-1-主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 生野税務署長が平成17年2月28日付けでした控訴人の平成15年6月1日から平成16年5月31日までの事業年度の法人税に係る更正処分のうち所得金額1259万2369円,差引所得に対する法人税額303万5100円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2事案の概要 本件は,控訴人が,平成16年7月16日に控訴人の使用人に対して支払った賞与を平成15年6月1日から平成16年5月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の損金の額に算入して確定申告を行ったところ,生野税務署長が上記賞与の損金算入を否定するなどして控訴人に対して更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため,控訴人が,これらの処分の取消しを求める抗告訴訟を提起したが,原審は,控訴人の訴え中,上記更正処分のうち所得金額1262万9329円,差引所得に対する法人税額304万6200円を超えない部分の取消しを求める部分を却下し,控訴人のその余の請求をいずれも棄却する判決をしたので,控訴人が第1記載の判決を求めて控訴した事案である。 本件に関する法令の定め,前提事実,争点及び当事者の主張は,次のとおり加除訂正するほかは,原判決の1頁26行目から18頁14行目までのとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決2頁2行目の「事業年度」を「各事業年度」に改める。 -2-(2)原判決2頁9行目の「除く。」の次に「これらを以下「販売費等」という。」を加える。 (3)3頁13行目の「掲記」の次に「の」を加える。 (4)3頁15行目の「本件」を削除する。 。 -2-(2)原判決2頁9行目の「除く。」の次に「これらを以下「販売費等」という。」を加える。 (3)3頁13行目の「掲記」の次に「の」を加える。 (4)3頁15行目の「本件」を削除する。 (5)4頁24行目の「原告は,」の次に「毎年6月1日から翌年5月31日までを事業年度とするところ,」を加える。 (6)6頁10行目の「増額差税額」を「増差税額」に改める。 (7)6頁11行目の「併せた」を「合わせた」に改める。 (8)6頁18行目から19行目にかけての「明らかである。」の次に「また,控訴人は,増額更正処分の内容が課税標準の一部取消しと課税標準の加算から成り立っている場合は,前者について更正の請求を経ていなくとも,課税標準の一部取消しを求めることを認めても租税債務の早期確定を害しないなどと主張するが,更正処分に対する取消訴訟が終了するまでの間は税額の総額は確定しないとしても,納税者が確定申告により自ら確定させた税額については法定申告期限から1年を超えて自ら税額の減少を求めることはできないという意味での租税債務の可及的速やかな確定を害することになる上,たまたま増額更正処分がされた場合には,更正の請求の期間を徒過した場合であっても申告額よりも税額の減少を求めることができることになり,更正の請求の期間を制限した趣旨が没却されることになる。」を加える。 (9)7頁9行目から10行目にかけての「①の更正の請求を経ていない」を「更正の請求を経ることなく①の」に改める。 (10)7頁15行目の「許されない。」の次に「この点について,被控訴人は,納税者が確定申告により自ら確定した税額については租税債務の一部確定が実現されており,これを害することは許されないというが,本件のような場合,税額が増額される可能性がある限りにおいては課税関係の確 納税者が確定申告により自ら確定した税額については租税債務の一部確定が実現されており,これを害することは許されないというが,本件のような場合,税額が増額される可能性がある限りにおいては課税関係の確定は実現できないのであるから,法律上の根拠のない課税は許されないという憲法上の-3-要請と比較衡量すれば,被控訴人の主張する租税債務の一部確定を実現すべき必要性はきわめて低いというべきである。」を加える。 (11)7頁21行目の冒頭の「を」を「が」に改める。 (12)9頁7行目の「委任」を削除する。 (13)10頁2行目の冒頭に「令134条の2は法65条の委任に基づくものであるところ,」を加える。 (14)11頁1行目の「販売管理費等」を「販売費等」に改める。 (15)11頁7行目の末尾に改行の上,次を加える。 「なお,控訴人は,平成18年の法人税法施行令の改正(以下,この改正後の法人税法施行令を「平成18年改正後の令」という。)による令134条の2の廃止により新設された平成18年改正後の令72条の5は,令134条の2とは規定の位置及び一部の文言が変わっていることから,上記改正当時の政令制定者は,令134条の2が技術的,細目的事項を定めたものではなく,法律による委任を欠くことを自認していたと主張するが,上記改正は会社法の制定等に伴って,役員給与の損金算入のあり方を見直し,これを整備したものであり,使用人に対して支給する賞与の損金算入時期についてはそれまでの令134条の2の取扱いを変更するものではなく,令134条の2が技術的,細目的事項を定めたものであることに何ら影響を与えるものではない。」(16)11頁13行目の「損金算入の原則」を「損金算入についての原則」に改める。 (17)11頁17行目の「課税要件法定主義」を「租税法律主義 ものであることに何ら影響を与えるものではない。」(16)11頁13行目の「損金算入の原則」を「損金算入についての原則」に改める。 (17)11頁17行目の「課税要件法定主義」を「租税法律主義」に改める。 (18)11頁18行目の「22条」の次に「3項柱書」を加える。 (19)11頁24行目の「基準」を「損金算入時期」に改める。 (20)12頁8行目の末尾の「法も」を「法には」に改める。 (21)12頁10行目の「法律」を「法」に改める。 -4-(22)12頁19行目の各「基準」をいずれも「時期」に改める。 (23)12頁20行目の「基準」を「時期」に改める。 (24)12頁26行目の「原価」を「売上原価等」に改める。 (25)12頁26行目から13頁1行目にかけての「販売管理費」を「販売費等」に改める。 (26)13頁1行目の「原価」を「売上原価等」に改める。 (27)13頁1行目から2行目にかけての「販売管理費等」を「販売費等」に改める。 (28)13頁2行目の「基準」を「時期」に改める。 (29)13頁3行目の「販売管理費」を「販売費等」に改める。 (30)13頁4行目の冒頭の「施行令」を「令」に改める。 (31)13頁8行目の「費用」を「販売費等」に改める。 (32)13頁8行目の末尾の「主義」を「基準」に改める。 (33)14頁12行目の「販売管理費」を「販売費等」に改める。 (34)14頁26行目の「債務確定基準」の次に「による場合」を加える。 (35)15頁1行目の「上記」を削除する。 (36)15頁2行目の「1号」の次に「の個別対応の原則」を加える。 (37)15頁3行目の「基準」を「時期」に改める。 (38)15頁5行目の末尾に改行の上,次を加える。 「(ウ)以上のとおり,令134条の2は法22条3 号」の次に「の個別対応の原則」を加える。 (37)15頁3行目の「基準」を「時期」に改める。 (38)15頁5行目の末尾に改行の上,次を加える。 「(ウ)以上のとおり,令134条の2は法22条3項の技術的,細目的事項を定めたものとはいえず,このことは平成18年の法人税法施行令の改正に当たっての政令制定者の意思からも窺える。 すなわち,上記改正によって,令134条の2の規定は廃止され,ほぼ同じ内容の平成18年改正後の令72条の5が新設されたが,同条は,平成18年法律第10号により改正された法人税法36条(同条は過大な使用人給与の損金不算入について定めるものであり,法22条3項柱-5-書の「別段の定め」に当たる。)の委任による平成18年改正後の令72条の4の次に位置しており,このように規定の位置を移動させたのは,その規定の内容が法22条3項の技術的,細目的事項とはいえないことを上記改正当時の政令制定者も認識していたからにほかならない。また,内容はほぼ同じであるものの,令134条の2では「・・・当該各号に定める事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入する」と規定されていたものが,平成18年改正後の令72条の5では「・・・当該各号に定める事業年度において支出されたものとして,その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する」と改められており,これは前者の文言では所得の内容を規定することになり,そのためには根拠となる法律による委任が必要であることから,後者のような計算規定にすり変えたものであり,このことからも上記改正当時の政令制定者が令134条の2の規定が法律による委任の根拠を欠き,違憲であることを自認していたことを示している。」