平成23(行ケ)10292 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年6月27日 知的財産高等裁判所 2部 判決 請求棄却
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- 1 -平成24年6月27日判決言渡平成23年(行ケ)第10292号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年6月13日判決 原告株式会社アクセル被告ヤマハ株式会社(当事者の詳細は,別紙当事者目録記載のとおり) 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 原告の求めた判決特許庁が無効2011-800012号事件について平成23年8月9日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要原告は,被告の有する本件特許について無効審判請求をしたが,請求不成立の審決を受けた。本件はその取消訴訟であり,争点は,補正要件違反の有無,サポート要件違反の有無,明確性要件違反の有無及び容易推考性の存否である。 1 特許庁における手続の経緯被告は,本件特許第3003559号(発明の名称「楽音生成方法」,国内優先権主張日平成7年5月19日,平成7年10月23日出願,平成11年11月19日特許登録,特許公報は甲11,請求項の数9)の特許権者である。本件特許の出- 2 -願においては,平成11年9月21日付けの補正がされている(以下この補正を「本件補正」という。)。 原告は,平成23年1月28日に,本件特許の請求項1及び7に記載された発明について無効審判請求をしたが(無効2011-800012号),特許庁は,平成23年8月9日に,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成23年8月18日に原告に送達された。 2 本件発明の要旨本件特許の請求項1及び7(本件発明1 ,特許庁は,平成23年8月9日に,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成23年8月18日に原告に送達された。 2 本件発明の要旨本件特許の請求項1及び7(本件発明1及び7)は次のとおりである。 【請求項1】指定された音を発生するための発生命令を発行する第1のステップと,指定された音を複数の発音チャンネルの1つに割り当て,割り当てたチャンネルに対応して該指定された音の制御データをレジスタに記憶する第2のステップと,所定時間間隔で演算開始命令を発行する第3のステップと,各演算開始命令に応じて,前記レジスタに記憶された制御データに基づき各チャンネル毎の波形データの複数サンプルをまとめて算術的に生成するように前記各チャンネルで音生成演算を実行する第4のステップであって,この音生成演算は,生成すべき該複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われることと,個々のチャンネルで生成された波形データのサンプルを各サンプル点毎に混合し,該各サンプル点毎の混合サンプルデータを生成する第5のステップと,各サンプリング周期毎に順次サンプル点の前記混合サンプルデータを順次出力する第6のステップとを具備するようにしたことを特徴とする音生成方法。 【請求項7】1または複数の指定された楽音を発生するための1または複数の発生命令を受け取る第1のステップと,- 3 -前記発生命令に応答して,各指定された楽音を複数の発音チャンネルのうちの各1つに割り当て,該指定された楽音の制御データを各指定された楽音が割り当てられた各発音チャンネルに対応するチャンネルレジスタに書き込む第2のステップと,演算開始命令を順次発行する第3のステップと,各演算開始命令に応答して,前記チャンネルのチャンネル 楽音が割り当てられた各発音チャンネルに対応するチャンネルレジスタに書き込む第2のステップと,演算開始命令を順次発行する第3のステップと,各演算開始命令に応答して,前記チャンネルのチャンネルレジスタに記憶された制御データに基づき各発音チャンネル毎に複数サンプル分の波形データを生成する第4のステップと,前記第4のステップで各発音チャンネルにつき生成された波形データを,前記複数サンプルの各サンプル毎に混合し,混合サンプルデータを生成する第5のステップとを具備し,前記第4のステップは,特定の時間期間内で波形データの生成が可能な発音チャンネルがどれであるかを判定し,可能であると判定された発音チャンネルについてのみ前記波形データの生成を行うことを特徴とする楽音生成方法。 3 審判における原告主張の無効理由(1) 無効理由1(特許法17条の2第3項)ア被告は,本件補正により,請求項1及び7の第1のステップについて,「指定された音を発生するための発生命令を発行する第1のステップ」(請求項1),「1または複数の指定された楽音を発生するための1または複数の発生命令を受け取る第1のステップ」(請求項7)とする補正をした。 この補正は,本件発明1及び7について,指定された音又は楽音が単一の場合を包含するようにしたものであるが,当初明細書には,指定された楽音が複数であることを前提とする記載のみが存在し,単一の楽音に関する記載はない。また,指定された音又は楽音が単一の場合には,当初明細書に記載された,演算のオーバヘッドを小さくするという技術的課題が生じないから,単一の音又は楽音を包含させる上記補正により,当初明細書に記載のない新たな方法の発明を追加したことになる。 イ被告は,本件補正により,請求項1について,「楽音」を「音」とする- 生じないから,単一の音又は楽音を包含させる上記補正により,当初明細書に記載のない新たな方法の発明を追加したことになる。 イ被告は,本件補正により,請求項1について,「楽音」を「音」とする- 4 -補正をした。 「楽音」は,ある時間継続した一定の振動数をもち,その振動数(音の高さ)が認識できる音であり,音叉や管楽器・弦楽器の出す音を意味するものであるのに対し,単なる「音」は,「川のせせらぎ音」,「オーディオCDに録音されているような3分ほどの楽曲」など,全ての音を包含するものである。したがって,上記補正により,本件発明1は,「楽音」に含まれない「音」を包含することになったが,当初明細書には,「楽音」についての記載はあるものの,「音」についての記載はない。 ウこのため,本件補正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,本件発明1及び7についての特許は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものである。 (2) 無効理由2(特許法36条6項1号,同項2号)本件発明1及び7は,次のとおり,本件補正による本件明細書に記載されたものではない,あるいは,明確でないから,特許法36条6項1号,同項2号に規定する要件を満たしていない。 ア本件発明1及び7の第1のステップは,指定された音又は楽音が単一の場合を包含するものであるが,この場合,単一の発音チャンネルにより発音させることになり,複数チャンネルで発音させる場合のオーバヘッドの回避という本件発明1及び7の技術的課題が生じないから,その技術的課題の解決による効果を奏することもない。したがって,本件明細書には,指定された音又は楽音が単一の場合に関する発明は記載されていない。 また,本件発明1及び7で,単一の音又は楽音を から,その技術的課題の解決による効果を奏することもない。したがって,本件明細書には,指定された音又は楽音が単一の場合に関する発明は記載されていない。 また,本件発明1及び7で,単一の音又は楽音を指定した場合には,割り当てがあるのは1つのチャンネルのみであるから,第4のステップの「各チャンネル」や第5のステップの「個々のチャンネル」を想定することができず,発明が明確ではない。 