平成26(行ウ)9

裁判年月日・裁判所
平成28年2月2日 広島地方裁判所
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判決文本文24,789 文字)

主文 1 本件訴えのうち,厚生労働大臣に対して確認の義務付けを求める部分を却下する。 2 原告のその余の訴えに係る請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 厚生労働大臣は,下記期間(以下「本件各期間」という。)が,原告が厚生年金保険の被保険者資格を有していた期間であることを確認せよ。 記昭和23年6月1日から昭和26年6月30日まで昭和26年9月1日から昭和28年10月31日まで昭和29年1月1日から昭和31年3月31日まで 2 被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成26年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,原告が,厚生労働大臣に対し,本件各期間は原告が厚生年金保険の被保険者資格を有していた期間であることについて,平成26年法律第64号による改正前の厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律(以下,上記改正前のものを「納付特例法」という。)1条1項の確認をすることの義務付けを求めるとともに(以下「本件義務付けの訴え」という。),原告が平成19年11月19日から計6回にわたり行った年金記録の確認申立てに対し,島根地方第三者委員会(以下「本件委員会」という。)が,いずれも原告の年金記録を訂正する必要があるとはいえないと判断したことが違法であり,原告はこれにより何度も申立てを余儀なくされ,また,長期にわた って原告が本来受け得る年金を受給できなかったことにより精神的損害を受けたと主張して,国家賠償法1条に基づき,慰謝料100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分による遅延損害金の支払を請求している事案である。 り精神的損害を受けたと主張して,国家賠償法1条に基づき,慰謝料100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分による遅延損害金の支払を請求している事案である。 2 関係法令納付特例法ア 1条1項本文国家行政組織法8条に規定する機関であって年金記録に関する事項の調査審議を専門的に行うものの調査審議の結果として,厚生年金保険法27条に規定する事業主が,同法84条1項又は2項の規定により被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,当該被保険者に係る同法82条2項の保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合(当該保険料(以下「未納保険料」という。)を徴収する権利が時効によって消滅する前に同法27条の規定による届出又は同法31条1項の規定による確認の請求があった場合を除き,未納保険料を徴収する権利が時効によって消滅している場合に限る。)に該当するとの当該機関の意見があった場合には,厚生労働大臣は,当該意見を尊重し,遅滞なく,未納保険料に係る期間を有する者(以下「特例対象者」という。)に係る同法の規定による被保険者の資格の取得及び喪失の確認又は標準報酬月額若しくは標準賞与額の改定若しくは決定(以下「確認等」という。)を行うものとする。 イ 1条2項厚生労働大臣は,特例対象者に係る確認等を行ったときは,厚生年金保険法28条の規定により記録した事項の訂正を行うものとする。 ウ 1条3項前項の訂正が行われた場合における厚生年金保険法75条ただし書の規 定(他の法令において引用し,又は準用する場合を含む。)の適用については,未納保険料を徴収する権利が時効によって消滅する前に同法27条の規定による届出があったものとし,厚生労働大臣が確認等を行った特例対象者の厚生 いて引用し,又は準用する場合を含む。)の適用については,未納保険料を徴収する権利が時効によって消滅する前に同法27条の規定による届出があったものとし,厚生労働大臣が確認等を行った特例対象者の厚生年金保険の被保険者であった期間について同法による保険給付(これに相当する給付を含む。以下同じ。)を行うものとする。 厚生年金保険法(平成26年法律第64号による改正前のもの。以下同じ。)ア 18条1項本文被保険者の資格の取得及び喪失は,厚生労働大臣の確認によって,その効力を生ずる。 イ 31条1項被保険者又は被保険者であった者は,いつでも,18条1項の規定による確認を請求することができる。 ウ 75条保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは,当該保険料に係る被保険者であった期間に基づく保険給付は,行わない。但し,当該被保険者であった期間に係る被保険者の資格の取得について27条の規定による届出又は31条1項の規定による確認の請求があった後に,保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものであるときは,この限りでない。 総務省組織令(平成27年政令第234号による改正前のもの)ア附則23条1項当分の間,各管区行政評価局,沖縄行政評価事務所及び行政評価支局に,それぞれ一の年金記録確認地方第三者委員会(以下「地方委員会」という。)を置く。 イ附則23条2項地方委員会は,総務大臣の求めに応じ,年金記録に係る苦情のあっせんに関する調査を行い,当該調査の結果及び基本方針に基づき,あっせん案 を作成する。 3 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)原告は,昭和6年○月○日生まれの男性であり,とび職として働いていた。 社会保険庁長官は,平成8年2月20日,原告に係る老齢基礎年金・老 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)原告は,昭和6年○月○日生まれの男性であり,とび職として働いていた。 社会保険庁長官は,平成8年2月20日,原告に係る老齢基礎年金・老齢厚生年金(厚生年金保険の被保険者となる期間は299月)を裁定した(弁論の全趣旨)。 原告は,平成19年11月19日付けで,島根社会保険事務局出雲事務所に対し,別紙1記載の各期間につき,原告の年金記録に係る確認を申し立てる旨の申立書を提出した(以下,この申立てを「第1回申立て」という。)。 本件委員会は,第1回申立てについての審議を経て,原告の年金記録の訂正が必要とまではいえないとの結論に至り,平成21年3月11日,原告に対し,年金記録の訂正のあっせんは行わないと判断した旨の通知がされた(乙10,弁論の全趣旨)。 社会保険庁長官は,平成21年6月18日,原告に係る昭和26年7月12日から同年9月21日までの被保険者期間が判明したことから,老齢厚生年金の裁定を訂正した。この結果,原告の厚生年金保険の被保険者期間は301月となった(弁論の全趣旨)。 原告は,平成22年2月16日付けで,日本年金機構出雲年金事務所(以下「出雲年金事務所」という。)