判決平成13年12月27日宣告神戸地方裁判所平成13年(わ)第71号,第151号,第248号窃盗,詐欺被告事件 主文 被告人を懲役4年に処する。 未決勾留日数中180日をその刑に算入する。 訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 結婚していて妻がいるのに,離婚し独身であると偽って,A1と交際し,同女に他人の土地建物を見せて自分のものであると嘘を言ったり,同女と結婚したいなどと申し向けたりしていたものであるが,同女から,寸借名下に金員を詐取しようと企て, 1 平成10年12月中旬ころ,神戸市内において,携帯電話機を使って同女(当時33歳)の使用する携帯電話機に電話を掛け,同女に対し,返済の意思及び能力がないのにあるように装い,「別れた妻との裁判でまとまったお金が必要なので300万円貸してほしい。親から勘当されてもう頼れない。来年の1月には前に言っていた土地が売れてまとまったお金が入るので,すぐに返済する。」などと嘘を言い,同女をしてその旨誤信させ,よって,同月18日,同市B1区C1a丁目b番c号D1ビル三階所在の喫茶館E1店において,同女から現金300万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ, 2 平成11年4月3日,同市F1区付近を走行中の自動車内において,同女に対し,返済の意思及び能力がないのにあるように装い,「手形の決済にお金がどうしても必要だからお金を貸してほしい。すぐに返すから。」などと嘘を言い,同女をしてその旨誤信させ,よって,同日,同市B1区G1町d丁目e番f号所在のH1株式会社I1駅構内において,同女から現金50万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を に返すから。」などと嘘を言い,同女をしてその旨誤信させ,よって,同日,同市B1区G1町d丁目e番f号所在のH1株式会社I1駅構内において,同女から現金50万円の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ, 3 同月5日,同区J1g丁目h番i号所在のK1株式会社L1店において,同女に対し,返済の意思及び能力がないのにあるように装い,「この前借りた金では全然足りんかった。何百万円も必要なんや。」などと嘘を言い,さらに,同月6日,同市内において,携帯電話機を使って同女の使用する携帯電話機に電話を掛け,同女に対し,「昨日の話やけどやっぱり頼むわ。至急必要なんやけど,今日会えないから俺の銀行口座に入金してもらえるか。すぐに返すから。」などと嘘を言い,同女をしてその旨誤信させ,よって,同日,同市B1区M1j丁目k番l号所在の株式会社N1銀行O支店において,同女から同支店のP名義の普通預金口座に金160万円の振込み入金を受け,もって人を欺いて財物を交付させ,第2 Qに対し,Rの偽名を名乗り,設計事務所を経営しているなどと偽っていたものであるが,同女から,買取り名下に新幹線回数券を詐取しようと企て,平成12年6月13日,同区J1m丁目n番o号所在のホテルSにおいて,同女(当時39歳)に対し,真実は,同女から受領した同回数券は直ちに換金して自己の用途に費消する意図であって,同回数券の購入代金の1割増の額の金員を同女の銀行口座に後日振込み入金する意思がないのにあるように装い,「新幹線の回数券を買って渡せば,後で1割増で振り込んであげる。」などと嘘を言い,同女をしてその旨誤信させ,よって,別紙一覧表記載のとおり,同日及び翌14日,同区Tp丁目q番r号所在のH1株式会社U駅構内ほか3か所において,同女から新幹線指定席特急回数券普通車用(東京・V間)合計 をしてその旨誤信させ,よって,別紙一覧表記載のとおり,同日及び翌14日,同区Tp丁目q番r号所在のH1株式会社U駅構内ほか3か所において,同女から新幹線指定席特急回数券普通車用(東京・V間)合計12冊(購入価格合計94万9680円)の交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ,第3 Wに対し,Rの偽名を名乗り,テレビのプロデューサーをしているなどと偽っていたものであるが, 1 同女が同女名義のXYカードを悪用されたおそれがあると心配していることを知るや,同女から調査名下に同カードを詐取しようと企て,同年10月6日午後5時10分ころ,同区M1s丁目t番u号株式会社ZU店新館2階所在の甲乙店において,同女(当時21歳)に対し,真実は,同カードを不正に使用して現金を窃取する意図であるのにこれを秘し,「クレジットカードに詳しい知り合いが近くまで来ているので,その人間にカードが悪用されていないか調査してもらうからカードを貸して欲しい。」