主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,A及びBに対し,990万円を請求せよ。 第2 事案の概要本件は,半田市の元市長ら3名を被告として提起された地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「旧法」という。これに対して改正後のものを「現行法」という。)242条の2第1項4号に基づく住民訴訟において,元市長らが勝訴したため,同市が同条第8項に基づいて弁護士報酬の一部を支払ったところ,半田市の住民である原告らが,その支払は違法であると主張して,同市の執行機関である被告に対し,上記支払に関与した市長及び助役たる個人に支払額相当の損害賠償を請求することを求めた住民訴訟(現行法242条の2第1項4号の請求)である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠によって容易に認定できる事実等)(1) 当事者ア原告らはいずれも半田市の住民である。 イ被告は半田市の執行機関であり,損害賠償請求の相手方とされたAは同市の現市長(以下「A現市長」という。),Bは同市の助役である。 (2) 住民訴訟の提起と結果ア半田市の住民であるC(以下「C」という。)は,平成7年11月10日,当時の半田市長であったD(以下「D」という。),助役であったE(以下「E」という。)及び元企画部長であったF(以下「F」といい,上記3名を「Dら」という。)らを被告として(下記(ア)事件については,株式会社鴻池組(以下「鴻池組」という。)も共同被告とされた。),名古屋地方裁判所に対し,旧法242条の2第1項4号に基づき,下記(ア)ないし(ウ)の住民訴訟を提起した(乙8ないし10の各1,11。以下,総称して「本件住民訴訟」という。)。 (ア) 名古屋地方 ,名古屋地方裁判所に対し,旧法242条の2第1項4号に基づき,下記(ア)ないし(ウ)の住民訴訟を提起した(乙8ないし10の各1,11。以下,総称して「本件住民訴訟」という。)。 (ア) 名古屋地方裁判所平成7年(行ウ)第41号損害賠償請求事件(以下「41号事件」という。)同事件は,半田市が,平成6年以降,住宅宅地関連公共施設整備促進事業の名目で,鴻池組及び東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。)から道路用地を買収した上,鴻池組に道路工事を請け負わせて工事費用等を支出したことにつき,道路建設は,本来鴻池組及びJR東海の負担において行われるべきものであるから,上記工事費用等の支出は違法であるなどと主張して,Dら及び鴻池組に対し,半田市が支出した4億1600万円(後日,7億2200万円に請求が拡張された。)及びこれに対する遅延損害金の支払を請求した事案である(乙8の1,2及び4,11)。 (イ) 名古屋地方裁判所平成7年(行ウ)第42号損害賠償請求事件(以下「42号事件」という。)同事件は,半田市が,平成6年,誘致しようとした日本福祉大学情報社会科学部の用地に供する目的で鴻池組及びJR東海から用地買収を行った際,原価積上方式によって9億4127万0502円で買収すべきところ,鑑定評価方式によって28億3000万円で買収したなどと主張して,Dらに対し,半田市が支出したその差額18億8872万9498円(後日,15億1866万7699円に請求が減縮された。)及びこれに対する遅延損害金の支払を請求した事案である(乙9の1及び3,11)。 (ウ) 名古屋地方裁判所平成7年(行ウ)第43号損害賠償請求事件(以下「43号事件」という。)同事件は,半田市が,平成6年及び平成7年,日本福祉大学情報社会科学部の校舎建設費に対する補助金として7億円 名古屋地方裁判所平成7年(行ウ)第43号損害賠償請求事件(以下「43号事件」という。)同事件は,半田市が,平成6年及び平成7年,日本福祉大学情報社会科学部の校舎建設費に対する補助金として7億円を支出したところ,これは公益上の必要性を欠く支出であるなどと主張して,Dらに対し,同金額及びこれに対する遅延損害金の支払を請求した事案である(乙10の1及び3,11)。 イ Dらは,平成7年12月4日,本件住民訴訟において応訴すべく,名古屋弁護士会所属のG弁護士(以下「G弁護士」という。)ほか2名の弁護士(以下,3名の弁護士を「G弁護士ら」という。)を訴訟代理人に選任した(なお,DらがG弁護士らに訴訟委任したのは一審及び控訴審である。乙8の3,9の2,10の2,11)。 