昭和61(ネ)1186

裁判年月日・裁判所
昭和63年7月15日 大阪高等裁判所
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【DRY-RUN】主   文 控訴人の本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。        事   実 第一 当事者の求める裁判 一 控訴人 1 原判決を取り消す。 2(一) 被控訴人らは原判決添

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判決文本文6,798 文字)

主   文 控訴人の本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。        事   実 第一 当事者の求める裁判 一 控訴人 1 原判決を取り消す。 2(一) 被控訴人らは原判決添付別紙イ号物件説明書記載の物件を製造し、販売 してはならない。 (二) 被控訴人らは控訴人に対し、各々金五〇〇万円及びこれに対する昭和六〇 年五月一九日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は一、二審とも被控訴人らの負担とする。 4 右2項はこれを仮に執行することができる。 二 被控訴人ら 主文と同旨 第二 当事者の主張  当事者の主張は次のとおり付加、訂正、補充するほか、原判決事実摘示及び、同 添付の「イ号物件説明書」「昭五八-二五七六九特許公報」記載のとおりであるか らこれを引用する。 一 原判決三枚目裏末行の「作用効果」の前に「本件特許発明の課題と解決手段 (発明の構成)並びに、」を付加し、同四枚目表一行目の前に次のとおり付加挿入 する。 「(1) 本件発明の目的は繊維処理機械から排出された屑物繊維を分離除塵して 有用繊維を回収するものであるが、従来は単独除塵装置乃至繊維機械併設装置とし てテーカインローラとシリンダやケージローラによる間接吸引方式によつており、 シリンダ方式では回収処理能力がシリンダに規制され、またケージローラ方式では 広い設置場所を必要とし、吸着繊維量がふえるとフアンの吸引力が落ちる等の欠陥 があつたところ、本件発明は直接吸引方式として分離板(モートナイフ)と覆板で 構成される回収繊維通路に吸引フアンと直結した主吸引ダクトを下向延長させて接 合させたもので、仮に右不可欠の要素である吸引フアンに直結した主吸引ダクト、 分離板、覆板が公知であつても、これらの組合せとしての構成要件が新規性がある ため登録されたものである。右の組合せによる て接 合させたもので、仮に右不可欠の要素である吸引フアンに直結した主吸引ダクト、 分離板、覆板が公知であつても、これらの組合せとしての構成要件が新規性がある ため登録されたものである。右の組合せによる構成要件が本件発明の最重要要素で あつて、このことはいずれも、明細書の特許請求の範囲(一欄最下段から二欄四行 目八ないし一二行目)と詳細な説明欄(三欄二九ないし三四行目、六欄二二ないし 二七行目、七欄一六ないし二一行目)に明記されているところより明らかである。 そしてストリツピングローラは、通常一・五%程度の油脂分を含むカシミヤ繊維等 絡まり易いものの場合において本件発明の課題である繊維回収効率の向上をはかる ためには不可欠であるが、絡まらない繊維のときは必要でない補助的手段というべ き要素である。」 二 同四枚目表一行目冒頭に「(2)」を、同五枚目表一行目末尾に「かくして、 本件の直接吸引方式により、従来装置に比べ、約三倍程度能率が改善された。」を 各付加する。同六枚目裏九行目の「本件明細書」を「本件特許出願書添付明細書 (以下「本件明細書」という)」と訂正し、同七枚目裏四行目の「記載」の次に 「及びそれに至る審査過程での補正」を、同六行目末尾に「したがつて、本件にお いて包袋禁反言の原則は酷に過ぎ適用の余地がない。」を各付加する。 四 同九枚目表末行冒頭から、同裏一行目の「であり」までを次のとおり訂正す る。 