などと嘘を言い,同女をしてその旨誤信させ,よって,即時同所において,同女から上記XYカードの交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ, 2 同日午後5時14分ころ,上記N1銀行O支店において,同支店内に備え付けの現金自動預払機に上記詐取に係るXYカードを挿入して同機を作動させ,同機から同支店支店長丙管理に係る現金20万円を引き出して窃取し, 3 Wから同女名義の丁戊カードを詐取しようと企て,同月9日,同区内において,同女に対し,真実は,同カードを不正に使用して現金を窃取する意図であるのにこれを秘し,「Xカードが悪用され,カード会社に対する信用が落ちているかもしれないから,新しいカードを使用してカード会社に対する信用を高めなければならない。カードの支払いなどについてはこちらで処理しておくから心配しなくてい 悪用され,カード会社に対する信用が落ちているかもしれないから,新しいカードを使用してカード会社に対する信用を高めなければならない。カードの支払いなどについてはこちらで処理しておくから心配しなくていい。」などと嘘を言い,同女をしてその旨誤信させ,よって,同月10日午前10時ころ,同区己v丁目w番x号庚ビル1階所在のJ1株式会社申壬コーナーにおいて,同女に同女名義のJ1戊カードの発給を受けさせた上,そのころ,同ビル前路上において,同女から上記J1戊カードの交付を受け,もって人を欺いて財物を交付させ, 4 同日午前10時2分ころ,同区己y丁目z番a号癸ホテル1階所在のJ1株式会社A2支店において,同支店内に備え付けの現金自動支払機に上記詐取に係るJ1戊カードを挿入して同機を作動させ,同機から同社O支店長B2管理に係る現金50万円を引き出して窃取し, 5 同月23日午後5時すぎころ,同区O町b丁目c番d号所在のC2D2店において,W所有又は管理に係る現金約1万5000円並びに同女名義のN1銀行発行のキャッシュカード及び郵便局発行のキャッシュカード等6点在中の財布1個(時価約5000円相当)を窃取し, 6 同月25日午前8時41分ころ,同区Ce丁目f番g号所在のN1銀行O支店O駅ビル出張所において,同出張所内に備え付けの現金自動預払機に上記窃取に係るW名義のN1銀行発行のキャッシュカードを挿入して同機を作動させ,同機から同支店支店長E2管理に係る現金15万円を引き出して窃取し, 7 同年11月6日午後5時19分ころ,同区F2町h丁目i番j号所在のG2郵便局において,同郵便局内に備え付けの現金自動預払機に上記窃取に係るW名義の郵便局発行のキャッシュカードを挿入して同機を作動させ,同機から同郵便局局長H2管理に係る現金30万6000円 所在のG2郵便局において,同郵便局内に備え付けの現金自動預払機に上記窃取に係るW名義の郵便局発行のキャッシュカードを挿入して同機を作動させ,同機から同郵便局局長H2管理に係る現金30万6000円を引き出して窃取したものである。 (証拠の標目)(省略)(補足説明)1(1) 弁護人は,判示第1の各事実について,被告人が,A1から,判示のとおり,3回にわたって現金を借り受け,いまだに返済していないことは事実であるが,被告人がA1と結婚の約束をしたことはなく,また,被告人には返済の意思があったし,返済の能力についてもなかったとはいえないから,詐欺罪は成立しない旨主張するので,当裁判所が前示のとおり認定した理由について,以下補足して説明する。 (2) 関係各証拠によれば,被告人は,平成10年3月20日にI2と結婚入籍していたが,同年10月上旬ころ,A1と知り合って,A1に対しては,父親がしている金融業と不動産業を手伝っており,離婚歴が1回あるなどと話していたこと,被告人は,その後A1と交際するようになり,「J2」と書いてある建物を見せて,この土地建物は自分のものである旨の話をし,また,同月下旬ころには,A1に対し,財布と一緒に銀行のキャッシュカードをなくしたので仕事の契約に必要な100万円を貸してほしい旨申し向けて,A1から100万円を借り受け,翌週には約束どおり返済したこと,被告人は,判示第1の1のとおり,同年12月中旬ころ,A1に300万円を貸してくれるように頼み,同月18日,A1から金300万円を借り受けたが,A1はこの金員を入社後結婚費用などのために貯金してきた社内預金を下ろして用意したこと,被告人は,同月10日及び同月19日にはA1方を訪ね,A1の母親や兄夫婦とも会ったこと,被告人は,平成11年3月21日,神戸市B1区所在の 