- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 差戻前の控訴審,上告審及び差戻後の当審における訴訟費用は,参加によって生じた費用を含め,控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人が中労委平成7年(不再)第47号事件につき平成13年12月13日付けでした命令のうち,原判決別紙記載主文第1項及び第2項を取り消す。 訴訟の総費用のうち,補助参加によって生じた費用は被控訴人補助参加人の負担とし,その余は被控訴人の負担とする。 第2事案の概要 被控訴人は,被控訴人補助参加人(以下,単に「補助参加人」という。)の申立てに基づき,控訴人の新幹線鉄道事業本部東京運転所(以下「東京運転所」という。)の科長であるa(以下「a科長」という。)が,補助参加人の組合員であるb,c及びdに対して組合脱退勧奨等の不当労働行為を行ったとして,控訴人に対し,原判決別紙記載主文第1項及び第2項のとおりの救済命令(以下「本件命令」という。)を発した。 本件は,控訴人が本件命令には事実誤認及び労働組合法の解釈適用を誤った違法があると主張して,その取消しを求めた事案である。 原審は,平成3年8月19日にb及び同月22日にcに対してa科長が控訴人の意を体して補助参加人からの脱退を勧奨しており,そのことは補助参加人の組合運営に介入する不当労働行為であると認められるとし,同日にdに対して脱退勧奨行為が行われたとは認められないとしたが,本件命令は,同日のcに対するものとdに対するものとを区別することなく命じているので,cに対する不当労働行為が認められる以上,本件命令を取り消す必要はないと判断し- 2 -て,控訴人の請求を棄却した。 控訴人がこれを不服として控訴したところ,差戻前の控訴審は,a科長がb及びcに対して別紙「a 当労働行為が認められる以上,本件命令を取り消す必要はないと判断し- 2 -て,控訴人の請求を棄却した。 控訴人がこれを不服として控訴したところ,差戻前の控訴審は,a科長がb及びcに対して別紙「a科長の発言」記載の発言(以下,これらをまとめて「本件各発言」といい,このうち,bに対するものを「bに対する本件発言」,cに対するものを「cに対する本件発言」という。)をしたことは認められるものの,それが控訴人の意向を受けてしたものとは認定できず,また,dに対する脱退勧奨行為は認められないとし,本件命令は全体として失当であるとして,原判決を取り消し,本件命令を取り消した。 被控訴人がこれを不服として上告受理の申立てをしたところ,上告審は,労働組合法2条1号所定の使用者の利益を代表する者(以下「利益代表者」という。)に近接する職制上の地位にある者が使用者の意を体して労働組合に対する支配介入を行った場合には,使用者との間で具体的な意思の連絡がなくとも,当該支配介入をもって使用者の不当労働行為と評価することができるものであるとした上,差戻前の控訴審が確定した事実関係によれば,a科長は使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にあったものということができ,東海旅客鉄道労働組合(以下「東海労組」という。)から脱退した者らが補助参加人を結成し,両者が対立する状況において,控訴人は労使協調路線を維持しようとする東海労組に対して好意的であったところ,a科長によるb及びcに対する働き掛けがされた時期は上記の組合分裂が起きた直後であり,上記働き掛けが東海労組の組合活動として行われた側面を有することは否定できないとしても,本件各発言には,bに対する本件発言中の「会社が当たることにとやかく言わないでくれ。」,「会社による誘導をのんでくれ。」,「もしそういうことだったら 行われた側面を有することは否定できないとしても,本件各発言には,bに対する本件発言中の「会社が当たることにとやかく言わないでくれ。」,「会社による誘導をのんでくれ。」,「もしそういうことだったら,あなたは本当に職場にいられなくなるよ。」,cに対する本件発言中の「科長,助役はみんなそうですので,よい返事を待っています。」など,控訴人の意向に沿って上司としての立場からされた発言と見ざるを得ないものが含まれているとし,以上のような事情の下においては,本件各発言は,東海労- 3 -組の組合員としての発言であるとか,相手方との個人的な関係からの発言であることが明らかであるなどの特段の事情のない限り,控訴人の意を体してされたものと認めるのが相当であり,そのように認められるのであれば,本件各発言は,控訴人の不当労働行為と評価することができるものであるとして,差戻前の控訴審判決を破棄し,上記特段の事情の存否について審理を尽くさせるため,本件を当審に差し戻した。 当事者間に争いのない事実等は,差戻前の控訴審判決の「事実及び理由」第2の3に記載のとおりであるから,これを引用する。 本件の争点は,次の4点である。 (1)a科長は労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者に該当するか否か(2)a科長が本件各発言をした事実の有無(3)本件各発言について,東海労組の組合員としての発言であるとか,相手方との個人的な関係からの発言であることが明らかであるなどの特段の事情があるか否か(4)控訴人に対しポスト・ノーティスを命ずることの適否被控訴人及び補助参加人は,上記(1)及び(2)については,本件上告審判決はいずれもこれを積極に判断しているので,当審の争点とはならないと主張する。すなわち,本件上告審判決は,上記判断を前提 の適否被控訴人及び補助参加人は,上記(1)及び(2)については,本件上告審判決はいずれもこれを積極に判断しているので,当審の争点とはならないと主張する。すなわち,本件上告審判決は,上記判断を前提とした上で,a科長の本件各発言について,東海労組の組合員としての発言であるとか,相手方との個人的な関係からの発言であることが明らかであるなどの特段の事情があるか否かを審理させるために,本件を当審に差し戻したのであるから,当審においては,上記の特段の事情の有無に限定した審理が行われるべきであると主張する。 当事者の当審における主張の要旨(1)争点(1)a科長は労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に- 4 -近接する職制上の地位にある者に該当するか否かについて(控訴人)a科長は,本件当時,指導科長であったが,科長は助役の1人にすぎず,職制上他の助役より上位に位置づけられているものではなく,指導科の業務として,主に,運転操縦に関する指導,運転保安設備の取扱指導,事故原因究明と対策策定及びその指導に関する業務を担当していたにすぎず,これらの業務を超えて人事に関する業務を行う権限はなく,東京運転所長への報告は,日常の業務指導を通じて把握した情報を自らの意見を付さずに報告することに限られる。 