「(四) 右のとおりイ号物件は、(1)本件発明と同一の技術思想に基づきなが ら、特許請求の範囲の内の一つで比較的重要度の低いストリツピングローラを省略 し、(2)本件発明が既に公知であるが故にこれに基づいて右省略することが極め て容易であり、(3)右省略することによつて本件発明より効果が劣ること(短繊 維の低級品しかえられないこと)が明白であつて、技術の完全を期する限 が既に公知であるが故にこれに基づいて右省略することが極め て容易であり、(3)右省略することによつて本件発明より効果が劣ること(短繊 維の低級品しかえられないこと)が明白であつて、技術の完全を期する限りこのよ うな省略をする筈がないと推認されるものであり、換言すれば、本件特許請求の範 囲を知つてこれから逃れるために敢えて技術的に劣る事の明らかな手段を採用した と推認されてもやむをえないうえ、(4)右のような改悪によつてもなお本件発明 出願前の技術に比べて作用効果上特に優れたものである(繊維回収効率自体は従前 技術に比べ約三倍である)よつて」 五 同一一枚目裏八行目と九行目を次のとおり訂正する。 「以上のとおりであるのに、控訴人は直接吸引方式なる公知装置の組合せが本件発 明の特徴であるというが、もともと明細書に明記なく、本件発明における分離板、 覆板、ダクトの公知性が判明したためにはじめて主張し出したものであり、右組合 せですら既に公知(次項(三)の両発明に記載されている)であつたものであり、 また、ストリツピングローラを任意的といえないことは『請求の範囲』優先の法原 則に基づき明らかである。 2 本件発明の構成要件(4)と(6)が必須の要件であり、控訴人自身もそう認 識していたことは本件特許出願の審査過程により明らかである。すなわち、」 六 同一三枚目表四行目の「と主張した。」を「『本願は繊維原料や処理繊維中か ら再利用可能な繊維を分離して取り出すための単独開繊分離装置として開発したも のであり、且つその要旨は別途に提出しました手続補正書によつて明確にしました 様に、これらの引例に示されていないのみか示唆もない新しい構成部分を組み合せ ることによつて目的を達成せしめた開繊分離装置を開発したものであります』との べ、『ストリツピングローラ及びそれに接続する吸引ダクト』に関する 例に示されていないのみか示唆もない新しい構成部分を組み合せ ることによつて目的を達成せしめた開繊分離装置を開発したものであります』との べ、『ストリツピングローラ及びそれに接続する吸引ダクト』に関する事項にこそ 新規性があることを明らかにし、さらに、第二回拒絶に対する昭和五八年一月一七 日付手続補正書において、請求の範囲の補正と同時にこれに合致させるため、明細 書一二頁三ないし四行目に『分離ローラには単独でも本発明を満足されることはで きるが』とあつたものをそのうち『単独』以下の部分を、同頁七行目に『したがつ て図示するようにストリツピングローラ(13)を併設することが推奨される』と あつたものを、そのうち『ことが推奨される』を各削除し、また同一三頁一六ない し一七行目の『開繊分離ローラと該ローラに開口して形成した吸引ダクトで剥離す るとともに』のうちの二ケ所の『ローラ』の次に『群』を挿入して補正しているの である。」と、同七行目の「である。」を「であつて、ストリツピングローラは任 意に設置しうるものではなく、したがつて明細書の詳細な説明欄における控訴人主 張の説明箇所は前記補正と同時に当然削られるべきものであつたのであり、この記 載の残存が右構成要件の解釈の妨げとなるものではない。」と各訂正する。 七 同一三枚目表一二行目と一三行目の間に次のとおり付加挿入する。 「3 不完全利用論は現行特許法三六条五項、七〇条に照らし認めえない理論であ るのみならず、本件発明においてストリツピングローラと吸引ダクトの要件は前示 のとおり必須不可欠の構成要件であるから、右理論の適用をなしえないことは明ら かである。」 第三 証拠(省略)        理   由 一 当裁判所も控訴人の本訴請求をいずれも棄却すべきものと判断するが、その理 由は次のとおり付加、訂正、補充するほか原判決理由説示 ことは明ら かである。」 