平成18(行コ)252 法人税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成16年(行ウ)第271号・平成17年(行ウ)第69号)

裁判年月日・裁判所
平成19年10月25日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文33,837 文字)

- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴人(1)原判決を取り消す。 (2)被控訴人が,控訴人の平成11年4月1日から平成12年3月31日までの事業年度(以下「平成12年3月期」という。)の法人税について,平成14年7月30日付けでした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下,これらを併せて「平成12年3月期更正処分等」といい,後の事業年度に係る処分についても,同様に略称する。)のうち,納付すべき税額■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を超える部分及び過少申告加算税額■■■■■■■■■■■■■■を超える部分をそれぞれ取り消す。 (3)被控訴人が,控訴人の平成12年4月1日から平成13年3月31日までの事業年度(以下「平成13年3月期」という。)の法人税について,平成14年7月30日付けでした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(平成13年3月期更正処分等)のうち,納付すべき税額■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を超える部分及び過少申告加算税額■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を超える部分をそれぞれ取り消す。 (4)被控訴人が,控訴人の平成13年4月1日から平成14年3月31日までの事業年度(以下「平成14年3月期」という。)の法人税について,平成15年5月30日付けでした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(平成14年3月期更正処分等)のうち,納付すべき税額■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を超える部分及び過少申告加算税額■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を超える部分をそれぞれ取り消す。 - 2 -(5)被控訴人が,控訴人の平成14年3月期 ■■■■■■■を超える部分及び過少申告加算税額■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を超える部分をそれぞれ取り消す。 - 2 -(5)被控訴人が,控訴人の平成14年3月期法人税について,平成15年7月15日付けでした更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)のうち特定外国子会社等の課税対象留保金額に関する部分を取り消す。 (6)被控訴人が,控訴人の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事業年度(以下「平成15年3月期」という。)の法人税について平成16年7月30日付けでした更正処分(ただし,平成17年11月28日付け更正処分により減額された後のもの)のうち,次の部分を取り消す。 ア当期欠損金額■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■(ただし,平成17年11月28日付け更正処分により■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■に増額)とした処分のうち,同欠損金額■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■(ただし,平成17年11月28日付け更正処分により■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■に増額)を超え,■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■に達するまでの部分。 イ翌期に繰り越す欠損金額■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■(ただし,平成17年11月28日付け更正処分により■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■に増額)とした処分のうち,特定外国子会社等の課税対象留保金加算もれとして■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 月28日付け更正処分により■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■に増額)とした処分のうち,特定外国子会社等の課税対象留保金加算もれとして■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を所得金額等に加算した部分。 