ウ他方,被告(当時の半田市長はD)は,平成8年2月22日,本件住民訴訟に行政庁として訴訟参加することとし,同月26日,半田市の顧問弁護士であったG弁護士を訴訟代理人に選任した。 そして,半田市は,同年11月8日から平成13年2月2日までの間,半田市議会の議決を経て,G弁護士に対し,前記訴訟参加に係る弁護士報酬として,5回にわたり合計495万円を支払った(乙11)。 エ本件住民訴訟は,別紙事件経過一覧表のとおり,一審,控訴審及び上告審(上告及び上告受理申立事件)のいずれにおいてもDらが勝訴し,平成12年1月27日までにすべて確定した(乙8の4,6及び8,9の3,5及び7,10の3,5及び7,11)。 (3) Dらによる弁護士報酬公費負担の要請ア Dらは,本件住民訴訟において勝訴が確定したことを受けて,平成12年3月23日,被告(当時の半田市長はH。以下「H前市長」という。)に対し,旧法242条の2第8項に基づき,弁護士報酬5000万円を公費で負担することを要請したが,H前市 したことを受けて,平成12年3月23日,被告(当時の半田市長はH。以下「H前市長」という。)に対し,旧法242条の2第8項に基づき,弁護士報酬5000万円を公費で負担することを要請したが,H前市長は,同年11月20日,上記要請に対して公費負担を0円と決定する旨通知した。 これに対し,Dらは,G弁護士らが,同年12月27日ころ,弁護士報酬額5000万円のうち1950万円(41及び43号事件につき各150万円,42号事件につき1650万円)につき債権放棄をしたことを理由に,平成13年1月16日,上記負担要請額を3050万円に減縮するとともに,上記の決定に至った経緯や理由を明らかにすることを求めたが,H前市長は,同年2月6日,上記決定のとおりである旨の回答をするにとどまった(甲9ないし11,14,20,28の8,乙11)。 イさらに,Dらは,平成13年11月12日,被告(A現市長)に対し,前記弁護士報酬3050万円の公費負担を要請したが,被告は,公費負担の承認に関する議案を半田市議会に提出しなかった(甲28の9,乙11)。 (4) 国家賠償請求訴訟の提起とその結果ア Dらは,平成14年7月29日,名古屋地方裁判所に対し,半田市を被告として,市長らが公費負担を拒否し,その承認に関する議案を市議会に提出しなかったことが違法な職務執行に当たり,これにより損害を被ったとして,国家賠償法1条1項に基づき,弁護士報酬相当額の損害賠償の支払を求める訴訟(名古屋地方裁判所平成14年(ワ)第3131号。以下「本件国賠訴訟」という。)を提起した(乙11)。 イ半田市は,本件国賠訴訟において,普通地方公共団体の長は,当該住民訴訟の内容,経過,当該職員の訴訟代理人である弁護士の訴訟追行状況,他の普通地方公共団体の状況等を勘案し,当該職員が負担した弁護士報酬を 市は,本件国賠訴訟において,普通地方公共団体の長は,当該住民訴訟の内容,経過,当該職員の訴訟代理人である弁護士の訴訟追行状況,他の普通地方公共団体の状況等を勘案し,当該職員が負担した弁護士報酬を公費負担することが公益性の見地からやむを得ないものであるかという観点から,旧法242条の2第8項所定の議案を提出すべきか否か,提出するとしてどのような内容にするかを決定するにつき広範な裁量権を委ねられていると主張した上で,本件住民訴訟においては,行政庁として訴訟参加した被告の訴訟代理人として弁護士に訴訟委任する以外に,Dらが個人的応訴のために独立して弁護士に訴訟委任する必要はなかったというべきであるから,これに関する弁護士報酬を公費負担することの公益性を見出すことはできないなどと主張した(乙11)。 ウ名古屋地方裁判所は,平成15年6月12日,当該職員が住民訴訟で勝訴したとしても,長による議案の提出と議会の議決を経る前は,保護に値する権利ないし利益を有するものではないことなどを理由として,Dらの請求を棄却する旨の判決を言い渡した(乙11。以下「本件判決」という。)。 Dらは,本件判決に対して控訴したが,その後,控訴を取り下げたため,本件判決は確定した。 (5) 本件住民訴訟に係る弁護士報酬負担の決議と支出被告は,平成15年8月29日,第4回半田市議会臨時会に対し,本件住民訴訟に関する弁護士報酬として,合計990万円(1人当たり330万円)を半田市が負担する旨の議案を提出し,同議案は,同日,可決された。 これを受けて,半田市は,同年9月17日,公費負担金に係る支出負担行為を行った上,同年10月3日,Dらに対し,合計990万円(前同)を支出した(乙2の1ないし3,3の1ないし3,12。