第三 証拠(省略)        理   由 一 当裁判所も控訴人の本訴請求をいずれも棄却すべきものと判断するが、その理 由は次のとおり付加、訂正、補充するほか原判決理由説示のとおりであるからこれ を引用する。 1 原判決一三枚目裏四行目の「の構成要件」を「についての本件明細書記載の矛 盾」と、同五行目の「よれば」の次に「本件明細書の記載は別紙特許公報のとおり であることが認められ、同明細書のうち「特許請求の範囲」の記載によれば」を、 同一五枚目表三行目の「ので、」の次に「原則として」を各付加し、同六行目から 同裏一二行目までを次のとおり訂正する。 「三 本件発明の技術的範囲について 1 本件発明におけるストリツピングローラ及びそれに接続する吸引ダクトに関す る右請求の範囲記載の構成要件(三)のうち被控訴人ら主張の(4)と同(四)の うち前同(6)の構成要件性とその重要性についてみる。  特許権は、出願人の出願時の認識の限度をこえて与えられるものではないから、 出願経過における出願人の意見、補正にあらわれる認識は特許請求の範囲の解釈に おいて重要であり、また当該特許が出願時の公知技術下におけるいかなる課題の解 決を目的としたものであるかも右同解釈に重要であるところ、成立に争いない甲一 五号証の一ないし九、原本の存在及び成立に争いない乙六号証、弁論の全趣旨によ り成立を認める甲三号証、控訴人の本人尋問結果により成立を認める同一二ないし 一四、同一九号証及び同尋問結果によれば、本件発明出願当時の屑物繊維を分離除 塵して有用繊維を回収するについての科学技術的課題は請求原因2(二)(1)の とおりであつて、本件発明の目的が回収効率をより高める手段の創造にあつたとこ ろ、本件特許出願当時、昭和五二年一〇三五三一号特許公報において、テーカイン ローラの周囲を覆 課題は請求原因2(二)(1)の とおりであつて、本件発明の目的が回収効率をより高める手段の創造にあつたとこ ろ、本件特許出願当時、昭和五二年一〇三五三一号特許公報において、テーカイン ローラの周囲を覆板とモートナイフ(分離板)でおおい吸引ダクトに連結する組合 せが開示されていた(その吸引手段の相違はともかくとして)ことが認められ、右 を覆すに足る証拠はない。 2 ついで、前記目的にかかる本件発明の出願経過について、前掲乙六号証、成立 に争いない甲七号証の一ないし一三、原本の存在及び成立に争いのない乙七号証、 前掲本人尋問結果によれば、控訴人は出願手続に暗らく、文書作成能力に自信がな いため、本件出願手続一切を、弁理士でない素人であるが手続にくわしい知人のA に一任して来たところ、第一回、第二回の出願拒絶を受け、その都度右Aに意見書 提出補正を依頼し、二度目については全部一任し、事前、事後の相談を経ずに処理 するにまかせていたところ、その経過、及びそこで控訴人代理Aにより提出された 意見書、明細書の補正内容は被控訴人の主張2(一)ないし(三)のとおりである と共に、第二回拒絶理由に対する意見書の中で次のとおり意見をのべていることが 認められる。」 2 同一六枚目裏七行目から同末行までを次のとおり訂正する。 「以上のとおり認められ、更に前掲証拠によれば、控訴人自身も本件発明中のスト リツピングローラ及びそれに接続する吸引ダクトが絡まり易いカシミヤ繊維等では 不可欠のものであると本件特許権出願当時から認識していたことが認められ、他 方、右ストリツピングローラと吸引ダクト装置がなくても繊維回収効率が従前技術 と比較して約三倍向上した点については、同旨の控訴人の本人尋問結果は根拠資料 の立証が伴わないので俄かに措信しがたく、他にこれを認めるに足る証拠がない点 を総合すれば、控訴人代理 繊維回収効率が従前技術 と比較して約三倍向上した点については、同旨の控訴人の本人尋問結果は根拠資料 の立証が伴わないので俄かに措信しがたく、他にこれを認めるに足る証拠がない点 を総合すれば、控訴人代理Aは是非とも出願登録を得るために敢えて、」 3 同一七枚目表八行目から一〇行目までを次のとおり訂正する。 