平成28(行ウ)74 職務上義務不存在確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年1月16日 大阪地方裁判所
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判決文本文50,111 文字)

主文 1 被告は,原告らに対し,それぞれ22万円及びこれに対する平成27年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,補助参加に要した費用も含め,これを10分し,その1を被告 及び補助参加人の負担とし,その余を原告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,12万2321円及び別紙1「差額賞与一覧表1」 の「差額賞与(勤勉手当)額」欄記載の各金員に対する同表「支給日」欄記載の各日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,6万5726円及び別紙1「差額賞与一覧表2」の「差額賞与(勤勉手当)額」欄記載の各金員に対する同表「支給日」欄記載の各日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Aに対し,220万円及びこれに対する平成27年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Bに対し,220万円及びこれに対する平成27年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 本件事案の概要本件は,被告が設置していた地方公営企業である大阪市交通局(以下「交通局」という。)の職員として地下鉄運転業務に従事していた原告らが,被告に対し,原告らは,ひげを剃って業務に従事する旨の被告の職務命令又は指導に従わなかったために,平成25年度及び平成26年度の各人事考課において低 評価の査定を受けたが,上記職務命令等及び査定は,原告らの人格権としての ひげを生やす自由を侵害するものであって違法 従わなかったために,平成25年度及び平成26年度の各人事考課において低 評価の査定を受けたが,上記職務命令等及び査定は,原告らの人格権としての ひげを生やす自由を侵害するものであって違法であるなどと主張して,①任用関係に基づく賞与請求として,上記査定を前提に支給された各賞与(勤勉手当)に係る本来支給されるべき適正な額との差額及びこれらに対する各支給日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,②国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づく損害賠償として,それぞれ慰謝 料及び弁護士費用の合計220万円並びにこれに対する不法行為の日の後(平成26年度の人事考課における評価対象期間の終期)である平成27年3月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。 2 前提事実(争いがない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に 認定できる事実) 当事者等ア被告は,地方公営企業法に基づき,平成30年3月31日まで,鉄道事業を営む地方公営企業である交通局を設置していた地方公共団体である。 交通局が営んでいた鉄道事業は,同年4月1日,補助参加人に承継され (以下「本件民営化」という。),交通局は,同日をもって消滅した。 イ原告Aは,昭和57年4月に交通局職員として被告に採用され,研修期間を経てa管区b駅に駅務職員として配属された。その後,昭和58年6月,c線のd乗務所に高速車掌として配属され,平成3年12月,電車運転免許を取得し,同乗務所に高速運転士として配属され,平成18年9月 20日,e線f乗務所に異動し,本件民営化後も,補助参加人の正社員として,同乗務所に所属する高速運転士として乗務している。なお, 許を取得し,同乗務所に高速運転士として配属され,平成18年9月 20日,e線f乗務所に異動し,本件民営化後も,補助参加人の正社員として,同乗務所に所属する高速運転士として乗務している。なお,原告Aは,平成23年11月頃から平成25年8月29日まで,交通事故による療養のため休職していた。 原告Aは,昭和59年頃からひげを生やし始め,平成の初め頃からは常 時ひげを生やしている状態となり,遅くとも平成15年頃からは,口元 (上唇の上部)及び顎の下等に,常時ひげを生やしている。 (甲6,49の①ないし⑧,甲68,原告A)ウ原告Bは,昭和58年4月に交通局職員として被告に採用され,同年5月にa管区g駅に駅務職員として配属された。その後,昭和60年6月,c線のd乗務所に高速車掌として配属され,平成6年11月,電車運転免 許を取得し,同乗務所に高速運転士として配属され,平成18年9月20日,e線f乗務所に異動し,本件民営化後も,補助参加人の正社員として,f乗務所に所属する高速運転士として乗務している。 原告Bは,平成6年頃からひげを生やし始め,平成18年9月頃,f乗務所に異動した後,いったんひげを剃って勤務するようになったが,平成 20年秋頃から,再びひげを生やすようになり,口元及び顎の下等に,常時ひげを生やしている。 (甲50の①ないし⑥,甲69,原告B) 被告及び交通局における服務に関する規程等の内容ア被告の条例等 大阪市職員基本条例被告は,平成24年5月28日,大阪市職員基本条例(以下「職員基本条例」という。)を制定し,同条例は同年6月1日施行された。同条例には,以下の各規定が存在する。なお,これらの規定は,同条例の制定に伴 告は,平成24年5月28日,大阪市職員基本条例(以下「職員基本条例」という。)を制定し,同条例は同年6月1日施行された。同条例には,以下の各規定が存在する。なお,これらの規定は,同条例の制定に伴い廃止された大阪市職員倫理条例(平成23年10月3日制定) 5条及び9条とおおむね同内容のものである。 「(倫理原則)第4条職員は,自らの行動が市政に対する市民の信用に大きな影響を与えることを深く認識して,常に厳しく自らを律して服務規律を遵守するとともに,倫理意識の高揚に努めなければならない。 2 職員は,市民全体の奉仕者であり,市民の一部に対してのみの奉 仕者ではないことを自覚して,公正に職務を遂行し,その職務や地位を私的利益のために用いてはならず,また,市民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。」「(職員倫理規則)第8条市長は,倫理原則を踏まえ,職員の倫理意識の高揚を図るた めに必要な事項に関し,市規則(以下「職員倫理規則」という。)を定めるものとする。 2 職員倫理規則には,服務規律の確保及び市民の疑惑や不信を招くような行為の防止のために職員の遵守すべき事項を定めなければならない。」 (乙1,123) 大阪市職員倫理規則職員基本条例8条1項(旧大阪市職員倫理条例9条1項)に基づき平成23年12月2日に制定され,平成24年6月22日に改正された大阪市職員倫理規則2条2項8号は,以下のとおり定めている。 「(遵守事項)第2条 2 条例第8条2項の服務規律の確保及び市民の疑惑や不信を招くような行為の防止のために職員が遵守すべき事項は,次に掲げる る。 「(遵守事項)第2条 2 条例第8条2項の服務規律の確保及び市民の疑惑や不信を招くような行為の防止のために職員が遵守すべき事項は,次に掲げる事項及び次条の規定により行ってはならないとされた行為を行わないこ ととする。 勤務時間中は,次に掲げる事項に留意することア常に清潔な身だしなみを心がけることイ市民の対応を行うときは,名札を着用することウ身体に入れ墨(眉,唇その他の顔面の一部に施される化粧に 類似するものを除く。以下同じ。)がある職員にあっては,そ れを市民に見せないことエアからウまでに掲げるもののほか,市民に不快感を覚えさせないようにすること」(乙2,3) 部下職員服務指導監督要領 被告が平成22年7月に制定し,平成24年6月に改定した部下職員服務指導監督要領には,以下の記載がある。 「7 市民から信頼される身だしなみ・市民対応 職場にふさわしい身だしなみの確保管理監督者は,下記の項目や「市民の声」を参考に,部下職員の 服装や身だしなみをチェックし,不適当と認められる場合には,指導を行ってください。 不祥事につながる兆候(注意すべき事象)・服装や装飾品が派手になってきている職員がいる。 ・服装や身だしなみについての苦情電話,市民の声が多発している。 ・名札を携帯していない職員が目立つ。 具体的指導監督方法① 部下職員が,業務実態に応じたふさわしい服装や身だしなみで業務遂行しているか,定期的にチェックし,入れ墨 ・名札を携帯していない職員が目立つ。 具体的指導監督方法① 部下職員が,業務実態に応じたふさわしい服装や身だしなみで業務遂行しているか,定期的にチェックし,入れ墨を入れている職員に対しては,できる限り消すように指導するなど,改善が必要な場 合は,適宜,指導等を行う。 ② 市民対応職場では,少なくとも,次のような項目に留意し,チェック・指導等を行う。 ③ その他,業務の性質に応じて,職場内ルールを設け,遵守するよう指導する。 【チェック項目】 ・服装に清潔感があるか。(汚れ,臭い,破れなどが目立たないか)・服装が公務にふさわしいか(派手過ぎないか。カジュアル過ぎないか)(中略)・髪やヒゲ,ツメは清潔か。(不快感を与えるようなものではない か)(中略)≪市民の声より≫・茶髪や長髪,ピアス,髭(無精ひげ)を蓄えている人は,大変不快である。」 (乙4,5)イ交通局における諸規程交通局においては,後掲ウの「職員の身だしなみ基準」のほか,以下の各規程が定められている。 大阪市交通局職員服務倫理規範(平成22年9月制定) 「第22条1項職員は,交通事業従事者として,また,全体の奉仕者として市民,お客さまのために業務を遂行する立場を自覚して,常に清潔な身だしなみを心がけ,市民,お客さまが不快感を覚えるような身だしなみをしてはならない。」(乙6,123) 大阪市交通局職員行動指針(平成19年5月8日制定)「1 規律性(ルール・諸規則を守り さまが不快感を覚えるような身だしなみをしてはならない。」(乙6,123) 大阪市交通局職員行動指針(平成19年5月8日制定)「1 規律性(ルール・諸規則を守り,職場秩序の維持向上に自ら取り組む態度) 身だしなみに気をつけ,相手に不快感を与えないようにします。」 (乙7,123) 大阪市交通局高速鉄道運輸関係職員勤務規程(昭和29年4月1日制定,平成26年3月31日改正)「(服装の整正等)第7条職員は,勤務中,必らず制服及び所定の腕章を着用し,服装の整正及び態度の端正に努めなければならない。」 (乙8,123) 高速鉄道乗務員執務要領(以下「執務要領」という。)「(服装)第5条乗務員は,制服・制帽を着用し,常に服装の整正及び容姿の端正に心掛けるとともに,次の事項に留意し,乗客に好感を与え, かつ,その信頼を得るように努めなければならない。 常に清潔な服装をすること 制服・制帽を変形しないこと 襟章・名札は,所定の位置に取り付けること 乗務中は,手袋を着用すること 頭髪及びひげ等の手入れを怠らないこと 草履及びサンダル等は,はかないこと 防寒服の着用は,定められた期間内とすること」(平成25年5月13日改正前)「(身だしなみ) 第5条乗務員は,制服・制帽を着用し,常に服装の整正及び容姿の端正に心掛けるとともに,「職員の身だしなみ基準」に留意し,乗客に好感を与え,かつ,その信頼を得るように努めなけれ 第5条乗務員は,制服・制帽を着用し,常に服装の整正及び容姿の端正に心掛けるとともに,「職員の身だしなみ基準」に留意し,乗客に好感を与え,かつ,その信頼を得るように努めなければならない。」(平成25年5月13日改正後)「(接客) 第6条接客については,常に品位を保ち,親切,てい寧及び誠実を 旨とし,節度ある態度で応対しなければならない。」(甲1,2,乙9,123) 大阪市交通局職員接遇の心得(以下「接遇の心得」という。平成8年6月1日制定)「【接遇の基本】 (清潔な身だしなみで好印象を)私たちの第一印象は,身だしなみで決まります。清潔感のあるキチッとした身だしなみは,見る人に好印象を与え,勤務する姿勢にも信頼感を持っていただけます。あなたの身だしなみの良し悪しが,あなた自身の印象を高め,さらには交通局全体の評価を向上させま す。(以下略)(身だしなみのポイント)<男子職員>髭はそってあるか」(乙10,123)ウ職員の身だしなみ基準 交通局運輸部は,平成24年9月28日,「職員の身だしなみ基準」(以下「本件身だしなみ基準」という。)を制定した。 本件身だしなみ基準の内容は別紙2のとおりであり,男性の「顔・髭」の欄には,「髭は伸ばさず綺麗に剃ること。(整えられた髭も不可)」と記載されている。 運輸部長が,平成24年9月28日付けで各所属長に宛てた「職員の身だしなみ基準の制定について」と題する書簡(以下「本件通達」という。)には,以下のとおり記載されている。 「2 指導教育の方法 成24年9月28日付けで各所属長に宛てた「職員の身だしなみ基準の制定について」と題する書簡(以下「本件通達」という。)には,以下のとおり記載されている。 「2 指導教育の方法 各職員に対し,別紙の基準のとおり開始日までに身だしなみ基 準を満たすよう指示する。 点呼等において各職員の身だしなみについて確認し,必要に応じて指導する。身だしなみの是正が容易であれば,当該職員に即座に是正させる。 指導に従わない場合においても繰り返し指導を行う。度重なる指導にも関わらず改善が見られない場合は,管理課まで報告を行 うとともに,人事考課への反映も行う。 3 指導に従わない職員への対応当該職員の身だしなみの態様,業務内容等を総合的に勘案し,必要に応じた対応を行う。 4 適用開始日 平成24年10月1日ただし,平成24年10月1日~11月30日は周知徹底の期間とし,人事考課への反映は行わない。」(以上につき,甲3の①②,乙11,123) 交通局における人事考課制度の概要 ア交通局では,平成18年度から,絶対評価による職員の人事考課制度が導入されており,同制度において,人事評価の結果が勤勉手当の支給額等に反映されていたが,上位区分については人数の割合が定められていたのに対し,下位区分の人数や割合は定められていなかった(乙12,123,証人C)。 