被控訴人主文同旨第2事案の概要本件は,グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国領チャネル諸島ガーンジー(以下「ガーンジー島」という。)に本店を有し,再保険を業とする法人であるP1(以下「P1社」という。)の発行済株式の全てを保有している控訴人に対し,P1社が,租税特別措置法(以下「措置法」という。)6- 3 -6条の6第1項所定の特定外国子会社等に該当するとして,同項に規定する課税対象留保金額に相当する金額を控訴人の所得の金額の計算上,益金の額に算入して本件各事業年度の更正処分等及び本件通知処分(以下,これらを併せて「本件各処分」という。)がされたため,これを不服とした控訴人が,本件各処分の取消しを求める事案である。 原判決は,本件通知処分は訴えの利益がないとして却下し,その余の請求はいずれも理由がないとして棄却した。控訴人はこれを不服として控訴した。 当事者等,関係法令の定め,前提事実等,税額等に関する当事者の主張は,原判決「事実及び理由」欄の第2の1ないし4(原判決4頁12行目から13頁5行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点 (1)平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えが適法な訴えであるかどうか(被控訴人は,後記のとおり,不服申立前置を欠き,あるいは出訴期間を徒過した不適法な訴えである旨主張するのに対し,控訴人はこれを争っている。)。 (2)控訴人は,本件通知処分のうち申告税額を上回る部分について争うことができるか。 (3)本件各更正処分等にお を徒過した不適法な訴えである旨主張するのに対し,控訴人はこれを争っている。)。 (2)控訴人は,本件通知処分のうち申告税額を上回る部分について争うことができるか。 (3)本件各更正処分等において,P1社が,控訴人の特定外国子会社等(措置法66条の6第1項)に該当するとして,控訴人の所得金額の計算上,P1社に係る課税対象留保金額に相当する額を益金の額に算入したことが適法か否か。 そして,この点については,特定外国子会社等とは,法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社(措置法施行令39条の14第1項1号),又はその各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の25以下である外国関係会社(同項2号)であって,外国法人税賦課の有無やその税率が問- 4 -題となるところ,措置法施行令39条の14第2項1号が,外国法人税は,「法人税法69条1項に規定する外国法人税をいう。」と規定していることから,本件外国税が法人税法69条1項の外国法人税に該当するか否かが問題となる。 (4)本件各更正処分等の理由付記は適法か否か。 争点に関する当事者の主張争点に関する当事者の主張は,争点(3)に関する当審における当事者の主張を以下のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の第2の6(原判決13頁25行目から48頁13行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)控訴人の主張-タックス・へイブン対策税制の制度趣旨からの検討アタックス・ヘイブン対策税制の規制の対象(ア)タックス・へイブン対策税制の趣旨・目的タックス・へイブン対策税制は,昭和53年度の税制改正により,租税特別措置法の一部改正という形で導入された。 同制度の導入の経緯については,我が国経済の (ア)タックス・へイブン対策税制の趣旨・目的タックス・へイブン対策税制は,昭和53年度の税制改正により,租税特別措置法の一部改正という形で導入された。 同制度の導入の経緯については,我が国経済の国際化の進展に伴い,内国法人が,法人の所得等に対する税負担が全くないか,又は極端に低い国又は地域(いわゆるタックス・へイブン)に子会社を設立して経済活動を行いながら,本来内国法人に帰属すべき所得をその子会社に留保することによって,税負担の不当な回避ないし軽減を図る事態が生じるようになった。これに対し,課税当局においては,従来から法人税法11条の実質所得者課税の規定により,それを適用し得る範囲において規制してきたが,適用に当たっての所得の実質的な帰属についての具体的な判定基準が明示されていないため,課税執行面での安定性に必ずしも問題なしとしない面があった。このため,租税法律主義を維持しつつ課税の執行の安定性を確保するという観点からも,租税回避対策のための- 5 -明文規定の整備が強く要請されていた(甲40,82頁)。 