主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 令和7年7月20日に行われた参議院(選挙区選出)議員選挙の愛知県選挙区、岐阜県選挙区及び三重県選挙区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要等 1 本件は、令和7年7月20日に行われた参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」という。)について、愛知県選挙区、岐阜県選挙区及び三重県選挙区の選 挙人である原告らが、公職選挙法14条、別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定(以下、数次の改正の前後を通じ、平成6年法律第2号による改正前の別表第2を含め、「定数配分規定」という。)は憲法に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(争いのない事実、当裁判所に顕著な事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨)⑴ 本件選挙は、令和7年7月20日、平成30年法律第75号(以下「平成30年改正法」という。)による改正(以下「平成30年改正」という。)後の公職選挙法14条、別表第3の参議院定数配分規定(以下「本件定数配 分規定」という。)に基づいて行われた。本件定数配分規定に基づく参議院議員通常選挙(以下、参議院議員通常選挙のことを単に「通常選挙」という。)は、令和元年7月21日の通常選挙(以下「令和元年選挙」という。)及び令和4年7月20日の通常選挙(以下「令和4年選挙」という。)に引き続いて3回目である。 ⑵ 原告Aは本件選挙の愛知県選挙区の、原告Bは本件選挙の岐阜県選挙区の、 原告Cは本件選挙の三重県選挙区の各選挙人である。 ⑶ 本件選挙当日の選挙区間におけ いて3回目である。 ⑵ 原告Aは本件選挙の愛知県選挙区の、原告Bは本件選挙の岐阜県選挙区の、 原告Cは本件選挙の三重県選挙区の各選挙人である。 ⑶ 本件選挙当日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差(以下、各選挙当時の「選挙区間の最大較差」というときは、この選挙人数の最大較差をいう。)は、選出される議員1人当たりの選挙人数が最小の福井県選挙区を1とした場合、最大の神奈川県選挙区3.13(以下、較差に 関する数値は、全て概数である。)であり、愛知県選挙区は2.47、岐阜県選挙区は2.60、三重県選挙区は2.32であった(乙1)。 ⑷ 原告らは、令和7年7月22日、本件訴えを提起した。 3 争点本件定数配分規定が憲法に違反して無効であるか否か 4 原告らの主張⑴ 本件定数配分規定は、人口比例に基づいて定数配分をしておらず、憲法56条2項、1条、前文第1項第1文冒頭に基づく人口比例選挙の要求に反しているので、憲法98条1項により無効である。 ⑵ 最高裁令和5年(行ツ)第54号同年10月18日大法廷判決・民集77 巻7号1654頁(以下「令和5年大法廷判決」という。)が、国会に対し、限りなく強く「較差の更なる是正」、「選挙制度の仕組み自体の見直し」又は「選挙制度の仕組み自体の抜本的見直し」を求めていると解されることは、令和5年大法廷判決にこれらの文言が多数回用いられていることから明らかであるし、令和5年大法廷判決に「較差の更なる是正を図ること等は喫緊の 課題というべきである。」、「事柄の性質上慎重な考慮を要するにせよ、立法府においては…較差の更なる是正等の方策について具体的に検討した上で、広く国民の理解も得られるような立法的措置を講じていくことが求められる。」と明確に判示さ 柄の性質上慎重な考慮を要するにせよ、立法府においては…較差の更なる是正等の方策について具体的に検討した上で、広く国民の理解も得られるような立法的措置を講じていくことが求められる。」と明確に判示されているにもかかわらず、国会がこれに応ずることはなく、令和元年選挙及び令和4年選挙と同一の本件定数配分規定の下で本件 選挙が行われた。本件選挙における選挙区間の最大較差3.13は、令和元 年選挙及び令和4年選挙におけるそれら(順に3.00、3.03)と比べて、「較差の更なる是正」とは真逆の著しい後退であり、令和5年大法廷判決に反している。 ⑶ 憲法前文第1項第2文における「国民」は国政を信託する委託者兼受益者で、「国民の代表者」は国政の受託者であるところ、これは憲法47条の解 釈基準となる。そして、国政の福利は、委託者兼受益者である国民が享受し、受託者である国民の代表者がこれを享受する余地はないのであって、受託者の利益享受の禁止の原則を定めた信託法8条及び受託者の忠実義務を定めた同法30条も同様の趣旨を定めている。国政たる選挙区割規定の立法が、議員の身分にも直接関わる事柄(国政たる選挙区割規定の立法から生ずる、当 選・落選という国会議員個人の利益に直接関わる事柄)であると解される以上(最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁)、各選挙区の選挙人数又は人口数と配分議員定数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準であることに照らすと、投票価値の較差の変更を伴う選挙区割規定を立法するこ とは、国政の受託者たる国民の代表者が国民の利益より自らの利益を優先させ、国政(選挙区割規定の立法)から生じる福利(投票価値の較差から生じる利益)を享受している点で 選挙区割規定を立法するこ とは、国政の受託者たる国民の代表者が国民の利益より自らの利益を優先させ、国政(選挙区割規定の立法)から生じる福利(投票価値の較差から生じる利益)を享受している点で、受託者の利益享受の禁止の原則及び忠実義務と矛盾する。したがって、投票価値の較差の変更を伴う選挙区割規定の立法は、憲法前文第1項第2文に基づいて解釈・適用されるべき憲法47条を正 しく解釈・適用しないものであって、同条に反する。 ⑷ 全世界のGDPのうち我が国の占める割合は、平成7年から令和5年の29年間で17.6パーセントから4.0パーセントに激減しており、これは国難といえる。主要な6民主主義国家(米、英、独、仏、韓、日)のうち、我が国以外の5か国は人口比例選挙又は概ね人口比例選挙であるので、投票 人の過半数又は概ね過半数の投票により政権交代し、投票率も高く、国民一 人当たりの平均賃金が右肩上がりで増加している。他方、我が国だけが非人口比例選挙であり、上記の29年間のうち25年間、過半数未満の得票をしたにすぎない政党の議員が得票数に比例しない議席数を獲得して政権与党となり、投票率の低下や平均賃金の停滞を招いた。このように、我が国だけが極めて異質で、世界標準の方法から逸脱しているのであり、上記の国難を克 服するための第一歩として、他国と同じ土俵(人口比例選挙)に立つ必要がある。 ⑸ 憲法は、人口比例選挙又はできる限りの人口比例選挙を要求しており、本件定数配分規定の合憲性の主張立証責任は被告らが負うべきである。 ⑹ 最高裁判例の合理的期間論(投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度 の著しい不平等状態に至っている場合に、当該選挙までの期間にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるか否かという観点か 例の合理的期間論(投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度 の著しい不平等状態に至っている場合に、当該選挙までの期間にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるか否かという観点からされる判断枠組み)は憲法98条1項に抵触するから、本件選挙は無効である。 