イ一方,平成24年6月1日に施行された職員基本条例は,相対評価による人事評価をする際の各区分の分布割合の目安等を規定しており(乙1・18条参照),交通局においても,平成25年度から,絶対評価によ イ一方,平成24年6月1日に施行された職員基本条例は,相対評価による人事評価をする際の各区分の分布割合の目安等を規定しており(乙1・18条参照),交通局においても,平成25年度から,絶対評価による評価点を基に相対評価区分を決定する新たな人事考課制度(以下「本件人事考課制度」という。)が導入された。 本件人事考課制度の概要は,以下のとおりである。 評価対象期間毎年4月1日から翌年3月31日(評価基準日)まで 絶対評価の方法それぞれの職種・職位レベルごとに,代表的な「求められる人物像」及び「必要とされる職務要件」並びに「評価項目」及び「着眼点」が定 められており,各評価項目について絶対評価による評価点が付与される。 各評価項目について,「期待レベルをはるかに上回った」場合は5点,「期待レベルを上回った」場合は4点,「概ね期待レベルに達した」場合は3点,「期待レベルに達しなかった」場合は2点,「期待レベルには全く達しなかった」場合は1点が指標されており,中間の評価と認め られる場合は,これらの中間点(4.5点,3.5点,2.5点,1. 5点)により評価される。ここでいう「期待レベル」とは,独力で職務遂行できる能力レベルをいうものとされている。 絶対評価は,被評価者による自己評価,第1次評価者による第1次評価,第2次評価者による第2次評価の順に進められ,交通局長による調 整を経て確定される。 相対評価の方法相対評価は,原則として,同一の職種・職位レベルで,同一の第2次評価者が評価した範囲を基本として確定された実施単位内で,第2次評価における絶対評価点が高い者から順に,第1区分(5パーセント) 相対評価は,原則として,同一の職種・職位レベルで,同一の第2次評価者が評価した範囲を基本として確定された実施単位内で,第2次評価における絶対評価点が高い者から順に,第1区分(5パーセント), 第2区分(20パーセント),第3区分(60パーセント),第4区分(10パーセント)及び第5区分(5パーセント)に振り分けられる。 評価結果の影響等上記相対評価に基づく人事評価の結果は,昇給の有無及び内容や,翌年度の夏期手当(6月30日支給)及び年末手当(12月10日支給) における勤勉手当の支給月数に影響する。 また,2年連続して最低評価の第5区分とされた上,勤務実績が良くないと認められた場合,指導その他の必要な措置を講じたにもかかわらず,なお上記の場合に該当するときには,地方公務員法(以下「地公法」という。)28条1項1号に基づく分限処分の対象となる。 (以上につき,甲4の①ないし④,乙1,13,16ないし20,12 3,証人C)ウ本件で問題となる平成25年度及び平成26年度において,原告らは,いずれも指導高速運転士に該当する。 指導高速運転士の「求められる人物像」は,「担当業務の円滑な推進に向けて,班に所属する職員を総括しながら業務遂行できる。」と定められ ており,指導高速運転士の「必要とされる職務要件(例)」は,「お客さまに対して,真心を込めておもてなしの気持ちで応接できる。」,「自己の職責を十分に認識し,事故防止や安全性向上のための取組みを着実に遂行できる。」,「担当業務に関する知識・技能を十分に身に付けた上で,正確かつ適切に業務を遂行できる。」,「円滑な業務遂行に向けて他職員 と協調し,後輩職員に対して,適切な指導を行 みを着実に遂行できる。」,「担当業務に関する知識・技能を十分に身に付けた上で,正確かつ適切に業務を遂行できる。」,「円滑な業務遂行に向けて他職員 と協調し,後輩職員に対して,適切な指導を行うことができる。」と定められている。 また,本件人事考課制度における指導高速運転士の「評価項目」及び「着眼点(例)」は,別紙3記載のとおりである。 (乙14,15) 原告らに対する人事考課について平成25年度及び平成26年度における原告らに対する人事考課の結果(以下「本件各考課」という。)は,以下のとおりである。 本件各考課における第2次評価者は,Df乗務所長(以下「D所長」という。),第1次評価者は,原告Bの平成25年度の人事考課がE助役,その 他はF運輸助役であり,いずれにおいても第1次評価と第2次評価の結果は 一致していた。 ア原告A 平成25年度「市民・お客さま志向」 2.5点「規律性」 2点 その他の評価項目 3点絶対評価合計 2.825点相対評価区分第5区分同年度の人事考課シートの評価者総評欄には,「温厚な性格で,仕事に対しても的確にこなしており,積極的に語学研修も受講し,知識の習 得に努めているところは評価できるが,規律性の部分で少し欠けるところがある。」(第1次評価者),「温厚な性格で,仕事に対しても的確にこなしており,積極的に語学研修も受講し,知識の習得に努めているところは評価できるが,もう少し協調性があればなおよい。」(第2次評価者)と記載されていた。また,同シートの面談記録等の欄には,現 在の おり,積極的に語学研修も受講し,知識の習得に努めているところは評価できるが,もう少し協調性があればなおよい。」(第2次評価者)と記載されていた。また,同シートの面談記録等の欄には,現 在の業務の状況として「基本動作の励行を着実に行い,安全かつ正確な輸送の提供に努めていた。」,職員に対するフィードバック事項等として「今後も,知識の習得に努め業務に活かしてもらいたい。あと,職場秩序の維持・向上に努めることを期待している。」(面談者:F運輸助役)と記載されていた。 (甲6) 平成26年度「市民・お客さま志向」 2.5点「規律性」 2.5点その他の評価項目 3点 絶対評価合計 2.875点 相対評価区分第5区分同年度の人事考課シートの評価者総評欄には,「運転はベテランらしく無難にこなしているが,お客さまのニーズを正確につかみ,それに積極的に応えていこうとする姿勢が不十分である」(第1次評価者),「閉扉協力時の注意喚起や謝辞励行が不十分で,お客さまの安全確保や 接客業に従事している職員としての自覚と認識に欠ける。上司の指示・命令を真摯に受け止め,職場内のルールを誠実に遵守しようとする姿勢に欠ける。」(第2次評価者)と記載されていた。また,同シートの面談記録等の欄には,現在の業務の状況として「運転に関してはベテランらしく,エラーを起こすようなこともなく,無難にこなしている。」, 職員に対するフィードバック事項等として「ベテランの職員としての自覚と認識を持ち,職場内ルールの趣旨を十分理解して,実践することを望む。語学研修に参加し,知識の習得に努めているが,お客さ , 職員に対するフィードバック事項等として「ベテランの職員としての自覚と認識を持ち,職場内ルールの趣旨を十分理解して,実践することを望む。語学研修に参加し,知識の習得に努めているが,お客さまに対して積極的に活用しようとする姿勢が余り見受けられなかった。今後,積極的に活用していくことを期待する。閉扉協力については,年度末に向 けて少し積極性が見受けられるようになったが,職場内でのルールに従い,お客さまに伝わるような大きな声で,注意喚起や謝辞励行を行うことを望む。」(面談者:F運輸助役)と記載されていた。 (甲7)イ原告B 平成25年度「知識等の習得活用」 3.5点「規律性」 2点その他の評価項目 3点絶対評価合計 2.975点 相対評価区分第4区分 同年度の人事考課シートの評価者総評欄には,「業務に積極的で,また責任感も強く後輩をうまく指導している。また異常時の指令への速報等的確におこなていた。しかし,規律性の部分で欠けるところがある。」(第1次評価者。原文まま。),「真面目な正確で,こつこつと努力し知識・技能を身に付けその責任感は高く評価できるが,やや柔軟性に欠 ける。」(第2次評価者)と記載されていた。また,同シートの面談記録等の欄には,現在の業務の状況として「ベテランらしく,技能・技術ともすばらしいものを持っている。判断力も指導力も優れている。」と記載され,職員に対するフィードバック事項等は,特に記載されていなかった(面談者:E助役)。 (甲8) 平成26年度「規律性」 力も優れている。」と記載され,職員に対するフィードバック事項等は,特に記載されていなかった(面談者:E助役)。 (甲8) 平成26年度「規律性」 2.5点その他の評価項目 3点絶対評価合計 2.95点 相対評価区分第4区分同年度の人事考課シートの評価者総評欄には,「ベテランらしく,知識・技能ともすばらしいものを持っている。判断力も協調性も評価できるが,規律性に欠ける。」(第1次評価者),「業務に積極的に取り組み,知識・技能とも信頼できる。また,協調性があり後輩との十分なコ ミュニケーションはとれているが,職場のルールにそぐわず,自己の価値観を優先して行動し,規律性に欠けるところがある。」(第2次評価者)と記載されていた。また,同シートの面談記録等の欄には,現在の業務の状況として「運転士として,常に知識・技能の向上に努め,後輩とのコミュニケーションもとれている。」,職員に対するフィードバッ ク事項等として「ベテランの職員としての自覚を持ち,職場内ルールの 趣旨を十分理解して,実践することを望む。」と記載されていた。 (甲9)第3 本件の争点 1 勤勉手当の差額請求について原告らに係る勤勉手当差額請求権の有無及びその額(争点1) 原告ら主張に係る勤勉手当差額請求権の有無 本件各考課の違法性 原告らが有する勤勉手当差額請求権の額 2 国賠法に基づく損害賠償請求について 原告ら主張に係る国賠法上の違法行為の有無(争点2) 原告らに係る損害の有無及びその額(争点3)第4 争点に対する当事者の主張 国賠法に基づく損害賠償請求について 原告ら主張に係る国賠法上の違法行為の有無(争点2) 原告らに係る損害の有無及びその額(争点3)第4 争点に対する当事者の主張 1 争点1(原告らに係る勤勉手当差額請求権の有無及びその額)について【原告らの主張】 本件各考課における考慮事情等について ア本件各考課において,原告らがひげを生やしていたことのみを理由として低評価としたことについて 本件人事考課制度における絶対評価は,各評価項目について,期待されるレベルを達成しているか等を評価するものとされているが,その指標は極めて抽象的であり,実際の運用としては,職務遂行に特段の問題 がなければ,各評価項目について3点が付されている。 したがって,本件各考課において,原告らが「市民・お客さま志向」及び「規律性」に2.5点や2点を付されたのは,原告らに何らかの問題があるものとして通常よりも低い評価とされたものである。 ①原告らは,平成20年に原告Aが大阪弁護士会に対して人権救済申 立てを行った頃から本件身だしなみ基準が制定されるまでの間,ひげを 剃るよう指導されたり,ひげを理由に低評価とされたりすることはなかったこと,②本件身だしなみ基準は,整えられたひげも不可とし,本件通達により「度重なる指導にもかかわらず改善が見られない場合には管理課まで報告を行うとともに,人事考課への反映も行う」とされていること,③本件身だしなみ基準制定後,原告らは,上司から,人事考課上 の不利益や退職を示唆されるなどした上で,再三にわたりひげを剃るよう働きかけられたこと,④人事考課に係る面談において,ひげを理由に減点したことを明言した評価者もいること,⑤原 から,人事考課上 の不利益や退職を示唆されるなどした上で,再三にわたりひげを剃るよう働きかけられたこと,④人事考課に係る面談において,ひげを理由に減点したことを明言した評価者もいること,⑤原告ら以外のひげを生やしていた職員も,ひげを理由に低評価とされたこと,⑥原告らには,ひげを生やしていることのほかに「市民・お客さま志向」及び「規律性」 を低評価とされるべき事由がないこと,以上の点に照らすと,原告らにいたことのみを理由とするものであったといえる。 イ被告が主張する考慮事情の点について 原告らのひげの状態等の点について 原告らは,各評価対象期間において,毎日,電気カミソリやはさみ等でひげを整えており,無精ひげの状態で出勤したことは一度もなく,上司らから,点呼の際等に,無精ひげだから整えるよう指導されたことや,乗客からクレームがあった旨を伝えられたこともない。 本件身だしなみ基準は,無精ひげであるか否かにかかわらず,一切の ひげを禁止しているし,そもそも,無精ひげであるか否かの基準は曖昧であり,上司や評価者においても,その判断は一貫しない。 被告自身が,ひげを生やしている状況そのものが快い印象を与えることにつながらない旨主張しているとおり,原告らについても,無精ひげを生やしていたことではなく,単にひげを生やしていたことをもって, 評価の対象とされたものであることは明らかである。 閉扉協力の点(原告A関係)について被告は,原告Aについて,閉扉協力,謝辞励行及び注意喚起の姿勢が不十分であった旨主張する。 しかしながら,原告Aは,平成25年度の人事考課シートや人事評価結果開示面談において,閉扉協力等の問題 原告Aについて,閉扉協力,謝辞励行及び注意喚起の姿勢が不十分であった旨主張する。 しかしながら,原告Aは,平成25年度の人事考課シートや人事評価結果開示面談において,閉扉協力等の問題点は一切指摘されておらず, 平成26年度においても,人事考課シートや人事評価結果開示面談において,初めて閉扉協力等の点を指摘されたのであって,実際の添乗指導の際や業務中には,これらの指摘を受けたことはなかった。 そもそも,指定駅以外での閉扉協力や,謝辞励行及び注意喚起は,任意業務とされており,これらを理由に人事評価において減点することは できないところ,原告らがf乗務所に異動した平成18年9月の時点で,地下鉄e線では閉扉協力の指定駅が廃止され,平成25年度及び平成26年度においても,指定駅は定められていなかった。 もとより,原告Aも,先頭車両に乗客が多数いるとき,車いす,白杖又は高齢の乗客がいるとき等,必要に応じて,手を挙げて車掌に合図を 送り閉扉協力を行っており,これが不十分であるということはなかった。 業務用逓送便の点(原告A関係)について業務用逓送便は,ルール上は私的利用が禁止されていたものの,実際には職員間で私的な写真の受渡しやゴルフコンペの案内等に利用され,これらの利用に関して,特段の注意をされていなかった。 原告Aは,平成26年12月30日付けで,管理課に対して,業務用逓送便により文書を送付した際に,特段の指摘を受けなかったことから,ひげを剃る旨の職務命令や人事評価に関する手紙の送付は,業務に関連するものであり,業務用逓送便を利用しても差し支えないと認識していた。