- 1 -平成28年11月24日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第36973号商標権侵害行為差止等請求事件口頭弁論の終結の日平成28年7月19日判決原告一般社団法人日本遺体衛生保全協会同訴訟代理人弁護士渡辺春己原田伸武藤行輝被告一般社団法人全国遺体保全協会同訴訟代理人弁護士菅生剛弘主文原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,被告の事業において「一般社団法人全国遺体保全協会」との名称を使用してはならない。 被告は,被告のパンフレットに別紙標章目録記載1の標章を付して頒布してはならない。 被告は,被告の封筒に同目録記載2の標章を付して頒布してはならない。 被告は,被告のホームページに同目録記載3の標章を掲載してはならない。 被告は,被告の法人登記のうち「一般社団法人全国遺体保全協会」との名称- 2 -の抹消登記手続をせよ。 被告は,上記目録記載1の標章を付したパンフレットを廃棄せよ。 被告は,同目録記載2の標章を付した封筒を廃棄せよ。 被告は,被告のホームページから同目録記載3の標章を抹消せよ。 被告は,原告に対し,521万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成28年1月9日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,別紙商標目録記載の登録商標(以下「原告商標」という。)の商標権者であり,「一般社団法人日本遺体衛生保全協会」との名称(以下「原告名称」という。)で活動する原告が,被告に対し,被告による「一般社団法人全国遺体保全協会」との名称(以下「被告名称」という。)及び別紙標章目録記載1~3の各標章(以下,それぞれを「被告標章1」などとい 称」という。)で活動する原告が,被告に対し,被告による「一般社団法人全国遺体保全協会」との名称(以下「被告名称」という。)及び別紙標章目録記載1~3の各標章(以下,それぞれを「被告標章1」などといい,これらを「被告各標章」と総称する。)の使用が原告の商標権を侵害し,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当すると主張して,①商標法36条1項又は不正競争防止法3条1項に基づき(選択的請求。以下同じ。),被告名称及び被告各標章の使用の差止めを,②商標法36条2項又は不正競争防止法3条2項に基づき,被告の法人登記のうち名称部分の抹消登記手続,被告各標章を付したパンフレットの廃棄等を,③民法709条,商標権38条2項又は不正競争防止法4条,5条2項に基づき,損害賠償金521万円及びこれに対する不法行為の後である平成28年1月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める訴訟である。 前提事実当事者原告は,日本におけるエンバーミング(遺体衛生保全)の適正な普及と実施のために自主基準を制定してこれを遵守するとともに,そのために必要な教育,研究及び活動を行うことを目的としてエンバーミングに関する事業を- 3 -行う一般社団法人である。 被告は,大災害時における自治体等への遺体保全に関連する技術・人的協力及び自治体への応援の全国体制ネットワーク作り並びに遺体保全に関連する業界の健全な発展と国民生活の安心に寄与することを目的として各種の遺体保全に関する事業を行う一般社団法人である。 原告の名称等ア原告は,その事業に原告名称「一般社団法人日本遺体衛生保全協会」を用いている。原告名称の英語名は「InternationalFuneralScienceAssociationinJapan」,略称は「IFSA」で 名称「一般社団法人日本遺体衛生保全協会」を用いている。原告名称の英語名は「InternationalFuneralScienceAssociationinJapan」,略称は「IFSA」である。 イ原告は,原告商標につき以下の商標権を有している。 商標登録番号第5516092号出願日平成24年3月14日(商願2012-19409)登録日平成24年8月17日商品及び役務の区分並びに指定商品及び指定役務第16類書籍,雑誌,新聞,その他の印刷物第45類遺体の消毒・殺菌・腐敗防止及び修復,その他の遺体の衛生保全,遺体の衛生保全に関する情報の提供,通夜・葬儀・法要のための施設の提供,通夜・葬儀・法要の執行に関する情報の提供被告の名称等ア被告は,平成22年3月15日の設立以来,その事業に被告名称「一般社団法人全国遺体保全協会」を用いている。被告名称の英語名は「JapanASaveTechnologyAssociation」,略称は「JASTA」である。 イ被告は,被告標章1をパンフレットに付して,被告標章2を封筒に付して,被告標章3をホームページに掲載して,それぞれ使用している。 争点及び争点に関する当事者の主張- 4 -商標権侵害の成否(原告の主張)ア被告は,遺体の保全に関して被告名称及び被告各標章を使用しており,これは原告商標の指定役務についての使用に当たる。 イ被告名称及び被告各標章は,以下のとおり,原告商標に類似する。 