このようにタックス・へイブン対策税制は,我が国の内国法人がタックス・へイブンに設立した子会社を利用して,「税負担の不当な回避ないし軽減」を図ることに対処し,「国際的な租税回避」を防止するという政策目的を持った税制である。 (イ)軽課税国指定制度の廃止a軽課税国指定制度タックス・へイブン対策税制は,当初は,軽課税国指定方式が採られていた。すなわち,措置法66条の6第1項は,規制の対象となる「特定外国子会社等」を「次に掲げる内国法人に係る外国関係会社で,本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して法人のすべての所得又は特定の所得に対して課される税の負担が著しく低い国又は地域としてすべての所得又は特定の所得の区分ご に係る外国関係会社で,本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して法人のすべての所得又は特定の所得に対して課される税の負担が著しく低い国又は地域としてすべての所得又は特定の所得の区分ごとに政令で定める国又は地域に本店又は主たる事務所を有するもの」と規定し,この規定を受けて措置法施行令39条の13第1項では,軽課税国とされる国又は地域について,「法第66条の6第1項に規定する政令で定める国又は地域は,次の各号に掲げる所得に対して税を課さない国若しくは地域又は当該各号に掲げる所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低い国若しくは地域として当該各号に掲げる所得の区分ごとに大蔵大臣が指定する国又は地域とする。」と規定し,これを受けて,昭和53年3月31日付大蔵省告示第38号により,「軽課税国」とされるべき国又は地域が指定された。 b軽課税国指定制度の廃止その後,軽課税国が追加指定されるなどした結果,軽課税国の合計は41の国又は地域とされたが,平成4年の税制改正において,軽課- 6 -税国指定制度は廃止された。 この廃止の趣旨について,「DHCコンメンタール法人税法」9巻4987頁は「これまで軽課税国は,大蔵大臣が指定,告示することとされていたが,租税回避に利用されやすい課税上の措置を講じる国があとを絶たず,諸外国の税制改正のめまぐるしい動きを洩れなく適時適切に把握することは非常に困難となっていた。指定洩れが生じると,結果として課税上の不公平が生じることにもなる。最近では,わが国と極めて密接な経済関係にある国もそうした措置を講じるようになっていた。こうした事情にかんがみ,軽課税国の指定制度を廃止し,外国関係会社が特定外国子会社等に該当するかどうかの判定は,個々の法人ごとに 極めて密接な経済関係にある国もそうした措置を講じるようになっていた。こうした事情にかんがみ,軽課税国の指定制度を廃止し,外国関係会社が特定外国子会社等に該当するかどうかの判定は,個々の法人ごとにおこなうこととされた」と述べる。具体的には,措置法施行令39条の14第1項は,措置法66条の6第1項に規定する政令で定める外国関係会社(特定外国子会社等)は,法人の所得に対して課される税が存在しない国等に本店等を有する外国関係会社(同項1号)及びその各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の25以下である外国関係会社(同項2号)と規定されたのである。 (ウ)現行のタックス・へイブン対策税制の規制の対象以上に述べたタックス・へイブン対策税制の制度趣旨,軽課税国の指定基準,及び軽課税国指定制度が廃止された趣旨にかんがみれば,現行のタックス・へイブン対策税制は,外国関係会社の所得に対して課される租税の額が25%以下か否かをメルクマールとして,それが25%以下の場合には,「税負担の不当な回避ないし軽減」,「国際的な租税回避」が存するとみなして,子会社の所得を内国法人の所得に合算して課税することとしたものであり,特定外国子会社等に該当するか否かの判断に当たっては,当該外国関係会社の「当該事業年度」において具体的- 7 -に適用される税率によって個別に判断することとされているというべきである。 (エ)本件において,P1社は,ガーンジー税務当局からその所得に対し26%の税率で算出される本件外国税を課されているのであり,そこには現行のタックス・へイブン対策税制が規制の対象としている「税負担の不当な回避ないし軽減」,「国際的租税回避」は存しない。 なお,ガーンジー島は平成12年6月にはOECDにより「タックス・ヘイブン・リス 行のタックス・へイブン対策税制が規制の対象としている「税負担の不当な回避ないし軽減」,「国際的租税回避」は存しない。 なお,ガーンジー島は平成12年6月にはOECDにより「タックス・ヘイブン・リスト」に掲載され,本件外国税は「有害税制」と指定されたにもかかわらず(乙30),本件外国税に該当する税は平成13年の税制改正において,法人税法施行令141条3項各号には明記されなかった。同年の税制改正において同法施行令141条3項1号ないし4号が追加されたのは,当然,上記の有害税制指定がその背景にあったと思われるところ,立法担当者はあえて本件外国税を同改正において同項各号に追加しなかったのであり,このことは,立法担当者が本件外国税を外国法人税に該当すると考えていたことの証左である。