原告Aは,平成27年1月9日付けで文書を送付した際に,管理課 長からの書 務命令や人事評価に関する手紙の送付は,業務に関連するものであり,業務用逓送便を利用しても差し支えないと認識していた。原告Aは,平成27年1月9日付けで文書を送付した際に,管理課 長からの書面やD所長との立ち話で,業務用逓送便の利用について指摘 を受けたが,業務用逓送便を絶対に利用してはならない旨の指導と認識できるような指摘ではなかった。そのため,原告Aは,同月23日に,D所長から,苦情申出等に関する手紙を業務用逓送便で送付しないよう指示されるまで,上記趣旨の文書の送付に業務用逓送便を利用してはならないことを認識していなかった。 したがって,原告Aは,交通局の職場規律に背く意思も態度も示していないし,事実確認シートにも業務用逓送便の点は記載されていなかったのであるから,交通局が,上記業務用逓送便の利用の点をもって,原告Aを低評価したものとはいえない。 外部団体の役員就任に関する調査の点(原告A関係)について 原告Aは,管理課に対し,ひげを剃る旨の職務命令やひげを理由とした低評価が人権侵害に当たる旨の,原告Aが所属する団体の見解を示した手紙を送付したところ,管理課長代理から,外部団体の役員就任が兼業禁止に抵触するのではないかと指摘されたが,原告Aが,役員は形だけのものであり,役員としての活動は何もしておらず,報酬も受領して いない旨答えたら,それ以上何も言われることはなかった。 上記団体は,原告Aが従前から取り組んでいた武道の団体が一時的に設立したNPO法人であり,形式上,原告Aも役員とされていたが,原告Aにはその点の認識もなかったものである。その後,管理課長代理との面談の中で,同人が自ら調査して,同法人が既に解散していたことが 言及され,兼業の り,形式上,原告Aも役員とされていたが,原告Aにはその点の認識もなかったものである。その後,管理課長代理との面談の中で,同人が自ら調査して,同法人が既に解散していたことが 言及され,兼業の点については,話題に上がらなくなった。 このように,原告Aが,兼業規制の抵触の有無について確認を求めた上司に対し,非協力的な態度をとったという事実はなく,人事考課において低評価とされるような事柄は存在しない。 本件研修時の服装の点等(原告B関係)について 原告Bは,平成27年1月16日に実施された職務である業務上の研 修(以下「本件研修」という。)の際,事前にネクタイを着用すべき旨連絡があったため,ネクタイを着用して研修に出席した(なお,原告Bが着用していたのは,ダンガリーシャツではなく,サックスブルーのシャツである。)。他方で,原告Bは,ジャケットを着用していない点及びウォレットチェーンを付けている点を研修担当者に指摘され,ジャケ ットについては貸与を受け,ウォレットチェーンはその場で外して,特に問題なく研修を受講することができた。原告Bは,認識が甘かった点については謝罪し,以後,研修時の服装が問題になることはなかったのであるから,「度重なる指導にもかかわらず改善が見られない場合」には当たらず,人事考課に反映されるべき事情はない。 なお,このほか,原告Bが,サービス向上運動等に対する消極的な態度を示したとか,自分本位の行動をしたという事実もない。 ひげを生やしていることを理由とする人事考課の違法性についてアひげを生やす自由は,個人の私生活上の利益であり,人格権(人格的自律権)の一内容として,憲法13条に由来する権利・自由である。とりわ け ることを理由とする人事考課の違法性についてアひげを生やす自由は,個人の私生活上の利益であり,人格権(人格的自律権)の一内容として,憲法13条に由来する権利・自由である。とりわ け,原告らは,長年にわたり,ひげを生やして就労し,生活してきたことに鑑みると,客観的にみても,原告らのひげを生やす自由が,社会的に承認されてきたということができる。 イ労働関係において,使用者は,労働者個人の人格的自由や私的領域を侵害することがないよう配慮する義務を負うところ,①原告ら地下鉄の運転 士は,安全かつ確実に車両を運行する業務に従事しており,ひげを生やしていることが,その業務の障害となるものではなく,ひげを剃って乗務する業務遂行上の必要性は認められないこと,②市民や乗客の不快感といった個人の嗜好により,上記人格的利益を制限することは許されないこと,③ひげは着脱が不可能であるから,業務中にひげを生やすことを禁止すれ ば,必然的に私生活上の利益及び自由も制限するものとなること等に照ら すと,原告らに対して,ひげを剃るよう指導したり,ひげを生やしていることを理由に低評価としたりすることは,ひげを生やす自由に対する制約として,目的の正当性も手段の合理性も欠くものというべきである。 原告らに係る勤勉手当差額請求権の存在及びその額についてア上記⑴及び⑵のとおり,本件各考課は,交通局が,原告らの「市民・お 客さま志向」及び「規律性」について,原告らがひげを生やしていることのみを理由に低評価としている点で,裁量権の逸脱・濫用に当たり,いずれも違法であり,原告らは,これらについて,いずれも平均的評価である3点を付与され,相対評価では第3区分に位置付けられるべきであった。 したがって,原告らは 量権の逸脱・濫用に当たり,いずれも違法であり,原告らは,これらについて,いずれも平均的評価である3点を付与され,相対評価では第3区分に位置付けられるべきであった。 したがって,原告らは,被告に対し,平成26年及び平成27年の各賞 与において,第3区分に相当する勤勉手当の支給を受ける権利を有する。 イ平成26年及び平成27年の各賞与において,原告らが第3区分である場合に支給される勤勉手当の額から,実際に支給された勤勉手当の額を控除すると,その残額は,別紙1「差額賞与一覧表1,2」の各「差額賞与(勤勉手当)額」欄記載のとおりとなる。 【被告の主張】 原告ら主張に係る勤勉手当の差額請求の点についてア本件人事考課制度における絶対評価は,評価対象期間における業務取組状況等を総合的に勘案した上で,期待するレベルに到達していたかという観点から行われているものであるから,仮に,原告らがひげを生やしてい る点を考慮しなかったとしても,当然に3点が付与されるものではない。 また,相対評価区分については,他の職員に対する絶対評価との比較により確定するものであるから,原告らについて,「市民・お客さま志向」及び「規律性」が3点とされたとしても,当然に第3区分となるものではない。 イなお,本件各考課において,仮に,原告らが第3区分とされた場合にお ける,平成26年及び平成27年の各勤勉手当の額と,実際の支給額との差額に係る原告らの主張(別紙1記載の金額)は,争わない。 本件各考課における考慮事情等について本件人事考課制度においては,各職員の職種・職位レベルに応じ,求められる役割や必要とされる職務要件に照らし,評価項目ごとに,着眼点を踏ま えて,評価対 各考課における考慮事情等について本件人事考課制度においては,各職員の職種・職位レベルに応じ,求められる役割や必要とされる職務要件に照らし,評価項目ごとに,着眼点を踏ま えて,評価対象期間における業務取組状況等を総合的に勘案した上で,期待するレベルに到達していたかという観点から絶対評価が行われる。 本件各考課は,原告らについて,各評価対象期間に,それぞれ以下のような事情があったことを考慮して行われたものであり,原告らが主張するようなひげを生やしていることのみを理由としたものではない(この点は,原告 Aと原告Bの各年度の評価が異なることからも明らかである。)。 ア原告Aの人事考課について 平成25年度原告Aは,療養のための休職から復帰した後の評価対象期間(平成25年8月29日から平成26年3月31日まで)において,市民・乗客 に快い印象を与えるものではないひげ(いわゆる無精ひげ)を生やしていたことがあったほか,乗客の安全確保や満足度向上に向けて,職場が一丸となって取り組むべき,①閉扉協力(運転士が運転席から後方の乗客の乗降状態を直接見て,その安全を確認し,車掌に閉扉合図を送る取組み),②謝辞励行(運転士が閉扉協力の際,「ご乗車ありがとうござ います」,「いつも地下鉄をご利用いただきありがとうございます」など,乗客に対し,謝辞を述べる取組みであり,次の注意喚起と併用して行われる。),③注意喚起(運転士が閉扉協力の際,「まもなくドアが閉まります。ご注意ください。駆け込み乗車はご遠慮ください。」など,安全な乗車のために乗客に呼びかける取組みであり,謝辞励行と併用し て行われる)の実施も不十分であった。そして,原告Aは,これらに関 する指導に対し,これら 車はご遠慮ください。」など,安全な乗車のために乗客に呼びかける取組みであり,謝辞励行と併用し て行われる)の実施も不十分であった。そして,原告Aは,これらに関 する指導に対し,これらの取組みに主体的な態度を示さず,また,上司が指導した後も従うことなく,非協力的な態度を示していた。 そのため,「市民・お客さま志向」及び「規律性」について,別紙3記載の着眼点に照らし,いずれも期待するレベルに達しているとの評価に至らず,それぞれ2.5点及び2点とした。 平成26年度原告Aは,平成26年度の評価対象期間においても,平成25年度と同様,市民・乗客に快い印象を与えるものではないひげ(いわゆる無精ひげ)を生やしていたことがあり,利用客の安全確保や満足度向上に向けて,職場が一丸となって取り組むべきサービス向上運動等についても, その趣旨や内容を十分理解せず,閉扉協力,謝辞励行,注意喚起等の取組みが不十分であった。また,原告Aは,上司がこれらの点を指導した際,「運転士に接客は不要である」とか,「お客さまの不快感に配慮するつもりはない」などと述べ,乗客目線でのサービス提供に対し消極的態度に終始し,上司の指導について自省の念を示すことはなかった。 さらに,原告Aは,交通局が必要と認められる文書等以外の利用が禁止されている業務用逓送便(交通局本局と事業所相互間等の逓送及び局内メール)を,指導に応じず2回にわたり目的外に使用したほか,原告Aが外部団体の役員に就任しているとの点について,兼業規制への抵触の有無を確認した上司に対し,非協力的態度を示した。 そのため,「市民・お客さま志向」及び「規律性」について,いずれも期待するレベルに達したとはいえないと評 て,兼業規制への抵触の有無を確認した上司に対し,非協力的態度を示した。 そのため,「市民・お客さま志向」及び「規律性」について,いずれも期待するレベルに達したとはいえないと評価し,2.5点とした。 イ原告Bの人事考課について 平成25年度原告Bは,平成25年度の評価対象期間において,市民・乗客に快い 印象を与えるものではないひげ(いわゆる無精ひげ)を生やしていたこ とがあり,交通局のほかの職場の上司からも,そのひげについて苦言を呈される状況にあったが,指導しても,「身だしなみは職場内ルールにすぎず,個人の尊厳が優先する。」と述べるなどしてこれを改善しようとしなかった。また,原告Bは,職場一丸となって取り組むべきサービス向上運動等についても,指導高速運転士相当の職にありながら,後輩 職員に対して適切な指導を行う態度がなく,自分本位の行動に出るなど消極的態度に終始した。 そのため,「規律性」について,期待するレベルに達しているとはいえないと評価し,2点とした。 平成26年度 原告Bは,平成26年度の評価対象期間においても,市民・乗客に快い印象を与えるものではないひげ(いわゆる無精ひげ)を生やしていたことがあり,上司の指導に対して,「お客さまから不快感を寄せられても,これを整正する気はない」などと述べて指導を拒否し,また,職場一丸となって取り組むべきサービス向上運動等についても,消極的態度 に終始していた。 また,原告Bは,平成27年1月16日,本件研修において,事前に服装等の指導があったにもかかわらず,受講にふさわしくない服装で参加しようとし,他部署の研修担当者に制止されるなど規範意識に欠ける言 また,原告Bは,平成27年1月16日,本件研修において,事前に服装等の指導があったにもかかわらず,受講にふさわしくない服装で参加しようとし,他部署の研修担当者に制止されるなど規範意識に欠ける言動がみられた。 そのため,「規律性」について,期待するレベルに達しているとはいえないと評価し,2.5点とした。 ウ上記各事実関係の補足及び原告らの主張に対する反論について 原告らのひげの状態等について原告らのひげは,上記各評価対象期間において,口ひげの長さが乱れ ているとか,下顎及び頰の一部にもひげが生えているなど,乗客に不快 感を与える状態にあることがあった。 原告らは,常にひげを整えており,無精ひげであったことはない旨主張するが,上記の点は,原告らについて乗客からの苦情申入れが度々あったこと,原告Bのひげについて,鉄道事業本部長からも指摘があったこと,本訴において原告らが提出した原告らの写真でさえ,乗客に不快 感を与える状態のものがあったこと,原告らは,接客業に携わる者としての認識が欠如しており,乗客目線でのサービスを軽視する発言をしていること等からも,明らかである。 閉扉協力の点(原告A関係)について原告らは,閉扉協力について,f乗務所では平成18年9月の時点で 既に廃止されていた旨主張するが,そのような事実はない。 閉扉協力は,f乗務所が所轄するe線においては,平成14年8月1日に,事故防止のための取組みとして,特に重点的に実施すべき駅を指定して開始されたものであり,指定駅以外でも必要に応じて実施すべきものである。その後,平成19年7月及び平成28年8月に,指定駅が 変更されることはあったが,現在 特に重点的に実施すべき駅を指定して開始されたものであり,指定駅以外でも必要に応じて実施すべきものである。その後,平成19年7月及び平成28年8月に,指定駅が 変更されることはあったが,現在まで廃止されたことはなく,特に平成24年度のサービス向上運動の中で,取組み強化が掲げられ,平成25年度以降も引き続き各線で実施されている。 上記業務は,運転士の運転業務として,状況を問わず必須とする事項ではないという意味で任意業務ではあるが,交通局の方針として重点的 に取り組んでいるものであることから,これに対する積極的又は消極的態度は,人事考課において評価の対象となるものである。 