イ本件発明1は,一般的な「音」を含む。しかしながら,本件明細書には,- 5 -「楽音」以外の一般的な「音」に関する記述は全くないから,本件発明1は本件明細書に記載されたものではなく,また,技術内容が不明であって,発明が明確ではない。 ウ請求項1には,「制御データに基づき各チャンネル毎の波形データの複数サンプルをまとめて算術的に生成」との記載があるが,本件明細書には,この記載に関して,読み出しアドレスに対するFナンバの加算と加算により生成されたアドレスに基づく波形サンプル間の補間処理が記載されているのみである。 したがって,請求項1の上記記載,特に,「算術的に」生成との記載は,本件明細書に記載された上記楽音生成演算以外の初等数学的演算一般(例えば,音量調整処理のための乗算)を包含しているから,本件明細書に記載されたものではない。 また,請求項1の「まとめて算術的に生成」について,本件明細書からは「まとめて」の技術的意義を理解することができるが,請求項には「まとめて」とだけ記載されているから,技術内容が明確ではない。 エオーバヘッドを小さくするという本件発明1及び7の技術的課題を解決するためには,「当該複数サンプル分の制御データは1回の読出しで行い,複数サンプル分の波形データ生成後の制御データの書込みを一回で行うこと」という技術的事項が不可欠であるが, び7の技術的課題を解決するためには,「当該複数サンプル分の制御データは1回の読出しで行い,複数サンプル分の波形データ生成後の制御データの書込みを一回で行うこと」という技術的事項が不可欠であるが,本件発明1及び7の第4のステップには,そのような技術的事項が欠落している。したがって,本件発明1及び7においては,まとめて算術的に生成される複数サンプル分の制御データの読出しと,複数サンプル分の波形データ生成後の制御データの書込みがどのように行われるのか不明であるから,発明が明確ではない。また,本件発明1及び7は,上記の技術的事項が欠落しているので,上記の技術的課題を解決しない別発明を含むものであって,本件明細書に記載されたものとはいえない。 (3) 無効理由3(特許法29条2項)本件発明1及び7は,特開平4-51000号公報(甲1),特開昭62-271147号公報(甲2),特開平6-149594号公報(甲3),特開平6-1- 6 -87169号公報(甲4),特開平6-187170号公報(甲5),特開平5-49152号公報(甲6),特開平5-274788号公報(甲7)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 審決の理由の要点(1) 無効理由1についてア当初明細書の段落【0046】~【0049】には,MIDIイベントがMIDIインターフェースにより受信されると,受信時刻とともに入力バッファに書き込まれ,MIDI処理が開始されると入力バッファを読みに行き,そのMIDIイベントがノートオンイベントの場合は,発音チャンネルが割り当てられ,割り当てられたチャンネル番号とともにノートナンバなどがレジスタに取り込まれ,割り当てられた発音チャンネルの楽音波形の演算が行われる楽音生成方法が記載されている。 は,発音チャンネルが割り当てられ,割り当てられたチャンネル番号とともにノートナンバなどがレジスタに取り込まれ,割り当てられた発音チャンネルの楽音波形の演算が行われる楽音生成方法が記載されている。ここで,MIDIインターフェースにより受信されるMIDIイベントは,時系列的に順次,複数受信されるが,その1つ1つは,「指定された単一の音を発生するための発生命令」といえ,仮に,MIDIイベントが1つしか受信されなければ,入力バッファにも1つのみが書き込まれ,1つの発音チャンネルへの割当てが行われて発音されるのは当然である。したがって,当初明細書には,指定された音又は楽音が単一の場合を包含する第1のステップが記載されている。 また,指定された音が単一の場合であっても,割り当てられたチャンネルの波形データの複数サンプルをまとめて算術的に生成するように音生成演算を実行することにより,演算のオーバヘッドを小さくすることができるから,当初明細書に記載された技術的課題を解決するものである。 したがって,本件補正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 イ当初明細書に記載された「楽音」は,演奏情報に応じて複数の発音チャンネルのうちの1つに割り当てられ,波形が生成されて発音されるものであるから,その生成の方法によってのみ規定されるものであって,波形の具体的な中身(ピア- 7 -ノ音であるとか楽曲であるとか)には関わりなく規定されるものである。 したがって,具体的な個々の音について,いちいち当初明細書に記載がなくとも,上記の生成方法により規定される音であれば当初明細書に記載した事項の範囲内であるといえるから,そのような音を含んだ「音」として補正することが,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではないということはできない。 定される音であれば当初明細書に記載した事項の範囲内であるといえるから,そのような音を含んだ「音」として補正することが,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではないということはできない。 (2) 無効理由2について次のとおり,本件発明1及び7は,本件明細書に記載されたものであり,かつ,明確である。 ア無効理由2のア,イについて原告は,指定された音又は楽音が単一の場合や,「楽音」と「音」との関係について主張するが,無効理由1について判断したのと同様の理由から,本件発明1及び7は,本件明細書に記載されたものであり,明確である。 また,複数チャンネルの波形データのサンプルを混合して混合サンプルデータを生成する通常の音生成方法において,ある時点で1チャンネルのみの波形データのサンプルしか存在しない場合に,結果としてその1チャンネルのみの波形データのサンプルが混合サンプルデータとして生成されるのは当然であって,本件発明1及び7においてもそのようになるのは,当業者にとって明らかであるから,発明として明確である。 イ無効理由2のウについて請求項1の「算術的に」生成との記載は,波形データのサンプルの生成を,単に,例えば,本件明細書に記載されたようにCPUの演算により生成することを意味しているにすぎないと考えられる。「まとめて算術的に生成」についても,波形データを生成する演算は,当業者に周知の様々な演算が考えられるのであって,本件明細書の実施例に限定されるものではない。したがって,本件発明1が本件明細書に記載されたものではないということはできない。 また,請求項1の「まとめて」生成との記載は,他の発音チャンネルに切り換え- 8 -ることなく,同一の発音チャンネルにおいて「複数サンプル分」の楽音波形生成演算をすることを意味 ことはできない。 また,請求項1の「まとめて」生成との記載は,他の発音チャンネルに切り換え- 8 -ることなく,同一の発音チャンネルにおいて「複数サンプル分」の楽音波形生成演算をすることを意味すると請求項1の記載から理解することができるから,その技術内容は明確であり,発明は明確であるといえる。 ウ無効理由2のエについて本件明細書の記載によれば,本件発明1及び7は,その構成,特に第2のステップと第4のステップを備えることによって,複数の楽音波形サンプルの演算について1回だけ各発音チャンネルの準備処理を行えばよいようになったものであるといえる。したがって,本件発明1及び7の第4のステップは,各発音チャンネルの制御データを1回だけ用いて複数サンプルをまとめて生成することを意味していると解釈できるのであって,発明は明確であり,本件明細書に記載されたものであるといえる。 (3) 無効理由3についてア甲1公報に記載された甲1発明,本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 【甲1発明】音源装置を制御するCPUがバスを介してMIDIインターフェース,操作パネル,音源回路と接続されており,音源回路に設けられた音源チップは,バスを介してCPUから演奏情報を受信し,複数の時分割チャンネル(発音系統)を有し,受信した演奏情報に基づいて波形メモリにアクセスし波形データを読み出して楽音を形成するものであり,CPUは,MIDIインターフェースを介して各MIDIチャンネルに対応するMIDIデータを取り込み,該MIDIデータがノートオンイベントであれば,発音系統で空いているものがあるか否かを検索し,空いているものがあればその発音系統に対してMIDIデータを発音のためのパラメータとして入力して発音させる,音源装置の発音 トオンイベントであれば,発音系統で空いているものがあるか否かを検索し,空いているものがあればその発音系統に対してMIDIデータを発音のためのパラメータとして入力して発音させる,音源装置の発音処理動作。 - 9 -【一致点】指定された音を発生するための発生命令を発行する第1のステップと,指定された音を複数の発音チャンネルの1つに割り当て,割り当てたチャンネルに対応して該指定された音の制御データをレジスタに記憶する第2のステップと,前記レジスタに記憶された制御データに基づき各チャンネル毎の波形データのサンプルを算術的に生成するように前記各チャンネルで音生成演算を実行する第4のステップと,個々のチャンネルで生成された波形データのサンプルを各サンプル点毎に混合し,該各サンプル点毎の混合サンプルデータを生成する第5のステップと,各サンプリング周期毎に順次サンプル点の前記混合サンプルデータを順次出力する第6のステップとを具備するようにしたことを特徴とする音生成方法。 【相違点1】本件発明1は,「所定時間間隔で演算開始命令を発行する第3のステップ」を具備し,「各演算開始命令に応じて,各チャンネル毎の波形データの複数サンプルをまとめて算術的に生成するように前記各チャンネルで音生成演算を実行する」のに対し,甲1発明は,そのようなステップを有しない点。 【相違点2】第4のステップが,本件発明1では,「前記レジスタに記憶された制御データに基づき各チャンネル毎の波形データの複数サンプルをまとめて算術的に生成するように前記各チャンネルで音生成演算を実行する第4のステップであって,この音生成演算は,生成すべき該複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われる」のに対し,甲1発明は,「前記レジスタに記憶さ ルで音生成演算を実行する第4のステップであって,この音生成演算は,生成すべき該複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われる」のに対し,甲1発明は,「前記レジスタに記憶された制御データに基づき各チャンネル毎の波形データのサンプルを算術的に生成するように前記各チャンネルで音生成演算を実行する第4のステップ」ということはできるが,「複数サンプルをまとめて」生成するものではなく,「この音生成演算は,生成す- 10 -べき該複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われる」ものでもない点。 イ相違点1について原告は,甲1公報の第5図の発音処理を命じる命令が,本件発明1の第3のステップの「演算開始命令」に相当すると主張する。 しかしながら,甲1公報の第5図の発音処理を命じる命令は,CPU10が一定時間ごとに繰り返し実行するものではあるが,本件発明1のような各チャンネルごとの波形データの複数サンプルをまとめて生成する演算を開始する命令ではなく,MIDIチャンネル(「発音チャンネル」とは異なる)の情報を取り込み,MIDIイベントがあるか否かを判定し,ノートオンイベントがあれば空き系統に対し割り当てて発音を行うという動作を,全MIDIチャンネルに対して順次インクリメントしながら行うためのものである。甲1発明において,波形サンプルの生成は,空き系統に対し発音が割り当てられるたびに音源回路16によって行われる(第5図では,n35が対応する)のであって,第5図の発音処理を命じる命令によって行われるのではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,相違点1に係る本件発明1の構成は,甲2公報~甲7公報にも記載されておらず,周知技術でもないから,甲1発明において,そのような構成 い。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 また,相違点1に係る本件発明1の構成は,甲2公報~甲7公報にも記載されておらず,周知技術でもないから,甲1発明において,そのような構成を採用することが,当業者にとって容易に想到し得たということはできない。 ウ相違点2について原告は,コンピュータの情報処理技術に関する技術分野において,「時分割マルチタスク」,すなわち,複数のタスクを時分割処理でリアルタイム処理し,その各タスクがタスク群を構成するようにし,他のタスク群に切り換えずに当該タスク群を連続して実行することは,甲2公報~甲6公報に開示されているように周知慣用技術であり,これを同じ技術分野に関する甲1発明に適用することで,相違点2に係る本件発明1の構成は,当業者が容易に想到し得ると主張する。 - 11 -しかしながら,甲1発明は,波形データのサンプルの生成演算を,音源回路16の4個の音源チップで行うものであり,これらの音源チップはCPU10から演奏情報を受信してそれにより波形メモリ17をアクセスし波形データを受信する。これらの音源チップでの波形データのサンプルの演算が具体的にどのように行われるかについて,例えば,CPUが複数のタスクを実行することによりサンプルの生成を行うことなどについては,甲1公報には全く記載されていない。むしろ,甲1公報の音源チップは,ハードウェア構成により波形データを生成していると考えるのが自然である。 したがって,仮に,甲2公報~甲6公報に原告主張の周知慣用技術が開示されているとしても,タスクの実行によりサンプルの生成を行うものではない甲1発明に上記周知慣用技術を組み合わせることは全く想定できない。 また,原告は,甲7公報について,フレーム単位で記録されたPCMデータの再生時にフェード 実行によりサンプルの生成を行うものではない甲1発明に上記周知慣用技術を組み合わせることは全く想定できない。 また,原告は,甲7公報について,フレーム単位で記録されたPCMデータの再生時にフェードイン,フェードアウトを行う際に,数フレーム分のPCMデータをまとめて演算生成する技術的事項が開示されていると主張している。 しかしながら,甲7公報は,テープ上に記録されたPCMデータに対してフェードインなどを行うタイミングを指定するフラグをフレーム単位で記録しておき,このフラグに基づいて乗算する係数を算出し,再生されているPCMデータに対して乗算器により上記係数を乗算する技術的事項は開示しているが,フレーム単位で記録されたPCMデータの再生時にフェードイン,フェードアウトを行う際に,数フレーム分のPCMデータをまとめて演算生成する技術的事項は開示していない。 以上のとおりで,甲1発明について,相違点2に係る本件発明1の構成を採用することが,当業者にとって容易に想到し得たということはできない。 エ本件発明7についても,本件発明1と同様の理由から,当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 第3 原告主張の審決取消事由- 12 - 1 取消事由1(補正要件に関する判断の誤り)審決は,本件補正について,新規事項を追加するものではないと判断したが,次のとおり誤りである。 (1) 本件発明1及び7について,当初明細書に記載された技術的思想は,同時に発音すべき複数の楽音を各発音チャンネルに割り当て,各発音チャンネルを時分割処理(CPUが複数のタスクを同時に処理しているように見せるために,短時間でタスクを切り換えて処理することをいう。)で切り換えて各楽音の1サンプル分の楽音波形生成処理を行う場合の非効率,すなわち,その都度 CPUが複数のタスクを同時に処理しているように見せるために,短時間でタスクを切り換えて処理することをいう。)で切り換えて各楽音の1サンプル分の楽音波形生成処理を行う場合の非効率,すなわち,その都度準備処理が必要となるという非効率を解消するため,1つの発音チャンネルについて例えば100サンプル分をまとめて楽音生成処理することで,1サンプルごとに行われた準備処理を各発音チャンネルごとに1回に減少させることにあった。 というのも,同時に発音すべき楽音が複数ではなく,単一の楽音のみを発音するのであれば,発音チャンネルは1つあれば良く,これを時分割で切り換える必要もなく,したがって,1サンプル分の楽音波形生成ごとにその準備処理をするという非効率もないのであって,これを改善する手段を講じる必要はないからである。 また,当初明細書には,第1のステップにおいて指定される楽音が複数であることを前提とした記載のみが存在し,単一の楽音に関する記載は一切ない。 しかるに,本件補正により,当初明細書において対象とされていなかった単一の楽音を発生させるための楽音生成方法を包含することになったのであるから,この補正は新規事項の追加に当たる。 (2) 本件発明1について,当初明細書に記載された「指定された楽音」とは,演奏情報によって指定された楽音であり,演奏情報に応じて複数の発音チャンネルのうちの1つに割り当てられ,波形が生成されて発音されるものを意味するのであって,そのようなものである限り,楽器が奏でる音に限らず,銃声なども楽音に当たる。 これに対し,オーディオCDに録音された楽曲は,CD再生機で再生されてスピ- 13 -ーカ,イヤホン,ヘッドホンから発音されるが,その場合には,演奏情報は存在せず,「演奏情報に応じて複数の発音チャンネルのうちの1つに割り当て 録音された楽曲は,CD再生機で再生されてスピ- 13 -ーカ,イヤホン,ヘッドホンから発音されるが,その場合には,演奏情報は存在せず,「演奏情報に応じて複数の発音チャンネルのうちの1つに割り当てられ,波形が生成されて発音される」ことはない。 本件補正による本件発明1の「指定された音」は,「演奏情報によって指定される」との限定がなく,発音チャンネルの割当てが「演奏情報に応じて」行われるとの限定もないから,演奏情報との関係で定義される「楽音」以外の一般的な「音」全般を包含するものであって,新規事項の追加に当たる。 2 取消事由2(サポート要件及び明確性要件に関する判断の誤り)(1) 審決は,本件明細書に「単一の楽音」に関する記載があるかどうか,これに伴い本件発明1及び7が不明確かどうか,また,本件明細書に「楽音」以外の一般的な「音」が記載されているかどうか,これに伴い本件発明1が不明確かどうかについて,補正要件に関する判断と同様であるとして,サポート要件違反や明確性要件違反を否定した。 しかしながら,取消事由1で主張したのと同様の理由から,審決の判断は誤りである。 (2) 取消事由1で主張したのと同様に,本件明細書に記載された技術的思想は,同時に発音すべき複数の楽音が演奏情報で指定された場合に,時分割処理により各発音チャンネルを切り換えることによって生じる準備処理の回数を減少させることにあるから,当然,各発音チャンネルで楽音が生成されるのであって,これをサンプル点ごとに混合することは必須の工程といえる。しかるに,本件発明1で単一の楽音を指定した場合には,他の発音チャンネルにおいて楽音が生成されないから,混合もされないのであって,必須の工程が不要となる。したがって,本件発明1は明確ではない。 (3) 審決は,請求項1に記載された 指定した場合には,他の発音チャンネルにおいて楽音が生成されないから,混合もされないのであって,必須の工程が不要となる。したがって,本件発明1は明確ではない。 (3) 審決は,請求項1に記載された「算術的に」生成とは,波形データのサンプルの生成を,単に,例えば,本件明細書に記載されたようにCPUの演算により生成することを意味しているにすぎないと判断した。「CPUの演算」は,演算プ- 14 -ロトコルを工夫すればありとあらゆる演算が可能であるから,審決はそれらのすべてを「算術的演算」であるとしていることになる。 しかしながら,本件明細書に記載された「楽音生成のための演算」は,サンプリング周期,複数サンプル,サンプル点という技術用語が用いられていることから,ディジタルデータによる演算であることを示している。ディジタルデータとして楽音生成をする基本的な方法は,本件明細書に記載されたFナンバを加算する方法か,その変形例にすぎず,審決が述べるほど多種類ではない。 このように,本件明細書に記載された演算は限定されているにもかかわらず,請求項の記載は無限定であるから,本件発明1につきサポート要件違反はないとした審決の判断は誤りである。 3 取消事由3(容易推考性に関する認定・判断の誤り)(1) 一致点及び相違点の認定の誤りア本件発明1の「所定時間間隔で演算開始命令を発行する第3のステップ」は,「まとめて算術的に生成する」(第4のステップ)の前提を示すものにすぎない。 甲1公報(特開平4-51000号)の第5図の発音命令は,CPU10が一定時間ごとに繰り返し実行するものであるから,本件発明1の所定時間間隔で発行される演算開始命令に相当することは明らかである。 したがって,「所定時間間隔で演算開始命令を発行する第3のステップと,」が一致 ごとに繰り返し実行するものであるから,本件発明1の所定時間間隔で発行される演算開始命令に相当することは明らかである。 したがって,「所定時間間隔で演算開始命令を発行する第3のステップと,」が一致点として認定されるべきであるのに,審決は,これを一致点として認定せず,本件発明1の第4のステップに関する技術的事項を第3のステップに持ち込み,相違点1として認定したものであって,この点に関する審決の認定は誤りである。 イ甲1公報の音源チップは,ハードウェア構成により波形データを生成していると考えるのが自然であり,4個の音源チップがそれぞれ時分割による発音系統を8個有しているため,32の楽音を同時に発音するものである。この音源チップにより楽音波形データを生成する際に,仮に1サンプル分の波形データの生成に- 15 -当該1サンプル分のサンプリング周期よりも長い時間を要するとすると,各音源チップごとに8倍の時間がかかることになるので,同時に32の楽音を発音することは不可能になる。しかるに,甲1発明は,32の楽音を同時に発音することが可能であるから,その楽音波形データの生成が当該サンプル周期よりも短い時間内に行われるものであることは,当業者にとって自明のことである。 したがって,審決が,第4のステップに係る「この音生成演算は,生成すべきサンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われること」を一致点として認定せず,相違点2として,甲1発明では,「この音生成演算は,生成すべき該複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われる」ものでもないことを認定したのは誤りである。 (2) 相違点2に関する判断の誤りア審決は,相違点2について,「甲1発明は,波形データのサンプルの生成演算を,音源回路16の4個の音源 行われる」ものでもないことを認定したのは誤りである。 (2) 相違点2に関する判断の誤りア審決は,相違点2について,「甲1発明は,波形データのサンプルの生成演算を,音源回路16の4個の音源チップで行うものであり,これらの音源チップはCPU10から演奏情報を受信してそれにより波形メモリ17をアクセスし波形データを受信する。これらの音源チップでの波形データのサンプルの演算が具体的にどのように行われるかについて,すなわち,例えば,CPUが複数のタスクを実行することによりサンプルの生成を行うことなどについては,甲1公報には全く記載されていない。むしろ,甲1公報の音源チップは,ハードウェア構成により波形データを生成していると考えるのが自然である。…タスクの実行によりサンプルの生成を行うものではない甲1発明に上記周知慣用技術を組み合わせることは全く想定できない。」(23頁28行~24頁5行)と判断した。 しかしながら,甲1発明は,演奏情報であるMIDIメッセージに基づき指定された複数の楽音を同時に発生させるための音源装置に関するものであり,指定された複数の楽音をそれぞれ複数の発音チャンネル(発音系統)の1つに割り当てた上で,最大32の楽音を同時に発生させることができるものである。甲1発明は,4個の音源チップを備え,各音源チップには8個の発音系統を備えており,8個の発- 16 -音系統は,1つの演算回路を時分割で切り換えるものである。音源装置は,不定期に発生する演奏情報による演奏処理はその都度行うこととし,これに基づく音源処理を分散して定期的に行うようにした上で,演奏処理を割込みで処理することが通例であり,甲1発明の音源装置においても同様であって,CPU10が一定時間ごとに発音処理動作を繰り返し実行するのである。すなわち,発音処理動作はC うようにした上で,演奏処理を割込みで処理することが通例であり,甲1発明の音源装置においても同様であって,CPU10が一定時間ごとに発音処理動作を繰り返し実行するのである。すなわち,発音処理動作はCPU10が制御しているのであり,定期的に実行される発音処理動作はCPU10からの発音処理命令に基づくものである。この発音処理命令は,CPU10からのタスク命令に他ならない。この定期的な発音処理動作(甲1公報の第5図)では,それまでの間のMIDIメッセージのノート・オン受信により発音が継続している状態であれば,発音系統(発音チャンネル)に対し各パラメータを与え発音(n35)するから,発音処理命令というタスクの実行により各発音系統で楽音の波形サンプルの生成を行うものに他ならない。なお,審決は,甲1発明の音源装置がハードウェア構成により波形データを生成していると考えられると指摘するが,そうであるとしても,その処理はディジタル処理であり,当該物理的なハードウェア資源を時分割で8個の発音系統にしているものであるから,CPU10が複数のタスク(複数の楽音を同時に発音するタスク)を実行することにより複数の楽音の波形サンプルの生成を行うものと理解する妨げにはならない。 したがって,審決の上記判断は誤りである。 イ情報処理の技術分野において,時分割処理によりマルチタスクを実行する際に,所定の時間ごとに他のタスクへの切換えをせずに,あるタスク処理をまとめて実行することで全体の処理を効率化するという技術的事項は,甲2公報から甲6公報に開示されるように,周知技術であった。 本件発明1及び7の技術的思想は,各発音チャンネルを時分割処理で切り換えて1サンプル分の楽音波形生成処理を行う際に生じる準備処理の無駄を解消する点にあるところ,甲1発明の4個の音源チップにおい 。 本件発明1及び7の技術的思想は,各発音チャンネルを時分割処理で切り換えて1サンプル分の楽音波形生成処理を行う際に生じる準備処理の無駄を解消する点にあるところ,甲1発明の4個の音源チップにおいて,それぞれ8個の発音系統を1サンプルずつ時分割処理により切り換えて処理する場合,楽音生成のためのパラメ- 17 -ータをその都度切り換える必要があり,このパラメータの切換処理は,本件発明1及び7の準備処理に相当する。このように,甲1発明には,パラメータの切換処理が無駄な準備処理であるという本件発明1及び7と共通する課題があり,また,情報処理の技術分野で時分割処理を行う点で上記周知技術と共通するのであるから,甲1発明に上記周知技術を適用する十分な動機があり,相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,容易に想到し得る。本件発明7についても同様である。 (3) 小括以上のとおりで,本件発明1及び7の容易推考性を否定した審決の判断は誤りである。 第4 被告の反論 1 取消事由1に対し(1) 当初明細書に記載された技術的思想は,「…楽音波形サンプルの演算処理を1サンプルずつ生成するようにしていたため,…準備処理に多くのCPUの演算時間が費やされ(オーバヘッドが大きくなる)…」(段落【0004】)という課題を解決するため,「…100サンプル分まとめてこのステップにより処理が行われる。…この単位処理を繰り返して行うようになっているため,…処理が高速化されている。」(段落【0063】)という点にある。原告の主張するような「複数の楽音の発音チャンネルへの割当て」は,上記の課題の要因ではなく,上記の技術的思想とは関係がない。 そもそも,当初明細書には,「…MIDIイベントが1つMIDI受信部において受信される…」(段落【0030】)との記載 ルへの割当て」は,上記の課題の要因ではなく,上記の技術的思想とは関係がない。 そもそも,当初明細書には,「…MIDIイベントが1つMIDI受信部において受信される…」(段落【0030】)との記載があり,第1のステップにおいて「複数の音」だけでなく「単一の音」が指定される場合も記載されている。また,実施例として「複数の楽音」の同時発生が可能な構成を説明していたとしても,そこに内在している発明が「複数の楽音」の同時発生に限られなければならない道理はない。「複数の楽音」の同時発生が可能な構成であっても,音の発生処理は1音- 18 -1音ごとに行われるのであるから,単一の「音」に関する記載がないとはいえない。 (2) 当初明細書に記載されている「楽音」とは,「音楽を構成する素材として」用いられる「音」であり,元より「音」としての意義を有している。したがって,「指定された楽音」を「指定された音」と補正することは,当初明細書に記載された事項の範囲内の補正である。 2 取消事由2に対し(1) 本件明細書に「単一の楽音」に関する記載があるかどうかや,本件発明1の「音」と本件明細書に記載された「楽音」との関係については,取消事由1に対する反論と同様である。 (2) 本件発明1は,複数あるチャンネルに対して,第1のステップでは,1つの発音チャンネル分の「発生命令」だけが発行される場合もあれば,全部あるいは一部の複数チャンネル分の「発生命令」が同時に発行される場合もあることから,これらをまとめて「指定された音」と表現しているものであり,何ら不明瞭な点はない。1つの発音チャンネルのみで発音がなされるときは,他の発音チャンネルは「開店休業」になるだけで,そのような自明の理まで本件明細書で説明すべき理由はない。 「複数サンプルをまとめて算術的に生成す い。1つの発音チャンネルのみで発音がなされるときは,他の発音チャンネルは「開店休業」になるだけで,そのような自明の理まで本件明細書で説明すべき理由はない。 「複数サンプルをまとめて算術的に生成する」等の構成により課題解決を図る本件発明1の技術的思想は,複数チャンネルのうち1チャンネルを使用する場合にも使えるのであって,その意義は明瞭である。 (3) 「算術的に生成」について,原告は,審決のように広い意味を有すると認定すると,そのような膨大な範囲は本件明細書に記載されていないと主張する。 しかしながら,本件明細書において,膨大なすべての実施例を網羅的に記載する必要はない。 