用などのために貯金してきた社内預金を下ろして用意したこと,被告人は,同月10日及び同月19日にはA1方を訪ね,A1の母親や兄夫婦とも会ったこと,被告人は,平成11年3月21日,神戸市B1区所在の「K2」において,妻I2との結婚式を挙げ披露宴を開いたこと,被告人は,判示第1の2のとおり,同年4月3日,A1に仕事の支払いに必要である旨申し向けて金員を貸してくれるように頼み,同日,A1から金50万円を借り受けたが,A1はこの金員をクレジットカードを使用して借り受けて用意したこと,被告人は,判示第1の3のとおり,同月5日及び6日,A1にこの前の金では足りなかったのでもっと金員を貸してくれるように頼み,同日,A1から金160万円を借り受けたが,A1はこの金員を勤務先の保険会社で加入している保険から貸付けを受けるなどして用意したこと,被告人は,その後,A1に対し,信用金庫から金員を振り込んだが支店名が間違っていたなどと嘘を言って返済のできない口実としたり,同年7月26日限り返済する旨の借用証書や同年11月25日限り返済する旨の借用証書等を作成して,これらをA1に交付したが,その約束は履行されておらず,判示第1の各事実においてA1から借り受けた金員は,今日に至るまで全く返済されていないことなどが間違いのない事実として認められる。 (3) 証人A1の当公判廷における供述(以下「A1証言」という。)は,被告人が,A1とのデートの際の食事や飲食に高級な店を利用したり,A1にOの少し山手側にある「J2」と書いてある建物を見せて,この土地建物は自分のものであり,マージャン屋か何かをやらせているなどと言ったりしていたので,被告人のことを金持ちであると思っていた,被告人からは,結婚歴があって,子供が1人おり,毎月養育費を支払っている,A1と付き合う前に親が決 マージャン屋か何かをやらせているなどと言ったりしていたので,被告人のことを金持ちであると思っていた,被告人からは,結婚歴があって,子供が1人おり,毎月養育費を支払っている,A1と付き合う前に親が決めた婚約者がいるが,白紙に戻すつもりなので結婚してほしい,それが原因で親から勘当されて,親の会社の仕事ができなくなったなどと言われ,平成10年12月には被告人との結婚を決意するようになった,判示第1の1の事実については,そのような状況の中で,被告人から,「別れた妻との裁判でまとまったお金が必要なので300万円貸してほしい。親から勘当されてもう頼れない。来年の1月には前に言っていた土地が売れてまとまったお金が入るので,すぐに返済する。」旨言われ,本当にすぐに返してもらえると思って貸した,被告人からは,平成11年1月に前記の300万円は返済してもらえなかったが,土地は売れたものの銀行ともめていてすぐにお金ができない旨の説明を受けて,そのときは納得していた,判示第1の2の事実については,被告人から,「手形の決済にお金がどうしても必要だからお金を貸してほしい。すぐに返すから。」旨言われ,判示第1の3の事実については,被告人から,「この前借りた金では全然足りんかった。何百万円も必要なんや。すぐに返すから。」旨言われ,本当にすぐに返してもらえると思って貸したなどというのである。 A1証言は,時間の経過等により記憶がやや曖昧になっていると思われる部分もあるものの,被告人と交際し,被告人との結婚を決意するに至った経緯,被告人から聞かされた話等の内容やその話を信用するに至った理由,被告人の求めに応じて判示のとおり被告人に金員を貸した状況等について,具体的かつ詳細に述べている上,被告人がA1に自らを独身と言っていたことは被告人がA1に出した手紙によっ を信用するに至った理由,被告人の求めに応じて判示のとおり被告人に金員を貸した状況等について,具体的かつ詳細に述べている上,被告人がA1に自らを独身と言っていたことは被告人がA1に出した手紙によって,また,被告人がA1との結婚を約束していたことは被告人が作成した委任状によって,それぞれ裏付けられていることが明らかである。そして,被告人が既に結婚していることを知らずに,被告人と結婚できるものと信じ込まされ,また,被告人から見せられた土地建物が被告人のものであって,被告人がその億単位の売却代金を得ることができるなどと信じ込まされていたからこそ,A1が,結婚費用などのために貯金してきた社内預金を下ろしたり,クレジットカードを使用して借り受けたり,保険から貸付を受けたりなどまでして,被告人に対し,判示第1の各事実のとおり多額の金員を貸したことも,容易に理解できるというべきであるこれらのことを考え併せると,上記のようなA1証言は十分信用に値すると認められる。 (4) これに対し,被告人の当公判廷における供述等(以下「被告人の公判供述等」という。)は,A1は被告人が結婚していることを知っていたと思うし,被告人がA1と結婚するなどと約束したことはない,「J2」と書いてある建物を自分のものだと言ったのは,姫路城を自分の家だと言うのと同じ冗談であり,A1もそれを信じるはずはない,A1から借りた金を返済する意思はあったし,その能力もあったなどというのである。 しかしながら,被告人の公判供述等は,被告人が自らのことを独身と書いた上記の手紙や被告人がA1を婚約者と記載した上記の委任状について,納得できるような説明をなしえていない。また,姫路城を自分の家だと言われれば誰でもすぐに冗談であることが分かるが,被告人の姓と同じ表示のある市中の普通 人がA1を婚約者と記載した上記の委任状について,納得できるような説明をなしえていない。また,姫路城を自分の家だと言われれば誰でもすぐに冗談であることが分かるが,被告人の姓と同じ表示のある市中の普通の建物を自分のものだと言われれて,誰にでもそれが冗談であることが分かるとは思われず,A1がそれを本当だと思ったとしても不思議はない。A1証言は,その建物について,被告人がマージャン屋か何かをやらせているなどと言ったというのであるから,被告人がA1にそのような話をしたのは,決して冗談などではなく,A1に自己を資産家であると思わせるための嘘であったと考えるべきである。そして,被告人の公判供述等は,自己の仕事の内容やその相手等の事業の詳細,具体的な収入額,判示第1の各事実においてA1から借用名下に受け取った金員の使途,その返済金準備の具体的な当てと見込みなどの点について,曖昧あるいは不明確な供述に終始していて,A1から借用名下に受け取った金員を返済する意思及び能力があったことの客観的な裏付けは全く存しない。むしろ,被告人が,平成10年3月に結婚して間もなくから,妻を介してその父親から500万円を借り受けていて,A1から判示第1の1の金300万円を受け取ったその日に妻の父親に前記借金のうち100万円を返済していることや,平成11年3月に結婚式と披露宴をしたK2にもその代金188万円余りのうち申込金の2万円以外には支払っていないこと,被告人は「総合経営コンサルタント株式会社L2 代表取締役M2」の名刺を所持していたが,その会社の法人登記はなく,記載の住居地に会社も存在していないことなどからすれば,被告人にはA1から借用名下に受け取った金員を返済する意思及び能力などなかったとみるのが相当である。 なお,被告人はA1から最初に借りた100万円に 会社も存在していないことなどからすれば,被告人にはA1から借用名下に受け取った金員を返済する意思及び能力などなかったとみるのが相当である。 なお,被告人はA1から最初に借りた100万円については約束どおり返済しており,それは,被告人がたまたま競馬に勝ったためであるのか,被告人がA1の信用を得ようとしたためなどであるのか明らかではないが,そのことをもって,判示第1の各事実の際にも,被告人がA1から借用名下に受け取った金員を返済する意思及び能力があったとみるべき理由とはなし得ない。 これらのことを考え併せると,上記のような被告人の公判供述等は到底信用に値しないというべきである。 (5) 弁護人は,被告人の検察官調書(乙12ないし14)及び警察官調書(乙2,5ないし11)のうち,上記のような被告人の公判供述等に反する部分の任意性及び信用性を争うけれども,被告人の公判供述等が不任意の供述をさせられたとしてあれこれ主張するところの信用性は乏しく,上記の被告人の検察官調書及び警察官調書の任意性に疑いを容れるには至らないし,これまでみてきたところによれば,被告人が,その中で,判示1の各事実のとおり,A1から3回にわたり現金合計510万円を詐取した旨いうところは,十分信用に値すると認められる。 (6) 以上のとおりであるから,判示第1の各事実は,いずれもこれを間違いがないと認めることができる。 2(1) 弁護人は,判示第2の事実について,被告人が,Qに対し,「新幹線の回数券を買って渡せば,後で1割増で振り込んであげる。」