平成14年11月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成14年(行ウ)第3号所得税更正処分等取消請求事件(口頭弁論終結日平成14年9月26日)判決 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が平成12年7月6日付けで原告の平成10年分所得税についてした更正処分のうち納付すべき税額406万7900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,平成10年分の所得税の確定申告及び修正申告において,原告が,長期譲渡所得の金額の計算上,A土地改良区へ支払った決済金等113万6171円が譲渡費用に当たるとして,この金額を譲渡所得金額から控除して申告したところ,被告がこれを否定し,平成12年7月6日付けで更正処分及びこれに係る過少申告加算税賦課決定処分を行ったことから,原告が,被告に対し,これらの取消を求めるものである。 1 前提となる事実(証拠を掲記したもの以外は当事者間に争いのない事実である。)(1) 原告は,平成9年8月11日に農業委員会に対し,転用のため別紙目録記載の農地(以下「本件土地」という。)の権利を移転したいとして,農地法5条の規定による許可申請をし,同年10月21日に許可を受けた。 (2) 本件土地は,土地改良区内に存在することから,原告は,平成9年8月11日,土地改良法42条2項の規定による決済金等として,113万6171円をA土地改良区に対し支払った(以下,この決済金等を「本件決済金等」という。)。その内訳は以下のとおりである(《証拠略》)。 ア A土地改良区決済金(以下「本件決済金」という。) 支払った(以下,この決済金等を「本件決済金等」という。)。その内訳は以下のとおりである(《証拠略》)。 ア A土地改良区決済金(以下「本件決済金」という。)64万6435円イ A土地改良区協力金 7万0890円ウ A土地改良区特別排水負担金 39万6984円エ A土地改良区B区負担金(以下,A土地改良区協力金,同特別排水負担金,同B区負担金と併せて「本件協力金等」という。)2万1862円(3) 原告は,平成10年3月22日付けで,本件土地について,売主を原告,買主を株式会社C,売買価額を4654万円とし,農地法等による許可を停止条件とする売買契約を締結した。 本件土地は,登記原因を平成10年3月23日売買として原告から株式会社Cに所有権移転登記がされた。 (4) 原告は,平成11年3月15日,被告に対し,平成10年分の所得税の確定申告書を提出した(以下「本件確定申告」という。)。 原告は,本件確定申告において,本件土地の譲渡(以下「本件譲渡」という。)に係る所得(以下「本件譲渡所得」という。)の金額の計算上,本件決済金等を所得税法33条3項所定の「その資産の譲渡に要した費用の額」(以下「譲渡費用」という場合がある。)に算入した。 (5) 原告は,平成12年7月3日,本件確定申告において譲渡費用に算入していた護岸工事代金9万2250円について,本件土地以外の費用であることが判明したとして,被告に対し,平成10年分の所得税の修正申告書を提出した(以下「本件修正申告」という。)。 (6) 被告は,原告に対し,平成12年7月6日付けで,本件決済金等が譲渡費用に当 ことが判明したとして,被告に対し,平成10年分の所得税の修正申告書を提出した(以下「本件修正申告」という。)。 (6) 被告は,原告に対し,平成12年7月6日付けで,本件決済金等が譲渡費用に当たらないことを理由として,更正処分(以下「本件更正処分」という。)及びこれに係る過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件過少申告加算税賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)を行った。 (7) 原告は,本件更正処分等を不服として,平成12年9月6日,被告に対し,異議申立てをしたが,被告は,同年12月6日付けでこれを棄却した。 さらに,原告は,本件更正処分等を不服として,平成13年1月6日,国税不服審判所長に対し,審査請求をしたが,国税不服審判所長は,同年11月13日付けでこれを棄却した。 2 争点及び当事者の主張原告の本件確定申告・本件修正申告,被告の本件更正処分等及びその後の不服申立ての経緯並びにその税額等は別表記載のとおりである。 