平成31(ネ)10006 特許権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和元年5月29日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成29(ワ)28884
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令和元年5月29日判決言渡平成31年(ネ)第10006号特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第28884号)口頭弁論終結日平成31年4月24日判決 控訴人ベー・エル・アー・ハー・エム・エス・ゲーエムベーハー 訴訟代理人弁護士古城春実同牧野知彦訴訟代理人弁理士松谷道子同田村啓同呉英燦同坂田啓司 被控訴人ラジオメーター株式会社 訴訟代理人弁護士北原潤一同米山朋宏訴訟代理人弁理士小林浩補佐人弁理士杉山共永 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,原判決別紙物件目録記載1の装置を製造し,譲渡し,輸入し,貸し渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 3 被控訴人は,原判決別紙物件目録記載2のキットを製造し,譲渡し,輸入し,譲渡の申出をしてはならない。 4 被控訴人は,その占有に係る第2項及び第3項記載の各製品を廃棄せよ。 5 被控訴人は,控訴人に対し,900万円及びこれに対する平成29年9月2日から し,輸入し,譲渡の申出をしてはならない。 4 被控訴人は,その占有に係る第2項及び第3項記載の各製品を廃棄せよ。 5 被控訴人は,控訴人に対し,900万円及びこれに対する平成29年9月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略語は,特に断りのない限り,原判決の例による。) 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「敗血症及び敗血症様全身性感染の検出のための方法及び物質」とする特許(特許第5215250号。請求項の数1。以下「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である控訴人が,原判決別紙物件目録記載1の装置(以下「被告装置」という。)及び同目録記載2のキット(以下「被告キット」という。)を用いる敗血症及び敗血症様全身性感染の検出に係る方法(以下「被告方法」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属し,被控訴人による被告装置の製造,譲渡,輸入,貸渡し,譲渡又は貸渡しの申出(以下「製造等」という。)が本件特許権の間接侵害(特許法101条5号)に当たり,被控訴人による被告キットの製造等(ただし,被告キットについては貸渡し及び貸渡しの申出を除く。以下同じ。)が本件特許権の間接侵害(同条4号)に当たると主張して,被控訴人に対し,①特許法 100条1項に基づき,被告装置及び被告キットの製造等の差止め,②同条2項に基づき,被告装置及び被告キットの廃棄を求めるとともに,③本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として900万円及びこれに対する不法行為の後である平成29年9月2日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,被告方法は本件発明の技 00万円及びこれに対する不法行為の後である平成29年9月2日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は,被告方法は本件発明の技術的範囲に属するとはいえないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。 控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起した。 2 前提事実原判決2頁20行目から3頁2行目までを次のとおり改めるほか,原判決「事実及び理由」の第2の2(2頁11行目~4頁4行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 「ア控訴人は,平成11年10月13日(優先日平成10年10月15日,優先権主張国ドイツ)を国際出願日とする特許出願(特願2000-576286号。)の一部を分割して,平成21年6月26日,発明の名称を「敗血症及び敗血症様全身性感染の検出のための方法及び物質」とする発明について特許出願(特願2009-152844号。以下「本件出願」といい,本件出願の願書に添付した明細書を図面を含めて「本件明細書」という。)をし,平成25年3月8日,本件特許権の設定登録を受けた(甲1,2)。」 