主文 原判決を破棄する。 被上告人の控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 理由 上告代理人小長井良浩、同大澤三郎、同三島卓郎、同有賀信勇、同西村文茂、同北本修二、同荘司昊、同小山千蔭、同尾崎高司、同角山正、同菊池至、同三宅信幸、同小川原優之、同加藤洋一、同大島真人、同真田昌行、同木村和弘の上告理由第二点について一原審の適法に確定した事実関係の概要等は、次のとおりである。 1 Aは、宗教法人日蓮正宗により建立された寺院であるところ、被上告人は、昭和五八年六月三〇日、日蓮正宗の管長(代表役員)であるVによりAの主管に任命されて、その本堂及び庫裏である第一審判決別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)の占有を開始した。なお、本件建物は、日蓮正宗の総本山である宗教法人大石寺名義で保存登記がされていた。 2 Aは、昭和六二年四月七日、法人格を取得して日蓮正宗に包括される宗教法人(上告人)となり、同時に、Aの主管である被上告人が、代表役員は主管の職にある者をもって充てる旨を定めた上告人の規則七条一項及び日蓮正宗の規則である日蓮正宗宗制四三条一項に基づき、上告人の代表役員となった。上告人の規則七条二項は、代表役員以外に置くべきものとされる三名の責任役員(以下、代表役員ではない責任役員を、単に「責任役員」という。)は上告人に所属する檀徒又は信徒のうちから上告人の代表役員が選定する旨を、同条三項は、右選定については日蓮正宗の代表役員の承認を受けなければならない旨を、それぞれ定めており、日蓮正宗宗制四三条二項は、上告人の規則七条三項と同旨の定めをしている。なお、上告- 1 -人の設立に伴い、本件建物の所有権は上告人に帰属した。 3 上告人の信徒は、ほとんどがXの会員であ おり、日蓮正宗宗制四三条二項は、上告人の規則七条三項と同旨の定めをしている。なお、上告- 1 -人の設立に伴い、本件建物の所有権は上告人に帰属した。 3 上告人の信徒は、ほとんどがXの会員であり、責任役員もまた、すべて右会員の中から選任されていたが、平成二年一二月、日蓮正宗とXとの間に対立が生じ、日蓮正宗は、平成三年ころ、その包括する宗教法人に対し、日蓮正宗からの離脱防止を狙いとして、Xの会員以外の者から責任役員を選定するよう指導した。 4 被上告人は、3記載の日蓮正宗の指導に従い、平成四年四月二九日付けで、上告人の信徒のうちからXの会員ではないYら三名を責任役員に選定し、日蓮正宗の代表役員であるVの承認を受けた。 5 その後、被上告人は、その宗教的信念を貫くためには上告人と日蓮正宗との被包括関係を廃止することもやむを得ないと考えるに至った。上告人の規則では、規則の変更については責任役員会の全員の議決が必要であると定められていたところ、被上告人は、日蓮正宗との被包括関係の廃止に係る規則変更につきYらの同意を得ることはできないと考え、責任役員を右のような規則変更に賛同する者と入れ替えるため、平成四年一一月九日、Vの承認を受けることなく、Yらを責任役員から解任し(以下、これを、「本件解任行為」という。)、Xの会員であるZら三名を後任の責任役員に選定した。そして、同日、被上告人及び新責任役員により開かれた責任役員会において、日蓮正宗との被包括関係の廃止に係る規則変更について議決がされ、日蓮正宗に対してその旨の通知がされた。その後の平成五年一月二五日、被上告人は、右規則変更について、所轄庁である愛知県知事に対し、認証の申請をした。 6 日蓮正宗の総監であるDaは、平成五年四月一〇日、上告人の主管である被上告人に対し、事実の確認を行った 五日、被上告人は、右規則変更について、所轄庁である愛知県知事に対し、認証の申請をした。 6 日蓮正宗の総監であるDaは、平成五年四月一〇日、上告人の主管である被上告人に対し、事実の確認を行った上で、日蓮正宗の代表役員の承認を受けることなくされた本件解任行為は無効であるから速やかに撤回するよう是正措置を採るべきことを指示するとともに、同月一一日、同趣旨の訓戒を行った。しかし、被上告- 2 -人が右訓戒に従わなかったため、Vは、宗制等に違反し訓戒を受けても改めない者は罷免等に処する旨を定めた日蓮正宗宗規二四七条九号に基づき、平成五年四月二二日、被上告人を上告人の主管から罷免した(以下、これを、「本件罷免処分」という。)。 二本件は、上告人が、本件建物を占有する被上告人に対し、所有権に基づき明渡しを求める事案である。 原審は、次のように判示し、本件罷免処分は無効であり、被上告人は引き続き上告人の代表役員の地位にあるから本件建物を占有する権原を有するとして、上告人の請求を棄却した。 1 上告人の規則及び日蓮正宗宗制には、上告人の責任役員をその任期中に解任することに関する規定が存在しないが、一般に法人の役員につき任命権を有する者は別段の定めのない限り解任権をも有すると考えられることなどを考慮すると、上告人の責任役員の任命に関する前記の各規定の類推適用により、上告人の代表役員は日蓮正宗の代表役員の承認を受けて責任役員をその任期中に解任することができると解するのが相当である。被上告人は、本件解任行為についてVの承認を受けていないから、被上告人は宗制に違反したというべきである。そして、被上告人は、右違反について訓戒を受けながら、これに従わなかったのであって、被上告人には日蓮正宗宗規二四七条九号所定の懲戒事由が存在すると認められる。 2 宗制に違反したというべきである。そして、被上告人は、右違反について訓戒を受けながら、これに従わなかったのであって、被上告人には日蓮正宗宗規二四七条九号所定の懲戒事由が存在すると認められる。 