以下「本件支出」という。)。 (6) 住民監査請求原告らは,平 に係る支出負担行為を行った上,同年10月3日,Dらに対し,合計990万円(前同)を支出した(乙2の1ないし3,3の1ないし3,12。以下「本件支出」という。)。 (6) 住民監査請求原告らは,平成15年9月3日,半田市監査委員に対し,前記弁護士報酬の公費負担は違法又は不当であると主張して,現行法242条1項1号に基づき,その負担金の支出の差止めを求める旨の監査請求を行ったが,半田市監査委員は,同日付けで,上記監査請求を却下し,原告らに通知した(甲7の1)。 なお,原告らは,平成15年9月29日付けで,半田市監査委員に対し,再度,上記監査請求と同趣旨の監査請求を行ったが,同月30日付けで,却下されている(甲8)。 (7) 原告らによる住民訴訟の提起ア原告らは,平成15年10月1日,名古屋地方裁判所に対し,前記公費負担は社会的妥当性を欠き,旧法242条の2第8項の趣旨を逸脱した違法なものであるなどと主張して,現行法242条の2第1項1号に基づき,被告に対して上記負担金の支出を差し止めることを求める住民訴訟を提起した。 イしかしながら,前記のとおり,半田市が本件支出を行ったため,原告らは,平成15年10月16日,現行法242条の2第1項4号に基づく本件請求の追加的変更を申し立てるとともに,同月28日,上記差止請求を取り下げた。 2 本件の争点本件支出は,旧法242条の2第8項に反する違法なものか。具体的には,以下の事項が争点となっている。 (1) 同項の「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」の該当性(2) Dらによる弁護士報酬支払の有無(3) 公費負担(額)の相当性(4) 弁護士報酬の公費負担に関する決定の変更の可否 3 争点についての当事者の主張(原告の主張)本件支出は,以下のとおり,旧法242条の2第8項に反して違法である。 (1) 費負担(額)の相当性(4) 弁護士報酬の公費負担に関する決定の変更の可否 3 争点についての当事者の主張(原告の主張)本件支出は,以下のとおり,旧法242条の2第8項に反して違法である。 (1) 同項の「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」の該当性について旧法242条の2第8項所定の「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」に該当するかは,住民訴訟の結果を形式的に当てはめるのではなく,住民訴訟の内容を実質的に審理して判断すべきである。 そこで,本件住民訴訟を検討するに,当時の新聞によれば,日本福祉大学情報社会科学部の誘致のために半田市が負担する用地取得費28億5000万円余のうち,どこまでが用地取得費でどこまでが造成費かは企業秘密のため判明しないとか,8か月の間に用地取得費が6億円ほど急上昇したとか報道されているように,全容を解明すれば,行政当局に何らかの違法行為があったのではないかという疑惑の存在を否定できない事件であった。にもかかわらず,Dらが勝訴したのは,Cの訴訟遂行が稚拙だったためにすぎず,実質的に判断すれば,Cが勝訴していたと考えられる事案である。このことは,Dらが何の根拠もなく被告にされたと主張していたにもかかわらず,G弁護士が本件住民訴訟を重要案件ととらえ,裁判の流れ次第では勝訴するか敗訴するかどちらの可能性もあると認識していたことによっても裏付けられる。 (2) Dらによる弁護士報酬支払の有無についてDらは,半田市に対して弁護士報酬の公費負担を要請するに際し,弁護士報酬の根拠となる訴訟委任に関する契約書及び領収書等の書類を一切示しておらず,契約内容と支払の事実を確認できないから,公費負担は許されないというべきである。 すなわち,原告らは,半田市当局に対し,平成14年7月3日付け公開質問書により,Dらに対して上記契約書を求めた らず,契約内容と支払の事実を確認できないから,公費負担は許されないというべきである。 すなわち,原告らは,半田市当局に対し,平成14年7月3日付け公開質問書により,Dらに対して上記契約書を求めた事実の有無を尋ねたところ,半田市当局は,同年8月2日付け回答書により,請求書及び1950万円の債権放棄通知書の写しを確認した旨述べているが,契約書や領収書には一切触れておらず,半田市の幹部職員の中には「そこまで確認する必要はないのでは」と発言する者さえいた。