令和元年6月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成28年(ワ)第34935号謝罪広告等請求事件口頭弁論終結の日平成31年3月19日判決 主文 1 被告は,原告に対し,110万円及びこれに対する平成28年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを30分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,3000万円及びこれに対する平成28年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告に対し,別紙謝罪広告目録記載の新聞に,同目録記載の体裁によって,同目録記載の謝罪広告を1回掲載せよ。 3 被告は,原告に対し,別紙著作物目録記載の著作物について,別紙記述目録記載の記述部分を削除又は抹消しない限り,発表してはならない。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,被告の執筆した別紙著作物目録記載の「日本会議の研究」と題する書籍(以下「本件書籍」という。)の記述のうち,別紙記述目録記載の記述(以下「本件記述」という。)1から5までにより名誉を毀損されたとして,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料2700万円及び弁護士費用300万円の合計3000万円並びにこれに対する平成28年5 月1日(本件書籍の出版日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による 遅延損害金の支払を求めるとともに,民法723条に基づき名誉回復処分としての謝罪広告の掲載,人格権に基づき本件記述1から5までを削除な の出版日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による 遅延損害金の支払を求めるとともに,民法723条に基づき名誉回復処分としての謝罪広告の掲載,人格権に基づき本件記述1から5までを削除ないし抹消しない限り本件書籍を発表してはならないとする条件付きの差止めをそれぞれ求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲証拠等により容易に認められる。) ⑴ 当事者ア原告は,C大学を卒業後の昭和45年7月,宗教法人である生長の家の本部員として採用され,以後,同法人の政治局政治部長,徳島教区,岡山教区,神奈川教区の各教化部長,教区運営管理室教区長,理事等を歴任し,平成23年に退職した者である(甲3,8,弁論の全趣旨)。 イ被告は,著述家として活動し,本件書籍を執筆した者である。 ⑵ 本件書籍の発表ア本件書籍は,被告が,株式会社扶桑社(以下「扶桑社」という。)が運営するウェブサイト「ハーバービジネスオンライン」に連載した「草の根保守の蠢動」と題する記事をまとめ,原告に関する記述を加筆したものを平 成28年5月1日に扶桑社が発行したものであり,「はじめに」,「第一章日本会議とは何か」,「第二章歴史」,「第三章憲法」,「第四章草の根」,「第五章 『一群の人々』」,「第六章淵源」,「むすびにかえて」により構成されている。このうち,「第六章淵源」と題する章では,「日本会議」という団体の「原点」に当たる人物が原告であるとして,その活動等を紹 介しており,原告について,学生運動を行う団体の委員長であったDとの関係や生長の家においてその青年会の機関誌である「理想世界」の発行部数を拡大するため,「理想世界100万部運動」と称する運動(以下「100万部運動」という。)を展開したこと 体の委員長であったDとの関係や生長の家においてその青年会の機関誌である「理想世界」の発行部数を拡大するため,「理想世界100万部運動」と称する運動(以下「100万部運動」という。)を展開したことに関する記述があり,本件記述1から5までは,その中に記載されている。 イ本件書籍は,「美しい日本の再建と誇りある国づくりのために,政策提言 と国民運動を推進する民間団体」であることを表明し,国政との関わりも報道されたことがある「日本会議」という団体に関し,その沿革,活動内容,生長の家との関係等について,関係者の供述等を踏まえ,被告の視点から叙述をしたものである。 ウ本件書籍は,いわゆる新書であり,平成28年8月17日時点の発行部 数は,約15万3000部である。 ⑶ 原告の仮処分申立て原告は,平成28年5月2日,扶桑社に対し,本件書籍に係る書籍販売等禁止仮処分の申立てをし(当庁平成28年(ヨ)第1284号書籍販売等禁止仮処分命令申立事件),東京地方裁判所は,平成29年1月6日,原告の申 立てを一部認める旨の決定をした。