平成13(行コ)17 公金支出差止等及び各損害賠償請求控訴事件〔原審・名古屋地方裁判所平成10年(行ウ)第48号(原審甲事件),同第54号(原審乙事件),平成11年(行ウ)第30号(原審丙事件)〕

裁判年月日・裁判所
平成14年2月28日 名古屋高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文9,698 文字)

主文 1 原判決主文第2項のうち,平成13年3月及び同年9月の各公金支出につき,被控訴人愛知県知事に対する支出命令の差止め及び被控訴人愛知県出納長に対する支出の差止めの各請求を棄却した部分を取消し,同各請求にかかる訴えを却下する。 2 その余の本件控訴をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は第1,2審とも控訴人らの負担とする。 事実及び理由 (以下,略語は,原則として原判決に準ずる。)第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(1) 原判決を取り消す。 (2) 本件訴えのうち,平成11年9月,平成12年3月及び同年9月に行った各公金の支出並びに平成22年9月から平成30年3月までの毎年3月及び9月に行う各公金の支出につき,被控訴人愛知県知事に対しその支出命令の差止めを求める部分及び同愛知県出納長に対しその支出の差止めを求める部分を,いずれも名古屋地方裁判所へ差し戻す。 (3) 長良川河口堰(本件堰)共用施設負担金その他本件堰の関連事業資金に充てるため,愛知県一般会計から同工業用水道事業会計に対して平成13年3月以降平成22年3月までの毎年3月及び9月になされる出資,長期貸付けその他一切の名目による公金の支出につき,被控訴人愛知県知事は支出命令を,同愛知県出納長は支出をそれぞれ行ってはならない。 (4) 被控訴人Aは愛知県に対し,16億5328万8146円及びこれに対する平成10年9月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 被控訴人Bは愛知県に対し,16億6680万9508円及びこれに対する平成11年3月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被控訴人ら(1) 本件控訴をいずれも棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,長良川河口堰(本件堰)の建設 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被控訴人ら(1) 本件控訴をいずれも棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,長良川河口堰(本件堰)の建設事業費用のうち工業用水道分の愛知県の負担金(元利金及び消費税合計約500億円,各期約11億円)及び本件堰の維持管理費用(各期約6億円)として,愛知県企業庁から水資源開発公団(公団)へ平成7年9月から平成30年3月までの毎年3月及び9月に支払う負担金(本件負担金)の支払資金に充てるため,愛知県一般会計から同県工業用水道事業会計(特別会計)へ長期貸付け,出資等の方法で公金を支出すること(本件貸付け)につき,愛知県住民である控訴人らが,違法な公金の支出であると主張して,(地方自治)法242条の2第1項に基づいて提起した住民訴訟である。 控訴人らの請求は,本件貸付けが平成30年3月までの毎年9月と3月に行われるとして,平成11年9月以降分については,同条1項1号に基づき,被控訴人愛知県知事による支出命令の差止め及び同愛知県出納長による支出の差止めを求め(原審甲事件),それより前になされた公金の支出については,不法行為が成立するとして,同条1項4号前段に基づき,愛知県に代位して,前知事の被控訴人Aに対し平成10年9月分の支出(本件貸付け①)につき(原審乙事件),現知事の被控訴人Bに対し平成11年3月分の支出(本件貸付け②)につき(原審丙事件),各支出額と同額の損害賠償及び遅延損害金(各支出の日の翌日から民法所定の年5分の割合)の支払を求めたものである。 