業務用逓送便の点(原告A関係)について業務用逓送便によって私文書,現金及び物品を送付することは禁止されているところ,原告Aは,平成27年1月9日までに,業務外で行っ た法務局に対する人権救済申立てに関する書面等計4通の私信を,業務 用逓送便により送付し,同月16日,D所長から口頭で注意を受けるとともに,私的利用に対する注意を記載した管理課長名義の書面を交付されたにもかかわらず,同月21日付けで,再度,管理課宛の私信を業務用逓送便で送付した。 原告Aは,①業務用逓送便の私的利用が禁止されているとまでは認識 していなかった,②現に,他の職員間においても,業務用逓送便が私的に利用されているなどと主張するが,①私文書等の送付に業務用逓送便を利用することは,交通局において明示的に禁止されており,このことはD所長が交付した上記書面からも明らかであるし,②他の職員が業務用逓送便を私的に利用しているような事実はなく,そのような職員がい たからといって,それにより私的利用が許されるわけではない。この D所長が交付した上記書面からも明らかであるし,②他の職員が業務用逓送便を私的に利用しているような事実はなく,そのような職員がい たからといって,それにより私的利用が許されるわけではない。このように主張すること自体,原告Aが規範意識に欠けることを示している。 外部団体の役員就任に関する調査の点(原告A関係)について交通局の職員は,地公法38条等により,兼業が禁止されており,これに違反した場合には懲戒処分の対象となり得ることから,その旨研修 等においても周知されていた。しかるに,原告Aが平成26年12月30日付けで管理課に送付した書面に,原告AがNPO法人の役員を務めている旨記載されていたため,D所長は,管理課長代理による依頼を受けて,平成27年1月16日,原告Aに対し,NPO法人であっても兼業禁止規定に抵触する可能性があるため,報酬の有無等の確認及び所属 への報告を行うよう指導するとともに,これらの注意を記載した管理課長名義の書面を交付した。 また,同月30日には,管理課長代理から原告Aに対し,上記NPO法人について報告するよう指導したが,原告Aは,報酬の有無や同法人の状況等を説明せず,管理課長代理が自ら調査して,同法人が解散して いる事実が判明したというものであって,結局,その間,原告Aが,同 法人について具体的な説明を行うことはなかった。 このような,違法行為の可能性があるにもかかわらず,上司の指示に対応しようとしない非協力的態度はもとより,既に解散している法人を,まだ存在するかのように申し出たことも,交通局の業務に混乱を招くものであり,原告Aの上記態度を人事考課の対象とすることは,何ら不相 当なものではない。 本件研修時の服装の 法人を,まだ存在するかのように申し出たことも,交通局の業務に混乱を招くものであり,原告Aの上記態度を人事考課の対象とすることは,何ら不相 当なものではない。 本件研修時の服装の点(原告B関係)について交通局では,乗務員に対する研修について,所属事業所外の研修会場で行われる場合には,クールビズ期間を除きスーツ・ネクタイ着用とし,例外として制服貸与者については制服の着用も認めている。本件研修に ついても,受講時に服装の整正に努めるよう指導することとされており,原告Bは,事前に上司から,上記注意事項の説明を受けていた。 しかるに,原告Bは,本件研修に,コーデュロイのズボン,ダンガリーシャツ,カーデガン及びウォレットチェーンという服装で出席しようとした。そのため,人材育成担当者から,管理課職員に対し,そのよう な服装では原告Bを受講させられない旨連絡があったため,上記管理課職員が,研修会場に駆けつけて,自らのネクタイを原告Bに貸与して,人材育成担当者に懇願し,特例的に原告Bの受講が認められたのである。 身だしなみと人事考課との関係等についてアひげを含む身だしなみの重要性及び本件身だしなみ基準について 被告職員の身だしなみ及び接遇に対しては,市民等から厳しい意見等が多数寄せられており,市民の付託を受けて公務を遂行する被告職員にとって,市民の信頼確保のため,身だしなみの整正が求められることはいうまでもない。また,接客・接遇に関わる事業者において,顧客の受け止め方に配慮し,服装や髪型等の身だしなみについて従業員に指導等 を行うことは,社会的に許容されている。 そして,接客業に従事する者のひげに対しては,不快感等を示す声が多 止め方に配慮し,服装や髪型等の身だしなみについて従業員に指導等 を行うことは,社会的に許容されている。 そして,接客業に従事する者のひげに対しては,不快感等を示す声が多数に上り,原告らを含む被告や交通局の職員のひげについても,これを不快とする苦情や意見が申し入れられており,交通局職員のひげが,乗客に対し快い印象を与えるものではないことは明らかである。 鉄道業界においても,駅係員,運転手及び車掌等は,日々,不特定多 数の乗客に接しており,特に,運転士は,子ども達のあこがれの職業として乗客の注目度も高いことから,運転士も接客部門と位置付けられて,身だしなみに関するマニュアル等が作成され,それに基づき必要な指導等が行われているところである。 交通局では,以上のような観点から,従前より,接遇の心得を始めと する身だしなみに関する規定等が定められ,職員に指導等が行われてきたところ,平成24年以降,接遇等のソフト面でのサービスに重点を置くという方針の下,職員を指導する際の身だしなみにおける目標とすべき水準として,本件身だしなみ基準が制定された。 その制定に当たっては,市民の意見等のほか,接遇の心得を始めとす る諸規程,他の民間・公営鉄道事業者の身だしなみに関するマニュアル等及び弁護士の意見を踏まえ,おおむね100パーセントの組織率を有するL労働組合と協議し,各事業所から意見を募集するなど,慎重かつ適正な手続を経て制定されたものである。 本件身だしなみ基準は,職員の任意の協力を得て進める指導教育の基 準であり,本件身だしなみ基準に反することがあったからといって,直ちに処分されるとか,人事考課で不利に取り扱うなどの制裁や不利益が予定されているもので 員の任意の協力を得て進める指導教育の基 準であり,本件身だしなみ基準に反することがあったからといって,直ちに処分されるとか,人事考課で不利に取り扱うなどの制裁や不利益が予定されているものでもない。 本件身だしなみ基準は,「髭は伸ばさず綺麗に剃ること。(整えられた髭も不可)」と規定しているが,これは,市民や乗客の意見において, 職員がひげを生やしていることについて,その形状や程度にかかわらず 総じて否定的であること,他の鉄道事業者や被告の他の部局においても,ひげを剃るよう指導するのが通例であること等を踏まえたものであり,従前の指導水準を厳格化したものではない。 もとより,ひげを生やす自由が,個人の人格的生存に不可欠な権利として憲法13条により保障されるものであるとまではいえないところ, 仮にこのような自由が観念できるとしても,髪型や服装等の嗜好については,市民等の付託を受けた公務員として,又はサービス業に従事する職員として合理的制約に服すべきである。本件身だしなみ基準の内容は,,職員の任意の協力を求めるものであるから,合理的かつ相当なものであり,違法とされる余地はない。 イ本件身だしなみ基準と人事考課との関係について 交通局では,ひげを含めた身だしなみに関し,「市民・お客さま志向」及び「規律性」の評価項目において,「常にお客さまの立場に立って業務に取り組み,お客さまの満足度の向上,信頼の確保に努めていたか」,「お客さまのニーズや目的をつかむ努力をし,正しく把握していたか」, 「制服をきちんと着用し,身だしなみは快い印象を与えるものであったか。(頭髪,ヒゲ等)」といった着眼点が設けられている。 上記アのとおり,交通局では,本件身だしなみ基準 たか」, 「制服をきちんと着用し,身だしなみは快い印象を与えるものであったか。(頭髪,ヒゲ等)」といった着眼点が設けられている。 上記アのとおり,交通局では,本件身だしなみ基準制定の前後を問わず,乗客に好感を抱かせる望ましい身だしなみとして,職員にひげを剃ることを求めているところであるが,人事考課において,それに応じず ひげを生やしているという事実のみをもって斟酌することはない。 他方において,ひげや身だしなみに限らず,交通局が経営理念としている「お客さま第一主義」の考え方や,それに基づく取組み等に理解を示さない言動や態度があれば,それらからうかがえる当該職員の職務における姿勢を斟酌することはある。また,例えば,無精ひげ,奇異・奇 抜なひげ,威圧感を与えるひげ,不潔なひげ等は,明らかに市民等に不 快感を与えるものであり,そのような身だしなみを放置している職員については,上記「お客さま第一主義」の姿勢が欠けていると評価して,その点が人事考課上斟酌されることもある。 労働関係上の義務を明確化し,これへの違反を非違行為として懲戒処分の対象とし得る職務命令とは異なり,人事考課制度は,職員の人材育 成や能力開発を目的として,経営理念や所属する組織目標等への理解や取組姿勢等も含めた評価対象期間の業務取組状況等を総合的に勘案して評価するものである。したがって,その評価項目や着眼点の中には,人材育成や能力開発の観点から,必ずしも職務上の義務として位置付けられるものではないものも含まれ得るところ,身だしなみは,顧客サービ スという交通局における経営上の最重要課題に係る取組みであり,これに対する職員の姿勢や態度を評価の基礎とすることは,当然に許容されるべきものである。 ころ,身だしなみは,顧客サービ スという交通局における経営上の最重要課題に係る取組みであり,これに対する職員の姿勢や態度を評価の基礎とすることは,当然に許容されるべきものである。 小括以上のとおり,本件各考課は,原告らの無精ひげの状況及び身だしなみに 対する取組みを含めた各評価対象期間における業務取組状況等を総合的に勘案してなされたものであって,いずれも適法である。したがって,上記⑴の点を措いたとしても,原告らの勤勉手当の差額請求は理由がないというべきである。 2 争点2(原告ら主張に係る国賠法上の違法行為の有無)について 【原告らの主張】 本件身だしなみ基準制定の違法性について本件身だしなみ基準は,整えられたひげも含めて,一切のひげを禁止するものであって,本件通達により,その指導に従わなければ人事考課に反映するものとされているところ,人事考課で最低評価が続くと分限処分の対象と もなり得る。したがって,本件身だしなみ基準は,原告らのひげを生やす自 由に対する制約として,目的の正当性及び手段としての合理性のいずれをも欠くものであって,交通局がこれを制定したことは,国賠法上違法である。 本件身だしなみ基準に基づく指導等の違法性について本件身だしなみ基準が制定されると,上司らは,原告らに対し,本件身だしなみ基準に基づきひげを剃ることが職場のルールであるとして,これに従 わなければ人事考課上不利益となる旨を述べ,退職を示唆するなどして,再三にわたりひげを剃るように命じた。 このような命令又は指導は,社会的相当性を逸脱した半強制的態様によるものであって任意の要望とはいえず,原告らのひげを生やす自由を侵害するものであって,国賠法 わたりひげを剃るように命じた。 このような命令又は指導は,社会的相当性を逸脱した半強制的態様によるものであって任意の要望とはいえず,原告らのひげを生やす自由を侵害するものであって,国賠法上違法なものである。 本件身だしなみ基準に基づく人事考課の違法性について交通局は,原告らが上記の指導等を拒み,ひげを生やし続けたことにより,原告らの人事考課において低評価としているが,このような本件各考課は裁量権の逸脱・濫用に基づくものであって,国賠法上も違法である。 【被告の主張】 本件身だしなみ基準制定の違法性の点について上記1【被告の主張】アのとおり,本件身だしなみ基準は,お客さま第一主義に基づく交通局の取組みとして,職員の任意の協力を求めるものであり,指導として許容されるべき相当な内容のものであって,国賠法上,違法な点はない。 本件身だしなみ基準に基づく指導等の違法性の点について上記のとおり,本件身だしなみ基準は,飽くまで職員の任意の協力を求めるものであるところ,これに基づく原告らに対する指導についても,強制にわたるものであるとか,相当性を欠くといった事情は存在せず(この点は,原告Aが,ひげを剃れと言われたことは一度もない旨述べていること等から も明らかである。),国賠法上,違法な点はない。 本件身だしなみ基準に基づく人事考課の違法性について上記1【被告の主張】⑵及び⑶各記載のとおり,本件各考課は相当であり,国賠法上も違法な点はない。 3 争点3(原告らに係る損害の有無及びその額)について【原告らの主張】 原告らは,長年にわたり生やし続け,自己のアイデンティティとして定着しているひげを, 違法な点はない。 3 争点3(原告らに係る損害の有無及びその額)について【原告らの主張】 原告らは,長年にわたり生やし続け,自己のアイデンティティとして定着しているひげを,本件身だしなみ基準に基づき剃るように命令又は指導されたことにより,自己の人格そのものを否定されるに等しい精神的苦痛を受け,また,ひげを理由として人事考課上も不利益を受けたことに鑑みると,原告らの精神的苦痛を慰謝するための慰謝料はそれぞれ200万円を下らず,弁護士費用に ついては,それぞれ20万円の損害を認めるのが相当である。 【被告の主張】原告らの主張は,いずれも否認ないし争う。 第5 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 平成24年以前の経緯等ア交通局では,平成8年に,各職員に対して接遇の心得が配布されており,その中で,男性職員の身だしなみのポイントの一つに「髭は剃ってあるか」 が挙げられていたほか,大阪市交通局高速鉄道運輸関係職員勤務規程や執務要領等の各種規程において,乗務員に対しては,服装の整正を心掛け,乗客に好感を与え,かつ,その信頼を得るように努めるべきことが求められていた(前記前提事実イないし,乙123,124,証人C,証人D)。 イ原告Aは,昭和59年頃から,原告Bは,平成6年頃から,それぞれひ げを生やしていたが,原告らは,f乗務所に異動した平成18年9月頃,上司からひげを剃るよう指導され,原告Aはこれを拒否したものの,原告Bは,ひげを剃って勤務するようになった(前記前提事実イ,ウ,甲68,69,原告A,原告B)。 ウ原告Aは,平成18年10月26 ひげを剃るよう指導され,原告Aはこれを拒否したものの,原告Bは,ひげを剃って勤務するようになった(前記前提事実イ,ウ,甲68,69,原告A,原告B)。 ウ原告Aは,平成18年10月26日午前4時54分頃,始発前の回送列 車を運転中,出発信号機が赤色表示であるのを見落として進行させ,保安装置である警報及び非常ブレーキを作動させた。