3 争点⑴ 被告方法は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)⑵ 特許法101条5号及び同条4号の間接侵害の成否(争点2)⑶ 無効の抗弁の成否(争点3)ア本件発明は特表平8-501151号公報により新規性又は進歩性を欠くか(争点3-1)イ本件特許は特許法36条4項1号に違反しているか(争点3-2) ⑷ 損害の発生の有無及びその額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告方法は本件発明の技術的範囲に属するか)について⑴ 控訴人の主張ア 「患者の血清中でプロカルシトニン3-116 びその額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告方法は本件発明の技術的範囲に属するか)について⑴ 控訴人の主張ア 「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」の意義本件明細書には,健常者の血中からはプロカルシトニンがほとんど検出されない一方で,敗血症患者の血中からは健常者よりも2桁以上高い濃度のプロカルシトニンが検出されること,敗血症患者の血中から検出されるプロカルシトニンの大部分がプロカルシトニン3-116であり,それ以外のプロカルシトニン1-116等のタンパク質の量は質量基準で2%以下であったことが教示されている(【0002】~【0008】,【0010】,【0030】,【0035】,【0062】,表3,図5)。 これらの教示から,患者の血清中でプロカルシトニン1-116等とプロカルシトニン3-116を区別することなくプロカルシトニン一般を測定したとしても,敗血症等の検出に必要な精度でプロカルシトニン3-116を測定できることが当業者に明らかである。 また,本件明細書には,本件特許に係る「敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」の具体例として,健常者と敗血症患者の血中から検出されるプロカルシトニンの濃度を一般的なイムノアッセイにより測定することが記載されているが(【0062】,表3),通常のイムノアッセイでは,プロカルシトニン1-116と区別してプロカルシトニン3-116を測定することは不可能である。 以上によれば,構成要件Aの「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」とは,敗血症患者の血清中でプロカルシトニン3-116を敗血症の検出に必要な精度で測定することをいうと解すべきであり,プロカルシトニン1-116と区別してプロカルシトニン3-11 を測定すること」とは,敗血症患者の血清中でプロカルシトニン3-116を敗血症の検出に必要な精度で測定することをいうと解すべきであり,プロカルシトニン1-116と区別してプロカルシトニン3-11 6を測定することを必須とするものではない。 イ被告方法(ア) 被告方法は,被告装置及び被告キットを用いる敗血症及び敗血症様全身性感染の検出に係る方法である。 そして,被告装置及び被告キットを使用すると,患者の検体中において,プロカルシトニン3-116とプロカルシトニン1-116とを区別することなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度を測定できるところ,前記アのとおり,本件発明により明らかにされた,敗血症等の患者血清中では他のプロカルシトニンと比してその大部分がプロカルシトニン3-116であるとの知見を併せると,被告方法は,「プロカルシトニン3-116を測定」するものといえる。 また,被告装置で用いられる検体は「全血又は血漿」であるが,プロカルシトニン3-116は血清中に存在するものであるから,被告装置で測定している「プロカルシトニン3-116」は「患者の血清中」のプロカルシトニン3-116である。 したがって,被告方法は,構成要件Aを充足する。 (イ) さらに,被告方法は,前記(ア)の測定結果をもって,敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するものであるから,構成要件Bを充足する。 ウ小括以上のとおり,被告方法は,本件発明の全ての構成要件を充足するものであるから,本件発明の技術的範囲に属する。 ⑵ 被控訴人の主張ア 「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」の意義構成要件Aは,「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定することを含む」と規定しているから ⑵ 被控訴人の主張ア 「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」の意義構成要件Aは,「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定することを含む」と規定しているから,その文言を素直に解すると,構成要件Aは,ある方法を実行することにより,プロカルシトニン3-116の 存在を検出し,その濃度等の量を明らかにすることが求められているといえる。 したがって,敗血症等の患者の血清中では大部分がプロカルシトニン3-116であるとの知見を踏まえると,検体となった患者の血清中のプロカルシトニンの多くはプロカルシトニン3-116のはずであるという事情があるとしても,プロカルシトニン3-116を区別することなくプロカルシトニン一般を測定しているだけでは,「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定」しているとはいえない。 