5 被告らの主張⑴ 国会の定めた定数配分規定は、国会の裁量権の行使として合理性を有する ものである限り、憲法に違反するものではない。 ⑵ 参議院の選挙区選出議員選挙において、都道府県を選挙区割りの基本単位としていることは、国会による裁量権の行使として合理性があるところ、平成27年法律第60号による公職選挙法の改正(以下「平成27年改正」という。)により、最高裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日 大法廷判決・民集66巻10号3357頁(以下「平成24年大法廷判決」という。)及び最高裁平成26年(行ツ)第155号、第156号同年11月26日大法廷判決・民集68巻9号1363頁(以下「平成26年大法廷判決」という。)が指摘した、投票価値に関する違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態は解消され、その後の平成30年改正により、投票価値の 不均衡が更に是正された。 ⑶ 最高裁平成29年(行ツ)第47号同年9月27日大法廷判決・民集71巻7号1139頁(以下「平成29年大法廷判決」という。)及び最高裁令和2年(行ツ)第78号同年11月18日大法廷判決・民集74巻8号2111頁(以下「令和2年大法廷判決」という。)においても、投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にはなかった旨判断され ており、本件定数配分規定の合憲性は本件選挙時においても維持されていた。 ⑷ 参議院の選挙制度においては、衆議院と異なる憲法上の が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にはなかった旨判断され ており、本件定数配分規定の合憲性は本件選挙時においても維持されていた。 ⑷ 参議院の選挙制度においては、衆議院と異なる憲法上の技術的制約等があり、較差の是正には大きな限界があり、平成27年改正で導入された合区による弊害は継続して生じており、都道府県単位の代表が国政に参加できる選挙制度を更に見直していくには慎重な検討を要するなど、様々な困難や弊害 の発生が伴う中、国会は、選挙制度の改革や較差の是正に向けた取組を継続している。以上によれば、本件定数配分規定は憲法に反しない。 ⑸ 仮に違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとの評価がされるとしても、本件選挙までの期間内に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権を超えるものとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、当裁判所に顕著な事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。 ⑴ 参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は、参議院議員の選挙につ いて、参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人とに区分し、全国選出議員については、全都道府県の区域を通じて選出されるものとする一方、地方選出議員については、その選挙区及び各選挙区における議員定数を別表で定め、都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。そして、選挙区ごとの議員定数については、憲法が参議院議 員につき3年ごとにその半数を改選すると定めていること(46条)に応じ て、各選挙区においてその選出議員の半数が改選されることとなるよう、定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、各選挙区の人口に比例する形で、2人ないし8人の偶数の議員定数 6条)に応じ て、各選挙区においてその選出議員の半数が改選されることとなるよう、定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、各選挙区の人口に比例する形で、2人ないし8人の偶数の議員定数を配分した。 昭和25年に制定された公職選挙法の定数配分規定は、上記の参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり、その後に沖縄 県選挙区の議員定数2人が付加されたほかは、平成6年法律第47号による公職選挙法の改正(以下「平成6年改正」という。)まで、上記定数配分規定に変更はなかった。なお、昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正により、参議院議員252人は各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙 区選出議員152人とに区分されることになったが、この選挙区選出議員は、従来の地方選出議員の名称が変更されたものである。 その後、平成12年法律第118号による公職選挙法の改正(以下「平成12年改正」という。)により、参議院議員の総定数が242人とされ、比例代表選出議員96人及び選挙区選出議員146人とされた(乙9、10)。 ⑵ 参議院議員選挙法制定当時、選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差(以下、各立法当時の「選挙区間の最大較差」というときは、この人口の最大較差をいう。)は2.62倍であったが、人口変動により次第に拡大を続け、平成4年に行われた通常選挙当時、選挙区間の最大較差が6.59倍に達した後、平成6年改正における7選挙区の定数を8増8減とする措 置により、同2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍に縮小した。その後、平成12年改正における3選挙区の定数を6減とする措置及び平成18年 8減とする措 置により、同2年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は4.81倍に縮小した。その後、平成12年改正における3選挙区の定数を6減とする措置及び平成18年法律第52号による公職選挙法の改正における4選挙区の定数を4増4減とする措置の前後を通じて、同7年から同19年までに行われた各通常選挙当時の選挙区間の最大較差は5倍前 後で推移した(乙3、9、10)。 しかるところ、最高裁大法廷は、定数配分規定の合憲性に関し、平成4年に行われた通常選挙について、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた旨判示したが(最高裁平成6年(行ツ)第59号同8年9月11日大法廷判決・民集50巻8号2283頁)、平成6年改正後の定数配分規定の下で行われた2回の通常選挙については、上記の不平等状 態に至っていたとはいえない旨判示した(最高裁平成9年(行ツ)第104号同10年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁、最高裁平成11年(行ツ)第241号同12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁)。