なお,同事故による負傷者や,始発列車への影響はなかった。 (甲68,乙43,123,証人C,原告A)エ交通局では,平成19年から,交通局企業職員給料表2級(指導駅 務職員,指導高速車掌,指導高速運転士又は助役補に相当する。乙14参照。)への昇任試験(年度によって名称が異なるが,以下,いずれの年度についても「2級昇任試験」という。)が実施されている。 2級昇任試験は,各年度の8月1日(基準日)時点で受験資格を有する者について,各所属部署から推薦評価書が提出された者を対象に,面 接試験(9月上旬頃に実施)及び勤務評価点による総合成績に基づいて選考される。 勤務成績の調査期間は,上記基準日以前1年間とされているが,その期間以前であっても,個人の責めによる重大な事故等を発生せしめた者については,個々に審査するものとされている。 また,面接試験及び勤務評価点の評価対象は,前年度の人事考課(当時は,前年9月30日に実施され,その対象期間は前々年9月30日から前年9月29日までであった。)及びそれ以降の事情(前年10月1日から試験日まで。)とされていた。 (乙65,71,77,123,証人C) 平成19年度から平成21年度までの2級昇任試験の受験者数,合格 者数及び不合格者数は,それぞれ以下のとおりである。 されていた。 (乙65,71,77,123,証人C) 平成19年度から平成21年度までの2級昇任試験の受験者数,合格 者数及び不合格者数は,それぞれ以下のとおりである。 平成19年度受験者64名合格者57名不合格者7名平成20年度受験者73名合格者67名不合格者6名平成21年度受験者84名合格者82名不合格者2名(乙67,68,70,73,74,76,79,81,123) 原告らは,いずれも平成19年度の2級昇任試験を受験し,原告Bは同試験に合格したが,原告Aは不合格であった。なお,f乗務所から同試験を受験した8名のうち,不合格であったのは原告Aのみであった。 原告Aは,平成20年度の2級昇任試験も不合格であったが,平成21年度の2級昇任試験に合格した。 (甲68,乙65,66,68ないし72,74ないし81,123,証人C,原告A)オ原告Aは,平成20年10月10日付けで,大阪弁護士会に対し,①上司からひげを剃るように注意されること,②ひげを生やしていることを理由に人事評価の身だしなみに関する項目を低評価とされること,③ 平成19年度及び平成20年度の2級昇任試験で,ひげについて面接官から屈辱的なことを言われ,ひげのみを理由に不合格となったこと等を訴えて,人権侵害救済の申立てをした。 交通局は,上記申立てに係る大阪弁護士会の調査に対し,平成21年5月19日付けで,①交通局では,ひげを生やすことを直接禁止までは されていないこと,②2級昇任試験の面接官は,原告Aに対し,ひげを剃るように要求はしていないこと,③同試験の結果については,平成18年10月26日に原 では,ひげを生やすことを直接禁止までは されていないこと,②2級昇任試験の面接官は,原告Aに対し,ひげを剃るように要求はしていないこと,③同試験の結果については,平成18年10月26日に原告Aが起こした業務上の重大なミスが影響していること等を記載した回答書を提出した。 大阪弁護士会は,平成24年11月28日付けで,原告Aに対し,上 記申立てについては不処置とする旨通知した。 (甲54) このほか,原告Aは,平成20年5月頃から4回にわたり,大阪市公正職務審査委員会に対し,ひげを理由に2級昇任試験を不合格としたり,低い人事評価をしたりするのは問題であるなどとする通報を行ったが,同委員会は,平成21年3月頃,「調査の範囲では,違法又は不適正な 事実は確認できない。」として,勧告を行わない旨決定した。 また,原告Aは,平成20頃,大阪法務局に対しても,人権救済の申立てを行ったが,大阪法務局も,平成21年3月頃,侵犯事実不明確と決定した。 (乙123,証人C) カ原告Bは,平成20年秋頃から,再びひげを生やすようになった(前記前提事実ウ,甲69,原告B)。 本件身だしなみ基準の制定等ア交通局では,平成24年4月頃から,後の民営化を見据え,安全輸送,サービス向上及び規律の確保等のための具体的取組みについて,検討が進 められた。 具体的には,サービス向上については,「お客さまにはっきりと目に見える形でのサービスの向上」,「接客をはじめとしたソフト面でのサービスで,鉄道事業者のNo.1」を目指すこと,規律の確保については,「安全・服務規律・組織体制など全ての面で規律ある組織を構築し,有責 事故・インシデント・不祥事の じめとしたソフト面でのサービスで,鉄道事業者のNo.1」を目指すこと,規律の確保については,「安全・服務規律・組織体制など全ての面で規律ある組織を構築し,有責 事故・インシデント・不祥事の撲滅を図る」こと等が,運輸部の方針とされ,運輸部戦略会議等において各事業所の取組みの紹介や意見交換が進められ,他の鉄道事業者における身だしなみに関する規程等や弁護士への意見照会の結果を踏まえ,同年7月23日の第4回運輸部戦略会議までに,運輸部における身だしなみ基準の案が作成された。その後,同年8月にか けて,各事業所から意見を聴取し,ほぼ100パーセントの組織率を有す るL労働組合とも協議した上で,上記案が修正され,同年9月28日,本件身だしなみ基準が制定された。 (甲38の①②,乙21,22,34ないし40,123,124,証人C,証人D)イ f乗務所では,出勤後の点呼の際に,各乗務員が点呼室に掲示された訓 示・達示及び運転上の注意事項等を確認するものとされている(甲2・10条,12条参照)ところ,①平成24年5月3日付けで,接遇の心得を今一度読み返し,執務前に必ず身だしなみを点検すること,②同年8月16日付けで,作成中の身だしなみ基準が同年10月1日から実施されるので,基準に則って清潔感のある身だしなみを心掛けること,③同年9月2 9日付けで,本件身だしなみ基準が制定されたこと等が,点呼訓示として掲示された。 上記②に係る掲示には,点呼担当者により,手書きで,「交通局として一定基準を設けたので(運輸部身だしなみ基準)処分対象になると聞いている」,「通勤については処分なし。強制するような言い方も駄目!!社 会人として自己判断するように伝える。」と記入されていた。 (甲29の①な (運輸部身だしなみ基準)処分対象になると聞いている」,「通勤については処分なし。強制するような言い方も駄目!!社 会人として自己判断するように伝える。」と記入されていた。 (甲29の①ないし③,乙124,証人D) 平成24年度の出来事等ア原告Bは,平成24年7月頃,当時のf乗務所長らから,同年10月1日に施行される予定の身だしなみ基準によれば,ひげが一切認められない ようになる旨等を告げられ,当時休職中であった原告Aに相談し,原告らは,同年9月3日,大阪弁護士会に対し,人権侵害救済の申立てをした(甲54,68,69,原告A,原告B)。 イ原告Bは,本件身だしなみ基準が施行された平成24年10月1日以降,f乗務所長に就任したD所長や,G副所長のほか,Hf乗務運輸長(以下 「H運輸長」という。なお,f乗務運輸長とは,f乗務所を含む4つの乗 務所〔e線,c線,h線及びi線〕を統合する長である。)らから,ひげを剃るよう指導された。 H運輸長は,同年12月21日,原告Bと面談し,原告Bが,「ひげを伸ばしていくとしたら,やっぱり,処分の対象というのはそういう…」と質問したのに対し,「そうやね,そういうルールにしたんで,はい。あの ー,以前と違うのはそこですね。」,「守らなければ処分の対象とするということです。」などと返答した上,原告Bに対し,「選択の自由として,ひげを生やす自由を,あのー,侵害されない職業を選ぶことは可能なんですよ。」,「できたら,この仕事続けていってもらう方向で頑張って欲しいなと,私たちは思っているんです。で,ルールを作った限りは,それを 執行していく必要も,私らあるので,えっと,まあ,あんまり大きなこだわりでないのであれば,ぜひご理解いただきたいで って欲しいなと,私たちは思っているんです。で,ルールを作った限りは,それを 執行していく必要も,私らあるので,えっと,まあ,あんまり大きなこだわりでないのであれば,ぜひご理解いただきたいです。大きいこだわりなら,やっぱり仕事,別の仕事を選んでいただくという判断も考えていただく必要が。」などと述べた。 (甲30の①②,甲69,原告B) ウ原告Bは,平成24年度の人事考課(本件人事考課制度の施行前であるが,絶対評価における評価項目及び着眼点は,おおむね共通する。)において,「規律性」が2点,その他の評価項目が3点(第1次評価では,「仕事の成果」について3.5点であったが,第2次評価では,同項目も含めて3点であった。)とされた。 同年度の人事考課シートの評価者総評欄には,「ベテランらしく,知識・技能とも素晴らしいものを持っている。」(第1次評価者),「こつこつと努力し知識・技能を身に付ける姿勢,確認喚呼等,評価できる。 今後は身だしなみについて再考し柔軟な姿勢になることを期待する。」(第2次評価者)と記載されていた。また,同シートの面談記録等の欄 には,現在の業務の状況として「知識・技能とも高く,信頼感があ る。」,職員に対するフィードバック事項等として「運輸部で身だしなみ基準を設けている以上,快い印象を与えるものとは判断できず,この基準に関しても理解説明力が高いだけに期待レベルに達したとは評価しがたい。」と記載されていた。 (甲67) 原告Bは,平成25年4月12日頃,上記の人事考課の結果に関し,「ひげを理由に減点になったことに対して不服申立てをしたいと思います。地下鉄の利用者は特別に身なりを整えての対応を期待しているとは思えず,ひげは,一概に公序良俗に 頃,上記の人事考課の結果に関し,「ひげを理由に減点になったことに対して不服申立てをしたいと思います。地下鉄の利用者は特別に身なりを整えての対応を期待しているとは思えず,ひげは,一概に公序良俗に反しているとは言い難くそのことで他者が不利益を被っているとも考えにくいのでは,他人に不当な被害を 与えない限り,あらゆることにおいて自由に活動する権利を有しているはずです。当然,ひげを生やすか生やさないかは個人の自由であり他人に指図される筋合いはないのではありませんか。」と記載した苦情相談申込書を作成したが,結局,苦情相談としての正式な手続は採らなかった(甲69,70の①②,原告B)。 エなお,大阪弁護士会は,平成28年1月15日付けで,上記アの申立てについて,交通局に対し,本件身だしなみ基準における「髭は伸ばさず綺麗に剃ること。(整えられた髭も不可)」との規定を廃止するとともに,人事考課制度において,ひげを生やしていることをもって,マイナス評価の判断要素とする取扱いを止めるよう勧告した(甲13,55)。 平成25年度の出来事等アサービス向上運動の実施運輸部では,平成25年8月16日から同年9月15日までの間,サービス向上運動が実施された。 上記サービス向上運動において,身だしなみについては,「職員の身だ しなみ基準に基づいた『身だしなみ』で,お客さまにより好感を持ってい ただけるように留意する」ものとされたほか,改札窓口での謝辞励行の実施,確認指差喚呼(信号,計器類,標識等を指さして,その名称及び状態を声に出して確認するなど,注意を払うべき対象に対して一連の確認動作を行うもの。執務要領5条により,明瞭確実に行わなければならないものとされている。)の確実 器類,標識等を指さして,その名称及び状態を声に出して確認するなど,注意を払うべき対象に対して一連の確認動作を行うもの。執務要領5条により,明瞭確実に行わなければならないものとされている。)の確実な実施等が具体的取組み内容と定められた。 (甲2,乙124,乙44)イ原告Aに関する出来事等 原告Aは,平成25年8月下旬頃から同年9月上旬頃にかけて,休職を終えて復職するに当たっての研修として,D所長やF運輸助役らから,本件身だしなみ基準の内容,休職中の点呼訓示等について説明を受けた。 その際,D所長は,原告Aに対し,「ひげ頼むで」などと発言し,本件身だしなみ基準に従うように促した。 (甲33の①②,甲68,乙57,124,証人D,原告A) 原告Aに係る平成25年度の人事考課のための事実確認シート及び添乗記録簿には,同年12月3日,同月31日,平成26年1月18日及 び同年3月10日に実施された添乗指導において,閉扉協力及び乗客への注意喚起・謝辞励行が確認できなかった旨記載されている(乙57,61)。 原告Aは,平成26年2月24日,平成25年度人事考課の第1次評価者であるF運輸助役と面談した(前記前提事実ア,甲6,乙5 7)。 なお,被告は,原告Aが,同面談において,F運輸助役に対し,運転士は運転だけしておけばよいなどと乗客サービスを軽視する発言をした旨主張し,D所長は同主張に沿う供述・証言をしている(乙124,証人D)。しかしながら,原告Aがそのような交通局の方針に明確に反す る発言をしたのであれば,発言内容等が人事考課に係る評価根拠や指導 事項として記録化されるのが自然と考えられる(この点,平成26年度の事実確認シート[乙58] 交通局の方針に明確に反す る発言をしたのであれば,発言内容等が人事考課に係る評価根拠や指導 事項として記録化されるのが自然と考えられる(この点,平成26年度の事実確認シート[乙58]には,比較的詳細な発言内容の記載がある。)ところ,平成25年度の事実確認シート(乙57)には,原告Aが同面談において接客姿勢等の評価に納得しなかった旨の記載はあるものの,被告が主張するような原告Aによる具体的発言内容は記載されて おらず,その他に原告Aが上記趣旨の発言をしたことを根拠付ける客観的証拠は認められない。したがって,被告の上記主張は採用できない。 D所長は,平成26年3月28日,原告Aと,平成25年度人事考課の結果開示に係る面談をした。 同面談において,D所長は,原告Aが,「規律性」の点について, 「ひげ生やしてることによって,評価を下げてるということですね。」と質問したのに対し,「そうですね,はい。そやから,結局,我々,これしかできんからね。」,「やっぱり,今日の身だしなみ基準がいうことでやらさしてもらいました。」と返答し,さらに,「2か所低い評価はそれやということですね。」という質問に対しても,「はい,それで すね。それだけです。」と返答するなどした上,苦情相談の制度について教示し,その方法として,業務用逓送便を利用することを示唆した。 