に対し,別紙2記載の各期間につき,原告の年金記録に係る確認を申し立てる旨の申立書を提出した(以下,この申立てを「第2回申立て」という。)。なお,第1回申立てと第2回申立ての内容は,別紙1の9記載の期間が削除されたこと,勤務していた出張所の名称について若干の訂正があるほかはほぼ同一である。 本件委員会は,第2回申立てについての審議を経て,原告の年金記録の訂正が必要とまではいえないとの結論に至り,同年8月11日,原告に対し,年金記録の訂正のあっせんは行わないと判断した旨の通知がされた(乙11)。 ,第2回申立てについての審議を経て,原告の年金記録の訂正が必要とまではいえないとの結論に至り,同年8月11日,原告に対し,年金記録の訂正のあっせんは行わないと判断した旨の通知がされた(乙11)。 原告は,平成22年8月16日付けで,出雲年金事務所に対し,別紙3記載の各期間につき,原告の年金記録に係る確認を申し立てる旨の申立書を提出した(以下,この申立てを「第3回申立て」という。)。なお,第2回申立てと第3回申立ての内容は,勤務していた出張所及びその期間について,重なっている部分も一部あるものの,概ね異なっている。 本件委員会は,第3回申立てについての審議を経て,原告の年金記録の訂正が必要とまではいえないとの結論に至り,平成23年1月19日,原告に対し,年金記録の訂正のあっせんは行わないと判断した旨の通知がされた(乙12)。 原告は,平成23年3月23日付けで,出雲年金事務所に対し,別紙4記載の各期間につき,原告の年金記録に係る確認を申し立てる旨の申立書を提出した(以下,この申立てを「第4回申立て」という。)。なお,第4回申立ての内容は,第2回申立てとほぼ同一であり,別紙4の1記載の申立期間の始期のみ異なっている。 本件委員会は,第4回申立てについての審議を経て,原告の年金記録の訂正が必要とまではいえないとの結論に至り,同年6月1日,原告に対し,年金記録の訂正のあっせんは行わないと判断した旨の通知がされた(乙13)。 原告は,平成23年6月20日付けで,出雲年金事務所に対し,第4回申立てと同一の内容で,原告の年金記録に係る確認を申し立てる旨の申立書を提出した(以下,この申立てを「第5回申立て」という。)。 本件委員会は,第5回申立てについての審議を経て,原告の年金記録の訂正が必要とまではいえないとの結論に至り,同年 認を申し立てる旨の申立書を提出した(以下,この申立てを「第5回申立て」という。)。 本件委員会は,第5回申立てについての審議を経て,原告の年金記録の訂正が必要とまではいえないとの結論に至り,同年7月21日,原告に対し,年金記録の訂正のあっせんは行わないと判断した旨の通知がされた(乙14)。 原告は,平成23年8月29日付けで,出雲年金事務所に対し,第4回及び第5回申立てと同一の内容で,原告の年金記録に係る確認を申し立てる旨の申立書を提出した(以下,この申立てを「第6回申立て」といい,第1回 から第6回までの申立てを併せて「本件各申立て」という。)。 本件委員会は,第6回申立てについての審議を経て,原告の年金記録の訂正が必要とまではいえないとの結論に至り,同年10月26日,原告に対し,年金記録の訂正のあっせんは行わないと判断した旨の通知がされた(乙15)。 本件訴訟に係る訴状副本は,平成26年3月24日,被告に送達された。 原告の本件各申立て及び本件訴訟に係る訴状記載の勤務状況(期間,場所)の概要は,別紙「勤務状況(原告主張)」のとおりである。 4 争点及び当事者の主張厚生労働大臣が本件義務付けの訴えに係る処分を行う権限を有しているか(争点1)。 (原告の主張)厚生労働大臣は,事業主が被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,当該被保険者に係る保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合に該当するとの第三者委員会の意見(以下「該当意見」という。)を受けた総務大臣のあっせんがなくても,以下の理由により納付特例法1条1項に基づく確認等を行う権限を有する。 ア年金記録に係る申立てに対するあっせんに関する受付事務手続要領には,第三者委員会が年金記録の訂正は必要ないと判断した場合であっても 由により納付特例法1条1項に基づく確認等を行う権限を有する。 ア年金記録に係る申立てに対するあっせんに関する受付事務手続要領には,第三者委員会が年金記録の訂正は必要ないと判断した場合であっても,総務大臣が厚生労働大臣に対してその旨の通知を行うこととなっている。 イ第三者委員会の該当意見及び総務大臣のあっせんがない限り厚生労働大臣が確認等を行えないと解することは,あっせん制度が,多数ある年金記録に係る申立てに対応できるように,かつ国民の立場に立って事案に即した柔軟な判断をするために設けられたという趣旨に反する。 ウ該当意見がなければ厚生労働大臣が確認等を行えないとすると,年金記録に係る申立てをした国民が,行政訴訟においてこれを争うことができなくなる。 エ納付特例法は,納付期限が過ぎた案件であっても保険料の納付の有無に問題がある事案について厚生労働大臣が判断するという権限を与えたことが重要である。保険料の納付の有無を判断し保険給付を認めるかを判断する権限は,本来的には厚生労働大臣にあるから,該当意見がある場合にしか厚生労働大臣が確認等をできないという変則的な権限であれば,納付特例法にそのように定める必要がある。しかし,同法1条1項は,第三者機関の該当意見があった場合に「限り」,「のみ」といった限定の文言を付していない。 オ納付特例法の趣旨は,保険金を支払っているのに年金を受給できない国民を広く救済するところにあるのであるから,厚生労働大臣は,該当意見がなくても,救済すべきケースを把握した場合は,確認等を行うべきである。 カ以上から,納付特例法は,第三者委員会の該当意見がない場合であっても,厚生労働大臣が確認等を行うことを許容している。 (被告の主張)原告は,納付特例法1条1項に基づく厚生労働大臣の確認を カ以上から,納付特例法は,第三者委員会の該当意見がない場合であっても,厚生労働大臣が確認等を行うことを許容している。 (被告の主張)原告は,納付特例法1条1項に基づく厚生労働大臣の確認を求めているところ,同法その他の関係法令において,厚生労働大臣に対して上記確認を求める法令上の申請権を認める余地はないから,本件義務付けの訴えは,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条6項1号の非申請型義務付けの訴えと解すべきである。 そして,納付特例法1条1項の文理からは,厚生労働大臣が確認等をなし得るのは,第三者委員会の該当意見があった場合に限られるし,納付特例法の制定目的に照らせば,上記の文理どおりに解釈すべきである。 本件において,第三者委員会の該当意見はないから,厚生労働大臣は納付特例法1条1項に基づく確認等を行う権限を有しないものであり,行政庁に対して権限のない行為の義務付けを求める訴えとなるから,訴訟要件を欠い て不適法である。 「重大な損害」(行訴法37条の2第1項)を生ずるおそれがあるか(争点2)。 (原告の主張)ア年金は,労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とするものである。