「3 以上1、2を総合すれば、控訴人代理Aは本件特許出願において、対象繊維 の如何を問わず従来の技術より常に回収効率を高めるため、及び第二回拒絶理由で 控訴人主張の直接吸引方式のうち、吸引手段を除くダクト覆板、分離板の組合せに よる吸引装置が公知例として指摘された関係上、この指摘をかわすための不可欠の 発明構成とするため、以上の両目的のために、効率の高い開繊分離回収装置として テーカインローラ及びこれをおおう分離板付覆板と吸引ダクト及びストリツピング ローラとこれに結合する吸引ダクトの結合体としての構成を選択し、本件発明の必 須不可欠かつ重要な構成として意識的に限定したものと推認すべきである。  なお、本人たる控訴人が本訴主張同旨の認識をもつていたとしても、Aに出願手 続一切を一任していたのであるから、また、控訴人主張の記載が本件明細書中に存 するとしても、前示の本件明細書の補正の経緯と内容及び出願手続が専門家でない 素人によりなされたことに照らし、いずれも右推認を妨げるものではなく、他に右 推認の妨げとなる事情は証拠上認められない。 4 以上の次第で、前二及び右1ないし3を総合すれば、本件発明の技術的範囲は 前二1のとおりの構成要件全部及び、それらの結合であるというべく、これに反す る前掲甲三号証(Bの鑑定結果)及び控訴人の主張はとりえない(以下、右認定の 二1判示の構成要件を「本件発明の構成要件」と、個別的に「本件発明の構成要件 (一)」などという)。」 4 同一七枚目 に反す る前掲甲三号証(Bの鑑定結果)及び控訴人の主張はとりえない(以下、右認定の 二1判示の構成要件を「本件発明の構成要件」と、個別的に「本件発明の構成要件 (一)」などという)。」 4 同一七枚目表一一行目から末行までを次のとおり訂正する。 「四 イ号物件と本件発明の対比について 1 請求原因3は、原判決別紙イ号物件説明書記載の説明文及び図面を含め、当事 者間に争いがない。そして、同説明書記載によれば、イ号物件の構成は右説明書三 の(1)ないし(7)のとおりの構成(以下「イ号物件の構成(1)」などとい う)に分説するのが相当である。 2 イ号物件の構成(3)(4)と本件発明の構成要件(三)(四)とを対比する に、前者は後者のうちストリツピングローラ及びそれに接続する吸引ダクトに関す る構成を欠如していることは明らかである。 3 イ号物件構成(5)(6)と本件発明の構成要件(五)(六)との対比につい てみる。 5 同一七枚目裏一行目の「1」を「(一)」と、同三行目の「(五)」を 「(5)」と、同七行目の「(六)」を「(6)」と、同九行目の「2」を 「(二)」と、同末行の「(一)」を「(1)」と、同一八枚目表一〇行目の 「(二)」を「(2)」と、同裏一二行目の「2」を「(三)」と、同一九枚目表 一二行目の「4」を「(四)」と、同行の「構成(五)(六)」を「構成(5) (6)」と、同末行の「しない。」を「せず、したがつて結局、イ号物件は本件発 明の技術的範囲に含まれないという外ない。」と各訂正し、同末行の次に以下のと おり付加挿入し、同裏一行目の「七」を「六」と訂正する。 「五 不完全利用について  仮に現行法下において、不完全利用論が控訴人主張の(1)ないし(4)の要件 に基づく理論として採用しうるとしても、前示のとおり、本件発明の構成要件 (三)(四)のうちストリツピング 不完全利用について  仮に現行法下において、不完全利用論が控訴人主張の(1)ないし(4)の要件 に基づく理論として採用しうるとしても、前示のとおり、本件発明の構成要件 (三)(四)のうちストリツピングローラ及びそれに接続する吸引ダクトに関する 構成要件は必須かつ重要な要件であつて付随的補助的なものではないのであり、さ らに、右はさておくとしても、控訴人主張の(3)及び(4)の要件が本件で充足 されることを認めるに足る証拠はない。  よつて、いずれの点からも不完全利用の主張は理由がない。」 二 以上の次第で、控訴人の被控訴人らに対する本訴請求をいずれも棄却した原判 決は相当であつて、本件控訴はいずれも理由がないというべく棄却を免れない。  よつて、民訴法三八四条、九五条、八九条を各適用して、主文のとおり判決す る。 (裁判官 安達昌彦 杉本昭一 三谷博司)

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