昭和54(行ウ)8 タクシー免許取消処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和55年3月19日 大阪地方裁判所 その他
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【DRY-RUN】○ 主文 被告が原告に対し、昭和五四年一月一九日大陸自第二〇〇〇五号をもつてした一般 乗用旅客自動車運送事業免許の取消処分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判

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○ 主文被告が原告に対し、昭和五四年一月一九日大陸自第二〇〇〇五号をもつてした一般乗用旅客自動車運送事業免許の取消処分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一原告会社主文同旨の判決二被告原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 との判決。 第二当事者の事実上の主張一原告会社の請求原因(一) 原告会社は、一般乗用旅客自動車運送事業の免許を受けていたところ、被告は、原告会社に対し昭和五四年一月一九日大陸自第二〇〇〇五号をもつて右免許を取り消し、その効力発生日を同月二二日とする旨の処分(以下本件処分という)をした。 (二) 本件処分には、それに至る手続に違背があり、認定した違反事実の一部に誤認があり、しかも取消処分を選択した点に裁量権の濫用がある。 (三) 結論本件処分の取消しを求める。 二請求原因に対する被告の認否請求原因(一)は認め、(二)は争う。 三被告の主張(一) 本件処分の手続 1 本件処分に至る手続の経緯について(1) 被告は、昭和五三年六月八日(以下単に月日で記載したときは、昭和五三年のことである)、原告会社に対し、道路運送法(以下法という)一二六条及び自動車運送事業等監査規則の規定に基づく特別監査(同規則五条但書に基づくものをいう)を実施した。その目的は、タクシー事業にかかる事故防止の徹底を期するとともに、運輸の適正を図ることにあつた。 また、訴外大阪府警察本部長は、一一月二日、被告に対し、原告会社における偽装交通事故並びに保険金詐取の被疑事件捜査の結果に基づき、原告会社に関する法、自動車運送事業等運輸規則(以下運輸規則という)及び自動車事故報告規則違反の各事実を通報するとともに、原告会社はタクシー事業者としては、全く不適格な会社と認められるので厳重な行 原告会社に関する法、自動車運送事業等運輸規則(以下運輸規則という)及び自動車事故報告規則違反の各事実を通報するとともに、原告会社はタクシー事業者としては、全く不適格な会社と認められるので厳重な行政処分をされたい旨の要請をした。 (2) 被告は、右特別監査及び通報を契機として検討の上、同月九日道路運送法施行規則(以下施行規則という)六三条の規定に基づき、公示番号大陸自旅二公示第三四号により、原告会社について、法及び運輸規則に違反するものとして、一般乗用旅客自動車運送事業の停止又は免許の取消しを行う調査を開始する事案の公示を、大阪陸運局並びに同局管内の陸運事務所の掲示板に掲示した。 (3) 原告会社は、右公示により同月一八日付けで法一二二条二項の規定により被告にあて聴聞申請書を提出した。 なお、原告会社従業員A、同B、同Cも連名により同月一七日付けで右同様の申請書を提出した。 (4) 被告は、同月二七日、右申請に基づき、原告会社については一二月一二日午後一時三〇分から同五時まで、右従業員らについては同日午前一〇時から同一二時まで、大阪陸運局で聴聞を行う旨の通知を郵送した。 (5) 被告は、一二月一二日午後一時三〇分から同五時まで原告会社代表者訴外Dに対し聴聞をした(以下本件聴聞という)。 (6) 被告は、右調査の結果に基づき、原告会社について法違反及び運輸規則違反の事実があり、かつ、その違反内容が重大であると認められたうえ、これまでの再三の行政上の処置及びこれに基づく原告会社の改善誓約にもかかわらず、同種の違反を繰り返している事実にかんがみ、今後も原告会社について一般乗用旅客自動車運送事業の適切な運営が期せられないと判断して本件処分を行つた。 2 聴聞の対象となる違反事実の告知について法一二二条の二及び施行規則六三条ないし六三条の七によれば、聴 会社について一般乗用旅客自動車運送事業の適切な運営が期せられないと判断して本件処分を行つた。 2 聴聞の対象となる違反事実の告知について法一二二条の二及び施行規則六三条ないし六三条の七によれば、聴聞に先立ち、刑事訴訟手続や独占禁止法上の審判手続におけるように具体的違反事実まで告げることは要求されていない。したがつて、被告には、公示をする際又は本件聴聞前に、被聴聞者に違反事実を告知することが要求されていない。すなわち、法一二二条三項の趣旨は、利害関係人に対し、意見陳述、証拠提出の機会を与えるべきことを要求しているにとどまるのであつて、このため具体的にどのような手続を履践するかは被告の健全な裁量に委ねられていると解すべきである。 一方、実質的に見た場合、被告が六月八日に実施した特別監査の際、原告会社代表者らに対し、違反事実を指摘しており、一一月九日の公示により違反条項を明らかにしているから、原告会社代表者が、本件聴聞でいかなる意見を陳述し、いかなる証拠を提出すべきかを十分理解しえたことは明らかである。更に、原告会社は、法により免許を受けた者として注意深く事業を管理していたはずであるから、いかなる違反事実があるかは十分知悉しており、その点から見ても十分な弁解ができなかつたことはない。現に、原告会社は、一一月一八日付け聴聞申請書及び一二月七日付け追加陳述書で、十分な弁解をしているのである。 3 弁護士の代理について法四三条の処分に至る手続に弁護士の関与を認める必要はない。すなわち、法一二二条の二に定める聴聞は、事業についての調査の一環として行われるのである(施行規則六三条参照)。そうすると、弁護士の同席を許さないのが原則である。しかし、被告は、原告会社の希望に基づき、本件聴聞の際、意見陳述、証拠提出を補佐させるため、原告会社の依頼する弁護士で ある(施行規則六三条参照)。そうすると、弁護士の同席を許さないのが原則である。しかし、被告は、原告会社の希望に基づき、本件聴聞の際、意見陳述、証拠提出を補佐させるため、原告会社の依頼する弁護士であるE弁護士の同席を許した。これは、聴聞手続決定についての被告の裁量権に基づくものであるが、原告会社代表者に十分な意見陳述、証拠提出をさせるため必要にして十分な措置であつた。 4 処分基準の設定について法四三条の処分をするに当つて、予め審査基準を設定する必要はない。 仮に、一般自動車運送事業の免許をしようとする際には法六条の規定をさらに具体化した審査基準を設定しなければならないとしても、法四三条に定める処分の場合には、処分の基礎となる事実が法又は運輸規則に具体的に定められているから、審査基準の設定は問題にならない。 また、被告には、違反事実が認められた場合にその認定の上でいかなる処分を選択するかについての裁量権が与えられているから、その裁量権の行使に著しい濫用のない限り、本件処分は違法にならない。 (二) 本件処分の実体的要件別紙第一に記載のとおり(三) 本件処分の相当性別紙第二に記載のとおり四原告会社の被告の主張に対する認否(一) 被告の主張(一)1の事実について(1) について、特別監査の実施は認めるが、その余は不知。 (2) について、認める。 (3) について、原告会社が聴聞申請をしたことは認めろが、その余は不知。 (4) について、認める。但し、従業員についてのことは不知。 (5) について、認める。 (6) について、本件処分がされたことは認めるが、その余は争う。 (二) 同(二)の事実について別紙第三に記載のとおり(三) 同(三)の事実について別紙第四に記載のとおり五原告会社の主張 1 本件処分に至る手続の経緯について(1 認めるが、その余は争う。 (二) 同(二)の事実について別紙第三に記載のとおり(三) 同(三)の事実について別紙第四に記載のとおり五原告会社の主張 1 本件処分に至る手続の経緯について(1) 被告が原告会社に対する一般乗用旅客自動車運送事業の停止又は免許取消しについて事案の公示をしたのは、一一月九日であり、この公示は、被告の庁舎、大阪合同庁舎第三号館玄関及び<地名略>の大阪陸運事務所の各掲示板に掲示されたが、原告会社には何の通知もされなかつた。原告会社がこれを知つたのは、同日の正午、テレビのニユースによる。そこで原告会社は早速右庁舎に赴き、掲示板で公示の確認ができたのである。 (2) 被告は、掲示板に別示第五の公示を掲げた。これには、利害関係人に公示の日から一〇日以内に聴聞申請ができる旨の教示はしてあつたが、聴聞の対象、主題たる違反事実につき、条文と見出しが記載されているだけで、具体的な違反事実の記載はされていなかつた。 (3) 原告会社は、手続に不馴れなことから、弁護士に聴聞申請の代理方を委任してその手続をしたが、被告は、代理申請を認めず、一一月一六日、原告会社が提出した代理人による聴聞申請の受理を拒否した。そこで、原告会社は、同月一八日、改めて原告会社代表者名で聴聞申請をし、あわせて弁護士三名を補佐人に申請した。 一方、原告会社は、同月二四日、被告に対し、違反事実の開示、関係書類の閲覧、謄写の申請をしたが、被告から拒否された。 (4) 被告は、本件聴聞を実施したが、聴聞対象の不明な原告会社は、本件聴聞では、被告が実施した特別監査の際に指摘された事実や、当時、新聞の誤つた報道等を総合して、憶測による陳述弁解をしたに過ぎない。また、本件聴聞での補佐人は弁護士一名に制限された。 (5) 被告は、昭和五四年一月一九日、本件処分を原告会 指摘された事実や、当時、新聞の誤つた報道等を総合して、憶測による陳述弁解をしたに過ぎない。また、本件聴聞での補佐人は弁護士一名に制限された。 (5) 被告は、昭和五四年一月一九日、本件処分を原告会社に告知したが、その際、原告会社は、取消しの事由たる違反事実につき開示を求めたところ、被告は、審査段階で明らかにするとのことで、全くこれについては開示しなかつた。原告会社が、処分事由たる違反事実を知つたのは本件訴訟の第一回口頭弁論期日になつてからである。 2 事案公示の通知について施行規則第六三条は、「あらかじめ、当該事案の件名に番号を付し、その旨を陸運局掲示板に掲示する等適当な方法で公示しなければならない。」と規定している。 ところで、被処分者は、通知を受けなければ公示を知ることができないから、右法条にいう「適当な方法」とは、単なる掲示だけでは足りず、被処分者への告知も含まれていると解すべきである。しかし、被告は、原告会社にこのような告知をしなかつたから、このような手続に基づいてされた本件処分は違法である。 3 聴聞の対象となる違反事実の告知について聴聞は、利害関係人に有利な主張、反論や証拠を提出する機会を与えることを目的としている。 現に法一二二条の二第三項は、利害関係人に意見を述べ証拠を提出する機会を与えなければならないと明記している。この意見と証拠を提出するためには、聴聞の主題である違反事実が明らかになつていてこそ始めて可能であるから、本件聴聞のように違反事実を示さず実施されたことは、聴聞が公正に行われなかつたものといわざるを得ない。したがつて、本件聴聞に基づく本件処分は違法である。 4 弁護士の代理について原告会社は、弁護士の援助を受ける権利がある。したがつて、被告が弁護士である代理人による聴聞申請書の受理を拒否し、本件聴聞に出席する 、本件聴聞に基づく本件処分は違法である。 4 弁護士の代理について原告会社は、弁護士の援助を受ける権利がある。したがつて、被告が弁護士である代理人による聴聞申請書の受理を拒否し、本件聴聞に出席する弁護士の数を一人に制限したことは違法であり、このような手続に基づいてされた本件処分は違法である。 5 本件処分の理由付記について被告が免許取消し処分をするには、その理由を付すべきである。すなわち、被処分者が聴聞においてした主張、反論や立証が、どのように処分に反映したかを知るため、もしくは、処分にいたる過程の公正を客観的に保障するために必要なものといえる。 ところが、被告は、本件処分を告知する際、原告会社から理由となつている違反事実の開示を求められたのに、これすら明らかにしなかつたから、原告会社としてはどのような理由で本件処分がされたのか、本件聴聞の結果がどのように反映されたのか全く不明である。したがつて、本件処分は処分理由を明らかにしなかつた点で違法である。 6 処分理由のうち本件聴聞の主題でなかつた事実について被告は、別紙第一の一の3及び一二に記載された処分の根拠となつた違反事実のうち、本件聴聞により明らかになつたものとして、一四件の区域外運送、七二件の交通事故を掲げている。しかし、これらは当初から本件聴聞の対象、主題にはされていなかつたことは、別紙第一の一の3及び一二の「聴聞手続において明らかになつたもの」との記載から明白である。このように、本件聴聞の主題でなかつたものを、聴聞手続中に判明したからといつて、これを処分理由に取り入れることは許されない。したがつて、本件処分はこの点で違法である。 7 処分基準の設定について法四三条は、同条各号の要件が認められる場合でも、六か月以内の輸送施設の使用停止、事業の停止、免許取消しと段階的に処分でき ない。したがつて、本件処分はこの点で違法である。 7 処分基準の設定について法四三条は、同条各号の要件が認められる場合でも、六か月以内の輸送施設の使用停止、事業の停止、免許取消しと段階的に処分できることを規定している。 ところで、道路交通法の免許取消しの規定である同法一〇三条、同法施行令三八条には、取消しについての基準を詳細に定め、その基準に沿つて行政処分をすることを要求して、行政が、恣意的に国民の権利を侵害しないよう保障している。また、法による個人タクシー免許について、審査基準を設定しなければならないことは、最高裁判所の判例が示すところである。 したがつて、被告としては、どのような場合に免許取消し処分を選択するかについて審査基準を定めたうえで本件処分をすべきであるのに、これをしなかつた点で本件処分は違法である。 第三証拠関係(省略)○ 理由一本件の判断に必要な前提事実について(一) 原告会社は、一般乗用旅客自動車運送事業免許を受けていたこと、被告は、昭和五四年一月一九日、原告会社に対し本件処分をしたこと、以上のことは当事者間に争いがない。 (二) 成立に争いがない甲第一号証の一、二、同第二号証、同第三号証の一、二、同第四ないし第七号証、乙第一号証、同第二号証の一ないし五、同第二五号証の一、二及び同第二六号証、証人Fの証言によつて成立が認められる同第三号証の一、二、同第二七号証及び同第二八号証の一ないし一四、証人E、同Gの各証言並びに証人Fの証言の一部を総合すると次の事実を認めることができ、後記4の認定に反する証人Fの証言の一部は、後記5、7、8の認定事実や証人Gの証言と対比するとき、これを信用することができないし、ほかにこの認定を覆すに足りる証拠はない。 1 被告は、六月八日、原告会社に対し、法一二六条及び自動車運送事業等監査規 、7、8の認定事実や証人Gの証言と対比するとき、これを信用することができないし、ほかにこの認定を覆すに足りる証拠はない。 1 被告は、六月八日、原告会社に対し、法一二六条及び自動車運送事業等監査規則にもとづく特別監査を実施した(この事実は当事者間に争いがない)。 大阪陸運局の職員は、右特別監査終了後、原告会社に対し、次の諸点について口頭で注意を与えた。 (1) 運行管理者と整備管理者が各一名不足している。 (2) 運行管理者と整備管理者の各代務者の指定が不備である。 (3) 運行管理責任者として訴外Hが届け出られているのに、実務に服していない。 (4) 整備主務として代表者が届け出られているのに、実務に服していない。 (5) 運行管理規定は昭和三六年に制定されたもので、現状に合致しない。 (6) 点呼記録簿の管理がずさんで形式的になつている。 (7) 始業点呼がずさんで形式的になつている。 (8) 新規採用運転者の指導期間が一日不足している。 (9) 事故報告規定による届出が二件未提出である。 (10) 定期整備点検の記録が明確ではない。 2 被告は、一一月九日、原告会社の一般乗用旅客自動車運送事業の停止又は免許の取消しについての公示を大阪陸運局及び同局管内の陸運事務所の掲示板に掲示した(この事実は当事者間に争いがない)。 右の掲示によつて公示された書類は、別紙第五のとおりのものであつた。これには、原告会社が違反したとする法又は運輸規則の法条とその見出しが記載されてはいたが、その具体的な違反事実の内容は勿論のこと、各法条のうちの項、号の記載がなかつた。 3 被告は、施行規則六三条の公示をしたことを、当該免許事業者などの利害関係人に直接通知しない取扱いにしており、本件の公示も、原告会社に直接通知しなかつた。しかし、被告は、右公示の事実を記者会見をして公 被告は、施行規則六三条の公示をしたことを、当該免許事業者などの利害関係人に直接通知しない取扱いにしており、本件の公示も、原告会社に直接通知しなかつた。しかし、被告は、右公示の事実を記者会見をして公表した。そこで、原告会社代表取締役訴外D及び原告会社の弁護士である訴外Gは、一一月九日正午ころ右公示の事実を、ラジオ、テレビの報道で承知した。 4 DとGは、同日午後三時ころ、大阪陸運局で、原告会社の運送事業免許取消し関係の事務を担当していた同局自動車部旅客第二課長運輸事務官Fに面会した。 Fは、その際Gの問に対し、「これから事実関係を調べて営業停止にするか、取消しにするかを決める。公示は陸運局の玄関に掲示されている。一一月一八日までに聴聞の申請書を出すことができる。」と説明をした。 Gは、聴聞の対象となる事実は何かと質問したところ、Fは、「これから調査するのだから教えることはできない。」とか、「特別監査をしたときの事実と、府警本部から通報のあつた事実である。」と答えた。 Gは、それでは聴聞の際に弁解も防禦もできないから、違反事実を教えてほしいと迫つたところ、Fは、机の引出しから書類綴りを取り出して、別紙第五の「違反条項」欄に記載されたとおりに法と運輸規則の法条とその見出しを読み上げたが、それ以上に具体的な違反事実の個々の内容を読み上げることをしなかつた。 Gは、重ねて、「誰が、いつ、どんな違反をしたのか教えてほしい。お持ちの資料を見せて戴きたい。」と頼んだが、Fはこれに応じなかつた。 DとGは、その帰途、大阪陸運局玄関で右の公示をはじめて見た。 5 原告会社の代理人弁護士訴外I、同E及び前記Gは、原告会社の代表者と代理人の双方の名義で聴聞申請書を作成し、一一月一六日、これを大阪陸運事務所に委任状を添えて提出したが、同事務所はこれを受け取ることを拒否し の代理人弁護士訴外I、同E及び前記Gは、原告会社の代表者と代理人の双方の名義で聴聞申請書を作成し、一一月一六日、これを大阪陸運事務所に委任状を添えて提出したが、同事務所はこれを受け取ることを拒否した。 そこで、E及びGは、大阪陸運局自動車部旅客第二課補佐官運輸事務官Jに対し、右聴聞申請書を受理するよう頼み、受理できない理由をただした。 Jは、右申請書の受理を拒否する理由として、聴聞申請は利害関係人に限り許され、代理を認める規定がなく、聴聞は事実関係について調査するものであり、しかも非公開となつていると説明し、また聴聞でも代理は許されないと述べた。Eらは、弁護士による代理が許される筈だと主張したが、聞き入れられなかつた。 E及びGは、その際、再度、J及びFに対して聴聞の対象となるべき違反事実と証拠を開示してほしいと申し出たが、Jは、これから調査するのだし、そのような開示を認める規定がないと述べて、右申出を拒否した。 6 原告会社は、I、G及びEを輔佐人と表示し、代表取締役Dを申請人とした聴聞申請書を作成して、一一月一八日、被告に提出したところ、被告は、これを受理した。 7 原告会社は、一一月二四日、被告に対し、本件聴聞の対象となる違反事実の開示と関係書類の閲覧謄写を求める申請書を提出したが、被告は、これを認める規定がないことを理由にこれらの申出を拒否した。 8 以上のように、大阪陸運局の職員が、一貫して処分事由となるべき違反事実の開示を拒否した理由は次の点にあつた。 (1) 開示を義務付ける明文の法条又は通達がない。 (2) 聴聞は調査のために行うものであるから、処分の原因となるべき違反事実の全部が聴聞前の段階で判明しているとはいえない。 (3) 右事実を開示すると、原告会社が証拠の隠滅をするかも知れない。 9 被告は、一一月二七日、原告会社に対し あるから、処分の原因となるべき違反事実の全部が聴聞前の段階で判明しているとはいえない。 (3) 右事実を開示すると、原告会社が証拠の隠滅をするかも知れない。 9 被告は、一一月二七日、原告会社に対し、一二月一二日午後一時三〇分から五時まで、大阪陸運局で本件聴聞を行う旨の聴聞通知書を発送した(この項は当事者間に争いがない)。 10 右聴聞通知書は、本件聴聞の輔佐人の同席を一名に限るとしていた。そこで、原告会社は、一一月二九日、被告に対し、公示に掲げられた違反条文が一七項にも亘り事案が相当複雑なので、なお一名の輔佐人の同席を許可するように申請した。しかし、被告は、聴聞は非公開であること、及び聴聞は事実について調査をするのであるから法律家は一名で十分であることを理由に、右申請を許可しなかつた。 11 D、E及びGらは、公示された違反法条、前記4のFの説明と特別監査の際に注意された事項のうち記憶していた前記1の事実を手がかりにして、原告会社の資料を調査し、関係社員から事情聴取をする等をして、本件聴聞にそなえた。しかし、公示された適用条文には項や号の記載がなく、処分原因となるべき具体的違反事実の開示がなかつたため、違反となる可能性のある事実をいくつか見出したほかは、一般的、概括的な調査と準備ができただけであつた。 12 原告会社は、聴聞申請の際、前記1の事項についての弁明を記載した陳述要旨を提出し、また、一二月七日には公示の法条に関する弁明を記載した追加の陳述要旨を提出した。 13 被告は、一二月一二日午後一時三〇分から五時ころまでの間、本件聴聞を行つた(この事実は当事者間に争いがない)。 