原告商標は,横書きの「日本遺体衛生保全協会」との記載及びその下部の欧文字の記載により構成されるが,欧文字部分は極めて小さいこと,原告が主に日本国内で活動しており,一般的な取引者・需要者は欧文字部分に着目しないことからすれば,漢字部分が支配的な印象を与えるので,「日本遺体衛生保全 構成されるが,欧文字部分は極めて小さいこと,原告が主に日本国内で活動しており,一般的な取引者・需要者は欧文字部分に着目しないことからすれば,漢字部分が支配的な印象を与えるので,「日本遺体衛生保全協会」が原告商標の要部となる。 被告名称及び被告各標章のうち「一般社団法人」の部分は,法人の形式を示すにすぎず,識別力を有しない。また,被告標章1及び3のうち欧文字部分は,「全国遺体保全協会」の文字より小さく,日本国内の業者と想定される取引者の間では識別力がない。したがって,被告名称及び被告各標章のうち識別力を有するのは「全国遺体保全協会」の部分のみであり,これを要部として原告商標と比較すべきである。 「日本遺体衛生保全協会」と「全国遺体保全協会」は,いずれも「日本全国を代表し,遺体に関して何らかの事後的な保全処置をする業務を行う業者を統括して,何らかの公益活動を行っている団体」という同一の観念を生じさせる。また,横書きの漢字で構成され,遺体,保全及び協会の語を含むので,外観及び称呼の共通性が認められる。なお,衛生の部分は原告商標のみが有するが,両者に共通する語に挟まれており,特段の識別力はない。また,全国と日本は同様の観念を想起させる極めて類似した語である。 したがって,観念,外観及び称呼を全体的に考察すると,被告名称及び被告各標章は原告商標に類似する。 - 5 -ウ以上によれば,被告が被告名称及び被告各標章を使用する行為は,指定役務についての登録商標に類似する商標の使用に該当し,商標権侵害を構成する(商標法37条1号)。 (被告の主張)原告商標には原告の英語名が併記されており,この部分を含めて比較すれば,原告商標と被告名称及び被告各標章は明らかに非類似である。 さらに,「日本遺体衛生保全協会」と「全国遺体保全協会」の部分のみを比較する 標には原告の英語名が併記されており,この部分を含めて比較すれば,原告商標と被告名称及び被告各標章は明らかに非類似である。 さらに,「日本遺体衛生保全協会」と「全国遺体保全協会」の部分のみを比較するとしても,両者は,日本と全国の相違及び衛生の有無により外観及び称呼の上で容易に識別できる。両者からは別の団体名が観念され,役務提供者の区分を明らかにできるから,類似性は認められない。 不正競争の有無(原告の主張)ア①原告がその前身である団体と通算して20年以上にわたり「日本遺体衛生保全協会」との名称で活動を継続していること,②日本国内でエンバーミング事業を行う者は全て原告の会員であること,③原告はエンバーミングの基本書を出版しており,原告を特集する記事が葬祭業界誌にしばしば掲載されるなど,メディアに取り上げられていること,④原告が日本有数の葬祭サービス総合展示会に毎年出展していることからすれば,原告名称ないしその要部「日本遺体衛生保全協会」は,葬祭サービス事業者を主とする取引者の間に広く認識されている。 イ原告名称と被告名称及び被告各標章は,要部の外観,称呼及び観念が共通し,類似している。そのため,原告と被告の役務の間に混同が生じ,又は生じるおそれがあり,実際に上記展示会において多くの参加者が原告と被告を同じ団体であると勘違いしていた。 ウ以上によれば,被告による被告名称及び被告各標章の使用は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当し,原告は,これにより営業上の利- 6 -益を侵害されているので,その使用の差止め等を求めることができる。 (被告の主張)原告名称と被告名称及び被告各標章は,いずれも外観,称呼及び観念が異なり,類似するとはいえない。また,葬儀業界では原告及び被告はそれぞれの略称「IFSA」及び「JASTA」で通用して (被告の主張)原告名称と被告名称及び被告各標章は,いずれも外観,称呼及び観念が異なり,類似するとはいえない。また,葬儀業界では原告及び被告はそれぞれの略称「IFSA」及び「JASTA」で通用しており,提供する役務の内容,対価の額等が異なるので,混同は生じていない。 したがって,被告の行為は不正競争に当たらない。 原告の損害額(原告の主張)被告による商標権侵害及び不正競争は少なくとも過失によるものであり,原告はこれにより以下の合計521万円の損害を被った。 ア被告の利益額474万円被告は,平成22年3月15日の設立時から本件訴訟が提起された平成27年12月25日までの間,被告の会員から入会金及び年会費として合計474万円を徴収しており,同額を下らない利益を得た。この額は商標権侵害又は不正競争による原告の損害額と推定される(商標法38条2項,不正競争防止法5条2項)。 イ弁護士費用47万円(被告の主張)争う。 第3当裁判所の判断 争点 ア(商標権侵害の成否)について原告は,原告商標と被告名称及び被告各標章が類似すると主張するので,以下,検討する。 ア本件商標は,別紙商標目録記載のとおり,上下2段の横書きの文字列から成り,上段は同一の大きさ及び書体の漢字で「日本遺体衛生保全協会」- 7 -と,下段はこれより小さな斜体の欧文字で「InternationalFuneralScienceAssociationinJapan」と書したものである。 