原審では,被控訴人らから,本案前の主張として,(1)県の一般会計から特別会計への長期貸付けは法242条の2第1項の住民訴訟の対象となる行為に当らず,(2)被控訴人A及び同Bは同項4号の「当該職員」に 審では,被控訴人らから,本案前の主張として,(1)県の一般会計から特別会計への長期貸付けは法242条の2第1項の住民訴訟の対象となる行為に当らず,(2)被控訴人A及び同Bは同項4号の「当該職員」に該当せず,(3)公金の支出差止めについて監査請求を経たが,その後になされた本件貸付け①及び②については監査請求を経ておらず,(4)仮に監査請求を経ることを要しないとしても,被控訴人Bに対する訴えは,控訴人らが本件貸付け②を知り得たときから30日を経過した後に提起された不適法なものであるとの主張がなされたところ,原判決は,これらの本案前の主張をいずれも排斥したが,本件差止請求のうち,原審口頭弁論終結時までに実行された公金支出(平成11年9月から平成12年9月までのもの)については差止めを求める利益がなくなり,平成22年9月以後の公金支出については支出の確実性がないとして,その各差止めを求める部分の訴えをいずれも却下し,その余については,公金支出に違法性が認められないとして,請求をいずれも棄却したので,控訴人らがこれらを不服として控訴したものである。 2 争いのない事実等,争点及び当事者の主張は,次のとおり改め,当審での主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」の第2の1ないし3のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決の訂正原判決11頁8行目の「乙・丙事件」を「丙事件」と,18頁1行目の「工業用水道事業だけを独立採算の原則を」を「工業用水道事業だけに独立採算の原則を」とそれぞれ改める。 (2)争点についての主張の補充ア争点(1)(住民訴訟の対象性)について(被控訴人ら)国家財政においては会計間の繰入を「支出」とする明示の規定(財政法2条3項)があるのに対し,地方財政に同様の規定がないということは,立法者において,住民監査請求や 対象性)について(被控訴人ら)国家財政においては会計間の繰入を「支出」とする明示の規定(財政法2条3項)があるのに対し,地方財政に同様の規定がないということは,立法者において,住民監査請求や住民訴訟制度のない国家財政とこれがある地方公共団体の財政とでは扱いを異にし,地方財政においては会計間の繰入を「支出」としないものと解するのが素直な文理解釈である。 工業用水道のようなインフラ事業は,直接サービスを受ける企業以外にも,地域経済・国民経済に帰する経済効果(外部効果)が多分に存するのであるから,サービスの供給を受ける住民と受けない住民とに区分して,その負担を特別会計と一般会計の区分に対応させるのは誤りであり,一般会計から特別会計への繰入は「支出」とみるべきではない。 イ争点(4)イ(本件負担金の支払義務の不発生)について(控訴人ら)地方公営企業として特別会計を設け,料金収入による独立採算を義務づけられている工業用水道事業は,その事業用資産である取水施設,水利権及びダム使用権などの固定資産(減価償却資産)を取得し,その取得費の支払義務を負うのであるから,工業用水道事業資産取得のための費用である本件負担金についての同意(公団法20条2項)は,地方公営企業の業務執行者である県企業庁長によって行われなければならない。 公団法29条1項は「流水を工業用水道の用に供する者」に費用を負担させると定めているところ,「工業用水道」は「工業用水」とは異なり「用水供給施設」を意味し,「供する者」と現在形で表現している点において同法20条2項の「供しようとする者」とは異なるうえ,負担金は水源施設で開発された用水の対価であるから,この用水を利用して収益を上げるに至っていない時点から費用を負担させるのは,経済取引の常識に反する。 (被控訴人ら)地方 する者」とは異なるうえ,負担金は水源施設で開発された用水の対価であるから,この用水を利用して収益を上げるに至っていない時点から費用を負担させるのは,経済取引の常識に反する。 (被控訴人ら)地方公営企業である県企業庁は,教育委員会や選挙管理委員会のように知事から独立した機関ではなく,その管理者である企業庁長は,あくまでも知事の補助職員に過ぎず,その業務執行権限は知事の執行権の範囲内にある。 公団への本件負担金は,愛知県が負担に同意し,公団が国と県の負担額等を定め,内閣総理大臣及び建設大臣(現国土交通大臣)が割賦支払の各条件を定め,これらに基づき公団が納付通知をしたことによりその支払義務が発生するものであり,行政処分たる賦課処分によるものであって,愛知県においてその支払を拒むことができないものである。 ウ争点(4)エ(本件貸付けは地方財政法の許容限界ないし裁量限界を超える違法な貸付けであるか)―当審での新たな争点(控訴人ら)県の一般会計から,独立採算義務を負う工業用水道事業会計(特別会計)へ長期貸付けをするには,工業用水を用いる工業用水道が建設されて工業用水道につき事業化の見通しや可能性があることが許容される限界(裁量性があるとしても裁量の限界)である。しかし,本件堰による工業用水には需要が見込まれず,これを利用する工業用水道事業の可能性がなく,県工業用水事業は,需要がない本件堰の負担金のために破綻しており,本件貸付けは回収の見込みがない。