被告が主張する本件更正処分の根拠は,別紙「本件更正処分の根拠」記載のとおりであるが,原告は,被告が本件譲渡所得の金額の計算上,本件決済金等を譲渡費用と認めなかった点を争い,その余の点についてはこれを認めるので,本件の争点は,「本件譲渡所得の計算上本件決済金等が譲渡費用に当たるか否か」であり,争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 (被告の主張)(1) 譲渡費用の概念について譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税する趣旨のものであることからすれば譲渡費用とは,譲渡のための仲介手数料,登記費用等のように,その資産の譲渡の 益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税する趣旨のものであることからすれば譲渡費用とは,譲渡のための仲介手数料,登記費用等のように,その資産の譲渡のために直接かつ通常必要な経費及び借家人等を立ち退かせるための立退料その他その資産の譲渡価額を増加させるため譲渡に際して支出した費用と解すべきであり,譲渡資産の保有期間中に支出した修繕費,固定資産税その他の資産の維持管理に要した費用は,その資産の使用収益によって生ずる所得に対応する費用であって,資産の増加益である譲渡所得に対応する譲渡費用には該当しないというべきである。 したがって,譲渡をする前提として事実上必要であった支出であっても,譲渡を実現するために直接必要な経費でないときは,その支出は,譲渡費用には当たらない。 (2) 本件決済金が譲渡費用に当たらないことについて本件決済金は,土地改良法42条2項の規定に基づく農地転用決済金であり,土地改良区の組合員が組合員たる資格に係る権利の目的たる土地の全部又は一部について,その資格を喪失した場合において,同条1項に定める権利の承継又は同法3条2項による交替がない場合に,その権利義務を清算するために決済するためのものであって,必ずしも譲渡に伴って決済されるものではない。 よって,本件決済金は,本件土地を譲渡するために直接かつ通常必要な費用には該当しない。 また,本件決済金は,土地改良法42条2項の規定によってA土地改良区の組合員であった原告がA土地改良区に対して有していた権利義務を清算するために,あらかじめ定められた地区除外等処理規程の定めに基づいて,原告が支出したものであるから譲渡価額を増加させるために支出した費用ともならない。 (3) 本件協力金等が譲渡費用 利義務を清算するために,あらかじめ定められた地区除外等処理規程の定めに基づいて,原告が支出したものであるから譲渡価額を増加させるために支出した費用ともならない。 (3) 本件協力金等が譲渡費用に当たらないことについて本件協力金等は,A土地改良区内の土地改良施設を将来に渡って使用するための使用料を一時的に負担する費用であるから,資産の譲渡と直接対応関係がない期間対応費用であって,本件譲渡とは関係がない。 したがって,本件協力金等は,本件土地を譲渡するために直接かつ通常必要な費用には該当しない。 (原告の主張)(1) 譲渡所得及び譲渡費用の概念について昭和48年法律第8号により所得税法59条が改正され,個人間において行われる資産の移転について譲渡所得税が課税されるのは,取引(契約)によって譲渡が行われた場合と限定承認に係る相続及び遺贈に限られることとされた。これらはいずれの場合も,複数の当事者間において資産の移転に際してその資産の価額について交渉の結果としての合意があり,取引の後においてもそれらの事実を証するための書類作成等の手続が一般化していることにより,課税を行うのに必要な事項を客観的に確認することができる。また,課税すべき所得を計算する総収入金額は譲渡価額であり,交渉の結果合意した具体的な取引成立金額である。 これにより譲渡所得に対する課税は資産の移転が行われ,資産に代替する貨幣財等が所有者に帰属した時を課税適状とし,当該貨幣財等を総収入金額とし,そこから資産の取得に要した取得費を控除した金額を「その資産につきすでに生じている増加益のうち実現した増加益」として課税することとされたのである。 また,総収入金額たる取引金額が譲渡資産に代替して所有者に帰属することになるが,いったん帰属した貨幣財等 の資産につきすでに生じている増加益のうち実現した増加益」として課税することとされたのである。 また,総収入金額たる取引金額が譲渡資産に代替して所有者に帰属することになるが,いったん帰属した貨幣財等のうちからすでに支出処分した経費のうち譲渡に要した費用及び譲渡以前であっても譲渡の準備のために支出された譲渡との因果関係が明白な費用及び譲渡価額を増加させるために支出された費用は,実現した増加益から控除した金額をもって税負担が可能な所得(担税力ある所得)として課税することとされたのである。 