(39)15頁10行目の「帰属年度」を「損金算入の年度」に改める。 (40)15頁20行目の「販売管理 の2の規定が法律による委任の根拠を欠き,違憲であることを自認していたことを示している。」(39)15頁10行目の「帰属年度」を「損金算入の年度」に改める。 (40)15頁20行目の「販売管理費等」を「販売費等」に改める。 (41)16頁12行目の「売上原価」の次に「等」を加える。 (42)17頁15行目の「効力」の次に「について」を加える。 (43)17頁26行目から18頁1行目にかけての「販売管理費」を「販売費等」に改める。 (44)18頁1行目の「売上原価」の次に「等」を加える。 第3当裁判所の判断 争点①(本件更正処分のうち,申告額を超えない部分の取消請求に係る訴えの適法性)について当裁判所も原判決の結論を相当と考える。その理由は,次のとおり加除訂正するほかは,原判決の18頁18行目から21頁20行目までのとおりである-6-から,これを引用する。 (1)19頁6行目の「当該」を削除する。 (2)19頁9行目の「という建前とする」を削除する。 (3)19頁26行目の「①の更正の請求を経ていない」を「更正の請求を経ることなく①の」に改める。 (4)20頁1行目の「害さず,」の次に「仮にこれを害するとしても,納税者が確定申告により申告した税額の確定という租税債務の一部の確定を害するだけであって,税額が増額される可能性がある限りにおいては課税関係の確定は実現できないのであるから,法律上の根拠のない課税は許されないという憲法上の要請と比較衡量すれば,このような租税債務の一部確定を実現すべき必要性はきわめて低く,」を加える。 (5)20頁4行目の「当初申告のそれ」を「納税者の申告に係る税額」に改める。 (6)20頁6行目の「しまい,」の次に「法律上の根拠のない課税は許されないという憲法上の要請に反する結果となり,」を 5)20頁4行目の「当初申告のそれ」を「納税者の申告に係る税額」に改める。 (6)20頁6行目の「しまい,」の次に「法律上の根拠のない課税は許されないという憲法上の要請に反する結果となり,」を加える。 (7)20頁9行目の「上記」を削除する。 (8)20頁10行目の「当該」を削除する。 (9)20頁16行目の冒頭の「て,」の次に「また,法人税に係る更正処分については,法定申告期限から5年を経過するまではこれをすることができる(通則法70条1項1号)から,更正の請求の期間経過後に更正処分がされる可能性があることは通則法も予定しているところであることを考慮すれば,通則法23条1項柱書が更正の請求について期間を制限したのは,後日更正処分がされるか否かに係わらず,更正の請求の期間を制限することによって,申告に係る税額の範囲で租税債務の早期確定を図ることを目的としたものと解するのが相当であり,そのように解さないと更正の請求の期間を制限した意味がなくなってしまうことは明らかであり,さらに,更正の請求の期間経-7-過後に更正処分がされるような場合は,法定申告期限から1年以内に更正の請求をすることを期待することが困難であるような事情が納税者にあるとは認められないから,」を加える。 (10)20頁23行目の「当該」を削除する。 (11)21頁4行目の「(通則法29条1項),」の次に「この規定によれば,増額更正処分の効力は,これによって追加的に納付すべきものとされた増差税額についてのみ及ぶものであって,それによってすでにされた確定申告がなかったことになるものではなく,当該確定申告に係る税額の納付義務がなかったことになるものとはいえないから,増額更正処分の取消訴訟の審判の対象となるのは当該処分の適否であるとしても,税額の面からみれば取消しの範 なるものではなく,当該確定申告に係る税額の納付義務がなかったことになるものとはいえないから,増額更正処分の取消訴訟の審判の対象となるのは当該処分の適否であるとしても,税額の面からみれば取消しの範囲は当該確定申告に係る税額を超える部分に限られると解するのが相当であり,」を加える。 争点②(令134条の2の有効性)について当裁判所も原判決の結論を相当と考える。その理由は次のとおりである。 (1)令134条の2は法65条の委任に基づく規定である(この点については当事者間に争いはない。)