【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 控訴代理人は、「原判決中、控訴人勝訴の部分を除きその余を取消す。被控訴人 は控
主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人は、「原判決中、控訴人勝訴の部分を除きその余を取消す。被控訴人は控訴人に対し別紙目録記載の建物を明渡すべし。訴訟費用は第一、二審とも、被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、(一)、 控訴人が被控訴人に対して本件建物の明渡を求める理由は、(イ)原判決事実摘示並びに後段に記載されたような事由に基き被控訴人に対し本件賃貸借契約の解約申入をなしたこと及び(ロ)被控訴人が原判決事実摘示の如く本件建物の内、物置の部分を、賃貸人の承諾を得ることなく、Eに無断転貸したことの理由により、右賃貸借契約を解除したことの両者を主張するものである、(二)右賃貸借契約の解約申入を正当とする事由は、原判決事実摘示に記載されたものの外、次の事由を併せ主張する、即ち(イ)控訴人は現住家屋をAから賃借していたところ、昭和二十年頃以来、右Aより、同人の息子に嫁を迎えること上なり、これを分家させるため、右家屋を必要とする関係上、同家屋を明渡して貰いたいとの要求を度々受けていたが、特に昭和二十五年九月十八日にはAから厳重な明渡の督促があつたものであつて、控訴人としては今や右の要求を容れて同家屋を明渡すの外はないという状態にある、(ロ)右Aは控訴人の現住家屋の近くに空箱その他を積み重ね、塀を近接して設け、控訴人住宅の敷地を狭ばめているので、到底控訴人の居住に堪えない状態にある、(ハ)控訴人の現住家屋は建坪二十一坪に過ぎないのに、控訴人の外、家族五名がこれに居住し、しかも近く長男に嫁を貰うことになつているので、兎角手狭である上に、営業用の糸繭を買入れるに必要な 状態にある、(ハ)控訴人の現住家屋は建坪二十一坪に過ぎないのに、控訴人の外、家族五名がこれに居住し、しかも近く長男に嫁を貰うことになつているので、兎角手狭である上に、営業用の糸繭を買入れるに必要な場所若しくは店舗がなく、またこれら商品を貯蔵すべき倉庫もないところから、買受けた繭は他の倉庫に保管を委託するの外なく、このため保管料保険料等に多大の出費を要するものである、(ニ)これに反して被控訴人は延坪四十四坪の広大なる本件建物に家族九名と共に居住しているものであるからその居住の点からみても、相当余裕があるものであり、しかも被控訴人は楽器販売業を主とし、傍ら繊維製品をも商つているものであるが、その営業は余り振わないから、本件建物の如き広大なる店舗を必要とするものではない、(ホ)被控訴人は賃貸人の承諾を得ることなく、前記物置をEに無断転貸するが如き不信の行為をなしているものである、(ヘ)被控訴人は控訴人の承諾を経ることなく本件建物の一部を日本共産党a支部の事務所としてBに貸与し共産党員の使用を容認しているものである、(ト)a町においては現在一等地なる停車場通りに売家空家があるから、被控訴人が本件建物を明渡して他に移転するについては、何等の支障はない、(チ)被控訴人は自己所有家屋を、二十二万円にて他に売却し、相当なる資産を有しているに拘らず本件建物の賃料が低廉なるに乗じて不当に右建物の明渡を拒否しているものである、(り)被控訴人は前所有者のCから本件建物の買受方をまず交渉されこれを拒絶したとき、右建物を他に売却し、その買取人から明渡の請求を受けても異議はない旨を言明したことがある、(ヌ)控訴人は本件建物を買受け後、被控訴人に対してその明渡を求めたが、これに応じないので、事案を穏かに解決するため、買入代金と同額にて被控訴人に売却する旨を申込み、 はない旨を言明したことがある、(ヌ)控訴人は本件建物を買受け後、被控訴人に対してその明渡を求めたが、これに応じないので、事案を穏かに解決するため、買入代金と同額にて被控訴人に売却する旨を申込み、誠意をつくしたにも拘らず、被控訴人は故なくその申出を拒絶したものであると述べ、被控訴代理人において、本件解約申入が正当なる事由に基くものであることは否認すると述べた外、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。 