年金に関わる債権は,受給者及びその家族の生活を根幹から支えている。単なる金銭のみの問題と,年金を同一視することはできない。 イまた,本件において生じた損害が主に金銭的損害であるとしても,それのみで「重大な損害」に当たらないと解すべきではないし,損害の重大性を判断するに当たっては,損害の程度ではなく,原告が被保険者期間の資格を有していた期間に係る保険給付を得られないという上記損害の原因が国にあることを重視すべきである。 ウ本件各期間の標準報酬月額を1万円とすると,老齢厚生年金額が年39万0600 保険者期間の資格を有していた期間に係る保険給付を得られないという上記損害の原因が国にあることを重視すべきである。 ウ本件各期間の標準報酬月額を1万円とすると,老齢厚生年金額が年39万0600円増加するから,年金の支給が始まった60歳から83歳までの未支給額は計937万4400円となる。また,原告が今後も生存する限り,未支給額が年39万0600円ずつ増額し続けている。 このように増え続ける損害を是正するためには,損害賠償による救済では不十分であり,「重大な損害」がある。 (被告の主張)本件各期間について確認等がされないことにより,原告に生じ得る損害とは,上記期間に係る保険給付が得られないという金銭的損害にほかならないところ,同損害は金銭による賠償によって回復し得るものであるから,「重大な損害」があるとはいえない。 原告が,納付特例法1条1項に定める「事業主が被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,当該被保険者に係る保険料を納 付する義務を履行したことが明らかでない場合」に当たるか(争点3)。 (原告の主張)原告は,A株式会社(以下「A」という。)の各出張所において,同僚と同じくとび職に従事していたところ,原告以外の同僚は厚生年金保険に加入していた。当時,Aから「年金は将来役に立つ」との説明があり,給与から厚生年金保険料が控除された額の給与を受け取っていた。 B富山工場出張所で原告とともに働いていた同僚は厚生年金を受給しているのに,原告は当該期間分の厚生年金を受給していないから,出張所ごとに厚生年金保険料の取扱いが異なっていたとするAの主張は誤りである。 したがって,原告が本件各期間に厚生年金保険料を控除されていたことは明らかに不合理ではなく,一応確からしいといえるから,納付特例法1条1 金保険料の取扱いが異なっていたとするAの主張は誤りである。 したがって,原告が本件各期間に厚生年金保険料を控除されていたことは明らかに不合理ではなく,一応確からしいといえるから,納付特例法1条1項の場合に当たる。 (被告の主張)争う。 本件委員会の判断について国家賠償法上の違法があったか(争点4)。 (原告の主張)原告は,本件委員会の調査審議において,本件各期間中,Aの出張所においてとび職人としてAの建設工事に勤務していたことについて,同僚の証言,当時の写真や日記で明らかにし,給与から厚生年金保険料が引かれていたことも証言した。したがって,本件各申立ては,以下のとおり,「明らかに不合理とはいえず,一応確からしい」ものであったのに,本件委員会はいずれも年金記録の訂正が必要とはいえないと判断した。 これは,国家賠償法上違法である。 ア原告が勤務していたAは,戦後間もなくから厚生年金をかけていた福利厚生に厚い大企業である。本件委員会の調査によると,Aは出張所ごとに厚生年金保険料の控除の有無が異なっていたとのことであるが,A出張所 はAという会社と一体であると考えるのが合理的であり,出張所ごとに厚生年金保険対象事業所であるか否かを区別するのは不合理である。 出張所を移動する従業員も存在するため,出張所ごとに厚生年金保険料の控除の有無を区別すると給与の支払が煩雑になるし,Aが出張所ごとに厚生年金の取扱いを差別する理由もない。本件委員会には,上記のようなAの取扱いを示す資料は提出されていなかったのであるから,出張所ごとに厚生年金保険料の取扱いを区別していなかったと考えるのが合理的である。 イ原告と同時期にB富山工場出張所で勤務していたC及びDは厚生年金を受給しているから,厚生年金保険料の控除を出張所ごとに区別し 生年金保険料の取扱いを区別していなかったと考えるのが合理的である。 イ原告と同時期にB富山工場出張所で勤務していたC及びDは厚生年金を受給しているから,厚生年金保険料の控除を出張所ごとに区別していたとはいえない。 ウ原告は,昭和26年7月12日から同年9月21日までの期間について,Eにおいて厚生年金をかけていたことが判明したのであり,原告が本件各期間にとび職人として働いていたことや厚生年金をかけていたことが推認できる。 エ仮に出張所ごとに厚生年金保険料控除の有無が異なるとすれば,出張所において現場の企業と労働者の間で個別の雇用契約が締結されていることが考えられる。そうすると,そのような個別の雇用契約において労働者が雇用保険に加入している可能性を否定できない。また,原告が従事していたのは,労働災害事故が発生しやすい危険な業務であるから,Aはそのような事故に備えて原告を含む従業員らを雇用保険に加入させていた可能性が極めて高い。 にもかかわらず,本件委員会はこの事実を無視している。 オ昭和27年2月から同年11月までの期間においては,原告の同僚15人中13人について厚生年金保険被保険者記録が認められている。このように,多数の者の年金記録の存在が認められている事実があるのに,本件 委員会は上記事実を無視している。 (被告の主張)本件委員会は,本件各申立てに対し,原告の申立て内容を十分に斟酌し,検討を重ねた上で判断を行った。 原告は,本件各申立てにおいて,申立てに係る全ての期間について,A本社の採用ではなく,勤務地を移動する都度,同社各出張所で採用された旨供述していた。また,Aは,本件委員会の調査に対し,全ての申立期間について,当時の資料を保管していないため詳細は不明であるが,当時,同社各出張所の現地従業員は各 する都度,同社各出張所で採用された旨供述していた。また,Aは,本件委員会の調査に対し,全ての申立期間について,当時の資料を保管していないため詳細は不明であるが,当時,同社各出張所の現地従業員は各出張所において採用し,厚生年金保険の加入についても同社の本社において厚生年金保険に加入させてはおらず,各出張所において手続を行っており,厚生年金保険に加入させていない現地従業員もいた旨回答した。 本件委員会は,上記回答を踏まえて調査を行ったが,原告の申立期間について当該出張所が厚生年金保険の適用事業所ではない,適用事業所であったとしても当該事業所に係る健康保険厚生年金保険被保険者名簿に原告の氏名の記載がなく,また健康保険の整理番号に欠番もない,又は原告が当該事業所において勤務していたことが推認できる資料が見当たらないなどの事情により,原告が厚生年金保険料を事業主によって給与から控除されていたことについて,一応確からしいと判断することはできなかった。 したがって,本件委員会の判断に国家賠償法上の違法はない。 本件委員会の判断に違法があったとして,本件委員会に過失があったか(争点5)。 (原告の主張)「社会通念に照らし,明らかに不合理ではなく,一応確からしい」という基準は,証明度50から60パーセントで十分とする基準であるが,本件委員会は,物的証拠に拘泥して,原告が勤務していた出張所が厚生年金保険の 適用事業者名簿に記載されているか,厚生年金保険料が給与から天引きされていたとわかる資料があるか,といったことを基準として誤った判断をしており,このような判断には過失がある。 (被告の主張)争う。 原告の損害額はいくらか(争点6)。 (原告の主張)原告は,本件委員会の判断により,本来受け得る年金を受給できないだけでな おり,このような判断には過失がある。 (被告の主張)争う。 原告の損害額はいくらか(争点6)。 (原告の主張)原告は,本件委員会の判断により,本来受け得る年金を受給できないだけでなく,何度も記録訂正の申立てを余儀なくされた。そして,原告が本来受け得る年金を受給できない期間が長期にわたっていることからすると,このような著しい精神的苦痛に対する慰謝料は,100万円を下らない。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(厚生労働大臣の権限の有無)について証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 厚生年金保険法75条は,保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは,当該被保険者であった期間に係る被保険者の資格の取得について同法27条の規定による届出又は同法31条1項の規定による確認の請求があった後に,保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものであるときを除き,その保険料にかかる被保険者であった期間に基づく保険給付は行わない旨を規定していた。これは,厚生年金保険制度が社会保険方式を採用し,保険事故発生以前の保険料納付等の実績に基づいて保険給付を実施する制度であることに基づくものである。この理屈は事業主が被保険者の厚生年金保険料を給与から源泉控除していた場合であっても同様である。しかしながら,自らは給与から厚生年金保険料を控除されていたのに,事業主がその保険料 の納付をしていなかったため,当該期間に基づく保険給付を受けることができない被保険者を救済する必要があることから,厚生年金保険法75条の規定を維持しながら,例外的に上記のような場合における被保険者を救済するために納付特例法が制定されたものである。 納付特例法1条1項によれば,第三者委員会の調査審議の結果とし 生年金保険法75条の規定を維持しながら,例外的に上記のような場合における被保険者を救済するために納付特例法が制定されたものである。 納付特例法1条1項によれば,第三者委員会の調査審議の結果として,事業主が被保険者の負担すべき保険料を控除した事実があるにもかかわらず,当該被保険者に係る保険料を納付する義務を履行したことが明らかでない場合に該当するという意見(該当意見)「があった場合には」,厚生労働大臣は,その意見を尊重して,確認等を行うものとされており,この場合には,同条3項により,厚生年金保険法75条ただし書の適用については,未納保険料を徴収する権利が時効によって消滅する前に同法27条の規定による届出があったものとし,厚生労働大臣が確認等を行った特例対象者の厚生年金保険の被保険者であった期間について同法による保険給付を行うとされている。 以上の納付特例法の制定経緯及び条文の構成からすると,納付特例法は,第三者委員会の該当意見がある場合を対象として,厚生年金保険法75条の例外として救済を定めた法律というべきであり,厚生労働大臣は,第三者委員会の該当意見がない場合には,納付特例法1条1項に基づく確認等を行うことはできないと解するのが相当である。 そうすると,本件については,第三者委員会の該当意見は存在しないから,厚生労働大臣は,原告について納付特例法1条1項に基づく確認をすることはできないというべきである。 これに対し,原告は,厚生労働大臣は権限を有すると主張するので検討する。 ア原告は,第三者委員会が年金記録の訂正は必要ないと判断した場合であっても,総務大臣がその旨を厚生労働大臣に通知するという受付事務手続 要領(乙3)があることを指摘し,これは,該当意見がなくても厚生労働大臣が独自に確認等を行うことができ 判断した場合であっても,総務大臣がその旨を厚生労働大臣に通知するという受付事務手続 要領(乙3)があることを指摘し,これは,該当意見がなくても厚生労働大臣が独自に確認等を行うことができるようにするためであると主張する。 しかしながら,上記受付事務手続要領は,年金記録訂正の申立てがあった場合には,総務大臣が同申立てについて年金記録訂正の要否を厚生労働大臣に通知するという事務手続を定めたものにすぎず,上記すものではない。 イ原告は,該当意見がない場合は厚生労働大臣が確認等をする権限がないと解すると,あっせん制度の趣旨に反すると主張するが,上記とおり,納付特例法は,厚生年金保険法75条の例外としての救済を定めたものであるから,上記原告の主張は採用できない。 ウ原告は,①該当意見がない場合は厚生労働大臣が確認等をする権限がないと解すると,年金記録に係る申立てを行った国民が行政訴訟において争うことができなくなる,②納付特例法1条1項の文言は,該当意見があった場合だけに限定しているわけではない,③国民を広く救済するという納付特例法の趣旨からすれば,該当意見が存在する場合に限定すべきではないと主張する。 しかし,上記①については,権限を認めるに足りる理由ではない(なお,原告は,本件各期間を被保険者期間としなかった裁定処分に対して,その取消しを求める抗告訴訟を提起することができた。)。上記②については,上記趣旨に照らして失当である。上記③については,厚生年金保険法75条の特例としての納付特例法の趣旨は上記 したがって,本件義務付けの訴えは,厚生労働大臣に対して権限のないことの義務付けを求めているから,争点2及び3について判断するまでもなく,訴訟要件を欠いて不適法である。 2 争点4(国家賠償法上の違法の有無)について 付けの訴えは,厚生労働大臣に対して権限のないことの義務付けを求めているから,争点2及び3について判断するまでもなく,訴訟要件を欠いて不適法である。 2 争点4(国家賠償法上の違法の有無)について 第1回申立てについてア証拠(乙10)及び弁論の全趣旨によれば,第1回申立てについて,以下の事実が認められる。 原告は,第1回申立てにおいて,別紙1記載の各期間に,同記載の各出張所等でとび職人として就労し,給与から厚生年金保険料が控除されていたと主張した。 別紙1の1から8まで記載の各期間の一部において,原告が,Aの各出張所等において勤務していたことをうかがわせる原告の元同僚の供述があった。 しかしながら,社会保険事務所が保管するA本社及び同社各出張所等の健康保険厚生年金保険被保険者名簿には,上記各期間において原告の氏名は記載されていなかった。原告の元同僚2人も,申立期間の一部においてのみ厚生年金保険に加入していたことが確認された。 本件委員会の調査に対し,Aは,上記各期間について,関係書類を保存しておらず,原告の申立てどおり厚生年金保険加入の届出及び厚生年金保険料の控除を行ったか否か不明であると回答した。また,上記各期間において,原告が厚生年金保険料を控除されていた事実を確認できる給与明細書等の資料は存在しなかった。 別紙1の2から5まで記載の各期間については,社会保険事務所が保管する厚生年金保険適用事業所名簿により,当該期間におけるAの各出張所等が適用事業所であったことが確認できなかった。