から,法65条の政令への委任の趣旨について検討する。 ア憲法は,30条において「国民は,法律の定めるところにより,納税の義務を負ふ。」と,84条において「あらたに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」とそれぞれ定めており,いわゆる租税法律主義を採用している。 したがって,租税については,納税義務者,課税標準及び税率等の課税要件並びに賦課徴収の手続は法律によって定めることが必要であると解される。 もっとも,租税法規は,複雑かつ多様な経済事象をその規律の対象とするものであり,課税の公平及び徴税の適正等の観点から技術的かつ細目的-8-な定めを設ける必要があるとともに,上記のような経済事象の変動に即応した規律を行う必要があることを考慮すれば,課税要件等に係る技術的細目的事項まですべて法律によって定め,また,経済事象の変動に即応して法律を制定又は改廃することは実際上困難であり,憲法もこのような場合を予定して,憲法84条において「法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と定め,課税要件等の定めを政令に委任することを許容しているものと解される。 しかし,憲法の採用する租税法律主義の趣旨からすれば,課税要 4条において「法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と定め,課税要件等の定めを政令に委任することを許容しているものと解される。 しかし,憲法の採用する租税法律主義の趣旨からすれば,課税要件等の定めを一般的又は包括的に政令に委任することは許されず,課税要件等に係る基本的事項については法律において定めることを要し,政令に委任することが許されるのはその技術的細目的事項に限られると解するのが相当である。 イ上記のような観点から法65条の政令への委任の趣旨について検討すると,法21条は,内国法人の各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は各事業年度の所得の金額とする旨を,法22条1項は,各事業年度の所得の金額は当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨を,同条2項は,各事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資本等取引を除く取引に係る当該事業年度の収益の額とする旨を,同条3項は,各事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,売上原価等(同項1号),販売費等(同項2号),当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの(同項3号)とする旨をそれぞれ定め,法人税の課税標準である所得の金額の計算の要素となる益金及び損金の内容及び算入時期についての通則を定めている。そして,法は23条ないし64条において,上記通則に対する別段の定めとして,法人の特定の収入及び支出に関し,益金の額への算入及び損金の額への算入について,その可否・限度額・時期を定-9-めている。 この点について,被控訴人は,法65条の政令へ委任する旨の定めは法22条2,3項の各柱書の「別段の定め」に当たると主張するが,被控訴人主張のような解釈によれば,法65条の委任によって,法23条ないし法 点について,被控訴人は,法65条の政令へ委任する旨の定めは法22条2,3項の各柱書の「別段の定め」に当たると主張するが,被控訴人主張のような解釈によれば,法65条の委任によって,法23条ないし法64条の定め以外にも,政令によって,法22条の通則に対する別段の定めをすることができることになるが,それでは,法人税の課税標準である所得の金額を計算するための二大要素である益金と損金について,政令によって通則である法22条2,3項に対する別段の定めをすることができることになり,その結果は法人税の税額に直ちに影響するものである上,法22条2,3項の各柱書の「別段の定め」については何らの限定がないことをも併せ考慮すれば,このような政令への委任は租税法律主義に反するものといわざるを得ず,被控訴人の上記主張はにわかに首肯できない。 