3 取消事由3に対し(1)ア甲1公報(特開平4-51000号)の第5図の「発音処理動作」は,空いている発音系統(発音チャンネル)を検索して(n31),空いているものが- 19 -あればその発音系統に対してMIDIデータを発音のためのパラメータとして入力して発音させる(n35),すなわち発音系統の割当処理を行っているのであり,本件発明1の第2のステップに相当する処理である。これに対し,本件発明1の第3のステップで発行される「演算開始命令」は,「割当処理」のための命令ではなく,次の第4のステップに音生成演算を実行させるための命令である。 また,甲1発明では,発音系統に対してMIDIのノートオンイベントを割り当てることが決定されると,第5図のステップn35で「その発音系統に対してMIDIデータを発音のためのパラメータとして入力して発音させる」命令が音源回路16に対して1回だけ発行されるのであり,「所定時間間隔で演算開始命令を発行する」のではない。 したがって,審決が,本件発明1の第3のステップの構成を相違点1として認定したことに誤りはない。 イ甲1発明では 回だけ発行されるのであり,「所定時間間隔で演算開始命令を発行する」のではない。 したがって,審決が,本件発明1の第3のステップの構成を相違点1として認定したことに誤りはない。 イ甲1発明では,複数サンプル分の波形の生成は,複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間と同じ時間内で行われる。 これに対し,本件発明1は,生成すべき複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われる。 したがって,「複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い」ことを相違点2とした審決の認定に誤りはない。 (2)ア上記(1)アで主張したとおり,甲1発明では,発音系統に対してMIDIのノートオンイベントを割り当てることが決定されると,第5図のステップn35で「その発音系統に対してMIDIデータを発音のためのパラメータとして入力して発音させる」命令が音源回路16に対して1回だけ発行されるのであり,それでCPU10の処理は終了する。このように,甲1発明のCPU10は,発音を開始する直前に,発音処理命令というタスクを1回だけ実行しているにすぎず,「楽音の波形サンプルの生成」は,そのような発音処理命令が出された直後から,音源回路16によって実行されるのであって,CPU10は「楽音の波形サンプルの生- 20 -成」に直接関与していない。 したがって,「タスクの実行によりサンプルの生成を行うものではない甲1発明には,上記周知慣用技術を組み合わせることは全く想定できない」とした審決の判断に誤りはない。 イ原告は,「甲1発明の4個の音源チップにおいても,それぞれ8個の発音系統を1サンプルずつ時分割処理により切り換えて処理する場合,楽音生成のためのパラメータをその都度切り換える必要があり」と主張する。 しかしながら,甲1公報 音源チップにおいても,それぞれ8個の発音系統を1サンプルずつ時分割処理により切り換えて処理する場合,楽音生成のためのパラメータをその都度切り換える必要があり」と主張する。 しかしながら,甲1公報には,そのようなことは記載されていない。すなわち,甲1発明では,発音開始時(発音開始直前)に1回だけ第5図のステップn35でMIDIデータ(楽音生成のためのパラメータ)を発生させる。音源回路16では,与えられたMIDIデータ(楽音生成のためのパラメータ)をチャンネルに対応して記憶しておき(このように記憶することが「発音割当て」の実体である),以後は,この記憶したMIDIデータ(楽音生成のためのパラメータ)を使用してそれぞれのチャンネルで楽音波形を発生する。チャンネルごとの時分割処理においては,それぞれに対応して記憶してあるMIDIデータ(楽音生成のためのパラメータ)を,それぞれのタイミングで使用するだけであり,CPUで要求されるような準備処理は一切不要である。 以上のとおりで,甲1発明には,パラメータの切換処理が無駄な準備処理であるという課題は存在しない。 甲2公報~甲6公報に開示されているのは,汎用の「時分割マルチタスク」技術であって,個々のタスクの内容は示されておらず,相違点1,2のいずれも開示されていないのであるから,これを甲1発明と組み合わせても,相違点1,2に係る本件発明1の構成には至らない。また,甲1発明のCPU10は,「発音割当処理」という1つのタスクを実行しているにすぎず,複数のタスクを実行していないので,甲2公報~甲6公報に記載された時分割処理によるマルチタスクの技術的事項を甲1発明に適用することは容易ではない。 - 21 -本件発明7についても,本件発明1と同様である。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(補 れた時分割処理によるマルチタスクの技術的事項を甲1発明に適用することは容易ではない。 - 21 -本件発明7についても,本件発明1と同様である。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(補正要件に関する判断の当否)について(1) 当初明細書(甲28)には,次の記載がある。 「本発明は,演算処理装置を備える汎用処理装置により楽音を生成できるようにした楽音生成方法に関するものである。」(段落【0001】)「従来の楽音生成装置は,通常,MIDI(MusicalInstrumentDigitalInterface),鍵盤,あるいはシーケンサ等からの演奏情報を入力する演奏入力部,楽音波形を生成する音源部,入力した演奏情報に応じて前記音源部を制御するマイクロプロセッサ(CPU)等から構成されていた。CPUは,入力した演奏情報に応じて,チャンネルアサイン,パラメータ変換等の音源ドライバ処理(演奏処理)を実行し,音源部の割り当てたチャンネルに変換したパラメータと発音開始指示(ノートオン)を音源部に供給する。音源部は,LSI(LargeScaleIntegratedcircuit)等の電子回路(ハードウェア)で構成され,供給されたパラメータに基づいて楽音波形を生成する。このため,楽音生成装置は楽音を生成するための専用機器となってしまい,楽音を生成する時には専用の楽音生成装置を用意する必要があった。」(段落【0002】)「そこで,これを解決するために,CPUによりアプリケーションプログラムを実行し,アプリケーションプログラムに基づいて楽音を生成する楽音生成方法が提案されている。 この楽音生成方法においては,楽音を生成するアプリケーションプログラムのほかに他のアプリケーションプログラムを実行させることができ,他の機能も実行させることの を生成する楽音生成方法が提案されている。 この楽音生成方法においては,楽音を生成するアプリケーションプログラムのほかに他のアプリケーションプログラムを実行させることができ,他の機能も実行させることのできる汎用の演算処理装置により実行することができるものである。」(段落【0003】)「ところで,演算処理装置(CPU)を備える汎用の装置によりアプリケーションプログラムを実行させて楽音を生成する場合,従来は1サンプリング周期(デジタル・アナログ変換器の変換タイミング)毎に各チャンネルの楽音波形サンプルを発音チャンネル分演算生成するようにしている。従って,CPUは各発音チャンネルの処理を行う場合,まず,前回の当該発音チャンネルの演算に用いた各種レジスタ値をメモリからCPUのレジスタに読み出す等の準備処理が行われる。また,当該発音チャンネルの楽音生成処理後には次回の処理のため,前記レジスタ値をメモリに書き込む必要がある。すなわち,各発音チャンネルの楽音波形サンプルの演算処理を1サンプルずつ生成するようにしていたため,楽音を生成する楽音生成処理以外の,準備処理に多くのCPUの演算時間が費やされ(オーバヘッドが大きくなる),演算効率が悪くなり応答や楽音生成処理が遅くなるという問題点があった。」