このように考えると現行の所得税法の下においては,譲渡所得の本質は被告が主張するような「その資産にすでに生じている抽象的な増加益」から,「その資産にすでに生じている増加益のうち実際の取引によって実現した増加益」に変更され,これに応じて課税所得も税負担を求めるにふさわしい貨幣財を伴った担税力ある所得として考えなければならない。 (2) 本件決済金等について原告は本件土地について農地法5条の規定による許可申請をし,平成9年10月21日に許可を受けているが,農地法5条の規定による許可申請に当たって添付を求められる土地改良区の意見書は,決済金の支払と引き換えに交付される仕組みとなっているのであるから,本件決済金等は本件譲渡と直接関係のある費用として譲渡費用に該当するというべきである。 被告は,本件決済金等は,本件土地を転用しないで譲渡すれば支払不要であるから直接かつ通常必要な経費とはいえないと主張するが,本件譲渡は,転用可能な農地とすることを条件に行われたものであって,この条件は,農地の売買契約において極めて一般的に付されるものであるから,譲渡費用に該当するというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 譲渡費用の意義について(1) 行われたものであって,この条件は,農地の売買契約において極めて一般的に付されるものであるから,譲渡費用に該当するというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 譲渡費用の意義について(1) 所得税法33条3項は,譲渡所得の金額につき,総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し,その残額の合計額から譲渡所得の特別控除を控除した金額とする旨規定している。 譲渡所得とは,資産の譲渡による所得をいうところ(所得税法33条1項),譲渡所得に対する課税の本質は,所有資産の増加益(キャピタルゲイン)に対する課税であって,資産が譲渡によって所有者の手を離れるのを機会に,その所有期間中の増加益を清算して課税しようとするものである。そうすると,譲渡費用も,このような譲渡所得の課税の本質からみて収入金額から控除することが課税の衡平上相当なものであることを要し,具体的には,当該資産の譲渡を実現するために直接必要な費用及びその資産の譲渡価額を増加させるため譲渡に際して支出した費用に限定されると解するのが相当である。 (2) この点について,原告は,所得税法59条の改正の経緯や資産の譲渡の結果譲渡人が取得する金員に着目して,資産の譲渡に係る当事者間の交渉において付された条件を満たすために支出された種々の費用や経費は全て譲渡費用に当たると主張するようである。 しかし,この改正経緯をみると,いわゆるシャウプ勧告を契機として所得税法にみなし譲渡課税の考え方が取り入れられたものの,これは重い相続税の負担のうえにさらに負担を加重する結果になり,しかも現実に金銭化されないのに所得として課税することは,納税者のみならず課税官庁にも理解しにくいという理由から,昭和27年の改正で相続及び相続人に対する 担のうえにさらに負担を加重する結果になり,しかも現実に金銭化されないのに所得として課税することは,納税者のみならず課税官庁にも理解しにくいという理由から,昭和27年の改正で相続及び相続人に対する遺贈が,昭和29年の改正で包括遺贈が,昭和33年の改正で相続人に対する遺贈がそれぞれみなし譲渡から除外され,さらに,昭和37年の改正では,個人に対する遺贈,贈与,低額譲渡についても一定の手続きを経ることによりみなし譲渡を適用しない途を開き,昭和48年の改正に至り,現行の所得税法59条のように法人に対する贈与等を除き,原則としてみなし譲渡課税が適用されないこととなったのである。このように相続や贈与があったときに,被相続人や贈与者には現実の収入がないにもかかわらず譲渡所得税を課すことは実際的ではないことから,原則として現実の収入がある場合に限って譲渡所得税を課すこととしたものであるが,このことと譲渡費用の範囲をどこまで認めるかは別個の問題であって,上記のような改正経緯をもって譲渡費用の範囲を事実上資産の譲渡を契機として必要とされた費用にまで広げるという趣旨とは考えられない。 また,原告は,担税力という観点から,譲渡所得として課税の対象となるのは,譲渡価額から契約に関して支出した全ての費用を控除して算出する譲渡人が現実に取得した金員の範囲内に限られる旨の主張をする。