イ被告方法(ア) 被告方法においては,被告装置及び被告キットを使用して敗血症等を検出する過程で,プロカルシトニン3-116の量が明らかにされているとは認められず,プロカルシトニン3-116の存在自体も明らかになっているとはいえない。 したがって,被告方法は,構成要件Aを充足しない。 (イ) 被告方法が構成要件Bを充足することは認める。 ウ小括以上のとおり,被告方法は,本件発明の全ての構成要件を充足するものではないから,本件発明の技術的範囲に属するものではない。 2 争点2ないし4について原判決「事実及び理由」の第3の2ないし4(5頁24行目~9頁20行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第4 当裁判所の判断当裁判所も,被告方法は本件発明の技術的範囲に属するものと認めることはできないから,控訴人の請求はいずれも理由が ~9頁20行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第4 当裁判所の判断当裁判所も,被告方法は本件発明の技術的範囲に属するものと認めることはできないから,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 本件明細書の記載事項等について ⑴ 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,以下のとおりである。 「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定することを含む,敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明には,次のような記載がある(下記記載中に引用する「図1,2,5及び表3」については別紙を参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,敗血症及び敗血症様全身性感染において,プロカルシトニン又はプロカルシトニンの部分ペプチド(partialpeptides)の発生に関係する,新規な,実験的に確認された発見から導かれる,新規な診断及び治療の可能性に関する。 【背景技術】【0002】特許DE 42 27 454 及びEP 0 656 121 B1 及びUS 5,639,617 は,敗血症の危険を有する患者及び敗血症の典型的な症候が見られる患者の血清又は血漿中のプロホルモンのプロカルシトニン及びそこから得られる部分ペプチドの測定が,早期検出にとって,すなわち敗血症に至らしめるかもしれない感染の検出及び非感染性の病因との鑑別,重大性の検出,及び,敗血症及び敗血症様全身性感染の治療の成果の評価にとって,有益な診断手段であること開示している。…イ 【発明が解決しようとする課題】【0006】プロカルシトニンは,カルシトニンのプレホルモンとして既知となっており,その完全なアミノ酸配列は古くから な診断手段であること開示している。…イ 【発明が解決しようとする課題】【0006】プロカルシトニンは,カルシトニンのプレホルモンとして既知となっており,その完全なアミノ酸配列は古くから知られている(FEBS 167 (1984),93-97 頁)。プロカルシトニンは,甲状腺のC細胞において,通常の状態で産生されており,それから,特異的開裂によってホルモンのカルシトニン になり,さらに,部分ペプチドのカタカルシン及び57のアミノ酸を含むN-末端残基(「アミノプロカルシトニン」)となる。 【0007】敗血症の間のプロカルシトニンの生成に重要である器官もしくは細胞又は組織に関する実験資料によってサポートされているものもいくつか存在する前記技術文献中には異なる意見もあるが,敗血症のケースでは,甲状腺を完全に除去した患者からでさえも,著しく高いプロカルシトニンレベルが観察されることもあるので,敗血症患者の血中に検出可能なプロカルシトニンが,甲状腺の外で形成されると結論付けることが必要であった。 【0008】敗血症において「プロカルシトニン」として測定されるペプチドの性質に関して,実際,その特定のペプチドが,甲状腺においてカルシトニン前駆体として形成される完全な長さの既知のプロカルシトニンと完全に同一である必要はないことは,上述の患者におけるアウトセットから明らかにされている。しかしながら,敗血症のケースで形成されるプロカルシトニンが甲状腺で形成されるプロカルシトニンと異なるのかどうかという疑問は,現在まで答えが得られていない。あり得る違いは,既知のプロカルシトニンの,糖化(グリコシレーション),リン酸化あるいは一次構造の修飾等の翻訳後の修飾,さらに,変性した,短くされたあるいは長くされたアミノ酸配列であった ていない。あり得る違いは,既知のプロカルシトニンの,糖化(グリコシレーション),リン酸化あるいは一次構造の修飾等の翻訳後の修飾,さらに,変性した,短くされたあるいは長くされたアミノ酸配列であった。今日まで分析アッセイ方法は,カルシトニン前駆体として既知のプロカルシトニンと,敗血症の場合に形成されるプロカルシトニンとの間の違いを明らかにしなかったので,敗血症のケースで形成されるプロカルシトニンは,カルシトニン前駆体と同一であり,ゆえに,既知の116アミノ酸のプロカルシトニン配列を有するペプチド(プロカルシトニン1-116)であると暫定的,一般的に見なされていた。 