主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求原告が,被告とAとの間の金銭消費貸借契約に基づく貸金返還債務(残元金190万円及び利息金等)を連帯保証したことに基づく連帯保証債務が存在しないことを確認する。 第2 事案の概要本件は,被告に対する上記貸金返還債務を連帯保証した原告が,免責決定を受けたことを理由に,その債務不存在確認を求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠によって明らかな事実)(1) Aは,平成7年10月ころ,被告から金員を借り受けた。 原告は,平成7年12年13日,被告に対し,Aが被告に対して負担する債務を極度額400万円の限度で連帯保証する旨約した(以下,これによる債務を「本件保証債務」という。)。 (2) 原告は,平成9年12月18日,名古屋地裁に自己破産を申し立て(平成9年(フ)第1766号),平成10年4月14日,破産宣告と同時廃止決定を受けた(甲1の1)。そこで,原告は,免責を申し立てたところ,同年9月1日,免責決定を受け(甲1の2),同決定は確定した。 (3) 原告は,上記免責申立ての際,債権者名簿に本件保証債務を記載しなかった(甲4)。 (4) 被告は,原告に対し,本件保証債務(残元金190万円及び利息金等)の存在を主張して,その履行を求めている(甲5の1ないし5の4)。 2 本件の争点原告の受けた上記免責決定の効力が本件保証債務に及ぶか。 (1) 被告の主張Aは,前記貸金返還債務を履行せず,平成8年5月31日には被告に振り出した手形を不渡りにしたところ,被告は,その直後から,再三にわたり,原告に対して本件保証債務の履行を請求した。原告の妻は,同年6月3日,被告からの電話による督促に対し,Aと共に金策 には被告に振り出した手形を不渡りにしたところ,被告は,その直後から,再三にわたり,原告に対して本件保証債務の履行を請求した。原告の妻は,同年6月3日,被告からの電話による督促に対し,Aと共に金策に奔走している旨回答し,平成11年7月15日には,被告からの督促状を受領しているから,原告が本件保証債務を失念したというのは事実に反する。 にもかかわらず,原告は,免責の申立ての際,被告の有する本件保証債務を記載せず,ために被告は,原告がかかる申立てをした事実を知ることができなかった。 そこで,破産法366条の12第5号により,本件保証債務に対して上記免責決定の効力は及ばないと解すべきである。 (2) 原告の主張被告主張の事実は否認する。 原告が本件保証債務を債権者名簿に記載しなかったのは,失念によるものであり,これを知りつつ記載しなかったわけではない。 第3 当裁判所の判断 1 破産法366条の12第5号は,「破産者ガ知リテ債権者名簿ニ記載セザリシ請求権」については,免責決定の効力を受けられない旨を規定するところ,その趣旨は,債権者名簿に記載されなかった結果,手続から排除され,異議申立てを行う機会を奪われた破産債権者に免責の不利益を及ぼすことは相当でないというにある。したがって,破産者が知っている請求権であれば,債権者名簿に記載しなかったことが本人の過失による場合でも同号に該当し,それが故意に基づくことを要しないと解される。 ところで,前記前提事実のとおり,原告は,上記免責の申立てをした際,本件保証債務を債権者名簿に記載しなかったところ,甲3(原告本人の陳述書)によれば,原告は,Aの依頼により保証書に押捺し,これをAに渡したことがあったが,手元に資料がなかったなどの事情によって,免責申立ての際には債権者である被告の存在を「失念」していたこと 人の陳述書)によれば,原告は,Aの依頼により保証書に押捺し,これをAに渡したことがあったが,手元に資料がなかったなどの事情によって,免責申立ての際には債権者である被告の存在を「失念」していたことが認められる。 このように,問題となっている債権の発生原因事実が破産者自らの法律行為に係る場合,当該債権につき破産者は当然に悪意とされ,失念ないし忘却をもって悪意でないことを基礎づけることは,当該債権者が破産者の失念ないし忘却の原因を作出したなどの特段の事情が存する場合を除き,できないというべきである。この理は,本件保証債務につき免責不許可に該当する事由が見当たらないこと,原告の破産時における他の破産債権者数6名,破産債権総額約388万円(甲1の1)と比較すると,本件保証債務(元金190万円)はその一部に過ぎないこと,その他,免責制度の趣旨・目的を総合考慮しても,覆ることはないと解される。 そうすると,原告は本件保証債務を知っていたというべきであるから,前記免責決定の効力を受けることはできないと判断される。 2 以上の次第で,原告の本訴請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判官加藤幸雄
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