扶桑社は,同決定に対して異議の申立て(当庁平成29年(モ)第50107号保全異議申立事件)をしたのに対し,同裁判所は,平成29年3月31日,原決定のうち扶桑社敗訴部分を取り消し,同部分に係る原告の申立てをいずれも却下する旨の決定をした。(甲2,乙39) 3 争点及び争点に関する当事者の主張⑴ 本件記述による原告の社会的評価の低下の有無(原告)ア本件記述1から3までは,原告が後輩に対して,Dを尾行し,Dに女性を紹介するとともに,Dの自宅に侵入し所有物を調べるよう命じたことを 事実として摘示するものであり,原告は自らの手を汚すことなく同志を陥れるような非道徳的な人物 に対して,Dを尾行し,Dに女性を紹介するとともに,Dの自宅に侵入し所有物を調べるよう命じたことを 事実として摘示するものであり,原告は自らの手を汚すことなく同志を陥れるような非道徳的な人物であるとの印象を読者に与えるものとして,原告の社会的評価を低下させる。 イ本件記述4は,原告が信者の自殺に無関心であったことを事実として摘示するものであり,原告は宗教家でありながら人命を尊重しない冷酷な人 間であるとの印象を読者に与えるものとして,原告の社会的評価を低下さ せる。 ウ本件記述5は,原告が誰も逆らえない地位を背景としてセクトのように運動を指示したことを事実として摘示するものであり,原告は宗教家でありながら学生運動の過激派のような権威主義的な態度により社会的にいかがわしい活動を行ったとの印象を読者に与えるものとして,原告の社会的 評価を低下させる。 (被告)否認し,争う。 ア本件記述1から3までは,学生運動における権力闘争について証言する者が存在するとの事実を摘示するものにすぎず,原告への人格攻撃的な表 現もないから,原告の社会的評価を低下させるものではない。 イ本件記述4は,その記載内容を述べる者が存在するとの事実を摘示するものにすぎない。仮に,その記載内容を事実として摘示し,あるいは,論評を述べるものであったとしても,同記述を全体として読めば,原告が宗教家として高いレベルにあるとの印象を読者に与えるものにすぎないから, 原告の社会的評価を低下させるものではない。 ウ本件記述1から4までは,いずれも50年以上前の出来事を記載したものであり,それ以降長年にわたり宗教家としての実績を残してきた原告の社会的評価を低下させるものではない。 エ本件記述5について,「セクト」には違法行 では,いずれも50年以上前の出来事を記載したものであり,それ以降長年にわたり宗教家としての実績を残してきた原告の社会的評価を低下させるものではない。 エ本件記述5について,「セクト」には違法行為や暴力行為を行う集団とい う意味は含まれず,原告の所属していた学生運動団体がそのような集団であったとの印象を読者に与えるものではないから,原告の社会的評価を低下させるものではない。 オ仮に,原告の社会的評価が本件記述1から5までにより低下するとしても,本件書籍には,原告の高い能力と人格を肯定的に表現する記述もある から,それらの記述を併せ読めば,原告の社会的評価を低下させるもので はない。 ⑵ 本件記述の公共性及び公益目的の有無(被告)本件書籍は,日本政治に影響力を有する日本会議を主題とするものである。 原告は日本会議の源流である学生運動の中心的な人物であり,社会的影響力 を有していることからすると,本件記述は公共の利害に関するものであり,公共の利益を図る目的があったといえる。 (原告)否認し,争う。 原告が現在では言論活動を行っていないことに鑑みると,本件記述1から 5までは,公共の利害に関するものとはいえない。 また,匿名の証言者の証言に依拠して記載されたものであり,本件書籍の出版前に原告への事実確認がされなかったのであるから,専ら公益を図る目的があるとはいえない。 ⑶ 本件記述の真実性又は被告が本件記述を真実と信ずべき相当の理由 (被告)ア本件記述1から3までは,証言者の私怨等がないこと,証言者が複数人いること,証言が資料に裏付けられていることという条件を満たす「X氏」の証言に基づくものであるから,真実であり,また,被告が真実であると信ずるについて相当な理由がある。 いこと,証言者が複数人いること,証言が資料に裏付けられていることという条件を満たす「X氏」の証言に基づくものであるから,真実であり,また,被告が真実であると信ずるについて相当な理由がある。 イ本件記述4のうち,100万部運動において自殺者が出たとの点は,「X氏」のほか,複数の取材対象者の証言に基づくものであり,文献等の資料にも整合するものであるから,真実であり,また,被告が真実であると信ずるについて相当な理由がある。また,本件記述4のうち,自殺者が出たことは原告には馬耳東風であったとの点は,人格攻撃とはいえない比喩表 現にすぎないから,論評としての相当性を逸脱しない。 ウ本件記述5は,「X氏」のほか,複数の取材対象者の証言に基づくものであり,文献等の資料にも整合するものであるから,真実であり,また,被告が真実であると信ずるについて相当な理由がある。 