また,原告の元同僚にも,原告の勤務実態や厚生年金保険料の控除状況について詳細な記憶がなかった。 別紙1の6及び7記載の各期間について,原告が申し立てたAB富山工場は厚生年金保険の適用事業所名簿に該当する事業所に記載 ,原告の勤務実態や厚生年金保険料の控除状況について詳細な記憶がなかった。 別紙1の6及び7記載の各期間について,原告が申し立てたAB富山工場は厚生年金保険の適用事業所名簿に該当する事業所に記載されていなかった。そこで,本件委員会が,名称の似ているB工業株式会社富山 工場に確認すると,上記各期間の当時は,正社員以外の者の勤務状況は不明であり,原告は出向の扱いであったと思われるため,厚生年金保険料は控除していないと思うとの回答があった。 社会保険事務所が保管するB工業株式会社の厚生年金保険適用事業所名簿において,原告の氏名は確認できなかった。また,社会保険事務所が保管する当該事業所の記録から被保険者であることが確認できた4人に確認したところ,原告の氏名に記憶がないとの回答があった。 別紙1の8記載の期間について,A株式会社Eは,厚生年金保険の適用事業所名簿上に記載されていなかった。そこで,本件委員会が,名称が似ているE(後のF株式会社E´所。以下,同社を「E」といい,A株式会社Eについては「AE」という。)に照会したところ,労働者名簿によると原告は昭和26年7月12日から同年9月21日までの期間については在籍していたとの回答を得たほか,社会保険庁の保管する基礎年金番号に係る記録に統合する整理も行われていた。 しかしながら,同期間以外の期間については,社会保険事務所が保管するEの厚生年金保険適用事業所名簿において,原告の氏名が確認できなかった。また,社会保険事務所が保管する当該事業所の記録によって被保険者であったことが確認できた4人は,原告の氏名に記憶がないと回答した。 社会保険事務所の記録によると,Gの厚生年金保険新規適用年月日は昭和40年9月1日であり,別紙1の9記載の期間について適用事業所ではなかった。Gの た4人は,原告の氏名に記憶がないと回答した。 社会保険事務所の記録によると,Gの厚生年金保険新規適用年月日は昭和40年9月1日であり,別紙1の9記載の期間について適用事業所ではなかった。Gの経理担当者は,本件委員会に対し,Gが適用事業所になる以前は保険料を控除していなかったと思う旨回答した。 また,別紙1の9記載の期間について,原告が厚生年金保険料を給与から控除されていた事実を確認できる給与明細書等の資料は確認できなかった。 なお,原告は,本件各申立てのうちいずれにおいてかは明らかではないが,本件委員会に対して以下の資料を提出した。 a 写真2枚原告を含む数人の作業中の人物が写り,裏に「B富山工場富山県a町(当時) 昭26.5頃」と書き込まれたもの(甲7の①)及び20人が写った集合写真で,裏に「昭26.7 B 富山県a町(当時)」と書き込まれたもの(甲7の②)。 b 「連絡書」と題する書面(H名義)(甲8)原告が,昭和23年当時AI出張所以来昭和29年AE出張所まで,Aの従業員であったことを証明する内容のものcD作成の書面(甲9)Dが,昭和24年8月から昭和25年3月頃まで,J,富山県b及びE´で働き,同年4月頃からB工場で働いている途中で原告が帰郷したという内容のものdC作成の書面(甲10)Cと原告が昭和23年から昭和29年までAの出張所で一緒に仕事をしたことを証明する内容のものeHの日記(甲11)昭和22年4月から昭和27年11月までのものであり,原告の名が記載されている箇所がある。 第1回申立てに係る各現場・出張所ごとの調査結果の概要は,別紙「一覧表」の「第1回申立て」欄に記載のとおりである。 イ上記アの事実をもとに検討する(原告の主張については,本件各申立て全 る。 第1回申立てに係る各現場・出張所ごとの調査結果の概要は,別紙「一覧表」の「第1回申立て」欄に記載のとおりである。 イ上記アの事実をもとに検討する(原告の主張については,本件各申立て全体に関するものとして後に検討することとする。)。 別紙1の1記載の期間について原告は,別紙1の1記載の期間開始時において16歳であるが,昭和 22年11月1日に施行された女子年少者労働基準規則(同年10月31日労働省令第8号)において,「高さ5メートル以上の吊足場若しくは棒はりの上又はこれに準ずる高所における業務」には,満18歳に満たない者を就かせてはならない旨規定されていた(弁論の全趣旨)。原告が,その申立てどおりとび職として索道の建設工事及び高架場所での作業に従事していたとすると,上記規則の施行日から原告が満18歳となる昭和24年○月○日までは,上記規則に抵触する就業形態がとられていたこととなる。このような法令違反行為が行われていたことは,当該事業所が,法令に違反し,原告を厚生年金保険に加入させず厚生年金保険料を控除していなかったことを推認させる事情ということができ,厚生年金保険料を控除していたことが一応確からしいとはいえない。 別紙1の2から5まで記載の各期間について上記アから,上記期間において原告がAのいずれかの出張所等において就労していたことは推認することができる。 しかしながら,上記期間において,厚生年金保険適用事業所名簿により原告の申し立てたAの各出張所等が適用事業所であったことが確認できなかったこと,原告は,上記期間について,A本社及び各出張所の健康保険厚生年金保険被保険者名簿に記載されていなかったことからすると,事業主が原告の給与から厚生年金保険料を控除していたことまで推認することはできず,一応 ,上記期間について,A本社及び各出張所の健康保険厚生年金保険被保険者名簿に記載されていなかったことからすると,事業主が原告の給与から厚生年金保険料を控除していたことまで推認することはできず,一応確からしいとはいえない。 別紙1の6及び7記載の各期間について上記アのとおり,上記期間について,原告が申し立てている出張所と似た名称のB工業株式会社富山工場については,適用事業所であるものの,健康保険厚生年金保険被保険者名簿において原告の氏名が確認できない。さらに,被保険者であることが確認できた4人は原告の氏名に 記憶がないと回答している。その上で,正社員ではない従業員については厚生年金保険料を控除していないと思うとの回答があることに照らせば,厚生年金保険料を控除していたと推認することができず,一応確からしいともいえない。 さらに,仮に,甲7の①の写真(上記アa)が第1回申立てに提出されていたとして,かつ,裏面の書き込みの内容が信用できるとすると(「(当時)」との記載があることからすれば,書き込みがされたのは撮影から相当期間の経過後であると推認される。),具体的な期間は特定できないながら,原告がB工業株式会社富山工場で就労していたことは推認することができる。しかしながら,上記と同様の理由により,就労期間において,事業主が給与から厚生年金保険料を控除していたことまで推認することはできず,一応確からしいともいえない。 