主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(1) 被告Aは,三浦市に対し,4800万2782円及び内2809万5851円に対する平成12年9月30日から完済まで,内1990万6931円に対する平成13年10月4日から完済まで,それぞれ年5分の割合による金銭を支払え。 (2) 被告株式会社三浦海業公社は,三浦市に対し,4257万3051円及び内2785万3903円に対する平成12年12月3日から完済まで,内1471万9148円に対する平成13年10月4日から完済まで,それぞれ年5分の割合による金銭を支払え。 (3) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (4) 仮執行宣言 2 被告ら主文と同旨第2 事案の概要本件は,神奈川県三浦市の住民である原告らにおいて,三浦市が,被告株式会社三浦海業公社に派遣した市の職員に対し,給与を支給したことが違法な公金の支出に当たるとして,地方自治法242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの)に基づき,三浦市長の地位にあった被告Aに対し,支給した給与相当額の損害賠償を求めるとともに,被告公社に対し,市が支給した給与相当額を不当に利得したとして,その返還を求めた事案である。 第3 基礎となる事実(以下の事実は,争いのない事実又は記載した証拠ないし弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。) 1 当事者(1) 原告らは,いずれも,三浦市(以下「市」という。)の住民である。 (2) 被告Aは,昭和60年6月29日から平成1 の全趣旨により容易に認められる事実である。) 1 当事者(1) 原告らは,いずれも,三浦市(以下「市」という。)の住民である。 (2) 被告Aは,昭和60年6月29日から平成13年6月まで,三浦市長の地位にあった者である。 (3) 被告株式会社三浦海業公社(以下「被告公社」という。)は,沿岸地域の開発整備事業の事業化等に関する調査,企画及び立案並びに水産業,漁港に関連する施設,商業施設,文化施設,スポーツ施設及びレジャー施設等の整備,管理,運営及び賃貸等を目的として,平成3年12月21日に設立された株式会社である〔乙1号証〕。 被告公社は,その資本金4億円のうち,26パーセントを市が,25パーセントを神奈川県(以下「県」という。)がそれぞれ出資し,その余を三浦市内の漁業,水産業関係の企業及び団体等が出資して設立された,いわゆる第三セクターである。被告公社の設立以降,三浦市長がその代表取締役の地位に就いている。 2 職員の派遣(1) 被告Aは,三浦市長として,平成3年から同13年3月まで,被告公社と協議の上,毎年3名から5名の市の職員を被告公社に派遣し,被告公社は,これらの派遣職員を受け入れ,同社の業務に従事させた(以下,平成11年7月から同13年3月までの派遣を「本件職員派遣」といい,この派遣に係る職員を「本件派遣職員」という。)。この派遣期間中,本件派遣職員は,議会対応等の一定の事務を行った以外は,市の事務には従事しなかった〔乙6号証,丙3号証及び証人Eの証言〕。 この際,被告Aは,本件派遣職員に対し,三浦市職員の職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和32年三浦市条例第20号。以下「本件職専免条例」という。)2条3号に基づき,当該職員の地方公務員法(以下「地公 ,被告Aは,本件派遣職員に対し,三浦市職員の職務に専念する義務の特例に関する条例(昭和32年三浦市条例第20号。以下「本件職専免条例」という。)2条3号に基づき,当該職員の地方公務員法(以下「地公法」という。)35条の規定に基づく職務専念義務を免除する(以下「本件職務専念義務の免除」という。)とともに,三浦市職員の給与に関する条例(昭和30年三浦市条例第36号。以下「本件給与条例」という。)11条に基づき,当該職員が被告公社で勤務する範囲について,勤務しないことについての承認をした(以下「本件承認」という。)。 (2) 本件職専免条例2条柱書は,「職員は次の各号の一に該当する場合においては,あらかじめ任命権者又は,その委任を受けた者の承認を得て,その職務に専念する義務を免除されることができる。」と規定し,同条1号は「研修を受ける場合」,同条2号は「厚生に関する計画の実施に参加する場合」,同条3号は「前二号に規定する場合を除く外市長が定める場合」と規定している〔乙3号証〕。これに関し,市は,「三浦市職員の職務に専念する義務の特例に関する条例第2条第3号の市長が定める場合に関する要領」を定め,平成10年5月18日から実施している〔丙1号証〕。同要領2条は,本件職専免条例2条3号の規定に基づき職務に専念する義務を免除される場合を列挙しているところ,その1項は,「職員が,市行政と密接な関係を有し,市が指導育成等を行うことを必要とする団体の事務又は事業に従事する場合」と規定している。 また,本件給与条例11条は,「職員が勤務しない時は,その勤務しないことにつき,任命権者の承認があった場合(三浦市職員の勤務時間,休暇等に関する条例第十五条の規定による組合休暇の許可を受けた場合を除く。)を除く外,その勤務しない一時間につき い時は,その勤務しないことにつき,任命権者の承認があった場合(三浦市職員の勤務時間,休暇等に関する条例第十五条の規定による組合休暇の許可を受けた場合を除く。)を除く外,その勤務しない一時間につき第十五条に規定する勤務一時間当り給与額を減額した給与を支給する。」と規定している〔乙4号証〕。 (3) 市は,上記派遣期間中,本件派遣職員に対する給与を,諸手当の一部を除き,支給した。 市が,本件派遣職員に対し支給した給与の総額は,平成11年7月分から同12年6月分までは2809万5851円,同11年10月分から同12年9月分までは2785万3903円,同12年7月分から同13年3月分までは1990万6931円,同12年10月分から同13年3月分までは1471万9148円となる(以下「本件給与の支給」という。)。 (4) 原告らは,平成12年6月30日,同年10月12日及び同13年7月9日,三浦市監査委員に対し,被告公社に派遣された市の職員に対する市の給与の支給は違法であるとして,住民監査請求をした(ただし,平成13年7月9日の請求については,原告aを除く。)が,同監査委員は,各請求に対し,同12年8月28日,同年10月30日及び同13年8月23日付けで,監査請求には理由がない,又は,先の請求と同一の請求のため却下する旨の通知をした〔甲1ないし3号証〕。 