したがって,a科長は,労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者には該当しない。 (被控訴人及び補助参加人)東京運転所の助役は,所長を補佐する現場管理者として,会社上層部の経営・管理方針を現場において実践する立場にあり,正式の権限を持たないとはいえ,現場組織の管理における実際上の重要な役割を有する。また,科長は,助役の1人として自らその業務に携わりつつ,各科に所属する助役の中の責任者として,他の助役の業務をとりまと の権限を持たないとはいえ,現場組織の管理における実際上の重要な役割を有する。また,科長は,助役の1人として自らその業務に携わりつつ,各科に所属する助役の中の責任者として,他の助役の業務をとりまとめ,必要に応じて他の助役に指示を与える業務を行っており,個々の従業員の能力,適性及び日常の勤務状況について所長へ報告するなどして実質的に従業員の転勤,昇進等の所要の人事手続に関し影響力を有していたものである。 したがって,a科長は,労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にあった。 (2)争点(2)a科長が本件各発言をした事実の有無について(控訴人)アa科長は本件各発言をしていない。控訴人は,これを労働委員会の審理の当初から一貫して主張しており,a科長の陳述書(甲29。以下「a陳- 5 -述書」という。)の記載からして,同人が本件各発言をしていないことは明らかである。同陳述書は,当審に至って作成され提出されたものであるが,a科長が,それまで陳述書を作成しなかったのは,その所属する東海労組が他の労働組合の事件には関知しないという方針を採っていたからである。また,その内容は,具体的かつ鮮明な記憶に基づくもので当時の資料も添付し,平成3年秋に控訴人の新幹線鉄道事業本部管理部人事課長であったeがa科長から聴取した内容に沿うものであり,信憑性がある。 イbに対する本件発言がなかったこと本件命令は,bに対する本件発言を認定するに当たり,誤った事実を前提としている。まず,a科長とbとは,a陳述書に記載されているように「月に一度程度飲みに行って,お互いにざっくばらんに仕事の話や世間話などをする間柄」,「飲み代を交互に支払いあうような間柄」,「分裂の動きが活発になって双方の関係が極度に緊張しても,個人的な時間での飲食時でも 度飲みに行って,お互いにざっくばらんに仕事の話や世間話などをする間柄」,「飲み代を交互に支払いあうような間柄」,「分裂の動きが活発になって双方の関係が極度に緊張しても,個人的な時間での飲食時でもお互いの立場を尊重するようにして,率直な話をしあえる間柄」であったのであるから,まさに個人的に極めて親しい間柄にあったことは明白なのである。また,bに対する本件発言があったとされる平成3年8月19日の飲み会(以下「本件8・19飲み会」という。)は,a科長がf及びbを誘って飲みに行ったものではなく,fから誘われたものであり,その支払もfが行っている。 本件上告審判決は,本件各発言が控訴人の意を体して行われたものであるとの判断の前提として,「控訴人は労使協調路線を維持しようとする東海労組に対して好意的であった」との判断を示しているが,この判断の根拠は不明である。なお,控訴人は,平成2年8月,「争議権(ストライキ権)論議について」と題する書面(乙1)を作成し,東海労組と控訴人の非現業の主要な幹部に示したが,これは,控訴人が,使用者としての意見表明をしたもの,又は先に東海労組との間でした第2次共同宣言の当事者- 6 -として他方の当事者である東海労組に対して意見表明をしたものであって,内容的に特に非難されるものではないし,a科長の発言とは全く関係のないものである。 また,f及びbは,本件8・19飲み会の時点では補助参加人の一組合員にすぎなかったのであるから,同人らに脱退勧奨を行っても影響力はなく,そのことを熟知しているa科長がbに対する本件発言をすることはあり得ない。 他方,bに対する本件発言があったとするbの供述には,陳述書,報告書及び労働委員会における供述を通じて変遷があり,信用できない。 ウcに対する本件発言がなかったことcに対する本件発 あり得ない。 他方,bに対する本件発言があったとするbの供述には,陳述書,報告書及び労働委員会における供述を通じて変遷があり,信用できない。 ウcに対する本件発言がなかったことcに対する本件発言のうち,本件上告審判決が問題視したのは,「科長,助役はみんなそうですので,よい返事を待っています。」との発言のみであるが,実際には指導科の助役1名を含め東京運転所の助役の約3分の1程度が補助参加人に加入しており,a科長が上記のように明らかに客観的事実に反する発言をすることはあり得ない。 仮に,a科長が,管理者の立場を利用して脱退を慫慂したとすると,現に吊し上げを受けたように職場での立場が危うくなることは明らかであるから,そのような発言をするはずがない。a科長は,cに対し,その勤務終了後に自宅に電話しているように,立場上,誤解を受けることがないよう組合に関する言動には細心の注意を払っていた。 他方,cが作成したとされる文書(乙7)には,その内容について「確実なキ憶ではないかもしれ」ないと記載されており,これによってcに対する本件発言を認定するのは,極めて不安定な事実認定といわざるを得ない。 (被控訴人及び補助参加人)ア控訴人は,当審に至ってa陳述書を提出し,同人が陳述書を作成しなか- 7 -ったことにつき,その所属する東海労組が「他の労働組合の事件には関知しない」という方針を採っていたことによるものと主張するが,東海労組の組合員であっても,その言動等が不当労働行為に該当するとされた事件に直接関わった一個人として,本件の事実関係を明らかにすることをも妨げるものとは到底考えられないし,およそ15年以上も前の出来事について,通常正確に記憶しているとは考えられず,むしろ同陳述書のように具体的かつ鮮明に記憶していることの方が不自然であり,同陳述書 も妨げるものとは到底考えられないし,およそ15年以上も前の出来事について,通常正確に記憶しているとは考えられず,むしろ同陳述書のように具体的かつ鮮明に記憶していることの方が不自然であり,同陳述書は信憑性に欠ける。 