旨言って,判示のとおり,Qから新幹線回数券の交付を受けたことは事実であるが,被告人にQを騙すつもりはなく,Qに対し,実際に新幹線回数券の代金として100万円を支払っているのであるから,詐欺罪は成立しない旨主張する おり,Qから新幹線回数券の交付を受けたことは事実であるが,被告人にQを騙すつもりはなく,Qに対し,実際に新幹線回数券の代金として100万円を支払っているのであるから,詐欺罪は成立しない旨主張するので,当裁判所が前示のとおり認定した理由について,以下補足して説明する。 (2) 関係各証拠によれば,被告人は,伝言ダイヤルの応答などのアルバイトをしていたQと知り合って,平成12年6月13日に会ったが,その際,Rの偽名を名乗り,設計事務所を経営しているなどと嘘を言ったこと,被告人は,Qが多額の借金を抱えており,またクレジットカードを持っているのを知ったことから,Qに対し,「新幹線の回数券を買って渡せば,後で1割増で振り込んであげる。」旨言い,R名義のクレジットカードを預けて信用させ,同日及び同月14日にかけて,Qにその名義のクレジットカードを利用して新幹線回数券合計12冊(購入価格合計94万9680円)を購入させ,これらを受け取ったこと,被告人は,同日ころ,上記合計12冊の全てをいわゆる金券ショップに持ち込み偽名を用いるなどして換金したことなどが間違いのない事実として認められる。 (3) 証人Qの当公判廷における供述(以下「Q証言」という。)は,上記のようにして被告人と会い,クレジットカードを利用して購入した新幹線回数券合計12冊を被告人に渡した状況等について述べた上,平成12年6月14日当日,夫が上記の多額のクレジットカード利用の事実を知ったことから,被告人に連絡をしその旨伝えたところ,被告人は,必ず上記新幹線回数券の代金を振り込むと約束したので,教えておいた銀行預金口座に振込みがなされるのを待っていたが,ついに代金は振り込まれなかった,その間,被告人の携帯電話機に電話を掛けたが,出なかったり,違うと言って切られたりしてしまい,被告人か で,教えておいた銀行預金口座に振込みがなされるのを待っていたが,ついに代金は振り込まれなかった,その間,被告人の携帯電話機に電話を掛けたが,出なかったり,違うと言って切られたりしてしまい,被告人からの電話もなかった,同月14日以後に被告人と会ったことはなく,被告人から代金100万円の支払いを受けたことなど絶対にないなどというのである。 Q証言は,時間の経過等により記憶がやや曖昧になっていると思われる部分もあるものの,被告人と会うに至った経緯,被告人から新幹線回数券購入による儲け話を聞かされ,その話を信用するに至った理由,被告人の指示に従ってクレジットカードを利用して新幹線回数券合計12冊を購入し,これを被告人に渡した状況,夫が多額のクレジットカード利用の事実を知ったことを被告人に連絡したり,夫と共に警察に相談に行ったりした状況,元々の借金に本件の被害が加わったため,その返済に苦労している状況等について,具体的かつ詳細に述べており,クレジットカードを利用して新幹線回数券を購入した点やQの銀行預金口座に被告人からの代金振込みがなされていない点などについては,客観的な証拠とも符合していることが明らかである。また,Qが実際に被告人から代金100万円の支払いを受けていたのであれば,Qには約4万円の利益があったことになり,夫にも詐欺に引っかかったわけではないことを報告することができ,被告人に対して恨み等を抱くべき理由はないのであるから,公開の法廷で自らの不名誉な事実をも明らかにしながら,ことさら虚偽の証言をしなければならない理由は見当たらない。 これらのことを考え併せると,上記のようなQ証言は十分信用に値するというべきである。 (4) これに対し,被告人の当公判廷における供述等(以下「被告人の公判供述等」という。)は,Qには これらのことを考え併せると,上記のようなQ証言は十分信用に値するというべきである。 (4) これに対し,被告人の当公判廷における供述等(以下「被告人の公判供述等」という。)は,Qには,Q証言がいうように新幹線回数券を自分の会社で不正処理すると言ったのではなく,知り合いの会社でと言っており,それは,ある会社等の経理担当者が会社から新幹線回数券代を受け取って出張をしたように操作し,空出張によって浮いた新幹線回数券を金券ショップで換金して私腹を肥やしており,そのための新幹線回数券を購入してN2を通じて渡すと,新幹線回数券を購入した者に2割の手数料が出るので,Qにはそのうち1割を渡すつもりでいたからであって,「新幹線の回数券を買って渡せば,後で1割増で振り込んであげる。」