ウ 【課題を解決するための手段】 【0009】しかしながら,出願人の研究室における測定によって明らかにされ,本出願の実験部分により詳細に説明されているように,敗血症のケースで形成されるプロカルシトニンは,甲状腺で形成される完全なプロカルシトニン1-116とは,わずかだが重大な違いがある。見出された違いは,それから,新規な診断及び治療方法,そこで使用可能な物質,及び,遂行され得る科学的アプローチにおいて実施可能な多数の科学的結論を導き出した。 【0010】本出願において開示される発明の開始点は,敗血症及び敗血症様全身性感染のケースにおいて患者血清中に比較的高濃度で検出可能なプロカルシトニンが,116のアミノ酸を含む完全なプロカルシトニン1-116ではなく,そのアミノ末端がジペプチド分短くなっているが他は同一であり,114のアミノ酸のみのアミノ酸配列を有するプロカルシトニン(プロカルシトニン3-116)であるという驚くべき発見である。 【0011】完全なプロカルシトニンと比べて欠落している前記ジペプチドは,Ala-Pro 構造を有している。完全なプ カルシトニン(プロカルシトニン3-116)であるという驚くべき発見である。 【0011】完全なプロカルシトニンと比べて欠落している前記ジペプチドは,Ala-Pro 構造を有している。完全なプロカルシトニン配列のアミノ末端の二番目のアミノ酸としてのプロリン残基を含むジペプチドの欠落は,特定のペプチダーゼ,すなわち,いわゆるジペプチジル-(アミノ)-ペプチダーゼIV(DPIV 又はDAPIV 又はCD 26)が,敗血症のケースで検出されるプロカルシトニン3-116の生成に役割を果たすかもしれないという推測を導く。 【0013】より正確に得られた結果はさらに,敗血症及び全身性感染のケースの高濃度のプロカルシトニンの発生は孤立した現象ではなく,同様に,他のプ ロホルモンもまた高濃度で測定可能であり,その結果,そのようなプロホルモンの測定が,プロカルシトニン測定に代えて可能であるか又は個々のケースのプロカルシトニン測定を補足するか,もしくは,さらにそれを診断上の意義のある方法で確認するのに適している,という仮説の展開をもたらした。 エ 【発明を実施するための形態】【0017】プロカルシトニン3-116が実際に炎症過程と関連し,特異的分子レセプター又は類似した特異的バインダーがこの短くされたプロカルシトニンに対して存在するのであれば,プロカルシトニン3-116の使用,又は,プロカルシトニン3-116のレセプターと相互作用するアゴニスト及びアンタゴニストの使用によって,敗血症の進行に影響を与え,それがきっかけとなって起こる生理反応に,そして炎症過程にも影響を与えることができる新規な治療の可能性が開かれる。プロカルシトニン3-116の特異的バインダー,例えば,選択的抗体,の使用は,ここで伝えられる発見によって 起こる生理反応に,そして炎症過程にも影響を与えることができる新規な治療の可能性が開かれる。プロカルシトニン3-116の特異的バインダー,例えば,選択的抗体,の使用は,ここで伝えられる発見によって明らかにされる治療アプローチでもある。 【0018】結局,敗血症及び全身性感染のケースでジペプチジル-アミノペプチダーゼIV がプロカルシトニン3-116の生成に役割を果たすかもしれないということは,更なる仮説,すなわち,例えば適当な選択的バインダー,抗体又は類似のレセプター分子によってそれをブロックすることによりジペプチジル-アミノペプチダーゼIV の活性に影響を与え,それによって,敗血症及び敗血症様炎症過程に治療上の影響を与えることも可能かもしれないという仮説を導く。 オ 【実施例】【0023】 実験セクションA. 敗血症患者の血清からの内因性プロカルシトニンペプチドの単離と確認重度の敗血症に苦しむ複数の患者からの血清サンプルを混合することによって,総容量68ml の混合血清が調製された。得られたプール血清中のプロカルシトニン濃度は,市販のプロカルシトニンアッセイ(LUMItestPCT,B.R.A.H.M.S. Diagnostica)を用いて測定したところ,280ng/ml(総量19μg)であった。前記プール血清は,同量のバッファー(68ml;10mMEDTA,1mg/ml マウス-IgG,2mg/ml ヒツジ-IgG,2mg/ml ウシ-IgG,0.1mmol ロイペプチン,PBS 中50μM アマスタチン)と混合し,そのサンプル中に含まれるプロカルシトニンを,アフィニティークロマトグラフィーによって単離及び精製した。 【0025】この方法で集められた物質は,rpC18 カラムμBonda チン)と混合し,そのサンプル中に含まれるプロカルシトニンを,アフィニティークロマトグラフィーによって単離及び精製した。 【0025】この方法で集められた物質は,rpC18 カラムμBondapak 0.4×30mm(Waters より)での逆相HPLC によって精製した。…【0027】そのカラム流出物は,214nm での吸収によって持続的に測定され,0. 25ml のフラクションが集められた。市販のプロカルシトニンアッセイ(LUMItestPCT, B.R.A.H.M.S. Diagnostica)を用いて,PCT 免疫反応性を検出できたフラクションを決定した。