エ原告や日本会議関係者に対する取材については,Eに対する取材の申込みが無視され,原告については,住所や連絡先を知らず,また,講演会等 において取材を申し込むことは非常識であり,危険でもあると考えたため,断念せざるを得なかったものである。 (原告)本件記述1から5までにおいて摘示された事実はいずれも真実ではなく,原告らに対する取材すらしていないことからも,被告がそれらを真実である と信ずるについて相当な理由もない。 ⑷ 原告の損害(原告)原告は,本件書籍の発表によって重大な精神的損害を被り,その慰謝料は2700万円を下らない。また,本件書籍の発表による人格的利益の侵害と 因果関係のある弁護士費用は300万円を下らない。 (被告)争う。 ⑸ 謝罪広告掲載の要否(原告) 本件書籍の発表による原告の人格的利益の侵害 発表による人格的利益の侵害と 因果関係のある弁護士費用は300万円を下らない。 (被告)争う。 ⑸ 謝罪広告掲載の要否(原告) 本件書籍の発表による原告の人格的利益の侵害は,本件書籍の内容が虚偽であることを世間に知らしめなければ救済されないものであるから,謝罪広告の掲載が必要である。 (被告)争う。 ⑹ 差止めの可否 (原告)本件書籍のうち原告の人格的利益を侵害する部分を削除又は抹消しない限り,原告の上記利益は侵害され続けるのであるから,原告は,本件書籍の発行による上記利益の将来の侵害を防止するために,本件書籍の差止めを求めることができる。 (被告)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(本件記述による原告の社会的評価の低下の有無)について⑴ 本件記述1から3までを一般の読者の普通の注意と読み方によって読めば, 原告が,後輩の学生に対し,Dを陥れるために,Dに女性を引き合わせたり,Dの部屋に入って所持品を探らせたり,Dの悪評を流布するよう指示した事実を摘示するものと認めるのが相当である。これらの事実の摘示は,読者に原告がDを失脚させる過程で不相当な手段を用いたとの印象を与えるものであって,原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 被告は,本件記述1から3までは,学生運動における権力闘争について証言する者がいるとの事実を摘示するものにすぎず,原告への人格攻撃的な表現もないから,原告の社会的評価を低下させないと主張する。しかし,本件記述1には「Dはこのハニートラップをはじめとする原告の仕掛けた罠にまんまと引っかかる。」との記載が,本件記述2には「ここまで材料が揃えば, あとは原告の思う壺だ。」との記載があることからすると,本件記述1から3 ハニートラップをはじめとする原告の仕掛けた罠にまんまと引っかかる。」との記載が,本件記述2には「ここまで材料が揃えば, あとは原告の思う壺だ。」との記載があることからすると,本件記述1から3までは,学生運動における権力闘争に係る証言者の存在のみならず,その証言内容をも事実として摘示したものと認められる。また,本件記述1から3までには原告の人格を直接的に非難する表現は認められないが,その記載内容が原告の社会的評価を低下させることは,上記判示のとおりである。した がって,被告の主張は採用することができない。 ⑵ 次に,本件記述4を一般の読者の普通の注意と読み方によって読めば,青年会に所属する者が100万部運動のために消費者金融から金銭を借り入れ,苛烈な取立てを受けて自殺した例があるにもかかわらず,原告はその出来事に無関心であり,その後も100万部運動を推し進めて目標を達成し,生長の家の政治局政治部長に就任した事実を摘示するものと認めるのが相当であ る。この事実の摘示は,読者に,原告が,組織の構成員の生命よりも100万部運動の達成を優先し,その結果として組織内でより高い地位に就いたとの印象を与えるものであって,原告の社会的地位を低下させるものと認められる。 被告は,本件記述4における「そんなことは原告には馬耳東風であった。」 との表現は,意見ないし論評を述べるものであると主張するが,同表現は,上記判示のとおり,原告が関係者の自殺に無関心であったとの事実を摘示するものと認められるから,被告の主張は採用することができない。 被告は,本件記述4は,当該内容を述べる者が存在するとの事実を摘示するものにすぎず,仮に,その内容を事実として摘示するものであったとして も,同記述を全体として読めば,原告が宗教家と ない。 被告は,本件記述4は,当該内容を述べる者が存在するとの事実を摘示するものにすぎず,仮に,その内容を事実として摘示するものであったとして も,同記述を全体として読めば,原告が宗教家として高いレベルにあるとの印象を読者に与えるものにすぎないから,原告の社会的評価を低下させるものではないと主張する。しかし,本件記述4は,証言者の伝聞との形式をとっておらず(「自殺者も出たという。」