主文 原判決を破棄する。本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。理由 上告代理人酒井祝成の上告理由第一点について記録によれば、原審における本件請求に関する当事者の主張は、次のとおりである。即ち、上告人らにおいて、(1) 本件土地(第一審判決別紙目録第二に記載の土地をいう。)は、上告人ら(原告ら)、D及び被上告人(被告)の亡夫E(昭和三九年九月六日死亡)らの父であるF(昭和三四年五月二六日死亡)が昭和二八年七月三一日、Gから買い受けたのであるが、Eの所有名義に移転登記をしていたところ、Fの死亡により、上告人ら、D及びEは右土地を各共有持分五分の一の割合をもつて相続取得した、(2) しかし、登記名義をそのままにしていたため、Eの死亡に伴い、その妻である被上告人が単独で相続による所有権移転登記を経由した、(3) 本件土地は、右のとおり上告人ら、D及びEが共同相続したのであるから、上告人らは、その共有持分権に基づき各持分五分の一の移転登記手続を求める、というのである。これに対し、被上告人は、本件土地はEが真実、Gから買い受けて所有権移転登記を経由したもので、Eの死亡によつて被上告人が相続取得したのであるから、上告人らの請求は理由がない、と主張するのである。原審は、証拠に基づいて、本件土地はFがGから買い受けて所有権を取得したことを認定し、この点に関する上告人らの主張を認めて被上告人の反対主張を排斥したが、次いで、EはFから本件土地につき死因贈与を受け、Fの死亡によつて右土地の所有権を取得し、その後Eの死亡に伴い被上告人がこれを相続取得したものであると認定し、結局、右土地をFから共同相続したと主張する上告人らの請求は理由がないと判示した。- 1 -しかし、相続による特定財産の取得を主 後Eの死亡に伴い被上告人がこれを相続取得したものであると認定し、結局、右土地をFから共同相続したと主張する上告人らの請求は理由がないと判示した。 つき死因贈与を受け、Fの死亡によつて右土地の所有権を取得し、その後Eの死亡に伴い被上告人がこれを相続取得したものであると認定し、結局、右土地をFから共同相続したと主張する上告人らの請求は理由がないと判示した。- 1 -しかし、相続による特定財産の取得を主 後Eの死亡に伴い被上告人がこれを相続取得したものであると認定し、結局、右土地をFから共同相続したと主張する上告人らの請求は理由がないと判示した。- 1 -しかし、相続による特定財産の取得を主張する者は、(1) 被相続人の右財産所有が争われているときは同人が生前その財産の所有権を取得した事実及び (2)自己が被相続人の死亡により同人の遺産を相続した事実の二つを主張立証すれば足り、(1)の事実が肯認される以上、その後被相続人の死亡時まで同人につき右財産の所有権喪失の原因となるような事実はなかつたこと、及び被相続人の特段の処分行為により右財産が相続財産の範囲から逸出した事実もなかつたことまで主張立証する責任はなく、これら後者の事実は、いずれも右相続人による財産の承継取得を争う者において抗弁としてこれを主張立証すべきものである。これを本件についてみると、上告人らにおいて、FがGから本件土地を買い受けてその所有権を取得し、Fの死亡により上告人らがFの相続人としてこれを共同相続したと主張したのに対し、被上告人は、前記のとおり、右上告人らの所有権取得を争う理由としては、単に右土地を買い受けたのはFではなくEであると主張するにとどまつているのであるから(このような主張は、Fの所有権取得の主張事実に対する積極否認にすぎない。)、原審が証拠調の結果Gから本件土地を買い受けてその所有権を取得したのはFであつてEではないと認定する以上、上告人らがFの相続人としてその遺産を共同相続したことに争いのない本件においては、上告人らの請求は当然認容されてしかるべき筋合である。しかるに、原審は、前記のとおり、被上告人が原審の口頭弁論において抗弁として主張しないEがFから本件土地の死因贈与を受けたとの事実を認定し、したがつて、上告人らは右土地の所有権を相続によつて である。しかるに、原審は、前記のとおり、被上告人が原審の口頭弁論において抗弁として主張しないEがFから本件土地の死因贈与を受けたとの事実を認定し、したがつて、上告人らは右土地の所有権を相続によつて取得することができないとしてその請求を排斥しているのであつて、右は明らかに弁論主義に違反するものといわなければならない。 因贈与を受けたとの事実を認定し、したがつて、上告人らは右土地の所有権を相続によつて である。しかるに、原審は、前記のとおり、被上告人が原審の口頭弁論において抗弁として主張しないEがFから本件土地の死因贈与を受けたとの事実を認定し、したがつて、上告人らは右土地の所有権を相続によつて取得することができないとしてその請求を排斥しているのであつて、右は明らかに弁論主義に違反するものといわなければならない。大審院昭和一一年(オ)第九二三号同年一〇月六日判決・民集一五巻一七七一頁は、原告が家督相続により取得したと主張して不動産の所有権確認を求める訴において、被告が右不動産は自分の買い受けたものであつて未だかつて被相続人の所有に属したことはないと争つた場合に、裁判所が、- 2 -証拠に基づいて右不動産が相続開始前に被相続人から被告に対して譲渡された事実を認定し、原告敗訴の判決をしたのは違法ではないと判示しているが、右判例は、変更すべきものである。そうして、前記違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、その余の上告理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れず、更に審理を尽くさせるのが相当であるから、本件を原審に差し戻すこととする。よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官団藤重光裁判官藤崎萬里裁判官本山亨裁判官戸田弘裁判官中村治朗- 3 - 官中村治朗
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