主要な免疫反応性を有する部分が,シャープなバンドとして51番目のフラクションに溶離したことが見出された。加えて,不均一な組成及び低いPCT免疫反応性を有するタンパク質フラクションが,39から49のフラクションにて得られた。 【0028】図1は,前記rpHPLC の,集められた各フラクションについて決定され,溶離したフラクションの吸光度(OD)を示す曲線に重ね合わせたPCT 免疫 反応性(ngPCT/ml で表される)を示す。 【0029】ポジティブなプロカルシトニン免疫反応性を有する全てのフラクションを,窒素ガス処理によって乾燥させた。その後,それらのサンプルをマススペクトロメトリーで分析し,N-末端塩基配列決定を行った。 【0030】前記マススペクトロメトリー分析(MSLDI-TOF 法)では,図2に示されるプロファイルが,フラクション50-52に対して得られ,そのプロファイルから,12640±15のモル質量という結果となった。マススペクトロメトリーで調べられた他のフラクション(36-49,53-59)はすべて,12640未満のモル 52に対して得られ,そのプロファイルから,12640±15のモル質量という結果となった。マススペクトロメトリーで調べられた他のフラクション(36-49,53-59)はすべて,12640未満のモル質量で不均一な質量分布を示した。それらの個々の質量は,フラクション50-52の質量の強度と比べて2%未満の強度を与えた。このように,敗血症患者血清中のプロカルシトニン免疫反応性が,12640±15の質量と関連があることが示された。 【0031】フラクション36-59中に含まれるペプチドのN-末端塩基配列決定を行った。ここでも,フラクション36-49及び53-59の内容が不均一であると証明された。すなわち,N-末端の多様性が測定された。 【0032】その優勢なプロカルシトニン免疫反応性がわかったフラクション50-52では,そこに含まれるペプチドが明らかに以下のN-末端(15のアミノ酸):PheArgSerAlaLeuGluSerSerProAlaAspProAlaThrLeu を有することが明らかになった。 【0033】それから,フラクション50-52からのペプチドは,プロテアーゼGlu-C 又はトリプシンを用いて消化され,得られたフラグメントは,SMART- HPLC によってそれ自身は既知である方法で元に戻され,それから,マススペクトロメトリーと配列分析によって調べられた。 【0034】既知のプロカルシトニン1-116のアミノ酸3-116の配列と完全に対応した配列が得られた。その配列の理論上の質量は12627であったが,これはマススペクトロメトリーにより測定された12640±15の質量と一致する。 【0035】したがって,114のアミノ酸を含み且つプロカルシトニン3-116と の質量は12627であったが,これはマススペクトロメトリーにより測定された12640±15の質量と一致する。 【0035】したがって,114のアミノ酸を含み且つプロカルシトニン3-116としてデザインされたプロカルシトニンペプチドが敗血症患者の血液中を循環することが示された。…【0036】前記プロカルシトニン3-116は,可能性のある内因性プロカルシトニン部分ペプチドとしては,現在に至るまで科学論文で論じられておらず,それゆえに,当業者にとって,今日までに,具体的に,このペプチドを調製し,その性質についてそれを調べる理由もない。しかしながら,上記発見は,今や,遺伝子工学技術によって前記プロカルシトニン3-116の具体的な調製の理由をもたらしている。…【0059】D.2.敗血症患者からの血清及び健常者からの血清中のpro-ANF,pro-ADM,pro-END 及びpro-BNP の決定プレホルモンであるpro-ANF,pro-ADM,pro-END 及びpro-BNP の決定については,アッセイは,DRG(DRGInstrumentsGmbH, D-35018 Marburg,ドイツ)からキットの形態で市販されており,製造者の指示に従って次の測定に用いられた。 【0062】 20人の正常者A-T の群の血清及び敗血症患者20人の血清において,上述のプロホルモンと,それらと同時に,プロカルシトニンとを決定した。 その結果は以下の表3に要約されている。表3のデータは,図5から9にグラフでも示している。 【0063】示された結果は,正常者に比べると,敗血症患者のケースでは,測定されたプロホルモン全ての値でおおよそ明確な増加を示すが,正常者と敗血症患者の間の差違はプロカルシト ている。 【0063】示された結果は,正常者に比べると,敗血症患者のケースでは,測定されたプロホルモン全ての値でおおよそ明確な増加を示すが,正常者と敗血症患者の間の差違はプロカルシトニンの決定において最も際立っている。 ⑵ 前記⑴の記載事項によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明に関し,次のような開示があることが認められる。 ア 「本発明」は,敗血症等において,プロカルシトニン又はその部分ペプチドの発生に関係する新規の発見から導かれる,新規の診断及び治療の可能性に関する(【0001】)。 