そして,同改正において,以上のように明確化しようと思えばできたにもかかわらず,実際にその明確化を行わなかった以上,解釈によって本件外国税を外国法人税に該当しないとすることは,侵害規範であり文理解釈が強く要請される租税法の分野において,納税者の予測可能性を著しく損なうものであり,租税法律主義に反するものといわざるを得ない。 イタックス・へイブン対策税制の射程範囲(ア)政策目的税制の目的的解釈による射程範囲限定の可否タックス・へイブン対策税制は,前述のとおり,昭和53年度の税制改正により租税特別措置法の一部改正という形で導入された制度であるところ,租税特別措置とは,担税力その他の点で同様の状況にあるにもかかわらず,何らかの政策目的の実現のために,特定の要件に該当する- 8 -場合に,税負担を軽減しあるいは加重することを内容とする措置のことであり,タックス・へイブン対策税制も国際的租税回避の防止という政策目的のために立法された租税特別措置である。 そして,このよう -場合に,税負担を軽減しあるいは加重することを内容とする措置のことであり,タックス・へイブン対策税制も国際的租税回避の防止という政策目的のために立法された租税特別措置である。 そして,このような一定の政策目的のために採用された政策税制については,その目的的解釈によりその射程範囲が限定される余地がある。 すなわち,金子宏「租税法」(11版)130頁ないし131頁は,次のように述べる。 「なお,一定の政策目的を実現するために税負担を免除ないし軽減している規定に形式的には該当する行為や取引であっても,税負担の回避・軽減が主な目的で,その規定の本来の政策目的の実現とは無縁であるという場合がある。このような場合には,その規定がもともと予定している行為や取引には当たらないと考えて,その規定の縮小解釈ないし限定解釈によって,その適用を否定することができると解すべきであろう。 これはアメリカのグレゴリー事件の判決によって認められた法理(プロパー・ビジネス・パーパスの法理)であるが,わが国でも,解釈論として同じ法理が認められてしかるべきであろう。」最高裁平成17年12月19日判決・民集59巻10号2964頁は,被上告人たる銀行が,自己の外国税額控除の余裕枠を外国法人である第三者に利用させて対価を得ることを目的として,本来は外国法人が負担すべき外国税額について手数料その他の対価を得て引き受け,外国法人税を納付した上で,国内において納付すべき法人税の額から同外国法人税の額を控除して申告をしたのに対し,上告人たる税務署長が同控除は認められないとして法人税の更正及び過少申告加算税の賦課決定をしたので,同銀行がこれを争った事案において,次のとおり判示して,原判決を被棄し,被上告人の請求を棄却した。 「本件取引は,全体としてみれば,本来は外国法人が負担すべき外 び過少申告加算税の賦課決定をしたので,同銀行がこれを争った事案において,次のとおり判示して,原判決を被棄し,被上告人の請求を棄却した。 「本件取引は,全体としてみれば,本来は外国法人が負担すべき外国法- 9 -人税について我が国の銀行であるXが対価を得て引き受け,その負担を自己の外国税額控除余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税額を減らすことによって免れ,最終的に利益を得ようとするものであるということができる。これは,我が国の外国税額控除制度をその本来の趣旨目的から著しく逸脱する態様で利用して納税を免れ,我が国において納付されるべき法人税額を減少させた上,この免れた税額を原資とする利益を取引関係者が享受するために,取引自体によっては外国法人税を負担すれば損失が生ずるだけであるという本件取引をあえて行うというものであって,我が国ひいては我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものというほかない。そうすると,本件取引について生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることは,外国税額控除制度を濫用するものであり,さらには,税負担の公平を著しく害するものとして許されないというべきである。」また,最高裁平成18年2月23日判決・判例時報1926号57頁も上述した判決と同様に,外国税額控除の制度を,「我が国の企業の海外における経済活動の振興を図るという政策的要請の下に,国際的二重課税を防止し,海外取引に対する課税の公平と税制の中立性を維持することを目的として設けられたものである。」とした上で,以下のように判示して,この制度を本来の趣旨および目的から著しく逸脱する態様で利用する場合については,当該制度の適用される射程範囲の外であるとしている。 「本件各取引は,これを全体として見ると,本来は内国法人が 判示して,この制度を本来の趣旨および目的から著しく逸脱する態様で利用する場合については,当該制度の適用される射程範囲の外であるとしている。 「本件各取引は,これを全体として見ると,本来は内国法人が負担すべきでない外国法人について,内国法人である本件銀行が対価を得て引き受け,これを自らの外国税額控除の余裕枠を利用して我が国において納付されるべき法人税額を減らすことによって回収することを内容とするものであることは明らかである。