平成25(く)23 中等少年院送致決定に対する抗告申立事件

裁判年月日・裁判所
平成25年1月25日 東京高等裁判所 その他 横浜家庭裁判所
ファイル
hanrei-pdf-83471.txt

判決文本文3,828 文字)

- 1 -平成25年(く)第23号中等少年院送致決定に対する抗告申立事件平成25年1月25日東京高等裁判所第4刑事部決定 主文 原決定を取り消す。 本件を横浜家庭裁判所に差し戻す。 理由 本件抗告の趣意は,付添人弁護士正村哲也作成の抗告申立書及び抗告理由補充書各記載のとおりであるから,これらを引用する。 第1 法令違反の論旨について 1 論旨は,要するに,原決定には,①付添人による証人尋問の申出を全て却下し,付添人に全く反対尋問の機会を与えなかった点,②告知・聴聞の手続を取らず,反論・防御の機会を与えることがないまま不意打ちの認定替えを行った点,③立件送致されていない余罪につき告知・聴聞の機会なく要保護性の判断資料とした点で,決定に影響を及ぼす法令違反(①については職権証拠調べ義務違反,②については不意打ちの認定替えによる適正手続違反,③については余罪考慮に関する適正手続違反)がある,というのである。 2 そこで,記録を調査して検討する。 (1) まず,本件審判手続の経過は概ね次のとおりである。 ア原裁判所は,平成24年5月24日送致の本件恐喝未遂保護事件について,同年6月14日,少年を家庭裁判所調査官の観察に付する(在宅試験観察)決定をした。 イ原裁判所は,同年11月9日,同日送致の本件恐喝保護事件に本件恐喝未遂保護事件を併合する決定をした。 - 2 -本件恐喝保護事件の送致事実(本件恐喝の送致事実)は,少年が,「B,C,Dと共謀の上,下校中のE(当時16歳)に因縁をつけて同人から金品を喝取しようと企て,平成24年9月6日午後3時41分頃,神奈川県X市(以下省略)所在のY駅東口ロータリ 事実)は,少年が,「B,C,Dと共謀の上,下校中のE(当時16歳)に因縁をつけて同人から金品を喝取しようと企て,平成24年9月6日午後3時41分頃,神奈川県X市(以下省略)所在のY駅東口ロータリー2階通路において,『Yで調子に乗るな。』,『ちょっと来い。』などと申し向け,同人を同所所在のZ5階エスカレーター付近に連れて行った上,『ネックレス渡すか,ボコボコにされるか,ここから落とされるか選べ。』,『ネックレスを外せ。』,『早く出せよ。』などと語気鋭く申し向けて金品の交付を要求し,もしその要求に応じなければ,同人の身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を畏怖させ,よって,その頃,同所において,同人からネックレス1本(時価約12万6000円相当)の交付を受けてこれを喝取した」というものであった。 ウ同年12月6日の審判期日において,本件恐喝の送致事実についての審理が行われた。同事実について,少年は,「初めからそれを取ろうとか考えていたわけではなく,自分は脅し取ることに関係していない」旨述べ,付添人も,「恐喝の実行行為は行っておらず,共謀もしていないので,恐喝罪にならない。見張り行為も行っていないので,幇助でもない。少年には非行事実が認められない」旨主張した(なお,付添人は,その主張の詳細を同年11月30日付けの意見書(3)で明らかにしていた。)。同期日において,付添人は,共犯者とされるD,B及びCの各証人尋問を申し出たが,原裁判所は,いずれも必要がないとの判断を示した上で,本件恐喝の送致事実については恐喝幇助の限度で非行事実を認定できるとの判断を示し,引き続き少年の要保護性についても審理した上で,少年を中等少年院に送致する決定(原決定)を言い渡した。 原裁判所が認定した上記恐喝幇助(原決定非行事実第2)の事実は,「 認定できるとの判断を示し,引き続き少年の要保護性についても審理した上で,少年を中等少年院に送致する決定(原決定)を言い渡した。 原裁判所が認定した上記恐喝幇助(原決定非行事実第2)の事実は,「B及びCが共謀の上,下校中のE(当時16歳)に因縁をつけて同人から金品を喝取しよう- 3 -と企て,平成24年9月6日午後3時41分頃,神奈川県X市(以下省略)所在のY駅東口ロータリー2階通路において,『Yで調子に乗るな』,『ちょっと来い』などと申し向け,同人を同所所在のZ5階エスカレーター付近に連れて行った上,『ネックレス渡すか,ボコボコにされるか,ここから落とされるか選べ』,『ネックレスを外せ』,『早く出せよ』などと語気鋭く申し向けて金品の交付を要求し,もしその要求に応じなければ,同人の身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して同人を畏怖させ,よって,その頃,同所において,同人からネックレス1本(時価約12万6000円相当)の交付を受けてこれを喝取した際,前記Bが前記Eから金品を喝取しようとしていることを知りながら,前記B,前記C及びDと共に前記Eを取り囲むなどし,もって前記B及び前記Cの恐喝の犯行を容易にしてこれを幇助した」というものである。 (2) ところで,原決定は,事実認定の補足説明の項で,上記のとおり恐喝幇助の限度で非行事実を認定した理由について,次のとおり説示している。 ア少年は,①Dと共に被害者に声を掛け,②Bらと共に被害者を取り囲み,③BとCが被害者を連行した後,Dと共に,被害者の友人が警察に通報したりしないように見張りを行っていたことが認められる。これらは,いずれも恐喝の実行行為には当たらない上に,①の被害者に声を掛けた行為は,本件恐喝の遂行に何ら寄与しておらず,また,③の見張りをした行為も,本件恐喝の遂 見張りを行っていたことが認められる。これらは,いずれも恐喝の実行行為には当たらない上に,①の被害者に声を掛けた行為は,本件恐喝の遂行に何ら寄与しておらず,また,③の見張りをした行為も,本件恐喝の遂行にほとんど寄与していない。他方,②の被害者を取り囲んだ行為は,本件恐喝の遂行に当たり重要なものであったとまで評価することはできないが,被害者を畏怖させる一因となったという点で,本件恐喝の遂行に一定程度寄与したものといえる。 イ少年は,Bから被害者に声を掛けるように命じられ,逆らうと殴られると思い,言うとおりに声を掛けることにしたというのであり,受動的・消極的に関与したにすぎない。しかし,信用できる少年の捜査段階の供述によれば,少年は,Bか- 4 -ら被害者に声を掛けるよう命じられた際,被害者に因縁をつけ,最終的には恐喝をするんだろうなどと思った上,結局は,言われたとおりに声を掛けることとし,被害者の後を追いかけたというのであるから,この時点で,BやCが被害者に対して恐喝に及ぶ可能性を認識していながら,それでもやむを得ないと考えていたものと認められる。 (3) 以上のとおり,原裁判所は,本件恐喝の送致事実につき,恐喝幇助の限度で非行事実を認定するに際し,恐喝の実行犯であるBらが恐喝の実行に着手するに先立ち,少年がBらと共に4人で被害者を取り囲んだとの事実を幇助行為として認定している。しかしながら,この事実は,本件恐喝の送致事実中には記載されておらず,関係証拠をみても,被害者の平成24年9月10日付け警察官調書(謄本)中にその趣旨の供述(「あっという間に4人に取り囲まれた」,「さすがに4人とケンカをしたらボコボコにされると思った」との供述)が記載されているにすぎず,少年自身は,審判期日においてはもとより,捜査段階においても,4人で被害 っという間に4人に取り囲まれた」,「さすがに4人とケンカをしたらボコボコにされると思った」との供述)が記載されているにすぎず,少年自身は,審判期日においてはもとより,捜査段階においても,4人で被害者を取り囲んだとの供述はしていないのである(なお,B,C及びDの各警察官調書謄本や同人らの各検察官調書謄本をみても,さらに,当時被害者と行動を共にしていた被害者の友人3名の各警察官調書謄本をみても,被害者の上記供述と合致するような供述は見当たらない。)。 こうした手続経過及び証拠関係の下で,原裁判所のように,少年がBらと共に4人で被害者を取り囲んだとの事実を少年の幇助行為として認定するのであれば,適正手続の要請に照らし,また,少年審判規則29条の2の趣旨に鑑み,少年及び付添人に対して,この事実を告知し,この事実につき陳述する機会を与えた上で,さらに,必要に応じて反論・反証の機会を与えて,審理を尽くす必要があったというべきであるが,審判調書等をみても,原裁判所がそうした措置を講じた形跡は窺われない。そうすると,原裁判所が,そうした措置を講じることなく上記のとおり少- 5 -年の幇助行為を認定したのは,まさに不意打ちに当たり,適正手続の要請に反し,少年審判規則29条の2の趣旨にも反して違法であるといわざるを得ず,この違法は決定に影響を及ぼすものと認められる。 論旨は理由がある。 第2 結論以上のとおりであるから,その余の論旨について判断するまでもなく,原決定は取消しを免れない。 よって,少年法33条2項により,原決定を取り消し,本件を横浜家庭裁判所に差し戻すこととし,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官小川正持裁判官川口政明裁判官小川賢司) 家庭裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官 小川正持 裁判官 川口政明 裁判官 小川賢司)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る