むしろ,法65条の見出しには「(各事業年度の所得の金額の計算の細目)」とあること,同条には「に関し必要な事項は,政令で定める」との文言が使用されているが,この文言は,法の定めについての技術的細目的事項を政令に委任したものであることが明らかな法23条8項,24条3項,29条2項,31条6項,32条8項等々においても用いられていること,法65条には「第2款から前款まで(所得の金額の計算)に定めるもののほか」とあるが,同条が通則としての法22条2,3項に対する別段の定めを法23条ないし64条の定め以外にも政令によって定めることができる趣旨であるのなら,第2款(22条)を外して「第3款から前款まで(所得の金額の計算)に定めるもののほか」とするべきであるが,そうはなっていないことを考慮すれば,法65条の政令へ委任する旨の定めは法22条2,3項の各柱書の「別段の定め」には当たらないと解するのが相当である。 したがって,被控訴人の上記 するべきであるが,そうはなっていないことを考慮すれば,法65条の政令へ委任する旨の定めは法22条2,3項の各柱書の「別段の定め」には当たらないと解するのが相当である。 したがって,被控訴人の上記主張は採用できない。 -10-ウ以上によれば,法65条は,法22条ないし64条の定める内容について,その施行のために必要な技術的細目的事項を定めることを政令に委任する規定と解され,憲法の採用する租税法律主義に反するものとはいえない。 (2)次に,令134条の2は,法人が使用人に対して支給する賞与(以下「使用人賞与」という。)に関し,法22条3項1,2号の定める内容について,その施行のために必要な技術的細目的事項を定めたものといえるか検討する。 ア法22条3項は,1ないし3号において,法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入されるもの及びその損金算入時期についての通則を定めている。 そして,使用人賞与については,それが損金であることは明らかであり(このことは,法35条3項において,使用人賞与について,利益又は剰余金の処分による経理をしたときは,その金額は損金の額に算入されないと定められており,その反対解釈から,法人の費用として支出される使用人賞与については,これが損金の額に算入されることを前提としていることは明らかである。),問題はいつの事業年度の損金の額に算入されるかという損金算入時期の如何であるが,会計上,損金となる使用人賞与については,売上原価等に当たる場合(法22条3項1号)と販売費等に当たる場合(同項2号)があるので,以下,それぞれの場合について,法22条3項1,2号が通則として定める損金算入時期について検討する。 イ法22条3項2号は,当該事業年度終了の日までに債務の確定している販売費等を損金の額に算 ので,以下,それぞれの場合について,法22条3項1,2号が通則として定める損金算入時期について検討する。 イ法22条3項2号は,当該事業年度終了の日までに債務の確定している販売費等を損金の額に算入すると定め,販売費等の損金算入時期について,販売費等の債務の確定した時期の属する事業年度の損金の額に算入するとの基準(以下,これを「債務確定基準」という。)を規定している。これは,債務として確定していない費用については,その発生の見込み及び金額が明確ではないことから,所得の金額の計算の明確及び課税の公平を確-11-保するために,債務の確定を必要としたものと解される。 これに対し,法22条3項1号は,当該事業年度の収益に係る売上原価等を損金の額に算入すると定め,売上原価等の損金算入時期について,売上原価等に係る収益の帰属する事業年度の損金の額に算入するとの基準(以下,これを「収益対応基準」という。)を規定し,債務として確定していなくとも,当該事業年度の収益に係るものを損金の額に算入するものとしている。しかし,債務が確定していることを要しないとしても,所得の金額の計算の明確及び課税の公平を確保するためには,近い将来に支出することが相当程度の確実性をもって見込まれており,かつ,当該事業年度終了の日の現況によりその金額を適正に見積もることが可能である場合に限り,その見積金額を当該事業年度の損金の額に算入することができると解するのが相当である。 