本件聴聞を担当した聴聞官は、前記F、J、大阪陸運局自動車部旅客第二課業務第一係長K、同係員L、同係員M及び同局整備部事故公害課専門官Nの六名であつた。 原告会社 この事実は当事者間に争いがない)。 本件聴聞を担当した聴聞官は、前記F、J、大阪陸運局自動車部旅客第二課業務第一係長K、同係員L、同係員M及び同局整備部事故公害課専門官Nの六名であつた。 原告会社のため供述を許されたのはDとEとであつた。しかし、Eは、代理人としてではなく、輔佐人としての地位しか認められていなかつたため、供述しようとしても聴聞官から差し止められ、代表取締役であるDが答弁するよう命じられたこともあつた。 聴聞官は、本件聴聞では、別紙第一の三2の点を除き、処分原因となるべき違反事実を、年月日、違反者、車輛、態様などを特定したうえで原告会社に告知したのちにこれについて弁解、立証を求めたことはなく、法条ごとに一般的、概括的に原告会社での取扱いなどを尋ねただけであつた。 このため、原告会社は、本件聴聞では、別紙第一記載の具体的事実の殆んどについて、そのような違反行為があつたのか、原告会社が具体的にそれに関与したのか、原告会社がその事情を知つていたのか、違反とならない特別の事情があつたのか、どのような理由により違反行為に至つたのかなどの個々的な主張や立証をすることができず、ただ一般的、概括的な弁明ができたにすぎなかつた。 原告会社は、本件聴聞に際し、具体的な事実につき尋ねられた場合、適切な答弁ができるように、四、五箱にもなる多数の書類帳簿類を聴聞の場所に持つて行つていた。しかし、聴聞者から具体的個々的な質問が少なかつたうえ、資料を捜し出す補助者も認められていなかつたため、本件聴聞では、そのうちから資料を提出することはなかつた。 14 被告は、昭和五四年一月一九日、別紙第一記載の事実を認定し、法四三条一号を根拠として本件処分をした。 ところが、原告会社に交付された処分通知書には、「貴社の経営する一般乗用旅客自動車運送事業の免許は、道路運 昭和五四年一月一九日、別紙第一記載の事実を認定し、法四三条一号を根拠として本件処分をした。 ところが、原告会社に交付された処分通知書には、「貴社の経営する一般乗用旅客自動車運送事業の免許は、道路運送法第四三条の規定に基づき、これを取消す。なお、この処分による効力は、昭和五四年一月二二日から生ずるものとする。」と記載されているだけで、本件処分が法四三条各号の何れによつてされたものか、どのような事実を根拠としてされたものかについての記載がなかつた。 そこで、Gは、右処分通知書を交付した大阪陸運局自動車部長運輸事務官Oに対し、処分の基礎となつた違反事実は何かと尋ねた。Oは、違反事実は審査請求の段階では明らかにするが、現在の段階では明らかにすることができない、と答えた。 15 被告はは、本件聴聞を行つてから、本件処分をするまでの間に、原告会社に対し、それ以上の調査はしなかつた。 二本件聴聞の違法性について(一) 陸運局長が、法一二二条の二第二項、第一項二号の規定によつて聴聞する場合には、事案の公示後、聴聞前に運送事業免許を受けている被処分予定者に対しては、免許取消等の処分原因となるべき具体的違反事実を告知しなければならないと解するのが相当である。以下その理由を詳述する。 1 法四三条は、免許取消等の事由を定め、その手続として、法一二二条の二第二項は、利害関係人の申請があつたときには聴聞を義務づけている。そうして、同条三項は、「聴聞に際しては、利害関係人に対し、意見を述べ、及び証拠を提出する機会が与えられなければならない。」と規定している。しかし、法やその下位法規には、処分原因となるべき事実を利害関係人に告知しなければならないとする明文の規定は見当らない。 ところで、利害関係人が十分意見を述べ、証拠を提出するためには、「何について」意見を述べ、証 下位法規には、処分原因となるべき事実を利害関係人に告知しなければならないとする明文の規定は見当らない。 ところで、利害関係人が十分意見を述べ、証拠を提出するためには、「何について」意見を述べ、証拠を提出すべきかが、利害関係人に明らかでなければならないことは、理の当然である。 さて、聴聞は、免許取消等の前提として行なわれるものである(法一二二条の二第一、二項)から、一般的にいえば、利害関係人は、聴聞では処分原因となるべき事実及び陸運局長の裁量権行使の原因となるべき事実について、意見を述べ、証拠を提出することができることになる。しかし、免許取消等の要件を定める法四三条一号の規定は抽象的であつて、これだけでは具体的な事実を知ることが不可能であるし、本件公示のように違反したとする法条だけが示されていても、これだけで処分原因となるべき具体的違反事実を当然に知ることができるとすることは無理である。 そうすると、利害関係人は、取消等の処分原因となるべき違反事実が告知されなければ、聴聞で適切な意見を十分述べ、証拠を提出することができないといわなければならない。したがつて、この告知が不必要であるとしてしまうと意見の陳述と証拠提出を保証している法一二二条の二第三項は、空文に帰すわけであるから、同項は、その前提として少なくとも被処分予定者に対しては、聴聞前に、処分原因となるべき具体的事実を告知することを予定しているものと解される。 2 もし、聴聞前には右の告知をする必要がないとすると、被処分予定者としては、公示された法条を手がかりにして、いかなる意味の違反もないことを主張、立証しなければならないことになる。しかし、そのような主張、立証は極めて困難な事柄であるばかりか、もし、これを試みるとすると、主張、立証事項が広範囲に亘り聴聞に要する時間が長くなり、かつ、 を主張、立証しなければならないことになる。しかし、そのような主張、立証は極めて困難な事柄であるばかりか、もし、これを試みるとすると、主張、立証事項が広範囲に亘り聴聞に要する時間が長くなり、かつ、事実についての不存在の主張、立証が一部脱落したり、あるいは極めて密度の低いものになつてしまうのである(本件でも現にそうなつている)。これでは、被処分者の利益を保護し、その関与のうえで正しい事実認定と判断をさせようとする聴聞の趣旨が没却されることが明らかである。 3 自動車運送事業免許の付与又は取消しは、いずれも憲法二二条一項の職業選択の自由に影響する重要な事柄であるから、その決定過程における被処分予定者の関与の方法については特段の考慮を必要とする(最高裁昭和四二年(行ツ)第八四号同五〇年五月二九日第一小法廷判決民集二九巻五号六六二頁参照)。とりわけ、免許の取消しは、免許付与拒否に比して、被処分者に与える影響が大きいのであるから、より特段の考慮をする必要がある。すなわち、免許を受けた自動車運送事業者は、新たな免許申請者とは異なり、既に事業を行うための自動車、建物、従業員の確保などのため多大の投資をしているのが通常である。ところが、免許が取り消されると、これらの投資が無意味になつて事業者に大きい損害を与えることになる。 そのうえ、免許を受けた自動車運送事業者は、公益のために、事業計画に従つて運輸を行い(法七条、一九条)、運送申込を拒絶してはならず(一五条)、運送の順序(一六条)、運賃(八条)、運送約款(一二条)などに規制が加えられるなどの制約を受けているのである。このように事業者に公益のための制約を受けさせて来たことは、逆に事業者の地位が不当に奪われないよう保護すべき必要性が高いということになる。 