との表現はあるが,同表現は,自殺者が出たとは断定できないものの一定の確度でそのような事実が存在する旨述 べるものと理解される。),当該内容を述べる者が存在するとの事実を摘示するものであるとはいえない。また,本件記述4には,原告の演説に周囲が心酔し,熱狂した旨の記載や,原告が100万部運動を達成して生長の家の政治局政治部長に就任した旨の記載があるが,他方,原告がそれらの過程において,組織の構成員の生命よりも100万部運動の達成を優先する者であっ たことを指摘するものであるから,原告が宗教家として高いレベルにあると の印象を読者に与えるにすぎないということはできない。 ⑶ 次に,本件記述5を一般の読者の普通の注意と読み方によって読めば,原告が,誰も逆らえないような地位を利用して,Eらに対し,学生運動のように政治活動に関する指示を出しており,その活動の起源が原告の大学生時代の学生運動の経験にあるとの事実を摘示するものと認めるのが相当である。 そして,後記3⑴シ,スのとおり,生長の家は,昭和58年8月,生長の家政治連合の活動を停止して政治活動を行わない方針を決定し,原告もこれに応じて以後政治活動と距離を置いてきた事実が認められるところ,本件記述5は,原告が誰も逆らえない地位を背景として政治活動に関する指示を出したことを事実として摘 動を行わない方針を決定し,原告もこれに応じて以後政治活動と距離を置いてきた事実が認められるところ,本件記述5は,原告が誰も逆らえない地位を背景として政治活動に関する指示を出したことを事実として摘示するものであり,原告は宗教家でありながら学生運 動の過激派のような権威主義的な態度により生長の家が停止している政治活動を行ったとの印象を読者に与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものと認められる。 被告は,「セクト」には違法行為や暴力行為を行う集団という意味は含まれず,原告が所属していた学生運動団体がそのような集団であったとの印象を 与えるものではない旨主張する。確かに,「セクト」とは,「宗派」,「分派」等を意味し,それ自体により違法行為や暴力行為を行う集団であることを連想させるものとはいえない。しかし,本件記述5を全体として読めば,上記のとおり生長の家が政治活動を行わない方針を決定した昭和58年8月以降も,原告が宗教家でありながら,教団に隠れ,権威主義的な態度により,政 治活動を継続していた事実を摘示するものと認められるから,生長の家に属する宗教家としての原告の社会的評価を低下させるものにほかならず,したがって,被告の主張は採用することができない。 ⑷ 小括上記⑴から⑶までのとおり,本件記述1から5までは,いずれも原告の社 会的評価を低下させるものと認められる。 2 争点⑵(本件記述の公共性及び公益目的の有無)について前提事実⑵イのとおり,本件書籍は,国政との関わりも報道されたことがある「日本会議」という団体に関し,その沿革,活動内容,生長の家との関係等について,被告の視点から叙述をしたものであることが認められる。そうすると,原告が私人であり,現在は言論活動を行っていないことを考 「日本会議」という団体に関し,その沿革,活動内容,生長の家との関係等について,被告の視点から叙述をしたものであることが認められる。そうすると,原告が私人であり,現在は言論活動を行っていないことを考慮しても,本 件記述1から5までは,公共の利害に係る事実につき,専ら公益を図る目的で表現されたものと認めるのが相当である。 3 争点⑶(本件記述の真実性又は被告が本件記述を真実と信ずべき相当の理由)について⑴ 前提事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア Dは,昭和44年5月に結成された全国学生自治体協議会(以下「全国学協」という。)の初代委員長に選任されたが,同年6月,全国学協の中央委員会において,委員長から解任することが決定された(甲29,71,89の2,乙35)。 イ Dの解任に関し,平成元年11月に出版された山平重樹による「果てな き夢」(二十一世紀書院)には,解任の際に原告が根回しをしていた,原告はDのトップとしての運動への取り組み方に甘さを感じていた,原告の活動家としての力量は群を抜いており,その政治力にかかれば,Dを失脚させるのは容易であったとの記載が,平成23年12月に出版された「伝統と革新」(たちばな出版)中の犬塚博英による「我が体験的維新運動史」に は,原告の完全主義,潔癖主義からすれば,Dは脇が甘く,その点を衝くのは容易であったとの記載が,昭和44年7月5日付け「やまと新聞」には,原告とDとの間に運動方針や人事をめぐり意見の対立があり,全国学協の執行部からDが解任された等の記載がある(乙35~37)。 