しかし,このような考え方をとると,譲渡と関連づければ事実上譲渡費用を恣意的に増加できることになり,課税の衡平上看過しがたい問題を生ずるものであるし,譲渡と直接関係のない事由を理由とする費用については,たとえ資産の譲渡を契機に生じた費用であっても,譲渡所得の計算上控除すべき理由はない。 したがって,原告の主張を採用することはできない。 2 以上のような観点から,本件決済金等 用については,たとえ資産の譲渡を契機に生じた費用であっても,譲渡所得の計算上控除すべき理由はない。 したがって,原告の主張を採用することはできない。 2 以上のような観点から,本件決済金等が譲渡費用に該当するか否かを検討するに,証拠(《証拠略》)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (1) 原告がA土地改良区に支払った本件決済金等の内訳は,以下のとおりである。 ア A土地改良区決済金(本件決済金) 64万6435円イ A土地改良区協力金 7万0890円ウ A土地改良区特別排水負担金 39万6984円エ A土地改良区B区負担金 2万1862円このうち,本件決済金(上記ア)は,下記(2)のとおり,「地区除外等処理規程」に基づき,また,本件協力金等(上記イ,ウ,エ)は,下記(3)のとおり,「施設等使用規程」及び「施設等使用負担金徴収規程」に基づき徴収されたものである。 (2) 本件決済金について土地改良法42条2項は,土地改良区の組合員がその資格に係る権利の目的である土地についてその資格を喪失した場合において,その者が有する土地改良区の事業に関する権利義務の移転がないときは,組合員及び土地改良区は権利義務について必要な決済をしなければならない旨規定している。 上記規定が地区内の農用地が農用地以外のものに転用される場合に適用されることは明らかであるが,これを受けて,A土地改良区では,「地区除外等処理規程」を制定し,A土地改良区の地区内農地の転用等に伴う権利義務の決済等についての定めを行っている。 「地区除外等処理規程」2条及び5条は,A土地改良区の地区内の土地につき,農地法4条1項本文又は同法5条1項本文の規定による許可の申請等が行 伴う権利義務の決済等についての定めを行っている。 「地区除外等処理規程」2条及び5条は,A土地改良区の地区内の土地につき,農地法4条1項本文又は同法5条1項本文の規定による許可の申請等が行われる場合には,当該土地に係る組合員(以下「転用組合員」という。)は,A土地改良区に対し,転用許可の申請する旨の通知をし,また,地区除外の申請をしなければならない旨を定め,同6条は,地区除外の申請がされたときは,除外すべき土地に係る決済金の額を別記の「決済金算定基準」により確定し,速やかに決済をすべき旨を定めている。 「決済金算定基準」では,決済金の額は,土地改良区が徴収すべき金銭の額と土地改良区が支払うべき金銭との差額とし,本件決済金が確定された平成9年当時は,決済の範囲を以下のとおり定めていた。 ア土地改良区が徴収すべき金銭の額(ア) 賦課金等決済年度以前の年度に係る賦課金等の決済時点における未納入金額(イ) 償還金及び年賦支払金土地改良区の借入金にかかる償還金及び土地改良区が負担する国営土地改良事業(決済年度の前年度以降に完了したものに限る。)の負担金に係る年賦支払金で決済年度の翌年度以降のものにつき定款の定めるところにより,算定する当該土地の負担相当額(ウ) 土地改良区営土地改良事業に係る事業費a 維持管理事業以外の事業に係るもの決済時点において土地改良区が行う土地改良事業(維持管理事業を除く。)に係る事業費のうち決済年度の翌年度以降の自己負担分につき定款の定めるところにより算定する当該土地の負担相当額(転用に伴い事業費が減額される場合にあっては,自己負担分のうち当該減額に対応する額を当該算定額から控除して得た額)b 維持管理事業 定款の定めるところにより算定する当該土地の負担相当額(転用に伴い事業費が減額される場合にあっては,自己負担分のうち当該減額に対応する額を当該算定額から控除して得た額)b 維持管理事業に係るもの決済時点において土地改良区が行う土地改良事業(維持管理事業に限る。)に係る維持管理費のうち,決済年度の翌年度以降の自己負担分につき定款に定めるところにより算定する当該土地の20年分の額(転用に伴い事業費が減額される場合にあっては,自己負担のうち当該減額に対応する額を当該算定額から控除して得た額)(エ) 国営又は県営土地改良事業に係る負担金又は分担金a 維持管理事業以外の事業に係るもの決済時点において国又は県が行う土地改良事業(維持管理事業を除く。)