イ本件商標と被告名称「一般社団法人全国遺体保全協会」を比較すると,欧文字及び「一般社団法人」の有無が明らかに異なっており,この点は被告標章2も同様である。また,被告標章1及び3は,「一般社団法人」の文字を含む上,「JapanASaveTechnologyAssoci 一般社団法人」の有無が明らかに異なっており,この点は被告標章2も同様である。また,被告標章1及び3は,「一般社団法人」の文字を含む上,「JapanASaveTechnologyAssociation」との欧文字が組み合わされている点で原告商標と相違する。したがって,原告商標と被告名称及び被告各標章は,外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似するとは認められない。 加えて,取引の実情をみると,証拠(甲3~8,9の1及び2,10,11の3,15)及び弁論の全趣旨によれば,原告は上記アの欧文字部分の頭文字である「IFSA」の語をその書籍,ウェブサイト,展示会のディスプレイ等に用いていること,原告を紹介する雑誌記事の冒頭に「IFSA(日本遺体衛生保全協会)」と表記されていること,被告はそのパンフレット,ウェブサイト等に英語名の略称である「JASTA」の文字と図形を組み合わせたロゴマークを使用していることが認められる。そうすると,原告及び被告は,それぞれ役務の提供に当たり,原告商標あるいは被告名称及び被告各標章に加えて,「IFSA」又は「JASTA」の表示を用いており,取引者の間で原告及び被告がそれぞれ提供する役務は区別されているものと解することができる。 したがって,原告商標と被告名称及び被告各標章はいずれも類似しないと判断することが相当である。 ウこれに対し,原告は,原告商標の要部は「日本遺体衛生保全協会」,被告名称及び被告各標章の要部は「全国遺体保全協会」であり,これらを比較すれば両者は類似する旨主張する。 そこで,念のため,「日本遺体衛生保全協会」と「全国遺体保全協会」- 8 -の類否につき検討する。まず,外観及び称呼についてみると,前者は日本,遺体,衛生,保全及び協会という5個の,後者は全国,遺体,保全及び協会という4個 衛生保全協会」と「全国遺体保全協会」- 8 -の類否につき検討する。まず,外観及び称呼についてみると,前者は日本,遺体,衛生,保全及び協会という5個の,後者は全国,遺体,保全及び協会という4個の,いずれも平易な2字熟語を結合したものであり,遺体,保全及び協会という3語がその順序で用いられている点で共通するが,共通部分は「日本遺体衛生保全協会」の10字中の6字,17音中の10音にとどまる。また,これらに接した者の注意を引きやすい冒頭の語が異なる上,後者は前者の中央にある衛生の2字(4音)を欠いている。そうすると,外観及び称呼の類似性の程度は低いと解される。次に,観念についてみると,上記外観及び称呼上の相違点である日本と全国の語は観念の面ではある程度共通するといい得るものの,衛生の語の有無を異にすることに照らせば,両者はそれぞれ「日本遺体衛生保全協会」,「全国遺体保全協会」という別個の名称の団体を想起させるものであって,観念上相紛れることはないと考えられる。さらに,取引の実情についてみても,本件の証拠上,原告と被告の名称ないし標章が類似するために両者の提供する役務の出所に誤認混同が生じていることはうかがわれない。 そうすると,原告の主張する要部について比較しても,これらが類似すると認めることはできない。 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,商標権侵害に基づく原告の請求はいずれも理由がない。 争点 (不正競争の有無)について原告は,原告名称「一般社団法人日本遺体衛生保全協会」ないし「日本遺体衛生保全協会」が原告の商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)として広く認識されており,これと被告名称及び被告各標章が類似する旨主張する。しかし,「日本遺体衛生保全協会」と「全国遺体保全協会」が類似すると認められないことは商標の 不正競争防止法2条1項1号)として広く認識されており,これと被告名称及び被告各標章が類似する旨主張する。しかし,「日本遺体衛生保全協会」と「全国遺体保全協会」が類似すると認められないことは商標の類否につき前記1ウにおいて判示したとおりであり,この理は不正競争防止法2条1項1号における商品等表示の類否に- 9 -関しても同様に妥当すると解されるから,原告の上記主張は失当というほかない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,不正競争防止法に基づく原告の請求はいずれも理由がない。 結論 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官長谷川浩二裁判官中嶋邦人裁判官藤原典子は差し支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官長谷川浩二
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