証拠として、控訴代理人は、原審証人C原審並びに当審証人D、Aの各証言、原審並びに当審における控訴人本人訊問の結果、当審における検証の結果を援用し乙号各証の成立を認め、被控訴代理人は乙第一号証の一ないし三を提出し、原審並びに当審における証人E、Fの各証言及び被控訴人本人訊問の結果、当審における検証の結果を援用した。 理由 被控訴人が別紙目録記載の建物を、元その所有者であつた訴外Cから期限の定めなく賃借し、昭和二十三年当時その賃料が一ヶ月金百二十五円であつたことは、当事者間に争いなく、当審における被控訴人本人の供述によると、被控訴人が本件建物を賃借したのは、昭和七年一月であることが明かである。而して控訴人が右Cから本件建物を買受け、昭和二十三年八月一日より前示賃貸借における賃貸人たる地位を承継し、こゝに控訴人と被控訴人との間に右建物の賃貸借が存続するに至つたことは、当事者間に争いのないところである。 第一、右賃貸借に対する解約申入の適否について。 弁論の全趣旨に徴すれば控訴人は被控訴人に対し、本件建物の明渡を求めるため、昭和二十三年八月二十五日本庄簡易裁判所に調停を申立てることによつて、右賃貸借契約に対する解約の申入をなし、被控訴人はその第一回調停期日である同年九月八日右解約の申入を了知したことが明かで るため、昭和二十三年八月二十五日本庄簡易裁判所に調停を申立てることによつて、右賃貸借契約に対する解約の申入をなし、被控訴人はその第一回調停期日である同年九月八日右解約の申入を了知したことが明かである。 よつて右解約申入につき正当なる事由が存すかどうかについて考える。 (一) 控訴人が右解約申入をなすに至つた事情については、原審並びに当審における証人Aの証言及び控訴人本人訊問の結果を綜合すると控訴人は昭和八年以来現住家屋を訴外Aから賃借し、同所において糸繭商を営んできたが、その間賃貸人に対し何等誠意を欠くが如き事態を生じなかつたところ、昭和二十一年頃から右家屋の明渡を求められていたので、その移転先について考慮中、偶々前記Cから本件建物の買受方を申込まれたため、こゝに控訴人はその営業所並びに住宅に充てる目的から右建物を買受けるに至り、自己使用の必要上、被控訴人に対し右家屋の賃貸借解約の申入をなし、その明渡を求むることゝなつた事情が認められる。 従つて控訴人がAから現住家屋の明渡を請求されている場合自己使用のため賃借人たる被控訴人に対し、本件建物の明渡を求めるのは一応その必要性があるものの如くではあるが、しかしこの場合においても、その必要性は、Aの明渡請求の当否若しくはその執拗性の如何等に照らして考慮さるべきものである。而してAが控訴人に対し現住家屋の明渡を求める理由については、前掲証人Aの証言によると、Aは現在a町ab番地に居住し履物商を営んでいるが、同家屋は僅かに四部屋しかなく、家族八名に較べて甚だ手狭であるため、二男三男に嫁を迎えてもこれを容れる余地もない関係上、控訴人の現住家屋を明渡して貰い、こゝに二男三男両夫婦を居住させたい考えから、従来控訴人に対しその明渡を求めてきたのであるが、愈々近くその嫁を迎えることゝなつたので、最近は 容れる余地もない関係上、控訴人の現住家屋を明渡して貰い、こゝに二男三男両夫婦を居住させたい考えから、従来控訴人に対しその明渡を求めてきたのであるが、愈々近くその嫁を迎えることゝなつたので、最近は度々控訴人に右家屋の明渡を求めるに至つたという事情が認められる。なるほどAの現住家屋は手狭であるから、同所において二男三男の嫁を迎えて共に居住するということは、甚だしく困難である事情は諒承されるけれども、他面控訴人の事情についてみるに、前述の如く、同人は昭和八年以来右家屋に居住し、糸繭商を営んできて、こゝに生活と営業の安定を得たものであり、その間賃貸人に対し何等誠意の欠けたこともなかつたのであるから、かような事情を比較衡量して考えると、Aがその二男三男の嫁を迎えるためという理由のみによつて控訴人に対し右家屋の明渡を求めることは、Aの恣意的事情によるものと認めるの外なく、これを正当の事由に基くものということはできない。従つて控訴人としては当然有効にその明渡請求を拒否し得るものといわざるを得ない。