この事実に照らすと,上記契約書は存在せず,半田市当局もその存在を確認しないまま,本件支出を行ったと考えられるが,DらとG弁護士との勝手な口頭での契約をもって弁護士報酬の公費負担を行うのは違法である。 また,弁護士報酬の支払の事実についても,Dらから提出された公費負担の要請書(平成12年3月23日付け,平成13年11月12日付け)その他の文書には,DらがG弁護士に対し弁護士報酬を「支払う」と記載されているが,「支払った」とは記載されておらず,半田市当局も,上記回答書によって,支払の事実を確認できる文書は存在しないことを認めている。また,G弁護士が出した領収書に記載された弁護士報酬の入金日と,FがA現市長に提出した公費負担に関する追加報告書及び本件国賠訴訟の訴状に記載された支払日とは一致しておらず,真実,Dらが弁護士報酬を支払ったのかは疑わしい。ことに,Dが支払ったとされる最後の2000万円について,Fによる上記追加報告書には,金融機関からの借入金を充てる予定との記載があるが,そのような理由で金融機関が貸付けに応ずるとは信じ難い。 (3) 公費負担(額)の相当性について前記のとおり,Dらには,本件住民訴訟において問題視された行政の行為に関し,住民訴訟を提起されてしかるべき疑惑があったのであるか 貸付けに応ずるとは信じ難い。 (3) 公費負担(額)の相当性について前記のとおり,Dらには,本件住民訴訟において問題視された行政の行為に関し,住民訴訟を提起されてしかるべき疑惑があったのであるから,本件住民訴訟の弁護士報酬を公費で負担すべき理由はないというべきである。それにもかかわらず,A現市長は,個人的な感情から,市議会対策を重視し,Dらとのもめ事を終わらせることにより,本件住民訴訟及び本件国賠訴訟において紛争の長期化を招いた半田市の責任をあいまいにすべく,本件支出を決定したのである。 したがって,A現市長らが私的に弁護士報酬を負担することは制限しないが,公費で負担することは許されない。 現に,Dらに対する弁護士報酬の公費負担の是非は,平成12年10月31日の政策調整会議で話し合われ,最終的にH前市長の判断として公費負担しないことが決定されたところ,A現市長はその当時の助役,B助役は当時の総務部長であり,仮に公費負担すべきとの意思を有していたとしても,低額を考えていたはずである。しかるに,A現市長は,立場が変わるや,市議会議長,元県職員らを仲介者としてDらと交渉を行っているが,このように,水面下で公費負担額の折り合いをつける行為は,明らかに公正さをねじまげるものである。 この点について,A現市長は,半田市が本件住民訴訟に訴訟参加した際の弁護士報酬を基準に,訴訟係属期間の長さなどを考慮して,裁量の範囲内で,同報酬額の2倍が適当と考えたと説明したが,おおざっぱな算出根拠を示したにすぎず,自由裁量という理由では到底納得できるものではない。 (4) 弁護士報酬の公費負担に関する決定の変更の可否についてH前市長がDらに対してした公費負担を0円とする旨の決定(5000万円につき平成12年11月20日付け,3050万円につき平成13年2月6日付け) 弁護士報酬の公費負担に関する決定の変更の可否についてH前市長がDらに対してした公費負担を0円とする旨の決定(5000万円につき平成12年11月20日付け,3050万円につき平成13年2月6日付け)は行政処分に当たるところ,この決定が適法であることは被告も自認するところである。 このように,いったんなされた行政処分に重大かつ明白な違法が認められないにもかかわらず,当該決定を変更して公費負担する旨の決定をすることは行政処分の法的安定性を欠くことになるからできないというべきである。 この点について,A現市長は,本件判決において裁判所から支払勧告がなされたと説明し,同判決が本件支出の契機であると主張するが,本件国賠訴訟における半田市の主張と明らかに矛盾するものである上,裁判所が公費負担するよう法的な和解勧告したり,被告に公費負担の議案を提出する法的義務があると判示したわけではないから,これをもって本件支出の根拠となし得るものではない。 (被告の主張)(1) 旧法242条の2第8項の「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」の該当性について原告らの主張は争う。 本件住民訴訟の経緯は,別紙事件経過一覧表のとおりであり,いずれもDらの勝訴が確定しているから,旧法242条の2第8項の勝訴要件を充足していることが明らかである。 (2) Dらによる弁護士報酬支払の有無について原告らの主張は争う。 