回収の見込みのない貸付けが許されないことは,財務会計上当然のことである。 被控訴人らは,水供給の安定を図るため,長期的な視点に立って計画的な水資源開発を進めてきたと主張するが,本件訴訟は需要のない工業用水道のために一般会計から長期貸付けをすることの是非を問うものであるから,本件堰による一般水道 定を図るため,長期的な視点に立って計画的な水資源開発を進めてきたと主張するが,本件訴訟は需要のない工業用水道のために一般会計から長期貸付けをすることの是非を問うものであるから,本件堰による一般水道への給水の必要性や渇水対策の必要性などは関連性がない。計画規模を大きく超えた災害である平成6年の渇水を除いて,取水制限が工業用水道を利用する事業所に影響を与えたことはなかったし,本件堰が完成後も本件堰から工業用水道給水設備が敷かれていないのであるから,本件堰は工業用水道の渇水対策には何ら役立っていないものである。 (被控訴人ら)産業経済の発展,社会情勢の変化に左右される工業用水道の需要動向は,常に過去と同一の傾向をたどるものではなく,特に愛知県では,中部国際空港の開港,第2東名・名神高速道路の開通などにより,経済の一層の発展が期待でき,企業における水利用の合理化が限界に近づいていることから,工業用水の需要は着実に増加すると思料される。 水資源の確保は,降雨という自然現象に頼らざるを得ないから,過去の実績から見た需要に応ずる程度の水資源を確保すれば足りるものではなく,相当程度余裕をもって確保する必要がある。本件堰が完成する前の平成6年の異常渇水では,これまで経験のない厳しい節水を余儀なくされ,愛知用水に頼る知多半島の地域では長時間の断水など厳しい渇水対策がなされたが,平成12年,13年の渇水時には,本件堰においては渇水がなく,本件堰を水源とする知多半島の水道用水は節水のない安定的な水供給がなされた。 先行的かつ長期的な水資源を確保すること,そのために必要な施設を建設して安定した水の供給を行うことは,極めて公共性の高い県の責務である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人らの本案前の主張はいずれも理由がないが,本件差止請求の一部 ために必要な施設を建設して安定した水の供給を行うことは,極めて公共性の高い県の責務である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人らの本案前の主張はいずれも理由がないが,本件差止請求の一部は訴訟要件を欠き,その余については控訴人らの本案の主張(本件貸付けの違法性)に理由がないと判断する。 その理由は,以下のとおり改め,当審での主張に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」の第3「当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。 2 本案前の主張について(1) 原判決18頁26行目の「本件口頭弁論終結時まで」から19頁1行目までを「当審の口頭弁論終結時までに,平成11年9月分から平成13年9月分までの毎年3月分と9月分の本件貸付けを行ったと認められる。」と改め,10行目の「ものと解されるが」から20頁1行目までを次のとおり,それぞれ改める。 「ものということになる。(地方自治)法242条の2第1項1号の差止請求については,当該行為がなされる可能性が相当の確実性をもって予測される場合であることを要する。証拠(甲2,15の1)及び弁論の全趣旨によれば,愛知県は,以前より水需要の予測を前提に,工業用水,水道用水の利用計画を立てて地方計画を定めてきたが,昭和40年(1965年)に定めた第3次地方計画以来,その定める地方計画において水需要の見込みを再三下方修正していること,平成10年に発表した第7次地方計画によると,同計画が目標年次とし,本件堰の使用開始を予定する平成22年(2010年)において,本件堰による工業用水(その開発水量は毎秒8.36立方メートル)のうち,尾張地域での工業用水の需要が見込まれるのは毎秒0.2立方メートル(全体の2.4パーセント)であり,西三河地域での水道用水が毎秒約2.4立方メートルの,工業用水が毎秒 秒8.36立方メートル)のうち,尾張地域での工業用水の需要が見込まれるのは毎秒0.2立方メートル(全体の2.4パーセント)であり,西三河地域での水道用水が毎秒約2.4立方メートルの,工業用水が毎秒約0.4立方メートルのそれぞれ水源不足が生ずることが見込まれ,本件堰によりこれを補うことが検討されていること,また,他方では,中部国際空港や第2東名・名神高速道路の計画等愛知県の産業経済発展の基盤整備の計画もあり,水需要を喚起するとの見方もあることが認められる。