ウ当時全国学協の副委員長であったFは,Dの解任の理由について,Dの 活動や態度が,第一線の大学において真摯に運動に取り組んでいる者から みて,委 の記載がある(乙35~37)。 ウ当時全国学協の副委員長であったFは,Dの解任の理由について,Dの 活動や態度が,第一線の大学において真摯に運動に取り組んでいる者から みて,委員長として相応しくなかったことによるものであり,本件記述1の内容は事実とは異なるとしている(甲31の1・2,甲71,88,89の1・2)。 エ Dは,平成28年5月27日,「週刊金曜日」の取材において,本件記述1から3までに摘示された原告による謀略の事実を否定する発言をした (甲27の1~3)。 オ被告のDに対するインタビューにおいて,Dは,解任の理由が女性問題等であることについて,否定も肯定もしなかった(被告29・39頁)。 カ被告は,全国学協でDが委員長から解任された理由に関し,原告のほか,当時副委員長であったF,G及び各中央委員の誰からも取材をしていない (弁論の全趣旨)。 キ 「理想世界」は,生長の家の12歳から35歳までの者を対象として発行される機関誌である。 「理想世界」の100万部運動は,昭和47年1月,生長の家H会長が中心となって提起した運動であり,昭和51年1月8日,100万部運動の目標を達成した。 (甲33の1~5,甲35,原告31頁) ク生長の家青年会中央部が昭和51年11月10日に発行した「燃ゆる青春」には,学生が「理想世界」を購入するために借金をすることもあった旨の記載がある。また,同青年会中央部が昭和55年8月24日に発行した「前進せよ百万運動」には,原告が「理想世界」の昭和47年度第一期拡大月間において,全執行委員の実働日数が限界まで高められ,あらゆる 手が打たれなければならないとの発言をしたこと,執行委員は「理想世界」を数百部単位で購入したこと,大学院での研究や大企業への就職 月間において,全執行委員の実働日数が限界まで高められ,あらゆる 手が打たれなければならないとの発言をしたこと,執行委員は「理想世界」を数百部単位で購入したこと,大学院での研究や大企業への就職を止めて100万部運動に取り組んだ者がいたこと,婚姻のための貯金を下ろしたり,生命保険を解約して「理想世界」を購入した者がいたこと,生まれたばかりの子のための育児資金を使って「理想世界」を購入した者がいたこ と,北海道担当中央委員が,昭和49年10月31日,100万部運動の 途中で,連日の活動の疲れによる不慮の事故で死亡したこと等の記載がある。(乙42,44)ケ原告は,昭和47年に生長の家青年会中央事務局長に就任し,100万部運動の目標に賛成して,同運動を推進した。原告は,100万部運動に際し,借金等をして「理想世界」を購入する者が現れることを容認してい た。また,生長の家は,北海道担当中央委員が事故死したとの報告を受けた後も,100万部運動の方針を変更しなかった。(乙28,40,原告15~19・24~26・31頁)。 コ生長の家において100万部運動に関与したI,J,Kらは,100万部運動の遂行において,自殺者が出たとの事実は聞いたことがない旨供述 している。(甲21~23)サ被告は,本件記述4の執筆に当たり,原告のみならず100万部運動を推進した当時の青年会長L,中央執行委員長Hその他の中央執行委員らから取材をしておらず,また,同記述のうち,自殺者が出たとの部分について,文献による裏付けを得ることができなかった(被告12頁)。 シ生長の家は,昭和58年8月,生長の家政治連合の活動を停止し,政治活動への関与を停止する方針を決め,昭和60年9月20日,政治団体との関係を断つ旨の機関決定を各 かった(被告12頁)。 シ生長の家は,昭和58年8月,生長の家政治連合の活動を停止し,政治活動への関与を停止する方針を決め,昭和60年9月20日,政治団体との関係を断つ旨の機関決定を各職員に通達を出して命じた(甲57,71)。 ス原告は,生長の家の上記方針転換を受け,以後,進行による教化活動一本に絞り政治活動に関与しない選択をし,政治活動から退いた(甲71, 原告9頁)。 セ本件記述5において,原告の家で毎月ミーティングをしていると指摘されたE,M,Nは,いずれも同ミーティングの存在を否定している。また,Oは,平成28年8月,「雑誌WiLL」において,原告の自宅を訪れたことは一度もなく,原告の自宅も知らない旨発言している。(甲9,36,3 9,40,42) ソ被告は,本件記述5の執筆に当たり,原告のほか,E,M,N,Oから取材をしていない(弁論の全趣旨)。 ⑵ 判断ア本件記述1から3までについて前記⑴ア,イに認定したとおり,Dは,全国学協の初代委員長に選任さ れた約1か月後に委員長を解任されたこと,原告が根回しをしてDを失脚させた旨記載された文献が存在することが認められる。