Dらは,本件住民訴訟に関し,G弁護士に対して現に3050万円を個人的に支出しており,その額は名古屋弁護士会報酬基準規程に照らしても必ずしも不当なものとはいえない。 (3) 公費負担(額)の相当性について原告らの主張は争う。 被告としては,現段階においても,本件住民訴訟に係る弁護士報酬を公費負担しないとしたH前市長らの決定は適法であったと認識している。しかしながら,本 費負担(額)の相当性について原告らの主張は争う。 被告としては,現段階においても,本件住民訴訟に係る弁護士報酬を公費負担しないとしたH前市長らの決定は適法であったと認識している。しかしながら,本件判決が,旧法242条の2第8項の立法趣旨や経緯に照らすと,上記決定は違法ではないものの不当である旨を強く示唆したため,被告は,より妥当な解決を目指して再検討した結果,以下の諸事情を総合考慮して,裁量権の範囲内で最も妥当と判断した990万円を公費負担するとの議案を提出し,議会の議決を得たことから,本件支出を行ったものである。 ア弁護士報酬額は,原則として対象事件の経済的利益の額を基準にして算出するのが通例であり,当該弁護士の活動を細分化して個々の行為に対する報酬額を積算するものではなく,もとより計量的な算出になじまない。 イ本件住民訴訟におけるG弁護士らの活動内容は,これを事細かく把握することができず,現存する訴訟記録等からその概略を推認するほかない。 ウ現存する訴訟記録等によれば,G弁護士らは,本件住民訴訟において,行政庁として訴訟参加した被告(当時の半田市長はD)のためにのみ活動していたものではなく,Dらと個別的に打合せを行うなど,Dら個人のためにも活動していたと判断された。 エ現存する訴訟記録等によれば,G弁護士らは,本件住民訴訟において,通常の事件よりも事件管理に多大な労力を投じていることが容易に判断できた。 オ前記のとおり,Dらは,本件住民訴訟に関し,G弁護士に対して現に3050万円を個人的に支出しており,その額は名古屋弁護士会報酬基準規程に照らしても必ずしも不当なものとは判断されなかった。 カ前記規程によれば,弁護士報酬は,「委任事務処理の一部が共通であるときは」,「適正妥当な範囲で減額できる」(5条2項)ものであるが,原則 規程に照らしても必ずしも不当なものとは判断されなかった。 カ前記規程によれば,弁護士報酬は,「委任事務処理の一部が共通であるときは」,「適正妥当な範囲で減額できる」(5条2項)ものであるが,原則は,委任者ごと,審級ごとに算出されるべきものである。 キ本件住民訴訟における弁護士報酬の公費負担額は,行政庁として訴訟参加したことに関する495万円が一応の目安になるところ,990万円(1人当たり330万円)はその2倍を超えない金額であり,1名当たりの金額もその3分の2に相当する金額である。 (4) 弁護士報酬の公費負担に関する決定の変更の可否について原告らの主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(旧法242条の2第8項の「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」の該当性)について旧法242条の2第8項は,同条第1項4号に基づく請求の相手方とされた当該職員が,住民訴訟において「勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」に,その所属先である普通地方公共団体が,弁護士報酬のうち相当額を公費で負担することができる旨規定していたところ,その立法経緯に照らすと,同条第8項は,4号請求にかかる住民訴訟が個人責任を問う形式をとっているものの,実際はその所属先である普通地方公共団体自身の政策判断や意思決定の当否を争うものが多く,したがって,当該職員による応訴は,当該地方公共団体のためになされているとの側面を有すること,にもかかわらず,応訴費用をすべて個人負担とするならば,公務員としての勤務意欲の低下を招くおそれがあること,特に同訴訟が政争の具や訴訟マニアの自己満足の手段として利用された場合に,個人負担を強いることは酷に過ぎると考えられることなどから,議会の議決を経ることを条件に,勝訴した当該職員が支払義務を負った弁護士報酬のうち相当額を当該地方公共団体が公費 手段として利用された場合に,個人負担を強いることは酷に過ぎると考えられることなどから,議会の議決を経ることを条件に,勝訴した当該職員が支払義務を負った弁護士報酬のうち相当額を当該地方公共団体が公費で負担することを許容したものと解される。 