その後、平成12年改正後の定数配分規定の下で行われた2回の通常選挙及び平成18年法律第52号による公職選挙法の改正後の定数配分 規定の下で同19年に行われた通常選挙のいずれについても、最高裁大法廷は、結論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した(最高裁平成15年(行ツ)第24号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁、最高裁平成17年(行ツ)第247号同18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁、最高裁 平成20年(行ツ)第209号同21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1520頁)。もっとも、上記最 7年(行ツ)第247号同18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁、最高裁 平成20年(行ツ)第209号同21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1520頁)。もっとも、上記最高裁平成18年10月4日大法廷判決においては、投票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる旨の、上記最高裁同21年9月30日大法廷判決においては、当時の較差が投票価値の平等という観点から はなお大きな不平等が存する状態であって、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる旨の指摘がそれぞれされるなど、選挙区間の最大較差が5倍前後で常態化する中で、較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な評価がされるようになっていた(乙9、10)。 ⑶ 平成22年7月11日、選挙区間の最大較差が5.00倍の状況において 行われた通常選挙につき、平成24年大法廷判決は、結論において同選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの、長年にわたる制度及び社会状況の変化として、①参議院議員の選挙制度と衆議院議員の選挙制度が同質的なものとなってきているとともに、急速に変化する社会の情勢の下で、議員の長い任期を背景に国政の運営における参議院 の役割はこれまでにも増して大きくなってきていること、②衆議院については、投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として、選挙区間の人口の較差が2倍未満となることを基本とする旨の区割りの基準が定められていること等を挙げた上で、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く、都道府県が政 治的に一つのまとまりを有す りの基準が定められていること等を挙げた上で、参議院議員の選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難く、都道府県が政 治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ること等の事情は数十年間にもわたり投票価値の大きな較差が継続することを正当化する理由としては十分なものとはいえなくなっており、都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で、都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことは もはや著しく困難な状況に至っているなどとし、上記通常選挙当時の選挙区間の最大較差が示す投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに上 記の不平等状態を解消する必要がある旨を指摘した(乙3、9、10)。 ⑷ 平成24年大法廷判決の言渡し後、平成24年11月16日に公職選挙法の一部を改正する法律(同年法律第94号。以下「平成24年改正法」という。)が成立し、同月26日に施行された。同法は、選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減とすることを内容とするものであった(乙9、 10)。 ⑸ 平成25年7月21日、平成24年改正法による改正後の定数配分規定の下での通常選挙(以下「平成25年選挙」という。)が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった(乙3)。 平成26年大法廷判決は、結論において平成25年選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの、平成2 た。同選挙当時の選挙区間の最大較差は4.77倍であった(乙3)。 平成26年大法廷判決は、結論において平成25年選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないとしたものの、平成24年大 法廷判決の判断に沿って、平成24年改正法による上記4増4減の措置は、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり、現に選挙区間の最大較差については上記の改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていたのであるから、同法による上記措置を経た後も、選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が 生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した(甲5)。 ⑹ 平成27年7月28日、公職選挙法の一部を改正する法律(同年法律第60号。以下「平成27年改正法」という。)が成立し、同年11月5日に施行された。平成27年改正の結果、平成22年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間の最大較差は2.97倍となった。平成27年改正法は、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取県及び島根県、徳 島県及び高知県をそれぞれ合区して定数2人の選挙区とするとともに、3選挙区の定数を2人ずつ減員し、5選挙区の定数を2人ずつ増員することなどを内容とするものであり、その附則7条には、平成31年に行われる通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の 増員することなどを内容とするものであり、その附則7条には、平成31年に行われる通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き 続き検討を行い、必ず結論を得るものとするとの規定が置かれていた(乙1 0、11の1・2)。 ⑺ 平成28年7月10日、平成27年改正後の定数配分規定の下での通常選挙(以下「平成28年選挙」という。)が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.08倍であった(乙3、11の3)。 