イbに対する本件発言があったことこの点は,差戻前の控訴審判決において認定されているとおりである。 控訴人は,a科長とbが個人的に極めて親しい間柄にあったと主張するが,そのような事実はなく,それまで上司と部下又は組合員として立ち話をしていた程度の間柄である。また,本件8・19飲み会は,a科長が誘ったものであり,その支払をfがしている点は,a科長の発言に警戒感を持ち買収されることを避けるために自ら支払をした上,後日に備えて領収書を取得したものと見るのが合理的である。 bに対する本件発言に先立ち,①控訴人が,東海労組との間で,安定した労使関係の下で協力体制を築いていくべきことなどをうたった共同宣言を締結したこと,②東海労組内でストライキ権をめぐるJR総連の運動方針を支持する中央執行委員長g(以下「g委員長」という。)を中心としたグループ(以下「g派」という。)とこれに反対するグループとの対立が激しくなり,結局g派の組合員が東海労組を脱退して補助参加人を結成するに至ったこと,③控訴人は,平成2年8月,スト権論議を深めようとする東海労組内のg派の動向を暗に批判する内容であった「争議権(ストライキ権)論議について」を作成し,非現業の管理者に交付したことなどの事実からすると,本件上告審判決が指摘するとおり,東海労組から脱退- 8 -した者らが補助参加人を結成し,両者が対立する状況において,控訴人が,労使協調路線を維持しようとする東海労組に対して好意的であったことを容易に認定することができる。 b及びfは,本件8・19飲み会の時点で らが補助参加人を結成し,両者が対立する状況において,控訴人が,労使協調路線を維持しようとする東海労組に対して好意的であったことを容易に認定することができる。 b及びfは,本件8・19飲み会の時点では補助参加人の役員に選任されていなかったが,東海労組に所属していたころから,それぞれ東京運転所分会の書記長及び副委員長として組合員に相当の影響力を有しており,a科長もそのことを熟知していた。 ウcに対する本件発言があったことこの点も,差戻前の控訴審判決において認定されているとおりである。 当時東京運転所においては,科長の全員及び助役の3分の2程度が東海労組にとどまっていたのであるから,a科長が「科長,助役はみんなそうです」との発言をすることは十分に考えられる。 (3)争点(3)本件各発言について,東海労組の組合員としての発言であるとか,相手方との個人的な関係からの発言であることが明らかであるなどの特段の事情があるか否かについて(控訴人)ア本件各発言は,a科長が東海労組の組合員獲得活動の一環として行ったものである。このことは,a科長が作成者の1人になっている平成3年7月31日付け「東京の運転・車両所を明るい職場にしよう!そしてJR東海労組を守ろう!」(丙6)及び同年8月6日付け「東京の運転・車両所を明るい職場にしよう!労使協調路線の現組合を守ろう!」(丙7)の内容をみれば明らかである。すなわち,当時,東海労組では約1200名の脱退と補助参加人の結成という事態を受け,補助参加人に加入した者らに対して,東海労組への復帰を呼びかける運動を行っており,特に,a科長がcに電話した平成3年8月22日の2日前である同月20日には集会が開かれ,その中でa科長は東海労組のh副委員長,新幹線地本のi書記長- 9 -等から檄を飛ばされていた。そのために ,特に,a科長がcに電話した平成3年8月22日の2日前である同月20日には集会が開かれ,その中でa科長は東海労組のh副委員長,新幹線地本のi書記長- 9 -等から檄を飛ばされていた。そのためにa科長はcに電話したのであって,管理職としての立場で控訴人の利益を実現するために電話したものではない。 なお,控訴人が平成2年8月に作成した「争議権(ストライキ権)論議について」と題する書面(乙1)については,上記(2)イのとおり,内容的に特に非難されるものではないし,a科長の発言とは全く関係のないものである。 イbに対する本件発言は,a科長が東海労組の組合員としてbとの個人的な関係からしたものである。すなわち,a科長とbは,上記のとおり,月に1回程度の割合で,費用を交互に負担し合う形で分担し,定期的に飲み会を持ち,お互いざっくばらんに仕事の話や世間話などをする関係にあり,平成3年7月26日の飲み会及び本件8・19飲み会では,後に一方が他方から不利益に利用されるなどというようなことを心配することなく,会社の仕事のことや世間話,組合のことなどの会話が忌憚なく交わされたのであり,本件命令が認定したa科長の発言内容も,一連の発言を全体としてみると,東海労組の組合員としてのものであり,部分的に上司としての立場に変わってされたものとみるべきではない。また,本件8・19飲み会は,fが勘定全額を支払っているようにfからの誘いによるものであるから,a科長のbに対する本件発言は計画的又は意図的なものではない。 ウcに対する本件発言は,cの勤務時間終了後で自らの昼休み中にcの自宅に電話をしてされたものであり,客観的に公私の立場を区別し,私的な時間を利用して自宅にいるcに対してされたものでるから,東海労組の組合員としての立場からの電話であることは明らかである み中にcの自宅に電話をしてされたものであり,客観的に公私の立場を区別し,私的な時間を利用して自宅にいるcに対してされたものでるから,東海労組の組合員としての立場からの電話であることは明らかである。内容的にも,当時,急速に若い世代が増加する状況の中で,cのように国鉄入社でも最も若い世代に属する社員に是非とも東海労組で力を発揮してもらいたいと考えて,東海労組に戻って力を貸して欲しい,一緒に頑張ろうという話をし- 10 -たもので,会社の経営,人事に関する発言とみることはできない。 (被控訴人及び補助参加人)ア本件各発言は,その内容,当時の状況及びa科長の地位からして,いずれも人事上の措置に関連付けて上司としての立場からされた発言と見ざるを得ない。 なお,控訴人が平成2年8月に作成した「争議権(ストライキ権)論議について」と題する書面(乙1)は,東海労組内のg派の動向を暗に批判するものであり,現場の管理者がこれに影響を受けることは当然であり,本件各発言もこれと無関係ではない。 イbはa科長と個人的に親密な関係にはなく,本件8・19飲み会は,a科長がf及びbを誘って行ったものであり,そこでのbに対する本件発言は,その内容からしてもbとの個人的な関係からされたものではない。 