これらの事実に,将来の経済状況がどのような方向に進むかの予測は極めて困難であることを考慮すれば,上記第7次地方計画が目標年次とする平成22年より前は,控訴人らが差止めを求める上記支出が行われることは相当の確実性をもって予測されるといえるが,平成22年以降については,水需要の見込みが更に下方修正され,貸付金としての処理の廃止を含めて,工業用水事業の経営計画そのものの見直しがされる可能性も,あるいは,逆に,水需要の見込みが拡大し,工業用水道事業会計(特別会計)への貸付金としての支出が必要なくなる可能性も考えられないではなく,いずれにせよ,支出の確実性を予測できるとはいえないものというほかない。してみれば,平成22年度以降の支出の差止めを求める部分の訴えは不適法である。」(2) 争点(1)(住民訴訟の対象性)に関する被控訴人らの当審での主張について被控訴人らは,国家財政においては会計間の繰入を「支出」とする明示の規定(財政法2条3項)があるのに対し,地方財政に同様の規定がない点につき,立法者は住民監査請求及び住民訴訟制度がある地方財政については会計間の繰入を「支出」と扱わない意思であったと解するのが素直な文理解釈である等と主張する。 しかし,原判示のとおり,財政法2条3項は,経理上の便 住民監査請求及び住民訴訟制度がある地方財政については会計間の繰入を「支出」と扱わない意思であったと解するのが素直な文理解釈である等と主張する。 しかし,原判示のとおり,財政法2条3項は,経理上の便宜を図ると共に,総計予算主義の原則を実現するための規定であり,地方自治法においても総計予算主義が採用されているし(法210条),経理上の便宜を図る必要性のあることは国家財政と異なるものではないから,財政法と地方財政に関する法規の規定の仕方に差異のあることは,本件貸付けを住民訴訟の対象たる「支出」に該当するとの判断を妨げるものではない。 住民監査請求及び住民訴訟制度が設けられた趣旨に鑑みると,住民全体の利益を害するおそれが具体的に認められる財務会計行為を住民訴訟の対象とすべきことは原判示のとおりであり,同制度が設けられた地方財政について,その対象となる財務行為を狭く絞ろうとするのが立法者の意思であったとすべき合理的根拠は存しない。被控訴人らは,工業用水道のようなインフラ事業には地域経済及び国民経済に及ぼす経済効果(外部効果)が多分にあると主張するが,その外部効果を具体的に把握することは実際上困難であり,これがサービスを直接享受する利益と概ね匹敵するとみる根拠は何ら存しないから,法人格が同一であるとして,特別会計と一般会計との負担を区別する実益を消極的に解し,その間の繰入の「支出」該当性を否定する被控訴人らの主張は採用できない。 被控訴人らの上記主張はいずれも採用できない。 3 本案の争点について(1) 争点(4)イ(本件負担金の支払義務の不発生)に関する控訴人らの補充主張について控訴人らは,工業用水道の事業用資産である取水施設,水利権及びダム使用権などの固定資産は県企業庁が取得するのであり,その取得費の支払義務を負うのも県企業庁である 関する控訴人らの補充主張について控訴人らは,工業用水道の事業用資産である取水施設,水利権及びダム使用権などの固定資産は県企業庁が取得するのであり,その取得費の支払義務を負うのも県企業庁であるから,その取得費たる本件負担金の同意をするのは県企業庁長でなければならないと主張する。 しかし,被控訴人らが反論するように,地方公営企業の会計は一般会計から区分され,その管理者である県企業庁長は,通常の業務執行において県知事から独立した一定の権能を有しているものの,地方自治法上は知事から完全に独立した機関ではなく,あくまでも知事の補助職員であって、その業務執行権限は知事の執行権能に服するものであるから,企業庁長の上位機関である県企業庁長が公団法20条2項の費用負担の同意をしたことをもって違法とする理由はない。 また,控訴人らは,公団法29条1項所定の費用負担者の文言を「流水を工業用水道施設の用に現に供している者に費用を負担させる」と読むべきであるとし,用水を利用して収益を上げるに至っていない時点から費用を負担させるのは,経済取引の常識に反すると主張する。 経済取引の常識はさておき,公団法29条1項の「工業用水道の用に供する者」には,将来工業用水道の利用を予定されている者も含むと解するべきことは原判示のとおりであるし,更に,本件堰は,愛知県における工業用水としての利用をも目的として計画されて平成7年に完成し,この水資源開発施設から工業用水を取水することが可能な状態になっているが,県企業庁において工業用水道を建設するに至っていないものであることは控訴人らの認めるところであり,これらの経緯をも考慮すれば,同条項が,その建設費用の負担者側で用水を未だ使用していない時期において,その利用を予定されている費用負担者の費用負担を免れさせる趣旨を定めたも らの認めるところであり,これらの経緯をも考慮すれば,同条項が,その建設費用の負担者側で用水を未だ使用していない時期において,その利用を予定されている費用負担者の費用負担を免れさせる趣旨を定めたものと解することは相当でない。 