旨言ったのは嘘ではない,Qから新幹線回数券合計12冊を受け取った後,Qからの電話で夫が多額のクレジットカード利用の事実を知って警察に行くと言っていることなどを聞き,平成12年6月14日当日に金券ショップで新幹線回数券合計7冊を換金するなどして104万円余の現金を用意し,Qに今から振り込む旨連絡すると,Qからお金は100万円でいいからもう一度会いたいと言われたため,2,3日後にZU店新館1階にある喫茶店でQと会い,その際Qに現金100万円を渡したが領収書等はもらっていないなどというのである。 しかしながら,被告人の公判供述等のいうように,ある会社等の経理担当者が空出張による不正な経理処理によって私腹を肥やすことがあるとしても,被告人のいうような方法でそれが露見しないで行われ得るとも,また全く関係のない第3者を介在させてその者に利益を得させる必要があるとも思われず,その内容自体不合理である上,そのような事実の存在を裏付けるような証跡は全く存しない。また,Qは で行われ得るとも,また全く関係のない第3者を介在させてその者に利益を得させる必要があるとも思われず,その内容自体不合理である上,そのような事実の存在を裏付けるような証跡は全く存しない。また,Qは,多額の借金に苦しみ,本件についても夫から詐欺に遭ったのではないかと責められていたものであって,そのようなQが被告人から今から104万円余りを振り込む旨連絡されながら,すぐに振り込むことを求めず,しかも減額まで申し出るなどというのは,不自然というほかない。そして,被告人は,平成12年6月14日に金券ショップで新幹線回数券合計7冊を換金する際に偽名を用いているが,Qに渡す金員を用意するためなら偽名を用いる必要などないことも明らかである。さらに,被告人は,Qに現金100万円を渡したが領収書等はもらっていないというのであるが,Qから夫が警察に行っていることを聞いており,実際に100万円を渡すことによって詐欺の疑いを晴らそうというのであれば,当初の約束どおりQの銀行預金口座に振り込んだり,Qから領収書を受け取ったりなどしておくのが通常であるし,それができないような事情も窺えないのであるから,Qに現金100万円を渡した際に領収書等をもらわなかったというのも,不可解というほかない。 これらのことを考え併せると,上記のような被告人の公判供述等は到底信用に値しないというべきである。 (5) 弁護人は,被告人の検察官調書(乙24ないし26)及び警察官調書(乙16ないし23)のうち,上記のような被告人の公判供述等に反する部分の任意性及び信用性を争うけれども,被告人の公判供述等が不任意の供述をさせられたとしてあれこれ主張するところの信用性は乏しく,上記の被告人の検察官調書及び警察官調書の任意性に疑いを容れるには至らないし,これまでみてきたところによれば 被告人の公判供述等が不任意の供述をさせられたとしてあれこれ主張するところの信用性は乏しく,上記の被告人の検察官調書及び警察官調書の任意性に疑いを容れるには至らないし,これまでみてきたところによれば,被告人が,その中で,Qから新幹線回数券合計12冊を詐取し,その代金100万円を支払ったことなどない旨いうところは,十分信用に値すると認められる。 (6) そうだとすると,被告人が,判示第2の事実のとおり,真実は,Qから受領した新幹線回数券は直ちに換金して自己の用途に費消する意図であって,その購入代金の1割増の額の金員をQの銀行口座に後日振込み入金する意思がないのにあるように装い,上記のように嘘を言ってQを欺き,新幹線回数券12冊を詐取したものであることは,間違いがないと認めることができる。 (法令の適用)被告人の判示第1の1ないし3,第2,第3の1,3の各行為はいずれも刑法246条1項(判示第2の行為は包括して)に,判示第3の2,4ないし7の各行為はいずれも同法235条にそれぞれ該当するが,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第1の1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役4年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中180日をその刑に算入し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,判示第1の各犯行の被害者から3回にわたり合計金510万円を詐取し,判示第2の犯行の被害者から購入価格合計94万円余りの新幹線回数券を詐取し,更には,判示第3の1,3,5の各犯行の被害者から2回にわたりクレジットカードを詐取したほか,現金約1万5000円及び銀行や郵便局のキャッシュカード等在中の財布を窃取し,こ の新幹線回数券を詐取し,更には,判示第3の1,3,5の各犯行の被害者から2回にわたりクレジットカードを詐取したほか,現金約1万5000円及び銀行や郵便局のキャッシュカード等在中の財布を窃取し,これら詐取したクレジットカードあるいは窃取したキャッシュカードを使用して4回にわたり銀行や郵便局等の現金自動預払機等から現金合計115万円余りを窃取したという事案である。 