なお,同面談において,D所長が,原告Aの閉扉協力に関する姿勢等について言及することはなかった。 (甲31及び32の各①②,甲68,乙124,証人D,原告A) 原告Aは,平成26年3月31日付けで,運輸部管理課(以下,単に「管理課」という。)に対し,平成25年度人事考課について,評価者らから,ひげを生やしている者への評価は,2つの項目 原告Aは,平成26年3月31日付けで,運輸部管理課(以下,単に「管理課」という。)に対し,平成25年度人事考課について,評価者らから,ひげを生やしている者への評価は,2つの項目においてマイナス評価をするようにと管理課から指導されている旨説明されたなどとして,苦情相談の申込みをした。 これに対し,C管理課長は,同年4月24日付けで,評価者らに確認 したところ,上記のような発言があったとは認められず,原告Aの人事考課は,本件身だしなみ基準の遵守状況や,復職後に上司からの指導に応じなかったこと等を踏まえ,具体的行動を総合的に評価した結果,各評価項目の着眼点に照らし,「期待レベルに達しなかった」と評価した旨説明があったので,評価結果は妥当なものであると判断した旨回答し た。なお,同回答書において,原告Aの閉扉協力に関する姿勢等については言及されていなかった。 (甲15,16) 原告A内容が事実と異なるなどとして,再度,苦情相談の申込みをしたが,C 管理課長は,平成27年1月16日付けで,同申込みの受付が人事考課制度上の相談期間外であったことや,原告Aが,別途,大阪法務局に対しても人権救済の申立てをしていたことから,個別の回答は控える旨回答した(甲17,20)。 ウ原告Bに関する出来事等 原告Bは,平成25年5月14日にD所長,同月15日にF運輸助役から,それぞれ執務要領5条の改正について説明されるとともに,ひげを剃る意思の有無を確認されたが,個人の自由であること等を理由に,ひげを剃る意思はない旨返答した(前記前提事実イ,甲69,乙124,証人D,原告B)。 D所長は,平成25年9月18日,原告Bが運転する地下鉄 人の自由であること等を理由に,ひげを剃る意思はない旨返答した(前記前提事実イ,甲69,乙124,証人D,原告B)。 D所長は,平成25年9月18日,原告Bが運転する地下鉄に乗車した鉄道事業本部長が,原告Bについて,運転はうまいが,ひげがなければよい等の苦言を呈している旨を安全推進課から伝えられた。D所長は,同日,原告Bに対し,上記苦言の内容を伝えたところ,原告Bは,同日に散髪に行く予定であるなどと述べた。 (甲33の①②,甲69,乙59,124,証人D,原告B) 平成26年度の出来事等アサービス向上運動の実施運輸部では,平成26年度も,同年8月22日から同年9月11日までの間,サービス向上運動が実施され,「職員の身だしなみ基準に基づいた『身だしなみ』でお客さまにより好感を持っていただけるように留意する」 ことのほか,改札窓口等での謝辞励行の積極的な実施や,確認指差喚呼の確実な実施等が取組み内容とされた(乙46)。 イ原告Aに関する出来事等 原告Aについて,平成26年度の事実確認シート及び添乗記録簿には,13回にわたる添乗指導において,喚呼や閉扉協力時の声が小さかった 旨の指摘のほか,交通局管理職から,乗務交替時の前部標識に対する確認指差喚呼をしていなかった旨の連絡があったことが記載されている(乙58,61)。 D所長は,平成26年9月4日,原告Aと面談し,サービス向上運動(上記ア)の実施状況等について確認したが,その際,原告Aは,D所 長に対し,ひげを剃る意思がないなどと述べた(乙58,124,証人D)。 原告Aは,管理課に対し,いずれも業務用逓送便を利用して,①平成26年12月中旬頃,再度の苦情相談の 所 長に対し,ひげを剃る意思がないなどと述べた(乙58,124,証人D)。 原告Aは,管理課に対し,いずれも業務用逓送便を利用して,①平成26年12月中旬頃,再度の苦情相談の申込み(上記イの)に対する回答がないこと等,②同月30日付けで,原告Aが所属する団体が, 原告Aの件について人権侵害に当たると判断していること等,③平成27年1月9日付けで,大阪法務局から,管理課が大阪法務局の質問等に回答していない旨の連絡があったこと等を記載した文書を送付した。上記②の文書には,特定非営利活動法人Iと称する団体(以下「本件法人」という。)の活動内容を記載した文書が添付されており,同文書には, 役員等の「理事」の欄に「A」と記載されていた。 (甲19,乙47,48) C管理課長は,原告Aに対する平成27年1月16日付け回答書(上記イ)に,「A様が役員されている所属団体は,人権問題の相談窓口をされているようですが,組織のご判断を代表者からお聞きする機会があれば,われわれとしても問題解決のきっかけになるのではないかと 考えます。話をお聞きする機会があれば,その際にはよろしくお願いいたします。」などと記載したほか,上記の各文書について,「3通の書簡については,局内逓送便をご利用ですが,逓送便の取扱いは,公用の書類に限定されていますので,今後書簡をお届けいただく際には,郵送もしくは持参にて取り扱っていただきますようお願いいたします。」 と指摘した。なお,交通局において,業務用逓送便は,本局,事業所及び総務課長が必要と認める文書等の逓送に利用されているものであり,私文書等を送付してはならないものとされている。 D所長は,同日,原告Aに対して上記回答書を交付する際,原告 局,事業所及び総務課長が必要と認める文書等の逓送に利用されているものであり,私文書等を送付してはならないものとされている。 D所長は,同日,原告Aに対して上記回答書を交付する際,原告Aに対し,所定外の文書を業務用逓送便で送付しないこと,外部団体の役員 に就任することは,地方公務員の兼業禁止規定(地公法38条1項参照)に抵触するおそれがあること等を注意した。 (甲20,68,乙49,123,124,証人C,証人D,原告A) 原告Aは,平成27年1月21日付けで,管理課に対し,再度,直接の対話を希望する旨の文書を,業務用逓送便により送付したため,同月 23日,D所長から,改めて業務用逓送便を私信に利用しないよう注意された(甲21,68,乙123,124,証人C,証人D,原告A)。 原告Aは,平成27年1月30日,同年2月6日,同月13日及び同月19日の4回にわたり,平成25年度の人事考課等に関し,管理課長代理であるJ(以下「J代理」という。)と面談した。 a 原告Aは,平成27年1月30日の面談において,J代理に対し, F運輸助役やD所長から,平成25年度の人事考課では,管理課からの指導により,ひげを生やしていることを理由に2項目でマイナス評価をした旨説明された旨を述べたが,J代理は,管理課がそのような指示をしたことを否定し,ひげだけで評価されたものではないなどと返答した。 一方,原告Aは,同日,J代理から,復職後に,上司からひげに関する指導を受けたことがないかを確認されたのに対し,復職の際に,本件身だしなみ基準については説明されたが,ひげに関する指導を受けた覚えは全くない旨返答した。なお,この点につき,原告Aは,同年2月4日の 指導を受けたことがないかを確認されたのに対し,復職の際に,本件身だしなみ基準については説明されたが,ひげに関する指導を受けた覚えは全くない旨返答した。なお,この点につき,原告Aは,同年2月4日のD所長との面談(下記a)を踏まえ,同月6日のJ代 理との面談において,D所長が「ひげ頼むで」と指導したと述べているが,それだけで指導を受けた(指導に反した)とはいえない旨の意見を補足した。 b 原告Aは,平成27年1月30日の面談において,本件身だしなみ基準について,「ちょっと厳しすぎる」などと意見を述べ,J代理が, 接客業という観点から身だしなみの重要性を主張したのに対して,「接客って,僕らそんなに,お客さんとも接しないですしね,運転。 で,別に普通にしてたらいいんじゃないですか。」などと述べた。 cJ代理は,平成27年1月30日の面談において,本件法人の代表者との面談を希望したが,原告Aから,同代表者の体調が悪いため難 しいと言われた。 そこで,J代理は,本件法人について自ら調査し,同年2月6日の面談において,原告Aに対して,①NPO法人であっても,報酬がある場合は届出をして許可を得ることが必要であり,無報酬であったとしても,無報酬であることだけでも届出をした方がよいと助言し,② 本件法人は既に清算手続が行われており,そのような団体の見解とし て,同団体が存在するかのような文書を管理課に送付するのは適切でないなどと述べた。これに対し,原告Aは,本件法人は,NPO法人としては既に解散しているが,団体としては存続して活動を継続している旨説明した。 なお,被告は,J代理が,同年1月30日の面談の際に,原告Aに 対し,本件法人の活動や報酬の有無について報告するよう指導し が,団体としては存続して活動を継続している旨説明した。 なお,被告は,J代理が,同年1月30日の面談の際に,原告Aに 対し,本件法人の活動や報酬の有無について報告するよう指導したと主張し,C管理課長は同主張に沿う供述・証言をしている(乙123,証人C)。しかしながら,同日の面談に係る録音記録(乙113の①②)には,J代理が上記指導をした旨は記録されておらず,同年2月6日の面談に係る録音記録(乙114の①②)を見ても,原告AがJ 代理からの指導を履行しなかったことをうかがわせるやりとりは認められない。そして,そのほかに,J代理が上記指導をしたことを認めるに足りる的確な証拠は認められないから,被告の上記主張は採用できない。 d これらの面談において,J代理が,原告Aに対し,業務内容の総合 的な評価という観点から,閉扉協力や確認指差喚呼により積極的にアピールをすれば,評価が上昇する余地がある旨言及することはあったが,平成25年度の評価対象期間において,原告Aについて,これらの取組みが不十分であったこと等の具体的な指摘がされることはなかった。 (以上につき,甲68,乙113ないし116の各①②,乙123,124,証人C,証人D,原告A) 原告Aは,上記のJ代理との面談と並行して,平成27年2月4日,同月12日及び同月20日の3回にわたり,D所長と面談した。 aD所長は,平成27年2月4日の面談で,原告Aに対し,平成25 年度の人事考課については,管理課の指示ではなく,現場(すなわち, F運輸助役及びD所長)の判断であると説明した。 また,D所長は,同日,原告Aが,苦情相談の回答で上司の指導に従わない旨記載されていたが,指導 の指示ではなく,現場(すなわち, F運輸助役及びD所長)の判断であると説明した。 また,D所長は,同日,原告Aが,苦情相談の回答で上司の指導に従わない旨記載されていたが,指導を受けた覚えはない旨述べたのに対し,本件身だしなみ基準について説明した際に,「そん中にひげあるな」,「ひげ頼むで」などと指導したと述べた。 bD所長は,平成27年2月12日の面談において,原告Aから,平成25年度に,ひげを理由に2項目の評価を下げたことを改めて確認され,これを肯定した上で,「ある程度その,規律の部分あるやんか。 身だしなみ基準。そんなんなんべんも守らないとなったら,僕ら,やっぱり,下げなしゃあないわな,その部分は。」,「僕らはこれに従 っていくだけやんか。我々も言われた,その通達どおり,見たよな,通達知ってるわな,見たよね。あの身だしなみ基準守ってくれへんかったら,人事考課下げますよと。項目あったわね。それに従うだけです,僕らは。」,「通達に従わなしゃあないてことですわね,僕らがね。」などと述べた。 c 平成27年2月20日の面談において,D所長及び同席していたG副所長は,原告Aに対し,本件身だしなみ基準が,組織としてのルールであること等を述べた上で,「家族も守らなあかんやん」,「お前守ろ思たら,もうひげ剃るしかないぞ」などと,ひげを剃るように促した。 なお,平成26年度の原告Aに係る事実確認シート(乙58)には,同日の欄に,「面談時に運転士として運転以外に接客の必要性を認めず,日頃の言動が後輩に与える影響を質問したが,『悪い印象はないと思う』と答えた。」と記載されている。しかしながら,上記面談に係る録音記録(甲35の①②)によれば,原告Aは,G副所長から, 性を認めず,日頃の言動が後輩に与える影響を質問したが,『悪い印象はないと思う』と答えた。」と記載されている。しかしながら,上記面談に係る録音記録(甲35の①②)によれば,原告Aは,G副所長から, 本件身だしなみ基準に対する原告Aの態度等が,他の乗務員等にどの ような影響を与えると認識しているかを問われた際,「影響とかどうのこうのより,やっぱり,人権侵害にあたると思ってるんで。」「ルールは必要やと思いますし,ある程度のことは,ねえ。決まり事はあってもええと思うけど,人権を無視してまでの,違法なまでの身だしなみ基準ていうのはどうなんかなあと思いますね。」などと意見を述 べたことが認められるものの,上記事実確認シートに記載されたような発言をしたことまでは認められず,そのほかに,原告Aが同趣旨の発言をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。 d これらの面談において,D所長は,原告Aに対し,閉扉協力や確認指差喚呼が不十分であるなどの指摘はしなかった。 (以上につき,甲33ないし35の各①②,甲68,乙124,証人D,原告A) 原告Aは,平成27年2月27日,Kf乗務運輸長(以下「K運輸長」という。)から,ひげを剃る意思の有無を確認され,その意思はない旨返答した(甲53の①②,甲68)。 なお,平成26年度の原告Aに係る事実確認シート(乙58)には,同日の欄に,「運輸長面談では,お客さまからの髭のクレームに応えるのが接客業だと指導したところ,『運転士に接客は要るのか』と答え,指導に従うつもりはないと主張した。」と記載されている。しかしながら,上記面談に係る録音記録(甲53の①②)によれば,原告Aが,K 運輸長に対し,「弁護士さんとか,いろんな人権擁護士 と答え,指導に従うつもりはないと主張した。」と記載されている。しかしながら,上記面談に係る録音記録(甲53の①②)によれば,原告Aが,K 運輸長に対し,「弁護士さんとか,いろんな人権擁護士の人とかに相談,ねえ,話をしたけど,やっぱり人権侵害に当たるて言うてるんですよ。」,「運転士て,まあ,接客業といえば接客業ですけど。」「殆どね,しゃべることもないし,そんなん一々運転手の顔なんか見てないですしね。」