平成29年大法廷判決は、平成27年改正法につき、単に一部の選挙区の 定数を増減するにとどまらず、参議院創設以来初めての合区を行うことにより、長期間にわたり投票価値の大きな較差が継続する要因となっていた都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり、これによって、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は2.97倍(選挙当時は3.08倍)まで縮小するに至 ったのであるから、平成24年大法廷判決等の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができるとし、また、その附則において上記⑹のとおり規定され、今後における較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに、再び大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができるなどとして、平成28年選挙当時の定数配分 規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした(乙10)。 ⑻ 平成28年選挙において、合区の対象となった4県のうち島根県を除く3県では、投票率が低下して当時における過去最低の投票率となったほか の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした(乙10)。 ⑻ 平成28年選挙において、合区の対象となった4県のうち島根県を除く3県では、投票率が低下して当時における過去最低の投票率となったほか、無効投票率が全国平均を上回り、高知県での無効投票率は全国最高となった。 なお、平成25年選挙においては、無効投票率が全国平均を上回っていたのは、上記4県のうち高知県のみであった。 全国知事会は、平成28年7月29日、平成28年選挙において投票率の著しい低下等の様々な弊害が顕在化したなどとして、合区の早急な解消を求める決議を行った。また、全国都道府県議会議長会や全国市長会等において も、合区の早急な解消に向けた決議等が行われた(乙11の4~6、30の 2、31の1、33の3、35の2)。 平成29年2月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会が設置され、同年4月、同協議会の下に参議院選挙制度改革について集中的に調査を行う「選挙制度に関する専門委員会」が設けられた。同委員会は、参議院選挙制度改革に対する考え方について、一票の較差、選挙制度の枠組みとそれに基 づく議員定数の在り方、選挙区の枠組み等について協議を行った上で、選挙区選出議員について、全ての都道府県から少なくとも1人の議員が選出される都道府県を単位とする選挙区とすること、一部合区を含む都道府県を単位とする選挙区とすること、又は選挙区の単位を都道府県に代えてより広域のものとすることの各案について検討を行ったほか、選挙区選出議員及び比例 代表選出議員の二本立てとしない場合を含めた選挙制度の在り方等についても議論を行った。しかしながら、これらの議論を経た上で各会派から示された選挙制度改革の具体的な方向性についての意見の内容は、選挙区の単位、合区の存廃、 としない場合を含めた選挙制度の在り方等についても議論を行った。しかしながら、これらの議論を経た上で各会派から示された選挙制度改革の具体的な方向性についての意見の内容は、選挙区の単位、合区の存廃、議員定数の増減等の点において大きな隔たりがある状況であった(乙12~18、22、23)。 平成30年6月、参議院改革協議会において、自由民主党から、選挙区の単位を都道府県とすること及び平成27年改正による4県2合区は維持した上で、選挙区選出議員の定数を2人増員して埼玉県選挙区に配分するとともに、比例代表選出議員の定数を4人増員し、政党等が優先的に当選人となるべき候補者を定めることができる特定枠制度を導入するとの案が示された。 その後、協議が行われるなどしたものの、各会派間に意見の隔たりがある状況であったため、各会派が参議院に法律案を提出し、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会において議論が進められることとなり、上記の自由民主党の提案内容に沿った法律案のほか、現在の選挙区選出議員の選挙及び比例代表選出議員の選挙に代えてより広域の選挙区による選挙を導 入することを内容とする法律案等が提出された。同年7月11日、上記特別 委員会において、上記の自由民主党の提案内容に沿った公職選挙法の一部を改正する法律案が可決すべきものとされ、その際、「今後の参議院選挙制度改革については、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」との附帯決議がされた(乙19の1~7、乙20~23)。 平成30年7月18日、上記法律案どおりの法律である平成30年改正法が成立し、同年10月25日に施行された。平成30年改正の結果、平成27年10月実施の国勢調査結果による日本国民人口に基づく選挙区間の 成30年7月18日、上記法律案どおりの法律である平成30年改正法が成立し、同年10月25日に施行された。平成30年改正の結果、平成27年10月実施の国勢調査結果による日本国民人口に基づく選挙区間の最大較差は2.99倍となった(乙3)。 ⑼ 令和元年7月21日、本件定数配分規定の下での初めての通常選挙である 令和元年選挙が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.00倍であった(乙3、5の1)。 令和2年大法廷判決は、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進 めることが求められているところ、平成30年改正において、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえないとしながらも、平成30年改正法につき、数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を3倍程度まで縮小させた平成27年改正法における方向性を維持するよう配慮したものであるということができ、また、参議院選挙制度の改革に際しては、事柄の性 質上慎重な考慮を要することに鑑み、その実現は漸進的にならざるを得ない面があることからすると、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないなどとして、令和元年選挙当時の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえないとした。 ⑽ 令和元年選挙において、合区の対象となった徳島県での投票率は全国最低 となり、鳥取県及び島根県の投票率もそれぞれ過去最低となった。また、合区の対象となった4県での無効投票率はいずれも全国平均を上回り、徳島県では全国最高となっ た徳島県での投票率は全国最低 となり、鳥取県及び島根県の投票率もそれぞれ過去最低となった。また、合区の対象となった4県での無効投票率はいずれも全国平均を上回り、徳島県では全国最高となった(乙5の1~3、乙40の8~11)。 令和元年選挙の後も、全国知事会等において、合区の解消を求める決議等が行われている(乙30の7~9、乙40の3~7)。 令和3年5月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会が改めて設置され、参議院の組織及び運営の改革に関する検討項目の一つとして、較差の是正を含む選挙制度改革についての議論がされた。