ウcに対する本件発言は,cの勤務時間終了後にcの自宅に電話をしてされたものであり,a科長が東海労組の組合員としての地位を有していたことは否定できないが,発言の内容及びa科長の地位からすると,上司としての立場からされたものであり,上司としての威圧感を与えながら,上司としての立場からされた発言とみざるを得ないものが含まれている以上,たとえ勤務時間外にcの自宅に電話をして発言していたとしても,職場の上司としての立場で発言したことは明らかである。 (4)争点(4)控訴 立場からされた発言とみざるを得ないものが含まれている以上,たとえ勤務時間外にcの自宅に電話をして発言していたとしても,職場の上司としての立場で発言したことは明らかである。 (4)争点(4)控訴人に対しポスト・ノーティスを命ずることの適否について(控訴人)労働委員会が適法にポスト・ノーティスを命じ得るためには,それが憲法によって保障されている使用者の「沈黙の自由」を侵害せず,かつポスト・ノーティスを命ずることが労働委員会に与えられた裁量権の範囲内(換言すれば,ポスト・ノーティスを命じなければならない合理的必要性があるこ- 11 -と)になければならないが,本件命令は,これらを裏付けるに足りる具体的事実を何ら認定することもなく,本件ポスト・ノーティス命令を発したのであるから,この点において違法といわざるを得ない。 その上,本件においては,ポスト・ノーティス命令の必要性を否定すべき特段の事情が存在する。すなわち,控訴人自身の何らかの行為が不当労働行為と認定された場合はポスト・ノーティス命令に何らかの必要性を認める余地があるかもしれないが,本件命令は控訴人自身の行為を不当労働行為と認定したものではないから,控訴人に何らかの反省を求める余地もなく,したがってポスト・ノーティスに何らかの必要性ないしメリットを認める余地は全くないというべきである。 また,ポスト・ノーティスにより誓約文の掲示が命じられた場合には,これを契機として控訴人と補助参加人間に当該事項についての不作為を目的とする私法上の契約が成立することとなり,控訴人がこれに違反した場合には,私法上の債務不履行責任(履行強制と損害賠償)を負わなければならないこととなる。しかしながら,私有財産制がとられ,私的自治が認められている我が法制の下において,行政機関たる労働委員会が救済命令の ,私法上の債務不履行責任(履行強制と損害賠償)を負わなければならないこととなる。しかしながら,私有財産制がとられ,私的自治が認められている我が法制の下において,行政機関たる労働委員会が救済命令の発出という公権力の行使によって,私人間における私法上の契約の締結に介入することが許されないことは,自明の理に属するところであるから,本件命令は,このように私的自治に対する介入に当たる点においても違法である。 (被控訴人及び補助参加人)本件ポスト・ノーティス命令は,その内容からして「沈黙の自由」を侵害するものではない。また,本件ポスト・ノーティス命令の内容は,控訴人の行為が不当労働行為と認定されたことを関係者に周知徹底させ,同種行為の再発を抑制しようとするものであって,これが労働委員会の有する裁量権の範囲を逸脱するものでないことは明らかである。控訴人のこの点に関するその余の主張は,いずれも独自の見解である。 - 12 -第3当裁判所の判断 本件事実関係当事者間に争いがない事実等に加えて,証拠(乙2,7,8,10ないし15,丙4)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1)控訴人は,昭和62年4月1日,日本国有鉄道改革法に基づき,日本国有鉄道が経営していた旅客鉄道事業のうち,主として東海地方における事業を引き継いで設立された会社である。控訴人は,東京都に新幹線の運行業務を統括する新幹線鉄道事業本部を置き,東京運転所はその現業機関として東京駅と新大阪駅間の新幹線の運転業務等を分掌していた。 東京運転所の平成3年9月1日当時の人員は,現場長である所長1名のほか,助役21名,事務員10名,乗務員432名の合計464名であった。 東京運転所の助役は,所長を補佐する現場管理者とされ,総務科,営業科,運転科及び指導科のいずれかに属し,各科 長である所長1名のほか,助役21名,事務員10名,乗務員432名の合計464名であった。 東京運転所の助役は,所長を補佐する現場管理者とされ,総務科,営業科,運転科及び指導科のいずれかに属し,各科の助役の中の1名が科長に指定されていた。科長は,助役の1人として自らその業務に携わりつつ,各科に所属する助役の中の責任者として,他の助役の業務をとりまとめ,必要に応じて他の助役に指示を与える業務を行っていた。 東京運転所所属の従業員の人事は,所長と新幹線鉄道事業本部運輸営業部が作成した案に基づき,同事業本部管理部人事課が適宜これに変更を加えるという形で行われており,所長には個々の従業員の能力,適性及び日常の勤務状況を把握することが求められていた。 東京運転所においては,所長のみが労働組合の組合員資格を有しないものとされていた。 (2)控訴人は,その従業員で組織する東海労組との間で,平成2年6月8日,安定した労使関係の下で協力体制を築いていくべきことなどをうたった「国鉄改革の完遂に向けて」と題する共同宣言を締結した。 一方,東海労組が当時加盟していたJR総連は,同月開催された定期大会- 13 -において,ストライキ権の確立とストライキ指令権のJR総連への委譲について加盟の各労働組合内における討議を深めるよう問題を提起した。これを受けて,東海労組においても討議が重ねられたが,東海労組内では,次第に,ストライキ権をめぐるJR総連の運動方針を支持するg委員長を中心としたg派とこれに反対するグループとの対立が激しくなり,結局,平成3年8月11日,g派の組合員約1200名が東海労組を脱退して補助参加人を結成するに至った。そのような状況の中で,「東京地区の運転・車両所を愛する有志一同」という名義により東海労組の組合員に対し新しい組合に加入せずに東海労組 約1200名が東海労組を脱退して補助参加人を結成するに至った。そのような状況の中で,「東京地区の運転・車両所を愛する有志一同」という名義により東海労組の組合員に対し新しい組合に加入せずに東海労組にとどまることを呼び掛ける文書が,同年7月31日付け及び同年8月6日付けで作成され,組合員宅に送付された。当時東海労組の組合員であり,東京運転所の指導科長であったa科長は,上記有志一同の代表者の1人となっていた。東海労組の組合員数は,同年9月ころにおいて約1万4600名であり,補助参加人の組合員数を大きく上回っていた。しかし,東京運転所においては,g委員長が同運転所の分会出身であったこともあってg派の組合員が多く,補助参加人に加入した組合員が283名いたのに対し,東海労組にとどまった組合員は約100名であった。