第4 争点及び争点に関する当事者の主張 1 争点本件の主たる争点は,本件給与の支給が違法な公金の支出と認められるか否かである。 2 原告らの主張(1) 本件給与の支給の違法性ア職員の服務の根本基準としての職員の職務専念義務を定めた地公法30条及び35条の規定は,単に職員に対する行動の準則にとどまるものではなく,地方公共団体の側 ) 本件給与の支給の違法性ア職員の服務の根本基準としての職員の職務専念義務を定めた地公法30条及び35条の規定は,単に職員に対する行動の準則にとどまるものではなく,地方公共団体の側に対しても,職員に職務専念義務に違反する行動をさせる措置をとることを禁止する趣旨を含むものと解すべきである。 そして,法は,地方公共団体がその職員を他の団体等に派遣し,本来の業務以外の業務に従事させることができる場合を,派遣先及び派遣条件の両面から個別具体的に規定している(地方自治法252条の17,地方公務員災害補償法13条1項,地方公務員等共済組合法18条1項参照)。 このようなことからすると,地方公共団体が他の団体へ職員を派遣し,その業務に従事させることは,法律に特別の定めがある場合を除いては原則として許されず,その例外は,当該団体の事務が地方公共団体の事務と同一視できる公益的性格のものであって,派遣職員に対する地方公共団体の指揮監督権が及んでいると認められる状況下における,一時的,暫定的な派遣に限られるものというべきである。 イこれを本件についてみると,以下の事情の下では,本件職員派遣は,違法というべきである。 (ア)被告公社の性格派遣先である被告公社は,営利を目的とする商法上の株式会社組織をとる私企業であり,その業務は,地方公共団体が本来目的とする事務とは性質を著しく異にしている。 また,被告らは被告公社の設立目的を「海業(うみぎょう)」の発展とするが,「海業」に関係を持たない市民も少なからず存在するから,その目的は,広範な三浦市民の利益に直接に関係するものではない。 (イ)派遣の目的本件職 」の発展とするが,「海業」に関係を持たない市民も少なからず存在するから,その目的は,広範な三浦市民の利益に直接に関係するものではない。 (イ)派遣の目的本件職員派遣の最大の目的が,三崎フィッシャリーナ・ウォーフ(以下「FW施設」という。)の建設及び運営にあったことは明らかである。 このFW施設は,大型集客施設を目指し,当初は大がかりな計画が立てられていたものであり,その後計画が縮小されたが,商業施設としての性格を有するものである。被告Aが平成7年3月に三浦市長として発表した事業計画においては,FW施設の波及効果として,地域経済の活性化や観光,漁業,農業発展への寄与を挙げているが,このような効果は全く実現していない。むしろ,FW施設は,外部からの来遊者を独占して下町地区の商業者を圧迫し,また,来遊者による交通渋滞の原因となるなど,地域経済のマイナス要因となっている。 (ウ)本件派遣職員の職務内容本件派遣職員が,市の指揮監督を受けていたということはできない。 また,本件派遣職員の被告公社における職務は,主として,FW施設に対する補助金に関する,県との協議,調整及び県を通じての国との協議,調整であった。そして,補助金に関する協議,調整とは,専ら,補助金を得てFW施設の2階にいかにレストランを建設するかに関するものであった。 補助金に関係した国,県ないし市との調整は,被告公社の職員としての営利を目的とした業務である。しかも,補助金で建設する建築物を商業施設として利用することはできず,平成10年8月18日には,国や県から市側にFW施設の2階のレストランは補助対象とならないことが伝えられていたのにもかかわらず 。しかも,補助金で建設する建築物を商業施設として利用することはできず,平成10年8月18日には,国や県から市側にFW施設の2階のレストランは補助対象とならないことが伝えられていたのにもかかわらず,それ以降も,平成11年8月2日に被告公社がレストランの運営を委託する予定で「三浦まちおこし株式会社」が設立されるなど,レストランの建設計画は,市や被告公社の方針として存続していた。そして,このレストラン計画が挫折した理由は,FW施設の波及効果によって恩恵を受けるはずであった三浦下町の商店街の店主らによる,反対運動であった。このように,本件派遣職員の職務である上記の補助金に関する協議,調整とは,補助金制度の趣旨や一部市民の世論に反して,FW施設の2階のレストランの建設を実現させるためのものであり,いかなる意味においても,市の事務と同一視し得るものでも,公益性のあるものでもない。 さらに,本件派遣職員は,市とは全く関係のない被告公社特有の業務にも従事していた。 (エ)本件職員派遣の必要性及び形態市が被告公社に出資し,その運営に積極的に関わる必要があるとしても,市の職員を派遣する必要性があったとはいえない。 また,仮に市の職員を派遣するとしても,その期間は休職処分として,派遣先である被告公社に給与を負担させるという方法もあるのである。 さらに,本件職員派遣は,長期的,反復的かつ恒常的に市の職員を他の団体へ派遣し,その指揮命令に当該職員の職務を委ねるものであって,このような態様の職員の派遣は,法が予定し許容するものではない。 ウなお,本件のように,条例に基づいて職務専念義務を免除する措置がとられていたとしても,それだけで派遣の違法性が あって,このような態様の職員の派遣は,法が予定し許容するものではない。 ウなお,本件のように,条例に基づいて職務専念義務を免除する措置がとられていたとしても,それだけで派遣の違法性が解消するものではない。職務専念義務の免除は,任命権者の自由裁量に委ねられている権限ではなく,地公法30条及び35条の趣旨に反しないように厳格に行われなければならない。本件職専免条例をみると,職務専念義務の免除は本人の申請によるとされており(1条),免除事由を列挙した2条のうち,1号及び2号では明らかに一時的,臨時的ないし暫定的な場合が想定されていることから,同条3号についても,長期的,反復的,恒常的な派遣を予定していないことは明らかであって,本件職務専念義務の免除は,本件職専免条例の解釈を誤ったものとして違法というべきである。 エ以上のように本件職員派遣が違法である以上,これと密接不可分の関係にある,本件派遣職員に対する給与の支給という公金の支出は,違法である。 仮に,本件職員派遣がそれ自体としては違法ではないとしても,地方自治法252条の17第3項の規定に照らし,派遣職員の給与は派遣を受けた被告公社が負担すべきであり,本件給与の支給は,地方自治法204条,204条の2,地公法24条1項,25条に違反する,違法なものである。 (2) 被告らの責任ア被告A被告Aは,三浦市長として,違法な公金の支出である本件給与の支給を,その権限と責任において行ったものであるから,市に対し,支給した給与相当額の損害賠償をすべき義務がある。 本訴において賠償を請求するのは,平成11年7月分から同12年6月分まで(平成12年(行ウ)第46号事件)及び同年7月分から同13年3月 給与相当額の損害賠償をすべき義務がある。 本訴において賠償を請求するのは,平成11年7月分から同12年6月分まで(平成12年(行ウ)第46号事件)及び同年7月分から同13年3月分まで(平成13年(行ウ)第44号事件)の総額4800万2782円及び遅延損害金である。 イ被告公社被告公社は,本件派遣職員を受け入れて,自らの業務に従事させ,その給与を市に支払わせることによって,不当にその給与相当額の利得を得ているから,市に対し,同給与相当額を返還すべき義務がある。 本訴において返還を請求するのは,平成11年10月分から同12年9月分まで(平成12年(行ウ)第66号事件)及び同年10月分から同13年3月分まで(平成13年(行ウ)第44号事件)の総額4257万3051円及び遅延損害金である。 3 被告らの主張(1) 本件給与の支給の適法性ア本件給与の支給については,本件職専免条例2条3号に基づく職務専念義務の免除及び本件給与条例11条に基づく承認がされており,形式的,手続的な瑕疵は存しない。そこで,本件においては,本件派遣職員について,職務専念義務の免除をして被告公社の業務を担わせることが,地公法30条,35条の趣旨に反していないか,実質的に適正,妥当なものであったか否かが問題である。その判断に当たっては,派遣先が株式会社であるといった形式的事由ではなく,公益上の必要性を実質的に判断すべきである。 なお,地方公共団体の職員の他の団体への派遣については,原告らが援用するような地方自治法,地方公務員災害補償法及び地方公務員等共済組合法の個別規定はあったものの,一般的な根拠法令はなかったというだけのことであって,地方自治法はこれを公務員 については,原告らが援用するような地方自治法,地方公務員災害補償法及び地方公務員等共済組合法の個別規定はあったものの,一般的な根拠法令はなかったというだけのことであって,地方自治法はこれを公務員制度の中で当然行われる事象として容認してきたものであり,派遣ができる場合を,原告らが主張するように極めて限定的に解すべき合理的な理由はないというべきである。 また,本件職専免条例2条3号は,職務専念義務の免除に関し,地公法30条,35条の趣旨に反しない限り,市の行政事務の処理のために必要に応じて柔軟に対処できるように定められたものであり,原告らの主張のように,長期の派遣を予定していないとはいえない。 イ本件職員派遣には,以下のような事情がある。 (ア)被告公社の性格被告公社は,平成3年に株式会社として設立されたものであるが,以下のとおり,実質的には営利を目的とするものではなく,極めて公益的,公共的な組織である。 すなわち,市は,三崎漁港におけるマグロの水揚高が減少し,漁業を中心として発展した地域の活力が衰退傾向にある中で,昭和60年代,都心に近いという地の利をいかして,漁業と,マリンレジャー等の海・浜に関連する商業とを有機的に関連付けて地域経済を活性化させるという,地域振興策を市の基本政策として掲げ,これを「海業」と呼称した。 被告公社は,この「海業」の展開による地域振興という行政目的の下,「海業」の事業化の推進拠点として,行政主導の第三セクターの形態で設立された。このように被告公社を行政主導のものとしたのは,設立の目的が「海業」政策の推進によるまち興しにあったことと,漁港法により民間による港の土地利用が規制されていたためであり,株式 ーの形態で設立された。このように被告公社を行政主導のものとしたのは,設立の目的が「海業」政策の推進によるまち興しにあったことと,漁港法により民間による港の土地利用が規制されていたためであり,株式会社という組織形態をとったのは,機動的,計画的な業務遂行をなし得るという現実的な理由からである。そして,その出資の構成は,前記第3の基礎となる事実1(3)のとおり,市と県という地方公共団体で半分以上を占め,その余の出資者も市の漁業協同組合,商工会議所等の非営利団体をはじめ市の地域経済に密接に関わる団体等であり,これらの出資は,利益配当ではなく,まち興し事業を活性化させ,これを通じて出資者の業務が活性化されることを期待してされたものである。 また,三浦市長が被告公社の代表取締役社長に就いており,被告公社の意思決定が市の公益的な方針と齟齬を生じないような役員構成がとられている。 (イ)被告公社の事業内容被告公社の事業内容は,「海業」に関する事業化の調査,企画,立案及び普及啓発並びに関連施設の整備,管理及び運営等である。 被告公社は,「海業」政策実現のための事業活動を,市に代わり,あるいは市とともに担う,「海業」政策の推進機関として位置付けられるのであって,その業務は極めて公益性の強いものといえる。 なかでも,市は,「海業」の事業化の最大の課題として,三崎漁港内の旧三崎魚市場の移転跡地に,多目的集客施設であるFW施設を建設することを掲げて,これを市の行政計画に位置付け,その具体的な計画策定及び実施を被告公社に委ねた。被告公社は,平成12年度にFW施設の建設に着手し,同13年度にこれを完成させたものであるが,FW施設の建設に当たっては,種々の行政上の 画に位置付け,その具体的な計画策定及び実施を被告公社に委ねた。被告公社は,平成12年度にFW施設の建設に着手し,同13年度にこれを完成させたものであるが,FW施設の建設に当たっては,種々の行政上の課題が存在し,その調整の必要があった。このほかにも,被告公社は市の地域振興策と密接に関連する事業を行っている。 なお,原告らはFW施設内のレストランの計画を問題視するが,被告公社は,営利目的の利用ではなく,地場産業の振興,地域経済の活性化の観点から,魚食普及施設を設けることを検討していたものの,一部住民の反対意見に配慮して計画を変更したのであって,そのことが被告公社の事業の公益性を否定することにはならない。また,原告らの主張と異なり,FW施設は地域経済に好影響を与えている。 (ウ)派遣の形態本件職員派遣では,派遣職員は,市の職員の身分及び職務を維持しており,被告公社の業務に専従していたわけではなく,被告公社内に市の駐在事務所を設け,市の職員としての職務を併せて行っていた。 また,本件派遣職員に対する特殊勤務手当,時間外勤務手当及び休日勤務手当については,被告公社が支給していた。 (エ)派遣の目的本件職員派遣の目的は,行政に精通した市の職員をして,①被告公社に対する,市の地域振興策(「海業」政策)を基本とした指導,育成,②FW施設の実行計画の策定及びその円滑な推進,③FW施設に関する法令上の規制についての関係部署との協議,検討,④補助金問題の検討,⑤地元関係者の意見の調整,⑥「海業」関連施設に対する「海業」政策に基づく指導,育成等の,行政課題に取り組ませることにあった。 市の職員の派遣は,被告公社の最大の 問題の検討,⑤地元関係者の意見の調整,⑥「海業」関連施設に対する「海業」政策に基づく指導,育成等の,行政課題に取り組ませることにあった。 市の職員の派遣は,被告公社の最大の目標であったFW施設の完成までを目途としてなされたもので,現に,平成12年度までで派遣は終了した。 (オ)本件派遣職員の職務内容本件派遣職員は,派遣期間中,市の職員としての職務の性質を有する市の固有事務として,FW施設に関する市議会対応等の事務を行っていた。一方,市の地域振興策と密接な関連を有する団体指導ないし育成事務として,①FW施設の整備関係事業,②三崎漁港の利用状況調査,③三崎海業センター,新港海業センター,三崎漁港ゲストバース,トラックスケールの管理,運営,④「海業」の発展をテーマとした各種イベントへの参加や支援等の事務を行った。特に,FW施設関連の事務は,平成11年度及び12年度において本件派遣職員が取り組んだ公共性の高い事務である。 被告公社は,市の地域振興策と必ずしも密接な関連性があるとはいえない固有の業務として,駐車場管理や損害保険代理店業務等を行っていたが,本件派遣職員は,これらに関する業務は担当していない。 (カ)本件職員派遣の必要性及び合理性市の職員の被告公社への派遣は,市の職員の専門的知識と能力の活用により,市の地域振興策の一環である「海業」関連事業を円滑に推進し,被告公社における行政に密接に関連する業務や市から指導,育成を受ける業務において日常的に発生する個々の課題に臨機応変に対応するために,必要不可欠であった。特に,平成11年度及び12年度は,FW施設の実施設計及び建設の時期であり,市の職員の派遣の必要性は大きく,本件職員 おいて日常的に発生する個々の課題に臨機応変に対応するために,必要不可欠であった。特に,平成11年度及び12年度は,FW施設の実施設計及び建設の時期であり,市の職員の派遣の必要性は大きく,本件職員派遣は合理的なものであった。 ウ以上のイの各事情からすれば,本件においては,市の職員を被告公社に派遣すべき公益上の必要性が大きく,合理的なものであったといえるから,本件派遣職員について職務専念義務を免除して被告公社の業務を担わせた本件職員派遣は適法であるというべきであり,したがって,本件給与条例に基づいてした本件給与の支給は適法である。 (2) 市の損害額の算定方法及び被告Aの責任の不存在ア損害について本件派遣職員は被告公社に専従していたわけではないから,原告らの主張のように本件給与の支給の全額が市の損害の額となるものではない。 イ被告Aの責任について本件において,被告Aには,不法行為が成立するに足る責任要素がない。 第5 当裁判所の判断 1 本件給与の支給が違法な公金の支出であるかどうかについて(1) 違法性の判断方法についてア地方公共団体の職員の給与は条例で定めなければならないとされている(地方自治法204条3項,地公法24条6項)ところ,本件給与条例11条は,職員が勤務しない時間に対する給与支給の可否について,前記のとおり,その勤務しないことにつき任命権者の承認があった場合を除く外,その勤務しない時間当たりの給与額を減額して給与を支給することを規定している。また,地公法35条にいう特別の定めに当たる本件職専免条例は,その2条において,前記のとおり職務専念義務の免除の要件を定めている。そして,前記基礎となる事実2(1),(3)によれば を規定している。また,地公法35条にいう特別の定めに当たる本件職専免条例は,その2条において,前記のとおり職務専念義務の免除の要件を定めている。そして,前記基礎となる事実2(1),(3)によれば,本件派遣職員は,その派遣期間中,議会対応等の一定の事務を行った以外は,市の事務には従事しなかったところ,本件派遣職員に対する給与は,諸手当を除けば全額を市が支給していたのであるから,本件給与の支給は,市の事務に従事していない時間に対する給与の支給を含むものというべきであり,これが適法といえるためには,本件職専免条例に基づく適法な職務専念義務の免除が必要であることはもとより,これに加えて,本件給与条例11条に定める勤務しないことについての適法な承認が必要であると解すべきである(最高裁判所平成10年4月24日第二小法廷判決・裁判集民事188号275頁参照)。 イまた,本件職専免条例2条3号及び本件給与条例11条は,職務専念義務の免除や勤務しないことについての承認について明示の要件を定めていないが,処分権者がこれを全く自由に行うことができるというものではなく,職務専念義務の免除が服務の根本基準を定める地公法30条や職務に専念すべき義務を定める同法35条の趣旨に違反したり,勤務しないことについての承認が給与の根本基準を定める同法24条1項の趣旨に違反する場合には,本件職務専念義務の免除及び本件承認は違法となるというべきである。 そして,本件においてこれを判断するに当たっては,本件職員派遣の目的,被告公社の性格及び具体的な事業内容並びに派遣職員が従事した業務の内容のほか,派遣期間,派遣人数等諸般の事情を総合考慮した上,本件職務専念義務の免除については,本件職員派遣のため本件派遣職員を市の職務に従事させないことが,また 内容並びに派遣職員が従事した業務の内容のほか,派遣期間,派遣人数等諸般の事情を総合考慮した上,本件職務専念義務の免除については,本件職員派遣のため本件派遣職員を市の職務に従事させないことが,また,本件承認については,これに加えて,市で勤務しない時間につき給与を支給することが,上記各条項の趣旨に反しないものといえるかどうかを具体的に検討すべきである(上記最高裁平成10年4月24日判決参照)。 ウなお,原告らは,地公法が30条,35条において職員の職務専念義務を規定した趣旨や,地方自治法252条の17,地方公務員災害補償法13条1項及び地方公務員等共済組合法18条1項という職員の派遣に関係する個別規定があることを根拠に,地方公共団体の職員の他の団体への派遣は,原則として許されず,その例外は極めて限定的な場合に限られるべきであるとして,これが許容されるための要件について主張をする(前記第4,2(1)ア)。 