別紙1の8記載の期間について上記アのとおり,原告がEに在籍していたことが判明した昭和26年7月12日から同年9月21日まで以外の期間については,Eの厚生年金保険適用事業所名簿に原告の氏名の記載がなく,被保険者であったことが確認できた者は,原告の氏名に記憶がないというのであるから,原告が別紙1の8記載 年9月21日まで以外の期間については,Eの厚生年金保険適用事業所名簿に原告の氏名の記載がなく,被保険者であったことが確認できた者は,原告の氏名に記憶がないというのであるから,原告が別紙1の8記載の期間においてEにおいて就労していたこと及び事業主が給与から厚生年金保険料を控除していたことのいずれについても一応確からしいということはできない。 別紙1の9記載の期間について上記アのとおり,上記期間についてGは適用事業所ではない。そうすると,原告が上記期間においてGで就労していたとしても事業主が厚生年金保険料を控除していたことを推測することができず,一応確からしいともいえない。 第2回申立てについて ア証拠(乙11)及び弁論の全趣旨によれば,第2回申立てについて以下の事実が認められる。 別紙2の1から8まで記載の各期間の一部において,原告がAの各出張所に勤務していたことをうかがわせる原告の供述並びに原告が名前を挙げた同僚及び昭和26年7月にAB富山工場出張所で撮影されたとする集合写真に写った同僚の各供述があった。 他方,原告は,申立てに係る全ての期間について,A本社の採用ではなく,勤務地を移動する都度,同社各出張所で採用された旨供述した。 また,Aは,本件委員会の調査に対し,全ての申立期間について,当時の資料を保管していないため詳細は不明であるが,当時,同社各出張所の現地従業員は各出張所において採用し,厚生年金保険の加入についても同社の本社において厚生年金保険に加入させてはおらず,各出張所において手続を行っており,厚生年金保険に加入させていない現地従業員もいた旨回答した。 上記で氏名が特定できた18人のうち,Aに係る健康保険厚生年金保険被保険者名簿において同社の本社採用であるとうかがえる3人は,全て 厚生年金保険に加入させていない現地従業員もいた旨回答した。 上記で氏名が特定できた18人のうち,Aに係る健康保険厚生年金保険被保険者名簿において同社の本社採用であるとうかがえる3人は,全ての申立期間について,同社本社における厚生年金保険の被保険者記録が確認できた。残りの15人は,原告がAB富山工場出張所で就労していたと主張している別紙2の6記載の期間については,同社における厚生年金保険被保険者記録がなかった。また,別紙2の7記載の期間のうち,昭和27年2月から同年11月までの期間において,15人中13人は,岐阜県c町の同社出張所(AK現場)における厚生年金保険被保険者記録があるものの,うち4人は,当該出張所で原告と一緒に勤務していない旨供述した。 イ上記を前提として検討する。 別紙2の1記載の期間については,上記 申立てに関する判断を変更すべき事情は見当たらない。 別紙2の2から5まで記載の各期間については,上記あり,第1回申立てに関する判断を変更すべき事情は見当たらない。 別紙2の6及び7記載の各期間については,上記からすると,Aにおける保険加入の有無は,事業所ごとであると推測され,原告が指摘するB工業株式会社富山工場で勤務した同僚は,当該富山工場ではない本社や別の出張所において加入していたものと認められるため,上記同僚らとともに勤務していたとしても,上記富山工場における厚生年金保険料控除の存在を推測させるものではない。 したがって,上記期間について事業主が原告の給与から厚生年金保険料を控除していたことまでは推認することができず,一応確からしいとはいえない。 別紙2の8記載の期間については,上記と同様であり,第1回申立てに関する判断を変更すべき事情は見当たらない。 第3回申立てについて では推認することができず,一応確からしいとはいえない。 別紙2の8記載の期間については,上記と同様であり,第1回申立てに関する判断を変更すべき事情は見当たらない。 第3回申立てについてア証拠(乙12)及び弁論の全趣旨によれば,第3回申立てについて以下の事実が認められる。 原告は,第3回申立てに当たり,従前の申立てにおいて就労先と述べていた各事業所の全てにおいて,従前申し立てていた期間とは異なる期間に就労していたと主張を変更するとともに,新たな事業所として,AM出張所を追加した。 別紙3の1記載の期間については,厚生年金保険適用事業所名簿により,原告が申し立てているAI出張所が厚生年金保険の適用事業所となっていたことが確認された(もっとも,平成22年4月から平成23年6月1日までの期間においては,適用事業所でなかったことも確認された。)。また,原告が新たに提出した,上記期間の当時,同出張所におい て原告と一緒に勤務していた同僚が作成したとする勤務証明書によって,期間までは特定できないものの,原告が同出張所に勤務していたことは推測できた。ただし,同出張所に係る健康保険厚生年金保険被保険者名簿には,申立てに係る期間において原告の氏名は記載されておらず,健康保険の整理番号に欠番も存在しなかった。 上記期間の当時,厚生年金保険の被保険者記録が確認できた同僚1人は,原告は短期間でよく現場出張所間を異動していた旨供述した。 別紙3の2記載の期間については,厚生年金保険適用事業所名簿から,申立てに係る期間の当時から現在に至るまで,AL出張所が厚生年金保険の適用事業所でなかったことが確認され,原告の勤務実態や厚生年金保険料の控除について,同僚の供述や関連資料を得ることができなかった。 別紙3の3記載の期間につ 至るまで,AL出張所が厚生年金保険の適用事業所でなかったことが確認され,原告の勤務実態や厚生年金保険料の控除について,同僚の供述や関連資料を得ることができなかった。 別紙3の3記載の期間については,原告が新たに提出した昭和25年夏にAJ出張所の社員旅行で撮影されたとする集合写真によると,勤務期間までは特定できないものの,原告が同出張所に勤務していたことは推測できた。 ただし,厚生年金保険適用事業所名簿によれば,上記期間のうち昭和25年11月26日から昭和26年6月1日までの間を除いて,同出張所が厚生年金保険の適用事業所でなかったことが確認された。同出張所に係る健康保険厚生年金保険被保険者名簿には原告の氏名は記載されておらず,健康保険の整理番号に欠番もなかった。 別紙3の4記載の期間について,原告は申立期間を変更したものの,本件委員会は,同期間における原告の勤務実態や厚生年金保険料の控除の状況等について,同僚の供述や関連資料を得られなかった。また,上記期間から現在に至るまで,AB富山工場出張所は,厚生年金保険の適用事業所ではなかったことが確認された。 別紙3の5記載の期間について,原告は,AM出張所に勤務していたとして従前の申立て内容を変更した。厚生年金保険適用事業所名簿によれば,同出張所は,申立てに係る期間から現在に至るまで,厚生年金保険の適用事業所ではなかったことが確認された。 原告の同僚の日記には,昭和26年10月18日に同出張所に来た旨の記載があることから,原告が申立てに係る期間において同出張所に勤務していたことは推測できたものの,本件委員会は,原告の勤務実態や厚生年金保険料の控除の状況等について,同僚の供述や関連資料を得ることはできなかった。 別紙3の6記載の期間について,AK出張所は昭和2 たことは推測できたものの,本件委員会は,原告の勤務実態や厚生年金保険料の控除の状況等について,同僚の供述や関連資料を得ることはできなかった。 別紙3の6記載の期間について,AK出張所は昭和27年2月1日から同年12月28日まで厚生年金保険の適用事業所であったが,上記出張所に係る健康保険厚生年金保険被保険者名簿には,原告の氏名は記載されていなかった上,整理番号に欠番もなかった。 