきである。 そうすると、原告らは、本件生徒の死亡により、上記損害賠償請求権をそれぞれ50万円ずつ相続し、本件に顕れた諸事情を考慮すると、原告らそれぞれにつき、5万円ずつの弁護士費用が安全配慮義務違反と相当因果関係のある損害と認められる。 なお、原告らは、前記前提事実⑹のとおり、死亡見舞金として独立行政法人 日本スポーツ振興センターから2800万円の支給を受けているところ、独 立行政法人日本スポーツ振興センター法31条2項によれば、学校の設置者が国家賠償法による損害賠償の責めに任ずる場合において、免責の特約を付した第16条第1項の災害共済給付契約に基づき、スポーツ振興センターが災害共済給付を行ったときは、「同一の事由」による給付については、当該学校の設置者は、その価額の限度においてその損害賠償の責めを免れる。しか し、上記死亡見舞金は本件生徒の死亡による損害に対する支給であるところ、前記慰謝料は、被告Eの安全配慮義務違反により本件生徒がその生前に被った精神的苦痛に対するものであって、これと上記死亡見舞金の支給の原因となった死亡による損害との間に「同一の事由」の関係があるということはできない。したがって、原告らに対して支給された死亡見舞金をもって前記慰 謝料を填補するものとしてその額を控除することはできない。 被告市は、原告らが被告教員らに対して、本件生徒が辛さや苦しさを顔に出さない性質を有していたことを伝えておらず、この点に大きな過失があるとして過失相殺を主張するが、仮に本件生徒がそのような性質を有していたとしても、前記説示のとおり本件いじめ行為を強くうかがわせる事実を被告E が認識し、認識すべきであった本件において、被告市主張に係る点を原告らの過失として評価することは相当ではない。 たとしても、前記説示のとおり本件いじめ行為を強くうかがわせる事実を被告E が認識し、認識すべきであった本件において、被告市主張に係る点を原告らの過失として評価することは相当ではない。 6 争点5(本件事故発生後の被告市の責任(調査義務違反))について原告らは、被告教員らが、本件事故後、自死ではなく事故死であるという認識を固持して、恣意的かつ不十分な調査を行い、遅々として調査を進めようと しなかったこと、本件事故の原因がいじめである可能性を念頭に調査を行わなかったこと、アセスのデータを削除したことなどが、本件生徒の保護者である原告らに対する調査報告義務に反する行為である旨主張する。 しかし、認定事実(5)によれば、被告Dは、教職員らに対して資料を収集することを指示し、5月8日アンケートや保健室の来室記録は直ちに原告らに 渡しており、また、被告Dらは、本件事故後直ちに各種アンケートを実施した 上、アンケートに基づく聴取り調査を実施し、その結果を原告らに随時説明している。その後、アンケートの実施を含む関係生徒への調査方法、その結果の共有方法等についての検討に時間がかかり、調査及び原告らに対する報告が遅れはしたが、アンケートを含む調査の実施方法及び開示方法は、調査を受ける生徒等のプライバシーに配慮するために慎重な検討が必要になることはやむ を得ない面があり、実施までに相応の期間を要したことにつき、被告Dらが行うべき調査報告義務を怠った結果であるとまではいえない。また、本件事故がいじめを原因とする自死であるという可能性を念頭に調査を行わなかったとする点についても、事故後アンケートの質問内容(認定事実(5))を踏まえると、被告Dらは、本件事故がいじめによる自死である可能性を念頭に置いてい たとはいえ 可能性を念頭に調査を行わなかったとする点についても、事故後アンケートの質問内容(認定事実(5))を踏まえると、被告Dらは、本件事故がいじめによる自死である可能性を念頭に置いてい たとはいえるし、自死と並行して事故死の可能性を念頭に置いていたとしても、遺書が存在せず、被告Dらが当時警察から直接、自死であるという判断を伝えられていなかったこと(被告D本人)を原因とするものといえ、義務違反があるとはいえない。さらに、アセスのデータ発見に至る認定事実(5)(6)記載の経過によれば、被告Dらが隠ぺい目的で故意にアセスのデータを削除したと までは認めるに足りないし、アセスが削除された時期や経緯が明らかでない以上、この点に被告らの注意義務違反があるとも認めるに足りない。 以上によれば、原告ら主張に係る調査報告義務違反を認めることはできない。 したがって、原告ら主張のうち調査報告義務違反に基づく主張は、その余の争点(争点6)を検討するまでもなく、理由がない。 7 争点7(被告教員ら個人の民法709条の損害賠償責任)について国又は公共団体が国家賠償法1条1項に基づく賠償責任を負う場合には、公務員個人はその責任を負うものではない(最高裁昭和30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁参照)。 本件では、地方公共団体である被告市が、国家賠償法1条1項に基づく賠償 責任を負うから、被告Eは民法709条に基づく個人責任を負わない。 第4 結論以上によれば、原告らの本件請求は、被告市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、原告らそれぞれにつき55万円及びこれらに対する平成30年1月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、被告市に対するその余の請求及 基づき、原告らそれぞれにつき55万円及びこれらに対する平成30年1月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、被告市に対するその余の請求及び被告教員らに 対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判断する。 大阪地方裁判所第11民事部 裁判長裁判官土井文美 裁判官奥田達生 裁判官髙矢輝乃

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