に係る事業費のうち,決済年度の翌年度以降において土地改良区が負担又は分担すべき額につき定款の定めるところにより算定する当該土地の負担相当額(転用に伴い事業費が減額される場合にあっては,土地改良区が負担又は分担すべき額のうち当該減額に対応する額を当該算定額から控除して得た額)b 維持管理事業に係るもの決済時点において国又は県が行う土地改良事業(維持管理事業に限る。)に係る維持管理費のうち,決済年度の翌年度以降において土地改良区が負担又は分担すべき額につき定款の定めるところにより算定する当該土地の20年分の額(転用に伴い事業費が減額される場合にあっては,土地改良区が負担又は分担すべき額のうち当該減額に対応する額を当該算定額から控除して得た額)(オ) 県営圃場整備事業D地区内のパイプ移設維持管理費に係るものなお,本件土地はB地区内に存在するため,この項目は本件土地とは関係がない。 (カ) ら控除して得た額)(オ) 県営圃場整備事業D地区内のパイプ移設維持管理費に係るものなお,本件土地はB地区内に存在するため,この項目は本件土地とは関係がない。 (カ) 経費に係るもの前各事項の決済金額算定の規定にかかわらず,各事業に共通する土地改良区の運営に要する経費に係るための経常費の決済金額は,決済年度の翌年度以降のものにつき,定款の定めるところにより算定する当該土地の20年分の額イ土地改良区が支払うべき金銭の額過誤納賦課金その他土地改良区が当該組合員に対して支払うべきものとして,定款・規約・規程又は総代会の議決により定められた金銭の額のうち当該土地に係るもの(3) 本件協力金等(前記(1)のイ,ウ,エ)について「施設等使用規程」は,土地改良施設(以下,この項においては「施設」という。)を他の目的に使用させるときの取扱い等について規定するものであるが(1条),同規程にいう施設とは,「用排水路・堤塘・農道・井堰・橋梁・機場等」をいうものであると定義したうえで(2条),土地改良区に関係する区域内において開発行為を行おうとする者は,土地改良区から施設を使用することの許可を受けなければならないこと(14条),施設を使用することの許可の申請があった場合に,理事長は,開発行為による農地及び土地改良施設への影響を検討したうえで,施設等使用負担金を一時金として徴収のうえ,土地改良施設の使用を承諾することができること(15条)が規定されている。 そして,15条に定める施設等使用負担金は,別に定めるA土地改良区施設等使用負担金徴収規程に基づいて定めるとされているところ(16条),A土地改良区の「施設等使用負担金徴収規程」では,施設等使用負担金を次のとおり定めている。 用負担金は,別に定めるA土地改良区施設等使用負担金徴収規程に基づいて定めるとされているところ(16条),A土地改良区の「施設等使用負担金徴収規程」では,施設等使用負担金を次のとおり定めている。 ア特別排水負担金転用に伴う単位排水量の増加分に対する負担金として一時金を徴収する。 イ分区負担金分区会計のうち,用排水施設を管理するものについて,転用に伴う単位排水量の増加分に対する負担金として一時金を徴収する。 ウ協力金従来の土地改良施設等の補修・整備をはかるため,全地域の転用地から協力金として,一時金を徴収する。ただし,徴収額の2分の1を関係部落へ交付する。 3 検討(1) 本件決済金は,土地改良法42条2項に基づく決済として支払われたものであるところ,同条の決済は,土地改良区の組合員たる資格の喪失に際し,土地改良区の事業に関する権利義務の移転がない場合に,土地改良区と組合員との間の権利義務を清算するために行われるものである。具体的には,前記2(2)のとおり,土地改良区が徴収すべき金銭の額と土地改良区が支払うべき金銭との差額であって,そのうち,土地改良区が徴収すべき金銭の内訳は,前記2(2)アの(ア)ないし(カ)に記載の決済時点の属する年度の翌年度以降の事業費,負担金,分担金等である。 これらの費用は,本件土地がA土地改良区内に存在する農地である限り将来において負担すべきものであったところ,本件土地が転用されたことにより,土地改良区との間で一時にその決済が必要とされたにすぎないものである。 そうすると,譲渡とは別個の転用という理由により必要とされた費用であるから,譲渡に直接必要な費用とも譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用ともいうことはできず,譲渡費 のである。 そうすると,譲渡とは別個の転用という理由により必要とされた費用であるから,譲渡に直接必要な費用とも譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用ともいうことはできず,譲渡費用には当たらないというべきである。 (2) また,本件協力金等は,前記2(3)のとおり,転用等により土地改良区から除外される土地を開発する者が土地改良施設を使用するために負担する施設等使用負担金であり,具体的には,前記2(3)アないしウのとおりの負担金及び協力金である。 これらの費用は,転用された土地において土地改良施設を使用するために負担する負担金であって,本件決済金と同様に,譲渡とは別個の理由,すなわち,転用された土地において土地改良施設を利用するためには負担金を支払わなければならないという理由により必要とされた費用であるから,本件決済金同様,譲渡費用には当たらないというべきである。 なお,本件協力金等は,土地改良施設の使用に対応して,受益者として負担する性質のものであるから,「改良費」(所得税法38条1項)として,本件土地の取得費に該当すると解する余地がある。しかし,原告は本件確定申告において,租税特別措置法31条の4第1項に基づき,本件譲渡所得に係る取得費を収入金額の5パーセントに相当する金額としているから(《証拠略》),仮に本件協力金等が取得費に該当するとしても,本件譲渡所得に係る所得税額には影響を及ぼさないこととなる。 (3) 原告は,農地法5条の規定による許可申請に当たって添付を求められる土地改良区の意見書は,決済金の支払と引き換えに交付される仕組みとなっているのであるから,本件決済金等は本件譲渡と直接関係のある費用として譲渡費用に該当するというべきであると主張する。 しかしながら,本件決済金等を支払 の支払と引き換えに交付される仕組みとなっているのであるから,本件決済金等は本件譲渡と直接関係のある費用として譲渡費用に該当するというべきであると主張する。 しかしながら,本件決済金等を支払わなければ意見書を取得できないとしても,それは,転用を契機として発生した決済金の支払を土地改良区において確保するために事実上そのような取扱いが行われているにすぎないものと考えられ,土地の譲渡との関係でいえば,本件決済金等の支払は,土地の譲渡に当たって転用をしたことから発生する間接的な費用にすぎないといわざるを得ない。 また,原告は,本件譲渡は,転用可能な農地とすることを条件に行われたものであって,この条件は農地の売買契約において極めて一般的に付されるものであるから,譲渡費用に該当すると主張する。 しかし,契約の条件を履行するために支出した費用がすべて譲渡費用に該当するということができないことは,前記1(2)で説示したとおりであり,原告の主張を採用することはできない。 さらに,原告は,所得税法51条1項において,不動産所得等の必要経費に算入される資産損失から「資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの」が除かれていること及び同法施行令140条が繰延資産を同法51条1項の資産損失の対象に含めていることなどから,本件決済金等のうち永久資産及び繰延資産に相当する部分は所得税法33条3項所定の「資産の譲渡に要した費用」(譲渡費用)に該当するか否かを検討するまでもなく譲渡費用として譲渡所得の計算上控除されるべきであると主張する。 しかし,所得税法51条1項は,不動産所得等の必要経費に算入される資産損失から「資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの」を除外する規定にすぎず,これが譲渡費用に該当することまで規定するものではな かし,所得税法51条1項は,不動産所得等の必要経費に算入される資産損失から「資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの」を除外する規定にすぎず,これが譲渡費用に該当することまで規定するものではないことはその文言上明らかである。そうすると,当該資産損失が譲渡費用に該当するか否かについては,別途譲渡所得の金額の計算方法を定めた同法33条3項によるべきところ,既に検討したとおり,本件決済金等は同項の譲渡費用に該当しないのであるから,原告の主張を採用することはできない。 4 したがって,本件譲渡所得の計算上,本件決済金等が譲渡費用に当たらないとした本件更正処分は適法であり,これを前提とした本件過少申告加算税賦課決定処分もまた適法である。 第4 結論以上のとおり,原告の請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 新潟地方裁判所第2民事部裁判長裁判官犬飼眞二裁判官大野和明裁判官加藤聡
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