かゝる場合、控訴人として、右明渡請求あるに拘らず安然としてその居住をつづけることは心苦しいものであるという心情は充分諒とせられるけれども、控訴人が右明渡請求を容認することは、その必然の結果として、被控訴人に本件建物の明渡を請求するの外はないということになるから、控訴人が当然拒否し得べき右明渡請求を、そのまゝ漫然として容認し、その不利益なる結果を被控訴人に転嫁して、同人に本件家屋の明渡を求めんとすることは妥当ではない。 更にAより明渡請求の執拗性の如何についてみるに、Aが昭和二十一年頃から最近に至るまで度々口頭を以て、控訴人にその居住家屋の明渡を求めていることは、前述の如くであるが、原審における証人Aの証言によると、同人は控訴人に対しでき得る限り速かに右 に、Aが昭和二十一年頃から最近に至るまで度々口頭を以て、控訴人にその居住家屋の明渡を求めていることは、前述の如くであるが、原審における証人Aの証言によると、同人は控訴人に対しでき得る限り速かに右家屋を明渡して貰いたい意向ではあつたが、訴訟を提起してまで、明渡の請求を強行しようというような考えのなかつたことが認められ、その間Aから控訴人に対し強硬なる明渡請求の手段に出でた事迹を窺うに足る資料はないから、右明渡請求はAにおいて迅速にその実現を期せんとするが如き苛烈強硬なる態度によつてなされたものとは認められず、従つて控訴人に対する明渡請求は、同人の心理に強圧を加えるが如き執拗さを以てなされたものとは認められない。右認定に反する当審証人Aの証言、原審並びに当審における控訴人本人の供述はにわかに措信し難く、他に該認定を覆すに足る確証はない。 以上の説明によつて明かなように、Aが控訴人に対しその居住家屋の明渡を求めることは正当の事由によるものでなく、控訴人としては有効にこれを拒否し得るものであり、しかもその明渡請求も執拗に行われたものではないから、控訴人が、Aから明渡を請求されたので移転先に充てるため本件建物を買入れこゝに被控訴人に対しても同建物の明渡を求めるものであるという理由のみによつては、直ちに本件解約申入の正当性を是認することはできない。 (二) 次に原審並びに当審における証人D、Fの各証言、控訴人及び被控訴人の各本人訊間の結果を綜合すると、本件建物の前所有者であるCは、右建物を控訴人に売渡す以前において、差配のDをしてまず賃借人たる被控訴人に対し、その買入方をすゝめたところ、被控訴人もこれを希望し、所有の土地家屋を買却して約二十万円の資金を用意したが、何分にもその売買代金が三十万円であつてこれが減額の折衝もまとまらなかつたため、被 に対し、その買入方をすゝめたところ、被控訴人もこれを希望し、所有の土地家屋を買却して約二十万円の資金を用意したが、何分にもその売買代金が三十万円であつてこれが減額の折衝もまとまらなかつたため、被控訴人もその買入代金に窮した結果、売買は成立するに至らず、遂に代金三十万円を以て右建物が控訴人に売却された事実並びに控訴人は右建物を買受けた後、被控訴人に対しその明渡を求めたが、応じないので、更に同建物を原価の三十万円にて被控訴人に買入方を要望したけれども、被控訴人にも買入資金が不足していたため、その売買の交渉がまとまらなかつた事実を認めることができる。該認定を覆すに足る確証はない。してみると、被控訴人の居住を尊重する建前から、前所有者Cは右建物を控訴人に売却する以前において、まず被控訴人にその買取方をすゝめ、また控訴人もその買入代金の原価にて被控訴人に右家屋を売渡す旨を申入れるなど、C並びに控訴人において、明渡を求めるまでには、相当情誼をつくしてきたものであることは諒承されるけれども、被控訴人としても右家屋を買入れるについては、土地家屋を売却してその買受資金の準備につくしてきたものであるが、ただ、C若しくは控訴人の希望する売買代金を全部調達することができなかつたため、売買は遂に成立するに至らなかつたものであるから被控訴人において右売買を受諾しなかつたことについては、相当事情を酌量すべき余地があつたものであつて、被控訴人の態度に誠意を欠くものがあつたとして、これを以て解約申入の正当性を裏づける理由となすことはできない。 (三) 更に控訴人は、「被控訴人が右Cからの右建物の売買申入を拒絶した際、被控訴人は、同建物が他に売却されて、その買受人から明渡を請求されても異議がないと言明したものである」と主張するけれども、当審証人Dの証言によると、Cの 人が右Cからの右建物の売買申入を拒絶した際、被控訴人は、同建物が他に売却されて、その買受人から明渡を請求されても異議がないと言明したものである」と主張するけれども、当審証人Dの証言によると、Cの差配であるDが被控訴人対し本件建物の買受方を折衝し遂にその売買の交渉が不調となつた際、被控訴人の代理人であるBが右Dに対し、「被控訴人において右建物を買受けることのできない以上他に売却されても致し方がないから、被控訴人としてはその買取人に引続き賃借方を交渉するより外に方法はないだろう」といつていた事実が認められるにとどまり、進んで被控訴人が控訴人の主張するような言明をしたということについては、原審並びに当審における控訴人本人の供述によつて認められることは、被控訴人が本件建物を他に売却されても仕方がないと言明したということに過ぎないのであつて、この事実から、控訴人の主張するように、被控訴人において本件建物が他に売却されその者から明渡の請求を受けたときは、これを承認すると言明した趣旨であるとは、到底認められないばかりでなく、控訴人の提出援用する各証拠によつても、右控訴人の主張事実は認められない。従つて控訴人のこの点に関する主張は採用できない。 (四) よつて進んで本件建物の使用を必要とする双方の事情について審究する。 (イ) 原審並びに当審における控訴人本人訊問の結果によると、控訴人がAから賃借して現在居住している家屋は、建坪二十一坪であつて、控訴人はこれに家族五人とともに居住して、糸繭商を営んでいるが、手狭のため営業用の糸繭を貯蔵する場所が不足するときは、他に倉庫を借受けてこれを保管するの外なく、また家屋の構造の関係から営業の規模を広げるためにも制約を受けることの多い事実を認めることができる。しかし同家屋には、営業用の糸繭を買入れるに必要な店 きは、他に倉庫を借受けてこれを保管するの外なく、また家屋の構造の関係から営業の規模を広げるためにも制約を受けることの多い事実を認めることができる。しかし同家屋には、営業用の糸繭を買入れるに必要な店舗となるべき場所がないとの事実は、これを認めるに足る証拠はたい。 (ロ) しかしながら、控訴人の居住家屋の附近に前記Aが空箱その他を積み重ね、更に塀を近接して設け同家屋の敷地を狭ばめているので、控訴人としては到底右家屋に居住できないような状態になつていると、控訴人は主張するけれども、かゝる事実を認めるに足る確証はない。 (ハ) 原審並びに当審における証人Fの証言、被控訴人本人の供述、当審における検証の結果並びに弁論の全趣旨を綜合すると、本件建物はa町における繁華街たるa町大通りに面しているものであつて、被控訴人は昭和七年一月以来これに居住し、主として楽器販売業を営むの外、兼ねて洋品雑貨類を商い、家族九名を擁してその生計を立てゝいるものであるが、本件建物の内、木造瓦葺二階建建坪二十四坪二階二十坪の家屋については、その階下表通りに面した土間及び座敷は営業用の店舗として使用し、残余の階下八畳の間一室、階上八畳の間一室、六畳の間二室及び五畳の間一室は、控訴人夫婦、長女夫婦孫三人、次女、三女、及び四女の外、女中一人の居住に充てられており、木造瓦葺平家建物置建坪十二坪五合の建物の一部には転借人たるEが居住して、ラヂオ電気器具の販売業を営んでおる事実が認められる。該認定を覆する足る確証はない。 以上認定の各事実を綜合して考えると、被控訴人が昭和七年一月以来本件家屋に居住し、久しきにあたり同所において営業を持続してきたものであるばかりでなく、右家屋はa町における繁華街に面して、営業上の地の利を占めているのであるから、若し被控訴人にして他所に移転するの已む 屋に居住し、久しきにあたり同所において営業を持続してきたものであるばかりでなく、右家屋はa町における繁華街に面して、営業上の地の利を占めているのであるから、若し被控訴人にして他所に移転するの已むなき事態に立ち到らんか、その営業上被るべき損害の測るべからざる状態にあることは、充分察知し得るところであつてしかも現時家屋払底の折柄、他に適当なる家屋を求むることが至難事に属することは明日であるから、被控訴人をして右家屋の明渡をなさしめることは、その営業の基礎をも危殆ならしめる結果ともなることは火をみるよりも明かである。 