また,厚生年金保険の被保険者記録が確認できた5人の同僚は,原告を記憶していなかった上,原告が上記期間に同出張所に勤務していたことを確認又は推認できる資料は見当たらなかった。 別紙3の7記載の期間については,原告の勤務実態や厚生年金保険料の控除の状況等について,同僚の供述や関連資料を得られなかった上,上記上記期間についてAB富山工場出張所は,厚生年金保険の適用事業所ではなかったことが確認された。 別紙3の8記載の期間については,上記期間における原告の勤務実態や厚生年金保険料の控除の状況等について,同僚の供述や関連資料を得られなかった。また,厚生年金適用事業所名簿によれば,AE出張所は,上記期間から現在に至るまで厚生年金保険の適用事業所ではなかったことが確認された。 原告は,新たに,Aの作業現場を撮影したとする写真を提出したが, 当該写真は,撮影時期及び撮影場所が特定できなかった。 第3回申立てに係る各現場・出張所ごとの調査結果の概要は,別紙「一覧表」の「第3回申立て」欄に記載のとおりである。 イ上記アをもとに検討する。 別紙3の1,3及び6記載の各期間については,上記アのとおり,原告が申し立てた各出張所は,申立てに係る全部又は一部の期間において厚生年金保険の適用事業所であったが,健康保険厚生年金保険被保険者名簿には原告の氏 3及び6記載の各期間については,上記アのとおり,原告が申し立てた各出張所は,申立てに係る全部又は一部の期間において厚生年金保険の適用事業所であったが,健康保険厚生年金保険被保険者名簿には原告の氏名の記載がなく,原告が被保険者であり,厚生年金保険料を徴収されていたことの記録が存在していないことが認められる。 当該名簿については,健康保険の整理番号に欠番がないことを前提とし,さらに,厚生年金保険の被保険者記録が確認できた従業員は原告を記憶していなかったことに照らすと,上記名簿が正確ではないと疑わせる事情はない。 したがって,上記期間について事業主が原告の給与から厚生年金保険料を控除していたと推認することができず,一応確からしいとはいえない。 別紙3の2,4,5,7及び8記載の各期間については,上記アのとおり,原告が申し立てたAの各出張所は厚生年金保険の適用事業所ではなかったことが認められる。そして,適用事業所でないにもかかわらず,厚生年金保険料を控除していたことをうかがわせる資料が見当たらないことからすれば,上記各期間において事業主が原告の給与から厚生年金保険料を控除していたことが推認できず,一応確からしいとはいえない。 第4回申立てについてア証拠(乙13)及び弁論の全趣旨によれば,第4回申立てについて以下の事実が認められる。 原告は,第4回申立てにおいて,全ての申立て事業所に係る申立期間 を,第1回及び第2回申立ての際の申立期間に再度変更するとともに,AI出張所における就労期間(別紙4の1記載の期間)の始期を昭和23年6月頃に変更した。 原告は,第4回申立てにおいて,全ての申立期間についてA本社の指示に基づき勤務していたので,同社の本社において厚生年金保険に加入していたと思うとの主張を追加した。 原 3年6月頃に変更した。 原告は,第4回申立てにおいて,全ての申立期間についてA本社の指示に基づき勤務していたので,同社の本社において厚生年金保険に加入していたと思うとの主張を追加した。 原告及び原告が一緒に勤務したとして名前を挙げた3人の同僚の氏名は,いずれも,Aの本社に係る健康保険厚生年金保険被保険者名簿に記載されていなかった。 原告は,本件委員会に対し,昭和27年5月にA本社から同僚宛てに送付されたとする手紙及び封筒を提出した。 イ以上を前提に検討すると,上記Aの上記回答内容と矛盾するものである上,原告の氏名はA本社の健康保険厚生年金保険被保険者名簿に記載されておらず,かつ,当該名簿の信用性を疑わせる事情は見当たらないものである。 その他,原告が第4回申立てにおいて追加した主張を踏まえても,第1回及び第2回申立てに関する判断を変更すべき事情は見当たらない。 第5回申立てについて証拠(乙14)及び弁論の全趣旨によれば,第5回申立てにおいて,原告は,第4回申立てと同一の期間に同一の出張所等において就労した旨を申し立てるとともに,新たに3枚の写真を提出したことが認められる。 上記各写真の内容は不明であり,これにより,申立期間において事業主が原告の給与から厚生年金保険料を控除していたことをうかがわせる事情があり,一応確からしいとはいえない。 したがって,第5回申立てにおいて,第4回申立ての判断を変更すべき事情があったとは認められない。 第6回申立てについて証拠(乙15)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,第6回申立てにおいて,第4回及び第5回申立てに係る全ての申立期間と同一の期間について確認を申し立てたこと,本件委員会に対して新たに2枚の写真を提出したことが認められる。 上記各写真の内容は不明 第6回申立てにおいて,第4回及び第5回申立てに係る全ての申立期間と同一の期間について確認を申し立てたこと,本件委員会に対して新たに2枚の写真を提出したことが認められる。 上記各写真の内容は不明であり,これにより,申立期間において事業主が原告の給与から厚生年金保険料を控除していたことをうかがわせる事情があったとは認められず,一応確からしいとはいえない。 したがって,第6回申立てにおいて,第4回及び第5回申立ての判断を変更すべき事情があったとは認められない。 原告の主張についてア原告は,Aは福利厚生に厚い企業であったこと,出張所を移動する従業員のことを考慮すると,出張所ごとに厚生年金保険料が控除されていたか否かを区別することは不合理であるから,Aは本社及び出張所が一体として従業員の給与から厚生年金保険料を控除していたと考えるべきという趣旨の主張をする。 しかしながら,Aは,現地従業員の採用は各出張所で行うとともに,厚生年金の加入も各出張所において手続を行っており,かつ,厚生年金保険に加入させていない者もいた旨の回答をしており,原告の主張を否定するものとなっている。また,厚生年金保険の被保険者は,適用事業所に被用される者又は適用事業所以外に被用される者で認可を受けた者であるから(厚生年金保険法9条,10条参照),昭和61年法律第34号による改正によって,法人の事業所又は事務所であって常時従業員を使用するもの(厚生年金保険法6条1項2号)が全て適用事業所とされるまでは,同一の法人の被用者間においても,被用されている事業所ごとに厚生年金保険の被保険者であるか否かが異なることが許容されていたも のである。 そして,上記Aは,本社採用の従業員と出張所採用の従業員では厚生年金保険の加入について区別していたことがうかが 年金保険の被保険者であるか否かが異なることが許容されていたも のである。 そして,上記Aは,本社採用の従業員と出張所採用の従業員では厚生年金保険の加入について区別していたことがうかがわれるし,原告と同様にAの出張所間を移動していたと思われる従業員について,全ての出張所において厚生年金保険に加入していたことを示すような事情も見当たらない。 