このように免許取消しが事業者に与える影響が重大であ である。このように事業者に公益のための制約を受けさせて来たことは、逆に事業者の地位が不当に奪われないよう保護すべき必要性が高いということになる。 このように免許取消しが事業者に与える影響が重大であるということは、とりもなおさず免許取消しの処分過程での事業者の関与の程度に強い配慮をすることが要請されるのである。 このようにみてくると、陸運局長は、聴聞の目的とそれを必要とする趣旨に従い、被処分予定者の意見と証拠とを十分に提出することが可能になるように聴聞前に、取消等の処分原因となるべき具体的違反事実を告知する必要があることになる。 4 更に、法四三条各号の取消等の原因となるべき事実の重要性に注目しなければならない。 一般的にいつて、裁量権行使の基礎となる事実、あるいは裁量的要素の加わる基準の判断の基礎となる事実は、その性質上、極めて広範囲に亘り、その内容を一義的に決定することは困難であり、しかも個々の具体的事情は判断の一要素としてしか考慮されないのであるから、個々の具体的事実は判断にとつて決定的なものではない。 しかし、法四三条各号の事実は、免許取消し等の直接の根拠となるべきものであつて、その事実がなければどのような処分も許されず、しかも、その要件の有無の判断について陸運局長の裁量を加えることができない点において、右事実は、免許取消し等の処分に決定的な影響を与えるものである。 そうすると、このような性質を有する法四三条各号の要件については、聴聞で、被処分予定者に対して、意見と証拠をより十分に提出することを可能にするような手続がとられなければならない。 5 免許を剥奪する処分については、その処分原因を免許者に告知したうえで聴聞を行うべきものとしている法規は、自動車運転免許の取消し(道路交通法一〇四条一項)、銃砲刀剣所持許可の取消し(銃砲刀剣類所 5 免許を剥奪する処分については、その処分原因を免許者に告知したうえで聴聞を行うべきものとしている法規は、自動車運転免許の取消し(道路交通法一〇四条一項)、銃砲刀剣所持許可の取消し(銃砲刀剣類所持等取締法一二条二項)、火薬類製造販売業許可の取消し(火薬類取締法五四条二項)の場合のほか数多くあるが、これらと、自動車運送事業免許の取消しとを比較したとき、免許者の地位、取消しの被処分者に与える影響、処分の迅速性への要請などの点で、後者つまり運送事業免許者の方が聴聞手続における保護の点で軽くてもよいとする理由を見出すことができない。したがつて、このことは、後者の聴聞について、処分原因となるべき事実を被処分予定者に告知しなければならないとする一つの理由になる。 (二) 被告のこの点に関する主張について判断する。 1 被告は、原告会社は法によつて免許を受けた運送事業者として注意深く事業を管理していた筈であるから、いかなる違反事実があるかは十分に知悉しており、その点からも十分な弁解ができなかつたことはない、と主張している。 確かに、法によつて免許を受けた運送事業者は、法や運輸規則などの法規を遵守しなければならないから、法規に違反する行為があつた場合にはそれを知りうることもある。 ところで、今問題になつているのは、被告が取消し等の処分原因となると考えている事実を告知しなくても、原告会社が正確にこれを知りうるかということであるが、運送事業者の遵守すべき事項は極めて多岐に亘り、その解釈も一義的でないうえ、運送事業者の代表者が常にその業務の全般について調査をしなくても常に知悉しているわけのものではない。したがつて、免許を受けた運送事業者が、陸運局長が処分原因になると考えている具体的事実を当然に知ることができるとすることは無理である。 2 被告は、法一二二条の 常に知悉しているわけのものではない。したがつて、免許を受けた運送事業者が、陸運局長が処分原因になると考えている具体的事実を当然に知ることができるとすることは無理である。 2 被告は、法一二二条の二の聴聞は、事業についての調査の一環として行われると主張している。これは、聴聞は、処分の可否を決定するための資料収集、調査を主な目的とするもので、被処分予定者の手続的利益保護は大きい目的になつていないという趣旨に解される。 一般的に、聴聞とは、単なる資料収集、調査のみの手続ではなく、被処分予定者など利害関係人に、論点に関する主張、立証を許すことにより、その手続的利益を保護し、これにより正しい事実認定と判断の上に立つた行政処分をさせようとする手続であることは、聴聞を規定している各種の法規によつて明らかである。法の聴聞について考えても、法一二二条の二第三項が前述したように利害関係人に、意見を述べ、証拠を提出する機会が与えられなければならないとしている点から、この聴聞が単なる資料収集だけの手続ではないことが明白である。もつとも、施行規則六三条は、事案について「調査を開始しようとするときは」、その旨を公示しなければならないと規定している。しかし、右規定は公示に関する規定であつて聴聞自体に関する規定ではないから、施行規則六三条の「調査」という文言は、施行規則の上部法規である法一二二条の二が規定する聴聞の目的が前述した趣旨であると解する妨げにならない。 また、陸運局長は、一般的な任意調査を行う権限を有するほかに、法一二六条により報告を求め、立入検査をし、質問をすることもできるのであるから、聴聞前に、処分原因となるべき具体的事実を把握して、これを被処分者に告知することが困難であるとはいえないのである。このことは、被告は、本件聴聞を行なつてから後、原告会社に こともできるのであるから、聴聞前に、処分原因となるべき具体的事実を把握して、これを被処分者に告知することが困難であるとはいえないのである。このことは、被告は、本件聴聞を行なつてから後、原告会社に対し、なんらの調査をしていないことからも裏付けられる。 3 被告は、取消原因となるべき事実の告知を要求する明文の規定がないいことを強調している。 しかし、法一二二条の二第三項が、その告知を当然の前提にしていることはすでに説示したとおりであるし、このような問題については、法の他の規定の内容、聴聞の目的や趣旨、処分の重要性、処分の要件などを考慮に入れて判断すべきものである(前記最高裁昭和五〇年五月二九日第一小法廷判決、最高裁昭和四〇年(行ツ)第一〇一号同四六年一〇月二八日第一小法廷判決民集二五巻七号一〇三七頁参照)から、直接の明文の規定がないことだけを判断の要素とすることはできない。 (三) まとめ以上の理由により、陸運局長が法四三条の免許取消し等の処分のための聴聞をするに当つては、運送事業免許を受けている被処分予定者に対しては、事案の公示後、聴聞前に免許取消し等の処分原因となるべき具体的違反事実を告知しなければならない。 ところが、被告は、本件聴聞前に、原告会社の再三の要求にも拘らず、具体的違反事実を原告会社に告知したことはなく、そのため、原告会社は処分原因となつた個々の違反事実について十分の主張、立証ができなかつたことは前記認定のとおりである。そのうえ、被告が右の告知をしなかつた理由には何らの正当性を見出すことができない。 そうすると、本件聴聞はこのような違法な手続に基づいてされた点で違法である。 三本件処分の違法性について(一) 本件聴聞が違法であることは、前に説示したとおりであるから、このような違法な本件聴聞を前提にした本件処分は、違法とい な違法な手続に基づいてされた点で違法である。 三本件処分の違法性について(一) 本件聴聞が違法であることは、前に説示したとおりであるから、このような違法な本件聴聞を前提にした本件処分は、違法といわなければならない。 (二) 被告は、本件処分の原因となる法四三条一号の事実を別紙第一のとおり具体的に主張し、本件処分が同号に適合した適法なものであると主張している。 しかし、被告が、本件聴聞に際し、被処分予定者に対し、取消原因となるべき具体的事実を告知しなかつた本件聴聞の瑕疵は、聴聞制度の目的に反する重大な瑕疵であるから、この瑕疵は、本件処分に実体的根拠があるかどうかに拘らず、本件処分を取り消すべき事由になると解するのが相当である。 もつとも、前記最高裁昭和五〇年五月二九日第一小法廷判決は、運輸審議会の公聴会審理において、自動車運送事業免許の申請者に対し、事業計画の問題点をより具体的に指摘して、この点に関する意見、資料の提出を促さなかつた手続の不備があるが、そのような指摘と促しがあつたとしても申請人において運輸審議会の認定判断を左右するに足りる意見と証拠を追加提出しうる可能性がなかつたから、右の手続の不備は、公聴会審理を要求する法の趣旨に違背する重大な違法とするには足りず、申請却下処分を取り消すべき理由とはならないとしている。 しかし、右判例では、違法とされた点が、一種の釈明義務違反であり、しかも違法の程度が「主張立証の機会を与えるにつき必ずしも十分でないところがあつた」程度のものであつたのに対し、本件では、違法な点は、手続上最も重要な事項である聴聞対象の処分原因となるべき事実の告知をしなかつたという点にあり、その違法性の程度に大きな差がある。しかも、聴聞(公聴会審理)の対象となるべき事実が、右判例では技術上、公益上の見地から裁量の余地のある事項 の処分原因となるべき事実の告知をしなかつたという点にあり、その違法性の程度に大きな差がある。しかも、聴聞(公聴会審理)の対象となるべき事実が、右判例では技術上、公益上の見地から裁量の余地のある事項であつたのに対し、本件では裁量の余地を残さない処分原因事実であつて、個々の事実の存否が処分に対し与える影響の重要性において大きな差がある。そのうえ、争われた処分は、右判例では免許申請却下処分であつたのに対し、本件では免許取消処分であつて、被処分者に対する影響の重大さに大きな差があるのである。 そして、最高裁昭和二九年(オ)第七六二号同三一年七月六日第二小法廷判決民集一〇巻七号八一九頁は、争われた処分が警察官の懲戒免職という権利剥奪処分であり、処分原因、すなわち聴聞の対象が裁量の加わらない事項である場合について、審問前に申立書写を送付して懲戒原因を告知しなかつたのは違法であるとしたうえ、「本件懲戒処分もまた違法として取消を免れない」としているが、ここではこのような送付、告知があれば原告側において被告の認定判断を左右するに足る意見と資料を提出しうる可能性があつたかどうかは全く考慮されていないのである。 そこで、当裁判所は、本件は、最高裁昭和五〇年五月二九日判決の事案とは異なり、最高裁昭和三一年七月六日判決の事案と同じであると考えるから、後者の判例に従うことにする。したがつて、原告会社が、聴聞前に、処分原因となるべき具体的事実の告知を受けていたとすれば、被告の認定判断を動かすに足りる意見と資料を提出しうる可能性があつたか否かは、本件処分を前記理由により取り消すべきかどうかの判断に影響を与えないのである。 四むすび原告会社の主張するその余の点について判断するまでもなく、本件処分を、以上の理由によつて取り消すこととし、行政事件訴訟法七条、民訴法八九条に べきかどうかの判断に影響を与えないのである。 四むすび原告会社の主張するその余の点について判断するまでもなく、本件処分を、以上の理由によつて取り消すこととし、行政事件訴訟法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。 (裁判官古崎慶長井関正裕小佐田潔)別紙第一本件処分の対象となつた道路運送法(以下「法」という。)及び同法第三〇条に基づく自動車運送事業等運輸規則(以下「運規」という。)違反の事実は次のとおりである。 一法第二四条(区域外運送)原告が免許を受けた事業区域は、大阪市、堺市、守口市、東大阪市(昭和四二年二月一日、新たに東大阪市となつた旧枚岡市を除く地域に限る。)、門真市、八尾市(恩智川以西の地域に限る。)及び豊中市・池田市のうち大阪国際空港内の地域である。 違反事実 1 乗務記録によつて判明した違反事実(監査対象は、昭和五三年四月一七日分)は次のとおりである。 2 乗務記録を運行記録計による記録と照合することによつて判明した違反事実(監査対象は、昭和五三年四月一七日分)は次のとおりである。 3 聴聞手続において判明した違反事実は次のとおりである。 なお、監査時(昭和五三年六月八日、以下同じ。)に右1及び2の違反事実があつたこと、並びに聴聞手続において右3の違反事実が認められたことは、昭和五一年一〇月四日及び昭和五三年一月一三日に区域外運送について、大阪府陸運事務所長から文書警告を受けているにもかかわらず、違反を反覆継続していたことを示すものである。 二法第二五条(事故の報告)自動車事故報告規則(昭和二六年一二月二〇日運輸省令第一〇四号)第二条、第三条参照。 違反事実昭和四九年一月以降、昭和五三年七月までの間に、五一件の事業用自動車による事故が発生し、そのうち、自動車事故報告規則に定める届出義務のあるものは 日運輸省令第一〇四号)第二条、第三条参照。 違反事実昭和四九年一月以降、昭和五三年七月までの間に、五一件の事業用自動車による事故が発生し、そのうち、自動車事故報告規則に定める届出義務のあるものは、昭和五三年一二月末日までに判明しただけでも四三件であるが、届出がなされたのは右のうち僅か五件に過ぎず、その余の左に掲げる三八件については届出をしていない。 三法第二五条の二第一項(運行管理者)運規第二五条の二参照違反事実 1 昭和四九年九月一〇日にHを運行管理者として選任した旨大阪陸運局長に届出ていたが、同人を解任した旨届出た昭和五三年七月五日まで現実には右Hを運規第三二条の二所定の運行管理者の処理すべき事項から全く排除していた。 2 昭和五一年六月二一日にPを運行管理者として選任した旨届出ていたが、運行管理者の処理すべき運規第三二条の二第一四号・第一七号所定の事故に関する事項を排除し、事故惹起者に対する指導監督を実施させていなかつた。 3 右Pが昭和五三年四月二〇日から退職した同年六月九日までの無断欠勤していた期間、及び同人が退職してから同年六月二一日にQを運行管理者として選任するまでの期間、新たな運行管理者を選任しなかつた。 四運規第二一条第三項(過労防止)同項にいう疲労により安全な運転をすることができないおそれがある運転者の意義については、昭和四二年二月九日、基発第一三九号労働省労働基準局長より都道府県労働基準局長あて通達「自動車運転者の労働時間等の改善基準について」の二(1)ロ及びハにおいて、隔日勤務運転者の実作業時間(同通達の二(1)イ参照)を一日(同通達の二(1)ロにいう一日、以下同じ。)一六時間を超えないこととし、また、時間外労働についても、季節的繁忙又は、地域特殊事情により公衆の不便を避けるため必要があるときでも二時間以 参照)を一日(同通達の二(1)ロにいう一日、以下同じ。)一六時間を超えないこととし、また、時間外労働についても、季節的繁忙又は、地域特殊事情により公衆の不便を避けるため必要があるときでも二時間以内としているので、これに基づき、一日一八時間を超える乗務をした者が、右に該当するものと解した。