ウところで,使用人賞与については,就業規則や労働協約等による明文の定めに基づかないで慣行によって支給されている場合もないではなく,また,仮に明文の定めに基づいて支給されている場合においても,支給するか否か及び支給する場合の金額は,支給対象者の勤務実績に対する人事評価や当該法人の経営実績に左右されるもので 場合もないではなく,また,仮に明文の定めに基づいて支給されている場合においても,支給するか否か及び支給する場合の金額は,支給対象者の勤務実績に対する人事評価や当該法人の経営実績に左右されるものである上,支給対象者が支給日に在籍していることが支給の要件とされる場合がほとんどであり,また,支給対象者に対して支給の有無及び支給する場合の金額の通知は実際の支給をもって行われているのが実情といえる。 現に,控訴人においても,本件給与規程には,賞与の額は会社の営業成績及び社員各個人の業績に応じて決定する(17条1項),業績の都合・業界の不況・事業の特別の不振・その他やむを得ない事由がある場合は支給しないことがある(同条2項),賞与は,人事考課規程に基づき,社員各人の計算期間中における勤務成績その他を勘案してその都度これを決める(21条),賞与支給が不適当と認められる者については,原則として-12-支給しない(22条),受給資格は,賞与計算期間中勤務し,かつ賞与の支払日に在籍する者とする(20条1項)と規定されている。 したがって,上記のような使用人賞与の支給実態に鑑みれば,使用人賞与については,実際の支給日よりも前に,債務として確定しているか否か(販売費等に当たるものについて)又は当該事業年度の収益に係る金額としての適正な見積りができるか否かもしくは支出されることが確実といえるか否か(売上原価等に当たるものについて)を判断することは困難であり,仮にそのような判断が可能であるとしても,そのような判断は法人の内部事項に係わるものであるから,債務として確定しているといえる時期又は適正な見積りができるかもしくは支出されることが確実といえる時期は使用人賞与を支給する法人ごとに千差万別になることが予想される上,さらには恣意的な判断がされるおそれも否定で しているといえる時期又は適正な見積りができるかもしくは支出されることが確実といえる時期は使用人賞与を支給する法人ごとに千差万別になることが予想される上,さらには恣意的な判断がされるおそれも否定できないから,その結果,使用人賞与の損金算入時期は法人ごとに不統一になり,また,同一法人においても売上原価等に当たる使用人賞与と販売費等に当たる使用人賞与が異なる事業年度の損金の額に算入されるという事態も起こり得る。 エ上記ウにおいて説示した使用人賞与の支給実態及びこれによる損金算入時期についての問題点を考慮すれば,使用人賞与の損金算入時期については,通則としての法22条3項1,2号の定めだけでは所得の金額の計算の明確及び課税の公平を確保することは困難であり,上記各号の定めを使用人賞与に適用するにあたっての定めを要するといえる。 そして,このような定めとして制定されたものが令134条の2であるが,この制定に至る経緯について検討すると,使用人賞与については,平成10年法律第24号による法人税法改正によって削除された法人税法54条は賞与引当金制度を定め,損金経理により賞与引当金勘定に繰り入れた金額のうち政令で定めるところにより計算した金額に達するまでの金額を当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入するものとされてい-13-たが,賞与引当金制度の下では,使用人賞与の損金の額への算入については,賞与金引当金勘定への繰入額の損金の額への算入という形で行われてきたのが実情であり(なお,上記法人税法改正前には法人税法及び法人税法施行令には使用人賞与の損金算入時期についての具体的な定めはなかった。),上記法人税法改正によって法人税法54条が削除されることに伴い,賞与引当金制度の廃止後は賞与金引当金勘定への繰入額の損金の額への算入という形ではなく,使 入時期についての具体的な定めはなかった。),上記法人税法改正によって法人税法54条が削除されることに伴い,賞与引当金制度の廃止後は賞与金引当金勘定への繰入額の損金の額への算入という形ではなく,使用人賞与自体についての損金の額への算入を行うことが必要になったところ,使用人賞与は,利益又は剰余金の処分として行われる場合を除けば,法人の費用として支出されるものであるから,それ自体が所得の金額の計算上損金の額に算入されるものであることは,上記法人税法改正の前後を通じて法人税法35条3項の定めがあったことから明らかであるものの,使用人賞与の支給実態によれば,前記のとおり,その損金算入時期については種々の問題点があり,その損金算入時期を法22条3項1,2号の通則の定めのみに委ねた場合,所得の金額の計算の明確,課税の公平を確保することは困難であり,使用人賞与については,法22条3項1,2号の通則の定めを施行するための技術的細目的定めが必要であったといえる。 