などと述べたことが認められるが,上記事実確認シートに記 載されたような発言をしたことまでは認められず,そのほかに,原告A が同趣旨の発言をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。 原告Aは,平成27年2月28日,平成26年度の第1次評価者であるF運輸助役と面談した。 同面談において,原告Aは,F運輸助役から,閉扉協力の実施状況について尋ねられたため,実施駅を決めてはいないが,ベビーカーや高齢 者がいるとき等,必要に応じて実施している旨返答した。その際,原告Aが,閉扉協力については,廃止されているのではないかと確認したところ,F運輸助役は,「いや,一応な,今でもなくなってないねんけど。」,「協力やから。ここていうんじゃなしに,まあ,できるんやったらやってくれたらええし,強制じゃないけど。」,「(逆に,閉扉協 力をしたことによる苦情等が何回かあったことから)それで,なくしたけども,せんでええねんやないねんけど,協力やから。」などと述べて,強制はできないものの,実施すれば加点されること等を示唆した。 また,原告Aは,F運輸助役から,服務規律の遵守状況について確認され,本件身だしなみ基準のうち,原告Aが人権侵害であると認識して いるひげに関する点を除いては,遵守している た。 また,原告Aは,F運輸助役から,服務規律の遵守状況について確認され,本件身だしなみ基準のうち,原告Aが人権侵害であると認識して いるひげに関する点を除いては,遵守していること,上司からひげを剃るよう命令されたことはないので,上司の指示・命令にも従っていること,ひげ及び頭髪等は,快い印象を与える状態に整えていること等を述べた。 (前記前提事実ア,甲7,甲36の①②,甲68,原告A) 原告Aは,平成27年3月25日,D所長及びG副所長と,平成26年度人事考課の結果開示に係る面談をした。 同面談において,D所長は,原告Aに対し,閉扉協力時の声が小さいこと等から,接客業に従事する自覚及び認識が不十分であると評価した旨説明した。原告Aが,実施駅が指定されていないにもかかわらず閉扉 協力を理由に低評価としている点について不服を述べたところ,D所長 及びG副所長は,閉扉協力は任意的に実施するものであるものの,閉扉協力や謝辞励行が接客の重要な要素であるなどとした上,これらを含めて総合的に判断し,期待レベルに達していなければ3点未満となるなどと説明し,また,ひげを理由に減点したことは否定した。 なお,同面談において,本件法人に係る調査の点や,業務用逓送便の 私的利用について指摘されることはなかった。 (甲37の①②,甲68,乙124,証人D,原告A) 原告Aは,平成27年3月29日付けで,管理課に対し,平成26年度の人事考課の結果について,苦情相談の申込みをした。 C管理課長は,同年5月1日付けで,原告Aに対し,上記苦情相談の 申込書は,提出期限(結果開示から5日以内である同年3月30日まで)を超えて提出されたものであり,正 込みをした。 C管理課長は,同年5月1日付けで,原告Aに対し,上記苦情相談の 申込書は,提出期限(結果開示から5日以内である同年3月30日まで)を超えて提出されたものであり,正式に受理することはできないとした上で,その記載事項に対して個別に回答した。 同回答書には,閉扉協力については,f乗務所では,その実施駅こそ指定されていないものの,個々の乗務員に対し,乗客の安全上必要と判 断した駅で自主的に行うことが,職場内ルールとして運用されているなどと記載されていた。 (甲24,25,68,証人C,原告A)ウ原告Bに関する出来事等 原告Bは,平成27年1月16日,交通局本局で実施された「平成2 6年度大阪市交通局職員ライフデザインセミナー」と称する研修(本件研修)を受講した。 交通局では,研修受講時の服装は,原則としてスーツ(クールビズ期間は,上着及びネクタイの着用は不要とし,制服貸与者については制服の着用も可とされる。)とされており,本件研修においても,同基準に 基づき服装の整斉に努めるよう周知されていた。ところが,原告Bは, 本件研修の当日,黒のコーデュロイのズボンにウォレットチェーンを付けて,ジャケットを着用せずに出席した。そのため,本件研修の担当者は,一旦,原告Bの研修の受講を拒否しようとしたが,連絡を受けた管理課職員が同研修担当者に懇願し,原告Bは,ウォレットチェーンを外してジャケットを借用して着用したことから,本件研修の受講を許可さ れた。 D所長は,同月19日,原告Bに対し,上記服装違反について注意した。 (甲69,乙52,53,60,123,124,証人C,証人D,原告B) 原告B D所長は,同月19日,原告Bに対し,上記服装違反について注意した。 (甲69,乙52,53,60,123,124,証人C,証人D,原告B) 原告Bは,平成27年3月30日,D所長と,平成26年度人事考課の結果開示に係る面談をした。 原告Bは,同面談において,D所長から,本件研修時の服装の点を指摘され,自分では問題ないと認識していたが,「『基準』というのも僕もちょっと低すぎたということで,納得します。」などと述べた。 (甲69,乙107の①②,乙124,証人D,原告B) 2 争点1(原告らに係る勤勉手当差額請求権の有無及びその額)について原告らは,被告に対し,本件各考課が違法であるとして,本件各考課において,原告らが相対評価で第3区分に位置付けられることを前提に,賞与請求権に基づき勤勉手当の差額の支払を求めている。 しかしながら,本件人事考課制度においては,業務内容等の総合考慮により絶対評価の点数が付され,その点数を他の職員と比較することにより最終価の際に,原告らがひげを生やしていたことを考慮したことが違法であったとしても,そのことから直ちに,原告らについて,絶対評価で3点が付され ることになるとまでは認められず,また,それに基づき相対評価で第3区分 とされていたと認めることもできない。 そうすると,原告らについて,本件各考課において確定的に第3区分と査定された事実がない以上,原告らが主張するような同査定に基づく勤勉手当の請求権が具体的権利として発生していたということはできない。 以上によれば,原告らの賞与請求権に基づく勤勉手当の請求については, 本件各考課の適否の点について判断するまでもなく理由がない 請求権が具体的権利として発生していたということはできない。 以上によれば,原告らの賞与請求権に基づく勤勉手当の請求については, 本件各考課の適否の点について判断するまでもなく理由がないといわざるを得ない。 3 争点2(原告ら主張に係る国賠法上の違法行為の有無)について 原告らが主張する違法行為の内容原告らは,①交通局が本件身だしなみ基準を制定したこと,②上司らが本 件身だしなみ基準に基づき業務上の指導等を行ったこと,③本件身だしなみ基準に基づき,ひげを剃らなかったことを理由に人事考課において低評価としたことが,いずれも国賠法上違法である旨主張する(前記第4の2【原告らの主張】)。 上記①の点について ア地方公共団体は,その地方の事務を当該地域の住民の意思と責任の下に実施し,その職員である地方公務員は,全体の奉仕者として住民全体の公共の利益のために勤務するものであって(地公法30条),その職務を行うに当たっては公務に対する住民の信頼を損なわないように遂行することが要請されるから(同法33条),住民の意見や住民の代表である議会で の議論を踏まえつつ,公務に対する住民の信頼を損なわないように職員の服務を規律することは地方公共団体の責務である。 被告及び交通局において,ひげを含む身だしなみに関する諸規程が設け認められる。 イ他方において,ひげを生やすか否か,ひげを生やすとしてどのような形 状のものとするかは,服装や髪型等と同様に,個人が自己の外観をいかに表現するかという個人的自由に属する事柄であるという面も存在する。特に,ひげは,服装とは異なり,着脱が不能であり,労働者のひげに関する服務中の規律は,勤務関係又は労働契約の拘束を離れた私生活にも に表現するかという個人的自由に属する事柄であるという面も存在する。特に,ひげは,服装とは異なり,着脱が不能であり,労働者のひげに関する服務中の規律は,勤務関係又は労働契約の拘束を離れた私生活にも及び得るものであることに鑑みると,労働者のひげに関する服務規律は,事業遂 行上の必要性が認められ,かつ,その具体的な制限の内容が,労働者の利益や自由を過度に侵害しない合理的な内容の限度で拘束力があると認めるのが相当である。 ウ以上を踏まえて本件についてみると,上記アのとおり,交通局において,従前から乗務員に対し,服装の整正や容姿の端正を求めていること には正当な理由があると認められ,ひげについても,清潔感を欠くとか,威圧的印象を与えるなどの理由から,社会において,広く肯定的に受け容れられているとまではいえないのが我が国における現状であること(乙24ないし30〔各枝番を含む。〕,乙117ないし121参照)に鑑みると,窓口において市民や利用者と対応する職員はもとより,業 務中に利用者に対応する機会のある運転士を含む地下鉄乗務員に対しても,本件身だしなみ基準のように,「整えられた髭も不可」として,ひげが剃られた状態を理想的な身だしなみとする服務上の基準を設けることそれ自体には一応の必要性ないし合理性があると認められる。 もっとも,①地下鉄運転士がひげを生やしていることが,直接的に, その本来的な業務である地下鉄の安全かつ的確な運行に支障を生じさせるものとまではいえないこと,②ひげを生やすことが,上記のように社会において広く肯定的に受け容れられているとまではいえないとしても,市民や乗客においてひげを嫌悪することも,また個人の嗜好に基づくものであるという面も否定できないこと,以上の点に鑑みると,地下鉄運 会において広く肯定的に受け容れられているとまではいえないとしても,市民や乗客においてひげを嫌悪することも,また個人の嗜好に基づくものであるという面も否定できないこと,以上の点に鑑みると,地下鉄運 転士に対して,職務上の命令として,その形状を問わず一切のひげを禁 止するとか,単にひげを生やしていることをもって,人事上の不利益処分の対象とすることは,服務規律として合理的な限度を超えるものであるといわざるを得ない。 エこの点,本件身だしなみ基準は,ひげに関し,「髭は伸ばさず綺麗に剃ること。(整えられた髭も不可)」と定めるとともに,本件通達では,本 件身だしなみ基準を指導教育に用いること,繰り返しの指導に対して改善が見られない場合は人事考課への反映も行うことが記載されている(前記)ものの,同基準が,職務上の命令として一切のひげを禁止するものであるとか,単にひげを生やしていることをもって人事上の不利益処分の対象としているものとまでは認められず,飽くまでも被告が 主張するように,交通局の乗客サービスの理念を示し,職員の任意の協力を求める趣旨のものであると認めるのが相当である。 そ,本件身だしなみ基準については,一定の必要性及び合理性があると認められるのであって,同基準の制定それ自体が違法であるとまではいえない。したがって,この点についての原 告らの主張は採用できない。 上記②の点についてア上記認定事実のとおり,D所長を始めとする原告らの上司は,再三にわたり,原告らに対し,本件身だしなみ基準に従って,ひげを剃るよう指導していたことが認められるところ(認定事実イ,イ,ウ,イ, c,),①D所長らは,下記H運輸長の発言の点を除いては,原告らに対し,「ひげ頼むで」など に従って,ひげを剃るよう指導していたことが認められるところ(認定事実イ,イ,ウ,イ, c,),①D所長らは,下記H運輸長の発言の点を除いては,原告らに対し,「ひげ頼むで」などの表現により,任意にひげを剃ることを求めていたこと,②原告Aは,J代理に対し,上司からひげに関する指導を受 められる。 これらの事実に照らすと,原告らの上司らが,原告らに対し,業務命令としてひげを剃ることを求めていたとは認められず,原告らが主張する発言(ただし,後記イの点を除く。)について,国賠法上の違法性があるとは認められない。 イもっとも,上記認定事実のとおり,H運輸長は,f乗務運輸長という上 位の立場にあって,原告Bに対し,人事上の処分や退職を余儀なくされることまでを示唆して,ひげを剃るよう求めたことが認められ(認定事実イ),H運輸長の発言については,身だしなみについて任意の協力を求める本件身だしなみ基準の趣旨を逸脱したものであるといわざるを得ない。 したがって,H運輸長の同発言については,国賠法上違法であったと認 めるのが相当である。 上記③の点についてア平成25年度の原告らに対する人事考課について 前記前提事実及び上記認定事実並びに後掲証拠によれば,①本件身だしなみ基準は,「髭は伸ばさず綺麗に剃ること。(整えられた髭も不 可)」と明確に記載し,任意の依頼である旨の文言は存在せず,本件通達が,「度重なる指導にも関わらず改善が見られない場合は,管理課まで報告を行うとともに,人事考課への反映も行う。」として,本件身だしなみ基準への違反が改善されない場合には人事考課に反映することを示していること(前記前提事実ウ,),②平成24年8月にf乗 で報告を行うとともに,人事考課への反映も行う。」として,本件身だしなみ基準への違反が改善されない場合には人事考課に反映することを示していること(前記前提事実ウ,),②平成24年8月にf乗 務所に掲示された点呼訓示に,「交通局として一定基準を設けたので(運輸部身だしなみ基準)処分対象になると聞いている」,「通勤については処分なし」と記載されていること考課制度では,各評価項目が「概ね期待するレベルに達した」場合に3点とされるが,D所長は,実際にはほぼ3点を付けている旨証言してい 証人D),④「規律性」の評価項目には, 「制服をきちんと着用し,身だしなみは快い印象を与えるものであった別紙3),⑤D所長は,平成25年度の人事考課結果開示に係る原告Aとの面談において,本件身だしなみ基準が制定されたことから,原告Aがひげを生やしていることを理由に,2つの評価項目で低評価をした旨 D所長は,平成27年2月の原告Aとの面談でも,ひげを理由に2項目の評価を下げたことを認めていはもとより,上記⑤及び⑥の各面談や,原告Aが行った苦情相談に対するC管理課長の回答書等においても,原告Aの閉扉協力が不十分であっ たこと等被告が主張する原告Aの身だしなみ以外に係る事情が考慮され 以上認定した事実に,本件身だしなみ基準及び本件通達の文言並びにこれらを踏まえたD所長の発言等をも併せ鑑みると,第2次評価者であ ったD所長は,平成25年度の人事考課を行った時点で,乗務員が,本件身だしなみ基準に反してひげを生やし,指導しても改善されない場合には人事考課の減点要素となると認識しており,原告らがひげを生やしていたことを主要な事情として考慮して,この点を原告らに不利益に評価したものであると認めるのが相当である。 