しかし,他方で,前記⑴ウからオまでに認定したとおり,全国学協のFは,解任の理由は,Dの活動や態度が委員長として相応しくなかったことによるものであり,本件記述1は事実とは異なるとしており,D自身,週刊金曜日の取材にお いて,原告による謀略の事実を否定し,被告のインタビューにおいても,解任の理由が原告の謀略による女性問題であったことを認めていないことからすると,原告による謀略の事実があったとは認められない。 したがって,本件記述1から3までが摘示する事実が真実であるとは認められない。そして,前記⑴カのと 女性問題であったことを認めていないことからすると,原告による謀略の事実があったとは認められない。 したがって,本件記述1から3までが摘示する事実が真実であるとは認められない。そして,前記⑴カのとおり,被告は,Dの解任当時の全国学 協の他の役員らや原告に対する取材を行っていないこと,本件記述1から3までが摘示する事実の客観的な根拠となる文献等が存在しないにもかかわらず,上記事実を摘示したことからすると,上記事実が真実であると信ずるについて相当の理由があるとは認められない。 被告は,本件記述1から3までは,証言者の私怨等がないこと,証言者 が複数人いること,証言が資料に裏付けられていることという条件を満たす「X氏」の証言に基づくものであるから,真実であり,また,被告が真実であると信ずるについて相当な理由があると主張する。しかし,被告は,「X氏」の証言を本件記述1から3までの根拠とするところ,同人の氏名,属性,証言内容等は不明であるし,「X氏」が原告に対し私怨等を抱いて いないとの事実を裏付ける的確な証拠も存在しない。そうすると,本件記 述1から3までにおいて摘示する事実が真実であることの裏付けにはならないというべきである。 イ本件記述4について前記⑴ク,ケに認定したとおり,原告は,昭和47年,生長の家青年会中央事務局長に就任し,「理想世界」の100万部運動の目標値に賛成し て同運動を推進したこと,学生が「理想世界」を購入するために借金をすることもあり,原告はそのような状況を容認していたこと,北海道担当中央委員が,100万部運動の途中で,連日の活動の疲れによる不慮の事故で死亡したこと,生長の家は,北海道担当中央委員が事故死したとの報告を受けた後も100万部運動の方針を変更しなかったことが認められる 央委員が,100万部運動の途中で,連日の活動の疲れによる不慮の事故で死亡したこと,生長の家は,北海道担当中央委員が事故死したとの報告を受けた後も100万部運動の方針を変更しなかったことが認められる が,他方で,前記⑴コに認定したとおり,100万部運動の推進の過程において,自殺した者が存在したとの事実については,当時,生長の家において同運動を推進した者も,聞いたことがない旨供述している。 そうすると,本件記述4の100万部運動の推進の過程において自殺者が出たことや原告がそのような出来事に無関心であったとの事実が真実 であるとは認められない。そして,前記のとおり,被告は,100万部運動が実施された当時の生長の家の関係者や原告に対する取材を行っていないこと,本件記述4が摘示する事実の客観的な根拠となる文献等が存在しないにもかかわらず,「X氏」のほか,具体的な氏名,属性,証言内容の明らかでない複数の取材対象者の証言のみをもって上記事実を摘示し たことからすると,上記事実が真実であると信ずるについて相当の理由があるとは認められない。 被告は,本件記述4は,「X氏」のほか,複数の取材対象者の証言に基づくものであり,文献等の資料にも整合するものであるから,真実であり,また,被告が真実であると信ずるについて相当な理由があると主張する。 しかし,「X氏」のほか,複数の取材対象者の証言のみでは本件記述4の 真実性の裏付けにならないことは,本件記述1から3までにおいて判示したとおりである。 ウ本件記述5について本件記述5は,誰も原告には逆らうことはできず,未だに,E,M,N,Oが毎月原告の家でミーティングをしているはずであり,少なくとも元号 が平成に変わる頃までは原告の家に集まり,原告が運動についての指示 述5は,誰も原告には逆らうことはできず,未だに,E,M,N,Oが毎月原告の家でミーティングをしているはずであり,少なくとも元号 が平成に変わる頃までは原告の家に集まり,原告が運動についての指示を出していたとの事実を摘示する。しかし,前記⑴セに認定したとおり,本件記述5において,原告の家で毎月ミーティングをしていると指摘されたEらは,いずれも同ミーティングの存在を否定していることからすると,未だに原告宅でEらが原告から指示を受けているとする本件記述5記載 の事実が真実であるとは認められない。また,被告は,本件記述5の摘示に当たり,原告のみならず上記Eら3名に対して取材を行うことなく,「X氏」ら取材対象者の証言のみをもって上記事実を摘示しているのであるから,上記事実が真実であると信ずるについて相当の理由があるとは認められない。 