これは,我が国の外国税額控除の制度- 10 -をその本来の趣旨及び目的から著しく逸脱する態様で利用することにより納税を免れ,我が国において納付されるべき法人税額を減少させた上,この免れた税額を原資とする利益を取引関係者が分け合うために,本件銀行にとっては外国法人税を負担することにより損失が生ずるだけの取引をあえて行うものというべきであって,我が国ひいては我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものにほかならない。そうすると,本件各取引は,外国税額控除の制度を濫用するものであり,これに基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることはできないというべきである。」すなわち,外国税額控除制度が政策目的で特別に導入された制度である以上,当該政策目的に沿っていない極端な利用形態の場合には,当該制度の射程外とされるのである。これは,上述の金子宏名誉教授の考え方を正面から採用したものである。 (イ)政策目的による課税規定の射程範囲限定の可否P2東京大学教授も述べるとおり(甲48),外国税額控除に関する法人税法69条のような課税減免規定ではなく,一定の政策目的から設けられた課税規定についても,当該課税規定の目的的解釈を行うことにより,当該政策目的との関連で規定の射程範囲に関す 国税額控除に関する法人税法69条のような課税減免規定ではなく,一定の政策目的から設けられた課税規定についても,当該課税規定の目的的解釈を行うことにより,当該政策目的との関連で規定の射程範囲に関する検討を行うべきことは法解釈として当然のことである。 本件で問題となっているタックス・ヘイブン対策税制は,法人税法11条の所得の帰属に関する定めでは十分に対応しきれない場合があることを考慮して,国際的租税回避に対処する等の目的を実現するために設けられた政策税制の一類型であるから,同制度の射程範囲は,その政策目的に応じて考えられるべきである。 したがって,国際的な租税回避の防止というタックス・ヘイブン対策税制の政策目的を踏み越えて,同制度を納税者に対する懲罰的なものと- 11 -して適用すべきではないし,また,国際的な租税回避が存在しないような場合においてまで同制度を適用すべきでもない。 (ウ)本件への当てはめ本件においては,P1社が26%の税率により租税として納付しているにもかかわらず,それは外国法人税に該当しないとして,タックス・ヘイブン対策税制が適用されている。しかし,P1社がガーンジー政府に対して,租税として26%の支払を現実に行なっている本件においては,いずれの国の課税権も及ばないという状況は存在しないのであるから,タックス・ヘイブン対策税制の対象となるべき国際的租税回避は存在せず,したがって,本件においてタックス・ヘイブン対策税制を適用する必要はない。そうであるにもかかわらず,本件において所得の合算課税を行なうことは,タックス・ヘイブン対策税制の趣旨目的を逸脱したもの(あるいは,タックス・ヘイブン対策税制の適用範囲を拡大するもの)であって許されない。本件は,タックス・へイブン対策税制の射程の範囲外と考えるべきである。 すなわ ン対策税制の趣旨目的を逸脱したもの(あるいは,タックス・ヘイブン対策税制の適用範囲を拡大するもの)であって許されない。本件は,タックス・へイブン対策税制の射程の範囲外と考えるべきである。 すなわち,本件においては,26%の税率で租税が支払われていて,タックス・ヘイブン対策税制は適用しないという方針が法律上明らかにされている以上,タックス・ヘイブン対策税制が本来予定していたような所得の国外流出は存在せず,タックス・ヘイブン対策税制が封じようとしていたような国際的租税回避は存在しなかった。平成13年の税制改正が行なわれた時期において,本件におけるような税率の選択を可能とする規定が存在していたにもかかわらず,法律上の手当は何らされなかったという点も,このことを裏付けている。 政策目的税制について,当該政策目的からかい離する事実関係においてその射程範囲を限定すべきであるという考え方は,上記のように,課税減免規定であれ,課税規定であれ成立する。そして,特に課税規定の- 12 -場合については,課税規定の射程範囲をむやみに拡大すべきではない。 すなわち,納税者の側における濫用の有無にかかわらず,本件におけるように課税庁が課税規定の射程範囲を拡大することは,租税法律主義の観点から許されるものではない。 本件においては,P1社もガーンジー政府も,P1社からガーンジー政府に対してなされた支払を,法的に租税として構成している。この点,P2教授も述べるように(甲48),両者の関係が公的なものであるにもかかわらず,日本の裁判所が,当事者間の法形式を無視して,それをあたかも契約であるかのように見て,事実認定・契約解釈の一環として,本件支払をサービスの対価と認定することは,法的に許されるものではない。外国の納税者が外国の政府に対して租税として支払ったものを, あたかも契約であるかのように見て,事実認定・契約解釈の一環として,本件支払をサービスの対価と認定することは,法的に許されるものではない。