合区については、何らかの形で解消することを目指す意見が多かったものの、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持するか、選挙区の単位を都道府県に代え てより広域のものとするか、議員の総定数を増やすか等の点について意見の隔たりがあり、最終的に、参議院選挙制度改革の具体的な方向性についての各会派の意見が一致するには至らなかった。令和4年5月及び同年6月に開かれた参議院憲法審査会における参議院選挙制度改革をめぐる議論の状況も、上記と同様であった(乙24、25の1・2)。 ⑾ 令和4年7月10日、本件定数配分規定の下での2回目の通常選挙である令和4年選挙が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.03倍であった(乙3、6の1)。 令和5年大法廷判決は、令和2年大法廷判決等を引用した上で、①令和4年選挙までの間、令和3年に設置された参議院改革協議会等において、参議 院議員の選挙制度の改革につき、各会派の間で一定の議論がされたものの、較差の更なる是正のための法改正の見通しが立つに至っていないのはもとより、その実現に向けた具体的な検討が進展しているともいい難い、②しかしながら、4 革につき、各会派の間で一定の議論がされたものの、較差の更なる是正のための法改正の見通しが立つに至っていないのはもとより、その実現に向けた具体的な検討が進展しているともいい難い、②しかしながら、4県2合区を導入すること等を内容とする平成27年改正により、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は3倍程度 まで縮小し、平成24年大法廷判決等で指摘された著しい不平等状態はひと まず解消されたところ、同改正がされてから令和4年選挙までの約7年間、同改正後の定数配分規定及び本件定数配分規定の下で上記の合区は維持され、選挙区間の最大較差は3倍程度で推移しており、有意な拡大傾向にあるともいえない、③このような中で、立法府においては、較差の更なる是正を図る観点から、都道府県より広域の選挙区を設けるなどの方策について議論がさ れてきたところであり、こうした方策によって都道府県を各選挙区の単位とする現行の選挙制度の仕組みを更に見直すことも考えられる、④もっとも、合区の導入後に、その対象となった4県において、投票率の低下や無効投票率の上昇が続けてみられること等を勘案すると、有権者において、都道府県ごとに地域の実情に通じた国会議員を選出するとの考え方がなお強く、これ が選挙に対する関心や投票行動に影響を与えていることがうかがわれる、⑤このような状況は、上記の仕組みを更に見直すに当たり、代表民主制の下で国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる観点から慎重に検討すべき課題があることを示唆するものと考えられる、⑥加えて、立法府においては、較差の更なる是正をめぐって、参議院の議員定数の見直しなどの方 策についても議論がされてきたが、こうした方策を採ることにも様々な制約が想定される、⑦そうすると、立法府が て、立法府においては、較差の更なる是正をめぐって、参議院の議員定数の見直しなどの方 策についても議論がされてきたが、こうした方策を採ることにも様々な制約が想定される、⑦そうすると、立法府が上記是正に向けた取組を進めていくには、更に議論を積み重ねる中で種々の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国民の理解も得ていく必要があると考えられ、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要することが見込まれる、⑧以上に述べたよう な状況の下、立法府が、参議院議員の選挙制度の改革に向けた議論を継続する中で、較差の拡大の防止等にも配慮して4県2合区を含む本件定数配分規定を維持したという経緯に鑑みれば、立法府が、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくための具体的な方策を新たに講ずるに至らなかったことを考慮しても、令和4年選挙当時の選挙区間の最 大較差が示す投票価値の不均衡が、憲法の投票価値の平等の要求に反するも のであったということはできない、⑨したがって、令和4年選挙当時、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできないとした(甲9)。 ⑿ 令和4年選挙において、合区の対象となった鳥取県での投票率は、令和元年選挙時を更に下回って過去最低を更新し、また、徳島県での投票率は、令和元年選挙時より上昇したものの、なお全国最低であった。合区の対象となった4県での無効投票率は、いずれも全国平均を上回った(乙3、6の1~3)。 全国知事会は、令和4年選挙後の令和4年7月28日、「鳥取県では、合区制度開始以降、連続で過去最低の投票 象となった4県での無効投票率は、いずれも全国平均を上回った(乙3、6の1~3)。 全国知事会は、令和4年選挙後の令和4年7月28日、「鳥取県では、合区制度開始以降、連続で過去最低の投票率を更新する結果となった。島根県、徳島県、高知県の3県では前回を上回ってはいるものの、合区制度の導入前と比べると低い水準のままであり、合区を起因とした弊害が常態化しており、深刻度が増している。」等と指摘し、「合区の確実な解消」を強く求めると の決議をし、令和5年7月26日及び令和6年8月2日にも同趣旨の決議をした(乙38の1~3)。また、合区の対象とされている県を含む知事らを構成員とする団体や、合区の対象とされている県の県議会や市議会においても、これと同趣旨の要望がされており(乙38の4~8)、同年末から本件選挙の直近までの間にも、継続的にこれと同趣旨の報道等がされている(乙 41の1~7)。 参議院では、令和4年11月11日、参議院の組織及び運営に関する諸問題を調査検討するために、各会派の13人の協議員によって構成される参議院改革協議会が設置され、同月から令和7年6月にかけて同会が開会された。 この参議院改革協議会においては、同協議会の下に設置された「選挙制度に 関する専門委員会」が令和5年2月から令和6年6月にかけて合計16回に わたって開会され、参考人(実務家法曹や法学者、合区対象県の知事ら)からの意見聴取を行い、選挙制度に関する事項が議論された。意見聴取において、鳥取県知事からは、「鳥取県の投票率は、かつては1番、2番を争っているところであり、隣の島根県もそうであった。ところが、合区を導入した途端に今では平均以下の32位になっている。これは、民主政治に対する信 頼を県民が失いかけているということにほか 2番を争っているところであり、隣の島根県もそうであった。ところが、合区を導入した途端に今では平均以下の32位になっている。これは、民主政治に対する信 頼を県民が失いかけているということにほかならない。こんな選挙なら行かない方がいい、そう思うようになり始めており、残念ながらそういうことである。無効投票も合区を入れた途端に白票が増えている。入れる人がいないということである。これが本当の民主主義なのか、合区の対象区として申し上げたい。」との意見が述べられた。同月に作成された同委員会の委員長の 報告書によれば、同委員会で議論された事項のうち、①投票価値の平等については、民主主義の基盤であり、最高裁判決においても較差是正を求められており、是正の取組を進めることが必要との意見が大勢であり、また、その取組は、参議院の役割との調整を図る必要があるとの意見や、投票価値の平等を重視する意見があった一方、地域間格差拡大への懸念も指摘され、投票 価値の平等を選挙区選挙のみではなく、全国比例選挙も合わせて一体的に評価すべきとの意見もあり、②合区制度の評価については、合区の弊害は共通認識としてあり、現行の合区の不合理は解消すべきとする意見が大勢であり、③選挙制度の枠組みについては、多様な民意を反映させ、衆議院と異なる機能・役割を明確化する方策としての選挙制度の枠組みについて各会派の考え 方に異同があり、大きく分けて、都道府県単位の選挙区の維持徹底、ブロック制の導入の二つの方向性が示され、④議員定数の在り方については、定数増も可能とする意見、定数増には慎重な意見、定数減を行うべきとする意見があった。