被告は,Eに対する取材申込みが無視され,原告に対する取材も断念せざるを得なかった旨主張するが,被告の主張を考慮しても,本件記述5の執筆に当たり,原告やEら3名に対する取材が困難であったとは認められない。 したがって,被告の主張はいずれも採用することができず,本件記述1 から5までにおいて摘示された事実の重要な部分が真実であり又は真実であると信じるにつき相当の理由があるとは認められない。 4 争点⑷(原告の損害)について本件記述1から5までは,原告が不相当な手段でDを失脚させたこと,100万部運動の過程で自殺者が出たことについて無関心であったこと,生長の家 が政治活動を行わない方針を示していたのに原告がこれに反して秘密裡に政治 活動を行っていたことを指摘するものであり,原告の宗教家としての品位に関わる内容であること,本件記述1から5までが記載された本件書籍は少なくと していたのに原告がこれに反して秘密裡に政治 活動を行っていたことを指摘するものであり,原告の宗教家としての品位に関わる内容であること,本件記述1から5までが記載された本件書籍は少なくとも約15万3000部発行され,多数の読者が存在すると推認されることその他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると,原告が本件記述1から5までによって被った精神的苦痛に対する慰謝料は100万円をもって相当と認める。 そして,上記名誉毀損と相当因果関係のある弁護士費用の額については,10万円と認めるのが相当である。 5 争点⑸(謝罪広告掲載の要否)について本件記述1ないし5による原告の社会的評価の低下の程度や,前記4のとおり原告の被告に対する損害賠償請求が一部認容されることなどを総合考慮する と,原告の名誉を回復するために,損害賠償に加えて謝罪広告の掲載を被告に命ずる必要があるとまでは認められない。 6 争点⑹(差止めの可否)について⑴ 名誉を違法に侵害された者は,人格権としての名誉権に基づき,その侵害をした者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵 害を予防するため,侵害行為の差止めを求めることができるが,表現行為に対する事前の抑制は,表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし,厳格かつ明確な要件のもとにおいて許されるというべきであるから,名誉権に基づく出版物の頒布,販売等の事前の差止めは,当該出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価,批判等に関するものである場合 には,その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的ではないことが明白であって,被害者が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに限り,例外的に許されるというべきである(最高裁判所昭和61年6月11日大 が真実でないか又は専ら公益を図る目的ではないことが明白であって,被害者が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに限り,例外的に許されるというべきである(最高裁判所昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁参照)。そして,私人の名誉権が侵害されている場合においても,表現行為に対する事前の抑制は,表現の自 由を保障し検閲を禁止する憲法21条の趣旨に照らし,厳格かつ明確な要件 のもとにおいて許されるべきであるから,出版物の頒布,販売等の差止めは,その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって,被害者が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに限り,例外的に許されると解するのが相当である。 ⑵ 本件記述1から5までが真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでは ないことが明白であるか否かについてア前記2において判示したとおり,本件記述1から5までは,原告が私人であることを考慮しても,専ら公益を図る目的で表現されたものと認めるのが相当であるから,専ら公益を図る目的のものではないことが明白であるとはいえない。 イ前記3⑴イに認定したとおり,原告がDの失脚に関与したとの記載のある文献が複数存在することからすると,原告が具体的にとった行動の内容は不明であるものの,本件記述1から3までに記載された不相当な行為を行ったとの事実が真実ではないことが明白であるとまではいえず,したがって,本件記述1から3までに記載された内容が真実でないことが明白で あるとまでは認められない。 