以上のように,東海労組から脱退した者らが補助参加人を結成し,両者が対立する状況において,控訴人は,労使協調路線を維持しようとする東海労組に対して好意的であった。 (3)平成3年8月19日ころの東京運転所における東海労組から補助参加人への加入状況はいまだ流動的であり,態度を明らかにしていない者もいた。 a科長は,同日,東京運転所に勤務していた補助参加人の組合員であるb及びfを誘い,同日午後6時過ぎころから午後8時ころまでの間,α駅近くの居酒屋において,ビールを飲みながら話をした。その際,a科長は,bに対し,東京運転所内の東海労組と補助参加人の組合員数について「東京運転所はg委員長の出身職場なので,十分組織のことは分かるが,何とかフィフテ- 14 -ィー・フィフティーにならないものか。協力してくれないか。」などと述べ,また,東京運転所に所属する補助参加人の組合員に対する控訴人の働き掛けについて「会社が当たることにとやかく言わないでくれ。 -ィー・フィフティーにならないものか。協力してくれないか。」などと述べ,また,東京運転所に所属する補助参加人の組合員に対する控訴人の働き掛けについて「会社が当たることにとやかく言わないでくれ。」,「会社による誘導をのんでくれ。」などと述べた。そして,bがこれを拒否したところ,a科長は,bに対し,「やばいよ。」,「もしそういうことだったら,あなたは本当に職場にいられなくなるよ。」などと述べた(これらのa科長のbに対する本件発言の有無については,後記3において,更に認定説示する。)。なお,a科長とbは高校の先輩後輩の関係であり,時々一緒に酒を飲みに行く仲であった。 (4)東京運転所に勤務していた補助参加人の組合員であるcは,平成3年8月22日,乗務明けで待機室において休んでいたところ,a科長から昼過ぎに電話をする旨告げられた。a科長は,同日午後1時ころ,cの自宅に電話をかけ,そのような電話をかけることが越権行為であることは十分承知の上であるとしながら,労使協調で控訴人もよくなってきているのでそれをだめにするようなことは残念であるなどとして,「これからは若くて優秀な人に職場で頑張ってほしい。」,「情や雰囲気に流されないでよく考えてほしい。」,「残ったとしても決して1人ではありません。皆が付いています。」,「25日までに返事が欲しい。」,「科長,助役はみんなそうですので,よい返事を待っています。」などと述べた(これらのa科長のcに対する本件発言の有無については,後記3において,更に認定説示する。)。 争点(1)a科長は労働組合法2条1号所定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者に該当するか否かについて東京運転所において人事上の権限を有する者が所長のみであることについては,当事者間に争いがないところ,控訴人は,a科長は 定の使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にある者に該当するか否かについて東京運転所において人事上の権限を有する者が所長のみであることについては,当事者間に争いがないところ,控訴人は,a科長は,助役の1人として自らの業務を担当し,これを通じて把握した情報を自らの意見を付さずに所長に報告していたにすぎないから,使用者の利益代表者に近接する職制上の地位に- 15 -ある者に該当しないと主張する。 しかし,控訴人の就業規則48条,別表第1の3は,所長は所業務全般の管理及び運営を行い,助役は所長の補佐又は代理を行うと定め,指揮命令系統においても,助役は,所長の指揮命令を受け,他の社員に対して指揮命令をすることとされている(甲8)。他方,前記争いのない事実等のとおり,所長は,人事に関する案を作成するに当たって,個々の社員の能力,適性,日常の勤務状況の把握を行うことが求められていたが,東京運転所には所長以外に463名の社員がいたことからすると,所長が自ら個々の社員の能力等を把握することは著しく困難であり,所長が人事に関する案を作成するには,助役の補佐を得て個々の社員に関する情報を収集し,かつ,必要に応じてその助言を得ることが必要不可欠であったと認められるし,科長は,助役の1人として自らの業務に携わるにとどまらず,自らの科に所属する他の助役の業務を取りまとめ,必要に応じて,他の助役に指示を与える業務を行っていたことからすると,科長は,他の助役以上に親しく所長を補佐すべき地位にあったと認めることができる。 以上によると,a科長は,東京運転所の科長として,労働組合法2条1号所定の控訴人の利益代表者である東京運転所長に近接する職制上の地位にある者に該当すると認めることができる。 争点(2)a科長が本件各発言をした事実の有無について(1)a ,労働組合法2条1号所定の控訴人の利益代表者である東京運転所長に近接する職制上の地位にある者に該当すると認めることができる。 争点(2)a科長が本件各発言をした事実の有無について(1)a陳述書の信用性について控訴人は,当審において平成19年1月31日付けa陳述書(甲29)を提出し,これに基づいてa科長が本件各発言をした事実はないと主張する。 しかし,同陳述書は,上記のとおり,本件各発言があったとされる平成3年8月から15年以上も経過し,しかも,その間,本件各発言の有無について判断した初審命令,本件命令,第1審判決,差戻前の控訴審判決及び上告審判決が出されてから作成されたものであり,これらのことからすると,そ- 16 -の信用性には疑問がある。加えて,a科長は,平成3年9月及び平成5年2月の2度にわたって控訴人の新幹線鉄道事業本部管理部人事課長eの事情聴取を受けたところ,これに対し,平成3年8月19日及び同月22日に本件各発言はしていないといい,自己の発言についてデッチ上げみたいな話が多いというのみで,その際具体的にどのような発言をしたかについては供述を拒み,陳述書等の書面の作成にも応じておらず(乙16ないし19),また,愛知県地方労働委員会及び被控訴人からそれぞれ証人として出頭するよう求められたにもかかわらず,これを拒否していること(乙20及び弁論の全趣旨)が認められる。そうすると,a陳述書については,e人事課長に対する上記供述等と対比してその信用性があるということもできないし,上記のように証人としての供述を拒否してきた経緯からしても,同陳述書が事実に基づくものか否かには大いに疑問があるといわざるを得ない。 この点について,控訴人は,a科長が当審に至るまで陳述書を作成しなかったのは,その所属する東海労組が他の労働組合の事件 ても,同陳述書が事実に基づくものか否かには大いに疑問があるといわざるを得ない。 