イ従来技術として,敗血症の危険を有する患者及び敗血症の典型的な症候が見られる患者の血清又は血漿中のプロカルシトニン及びそこから得られる部分ペプチドの測定が,敗血症に至らしめる感染の検出,非感染性の病因との鑑別,重大性の検出,敗血症等の治療の成果の評価にとって有益な診断手段であることが知られていたが,敗血症のケースで形成されるプロカルシトニンが甲状腺のC細胞において形成される既知のプロカルシトニン1-116と異なるかどうかは,明らかでなかった(【0002】,【0006】~【0008】)。 ウ 「本発明」の開始点は,敗血症等の患者の血清中に比較的高濃度で検出可能なプロカルシトニンが,プロカルシトニン1-116ではなく,プロカルシトニン3-116であるという発見であり,そこから新規な診断及び治療方法,そこで使用可能な物質等を導き出した(【0009】,【0010】)。 2 争点1(被告方法は本件発明の技術的範囲に属するか)について⑴ 「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」の意義についてア(ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明の「プロカルシトニン 囲に属するか)について⑴ 「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」の意義についてア(ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明の「プロカルシトニン3-116」は,「患者の血清中」から「測定」されるものであり,測定結果が「敗血症及び敗血症様全身性感染」の「検出」のために用いられることを理解できる。 そして,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,「プロカルシトニン3-116を測定すること」の意義について規定する記載はないが,「測定」とは,一般的に,「長さ,重さ,速さなど種々の量を器具や装置を用いてはかること」(大辞林(第3版))との意味を有する。 したがって,特許請求の範囲の記載によれば,本件発明の「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」とは,患者の血清中のプロカルシトニン3-116の量を明らかにすることを意味するものと解される。 (イ) また,本件明細書の発明の詳細な説明には,従来技術として,患者の血清中のプロカルシトニンの測定が,敗血症の検出にとって有益な診断手段であることが知られていたこと,「本発明」の開始点は,敗血症等の患者の血清中に比較的高濃度で検出可能なプロカルシトニンが,プロカルシトニン1-116ではなく,プロカルシトニン3-116であるという発見であり,そこから新規な診断及び治療方法,そこで使用可能な物質等を導き出したことの開示がある(前記1⑴イ)。一方,本件明細書の発明の詳細な説明には,「プロカルシトニン3-116を測定すること」の意義について明示した記載はない。 そして,このような本件明細書の記載に照らしても,本件発明の「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」とは,患者 の血清中のプロカルシトニン3-1 記載はない。 そして,このような本件明細書の記載に照らしても,本件発明の「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」とは,患者 の血清中のプロカルシトニン3-116の量を明らかにすることを意味し,その測定結果が敗血症等の検出に用いられることを理解できる。 (ウ) 以上の特許請求の範囲及び本件明細書の記載事項を総合すると,「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」とは,患者の血清中のプロカルシトニン3-116の量を明らかにすることを意味するものと解される。 イこれに対し控訴人は,構成要件Aの「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」とは,敗血症患者の血清中でプロカルシトニン3-116を敗血症の検出に必要な精度で測定することをいうと解すべきであり,プロカルシトニン1-116と区別してプロカルシトニン3-116を測定することを必須とするものではない旨主張し,その根拠として,①本件明細書の記載事項(【0002】~【0008】等)から,患者の血清中でプロカルシトニン1-116等とプロカルシトニン3-116を区別することなくプロカルシトニン一般を測定したとしても,敗血症等の検出に必要な精度でプロカルシトニン3-116を測定できることが当業者に明らかであること,②本件明細書には,本件特許に係る「敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」の具体例として,血中から検出されるプロカルシトニンの濃度を一般的なイムノアッセイにより測定することが記載されているが(【0062】,表3),通常のイムノアッセイでは,プロカルシトニン1-116と区別してプロカルシトニン3-116を測定することは不可能であることを挙げる。 