(段落【0004】)「そこで,本発明はCPUのオーバヘッドを少なくすることのできる楽音生成方法を提供することを目的としている。また,本発明は一時的に処理量が増加しないようにした楽- 22 -音生成方法を提供することを目的としている。」(段落【0007】)「このような本発明によれば,複数の楽音波形サンプルの演算について1回だけ各発音チャンネルの準備処理を行えば良いため,オーバヘッドが小さくすることができる。このため,生成された楽音の質を向上することができる うな本発明によれば,複数の楽音波形サンプルの演算について1回だけ各発音チャンネルの準備処理を行えば良いため,オーバヘッドが小さくすることができる。このため,生成された楽音の質を向上することができると共に,同時発音チャンネル数を増加することができる。また,楽音波形サンプルの演算をMIDIイベントが入力される毎に行うようにすると,演算が分散されるようになり,発音初期処理による発音数の減少を防止することができる。さらに,生成中の発音チャンネルの内,楽音のレベル(AEG波形)が十分に減衰したチャンネルは,その時点より演算対象から外されて,非発音チャンネルとなるようにしている。」(段落【0013】)(2) 原告は,当初明細書に記載された,楽音波形を1サンプルずつ生成すると準備処理の負担が重くなるという課題は,同時に複数の音又は楽音が各発音チャンネルに割り当てられ,各発音チャンネルを切り換える場合に生じるのであって,単一の音又は楽音を発音する場合には,そのような課題は生じないから,当初明細書に記載された発明の技術的思想は,単一の音又は楽音を発生させる楽音生成方法を包含しないものであり,本件発明1及び7についてこれを包含するように補正することは新規事項の追加に当たる旨主張する。 しかしながら,上記(1)の記載によれば,当初明細書に記載された発明は,演算処理装置を備える汎用処理装置により楽音を生成できるようにした楽音生成方法に関するものであり(段落【0001】),演算処理装置(CPU)が,アプリケーションプログラムを実行させて楽音を生成することに加えて,その他のアプリケーションプログラムを実行することも予定されているのであって(段落【0003】,【0004】),楽音を生成するアプリケーションプログラムの専属ではない。そうすると,単一の音又は楽音の の他のアプリケーションプログラムを実行することも予定されているのであって(段落【0003】,【0004】),楽音を生成するアプリケーションプログラムの専属ではない。そうすると,単一の音又は楽音の波形を1サンプルずつ生成する場合であっても,1サンプリング周期の間に他のアプリケーションプログラム等の処理が行われる事態に備えて,その都度準備処理(事後処理も含む。)を実行する必要があるのであって,準備処理の負担が重くなるという課題は生じ得る。したがって,複数サンプル分をまとめて生成することで準備処理の負担を軽減するという当初明細書に記載された発明の技術的思想(段落【0013】)は,単一の音又は楽音を生成する場合- 23 -においても発想されるものである。 そして,当初明細書には,「…MIDIイベントが1つMIDI受信部において受信されると…」(段落【0030】)との記載があり,楽音が1つしか指定されない場合があり得ることが示されている。当初明細書の実施例に複数の楽音が指定された場合の処理が記載されているとしても,複数の楽音は1つ1つの楽音から構成されているものであって,複数の楽音が指定された場合に1つの楽音が指定された場合の記載が含まれるものと理解することができる。 したがって,「複数」の楽音を「単一」の音又は楽音と補正することは,新規事項の追加には当たらない。 (3) 原告は,当初明細書に記載された「楽音」は演奏情報により指定されたものであるのに対し,本件発明1の「音」についてはそのような限定がないから,請求項1において「楽音」を「音」と補正することは新規事項の追加に当たる旨主張する。 しかし,複数サンプル分をまとめて生成することで準備処理の負担を軽減するという当初明細書に記載された発明の技術的思想(段落【0013】)は,請求項1 することは新規事項の追加に当たる旨主張する。 しかし,複数サンプル分をまとめて生成することで準備処理の負担を軽減するという当初明細書に記載された発明の技術的思想(段落【0013】)は,請求項1における「指定」の対象が演奏情報によるものか,それ以外の何らかの情報によるものかとは無関係であり,当業者が,演奏情報以外の何らかの情報により音が指定された場合について,当初明細書に記載された発明の技術的思想の範囲内に含まれないと解すべき根拠はないから,演奏情報による楽音の指定を,何らかの情報による音の指定に補正することは,当初明細書に記載された事項の範囲内であるといえるのであり,「楽音」を「音」とする補正は,新規事項の追加には当たらない。 2 取消事由2(サポート要件及び明確性要件に関する判断の当否)について(1) 本件明細書(甲11)の記載は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明の段落【0008】~【0012】(【課題を解決するための手段】であって,特許請求の範囲の記載とほぼ同一の記載がされた段落である。)を除いて,当初明細書の記載と同じであるから,明細書の記載について取消事由1に対して説示したところ- 24 -は,本件明細書の記載においても同様である。 そして,取消事由2(1)の主張は,取消事由1と同様であるから,取消事由1で判示したのと同様の理由により,原告の当該主張を採用することはできない。 (2) 取消事由2(2)における原告の主張は,本件発明1の技術的思想が,複数の楽音を指定する場合に限定されることを前提とするものである。 しかしながら,上記(1)のとおり,本件明細書の記載は当初明細書の記載と基本的に同じであるから,取消事由1で当初明細書に記載された発明の技術的思想について認定したのと同様に,本件発明1の技術的思想は,複数サンプル 上記(1)のとおり,本件明細書の記載は当初明細書の記載と基本的に同じであるから,取消事由1で当初明細書に記載された発明の技術的思想について認定したのと同様に,本件発明1の技術的思想は,複数サンプル分をまとめて生成することで準備処理の負担を軽減するという点にあり,かつ,単一の音又は楽音を生成する場合においても発想されるものである。 そして,本件発明1の第1のステップで単一の音が指定された場合には,第5のステップの「混合」の対象が1チャンネル分の波形データにとどまり,その1チャンネル分の波形データが第6のステップの「混合サンプルデータ」となることは,当業者であれば容易に理解し得るから,本件発明1は明確である。 (3) 原告は,本件発明1の「算術的に生成」について,審決の判断によれば,行われる演算が無限定となるのに対し,本件明細書に記載された演算は,ディジタルデータとして楽音生成するものであって限定されているから,本件発明1についてサポート要件違反がある旨主張する。 しかしながら,本件発明1の構成からすれば,そこにいう「算術的に生成」は,「指定された音」(ステップ1)について,制御データがレジスタに記憶され(第2のステップ),レジスタに記憶された制御データに基づいて「波形データ」を生成するための「音生成演算」(ステップ4)として行われるのであって,原告が主張するような無限定なものではないから,本件発明1について原告が主張するようなサポート要件違反はない。審決も,「波形データのサンプルの生成」に係る演算であることを前提とした上で,具体的な演算の内容については,周知の様々な演算が考えられると判断しているのであって(12頁18行~27行),演算の対象・- 25 -目的が無限定であると判断しているものではない。 