この点について,控訴人は,a科長が当審に至るまで陳述書を作成しなかったのは,その所属する東海労組が他の労働組合の事件には関知しないという方針を採っていたからであると主張する。 しかし,本件では,控訴人の従業員であるa科長の発言が控訴人の不当労働行為と評価すべきであると主張され,その発言の有無が重要な争点となっているのであり,このように従業員の行為について使用者の責任が問われている場合,事実関係を明らかにするため,使用者は当該従業員に事情を聴取すべきであるし,当該従業員もまたこれに協力すべきである。特に,本件においては,a科長は,現場職制として,上記のとおり,控訴人の利益代表者である東京運転所長に近接する職制上の地位にあったのであるから,控訴人としても,平成3年9月補助参加人が愛知県地方労働委員会に本件救済申立てをした後は速やかにa科長の協力を得て陳述書等を作成するのが合理的な対応であり,これをするのに格別の困難があったとは認められない。それにもかかわらず,a科長は,上記のe人事課長からの事情聴取に対し,組合の- 17 -話だから人事課長に話す必要はないとして,上記両日に具体的にどのような発言をしたかについては供述せず,e人事課長もまたそれ以上の聴取をしていないことが認められるのであり(乙19),このように本来作成されるべき書面が作成されないまま放置されていたこと自体が不自然不合理といわざるを得ないし,そのことは,むしろa科長が前記認定のとおり本件各発言をしていたことから,控訴人に不利益な発言内容をそのまま記載した書面を作成することはもとよりできず,他方,事実と異なる内容の書面を作成することもできないことから,あえて書面を作成しないまま放置し現在に至った たことから,控訴人に不利益な発言内容をそのまま記載した書面を作成することはもとよりできず,他方,事実と異なる内容の書面を作成することもできないことから,あえて書面を作成しないまま放置し現在に至ったのではないかとの疑いを生じさせるものである。加えて,付言するに,a陳述書によれば,a科長は,平成10年3月に控訴人を退職し,東海労組も脱退したものと認められるから,それ以降は東海労組の前記方針を顧慮することなく陳述書等を作成し,又は証人として尋問に応ずることも可能であったということもできる。 このようにa陳述書は,a科長の発言があった平成3年8月から15年以上経過して作成されたことからして信用性に疑問がある上に,その間陳述書等が作成されなかった事情も不自然不合理であって,その内容の信用性に疑問を生じさせるものであり,全体として信用できないものといわざるを得ない。なお,控訴人はa陳述書を提出するとともにa科長の証人尋問を申請し,当裁判所はこれを採用しなかったが,上記のように同陳述書の内容に信用性がなく,また,本件各発言については前記各証拠により認定することができるのであって,本件各発言から長期間経過した後の現時点においてa科長の証人尋問を実施したとしても,その供述の正確性,信用性には多大の疑問が生じ,前記認定を左右するとは認められず,さらに,被控訴人及び補助参加人が上記証人尋問申請を時機に後れた攻撃防御方法であるとしてその却下を求め,反対尋問を行うための証人尋問の採用を希望しなかったことからすると,同人の証人尋問を実施する必要はないといわざるを得ない。 - 18 -(2)控訴人の前提事実等に関する主張についてアa科長とbが個人的に親しい関係にあったか否か控訴人はa陳述書に基づき,両者が個人的に親しい関係にあったと主張するが,同陳述書の 。 - 18 -(2)控訴人の前提事実等に関する主張についてアa科長とbが個人的に親しい関係にあったか否か控訴人はa陳述書に基づき,両者が個人的に親しい関係にあったと主張するが,同陳述書の信用性に上記のとおり疑問がある以上,その前提を欠くものといわざるを得ない。その上,仮に同陳述書の内容を前提としても,次のとおり,控訴人の主張は採用し難い。すなわち,a科長とbとの関係については,控訴人の主張は,両名の出身高校が同じであり,1か月に1回程度,費用を交互に負担し合う形で分担し,定期的に飲み会を持ち,お互いざっくばらんに仕事の話や世間話などをする関係にあったというものであるが,両名の入社年次は,a科長が昭和32年(甲29)であるのに対しbは昭和49年(乙2)であって,17年の差があり,このように年齢が親子に近いほど離れている場合には,出身高校が同じということでいわゆる同窓の先輩後輩の間柄にあるとはいえても,それ以上に親密な関係にあるとは認め難いし,定期的に飲み会を持っているとしても,そこでの話題が控訴人が主張しa陳述書にも記載されているように仕事や組合の話のほかは世間話に限られるものであるとすると,飲み会自体が職場での付き合いの延長上のものとみるのが相当であり,それを超えて両者が個人的に親密な関係にあるとは認め難い。 イ本件8・19飲み会に誘ったのはa科長かfか控訴人は,a陳述書及び本件8・19飲み会の勘定をfが支払ったこと(甲32)を根拠にfが飲み会に誘ったものと主張する。 なるほど,a陳述書にはfから誘われたとの記載があるが,この事実はbに対する本件発言の有無に関する重要な事実であるにもかかわらず,a科長は,平成3年9月にe人事課長から事情聴取を受けた際には,このような説明はしていない(乙19)ことからすると,同陳述書の記載 はbに対する本件発言の有無に関する重要な事実であるにもかかわらず,a科長は,平成3年9月にe人事課長から事情聴取を受けた際には,このような説明はしていない(乙19)ことからすると,同陳述書の記載はたやすく信用することができない。また,控訴人はfが本件8・19飲み会の- 19 -勘定を支払った点を指摘するが,上記飲み会においてa科長がbに対する本件発言をしbがこれを拒否したとすると,補助参加人の組合員であるb及びfとしては,a科長から飲み会に誘われていたとしても,酒食を提供されて脱退勧奨をされたとの誤解を避けるために勘定をすべて負担することも自然な成り行きであると考えられるから,上記主張によって本件8・19飲み会をfが誘ったものと推認することはできない。 ウ控訴人が東海労組に対して好意的であったか否か控訴人はこの点についての上告審判決の判断はその根拠が不明であり,控訴人が平成2年8月に作成した「争議権(ストライキ権)論議について」と題する書面(乙1)は,控訴人が,使用者としての意見表明をしたもの,又は先に東海労組との間でした第2次共同宣言の当事者として他方の当事者である東海労組に対して意見表明をしたものであって,内容的に特に非難されるものではないし,a科長の発言とは全く関係のないものであると主張する。 