この報告書の提出を受けた参議院改革協議会において、選挙制度の抜本的な議論の前提として、参議院の在り方、特に二院制の下に参議院が 担う機 増には慎重な意見、定数減を行うべきとする意見があった。この報告書の提出を受けた参議院改革協議会において、選挙制度の抜本的な議論の前提として、参議院の在り方、特に二院制の下に参議院が 担う機能・役割について、総論的な議論が行われ、今後も、参議院の在り方、 特に二院制の下に参議院が担う機能・役割について、その各論の整理や深堀りを含めて更に具体的な議論を重ね、選挙制度の検討につなげることが重要であるとされた。また、同協議会において、複数の会派が令和10年の通常選挙(以下「令和10年選挙」という。)に向けた制度改正を明示する意見を表明し(その中には、令和10年選挙に間に合わせるため、選挙制度の見 直しを行う法律案を令和9年常会に提出する必要があるなど、より具体的な日程を示すものもあった。)、選挙制度の見直しについては、広く国民の理解も得られるような立法的措置が求められているところ、令和10年選挙に向けて、本件選挙後、新たな会派構成の下でも協議の場を速やかに設けていただき、工程案を共有しつつ、具体的な参議院改革について結論を出し、選 挙制度改革の方向性を見いだすべく協議が引き継いでいかれることを切望するとされた(乙26)。 また、参議院憲法審査会では、令和4年12月7日、令和5年4月26日、同年5月17日、同年6月7日、同年11月15日及び同年12月6日に、参議院の在り方や合区の課題に関する議論が取り上げられた(乙27の1~ 6)。 ⒀ 令和7年7月20日、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での3回目の通常選挙である本件選挙が行われた。本件選挙当時の選挙区間の最大較差は3.13倍であった。 本件選挙における投票率の全国平均は約58.51パーセント、無効投票 率の全国平均は約2.41パーセントであ である本件選挙が行われた。本件選挙当時の選挙区間の最大較差は3.13倍であった。 本件選挙における投票率の全国平均は約58.51パーセント、無効投票 率の全国平均は約2.41パーセントであった(いずれも選挙区のもの。以下同じ。)。このうち合区の対象となった4県の投票率は、徳島県が約50. 48パーセント(全国最低)、鳥取県が約55.04パーセント、高知県が約56.89パーセント(いずれも全国平均を下回る。)、島根県が約59. 57パーセント(全国平均を上回る。)であり、これらの県の無効投票率は、 徳島県が約4.52パーセント(全国最高)、鳥取県が約4.16パーセン ト、島根県が約2.76パーセント(いずれも全国平均を上回る。)、高知県が約2.07パーセント(全国平均を下回る。)であった(乙2)。また、これら4県のうち徳島県(投票率が全国最低、無効投票率が全国最高)及び鳥取県(投票率が全国平均をかなり下回り、無効投票率が全国平均をかなり上回る。)については、いずれも合区の中に当該県を基盤とする候補者が一 人もいなかった(乙4の1・2)。 2⑴ 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求していると解される。他方、憲法は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねて いるのであって、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それに 当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求 められることになっても、憲法に違反するとはいえない。 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって、国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。前記1⑴においてみた参議院議員の選挙制度の仕組みは、 このような観点から、参議院議員について、全国選出議員(昭和57年法律第81号による公職選挙法の改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け、前者については全国(全都道府県)の区域を通じて選挙するものとし、後者については都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22年の参議院議員選挙法及び同25年の公職選挙法 の制定当時において、このような選挙制度の仕組みを定めたことが、国会の 有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。しかしながら、社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果、上記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には、当該定 数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 ⑵ 憲法は、二院制の下で、一定の事項について衆議院の優越を認める反面、参議院議員につき任期を6年の長期とし、解散もなく、選挙は3年ごとにそ 分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 ⑵ 憲法は、二院制の下で、一定の事項について衆議院の優越を認める反面、参議院議員につき任期を6年の長期とし、解散もなく、選挙は3年ごとにその半数について行うことを定めている(46条等)。その趣旨は、立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、 参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと解される。そして、いかなる具体的な選挙制度によって、上記の憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議 院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられており、参議院議員につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し、国民各層の多様な意見を反映させて、参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも、選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合 理的行使として是認し得るものと考えられる。 また、具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から、政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとはいえず、投票 価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏ま えた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。 ⑶ 参議院議員の選挙制度と衆議院 価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏ま えた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。 ⑶ 参議院議員の選挙制度と衆議院議員の選挙制度は、選出方法等に係るこれまでの変遷を経て同質的なものとなってきているところ、衆議院議員選挙については、投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として、選挙区間の 人口の較差が2倍未満となるようにする旨の区割りの基準が定められ、少なくとも長期間にわたり2倍以上の較差が放置されることはないような措置が講じられている(衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条、4条参照)。また、急速に変化する社会の情勢の下で、議員の長い任期を背景に、国政の運営における参議院の役割は大きなものとなってきている。 そうすると、二院制に係る憲法の趣旨や、半数改選などの参議院の議員定数配分に当たり考慮を要する固有の要素を勘案しても、参議院議員選挙について直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいと解すべき理由は見いだし難い。したがって、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大さ せずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが引き続き求められているというべきである。 ⑷ 本件選挙は、本件定数配分規定の下での3回目の通常選挙であるところ、令和4年選挙から本件選挙までの期間にも、令和元年選挙から令和4年選挙までの期間と同様に、本件定数配分規定を変更する立法はされず、較差の更 なる是正のための法改正の見通しが立つに至っていないのはもとより、その実現に向けた具体的な検討が進展しているともいい難い状況であることが認められ、4県2合区を導入した平成2 されず、較差の更 なる是正のための法改正の見通しが立つに至っていないのはもとより、その実現に向けた具体的な検討が進展しているともいい難い状況であることが認められ、4県2合区を導入した平成27年改正から本件選挙まで約10年、平成30年改正からも約7年が経過している。 もっとも、4県2合区を導入すること等を内容とする平成27年改正によ り、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は3倍 程度まで縮小し、平成24年大法廷判決等で指摘された著しい不平等状態はひとまず解消されたところ、同改正がされてから本件選挙までの約10年間、同改正後の定数配分規定及び本件定数配分規定の下で上記の合区は維持され、選挙区間の最大較差は3倍程度で推移している。本件選挙における選挙区間の最大較差は3.13倍であり、令和4年選挙における選挙区間の最大較差 である3.03倍より増加しているものの、その差は0.1倍にとどまっており、3倍を大きく超える有意な拡大傾向にあるとまではいえない。本件定数配分規定の下での本件選挙の選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題を生ずる程度の著しい不平等状態に至っているか否かは、このような現状を前提に検討すべきことになる。 ⑸ そして、令和4年選挙から本件選挙までの期間にも、それ以前の期間と同様に、参議院改革協議会等において参議院議員の選挙制度の改革につき各会派の間で議論がされ、複数の会派が令和10年選挙に向けた制度改正を明示するなどしたほか、参議院憲法審査会でも議論が行われている。その議論の内容をみると、現行の合区の問題点を解消すべきとする意見が大勢である中、 大きく分けて都道府県単位の選挙区の維持徹底、ブロック制の導入という異なる二つの方向性が示されており、いずれの方向 論の内容をみると、現行の合区の問題点を解消すべきとする意見が大勢である中、 大きく分けて都道府県単位の選挙区の維持徹底、ブロック制の導入という異なる二つの方向性が示されており、いずれの方向性についても複数の主要な会派が支持している。 このうち、合区を解消して都道府県単位の選挙区の維持徹底を図ろうとすることは、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて直ちに国 会の合理的な裁量を超えるものとは解されないものの、議員定数の増加にも制約がある以上、選挙区間の最大較差の拡大を招くことにつながる可能性が高いが、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが引き続き求められている中で、この方向性の下で、較差の更なる是正を達成するこ とのできる効果的な解決策は提示されていない。もっとも、この方向性は、 全国知事会の決議等には沿うものであるところ、これは初めて合区が導入された平成27年改正法による平成28年選挙以降、合区の対象とされた県における投票率の低下や無効投票率の増加という弊害が常態化しているという問題意識に基づくものであり、合区の対象とされた県の知事が、民主政治に対する信頼を県民が失いかけている等と述べていることにも、危機感が端的 に表れているといえ、報道の状況等をも踏まえると、相当数の国民がこれを看過できない問題として捉えているものと認められ、代表民主制の下で、このような問題意識を軽視することはできない。 他方、現行の合区より広域のブロック制を導入すると、選挙区間の最大較差を大きく縮小させることが可能であり、人口比例選挙の実現に資するとは いえるが、現行の合区でも合区の対象とされた県における投票率の低下や無効投票 域のブロック制を導入すると、選挙区間の最大較差を大きく縮小させることが可能であり、人口比例選挙の実現に資するとは いえるが、現行の合区でも合区の対象とされた県における投票率の低下や無効投票率の増加という弊害が常態化しているのであり、有権者において都道府県ごとに地域の実情に通じた国会議員を選出するとの考え方がなお強く、これが選挙に対する関心や投票行動に影響を与えていることがうかがわれるところ、より広域のブロック制を導入することで各都道府県との結び付きや 繋がりが更に希薄になり、このような弊害が一層深刻化すると指摘されている点も考慮すべきものであるが、これを避ける効果的な解決策は提示されていない。このような問題点は、選挙制度の仕組みを更に見直すに当たり、代表民主制の下で慎重に検討すべき課題であるということができる。 ⑹ 参議院議員の選挙制度の改革につき、4県2合区を導入した平成27年改 正から約10年、平成30年改正から約7年が経過しているところ、平成30年改正法の成立後、立法府では大きく方向性の異なる複数の制度設計について議論を続けているものの、未だ具体化には至っていない。その大きな要因として、平成28年選挙、令和元年選挙、令和4年選挙を通じて明らかとなった合区における投票率の低下や無効投票率の増加という弊害について、 知事会を含め相当数の国民がこれを看過できない問題として捉えており、一 定の制度設計を行うに当たり、未だ広く国民の理解を得ることができていない状況にあり、国民の意見も分かれていることが根底にあるものとうかがわれる。 本件選挙における選挙区間の最大較差は3.13倍であり、令和4年選挙における3.03倍より増加しているものの、3倍を大きく超える有意な拡 大傾向にあるとまではいえないと ものとうかがわれる。 