そうすると,当該職員が訴訟委任した弁護士の訴訟行為等が,果たして上記政策判断や意思決定を擁護するために必要であったと考えられるか否かは,公費負担すべき金額の相当性の判断において考慮されるべき事項であるから,上記の勝訴要件自体は,当該住民訴訟に係る判決書(ないしこれと同視すべき調書)において当該職員に対する損害賠償等の請求権が肯認されているか否かによって,その充足性を判断すべきところ,前記前提事実(2)記載の事実によれば,半田市が日本福祉大学情報社会科学部を誘致した過程において,Dらに財務会計法規に反する違法な行為があったことを理由とする損害賠償請求権の存在が否定され(なお,同所に掲記した各証拠によれば,請求の一部に係る訴えは,監査請求前置を経ていないことを理由に却下された事実が認められる。),同人らが本件住民訴訟において勝訴した事実は明らかというべきである。 この点につき,原告らは,上記勝訴要件の充足は,当該住民訴訟の内容を実質的に審理して判断すべきであるところ,本件住民訴訟は,全容を解明すれば,行政当局に何らかの違法行為があったのではないかという疑惑の存在を否定できない事件であったにもかかわらず,Dらが勝訴したのはCの訴訟遂行が稚拙だったためにすぎないと主張して,その充足性を否定するが,いわゆるなれ合い訴訟のような場合はともかくとして,上告審まで争われて確定した本件住民訴訟の判決の効力を否定することは許されないと解するのが相当である(前掲各証拠によれば,本件住民訴訟がなれ合い訴訟であったとは到底認め ような場合はともかくとして,上告審まで争われて確定した本件住民訴訟の判決の効力を否定することは許されないと解するのが相当である(前掲各証拠によれば,本件住民訴訟がなれ合い訴訟であったとは到底認められないし,原告らが援用する新聞報道に係る用地取得費の問題も,乙9の3,5及び7によれば,証拠に基づいて判断された上で結論が出されていることが認められる。)から,上記主張は採用できない。 2 争点(2)(Dらによる弁護士報酬支払の有無)について原告らは,DらとG弁護士らとの訴訟委任に関する契約書の提出がなく,弁護士報酬支払の事実も疑わしい旨主張するところ,なるほど,同契約書の提出がないことは原告らの主張するとおりであるが,一般に訴訟委任は信頼関係を有する依頼者と弁護士との間で行われることから,これに関する契約は,必ずしも書面を作成しないまま,口頭で契約を締結して済ますことがあるのは顕著な事実である(弁護士報酬額については,弁護士会報酬基準規程が一応の基準とされることから,契約書を作成しなくとも,特に不都合はないというのが実情である。)。したがって,通常の弁護士業務のあり方からすれば,契約書の提出がないからといって,訴訟委任の事実や弁護士報酬支払の合意がないことを推認することはできないばかりか,証拠(乙8の3,4及び6,9の2,3及び5,10の2,3及び5)によれば,G弁護士らは,Dらから本件住民訴訟(一審及び控訴審)の遂行を受任している事実が認められ,したがって,弁護士報酬の支払合意の存在も優に推認することができる。 そして,Dらが,本件住民訴訟遂行に関する弁護士報酬として,G弁護士に対し,8回にわたって総額3050万円を支払った事実は,証拠(甲27の3,28の2ないし6,38)によって十分に認めることができる。もっとも,その支払日につき,甲2 関する弁護士報酬として,G弁護士に対し,8回にわたって総額3050万円を支払った事実は,証拠(甲27の3,28の2ないし6,38)によって十分に認めることができる。もっとも,その支払日につき,甲28の2(F作成の報告書)の記載と甲38(G弁護士作成の領収書3通)のそれとの間に一致していないもの(Dにつき3回及びEにつき4回)が存在するが,Fの支払日は完全に一致し(甲28の3のFの振込金受取書の日付とも一致する。),D及びEの支払のうち,日付の一致しないものも1,2日の違いであることに照らすと,Fは,自分の支払日と同じ日にD及びEも支払ったと錯覚して甲28の2を作成したものと推認できるから,上記不一致の事実をもって支払に関する上記認定を覆すことはできない。 3 争点(3)(公費負担(額)の相当性)について前記の旧法242条の2第8項の制定の経緯,趣旨並びに,争点(1)及び(2)で判断したところに照らせば,4号請求に係る住民訴訟において勝訴した当該職員が弁護士報酬支払義務を負った場合に,これを公費で負担すべきか否か,負担するとしてその額をいくらにするかの判断は,必ずしも当該職員と訴訟代理人たる弁護士との訴訟委任契約にとらわれることなく,当該住民訴訟の内容が当該地方公共団体自身の政策判断や意思決定の当否を争うものといえるか否か,委任を受けた弁護士の訴訟行為が,かかる政策判断や意思決定を擁護するために必要と考えられるか否か,公費による負担の見地から,弁護士に対して支払われる報酬額が相当なものといえるか否かといった諸要素を総合して行われるべきものである。