外国の納税者が外国の政府に対して租税として支払ったものを,その法形式を無視して日本の裁判所が租税ではないと認定することは許されるものではないし,仮に一定の場合にこれが許されるとしても,本件においてそのような認定が許されるとする法的根拠はない。 そもそも,外国に,納税者による税率の選択を認める制度が存在することが明らかであった平成13年の税制改正においても,そのような税率選択制度が採用されている場合にもタックス・ヘイブン対策税制を適用するという定めは導入されなかったのであり,それは,立法担当者もかかる税は,法人税法施行令141条3項1号及び2号の「実質的に税負担がない」税とは異なり,外国法人税に該当しないとは考えていなかったことの証左である。 以上のとおり,本件においては,本件各更正処分等におけるようにタックス・ヘイブン対策税制の拡大適用を行うべきではない。むしろ,タックス・ヘイブン対策税制の射程範囲は限定的に解釈されなければならない。すなわち,タックス・ヘイブン対策税制は,国際的租税回避の否認という政策目的実現のために設けられた特別な制度である。しかし,- 13 -本件においては,P1社は26%を租税としてガーンジー政府に支払っており,その意味で,いずれの国の課税権も及ばないという状況は存在しない。また,支払った租税がキックバックされるような制度にもなっておらず,濫用も存在しない。したがって,本件においてタックス・ヘイブン対策税制を適用する必要性は全く存在しないのである。 ウ本件各更正処分等によると控訴人は不当な二重課税を受けることになること(ア)課税対象留保金額に係る外国税額控除措置法 てタックス・ヘイブン対策税制を適用する必要性は全く存在しないのである。 ウ本件各更正処分等によると控訴人は不当な二重課税を受けることになること(ア)課税対象留保金額に係る外国税額控除措置法66条の7第1項は,前条1項各号に掲げる内国法人が同項の規定の適用を受ける場合には,当該内国法人に係る特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税の額のうち当該特定外国子会社等の課税対象留保金額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額は,政令で定めるところにより,当該内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなして,法人税法69条に規定する外国税額控除を適用すると規定する。 この規定の趣旨は次のようなものである(「DHCコンメンタール法人税法」第9巻5082頁)。 「タックス・へイブン立法は,我が国の企業が,タックス・へイブンに所在する子会社等を利用して行う租税回避行為に対処するものであり,法律的には我が国の企業とは別の独立した人格を有する特定外国子会社等のうち一定の条件を満たすものの留保所得を,その株主たる居住者又は内国法人の所得に合算して課税するものである。このように別人格の法人の所得を合算して我が国で課税を行う場合には,その合算の対象となる所得に対してすでに特定外国子会社等の所在地国等において税が課されていれば,同一所得に対し外国の税と我が国の税とが二重に課されることになる。このような二重課税を調整するために,特定外国子会社- 14 -等の所得に対して課された税のうち,合算課税が行われる内国法人の課税対象留保金額に対応する部分の金額を当該内国法人が納付した外国法人税額とみなして,法人税法第69条に規定する外国税額控除を適用するものである。」このように,措置法66条の6第1項により内国法人が特定外国子会社等の する部分の金額を当該内国法人が納付した外国法人税額とみなして,法人税法第69条に規定する外国税額控除を適用するものである。」このように,措置法66条の6第1項により内国法人が特定外国子会社等の合算課税を受ける場合には,所得も合算するのであるから,その外国子会社等が現地国において低率であるにせよ課税されている外国法人税があるときは,合算課税のいわば「見合い」として,これを親会社であるその内国法人の外国法人税とみなして,内国法人の外国税額控除の対象とするものとしているのである。 ところが,本件外国税が外国法人税に該当しないという解釈を採用すると,措置法66条の6第1項により,P1社の課税対象留保金額に相当する金額が控訴人の収益の額に合算される一方,本来であれば,それと「見合い」で認められるべき措置法66条の7第1項による外国税額控除が認められず,控訴人は,本来,タックス・へイブン対策税制が予定していない二重課税を負担するということになる。 (イ)しかし,上記のような解釈は,タックス・へイブン対策税制の立法担当者も,ガーンジー島は,「無税国」(タックス・パラダイス)ではなく,「軽課税国」であると考えていたことと矛盾する。 すなわち,昭和53年にタックス・へイブン対策税制が導入された当時におけるガーンジー島の税率はすべての納税者について標準税率20%であり,「無税国」ではなく「軽課税国」であると考えられていた。 