- 1 -令和4年2月18日東京地方裁判所刑事第8部宣告令和3年刑第3052号業務上過失致死被告事件 主文 被告人を禁錮1年6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、ロードバイク型の自転車による有償の食品配達業を営み、走行速度を上げて歩合制の配達報酬等を効率的に得ようとしていた者であるが、令和3年4月17日午後7時5分頃、食品を配達するため、業務として前記自転車を運転し、東 京都板橋区[以下省略]の道路をa方面からb方面に向かい時速約20ないし25キロメートルで進行中、同所先の交通整理の行われていない丁字路交差点入口に設けられた横断歩道に差し掛かった際、自車には前照灯の装備がない上、折からの降雨により眼鏡に雨滴が付着するなどし、前方左右が見えにくい状態になっていたのであるから、適宜減速した上、一層前方左右を注視し、同横断歩道による横断歩行 者の有無及びその安全を確認しながら進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、減速することなく、かつ、前方左右を注視せず、同横断歩道による横断歩行者の有無及びその安全を確認しないまま漫然前記速度で進行した過失により、折から左方から右方に横断歩行中のA(当時78歳)を左前方約4.5メートルの地点に認め、急制動の措置を講じたが間に合わず、同人に自車を衝突させて同人を路 上に転倒させ、よって、同人に外傷性頭蓋内損傷の傷害を負わせ、同月19日午後8時28分頃、東京都荒川区[以下省略]所在の病院において、同人を前記傷害により死亡させた。 (量刑の理由) 1 本件は、判示の食品配達業を営んでいた被告人が、自転車を運転中、交通整理 の行われていない丁字路交差点入 以下省略]所在の病院において、同人を前記傷害により死亡させた。 (量刑の理由) 1 本件は、判示の食品配達業を営んでいた被告人が、自転車を運転中、交通整理 の行われていない丁字路交差点入り口の横断歩道に差し掛かった際、速度調節及 - 2 -び前方左右注視の業務上の注意義務を怠り、折から同横断歩道を歩行中の被害者に自車を衝突させて死亡させた事案である。 2 被告人は、夜間降雨があった中、前照灯の装備がなく、眼鏡に雨滴が付着して前方左右が見えにくい状態にあったにもかかわらず、時速約20ないし25キロメートルという自転車としては相応に高速度のまま、横断歩道による横断歩行者 の有無及びその安全を確認しないままに走行したために本件を惹起した。被告人は、高速走行可能なロードバイク型の自転車を運転するなどして、走行速度を上げて歩合制の配達報酬等を継続的に効率よく得ようと食品配達業に従事しており、そのような業務者の負う基本的な注意義務に違反したものであって、その過失は重い。 本件により被害者のかけがえのない生命が失われたという結果は誠に重大である。何の落ち度もないにもかかわらず、突然その未来を奪われた被害者の無念さ、残された遺族らの心痛は察するに余りある。 3 他方、被告人が事実を認めた上で、被害者及びその遺族に対して取り返しのつかないことをしてしまい、本当に申し訳ないことをした旨謝罪の言葉を述べると ともに、後悔の念と反省の情を示していること、被告人の母が出廷して監督を誓約するなど更生への助力が期待できること、被告人には複数の交通違反歴はあるものの前科はないこと、配達業務の委託会社が付していた保険により被害者の遺族に対して一定の損害賠償がなされることが見込まれることなど、被告人に対して有利に考慮すべき事情も には複数の交通違反歴はあるものの前科はないこと、配達業務の委託会社が付していた保険により被害者の遺族に対して一定の損害賠償がなされることが見込まれることなど、被告人に対して有利に考慮すべき事情も認められる。 4 以上をもとに検討するに、本件における量刑は、犯情の悪質さ、とりわけ、被害結果が誠に重大であることや、被告人の過失が重いことが中心的な事情となる。 このことに、上記3の被告人に有利な諸事情を併せ考慮するとともに、自転車による重過失致死事犯の量刑傾向や、自動車運転過失致死事犯との均衡等も踏まえ、被告人に対しては、相応の期間の自由刑を主刑とした上で、その執行については 猶予することが相当であると判断した。 - 3 -(求刑禁錮2年)令和4年2月18日東京地方裁判所刑事第8部 裁判官鏡味薫
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