また,前記3⑴ケに認定したとおり,原告は生長の家青年会中央事務局長に就任後,「理想世界」の100万部運動を推進し,借金等をして「理想世界」を購入する者が現れることを容認していたこ 認められない。 また,前記3⑴ケに認定したとおり,原告は生長の家青年会中央事務局長に就任後,「理想世界」の100万部運動を推進し,借金等をして「理想世界」を購入する者が現れることを容認していたこと,生長の家は北海道担当中央委員が事故死したとの報告を受けた後も,100万部運動の方 針を変更しなかったことが認められる。原告は,100万部運動に携わる中で事故死する者がいても,運動方針の変更の意見を述べなかったのであり,このことに照らすと,100万部運動の過程で自殺者が出たことについて原告が無関心であったとの事実が真実でないことが明白であるとまではいえない。 さらに,本件記述5についても,生長の家における原告の立場や,過去 における原告の政治活動の実績等に鑑みれば,本件記述5に記載された内容が真実でないことが明白であるとまでは認めるに至らない。 ⑶ 原告が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれがあるか否かについてア本件記述1から3までについては,原告が権力闘争の場面で不相当な手段を用いたことが指摘されているから,宗教家としての原告が一定の精神 的苦痛を受けたことは否定できない。 しかし,本件記述1から3までは,原告が大学生であった時代の学生運動を背景とした記述であり,必ずしも現時点での宗教家としての原告の姿勢の是非と結び付くものではない。したがって,本件記述1から3までに記載された内容により,原告が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれ があるとまではいえない。 イ本件記述4については,原告が信者の人命を軽視するような態度をとっていたことが指摘されているから,宗教家としての原告が一定の精神的苦痛を受けたことは否定できない。 しかし,本件記述4は,原告が直接的に信者の自殺に関与した事実や, を軽視するような態度をとっていたことが指摘されているから,宗教家としての原告が一定の精神的苦痛を受けたことは否定できない。 しかし,本件記述4は,原告が直接的に信者の自殺に関与した事実や, 積極的に信者の自殺を是認した事実までを摘示するものではない。したがって,本件記述4に記載された内容により,原告が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれがあるとまではいえない。 ウ本件記述5についても,生長の家が政治活動を行わない方針を決定した昭和58年8月以降も,原告が秘密裡に政治活動に関与していたとの事実 を指摘するものであり,同記述により,原告は生長の家において培ってきた宗教家としての信頼を失い,教団との間において軋轢が生じたことが窺われるが,これにより原告が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれがあるとまでは認められない。 ⑷ 以上のとおり,本件記述1から5までは,原告の社会的評価を低下させる ものと認められるが,本件書籍の頒布,販売等の差止めを認めるべき要件を 満たすということはできない。 7 結論以上によれば,原告の請求は,被告に対し,110万円及びこれに対する平成28年5月1日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余 は理由がないからいずれもこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第25部 裁判長裁判官鈴木昭洋 裁判官窓岩亮佑 裁判官阿波野右起は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官鈴木昭洋 (別紙)謝罪広告 亮佑 裁判官阿波野右起は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官鈴木昭洋 (別紙)謝罪広告目録 1 掲載紙及び種類産経新聞全国版 2 謝罪広告の内容私,被告は,平成28年5月1日付けで扶桑社新書として(株)扶桑社から出版し発表をした著書「日本会議の研究」において,原告に関し虚偽の事実を記載して名誉を毀損し同人の人格的利益を著しく侵害しました。ここに深く謝罪を致しますとともに,同人の名誉を毀損した部分についての記述は根拠がない虚偽であったことを認め,全て撤回致します。 平成年月日著述業被告 3 掲載の体裁突出広告(横55mm,縦84mm)本文は,12ポイント以上の活字による。 以上 (別紙)著作物目録 題号「日本会議の研究」発行者久保田榮一 発行所株式会社扶桑社発行日平成28年5月1日初版著者被告以上
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