しかし,その援用する地方自治法等の関係規定は,それぞれの派遣の類型について,その派遣の性質,目的等に応じた具体的な派遣の要件等を規定したものであって,これらの個別規定が存在するからといって,地方自治法や地公法等の関係法令が,上記のような個別規定に定められた場合のほかは,地方公共団体の職員の他の団体への派遣が許されないとしていたものとは解されない。むしろ,法は,地方公共団体の存立目的や地方公務員制度の趣旨・目的等に照らして合目的的かつ合理的であると認められる範囲内においては,地方公共団体が,その時代の行政需要に応じて,その行政目的を達成するために,その職員を他の団体へ派遣し,その業務に従事させることも予定していたものと解されるのである。 そして,上記のような観点よりすれば,地方公共団体の職員 ,その行政目的を達成するために,その職員を他の団体へ派遣し,その業務に従事させることも予定していたものと解されるのである。 そして,上記のような観点よりすれば,地方公共団体の職員の他の団体への派遣について一般的に規律する法令が存在しなかった本件職員派遣当時においても,地方公共団体の職員が他の団体において勤務し,さらに当該職員に対して地方公共団体が給与を支給する場合には,当該職員が他の団体の業務に従事することが地公法30条及び35条の定める職務に専念する義務に反しないか,また,当該地方公共団体の職務に従事しない職員に対する給与の支給が職員の給与についてその職務と責任に応ずべきことを定める同法24条1項に反しないかが問題となるところ,本件においては,同法35条,24条6項及び地方自治法204条3項を受けた本件職専免条例及び本件給与条例において,職務専念義務が免除される場合及び職員が市に勤務しない時間に対し給与が支給される場合が規定されているのであるから,上記ア,イの判断基準に照らして,これらの条例の規定に依拠してされた本件職務専念義務の免除及び本件承認が適法であるということができれば,本件職員派遣及び本件給与の支給は違法なものではないということができるというべきである。 したがって,上記の原告の主張は,採用することができない。 (2) 本件における事実関係についてそこで,上記(1)の観点から本件における事実関係についてみることとする(以下の事実は,前記基礎となる事実のほか,証拠〔甲5ないし12,14,15,21号証,乙1,5ないし10号証,丙2,3号証,丁1号証,証人E及びFの各証言〕及び弁論の全趣旨により認められる事実である。)。 ア被告公社の設立に至る経緯 ,14,15,21号証,乙1,5ないし10号証,丙2,3号証,丁1号証,証人E及びFの各証言〕及び弁論の全趣旨により認められる事実である。)。 ア被告公社の設立に至る経緯(ア)三浦市は,三浦半島の南端に位置し,漁業,農業,観光等を基幹産業としており,特に,マグロ漁を中心とした漁業を主幹的な産業として発展してきた。しかし,昭和40年代半ば以降,水産業をとりまく諸状況の変化により,マグロの水揚高が著しい減少傾向を示すようになり,市にとって,地域経済の活性化が重要な課題となっていた。 (イ)このような状況の下,昭和60年6月に三浦市長に初当選した被告Aは,同年秋ころ,地域の活性化を目指した施策として,「海業(うみぎょう)」政策を提唱した。ここでいう「海業」とは,被告Aの創案に係る造語であり,漁業からマリンレジャーまで,海・浜を利用して成り立っている様々な生業(なりわい)を総称したものとされ,「海業」政策とは,地域の主幹的な産業である漁業と,海に関わる商業,工業,観光業等の諸産業を,新たな視点に立って結合させ,地域経済を活性化することを企図した地域振興策であるとされた。 そして,市は,「海業」政策の具体化について検討し,平成元年3月に策定した「三浦市地域振興プラン」において,「海業」政策の展開として,被告公社の設立や「海業」の拠点施設の整備等を盛り込み,さらに,同2年4月に開始した市の行政計画である「第三次三浦市総合計画」にも,旧三崎魚市場の跡地を利用した地域活性化の拠点作りなどの「海業」関連の政策を取り入れた。 県も,この「海業」政策に同調し,昭和63年3月に県が県下の海・浜の利用の指針として策定した「海・浜の秩序ある利用計画」の中で,「海業」の推進を取り入 連の政策を取り入れた。 県も,この「海業」政策に同調し,昭和63年3月に県が県下の海・浜の利用の指針として策定した「海・浜の秩序ある利用計画」の中で,「海業」の推進を取り入れるとともに,平成3年に開始した県の行政計画においても,「海業」の推進や被告公社の設立を盛り込んだ。このほか,県は,平成2年に「海業の展開による漁業の活性化対策」を,平成9年3月には「かながわ海業推進計画」を,それぞれ策定するなどしている。 (ウ)市は,平成3年度前半には,国及び県との間で,「海業」政策の推進機関としての被告公社の設立形態や,魚市場跡地に「海業」の拠点施設を設けるにあたっての法的規制の状況等についての協議を行うとともに,漁業,水産業関係団体等に働きかけるなどして,被告公社の設立の準備を進めた。そして,平成3年9月,三浦市議会で被告公社に対する出資金に関する補正予算案が可決され,平成3年12月21日,被告公社が設立された。 イ被告公社の性格及び事業内容(ア)被告公社は,経営の効率化を図る目的で,株式会社の形態で設立された。 そして,資本金4億円のうち,市が26パーセント,県が25パーセントをそれぞれ出資し,その余は,漁業団体(漁業協同組合等),水産団体(加工業協同組合等),水産関係企業,商工団体,金融機関及びその他の企業が出資した。この際,地方自治法244条の2に基づいて県や市の公の施設の管理を被告公社に委託できるようにすることも視野に入れて,県と市を合わせた出資割合が過半数となるように考慮された。 (イ)被告Aは,被告公社の設立以降,三浦市長を退任した平成13年6月まで,その代表取締役社長の地位にあった。なお,被告Aの市長退任後は,新市長であるGが,代表取 なるように考慮された。 (イ)被告Aは,被告公社の設立以降,三浦市長を退任した平成13年6月まで,その代表取締役社長の地位にあった。なお,被告Aの市長退任後は,新市長であるGが,代表取締役の地位に就いた。 被告公社の職員の構成は,平成7年1月1日当時で見ると,常勤役員が2人,被告公社の採用に係る社員が1人,嘱託職員が5人,県からの派遣職員が2人,市からの派遣職員が4人,臨時雇用職員が5人であり,県の農政部長が取締役副社長を務めていた。 (ウ)被告公社の主な事業の内容は,以下の①ないし③のとおりである。 ① 「海業」の事業化に向けた企画,調査事業そのうち,設立時からの最大の課題は,旧三崎魚市場の跡地におけるFW施設の建設計画の策定である(その詳細は後記(エ)のとおり。)。このほか,「海業」の各種の事業化に係る企画,調査や,県からの委託による三崎漁港の利用状況調査を行っている。 ② 施設管理運営事業市からの委託により「みさき海業センター」及び「新港海業センター」の管理,運営を,県からの委託により「三崎漁港ゲストバース」の管理,運営及び城ヶ島大橋渡橋料徴収業務を,それぞれ行っている。また,市から借り受けたトラックスケールの管理,運営を行っているほか,三崎漁港内の県有地を借入れ,駐車場の管理,運営を行っている。 さらに,FW施設の完成後は,その管理,運営を行っている。 ③ その他「海業」に関連したイベントの支援をはじめ,「海業」に関する普及啓発事業を行うとともに,「海業」の事業化に関する相談への対応を行っている。 ③ その他「海業」に関連したイベントの支援をはじめ,「海業」に関する普及啓発事業を行うとともに,「海業」の事業化に関する相談への対応を行っている。 このほか,宮川湾の水中観光船運航事業及び損害保険代理店業務も行っている。 (エ)被告公社の中心的事業であるFW施設の企画及び建設に関する事実関係は,以下のとおりである。 a 「三崎フィッシャリーナ・ウォーフ」(FW施設)は,三崎漁港内の旧三崎魚市場の跡地(三浦市三崎五丁目3番1号)に計画された,多目的集客施設である。 市は,平成2年度の「第三次三浦市総合計画」において,「海業」政策の展開としてFW施設の建設構想を公表し,その後の検討を経て,市の行政計画である「三崎フィッシャリーナ・タウン基本計画」(平成6年3月)及び「三崎フィッシャリーナ・ウォーフ(FW)事業計画」(平成7年3月)において,FW施設の具体的内容を公表した。 この「三崎フィッシャリーナ・ウォーフ(FW)事業計画」は,FW施設の目的を「『海業創世』の拠点として,また三浦の優れた物産(農水産物等)の販売や漁業文化の普及,観光・文化・海に関する情報の提供等をねらいとした『新たな観光』の拠点として建設するものです。」などとし,また,FW施設の具体的内容やその建設の事業計画及び関連計画等を明らかにしたものであった。同事業計画によれば,FW施設は,12階建てで,荷捌き所,商業施設,アミューズメント施設,漁業厚生施設,スポーツ施設,水産展示館,ホテル,アトリウム,ホール,業務施設,展望タワー等を備えるものとされていた。そして,同事業計画は,被告公社を「海業」政策の推進,実施機関と位置付け,被告公社が 業厚生施設,スポーツ施設,水産展示館,ホテル,アトリウム,ホール,業務施設,展望タワー等を備えるものとされていた。そして,同事業計画は,被告公社を「海業」政策の推進,実施機関と位置付け,被告公社がFW施設の建設事業の主体になるものとした。そして,FW施設完成後は,商業施設等の一部の施設は被告公社が事業主体となり,ホール等のその余の施設については,県又は市が事業主体となるとともに,その運営を被告公社に委託することが計画されていた。 b 上記の市の計画を受けて,平成8年度以降,被告公社が中心となって,FW施設の具体的な実行計画の策定作業が進められた。そして,被告公社は,事業規模の縮小等を経た上,平成10年3月,被告公社の資金と民間からの出資による,約30億円規模の計画案を作成した。しかし,同計画案には,資金調達等の点で課題があり,さらに実現可能な実行計画に修正する必要があったことから,国,県及び市の補助金を導入する方向で検討がされ,県,市及び被告公社の三者による協議を経て,事業規模約12億円の実行計画案がまとめられ,平成11年度の被告公社の取締役会で承認された。 そして,平成11年末にFW施設の建設に対する国からの補助金の交付が決定し,また,平成12年2月の県議会及び同年3月の市議会で,県及び市のFW施設の建設に関する補助金を含めた予算措置がそれぞれ可決された。 これを受けて,平成12年8月からFW施設の建設が開始され,平成13年6月ころに完成し,平成13年7月に開業に至った。 cFW施設への国の補助金の導入は,遅くとも平成9年ころから,市や被告公社の間で検討されていたものであるが,平成10年8月には,県,市及び被告公社による「三崎FW計画三者会 。 cFW施設への国の補助金の導入は,遅くとも平成9年ころから,市や被告公社の間で検討されていたものであるが,平成10年8月には,県,市及び被告公社による「三崎FW計画三者会議」において,収益目的のレストランは補助金の対象とならない旨の国の意向が,県から市及び被告公社に伝えられていた。その後も,市や被告公社では,FW施設の2階部分において飲食施設を設置する計画の検討が続けられ,補助金の導入が可能な形態として,来館者が1階で購入した魚介類を食べたり,調理の講習会を開くための「漁食普及施設」として使用する方法が検討されていた一方,レストランとしての利用を図る意見も出されていた。また,平成11年8月2日には,FW施設の2階部分の飲食施設の運営主体となる予定で,「三浦まちおこし株式会社」が設立された。 これに対し,平成12年4月ころから,FW施設周辺の飲食店経営者らが,レストランの建設に反対する運動を起こした。その結果,平成12年8月1日付けで,被告Aと「現状のFW計画に反対する三崎下町商店の会」の代表との間で,市がFW施設においていわゆるレストラン的利用をしないことを確認する旨の文書が作成されるに至った。 d 完成したFW施設は,建築面積2947平方メートルの地上2階建て(一部3階建て)で,1階は産直センター及び多目的広場,2階は市民ホール及び「うみぎょうぷれいす」等となっており,飲食機能を有する施設は存在しない。 ウ本件職員派遣の目的及びその態様(ア)市が職員を被告公社に派遣した目的は,被告公社が市の地域振興策(「海業」政策)に沿った事業運営を行うように,被告公社に対する指導,育成に当たらせること,「海業」の事業化において中心的な役割を果たすFW が職員を被告公社に派遣した目的は,被告公社が市の地域振興策(「海業」政策)に沿った事業運営を行うように,被告公社に対する指導,育成に当たらせること,「海業」の事業化において中心的な役割を果たすFW施設の建設・運営に関わる業務の推進,特に,FW施設を三崎漁港内に建設することから想定される土地利用規制問題など,被告公社が事業を行うに際して当面する法規制の調査,検討,関係機関との協議,調整については,市の職員として知識,経験を有していた者に当たらせることが必要かつ合目的的であったこと,その他被告公社の事業の運営全般にわたって,被告公社と県や市との間で必要な協議,検討の効率化を図ることなどにあった。 (イ)そこで,被告Aは,上記の目的を達成するために,三浦市長として,被告公社の設立以降平成13年3月まで,各年度ごとに(平成3年度については,年度末の3か月間),3名ないし5名の市の職員を,本件職専免条例に基づき職務専念義務を免除するとともに,本件給与条例に基づき,被告公社で勤務する範囲において市で勤務しないことについての承認を与えて,被告公社に派遣した。