しかし,前記争いのない事実等のとおり,控訴人は,2度にわたり東海労組との間で共同宣言を締結し,労使の共通認識による安定した労使関係を維持しようとしており,上記書面は,東海労組内でストライキ権の確立を目指すg派の動きが明確になった時期に作成されたものであることが認められるところ,その内容は,ストライキ権について上記共同宣言と切り離して観念的に議論すると組合員に控訴人と東海労組の進む方向が違っているのでないかとの疑念を持たせることに されたものであることが認められるところ,その内容は,ストライキ権について上記共同宣言と切り離して観念的に議論すると組合員に控訴人と東海労組の進む方向が違っているのでないかとの疑念を持たせることになり,かえって東海労組の求心力が弱まるのではないかと憂慮していると述べるものであって,g派の動向を暗に批判するものと認められ,そのことからすると,控訴人が,g派が東海労組を脱退して結成した補助参加人よりも,従来の方針を維持している東海労組に好意的であったことが認められる。 エbに対する本件発言の際にb及びfが補助参加人の一組合員であったこ- 20 -と控訴人は,b及びfは,本件8・19飲み会の時点では補助参加人の一組合員にすぎなかったのであるから,同人らに脱退勧奨を行っても影響力はなく,そのことを熟知しているa科長がbに対する本件発言をすることはあり得ないと主張する。 しかし,b及びfは,bに対する本件発言がされた時点では,補助参加人の東京運転所分会の役員が選出されていなかったことから,補助参加人の役員ではなかったが,東海労組に所属していた当時,bは東京運転所分会の書記長であり,fは同副委員長であったのであり,その後平成3年8月28日開催された補助参加人の東京運転所分会結成大会において,東海労組に所属していたときと同様にbは同分会書記長に,fは同副委員長に選出されたことが認められ(乙11),これらの事実によると,b及びfが東京運転所分会内で相当の影響力を有し,a科長もそのことを熟知していたと認めることができる。 オ控訴人は,cに対する本件発言のうち,「科長,助役はみんなそうですので,よい返事を待っています。」との発言は,客観的事実に反し,a科長がそのような発言をすることはあり得ないと主張する。 しかし,企業内の労働組合が対立している状 のうち,「科長,助役はみんなそうですので,よい返事を待っています。」との発言は,客観的事実に反し,a科長がそのような発言をすることはあり得ないと主張する。 しかし,企業内の労働組合が対立している状況下で,一方の労働組合に属する者が少しでも多くの組合員を獲得しようとする場合,自らに有利な事情を誇張して伝えることも十分あり得ることであり,現に東京運転所の科長全員と助役の3分の2は東海労組にとどまったことは当事者間に争いがないから,この程度の誇張した発言をすることは,平成3年8月当時の状況からして自然な成り行きであると認められる。 また,控訴人は,仮に,a科長が,管理者の立場を利用して脱退を慫慂したとすると,現に吊し上げを受けたように職場での立場が危うくなることは明らかであるから,そのような発言をするはずがなく,そのような誤- 21 -解を避けるためにも,cの勤務終了後に自宅に電話していると主張する。 しかし,支配介入行為を行った管理者が労働組合員から強い反発を受けることはしばしば起こることであるが,そのことから直ちに管理者が支配介入行為を差し控えるものと推認することはできないし,cの勤務終了後に自宅に電話をかけている点も,脱退勧奨という違法行為を密かに行うためにしたものとみることもできるから,控訴人の上記主張はいずれもcに対する本件発言がなかったことにつながるものではない。 カ以上のとおり,控訴人の主張はいずれも採用できず,他に本件各発言がなかったと窺わせるに足りる事情は見当たらない。 (3)b及びfの供述等の信用性ア控訴人は,bの供述には陳述書,報告書及び労働委員会における供述を通じて変遷があり,信用できないと主張する。 そこで検討するに,bが平成3年9月10日に作成して愛知県地方労働委員会に提出した陳述書(乙2)には,a科長がb 陳述書,報告書及び労働委員会における供述を通じて変遷があり,信用できないと主張する。 そこで検討するに,bが平成3年9月10日に作成して愛知県地方労働委員会に提出した陳述書(乙2)には,a科長がbに対する本件発言をした旨の詳細な記載があり,その内容に特に不自然な点は見当たらないところ,これに比べると同人が同年8月29日に作成した報告書(乙8)は,記載が簡略であり,a科長の発言についての具体的な記載は「あなたはこの職場に絶対居られなくなる」というもののみであるし,平成4年8月から12月にかけて行われた愛知県地方労働委員会の審問期日における供述(乙10ないし15)においては,上記報告書に記載のあるa科長の発言の一部につき供述がなかったり,反対尋問において初めて供述したものがある。しかし,これらの記載や供述は相互に矛盾するものではなく,上記報告書はその体裁からして補助参加人内部における簡略な報告文書であること,労働委員会における供述は,本件から1年以上経過した時期に行われたものであることからすると,これらの記載や供述がそれぞれ正確に一致しないとしても,上記陳述書等の信用性を左右するものではない。 - 22 -イ控訴人は,cの作成した文書(乙7)中に「確実なキ憶ではないかもしれません」との記載があることから,同文書による事実認定は不安定なものになると主張する。 しかし,上記文書には,a科長のcに対する本件発言が列挙されているところ,上記記載は,a科長が上記列挙以外の発言をした可能性もあるがcが記憶しているのは上記列挙したもののみであるという趣旨であると認められる(丙4)から,上記記載は上記文書の信用性を左右するものではない。 (4)以上によると,a科長の本件各発言に関するb及びcの作成した証拠(乙2及び7)は,それ自体の信用性に疑問は あると認められる(丙4)から,上記記載は上記文書の信用性を左右するものではない。 (4)以上によると,a科長の本件各発言に関するb及びcの作成した証拠(乙2及び7)は,それ自体の信用性に疑問はなく,これに反するa陳述書は信用できないし,他に本件各発言の存在を疑わせる事情も見当たらないから,上記各証拠により,a科長が本件各発言をした事実を認めることができる。 