昭和32(う)2113 酒税法アルコール専売法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和33年4月15日 東京高等裁判所 破棄自判
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【DRY-RUN】主    文      原判決中被告人Aに関する原判示第四事実に関する部分(ドラム罐二本 及びアルコール一斗三升没収及び証人Bに支給した訴訟費用の負担を命ずる部分を 含む)を破棄する。      右被

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判決文本文2,639 文字)

主文 原判決中被告人Aに関する原判示第四事実に関する部分(ドラム罐二本及びアルコール一斗三升没収及び証人Bに支給した訴訟費用の負担を命ずる部分を含む)を破棄する。 右被告人を原判示第四の事実につき罰金千円に処する。 右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間右被告人を労役場に留置する。 ドラム罐二本及びアルコール一石三斗(昭和三〇年東地庁外領第六七〇五号の一、二)は右被告人から没収する。 原審証人Bに支給した分は右被告人の負担とする。 被告人C、同Dの本件各控訴及び被告人Aの其の余の控訴は何れもこれを棄却する。 当審訴訟費用は全部被告人C及び被告人Aの連帯負担とする。 理由 本件控訴の趣意は、被告人Cの弁護人田中和、被告人Aの弁護人河内守、被告人Dの弁護人岩田満夫各作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、これらをここに引用し、これらに対し、次のとおり判断する。 田中弁護人の論旨第一先ずその一について、国税犯則取締法第一三条第一項によると国税局又は税務署の収税官吏が間接国税に関する犯則事件の調査を終つたときは、これを所轄国税局長又は税務署長に報告すべきものであるが、但し例外として、左の場合には直ちに告発すべしとして、一、犯則嫌疑者の居所分明ならざるとき、二、犯則嫌疑者逃走の虞あるとき、三、証憑湮滅の虞あるときと定められているのに拘らず、本件告発書の記載によれば、本件告発は国税犯則取締法第一三条第一項による旨表示されているだけで、右第何号の事由によるものであるかが明示されていないことは所論のとおりである。 而して間接国税犯則事件において当該官吏の告発は公訴提起の有効条件であり、勾留状には刑事訴訟規則第七〇条によ るだけで、右第何号の事由によるものであるかが明示されていないことは所論のとおりである。 而して間接国税犯則事件において当該官吏の告発は公訴提起の有効条件であり、勾留状には刑事訴訟規則第七〇条によつて刑訴法第六〇条第一項各号に定める事由を記載しなければならないことは所論のとおりである<要旨第一>が、間接国税犯則事件における告発は刑事訴訟法に基ずく告発手続ではなく、国税犯則取締法によつて為され</要旨第一>る特別の告発手続であるところ、同法には書面による告発の要式につき特別の規定は存しないのみならず、刑事訴訟法においても格別告発の要式について規定するところはないのであるから、要するに右告発は犯罪事実を申告し、その捜査および訴追を求める意思が表示されていれば足りるのであつて、国税犯則取締法第一三条第一項第何号の事由によるものであるかということは必ずしも明示することは要しないものと解せられるのである。 而して本件告発者は被告人Cのアルコール専売法、酒税法違反の事実を申告し、その捜査及び訴追を求める意思が表示されているのであるから、何等違法のものとは認められない。 その二について本件起訴状及び告発書(追告発書を含む)の記載によれば、昭和三〇年一一月一六日附起訴状中第一の(一)は「被告人Cは昭和三〇年六月頃九二度位のアルコール二石六斗余を製造した」旨であるのに、これに対応する昭和三〇年六月二八日附告発書には「被告人Cは昭和三〇年六月七日頃九二度のアルコール一石九斗を製造した」旨であり、又昭和三一年二月一日附起訴状第二の(一)は「被告人CはAと共謀して、昭和三〇年二月中旬(論旨には昭和三〇年五月中旬とあるけれども、第二の(一)は上記のとおりで、五月は誤記と認める。)雑酒八斗二升を製造した」旨であるのに、これに対応する昭和三〇年一二月二七日附 して、昭和三〇年二月中旬(論旨には昭和三〇年五月中旬とあるけれども、第二の(一)は上記のとおりで、五月は誤記と認める。)雑酒八斗二升を製造した」旨であるのに、これに対応する昭和三〇年一二月二七日附追告発書には「被告人CはAと共謀して昭和三〇年二月中旬から同年五月二四日頃迄の間に九回に亘り、雑酒四石三斗二升四合、焼酎一一石三斗一升六合を製造した」旨であつて、雑酒一回の製造割合は約四斗六升であることは所論のとおりである。 而して、間接国税犯則事件において、当該収税官吏の告発は訴訟条件であることは前述のとおりであるが、犯罪事実の同一性とは刑法犯、行政犯の別なく、その犯人の犯した犯罪の基本となる事実の同一か否かによつて決せられるものと解するのを相当とし、その日時、場所、手段、方法、数量等が、総て正確に一致しなければ犯罪事実の同一性がないものとは謂えないのである。 本件についてこれを見れば、前者は被告人Cが特許、許可又は政府の委託を受けず、昭和三〇年六月頃九二度のアルコールを製造したということ、後者は被告人Cが免許なく、昭和三〇年二月中旬雑酒を製造したということが夫々基本となる事実であるから、これが符合していれば、その製造した数量に夫々所論の如き多少があつても犯罪事実の同一性は存するものと認められるのである。従つて、右本件公訴事実と告発の事実とは同一性の存するものと認めるべきものである。 <要旨第二>なお仮に事実の同一性はあつても、告発の数量を超過して公訴を提起することが、適法なりや否につき按ず</要旨第二>るに、一個の犯罪事実の一部に対する告発もその全部について効力を生ずるものと解すべきものであつて(昭和二八年(あ)第二二一九号事件、昭和三〇年一一月一日最高裁判所第三小法廷決定参照)、告訴、公訴の提起につき、事実不可分の原則が認められる如く の全部について効力を生ずるものと解すべきものであつて(昭和二八年(あ)第二二一九号事件、昭和三〇年一一月一日最高裁判所第三小法廷決定参照)、告訴、公訴の提起につき、事実不可分の原則が認められる如く、告発についても事実の同一性の存する限り事実不可分の原則を認めるのを相当とするから、起訴状記載の数量が、告発書記載の数量より所論の如く多量であつても、告発はその全部に及んでいるものと認められる。 以上のとおりで、本件告発は無効のものとは認められず、この告発に基ずいて為された本件公訴の提起は元より適法のものである。従つて、原判決には所論の如く不注な公訴を受理したという違法の存するものとは認められず、論旨は理由がない。 (その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事山本謹吾判事渡辺好人判事石井文治)

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