なお右通達においては、実作業時間により定めているが、原告について、実作業時間を明らかにすることはできないので、運行記録計による記録に基づく乗務時間によつて主張することとした。 違反事実昭和五三年四月度(同月の給与期間をいう。原告の場合三月二一日から四月二〇日まで、以下同じ。)において運転者一八名のうち別表一のとおり一三名について一日、一八時間を超えた乗務をさせて、疲労により安全な運転をすることができないおそれがある運転者を乗務させた。 五運規第二一条の二第五項(乗務距離の最高限度)同項にいう指定地域は、大阪府においては、大阪市、堺市、東大阪市のうち旧布施市の地域及び守口市である。 原告の場合、昭和四四年五月一日に隔日勤務の運転者について、一日、三五〇キロメートルと定めた旨届け出ている。 違反事実昭和五三年四月度に乗務した隔日勤務の運転者八四名中七〇名について別表二のとおり乗務距離の最高限度(三五〇キロメートル)を超えた乗務をさせていた。 六運規第二二条第三項(点呼等)違反事実昭和五三年四月一八日ないし二〇日、五月四日、同月七日ないし一〇日、同月二七日ないし三〇日について点呼した旨を記録していなかつた。 七運規第二二条の二第三項(乗務記録)違反事実 1 昭和五三年四月一七日、同月一八日の稼働車両延一〇二両のうち、出入庫時刻の記入のないものは次のとおりである。 2 昭和五三年四月一七日の稼働車両五四両のうち乗務記録を運行記録計による記録と照合する 昭和五三年四月一七日、同月一八日の稼働車両延一〇二両のうち、出入庫時刻の記入のないものは次のとおりである。 2 昭和五三年四月一七日の稼働車両五四両のうち乗務記録を運行記録計による記録と照合することにより、乗務記録の記載が不実と判明したものは、次のとおりである。 3 監査時に乗務記録の保存を事業用自動車ごとにしていなかつた。 八運規第二二条の三第二項(運行記録計による記録)違反事実 1 昭和五三年四月一七日、同月一八日の稼働車両延一〇二両のうち(一) 監査時に四月一七日大阪五五う六二五号車に乗務した運転者日野勲の運行記録計による記録を保存していなかつた。 (二) 運行記録計による記録に運転者名を記入していなかつたものは次のとおりである。 2 監査時に運行記録計による記録の整理保存を運転者ごとにしていなかつた。 九運規第二五条の七第一項(一四日未満の期間ごとの賃金の支払い)違反事実昭和五三年四月度九八名、五月度九六名の運転者のうち、別表三のとおり、四月度四一名、五月度四〇名の運転者に対し、所定の給与支給日(毎月二八日)以外に厚生資金、本人未収金、釣銭及び公休出勤者に対する支払いの名義で二回以上の給与の前払いをした(二回以上の給与の前払いをすれば、本給を含めると、一四日未満の期間ごとの賃金の支払いをしたこととなる。)。 一〇 運規第二五条の七第二項(新たに雇い入れた者に対する指導教育)違反事実昭和五三年一月以降同年六月三日までに採用した次の運転者一六名について、所定の五日間の指導教育を行わず、運転者として選任し、乗務させていた。 一一運規第二五条の八(乗務員台帳)違反事実 1 昭和五三年四月以降に運転者として選任したR、S、Tの三名について乗務員台帳を作成していなかつた。 2 監査時に、昭和五三年の賃金台帳にある運転者一一六名のうち、 五条の八(乗務員台帳)違反事実 1 昭和五三年四月以降に運転者として選任したR、S、Tの三名について乗務員台帳を作成していなかつた。 2 監査時に、昭和五三年の賃金台帳にある運転者一一六名のうち、U、V、W、X、Y、Z、P1、P2の八名の乗務員台帳を備え付けていなかつた。 3 監査時に、P3、P4、P5、P6、P7以上五名の退職者の乗務員台帳を保存していなかつた。 一二運規第二六条第一項(乗務員の指導監督)違反事実安全運行のための運転技術並びに法令に定める自動車の運転に関する事項について適切な指導監督を怠つていた。 の事実は、前記三に述べたとおり運行管理者として選任した者につき運行管理者の処理すべき事項から排除していたこと及び原告会社につき次表のとおり事業用自動車による交通事故が多発していることから明らかである。 (注)1「原告の聴聞手続において明らかとなつたもの」は、「大阪府警察本部からの通報により明らかとなつたもの」との重複分は除く。 2 「原告の聴聞手続において明らかとなつたもの」は退職者分のみである。 ちなみに、大阪府における運輸事業用自動車による昭和五三年一年間の交通事故発生件数は、事業用自動車一千台当り年間四三・三件であつて、原告の事故は格段に多いものとなつている。 一三運規第二六条の二(地理及び応接の指導監督)違反事実昭和五二年一〇月三一日(立入調査時)から監査時までの間、事業区域内の地理並びに旅客及び公衆に対する応接に関して適切な指導監督を怠つていた。 一四運規第二六条の三第四項(指導要領による指導監督)違反事実監査時に指導要領による指導監督の記録を全く保存していなかつた。 一五運規第三〇条(消毒等)違反事実監査時に事業場内にあつた次の四四両全車に消毒剤の表示をしていなかつた。 一六運規第三一条第一号(点検整備 導要領による指導監督の記録を全く保存していなかつた。 一五運規第三〇条(消毒等)違反事実監査時に事業場内にあつた次の四四両全車に消毒剤の表示をしていなかつた。 一六運規第三一条第一号(点検整備等)道路運送車両法第四八条第一項、自動車点検基準(昭和二六年八月一〇日運輸省令第七〇号)第二条第二項、別表第二のうち高圧ガス燃料とする燃料装置等の項参照。 違反事実定期点検整備において、一か月点検整備項目のうち、導管及び接手部のガス漏れ検査を実施していなかつた。 別表一~三(省略)別紙第二一処分にあたつて考慮した事情 1 原告の違反歴原告の本件処分に至るまでの違反事項に対する行政処分の経緯は別紙一に示すとおりである。 原告は、昭和二六年一二月二〇日に一般乗用旅客自動車運送事業の免許を受けて以来、昭和二九年三月二四日、被告から文書による警告を受けたのを初め、昭和五三年六月八日の特別監査までの間において、事業停止三〇日、事業用自動車の使用停止八回、延べ四四七日車(日車とは、使用停止車両数に使用停止日数を乗じた単位である。)の処分、並びに、一一回に及ぶ文書による警告を受け、原告は、その都度文書によつて改善する旨約しているにもかかわらず、同種の違反を繰り返していた。 2 原告の法令違反に対する改善状況今回の特別監査以降、本件処分に至るまでの間において、次の事実があり、原告において適切な法令遵守の措置を講じていなかつたことが明らかである。 (一) 原告の運転者であるP8は、昭和五三年八月一四日午後八時頃、大阪五五い五四五五号車による乗務を開始し、同月一五日午前六時三〇分頃、豊中市<地名略>において交通事故を惹起して死亡したが、右の一〇時間三〇分にわたる乗務時間中殆んど休憩を取つていなかつた(過労運転)。 なお、当該運転者については昭和五二年一〇月 日午前六時三〇分頃、豊中市<地名略>において交通事故を惹起して死亡したが、右の一〇時間三〇分にわたる乗務時間中殆んど休憩を取つていなかつた(過労運転)。 なお、当該運転者については昭和五二年一〇月三一日に大阪府陸運事務所の行つた査察(査察とは監査のうち昭和五二年五月の運賃改定実施に伴い、主として労働条件等の改善状況について実施したものである。)において過労運転の面で指摘を受け、昭和五二年一一月七日原告の提出した「査察による指導・改善報告書」で改善方について約していた。 (二) 原告の運転者でP9は、昭和五三年一二月一七日、大阪五五い六二八〇号車に乗務中、午後一一時三五分頃、大阪市<地名略>の堺筋<地名略>附近において、<地名略>まで輸送申込みのあつた旅客に対し、正当な理由なくその運送の引受けを拒絶した。 (三) 原告の運転者であるP10は、昭和五三年一二月一六日、<地名略>車に乗務中、午前零時頃、原告の免許を受けた事業区域外である神戸市<地名略>阪急電鉄三宮駅山側路上において不法に客待駐車をしていた。 3 原告の事業管理体制(一) 原告会社では、昭和四九年以降事業用自動車による交通事故が急増しており(第一準備書面一二丁参照)、原告において、これを当然知り得べきであつたが、その事実を把握せず、したがつて事故防止のための適切な対策を実施していなかつた。 (二) 監査時における原告関係者によるタクシー事業の管理体制、及び、同関係者の自動車事故による保険金詐欺事件への関与は、次のとおりである。 右のとおり、原告は、従業員に対し、輸送の安全及び旅客の利便を確保するため誠実に職務を遂行するように指導しなければならない(運規第二条第三項)にかかわらず、原告代表者兼指導主任者D自らが昭和四九年九月から同社運転者を対象とした「河本屋」名儀のいわゆる「サラ 確保するため誠実に職務を遂行するように指導しなければならない(運規第二条第三項)にかかわらず、原告代表者兼指導主任者D自らが昭和四九年九月から同社運転者を対象とした「河本屋」名儀のいわゆる「サラ金」業を経営し昭和五三年四月末までの間に延べ二六九名計六、五〇〇万円余を貸付け、社内において「サラ金」を当然とする環境を醸成したため、原告会社幹部の大半が社内において自社運転者を対象に「サラ金」業を経営し、運転者の偽装事故による保険金詐欺に関与したとして起訴された。 一方、原告運転者は、会社幹部の経営する「サラ金」業から高額の借り入れをし、その返済が困難になるとあらかじめ多額の保険(生命保険で入院給付金つきのもの)に加入し、その後業務中又は私用運転中故意に交通事故を起こして長期間入院し、よつて入院給付金を騙し取つていた。 これらは、原告が、自己の利益追求のみを目的とし、自社内の管理職及び運転者に対する指導監督を著しく懈怠していたためであつて、原告における適切な事業管理体制が確立されていなかつたことの証左である。 4 原告の事業改善対策原告は、会社幹部を含めた保険金詐欺事件により社会的非難を受けていた間の昭和五三年五月二〇日に株主総会及び取締役会を、また、昭和五三年八月二二日に取締役会を、それぞれ開催しているが、事業改善の方策について何ら検討されなかつた。 二原告に対する本件処分の妥当性前述のとおり、原告は、免許を受けた一般乗用旅客自動車運送事業者(以下、タクシー事業者という)として法令遵守の精神が欠如し、タクシー事業者として不適格であり、今後においても改善の期待は持てず、原告に対し今回、被告の行つた本件処分は妥当というべきである。 なお、昭和四五年五月一九日法律第七五号「タクシー業務適正化臨時措置法」の参議院附帯決議において、道路運送法等法 ても改善の期待は持てず、原告に対し今回、被告の行つた本件処分は妥当というべきである。 なお、昭和四五年五月一九日法律第七五号「タクシー業務適正化臨時措置法」の参議院附帯決議において、道路運送法等法令違反の悪質事業者に対しては、免許の取消をも含め、厳重な処分を行うことが要望されている。 別紙第三被告の別紙第一の主張に対する原告会社の認否、主張別紙第四一被告の別紙第二の一の主張に対する原告会社の認否、主張1について処分のあつたことについては認める、但し、昭和二九年三月二四日から三六年七月一五日ころまでの処分は不知。その余は争う。 2の(一)についてP8が交通事故で死亡したことは認めるが、その余は争う。 2の(二)についてP9の乗車拒否は否認、乗車せんとした人が客持ちの順番を無視して乗車しようとしたもので、正当な事由があつた。 2の(三)について認める。 3の(一)について争う。 3の(二)について代表取締役が貸金業をしていたことは認めるが、従業員が従来、会社の厚生資金借入れをしていたのを会社に代わつて貸付回収をするためのもので、対外的に貸金をしたものでなく、一時的になしていたものである。 代表者以外の者、P11、P12、P13、H、Pが保険詐欺事件で刑事事件で責任を問われ、また審理中であることは認めるが、原告会社とは関係がない。 その余は何れも争う。 4について争う。 二本件行政処分は裁量権の範囲を逸脱した違法がある 1 原告は、昭和五三年六月八日、非番の運転手に一日二万円前後で遊休タクシーを賃貸して、労働基準法の基準を上回る労働をさせたという理由のもとに、被告の特別監査をうけたが、この監査の主目的であつた右の違反事実は全く存在しなかつたのである。 そして、右特別監査により指摘された違反事実は被告の指導を仰いで、昭和五三年九月二 という理由のもとに、被告の特別監査をうけたが、この監査の主目的であつた右の違反事実は全く存在しなかつたのである。 そして、右特別監査により指摘された違反事実は被告の指導を仰いで、昭和五三年九月二六日までにすべて改善している。 原告は従来から日々車両の点検整備を怠つたことはないが、特別監査後は運行管理ないし安全管理面で改善を加え、法規を遵守して、輸送の安全維持向上に格別の配慮を払らい、社会的信用も得て公共の福祉増進に寄与しており、現在運転者七八名、事務職員等一八名を雇用しているものであつて、特に、一般業者に対するものより不当に重い処分を受ける事情はなかつた。 2 法第三三条によれば運輸大臣は自動車運送事業者の事業について、公共の福祉を阻害している事実があると認められるときは、各種の事項に亘り、事業改善命令をすることができると規定されていて、法的重大な違反事項についても、先ず、改善命令をもつて是正し、これによつて改善の実がみられないときに、初めて、事業停止又は免許取消等の重い処分をなす趣旨であることが窺える。 従来も業者の違反事実が発見された場合においては何れも先ず改善命令をなし、これが効果の見られないときに、初めて、制裁的な処分をなし、しかもその処分は一部車両の使用停止に止つているのが実情である。 3 行政庁の自由裁量が認められる場合においても、法に適合したものでなければならず、しかも公共の目的に適合するものであることを必要とし、これに反する処分は完全にその効力を生ずるものではない。ことに、原告が許された事業免許は、一般に業としては禁ぜられているものを解除するという効力を付与するもので、他面これが業者の生活的手段となつているものである。このような免許取消しの処分は法規により、取消しの裁量が規制される法現裁量であると解される。 ところで、被告 のを解除するという効力を付与するもので、他面これが業者の生活的手段となつているものである。このような免許取消しの処分は法規により、取消しの裁量が規制される法現裁量であると解される。 ところで、被告はこの裁量権の範囲を規制する客観的な基準を明確に確定しておらず、また免許取消しのため具体的基準をも示さず、抽象的な取消し規定があるからとて、原告に対しては行政指導ないしは事業改善命令の措置も経ずに、直ちに、事業免許取消の重い処分をしたことは、著しく法の趣旨に反し、従来の措置と異つて不当に重く処分をしたもので、法規による裁量権の範囲を逸脱した違法な処分と言わざるを得ない。

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