本件選挙における選挙区間の最大較差は3.13倍であり、令和4年選挙における3.03倍より増加しているものの、3倍を大きく超える有意な拡 大傾向にあるとまではいえないところ、立法府が較差の更なる是正に向けた取組を進めていくに当たり、投票価値の平等が最も基本的な要請であることを踏まえても、上記のとおり未だ広く国民の理解を得られておらず、国民の意見も分かれていることを考慮すれば、代表民主制の下で国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる観点から慎重に検討すべきものであり、 複数の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国民の理解を得ていく必要があると考えられる。そして、上記現状を踏まえると、そのための一定の時間を要することにはやむを得ない面があるといえる。 平成27年改正から約10年が経過し、本件選挙における選挙区間の最大較差が令和4年選挙と比較して0.1倍増加している点からすると、参議院 議員の選挙制度の改革について、時間的猶予のある状況とはいえないものの、上記のとおり国民の意見が分かれている中で、立法府が4県2合区を含む本件定数配分規定を維持し、広く国民の理解を得ることができる参議院議員の選挙制度改革の議論を継続していることに鑑みると、本件選挙時点において、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくた めの具体的な方策を新たに構ずるに至らなかったこと等を考慮しても、本件選挙当時の選挙区間の最大較差が示す投票価値の不均衡が、憲法の投票価値の平等の要求に反するものであったということはできない。 ⑺ したがって、本件定数配分規定の下での本件選挙の選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題を生ずる程度の著しい不平等状態にあったもの とはいえず、本件 であったということはできない。 ⑺ したがって、本件定数配分規定の下での本件選挙の選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題を生ずる程度の著しい不平等状態にあったもの とはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということは できない。 3⑴ これに対し、原告らは、本件定数配分規定は、人口比例に基づいて定数配分をしておらず、憲法56条2項、1条、前文第1項第1文冒頭に基づく人口比例選挙の要求に反しているので、憲法98条1項により無効である等と主張する(上記第2の4⑴)。 しかし、上記2⑴のとおり、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を 求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。したがって、本件定数配分規定が人口比例に基づいて定数配分をしていないこと自体をもって、憲法56条2項、1条、前文第1項第1文冒頭に基づく人口比例選挙の要求に反し、憲法98条1項により無効であるとはいえない。 ⑵ 原告らは、令和5年大法廷判決が、国会に対し、限りなく強く「較差の更 なる是正」を求めているにもかかわらず、国会がこれに応じておらず、令和5年大法廷判決に反している等と主張する(上記第2の4⑵)。 しかし、本件選挙が令和元年選挙及び令和4年選挙と同一の本件定数配分規定の下で行われたことは原告らが主張するとおりであるものの、本件定数配分規定が本件選挙までに改正に至らなかった経緯やこれに対する当裁判所 の評価等は上記 及び令和4年選挙と同一の本件定数配分規定の下で行われたことは原告らが主張するとおりであるものの、本件定数配分規定が本件選挙までに改正に至らなかった経緯やこれに対する当裁判所 の評価等は上記2⑷ないし⑹に記載したとおりであるし、本件選挙における選挙区間の最大較差が令和元年選挙及び令和4年選挙と比べて拡大していることについても、3倍を大きく超える有意な拡大傾向にあるとまではいえず、これらの事情を総合すると、本件定数配分規定の下での本件選挙の選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題を生ずる程度の著しい不平等状態に あったものとはいえない。 ⑶ 原告らは、投票価値の較差の変更を伴う選挙区割規定の立法は、憲法前文第1項第2文に基づいて解釈・適用されるべき憲法47条を正しく解釈・適用しないものであって、同条に反する等と主張する(上記第2の4⑶)。 しかし、上記2⑴のとおり、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することがで きる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。そうすると、国政たる選挙区割規定の立法が、議員の身分にも直接関わる事柄であり、各選 挙区の選挙人数又は人口数と配分議員定数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準であるからといって、それらのことから直ちに、投票価値の較差の変更を伴う選挙区割規定を立法することが国政の受託者たる国民の代表者が国民の利益より自らの利益を優先させ、国政(選挙区割規定の立法)から生じる福利(投票価値 それらのことから直ちに、投票価値の較差の変更を伴う選挙区割規定を立法することが国政の受託者たる国民の代表者が国民の利益より自らの利益を優先させ、国政(選挙区割規定の立法)から生じる福利(投票価値の較差から生じる利益)を享受しているということに はならないから、憲法47条に反するとはいえない。 ⑷ 原告らは、全世界のGDPのうち我が国の占める割合は、平成7年から令和5年の29年間で17.6パーセントから4.0パーセントに激減しているところ、投票率の低下や非人口比例選挙が原因であり、他国と同じ土俵(人口比例選挙)に立つ必要がある等と主張する(上記第2の4⑷)。 しかし、投票価値の不均衡を是正するために導入された現行の合区でも合区の対象とされた県における投票率の低下や無効投票率の増加という弊害が常態化していることは上記2⑸に記載したとおりであり、これとは異なり、投票価値の平等を実現すれば投票率が向上するという関係にあると断ずることはできない。また、長年にわたって全世界のGDPのうち我が国の占める 割合が減少し、国民の平均賃金が上昇しないという事実があるとしても、選 挙制度の仕組みや政治体制、文化、制度の沿革などがそれぞれ大きく異なると考えられる諸外国との対比だけをもって、我が国において完全な人口比例選挙を実現していないことがその原因であるとまでは認めるに足りない。 ⑸ 原告らは、他にも様々な主張をするが、これらを全て考慮しても、上記2の判断は左右されない。 4 よって、愛知県選挙区、岐阜県選挙区及び三重県選挙区における本件選挙が無効であるとはいえず、原告らの請求には理由がないから、いずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部 主文 区における本件選挙が無効であるとはいえず、原告らの請求には理由がないから、いずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 名古屋高等裁判所民事第3部 裁判長裁判官片田信宏 裁判官三橋泰友 裁判官藤根康平
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