争点(3)本件各発言について,東海労組の組合員としての発言であるとか,相手方との個人的な関係からの発言であることが明らかであるなどの特段の事情があるか否かについて(1)本件各発言が東海労組の組合員としての発言か否かこの点は,上告審判決が本件を当審に差し戻すに当たって,当審において審理すべき上記特段の事情の一つの例示として判示したものであるが,同判決は,前記第2,1のとおり,a科長によるb及びcに対する働き掛けが「東海労組の組合活動として行われた側面を有することは否定できないとしても」との留保を付した上,本件各発言は上記特段の事情がない限り控訴人の意を体してされたものと認めるのが相当であるとしているのであるから,上告審判決のいう「東海労組の組合員としての発言」とは,本件各発言を目して,a科長が科長としての立場を離れて専ら東海労組の組合員として行ったと客観的に認めることができるかとの観点から判断すべきものと解される。 - 23 -このような観点から検討するに,東海労組と補助参加人が対立していた平成3年8月当時の状況からすると,東海労組の組合員としては,補助参加人から一人でも多くのものが脱退して東海労組に復帰することを望み,そのため補助参加人の組合員に働き掛けしようとして,a科長が本件各発言に当たってそのような主観的意図をも有していたであろうことは推認することができる。 のものが脱退して東海労組に復帰することを望み,そのため補助参加人の組合員に働き掛けしようとして,a科長が本件各発言に当たってそのような主観的意図をも有していたであろうことは推認することができる。しかし,上告審判決が指摘するとおり,本件各発言中,bに対する本件発言である「会社が当たることにとやかくいわないでくれ。」,「会社による誘導をのんでくれ。」,「もしそういうことだったら,あなたは本当に職場にいられなくなるよ。」とcに対する本件発言である「科長,助役はみんなそうですので,よい返事を待っています。」は,前者についていえば,会社(控訴人)を主語として,会社による補助参加人の組合員に対する脱退工作に協力することを求め,これに応じなければ,会社(控訴人)による何らかの人事上の措置があることを示唆するものであり,後者についていえば,将来,助役等の職制は会社(控訴人)の方針に応じて東海労組に残留するから,これに同調するように慫慂するものであると認められ,そうすると,これらの発言は,東海労組の利害とは別個の控訴人又はその職制としての利害に基づく発言と見るほかなく,上司である科長としての立場で行われたものと認められる。 控訴人は,この点について,a科長が東海労組の方針に従って発言したこと,cに対する本件発言は,私的な時間を利用して東海労組の組合員として行ったものであり,東海労組に戻って力を貸して欲しいとの意図の下に行ったものであると主張する。 しかし,客観的にみて上司としての立場からの発言と認められる発言をしている以上,a科長の主観的意図がどうであれ,その発言を専ら東海労組の組合員として行ったものと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる事情も見当たらない。 - 24 -(2)bに対する本件発言がa科長とbとの個人的な関係からの発言か否か の発言を専ら東海労組の組合員として行ったものと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる事情も見当たらない。 - 24 -(2)bに対する本件発言がa科長とbとの個人的な関係からの発言か否か控訴人は,a科長がbと個人的に親密な関係にあったとの前提の下に,bに対する本件発言が個人的な関係からの発言であると主張し,本件8・19飲み会はfから誘われたものであるとの前提の下に,bに対する本件発言は計画的又は意図的なものではないと主張する。 しかし,前記3(2)ア及びイで認定説示したとおり,a科長がbと個人的に親密な関係にあったとも,上記飲み会をfが誘ったものとも認められないから,控訴人の上記主張は前提を欠き採用できないし,他にbに対する本件発言が個人的な関係からのものと認めるに足りる事情も見当たらない。 なお,控訴人は,cに対する本件発言については個人的な関係からの発言であるとの主張をしていないし,また,同発言が個人的な関係からのものと認めるに足りる事情も見当たらない。 (3)以上によると,この点についての控訴人の主張はいずれも採用できず,他に本件各発言について,上告審判決が説示する特段の事情があると認めるに足りる事情も見当たらない。 争点(4)控訴人に対しポスト・ノーティスを命ずることの適否について控訴人は,本件について控訴人に対しポスト・ノーティスを命ずることは違法であると主張する。 しかし,本件ポスト・ノーティス命令の内容は,控訴人の行為が不当労働行為と認定されたことを関係者に周知徹底させるものにすぎないから,控訴人の「沈黙の自由」を侵害するものではないし,同種行為の再発を抑制するとの目的を達成するのに必要な限度のものと認められるから,これが労働委員会の有する裁量権の範囲を逸脱するものでないことは明らかである。 控訴人は,本 を侵害するものではないし,同種行為の再発を抑制するとの目的を達成するのに必要な限度のものと認められるから,これが労働委員会の有する裁量権の範囲を逸脱するものでないことは明らかである。 控訴人は,本件命令は控訴人自身の行為を不当労働行為と認定したものではないから,控訴人に反省を求める余地はなく,ポスト・ノーティスを命ずる必要性がないと主張するが,本件命令は,控訴人の従業員のうち,控訴人の利益- 25 -代表者に近接する職制上の地位にある者が控訴人の意を体して労働組合に対する支配介入を行ったことを不当労働行為と認定したものであり,これにより,控訴人は今後このような地位にある従業員が労働組合に対して支配介入行為を行わないよう監督することが求められているのであるから,このことを控訴人及びその従業員に周知徹底するためにポスト・ノーティスを命ずる必要性があると認めることができる。また,控訴人は,本件ポスト・ノーティスによって控訴人が私法上の義務を負うとの前提の下に,本件命令が私法自治に対する違法な介入であると主張するが,ポスト・ノーティスを命ずる労働委員会の命令が使用者に私法上の義務を負わせるものとは解されないから,控訴人の上記主張は前提を欠き採用することができない。 よって,控訴人のこの点に関する主張はいずれも採用することができない。 以上によると,控訴人の本訴請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第10民事部裁判長裁判官吉戒修一裁判官藤山雅行裁判官萩原秀紀 雅行裁判官 萩原秀紀
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