本件負担金の支払義務は,平成7年3月2日付けで公団から愛知県知事に対し工業用水にかかる愛知県の負担割合を示して費用負担の同意を求め(公団法20条2項,乙イ8),同月6日付けで同知事がその同意をしたこと(乙イ9)を前提として,公団が愛知県知事に対し同年9月1日付けで納付通知を発したこと(乙イ11)により,愛知県が負うこととなった義務であるところ,公団の上記納付通知が,被控訴人らが主張するような行政処分(賦課処分)であるのかはさて措くとしても,この義務が愛知県側の一方的行為によって免れることができる性質のものであると解することはできない。また,知事の上記同意がその当時の状況に照らして明らかに違法なものであるとすることができないことも原判示のとおりである。 したがって,これらの点に関する控訴人らの主張は失当である。 (2) 争点(4)エ(本件貸付けは地方財政法の許容限界ないし裁量限界を超える違法な貸付けであるか)について控訴人らは,県の一般会計から工業用水道事業会計(特別会計)への本件貸付けは、回収の見込みがないのに実行されたものであり、このような貸付けが許されないことは財務会計上当然のことだと主張するが,どのような財務会計法規に違反するか具体的に主張をしていない。 控訴人らが本件貸付けの回収見込みがないとする根拠は,本件堰による工業用水に需要が見込まれず,これを利用する工業用水道事業の可能性がなく,工業用水道事業は本件堰の負担金のために破綻しているとする点であるが,先に認定したとおり,第3次愛知県地方計画以来, 堰による工業用水に需要が見込まれず,これを利用する工業用水道事業の可能性がなく,工業用水道事業は本件堰の負担金のために破綻しているとする点であるが,先に認定したとおり,第3次愛知県地方計画以来,工業用水需要の見込みは再三下方修正されているものであり,第7次愛知県地方計画では,計画の目標年次である平成22年において,尾張地域で工業用水の需要が見込めるのは毎秒0.2立方メートル(全体の2.4パーセント)にしか過ぎない等とされているもので,水需要の見込みが更に下方修正される見込みもないとはいえない。しかし,他方,前示のとおり,中部国際空港の開港,第2東名・名神高速道路の計画など,愛知県の経済発展の基盤整備の計画があるなどすることから,水需要も喚起されるとの見方もある上,将来の経済状況の予測が困難であることを考慮すれば,工業用水の需要が見込まれないと断定することは困難であり,したがって,本件貸付けの回収見込みがないと断ずることもできない。 本件貸付が地公企法18条の2に根拠を有する長期貸付けであること及び本件負担金について愛知県が公団に対してその納付義務を負うものであることは前示のとおりである。既に判示の諸事情,特に将来の見込みの予測の困難性等を考慮すれば,一般会計から工業用水道事業会計(特別会計)へ資金を貸し付け,県企業庁から公団へ納付するという方法を取ったことにつき,県知事の裁量に逸脱や濫用があるとはいえない。 いずれにせよ,この争点に関する控訴人らの主張も理由がない。 第4 結論よって,控訴人らの本件請求のうち,当審口頭弁論終結時までに支出がなされた平成13年9月分以前の公金の支出等の差止めを求める部分及び平成22年9月分以後の公金の支出等の差止めを求める部分は,いずれも不適法であるから却下すべきであり,平成14年3月から平成 支出がなされた平成13年9月分以前の公金の支出等の差止めを求める部分及び平成22年9月分以後の公金の支出等の差止めを求める部分は,いずれも不適法であるから却下すべきであり,平成14年3月から平成22年3月までの公金の支出等の差止めを求める部分及び損害賠償の代位請求の部分は理由がないので棄却すべきであるから,原判決の主文第2項のうち,被控訴人愛知県知事に対する平成13年3月及び同年9月の公金の支出命令の差止請求及び被控訴人愛知県出納長に対する同公金の支出の差止請求を棄却した部分を取り消し,同各請求にかかる訴えをいずれも却下し,その余の本件控訴をいずれも棄却することとし,訴訟費用は第1,2審とも控訴人らに負担させることとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部裁判長裁判官田村洋三裁判官小林克美裁判官戸田久

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