ても改善されない場合には人事考課の減点要素となると認識しており,原告らがひげを生やしていたことを主要な事情として考慮して,この点を原告らに不利益に評価したものであると認めるのが相当である。 これに対し,被告は,平成25年度の評価対象期間において,原告らが,市民・乗客に快い印象を与えるものではない無精ひげを生やしていたこと,原告らが,身だしなみや乗客サービスを軽視する発言や態度を示したこと,原告Aが,閉扉協力等の姿勢が不十分であったこと等の事情があり,これらが人事考課において考慮された旨主張する(前 記第4の1【被告の主張】ア,イ参照)。 a 上記の点について確かに,無精ひげ(整えられていないひげ)は,市民や地下鉄利用客に対し,一定の不快感を生じさせる可能性があることは否定できず,被告(交通局)が,その経営理念として「お客さま第一主義」を掲げ,身だしなみやお客さまサービス向上を目指そうとする考え方や取組み を行っていたことに照らしても,被告職員としても,各職場において,業務の内容等を踏まえ,かかる状況が発生しないように心掛ける必要があるというべきである。 しかしながら,仮に,平成25年度の評価対象期間に係る勤務開始時点において,原告らが無精ひげを生やしていたというのであれば, 乗務開始前の点呼の際等に,ひげを整えるよう指導したり,勤務自体を停止させたりすることも十分に可能であったと認められるところ(本件通達2〔前記前提事実ウ〕参照),被告が指摘する市民等からの苦情申入れの内容も含め,本件記録を精査しても,原告らに対して,これらの対応等がなされたことを認める足りる的確な証拠は 認められない。なお,原告Bが,同年9月1 ),被告が指摘する市民等からの苦情申入れの内容も含め,本件記録を精査しても,原告らに対して,これらの対応等がなされたことを認める足りる的確な証拠は 認められない。なお,原告Bが,同年9月18日に,鉄道本部長から苦言を呈されたこと(認定事実ウ)からすると,原告Bが,その頃に,上司から苦言を呈されるようなひげの状態で勤務していたともうかがわれるが,本件身だしなみ基準が「整えられた髭も不可」としていることも踏まえると,同苦言をもって,原告Bが無精ひげで勤務 していたとまでは認められない。 そして,そのほかに,上記評価対象期間において,原告らが,市民・乗客に快い印象を与えるものでない無精ひげの状態で勤務していたと認めるに足りる的確な証拠は認められない。 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。 b 上記の点について 原告らは,平成25年度の評価対象期間に限らず,本件身だしなみ基準とは異なり,常にひげを生やした状態で勤務していたところ,上記認定事実のとおり,原告らは,個人の自由を理由にひげを剃ることを拒否したことがたびたびあったものの(認定事実ウ,イ,b),被告が主張するような,身だしなみや乗客サービス等を軽視 した発言や態度を示したことを認めるに足りる客観的証拠は認められない(同イ,イc,参照)。したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。 c 上記の点について平成25年度の原告Aに係る事実確認シートには,4回にわたる添 乗指導の際に,閉扉協力等が確認できなかった旨の指摘がある(認定 この点,証拠(甲57,甲59の①②,乙82,97,110の①②,乙111 事実確認シートには,4回にわたる添 乗指導の際に,閉扉協力等が確認できなかった旨の指摘がある(認定 この点,証拠(甲57,甲59の①②,乙82,97,110の①②,乙111,112,124,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,地下鉄e線を管轄するf乗務所では,平成14年8月1日頃から,運 転士が車掌に対して手を挙げるなどして,閉扉のための合図を実施する閉扉協力を,指定された駅及び必要と認める場合に実施することが職場ルールとして定められ,その後,平成18年7月頃及び平成28年8月頃に,上記指定駅が変更されたことが認められる(原告Aは,f乗務所では,指定駅が廃止されていた旨主張するが,閉扉協力は地 下鉄の各線において実施されており〔乙98ないし105参照〕,e線においてのみこれを廃止する積極的理由があるとは認められないこと,原告らが平成28年7月頃に作成されたと主張する書面〔甲59の①〕にも「以前からの実施駅」の記載があること等に照らすと,原告Aの上記主張は採用できない。)。 もっとも,F運輸助役や,D所長及びG副所長が,原告Aに対し, C管理課長も,「f乗務所では実施駅こそ指定されていない」と述べf乗務所では,平成25年度ないし平成26年度において,閉扉協力の指定駅が廃止されるまでには至っていなかったものの,事実上,その実施の有無を各運転士の自由な判 断に委ねる運用が定着していたと認めるのが相当である。 そうすると,閉扉協力の実施の点について,原告Aに不十分な点があったとして,人事考課に当たって,積極的な加点要素が認められないことはあっても,この点が人事考課における減点要素として考慮されるほどの事情に当たるものであったとまでは認められない。そして, 上記のと て,人事考課に当たって,積極的な加点要素が認められないことはあっても,この点が人事考課における減点要素として考慮されるほどの事情に当たるものであったとまでは認められない。そして, 上記のとおり,原告Aは,結果開示面談等においてこの点に言及されていなかった点を併せ鑑みれば,上記人事考課においては,原告Aがひげを生やしていたことが主要な考慮要素とされたと認められ,この点に関する被告の主張は採用できない。 以上によれば,平成25年度の原告らに対する人事考課において, 「市民・お客さま志向」及び「規律性」の項目(原告Bについては,「規律性」の項目)につき減点評価されたのは,主として,原告らがひげを生やしていることを理由としたものであると認められる。そして,上記で認定説示したひげを生やす自由の性質及び本件身だしなみ基準の位置付け,平成25年度人事考課シートの具体的な記載内容等を踏ま えると,上記評価は,人事考課における使用者としての裁量権を逸脱・濫用するものであるといわざるを得ない。 イ平成26年度の原告らに対する人事考課について 被告は,平成26年度の評価対象期間においても,原告らが,市民・乗客に快い印象を与えるものではない無精ひげを生やしていたこと, 原告らが,身だしなみや乗客サービスを軽視する発言や態度を示した こと,原告Aが,閉扉協力等の姿勢が不十分であったことを主張するほか,原告Aが,業務用逓送便を,目的外に使用したこと,原告Aが,兼業規制への抵触の有無を確認した上司に対し,非協力的態度を示したこと,原告Bが,本件研修において,不適切な服装で参加しようとしたことがあった旨主張する(前記第4の1【被告の主張】ア, イ参照)。 a 上記 司に対し,非協力的態度を示したこと,原告Bが,本件研修において,不適切な服装で参加しようとしたことがあった旨主張する(前記第4の1【被告の主張】ア, イ参照)。 a 上記ないしの点について上記及びの点について,これらを認めるに足りる客観的証拠が認められないこと,上記の点について,減点要素として考慮する事情であったとまでは認められないことは,いずれも上記で認定説 示したとおりである。 b 上記の点について上記認定事実のとおり,①原告Aが,管理課に対し,平成26年12月から平成27年1月にかけて,平成25年度の人事考課への苦情相談等に関する文書3通を,業務用逓送便で送付したこと(認定事実 イ),②これに対し,C管理課長の回答書において,業務用逓送便の利用は公用書類に限定されているので,今後は郵送又は持参するよう注意喚起され,D所長③原告Aは,上記注意喚起後も,業務用逓送便により管理課に対する,これらの事実 によれば,原告Aの業務用逓送便の使用については,交通局の規律に違反し,不適切であったとの非難を免れない。 もっとも,原告Aが管理課に送付したのは,人事考課に係る苦情相談等に関するものであり,業務上必要とされた文書でないとしても,業務との関連性がある文書であるといえること,D所長も,苦情相談 の申込書を業務用逓送便により送付することを示唆していたこと(認 あったとまで評価することは相当とはいえない。 以上の点に,平成26年度の原告Aに係る人事考課シート(甲7)及び事実確認シート(乙59)はもとより,人事考課に係る評価者との面談においても,上記規律違反の点に対し特段言及されていないこ 利用の点が,同 ,平成26年度の原告Aに係る人事考課シート(甲7)及び事実確認シート(乙59)はもとより,人事考課に係る評価者との面談においても,上記規律違反の点に対し特段言及されていないこ 利用の点が,同年度の原告Aに対する減点要素とされたとまでは認められない。 c 上記の点について上記認定事実のとおり,本件法人に関しては,①原告Aが,管理課 に対し,原告Aが理事に就任している旨が記載された本件法人の活動内容を示した文書を添付して,同法人の見解を記載した文書を送付したこと(認定事実イ),②D所長やJ代理から,原告Aに対し,J代理は,自ら本件法人について調査して,清算手続が行 Aは,J代理に対し,本件法人がNPO法人としては解散しているが,団体としての活動を継続していることを説明したこと(同),以上の事実が認められる。 一方,本件記録を精査しても,被告が主張するような,上司が原告Aに対して,本件法人に関する報告をするよう指導したことについては, 同事実を認めるに足りる的確な証拠は認められず(同c参照),原告Aについて,上司に対して非協力的な態度を示したなどの非難されるべき行動があったことを認めるに足りる的確な証拠は認められない。 d 上記の点について上記認定事実のとおり,原告Bは,平成27年1月16日に開催さ れた本件研修において,ジャケットを着用せずに出席しようとし,係 る服装違反についてD所長から指導を受け,平成26年度人事考課の結果開示面談においても指摘を受けたことが認められる(認定事実ウ)。 e 小括以上のとおりであって,被告が主張する上記各事情のうち,原告B の服装違反の点は,平成26年度の人事考課において 摘を受けたことが認められる(認定事実ウ)。 e 小括以上のとおりであって,被告が主張する上記各事情のうち,原告B の服装違反の点は,平成26年度の人事考課においても一定の考慮がされたことが認められるが,その他の事情については,そもそも同事情に係る具体的な事実を認めることができないか,認められるとしても,上記説示した点からすると,原告らに係る人事考課に当たって主要な考慮要素となっていたとまでは認められない。 かえって,上記アのとおり,原告らは,平成25年度の人事考課において,ひげを生やしていたことを主たる考慮事情として評価を受けたと認められるところ,D所長は,平成27年2月の時点でも,原告Aに対して,ひげを生やしていれば,人事考課において低評価とせざるを得ない旨示唆していたこと(認定事実b,c)に鑑みると,平成26年度 の人事考課についても,原告らがひげを生やしていたことが,主要な減点要素として考慮されたものであると認めるのが相当である。そうすると,上記で認定説示したひげを生やす自由の性質及び本件身だしなみ基準の位置付け,平成26年度人事考課シートの具体的な記載内容等を踏まえると,上記評価は,人事考課における使用者としての裁量権を逸 脱・濫用するものであるといわざるを得ない。 ウ本件各考課に係る国賠法上の違法性について上記したとおり,平成25年度及び平成26年度に係る原告らに対する本件各考課は,いずれも裁量権を逸脱・濫用したものであると認められるところ,本件身だしなみ基準の趣旨目的,本件各考課の内容及びひげを生 やすか否かは個人的自由に関する事項であること(上記3⑵イ)に鑑みる と,本件各考課の内容については,原告らの人格的な利益 ろ,本件身だしなみ基準の趣旨目的,本件各考課の内容及びひげを生 やすか否かは個人的自由に関する事項であること(上記3⑵イ)に鑑みる と,本件各考課の内容については,原告らの人格的な利益を侵害するものであり,適正かつ公平に人事評価を受けることができなかったものであって,国賠法上違法であると評価するのが相当である。 4 争点3(原告らに係る損害の有無及びその額)について 慰謝料 上記3で認定説示したとおり,H運輸長による原告Bに対する指導の点,本件各考課において,原告らがひげを生やしていることが減点要素とされた点は,いずれも国賠法上違法であったと認められる。 この点,上記2で認定説示したとおり,原告らがひげを生やしていることを考慮しなかったとしても,確定的に第3区分と査定されたとはいえないも のの,原告らは,これらの指導等によって,長年にわたり生やしていたひげを,意に反して剃らなければならない旨の心理的圧迫を受けるとともに,現に適正かつ公平に人事評価を受けることができなかったことにより,精神的苦痛を受けたことが認められる。 他方で,原告らが,実際には意に反してひげを剃ることはなかったこと, 本件各考課において,仮に原告らのひげが考慮されなかったとしても,直ちに第3区分に位置付けられたとまでは認められないこと(上記2)等の本件において認められる一切の事情を総合的に斟酌すると,上記違法行為と相当因果関係のある原告らの精神的苦痛に対する慰謝料は,それぞれ20万円の限度で認めるのが相当である。 弁護士費用本件事案の性質及びその内容,審理の経過,認容額等に鑑みれば,弁護士費用として,各2万円を損害と認めるのが相当である。 5 結論以上によれば,原 弁護士費用 本件事案の性質及びその内容,審理の経過,認容額等に鑑みれば,弁護士費用として,各2万円を損害と認めるのが相当である。 結論 以上によれば,原告らの本件各請求については,主文掲記の範囲で理由があるから,これを認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官 内藤裕之 裁判官 池上裕康 裁判官 大和隆之は,差し支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官 内藤裕之

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