被告人は,生活費や遊興費あるいはそのためにできた借金の返済資金等ほしさに判示の各犯行を次々と敢行したものと認められるのであって,その犯行の動機原因に酌むべき点は存しないこと,被告人は,独身女性である判示第1の各犯行の被害者に対しては,結婚しているのに独身であると偽った上,資産家であるように見せかけ,結婚したいなどと申し向けながら,すぐに返すなどと欺いて借金を申し込んで金員を詐取し,借金を抱えている判示第2の犯行の被害者に対しては,偽名を名乗って設計事務所を経営しているなどと偽った上,新幹線回数券買取りによる虚偽の儲け話を持ちかけて新幹線回数券を詐取し,若い女性である判示第3の1,3,5の各犯行の被害者に対しては,偽名を名乗ってテレビのプロデューサーをしているなどと偽った上,調査名下等にクレジットカードを詐取するや,すぐさまそのクレジットカードを使用して銀行等の現金自動預払機等から現金を窃取し,あるいは被害者の隙を狙ってキャッシュカード等在中財布を窃取し,その被害者がアルバイト先から給料の支払いを受けたころを見計らいあるいは郵便局の定額貯金を解約させて通常貯金に入金させた上,窃取したキャッシュカードを使用して銀行や郵便局の現金自動預払機から現金を窃取したものであって,犯行の手口は計画的でまことに悪質巧妙であること,判示の各犯行により詐取あるいは窃取された被害の総額は720万円 ャッシュカードを使用して銀行や郵便局の現金自動預払機から現金を窃取したものであって,犯行の手口は計画的でまことに悪質巧妙であること,判示の各犯行により詐取あるいは窃取された被害の総額は720万円余りと相当に多額であり,判示第3の1,3,5の各犯行の被害者(判示第3の2,4,6,7の各犯行の実質的な被害者でもある。)に対しては,被害(起訴外のものもある。)弁償の内金として80万円が支払われているものの,判示第1の各犯行の被害者や判示第2の犯行の被害者に対しては全く被害弁償はなされておらず,これら被害者らの被害感情には厳しいものがあること,そして,被告人は,判示第1の各犯行や判示第2の犯行については,公判段階になって自白を翻し不合理不自然な弁解を重ねて,自己の刑事責任を免れようとしているだけでなく,被害者らに対する侮辱的な言動までをもしていて,真摯な反省悔悟の情は窺えないことなどを考え併せると,犯情は悪く,被告人の刑事責任は相当に重いというべきである。 また,被告人には,昭和62年8月に窃盗の罪で懲役1年(3年間執行猶予,平成元年6月執行猶予取消)に,平成元年4月に有印私文書偽造,同行使,詐欺,窃盗等の罪で懲役1年6月に,平成4年5月に窃盗,占有離脱物横領の罪で懲役1年2月にそれぞれ処せられて服役した前科があって,その中には本件と同種の犯行態様のものが含まれていることも,量刑上看過するわけにはいかない。 してみると,被告人は,判示第3の1,3,5の各犯行の被害者(前同)対しては,前記のとおり,被害(前同)弁償の内金として80万円を支払っており,判示第3の各犯行については事実を認め,それなりに反省の弁を述べていること,被告人の最終懲役刑の服役後本件までに5年以上が経過していること,被告人には扶養すべき妻子がいること,被告人が本件で1年近 判示第3の各犯行については事実を認め,それなりに反省の弁を述べていること,被告人の最終懲役刑の服役後本件までに5年以上が経過していること,被告人には扶養すべき妻子がいること,被告人が本件で1年近くの期間身柄拘束を受けていることなどの,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,被告人を懲役4年に処すべきであるとの検察官の科刑意見は,軽きに失しても決して重きに過ぎるものではないと考えられるから,被告人を主文の刑に処することとする。 (検察官の科刑意見懲役4年)よって,主文のとおり判決する。 平成13年12月27日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣
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