したがって,上記Aの回答が虚偽であることを示すような事情はないばかりか,むしろ厚生年金保険法に沿う扱いであり信用することができ,原告が使用されていた出張所が適用事業所であったか否か,適用事業所でなかった場合には原告が認可を受けて厚生年金保険の被保険者になっていたことを示すような事情があるか否かを個別に判断せざるを得ず,Aをいわば全体として一つの適用事業所と扱い,Aに使用されていた期間は全て厚生年金保険料の被保険者であったとする原告の上記主張は,Aにおける当時の事実として認められないばかりか事実に反するので,採用できない。 イ原告は,B工業株式会社富山工場で原告と同時期に勤務していた同僚が厚生年金を受給しているから,厚生年金保険について出張所ごとに異なる取り扱いがされていたわけではないと主張する。しかしながら,原告主張の同僚が厚生年金保険を受給しているのは,上記AB工業株式会社富山工場が適用事業所であったことが理由ではないから,上記主張は前提を異にしており失当である。 ウ原告は,昭和26年7月12日から同年9月21日までについて被保険者期間が判明したことを理由に,近接する時期についても厚生年金保険料を控除されていたことが推認できると主張するが,上記アのとおり,適用事業所ごとに判断し,かつ,原告主張の現場・出張所は,適用事業所ではないから,厚生年金保険料の控除を推認することはかえ 生年金保険料を控除されていたことが推認できると主張するが,上記アのとおり,適用事業所ごとに判断し,かつ,原告主張の現場・出張所は,適用事業所ではないから,厚生年金保険料の控除を推認することはかえって不合理である。 エ原告は,Aではなく出張所における現場の企業と雇用契約を締結してい た可能性があり,その際には,とび職という危険な仕事に従事していたのだから,雇用保険に加入していた可能性が否定できないところ,厚生年金保険の関連制度である雇用保険に加入していた事実は,厚生年金保険にも加入していたことを推認させると主張する。また,原告と同じ出張所で勤務していたHの日記(甲11)に「公傷休暇」という記載があるから,Aは同出張所の従業員を雇用保険に加入させていたと主張する。 しかしながら,原告については,実際に雇用保険に加入していたことが明らかとなったわけではない。また,Hの日記の記載は,負傷によって欠勤した場合に保険給付がされたことまでも読み取れるわけではないから,やはり原告を含む従業員が雇用保険に加入していたことを認めるに足りるものではない。また,仮に,雇用保険に加入していたとしても,原告主張の現場・出張所が適用事業所と認められるものではないから,上記 オ原告は,昭和27年2月から同年11月までの期間において,原告の同僚15人中13人について厚生年金保険被保険者記録が認められているから,原告も被保険者であったはずであるという趣旨の主張をする。 しかしながら,上記原告の同僚らの被保険者記録は,上記りAK現場におけるものである。原告は,訴状においては,上記期間についてそれとは異なる出張所(B富山工場)で勤務していたと申し立てているから,Aでの厚生年金保険の取扱いに照らすと,上記同僚の被保険者記録は,原告が被保険者であったこと ,訴状においては,上記期間についてそれとは異なる出張所(B富山工場)で勤務していたと申し立てているから,Aでの厚生年金保険の取扱いに照らすと,上記同僚の被保険者記録は,原告が被保険者であったことを裏付けるものではない。 以上から,原告の主張は,適用事業所ではない現場・出張所を適用事業所であると主張するものであり,かつ,年金を受給していると主張する同僚は,原告が主張する現場・出張所ではない適用事業所における健康保険厚生年金保険被保険者名簿の存在を理由に年金を受給しているものであって,さらには,保管された名簿上に原告氏名の記載が確認できず,かつ,上記名簿に疑 義を生じさせる事情はなく,保険料が控除されていた旨の原告の供述のみでは本件委員会が,本件各申立てについて「明らかに不合理とはいえず,一応確からしい」とはいえないとしていずれも年金記録の訂正が必要とはいえないと判断したことに,国家賠償法上の違法があるとは認められない。 したがって,争点5及び6について判断するまでもなく,原告の被告に対する損害賠償請求は理由がない。 3 結論よって,本件訴えのうち,本件義務付けの訴えは訴訟要件を欠いて不適法であるから却下することとし,被告に対する損害賠償請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官小西洋 裁判官財賀理行 裁判官内藤陽子 別紙1 1 昭和22年4月から昭和24年5月までA株式会社・I出張所 2 昭和24年5月から同年8月までA株式会社・L出張所 3 昭和24 陽子 別紙1 1 昭和22年4月から昭和24年5月までA株式会社・I出張所 2 昭和24年5月から同年8月までA株式会社・L出張所 3 昭和24年8月から同年10月までA株式会社・J出張所 4 昭和24年10月から同年12月までA株式会社・N出張所 5 昭和25年1月から昭和26年2月までA株式会社・K現場 6 昭和26年3月から同年6月までA株式会社・B富山工場 7 昭和26年9月から昭和28年10月までA株式会社・B富山工場 8 昭和29年1月から昭和31年3月までA株式会社・E 9 昭和31年4月から昭和34年までG 別紙2 1 昭和22年4月から昭和24年5月までA株式会社・I出張所 2 昭和24年5月から同年8月までA株式会社・L出張所 3 昭和24年8月から同年10月までA株式会社・J出張所 4 昭和24年10月から同年12月までA株式会社・N出張所 5 昭和25年1月から昭和26年2月までA株式会社・K現場 6 昭和26年3月から同年6月までA株式会社・B富山工場出張所 7 昭和26年9月から昭和28年10月までA株式会社・B富山工場出張所 8 昭和29年1月から昭和31年3月までA株式会社・E出張所 別紙3 1 昭和23年6月頃から昭和25年2月頃までA株式会社・I出張所 2 昭和25年2月頃から同年4月頃までA株式会社・L出張所 3 昭和25年4月頃から昭和26年6月頃までA株式会社・J出張所 4 昭和26年9月21日から同年10月18日までA株式会社・B富 頃から同年4月頃までA株式会社・L出張所 3 昭和25年4月頃から昭和26年6月頃までA株式会社・J出張所 4 昭和26年9月21日から同年10月18日までA株式会社・B富山工場出張所 5 昭和26年10月18日から昭和27年2月頃までA株式会社・M出張所 6 昭和27年2月頃から同年12月頃までA株式会社・K出張所 7 昭和27年12月頃から昭和28年10月頃までA株式会社・B富山工場出張所 8 昭和28年10月頃から昭和31年3月頃までA株式会社・E出張所 別紙4 1 昭和23年6月頃から昭和24年5月頃までA株式会社・I出張所 2 昭和24年5月頃から同年8月頃までA株式会社・L出張所 3 昭和24年8月頃から同年10月頃までA株式会社・J出張所 4 昭和24年10月頃から同年12月頃までA株式会社・N出張所 5 昭和25年1月頃から昭和26年2月頃までA株式会社・K出張所 6 昭和26年3月頃から同年6月頃までA株式会社・B富山工場出張所 7 昭和26年9月頃から昭和28年10月頃までA株式会社・B富山工場出張所 8 昭和29年1月頃から昭和31年3月頃までA株式会社・E出張所

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