これに比して控訴人は昭和八年以来、現住家屋に居住してきたものであつて、この間家屋の手狭のため、営業上種々なる不便を生じ、事業経営上においても少なからざる不利益を被つたであろうことは、よく諒承されるけれども、兎に角く控訴人としては久しきにわたつて、同所で営業を持続し得てきたものであつて、ただ地の利を占め、しかも相当の広さを有する本件建物に移住することができれば、事業上多大の利益を生すべきことは疑を容れないが、控訴人が現住家屋においてそり営業を継続して行けば、営業の基礎を危くするほどにまで甚大なる損害を被むるものと認むべき資料はない。かような観点から考えると被控訴人がその営業を継続して行くうえにおいて、本件建物を必要とすることは、到底控訴人の比ではないことが明かである。 <要旨>しかるところ借家法において賃借人の利益のために保障せんとするところは、単に家屋居住自体の安定のみ</要旨>にとどまらす、右居住に伴い生ずる営業上の場所的利益をも保護せんとする趣旨であることは疑を容れないから叙上の場合において、右営業上の場所的利益の保障という観点に立つて、これを一般社会通念に照らして考えると、控訴人は被控訴人に対し本件建物賃貸借契約の解 も保護せんとする趣旨であることは疑を容れないから叙上の場合において、右営業上の場所的利益の保障という観点に立つて、これを一般社会通念に照らして考えると、控訴人は被控訴人に対し本件建物賃貸借契約の解約申入をなすにつき正当なる事由を有しないものといわなければならない。 もつとも前段認定の事実並びに弁論の全趣旨から考えると、本件家屋は被控訴人家の居住者の員数に比していささか広きに過ぎるような感じがないわけでもないが、控訴人家において現住家屋がその家族の居住にも堪え得ないほど狭隘であるとの事実を明認し得る資料はなく、また控訴人家において近く息子の嫁を迎えることになつているという事情は、これを認めるに足る証拠がないばかりでなく元来本件の如く、専ら営業用の店舗という観点から、関係当事者間の使用利益の比較衡量をなすを相当とする場合においては、その居住人員と家屋の広狭の比例というが如きことは、その比例が甚しく常規を逸するものでない限り、解約申入の正当性を判断するについて、さまで重要な資料となるものではない。 なお控訴人は、(一)被控訴人は賃貸人の承諾を得ないで本件建物の内、物置の部分をEに無断転貸したという事実、(二)被控訴人は控訴人の承諾を経ることなく本件建物の一部を日本共産党a支部の事務所としてBに貸与し、共産党員の使用を容認しているという事実、(三)被控訴人の営業成績は振わないから、本件の如き広い店舗を必要とするものでないという事実、(四)a町においては現在一等地なる停車場通りに売家空家があるから被控訴人が本件建物を明渡して他に移転するについては何等の支障はないという事実、並びに(五)被控訴人は自己所有家屋を他に二十二万円にて売却し相当なる資産を有しているに拘らず本件建物の賃料が低廉なるに乗じ、不当にも右建物の明渡に応じないものであるという事 の支障はないという事実、並びに(五)被控訴人は自己所有家屋を他に二十二万円にて売却し相当なる資産を有しているに拘らず本件建物の賃料が低廉なるに乗じ、不当にも右建物の明渡に応じないものであるという事実を掲げて、本件解約申入の正当性を裏書せんとするものであるが、前記(一)の点については、被控訴人がEに無断転貸したものではないことは、後段において説示する通りである、前記(二)の点については、当審における証人Fの証言並びに被控訴人本人訊問の結果によれば、被控訴人は控訴人の承諾を得ることなく、Bに本件建物の座敷の一部を、英語通信教授の事務所として、約六ケ月ほど貸与したことはあるが、別に賃料をとつたものでもない事実が認められるにとどまり、それ以上にわたつて控訴人の主張するような事実を認めるに足る確証はなく、敍上の如く座敷の一部を短期間にわたり一時使用を許したというようなことは、よしや控訴人の諒解を得なかつたとしても、賃借人の不信行為として強くこれを非難すべき性質のものとは考えられないから、該事実を以て解約申入の正当性を裏づける理由とすることはできない、前記(三)については、被控訴人の営業成績が振わないというが如き事情が直ちに本件建物の明渡請求を正当づける事由となすには足りない、前記(四)については、a町において、被控訴人がその営業の基礎を危くすることなく従前の営業を継続し得べき適当なる売家空家があるということは、証拠上これを認めることができないばかりでなく、仮りにかような家屋があつたとしても、被控訴人の資産状態からみて、容易にこれを入手し得るや否やは疑問である、最後に前記(五)の点については、被控訴人において控訴人主張の如き動機から、不当に本件建物の明渡を拒否しているものと認むべき資料はない。 従つて以上(一)ないし(五)の主張は採用できない。 である、最後に前記(五)の点については、被控訴人において控訴人主張の如き動機から、不当に本件建物の明渡を拒否しているものと認むべき資料はない。 従つて以上(一)ないし(五)の主張は採用できない。 その他控訴人の援用にかゝる各証拠を以てするも、右解約申入の正当性を肯定するに足る資料はない。 しからば右解約申入は正当なる事由に基くものとは認められないから、控訴人の本件賃貸借契約は解約申入によつて終了に帰したものであるとの主張は採用することができない。 第二、無断転貸を理由とする賃貸借解除の適否について。 被控訴人が昭和二十三年一月頃より本件建物の内、木造瓦葺平家建物置建坪十二坪五合の一部を、Eに転貸してきたことは、被控訴人の認めるところであり、控訴人が右転貸は当時の賃貸人たるCの承諾を得なかつたものであるとの理由により、被控訴人に対して、前示調停の申立をなすことによつて、本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をなしたことは、弁論の全趣旨に徴して明かである。 よつて被控訴人は右転貸について、当時の賃貸人であるCの承諾を得たものであるかどうかについて検討するに、原審並びに当審における証人E、Fの各証言及び被控訴人本人訊問の結果を綜合すると、被控訴人は本件建物の賃料は余りに高額に失するものと考え、当時の賃貸人なるCの差配として右建物の賃貸借関係の一切を処理し得る権限をもつていたDに対し、賃料の減額方を交渉した際、同人より、家賃を減額なることには応じられないけれども、前記物置を適当に改造して他に転貸することは承認するとの諒解を得ていたものであるが、その後昭和二十二年十月頃遠縁にあたるEが住居に困惑して、右物置の貸与方を懇請してきたので、被控訴人もその依頼を容れて右物置の一部を転貸することになつたところ、賃貸人との間には、前述の如く既に転貸の の後昭和二十二年十月頃遠縁にあたるEが住居に困惑して、右物置の貸与方を懇請してきたので、被控訴人もその依頼を容れて右物置の一部を転貸することになつたところ、賃貸人との間には、前述の如く既に転貸の承諾を得ていた関係から、この際改めて賃貸人の諒解は得なかつたが、Eにおいてその営業並びに居住の必要上、右物置に改造工事を加えていたとき、右Dもこれを目撃しながら、敢て異議を述べなかつた事実が認められる。右認定に反する原審証人C、原審並びに当審証人Dの各証言、原審並びに当審における控訴人本人の供述は、にわかに措信し難く、他に該認定を覆すに足る確証はない。 以上の事実から考えると、被控訴人は右物置を改造してEに転貸することにつき、予め当時の賃貸人たるCの承諾を得ていたものといわなければならないから、右転貸借は適法になされたものである。 従つて右転貸借を以て賃貸人の承諾を得なかつたものとして、本件賃貸借契約を解除せんとする意思表示は、その効果を生ずるに由なく、控訴人の右無断転貸を理由とする賃貸借契約解除の主張もまた採用することができない。 果してしからば、控訴人が被控訴人に対し、本件建物の明渡を求める請求は、いすれの事由からみるも、失当であるから、本訴請求は排斥を免れたいものとする。 従つてこれと同趣旨に出でた原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条に則り主文の通り判決する。 (裁判長判事渡辺葆判事浜田潔夫判事牛山要)
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