派遣の対象となった職員には,多くの場合,複数年度にわたって派遣の発令が反復された。 なお,県も,平成4年4月ころから平成12年3月まで,2名程度の県の職員を被告公社に派遣し,被告公社の業務に従事させた。 (ウ)そして,本件職員派遣に係る平成11年7月から同13年3月までは,市から,B,C及びDの3名の職員が派遣された。 これら本件派遣職員は,いずれも市の職員としての身分及び役職を維持し,本件職員派遣に際し,Bは三浦市経済振興部参事(海業・まちおこし担当)を,Cは三浦市経済振興部海業水産課主幹(海業担当)を,Dは三浦市経済振興部 員は,いずれも市の職員としての身分及び役職を維持し,本件職員派遣に際し,Bは三浦市経済振興部参事(海業・まちおこし担当)を,Cは三浦市経済振興部海業水産課主幹(海業担当)を,Dは三浦市経済振興部海業水産課主査(海業担当付)を,それぞれ命ずる旨の辞令を受けていた。 (エ)本件派遣職員に対する給与は,諸手当の一部を除き,全額を市が支給していた。 エ本件派遣職員が従事した業務の内容(ア)本件派遣職員は,派遣期間中,原則として被告公社の事務所において勤務した。 (イ)本件派遣職員は,派遣期間中も,市の職員としての地位に基づく事務として,①市議会の本会議や委員会等における,FW施設ないし被告公社に関連した資料の作成,報告,答弁等の事務,②予算要求資料の作成事務及び市長ヒアリングへの出席,③漁港の利用や地域活性化に関する地元の意見調整,④県営である三崎漁港の区域内での「海業」政策に関する活動についての県との協議及び⑤市の研修事業への参画を行っていた。 (ウ)一方,本件派遣職員の被告公社における地位及び各人が本件職員派遣の期間中に従事した被告公社の業務の主な内容は,それぞれ以下のとおりである。 a B事業部長の地位にあり,FW施設の建設に関し,県や市との調整を行うとともに,計画全体の進行の管理にあたった。 また,事業部の担当していた三崎漁港の利用状況調査,各種施設(ゲストバース,みさき海業センター,新港海業センター)の管理,運営を統括した。 bCFW施設の建設に関し,県や市と協議しながら,業者決定のための指名競争入札の実施,契約の締結,補助金導入等に関する業務を行っ 運営を統括した。 bCFW施設の建設に関し,県や市と協議しながら,業者決定のための指名競争入札の実施,契約の締結,補助金導入等に関する業務を行った。 また,総務部総務課長として,総務課の担当していた総務及び経理関係の業務を行った。 cDFW施設の具体的な設計にあたって,市の開発指導要綱に基づいて,関係行政機関等と協議し,計画の策定業務を行った。 また,事業部事業係長として,三崎漁港の利用状況調査,各種施設(ゲストバース,みさき海業センター,新港海業センター)の管理,運営及びイベント支援に関する業務を行った。 (エ)なお,被告公社の業務の中には,損害保険代理店業務,水中観光船の運航業務及び駐車場の管理,運営業務が含まれているが,Dが,水中観光船の運航開始にあたり,関係行政機関との協議や市内の保育園等への広報を行ったことがあるほかは,本件派遣職員がこれらの業務に従事した事実は認められない。 (3) 本件職務専念義務の免除及び本件承認が違法であるかどうかについてア上記(2)アのとおり,市は,基幹産業である漁業の衰退という状況の下,昭和60年以降,市長である被告Aの提唱した「海業」政策の具体化,推進による地域の活性化を図り,また,県も,市の「海業」政策に同調し,その推進を目指していた。そして,市及び県の行政計画に基づき,国との協議も経て,「海業」政策の推進機関として設立されたのが被告公社である。 上記(2)イのとおり,被告公社の主要な事業内容は,FW施設の具体的内容や事業計画の策定,同施設の建設及びその完成後の運営であるところ,同施設は,市 立されたのが被告公社である。 上記(2)イのとおり,被告公社の主要な事業内容は,FW施設の具体的内容や事業計画の策定,同施設の建設及びその完成後の運営であるところ,同施設は,市の行政計画において,「海業」政策の展開の中核となる施設としてその建設が計画され,被告公社がその事業主体とされていたものであるから,被告公社のFW施設関連事業は,市の行政施策を実施に移すものとして,市の行政施策と密接な関連を有するものと認めることができる。また,「海業」政策に関連した企画,調査,広報等の事業については,被告公社が「海業」政策の推進機関として設立されたという経緯からすれば,市の政策に沿ってこれを具体化するという性質のものであり,これらも市の行政施策と密接な関連を有するものと認めることができる。そして,このほかの被告公社の事業は,各種施設の管理等の,市及び県からの委託によるものが大半を占めており,これらについては,市ないし県が本来すべき事務を被告公社が代わって実施するという関係にある。 さらに,被告公社の経営支配については,市と県で被告公社の出資割合の過半数を占め,また,被告公社の代表取締役を三浦市長が務めるとともに,その設立初期から本件職員派遣の期間までは市ないし県からの職員で被告公社の職員数の相当程度を占めていたことなどからすれば,被告公社の経営形態は,被告公社の事業運営と市の行政施策の遂行との整合性を確保し得るものであったと認めることができる。 このように,被告公社は,市の政策の推進機関として位置付けられ,その主な事業の内容は,市の行政施策と密接な関連を有するものや,市ないし県から受託した事務であり,さらに,これらの事業と市の行政施策との整合性を確保し得る形態を有していたものということが 付けられ,その主な事業の内容は,市の行政施策と密接な関連を有するものや,市ないし県から受託した事務であり,さらに,これらの事業と市の行政施策との整合性を確保し得る形態を有していたものということができるのである。 