そして,令134条の2の定める内容は,同条1,2号の場合は使用人賞与の実際の支給日の前であっても,上記各号所定の要件を満たす場合に損金の額に算入することを認めたものであるが,上記各号所定の要件を満たす場合は法22条3項1号の定める収益対応基準及び同項2号の定める債務確定基準を満たしているといえる。もっとも,使用人賞与の支給実態は支給する法人によって様々であるから,上記各号所定の要件を満たすより前の時点(たとえば,控訴人におけるように使用人のすべてについて使用人ごとの賞与の支給額を決定し,損金としての経理処理をした時点など)をもって,損金の額に算入することを認めることもできないではない-14-が,法人が支給額の決定をしただけでは,これは法人内部でのことに過ぎないから,実際に使用人賞与を支給 経理処理をした時点など)をもって,損金の額に算入することを認めることもできないではない-14-が,法人が支給額の決定をしただけでは,これは法人内部でのことに過ぎないから,実際に使用人賞与を支給するか否か又は支給金額の確実性が客観的に明確であるといえないし,また,使用人賞与の支給実態は様々であるから,上記各号には当たらないものの,実際の支給日より前の時点で法22条3項1,2号の定める基準を満たすような場合があったとしても,損金の額への算入が全くできないわけではなく,遅くとも実際の支給日の属する事業年度の損金の額に算入することができることを考慮すれば,所得の金額の計算の明確及び課税の公平を確保するためには,実際の支給日より前の時点をもって損金の額に算入することができる場合を限定したからといって,法22条3項1,2号の定める基準に反するものというのは相当でない。また,令134条の2第3号については,同条1,2号に当たらない場合において,実際の支給日の属する事業年度の損金の額に算入するというものであり,遅くともこの時点では法22条3項1,2号の定める基準を満たしているといえる。 なお,法24条ないし法64条においては,法人の特定の収入及び支出に関し,益金の額への算入及び損金の額への算入の可否・限度額・時期について,法22条2,3項の通則の定めに対する別段の定めをするとともに,技術的細目的事項を定めることを政令に委任することも定められている(たとえば,法23条8項,24条3項,29条2項,31条6項,32条8項等々)のに対し,使用人賞与の損金算入時期についての技術的細目的事項を定めることを政令に委任する旨の定めは法にはない。しかし,法24条ないし64条は,益金の額への算入及び損金の額への算入について,その可否・限度額・時期について法22 時期についての技術的細目的事項を定めることを政令に委任する旨の定めは法にはない。しかし,法24条ないし64条は,益金の額への算入及び損金の額への算入について,その可否・限度額・時期について法22条2,3項の通則に対する別段の定めをするものであるから,法24条ないし64条における政令に委任する旨の定めは,法がこのような別段の定めをした上での技術的細目的事項を定めることを政令に委任したものであり,他方,使用人賞与につい-15-ては,前記のとおり,それが損金となることについては法もこれを前提にしており,通則である法22条3項に対する別段の定めを要するものではなく,令134条の2は,このような損金となることについて問題のない使用人賞与について,その支給実態に鑑み,その損金算入時期のみについて,通則である法22条3項1,2号の定めを施行するについて必要な技術的細目的事項を定めたものといえる。 オ控訴人は,当審において,平成18年政令第125号による法人税施行令の改正による令134条の2の廃止により新設された平成18年改正後の令72条の5は,令134条の2とは規定の位置及び一部の文言が変わっていることから,上記改正当時の政令制定者は,令134条の2が技術的,細目的事項を定めたものではなく,法律による委任を欠くことを自認していたと主張するが,過大な使用人給与の額を定めた令72条の3は法36条の2の,過大な使用人退職給与の額を定めた令72条の4は法36条の3のそれぞれの委任に基づくものであり,これに対し,令134条の2は法22条3項柱書の「別段の定め」による委任に基づくものではなく,法65条の委任に基づくものであるから,制定当初は令72条の3,同条の4とは離れた位置に置かれ,上記改正にあたっては,使用人に対して支給するものの損金の額への算入 」による委任に基づくものではなく,法65条の委任に基づくものであるから,制定当初は令72条の3,同条の4とは離れた位置に置かれ,上記改正にあたっては,使用人に対して支給するものの損金の額への算入についてという共通性から,令72条の3,同条の4の次に置かれたものと解することができ,その規定の位置から,上記改正当時の政令制定者において,控訴人が主張するような認識を有していたとは認められない。