- 1 -主文本件上告を棄却する。 当審における未決勾留日数中60日を本刑に算入する。 理由 弁護人小嶋章予の上告趣意は,単なる法令違反の主張であり,被告人本人の上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。 所論にかんがみ,本件建造物損壊罪の成否について,職権で判断する。 原判決の認定によれば,本件ドアは,5階建て市営住宅1階にある居室の出入口に設置された,厚さ約3.5㎝,高さ約200㎝,幅約87㎝の金属製開き戸であり,同ドアは,上記建物に固着された外枠の内側に3個のちょうつがいで接合され,外枠と同ドアとは構造上家屋の外壁と接続しており,一体的な外観を呈しているところ,被告人は,所携の金属バットで,同ドアを叩いて凹損させるなどし,その塗装修繕工事費用の見積金額は2万5000円であったというのである。 所論は,本件ドアは,適切な工具を使用すれば容易に取り外しが可能であって,損壊しなければ取り外すことができないような状態にあったとはいえないから,器物損壊罪が成立するにすぎないのに,原判決が建造物損壊罪の成立を認めたのは法令の解釈適用を誤っているという。 しかしながら,建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは,当該物と建造物との接合の程度のほか,当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきものであるところ,上記1の事実関係によれば,本件ドアは,住居の玄関ドアとして外壁と接続し,外界とのしゃ断,防犯,防風,防音- 2 -等の重要な役割を果たしているから,建造物損壊罪の客体に当たるものと認められ,適切な工具を使用すれば損壊せずに同ドアの取り外しが可能であるとしても,この結論は左右されない。そうすると,建造物損壊罪の成立を認めた原判断は,結論にお ,建造物損壊罪の客体に当たるものと認められ,適切な工具を使用すれば損壊せずに同ドアの取り外しが可能であるとしても,この結論は左右されない。そうすると,建造物損壊罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。 よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官甲斐中辰夫裁判官横尾和子裁判官泉徳治裁判官才口千晴裁判官涌井紀夫)
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