そして,この判断権は,第一次的には,議会への議案提案権という形で,当該地方公共団体の事務を統括する立場にあり,上記の諸要素について最も熟知していると考えられる長に属しているというべきであるが, 。そして,この判断権は,第一次的には,議会への議案提案権という形で,当該地方公共団体の事務を統括する立場にあり,上記の諸要素について最も熟知していると考えられる長に属しているというべきであるが,最終的には,民意に基づいて選出された議員らによって構成される議会がその相当性の有無を判断することが予定されているというべきである。したがって,このような判断を経て公費で負担することが確定した以上,長及び議会による判断が明らかに合理性を欠いていると認められない限り,負担(額)の相当性について司法審査権は及ばないと解すべきである。 しかるところ,別紙事件経過一覧表記載の事実に,証拠(乙8の3,4及び6,9の2,3及び5,10の2,3及び5)から推認できるG弁護士らの訴訟活動の状況を総合し,更に前記前提事実(2)ウに係る弁護士報酬495万円の支払の事実を加味すると,合計990万円(1人当たり330万円)を公費負担するとの長及び議会による判断が,明らかに合理性を欠くものとは認められない。 この点につき,原告らは,①Dらには日本福祉大学情報社会科学部の誘致に絡んで本件住民訴訟を提起されてしかるべき疑惑があったから,弁護士報酬を公費で負担すべき理由はないにもかかわらず,A現市長は,市議会対策を考慮して,半田市の責任をあいまいにするため,個人的感情に基づいて本件支出を行ったこと,②990万円の公費負担額の算出根拠は,おおざっぱにすぎて納得できるものではない旨主張するが,①については,前記の勝訴要件としても,また公費負担の相当性としても考慮できるものではなく,②についても,上記の説示から明らかなとおり,違法性を基礎づけるものとはいえない。 4 争点(4)(弁護士報酬の公費負担に関する決定の変更の可否)について原告らは,H前市長がした公費負担を0円とする旨の決定 ても,上記の説示から明らかなとおり,違法性を基礎づけるものとはいえない。 4 争点(4)(弁護士報酬の公費負担に関する決定の変更の可否)について原告らは,H前市長がした公費負担を0円とする旨の決定は行政処分に当たるところ,重大かつ明白な違法が認められないにもかかわらず,これを覆して本件支出をしたことは違法である旨主張する。 しかしながら,行政処分とは,法令に根拠を有し,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものを指す(最高裁判所昭和30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁,最高裁判所昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)ところ,旧法242条の2第8項によれば,普通地方公共団体の長は,当該住民訴訟の内容を検討し,勝訴した当該職員が支払義務を負った弁護士報酬のうち公費負担すべき相当額を判断した上,議会にその承認に関する議案を提出する権限を与えられていると解されるが,議案の提出,不提出によってDらの権利義務を直接形成したり,その範囲を確定することはおよそ考え難いので,H前市長が公費負担を0円とする旨決定し,これをDらに通知した行為は事実上の見解の表明にすぎず,これを超えて行政処分と解する余地はないというべきである。 そうすると,その変更の要件充足を論ずるまでもなく,原告らの上記主張は,その前提を欠くものとして採用できない。 5 結論以上の次第で,原告らの本訴請求はいずれも理由がないので棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文により,主文のとおり判決する。(別紙省略)名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟 紙省略)名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官横山真通
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