イ次に,市が被告公社に市の職員を派遣した目的は,上記(2)ウのように,被告公社が市の地域振興策に沿った事業運営を行うように,被告公社に対する指導,育成に当たらせること,「海業」政策の展開の中核となる施設としてのFW施設の建設・運営に関わる業務の円滑な推進を図ること,被告公社と県や市との間で必要な協議,検討の効率化を図ることなどにあったところであるが,上記アのとおり,被告公社の主な事業は,市の行政施策と密接な関連を有するものであり,これが現実に市の政策に沿って運営されるか否かは,市の行政施策の実現の観点から重要な関心事であるところ,市の職員を派遣することによって,被告公社の日常の業務の遂行の過程に関与させ,あるいは実際に業務を担当させることで,被告公社の事業と市の行政施策との整合性の確保が期待できること,上記(2)ウ(ア)のようなFW施設の建設に関する法規制の調査,検討は,被告公社の事業着手の準備作業として,被告公社が市の政策の推進機関としての機能を果たす前提となるものであるところ,その作業には漁港法等の法規制に関する知識を有する市の職員が適任であったと認められること,被告公社が市及び県の行政計画に位置付けられているため,被告公社の事業に関して三者間での協議は不可欠であるところ,市の職員を被告公社の立場におくことで,市にとっても円滑かつ効率的な協議が期待できると認められることからすれば,被告公社への市の職員の派遣は,市の「海業」政策に基づく行政施策を実現するための方策ないし手段として合目的的かつ合理的なものであっ とっても円滑かつ効率的な協議が期待できると認められることからすれば,被告公社への市の職員の派遣は,市の「海業」政策に基づく行政施策を実現するための方策ないし手段として合目的的かつ合理的なものであったと認めることができる。 ウさらに,本件派遣職員が被告公社において従事した具体的な業務内容については,上記(2)エのように,3名とも,主としてFW施設の建設に関連した業務に従事しており,この点は,FW施設の建設という市の行政施策の実現を担ったものと認められる。また,B及びDは,市ないし県からの委託を受けた事務である,三崎漁港の利用状況調査及び各種施設の管理,運営にも従事していたところ,それらは三浦市内の港湾ないしその関連施設の有効な利用を図るものとして公益性を有する業務であり,その実施は,市の「海業」政策の推進に結びつく性質の業務といえる。さらに,Cは,被告公社の総務及び経理関係の業務にも従事していたが,市の政策の推進機関として位置付けられる被告公社の運営が適切に行われることは,市の行政施策の実現に資するものと認めることができる。 一方,被告公社の事業には,駐車場の管理,運営や,損害保険代理店業務及び水中観光船の運営等の,営利を目的とした公益性の低いものも含まれているが,Dが行った水中観光船の運航開始の際の協議及び広報は,港湾の有効な利用ないし「まちおこし」につながるものとして,公益性を欠くものとまではいえないところである。 なお,原告らは,本件派遣職員が,国の補助金による助成の対象とはならないことが判明していたFW施設の2階部分のレストランの建設を実現させるための業務に従事していたとして,本件派遣職員が従事した業務は公益性を欠くものであったと主張する。しかし,原告らの主張のように,本件 ことが判明していたFW施設の2階部分のレストランの建設を実現させるための業務に従事していたとして,本件派遣職員が従事した業務は公益性を欠くものであったと主張する。しかし,原告らの主張のように,本件派遣職員が,ことさら補助金による助成の対象とならない施設計画の実現に固執していたとまでは認められないし,FW施設の2階部分に係る飲食ないし魚食普及施設の種々の形態やそれらに対応する補助金による助成の可能性についての検討を行うこと〔甲5,8ないし10号証,乙6号証及び証人Eの証言〕は,FW施設の建設計画の検討の一環であり,公益性を欠く業務であるとはいえない。 エ市から被告公社への市の職員の派遣は,平成3年末から同13年3月まで,約9年3か月間に及び,この期間は,被告公社の設立からFW施設のおおよその完成までの期間に相当する。そして,本件職員派遣は,その最後の1年9か月間に当たる。市の行政計画の基本に位置付けられたFW施設の完成までは,市の職員を同施設の計画の立案や建築の進行管理に関与させる要請が高かったということができることからすれば,本件派遣期間における市の職員の派遣は,なお合理性を失わないものと認めることができる。 また,本件職員派遣の期間に市から被告公社に派遣された職員は3名であったところ,前記の本件職員派遣の目的を達するためには複数の派遣職員が必要であったということができることや,本件派遣職員らが,実際に,いずれもFW施設関連の業務にそれぞれの立場において従事していたことからすれば,その派遣人数の面においても合理性に欠けるところはないと認めることができる。 オ以上のとおりの,被告公社の市の政策の推進機関としての性格,市の行政施策との整合性を確保し得る被告公社の経営形態,その事業内容と市の行政施 性に欠けるところはないと認めることができる。 オ以上のとおりの,被告公社の市の政策の推進機関としての性格,市の行政施策との整合性を確保し得る被告公社の経営形態,その事業内容と市の行政施策との関連性,本件職員派遣の目的の合理性,本件派遣職員の従事した業務の内容と市の行政施策との関連性,派遣期間及び派遣人数等諸般の事情を総合考慮すれば,本件職員派遣のために本件派遣職員に対し職務専念義務を免除することは,地公法30条や35条の趣旨に反しないものというべきであり,本件職務専念義務の免除が違法であるとは認められない。 また,上記の諸事情,とりわけ本件職員派遣の目的や本件派遣職員が現実に被告公社において従事した業務が市の行政施策の実現に資するものであったことからすれば,本件派遣職員が市で勤務しない時間について市が給与を支給することが,地公法24条1項の趣旨に反するということはできないのであって,本件承認が違法であるとは認められない。 (4) 小括上記のように,本件職員派遣についてされた,本件職務専念義務の免除及び本件承認は,いずれも違法であるとは認められないから,これに基づいてされた本件給与の支給も違法な公金の支出であるとは認められない。 2 本件請求に対する判断上記のとおり,本件給与の支給は違法なものとは認められないから,本件給与の支給が違法であることを前提とする被告Aに対する請求は,理由がない。また,本件給与の支給が違法なものとは認められない以上,被告公社が法律上の原因なくして利得を得たとはいえないから,被告公社に対する請求も理由がない。 第6 結論以上のとおりであって,原告らの請求は,いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政 得を得たとはいえないから,被告公社に対する請求も理由がない。 第6 結論以上のとおりであって,原告らの請求は,いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成15年7月2日)横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官川勝隆之裁判官菊池絵理裁判官貝阿彌亮
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