しかしながら,「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定す 常のイムノアッセイでは,プロカルシトニン1-116と区別してプロカルシトニン3-116を測定することは不可能であることを挙げる。 しかしながら,「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定すること」とは,患者の血清中のプロカルシトニン3-116の量を明らかにすることを意味するものと認められることについては,前記アのとおりである。 上記①の点については,患者の血清中のプロカルシトニン3-116を プロカルシトニン1-116等と区別することなく測定することとは,患者の血清中のプロカルシトニンを測定することと同義であるところ,本件明細書には,患者の血清中のプロカルシトニン濃度を測定することにより敗血症等を検出する技術は,本件出願の優先日前に従来技術として存在したものであり,「本発明」は,かかる従来技術に対して新規のものである旨が記載されていること(前記1⑵イ,ウ)からすると,かかる従来技術が本件発明に係る方法に含まれると解することはできない。 なお,本件明細書には,敗血症等の患者の血清中に含まれるプロカルシトニンの大部分がプロカルシトニン3-116であることを発見した旨の記載があるが(【0009】,【0010】),たとえそのような関係があるとしても,プロカルシトニン3-116を測定することと,プロカルシトニン一般を測定することとが同義とはいえないことは明らかである。更に付け加えれば,敗血症等の患者の血清中に含まれるプロカルシトニンの大部分はプロカルシトニン3-116であるとの知見が存在するとしても,敗血症等であるかどうかが明らかではない(だからこそ,その診断を要する)患者については,その血清中のプロカルシトニンの大部分がプロカルシトニン3-116であるかどうかは明らかではないはずである。したがって,敗血症等である 明らかではない(だからこそ,その診断を要する)患者については,その血清中のプロカルシトニンの大部分がプロカルシトニン3-116であるかどうかは明らかではないはずである。したがって,敗血症等であるかどうかの診断に当たり,検出されたプロカルシトニン一般の大部分がプロカルシトニン3-116であるとの前提に立つことはできないというべきであるから,上記知見の存在は,前記アの判断を左右するものではない。 また,上記②の点については,本件明細書には,正常者及び敗血症患者の血清中のプロカルシトニン濃度を測定した旨が記載されているところ(【0062】),【0062】に明示の記載はないが,上記測定は,【0023】と同様に,市販のプロカルシトニンアッセイを用いて行われたものと理解することができる。 しかしながら,本件明細書には,かかる測定は,これと同時に行われたこれらの者の血清中のプロホルモン濃度の測定結果と対比することにより,正常者と敗血症患者の間の濃度の差異がプロカルシトニンにおいて際立っていることを示すものである旨の記載があることからすると(【0059】,【0062】,【0063】,表3),上記測定が,本件特許に係る「敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法」の具体例として記載されたものであるとは認められない。したがって,上記②の主張は,その前提を誤るものである。 以上によれば,控訴人の上記主張を採用することはできない。 ⑵ 被告方法について前記前提事実のとおり,被告装置及び被告キットを使用すると,患者の検体中において,プロカルシトニン3-116とプロカルシトニン1-116とを区別することなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度を測定することができ,その測定結果に基づき敗血症の鑑別診断等が行われていると認め ロカルシトニン3-116とプロカルシトニン1-116とを区別することなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度を測定することができ,その測定結果に基づき敗血症の鑑別診断等が行われていると認められるものの,本件全証拠によっても,被告装置及び被告キットを使用して敗血症等を検出する過程で,プロカルシトニン3-116の量が明らかにされているとは認められない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告方法は,構成要件Aを充足するものとはいえない。 ⑶ 小括以上によれば,被告方法は,本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。 3 結論以上のとおり,被告方法は,本件発明の技術的範囲に属するものとは認められないから,被控訴人による被告装置及び被告キットの製造等は本件特許権の間接侵害に当たるものではなく,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相 当である。 したがって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官上田卓哉 裁判官山門優 (別紙)【図1】 【図2】 【図5】 【表3】 主文 理由 事実 争点 判断

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