原告の主張は,審決の判断を正解 については,周知の様々な演算が考えられると判断しているのであって(12頁18行~27行),演算の対象・- 25 -目的が無限定であると判断しているものではない。 原告の主張は,審決の判断を正解しないものであって,採用することができない。 (4) 以上のとおりで,取消事由2も理由がない。 3 取消事由3(容易推考性の存否に関する認定・判断の当否)について(1) 一致点・相違点の認定の当否についてア原告は,甲1公報(特開平4-51000号)の第5図の発音処理動作が,本件発明1の所定時間間隔で発行される演算開始命令に相当すると主張する。 本件発明1の構成によれば,第3のステップの「演算開始命令」は,これに応じて第4のステップで「波形データ」を「生成するように…音生成演算」を行うために発行されるものであり,第3のステップの「所定時間間隔」も,第4のステップの「複数のサンプルをまとめて…生成」に対応するものと解されるから,割り当てられた音の発音が継続する限り,所定時間間隔で複数回発行されるものと認められる。 これに対し,甲1公報によれば,甲1発明において,第5図の発音処理動作は,CPU10が,MIDIデータの入力の有無を判断し,MIDIデータとしてノートオンイベントが入力された場合には,空いている発音系統(発音チャンネル)を割り当て,そこにパラメータを与えて発音させるという一連の動作を,一定時間ごとに繰り返し実行するものであるが(5頁右上欄2行~左下欄5行,第5図),波形データを読み出して楽音を形成するのは,CPU10ではなく,音源チップである(3頁左上欄12行~17行)。このため,CPU10が発音処理動作を行う「一定時間ごと」とは,MIDIデータの入力の有無を判断する間隔を指すものと解され,本件発明1の音生成演算を実行させるため ある(3頁左上欄12行~17行)。このため,CPU10が発音処理動作を行う「一定時間ごと」とは,MIDIデータの入力の有無を判断する間隔を指すものと解され,本件発明1の音生成演算を実行させるための「所定時間間隔」とは異なる。また,CPU10の発音処理動作における「パラメータを与えて発音させる」という動作も,音源チップに対して楽音の形成を開始させる命令であって,1つの音につき発音開始前に1回発行されるものと認められ,発音開始後も所定時間間隔で複数回発行されることが予定される本件発明1の「演算開始命令」とは異なる。 - 26 -したがって,審決が,本件発明1の第3のステップに係る構成を甲1発明との一致点として認定せず,これを相違点1として認定したことに誤りはない。 イ原告は,審決が,本件発明1の第4のステップに係る「この音生成演算は,生成すべきサンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われること」を一致点として認定せず,相違点2として,甲1発明では,「この音生成演算は,生成すべき該複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われる」ものでもないことを認定したのは誤りであると主張する。 確かに,甲1公報によれば,甲1発明は,4個の音源チップにより32の楽音を同時に発音できるものであるから,1つの楽音波形データの生成は,1サンプリング周期よりも短い時間内に行われるものと認められる。したがって,原告の主張は,本件発明1の第4のステップに係る一致点として「この音生成演算は,生成すべきサンプル分のサンプリング周期よりも短い時間内で行われること」が認定されるべきであるという限度において理由がある。 ただし,上記の点が一致するとしても,本件発明1の第4のステップにおける音生成演算は,「各チャンネル毎の グ周期よりも短い時間内で行われること」が認定されるべきであるという限度において理由がある。 ただし,上記の点が一致するとしても,本件発明1の第4のステップにおける音生成演算は,「各チャンネル毎の波形データの複数サンプルをまとめて算術的に生成する」ものであり,「生成すべき該複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間」よりも短い時間内で行われるのに対し,甲1発明は,そのような構成を備えていないから,この点で,なお相違する。審決が,相違点2として,甲1発明について,「複数サンプルをまとめて」生成するものではなく,「この音生成演算は,生成すべき該複数サンプル分のサンプリング周期を合計した時間よりも短い時間内で行われる」ものでもないと認定した趣旨も,上記の相違を認定したものであるから,審決の相違点2の認定に誤りはない。 したがって,相違点2の認定に誤りはないから,相違点1,2について当業者が容易に想到し得ないことを理由とする審決の結論に影響を及ぼすものではない。 (2) 相違点2の判断の当否について- 27 -ア原告は,甲1発明について,甲1公報の第5図に記載された発音処理動作が,CPUの実行するタスクに相当し,その実行により各発音系統で楽音の波形サンプルの生成を行うものである旨主張する。 しかしながら,原告の主張によれば,甲2公報~甲6公報に開示された「タスクを切り換えずに連続実行する」という技術的事項を適用することで,複数サンプルをまとめて生成するという本件発明1の構成が容易に想到し得るというのであるから,そこにいう「タスク」は,波形データの生成のための音生成演算である必要がある。しかるに,上記(1)アで説示したとおり,甲1発明では,波形データの生成自体は音源チップというハードウェア構成によって実行されるのであって,甲1公報 データの生成のための音生成演算である必要がある。しかるに,上記(1)アで説示したとおり,甲1発明では,波形データの生成自体は音源チップというハードウェア構成によって実行されるのであって,甲1公報の第5図に記載されたCPU10が実行する発音処理動作は,音源チップに対して楽音の形成を「開始させる」命令にすぎないから,上記の「タスク」には該当しない。したがって,甲1発明はCPU10がタスクの実行によるサンプルの生成を行うものではないとした審決の判断に誤りはない。 イ上記アで説示したとおり,甲1発明は,CPU10がタスクの実行によりサンプルの生成を行うものではない。また,甲1発明の音源チップは,波形データの形成を行う専用のハードウェアであるから,これが時分割で複数の発音系統の楽音波形を形成しているとしても,CPUが複数のタスクを順次実行する「(時分割による)マルチタスク処理」ということはできない。 このように,甲1発明は,「(時分割による)マルチタスク処理」により,複数の発音チャンネルの楽音波形を生成するものではないから,甲2公報から甲6公報に原告主張の「マルチタスク処理」に係る周知技術が開示されていると仮定したとしても,当業者にとって,これを甲1発明に適用することは容易に想到し得ないというべきであって,審決の判断に誤りはない。 また,本件発明7についても,本件発明1と同様である。 したがって,取消事由3も理由がない。 - 28 -第6 結論以上のとおりであるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官塩月 こととして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官塩月秀平 裁判官池下朗 裁判官古谷健二郎 (平成23年(行ケ)第10292号判決別紙)当事者目録 原告株式会社アクセル 訴訟代理人弁護士飯田秀郷栗宇一樹大友良浩隈部泰正和氣満美子戸谷由布子辻本恵太林由希子森山航洋船橋茂紀遠山光貴西山彩乃訴訟復代理人弁護士杉浦秀奥津啓太 被告ヤマハ株式会社 訴訟代理人弁護士内藤義三大橋厚志田中成志平出貴和 株式会社 訴訟代理人弁護士 内藤義三 大橋厚志 田中成志 平出貴和 板井典子 山田徹 森修一郎 弁理士 飯塚義仁 大場弘行

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