2 しかしながら、日蓮正宗がかねてよりその包括する宗教法人における被包括関係の廃止の動きを警戒しその防止に動いていたことからすると、本件罷免処分は、日蓮正宗と上告人との被包括関係の廃止を防ぐことを目的としてされたものと認めるのが相当である。また、前記の事実関係によると、仮に被上告人が本件解任行為につきVに承認を求めたとしても被包括関係の廃止を防ぐ見地からこれが与えられることはなかったであろうと容易に推測できる上、本件解任行為につき被上告人に- 3 -対してされた訓戒の目的も被包括関係の廃止を防ぐことにあったのであるから、被上告人が右訓戒に従わなかったことなどを理由とする不利益の取扱いを認めるときは、結局、被包括関係の廃止を企てたことを理由とする不利益の取扱いを禁止した宗教法人法七八条一項の趣旨を潜脱する処分を許容することとなり、法的正義の観念に照らし、これを容認できるものではない。したがって、本件罷免処分は、同条一項に違反し、同条二項により無効というべきである。 三しかしながら、原審の判断のうち右2記載の部分は、これを是認することができない。その理由は、次のとおりである。 宗教法人法七八条一項は、他の宗教法人を包括する宗教団体(以下「包括宗教団体」という。)は、その包括する宗教法人(以下「被包括宗教法人」という。)と当該包括宗教団体との「被包括関係の廃止を防ぐことを目的として、又はこれを企てたことを理由として」、被包括宗教法人の代表役員等に対し、解任等の不利益の取扱いをしてはならない旨を定め、同条二項は、同条一項の規定に違反してされた行為は 廃止を防ぐことを目的として、又はこれを企てたことを理由として」、被包括宗教法人の代表役員等に対し、解任等の不利益の取扱いをしてはならない旨を定め、同条二項は、同条一項の規定に違反してされた行為は無効とすると定めている。右各規定の趣旨は、被包括宗教法人の代表役員等が被包括関係を廃止すべく所定の手続に従って各種の行為をしている場合に、右の者を解任するなどの権限を有する包括宗教団体が、その権限を利用し、右手続の進行に干渉することを禁止するものと解される。 包括宗教団体及び被包括宗教法人の各規則により、被包括関係の内容の一つとして、被包括宗教法人の責任役員の選任等につき包括宗教団体の代表者の承認を受けるべきものとすることは、妨げられるものではなく(宗教法人法一二条一項五号、一二号)、また、このような場合に、包括宗教団体の代表者がその権限を行使するに当たり、いかなる信仰上の考え等を有する者をもって被包括宗教法人の責任役員にふさわしいものとするかは、当該規則等に特別の定めがあるときなどを除き、包括宗教団体の自治的な決定にゆだねられていると解するのが相当である。そうする- 4 -と、包括宗教団体の代表者が被包括関係を維持することを相当と考え、右権限を行使したために、結果的に、被包括宗教法人において所定の手続に従い被包括関係を廃止することが困難となったとしても、このことから、被包括関係の廃止を望んだ被包括宗教法人の代表役員がその責任役員の解任に必要な承認を受けずにこれを解任すること等が許されると解すべき根拠は、見いだし難い。【要旨】本件においては、被包括宗教法人の代表役員が責任役員を所定の承認を受けることなく解任しその是正に応じなかったということを懲戒事由として本件罷免処分がされたのであって、同処分に違法はなかったものというべきである。そして、本 宗教法人の代表役員が責任役員を所定の承認を受けることなく解任しその是正に応じなかったということを懲戒事由として本件罷免処分がされたのであって、同処分に違法はなかったものというべきである。そして、本件罷免処分の際に、日蓮正宗が、被包括関係は維持されるのが望ましいと考え、同処分に伴って被包括関係の廃止の実現に支障が生ずるであろうことを予見していたとしても、そのことをもって、同処分が、宗教法人法七八条一項にいう「被包括関係の廃止を防ぐことを目的として」された不利益の取扱いに当たるということはできず、また、これが、被包括関係の廃止を「企てたことを理由として」される不利益の取扱いを禁止する同項の規定を潜脱するものに当たるということもできない。 右のとおり、本件罷免処分を無効とした原審の前記判断には、宗教法人法七八条一、二項の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点をいう論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件の事実関係の下においては、本件罷免処分は、宗教法人法七八条一項の規定に違反するものとは解し難く、同条二項によってこれを無効とすることはできないのであって、被上告人は、同処分により上告人の主管の職を失い、これに伴って上告人の代表役員としての地位を喪失したのであるから、本件建物に対する被上告人の占有権原は消滅したものというべきである。上告人の本件請求は理由があり、これを認容した第一審判決の結論は正当であって、同判決に対する被上告人の控訴は、これを棄却す- 5 -べきである。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官遠藤光男裁判官井嶋一友裁判官藤井正雄裁判官大出峻郎裁判官町田顯 は、これを棄却す- 5 -べきである。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官遠藤光男裁判官井嶋一友裁判官藤井正雄裁判官大出峻郎裁判官町田顯)- 6 -
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