また,控訴人指摘の令134条の2と平成18年改正後の令72条の5の文言の相違については,実質的な内容に差異はない上,令134条の2において使用されている「・・・当該各号に定める事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入する」という文言は,令134条,135条,136条においても使用されており,平成18年改正後の令72条の5において使用されている「・・・として,その内国-16-法人の各事業年度の所得の金額を計算する」という文言は,令136条の2第1項柱書,136条の4第1項柱書,137条,138条1項柱書においても使用されており,いずれの場合も,法人税の課税対象となる所得の金額の計算上,損金の額に算入するに当たっての技術的細目的事項であることに変わりはなく,控訴人指摘の令134条の2と平成18年改正後の令72条の5の文言の相違から,上記改正当時の政令制定者において,控訴人が主張するような認識を有していたとは認められない。 カ以上によれば,令134条の2は,使用人賞与の支給実態に鑑み,所得の金額の計算の明確及び課税の公平を確保するために,使用人賞与の損金算入に関し,法22条3項1,2号について,その施行のために必要な技術的細目的事項を定めたものであり,法65条の委任の趣旨に沿う定めであって適法であり,租税法律主義に反するものでもない。 上記2 算入に関し,法22条3項1,2号について,その施行のために必要な技術的細目的事項を定めたものであり,法65条の委任の趣旨に沿う定めであって適法であり,租税法律主義に反するものでもない。 上記2に説示したところに基づき,本件各処分の適法性について判断する。 甲13,14によれば,控訴人は,平成16年5月31日,使用人のすべてについて,使用人ごとの本件賞与の支給額を決定した上,決定した支給金額について伝票を作成し,未払金として記帳処理をしたことが認められる。 しかし,前記前提事実(2)によれば,控訴人が実際に本件賞与を支給したのは本件事業年度終了後の同年7月16日であり,しかも,控訴人は,本件賞与の支給前には,本件賞与の各人別の支給金額について,各人別に,かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知してはいないから,本件賞与については,令134条の2第3号により,実際に賞与を支給した日の属する平成16年6月1日から平成17年5月31日までの事業年度の所得の計算上損金の額に算入されるものであって,本件事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入することはできないものである。 したがって,本件更正処分は法65条,令134条の2に照らして適法である。 -17-また,本件賦課決定処分は,本件更正処分を前提としているところ,本件更正処分は適法であって,過少申告加算税の額の計算にも違法な点は認められないから,本件賦課決定処分も適法である。 結論 以上によれば,本件訴え中,本件更正処分のうち所得金額1262万9329円,差引所得に対する法人税額304万6200円を超えない部分の取消しを求める部分は,不適法であるから却下すべきであり,控訴人のその余の請求は,いずれも理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由が 6200円を超えない部分の取消しを求める部分は,不適法であるから却下すべきであり,控訴人のその余の請求は,いずれも理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第9民事部裁判長裁判官松本哲泓裁判官田中義則裁判官永井尚子
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