わが国の立法担当者も,標準税率20%で軽課税国指定されたガーンジー島に本店を置く外国関係会社の所得については,タックス・へイブン対策税制の適用により,親会社である内国法人が合算課税を受ける一方,当然,外国税額控除が認められると考えていたのであり,この点でも,- 15 -上記の解釈が立法担当者の考えに反していることが明らかである。 の適用により,親会社である内国法人が合算課税を受ける一方,当然,外国税額控除が認められると考えていたのであり,この点でも,- 15 -上記の解釈が立法担当者の考えに反していることが明らかである。 それをさておいても,例えば,P1社が国際課税資格を取得せず,その所得に対し20%の標準税率で課税された場合にはどのような結果になるかを検討すると,上記の解釈の不当性が明らかとなる。この場合には,控訴人には措置法66条の6第1項によりP1社の所得が合算課税される一方,措置法66条の7第1項により外国税額控除が認められるはずである。とすると,P1社がその所得に対し20%の課税を受けた場合には,合算課税の適用がある一方,法人税法69条の外国税額控除の適用も認められるが,同社がその所得に対し26%の課税を受けた場合には,合算課税の適用はあるが,法人税法69条の外国税額控除の適用は認められないという極めて不自然な結果となるのである。 (2)被控訴人の反論アタックス・ヘイブン対策税制の射程範囲について(ア)控訴人は,タックス・へイブン対策税制については,国際的な租税回避の防止という政策目的から導入されたものであり,P1社は対象事業年度においてその所得に対し税率26%の税負担をしているから「国際的租税回避」は存せず,タックス・へイブン対策税制(措置法66条の6第1項)の射程範囲ではない旨主張する。 しかしながら,本件外国税が,我が国の法人税概念とはおよそかけ離れたものであり,一般的な租税概念に照らしても到底その概念の範疇に含まれるものでなく,むしろ,税という名称にもかかわらず,その実質は,外国法人に本国におけるタックス・ヘイブン対策税制の適用を回避させるサービスを提供するための対価といい得るものであり,P1社が「税負担をしている」という控訴人の いう名称にもかかわらず,その実質は,外国法人に本国におけるタックス・ヘイブン対策税制の適用を回避させるサービスを提供するための対価といい得るものであり,P1社が「税負担をしている」という控訴人の上記主張の前提そのものが成り立たないというべきなのである。 また,タックス・ヘイブン対策税制の目的に照らしてみても,P1社- 16 -において,ガーンジー島の「税制」のメニューから,20%の標準税率課税でも,免税法人でもなく,国際課税資格の取得を任意に選択したのは,その結果として発生する税名目の経済的負担(本件外国税)の額と,我が国の実効税率が適用された場合の税額との差額に相当する税負担を免れることで,「親会社の全世界所得税負担を最小化」(乙19)することが目的であったことは動かし難いというべきであり,このような行為がタックス・へイブン対策税制が防止しようとする行為の範疇に含まれていることは明らかである。 (イ)経済活動のグローバル化が進む一方で,OECD報告書が「有害な税の競争」と呼び,それが「いかに金融およびサービス活動の場所に影響を与えるか,またその他の諸国の課税ベースをいかに侵食するか…貿易と投資パターンをいかにゆがめ,租税制度全般の公平性,平等性および租税制度に対して社会が幅広く容認するような基盤をいかに傷つけているか…そのような有害な税の競争は全世界的に富を減少させ,租税制度の統一性に対する納税者の信頼の基盤をそこねるものである。」(乙38)と指弾する状況が現出している。タックス・へイブンであるガーンジー島においては,タックス・へイブン対策税制の適用を回避させるため税率が「0%超30%以下」の範囲で納税者と税務当局との合意により決定され,納税者が税率を自由に選択する機能を果たす制度が設けられ,控訴人はこれを利用してキャプテ ブン対策税制の適用を回避させるため税率が「0%超30%以下」の範囲で納税者と税務当局との合意により決定され,納税者が税率を自由に選択する機能を果たす制度が設けられ,控訴人はこれを利用してキャプティブ子会社を設立し,これに資産を留保するとともに,経済的には,合算課税を免れ,我が国における実効税率と選択税率26%の間の開差に相当する利益を得ているのであって,本件はこうした現実を踏まえ,その文脈から把握される必要がある。 控訴人は,現に本件外国税を支払っている以上国際的租税回避行為は行れていないと主張するが,真実は,我が国のタックス・へイブン対策- 17 -税制の適用を回避し,我が国の課税権を侵食することを目的とする制度を利用することによって,P1社に所得を流出させて資金を留保し,経済的には,我が国における実効税率との開差に相当する利益を得る意図の下に行動し,現にその利益を得ているのである。このような行為が我が国のタックス・へイブン対策税制が防止しようとする国際的租税回避行為の範疇に含まれることは明らかというべきである。 本件外国税のように,タックス・へイブン対策税制の適用を回避して有害税制を維持しようとする意図の下に仕組まれた企て,すなわち,我が国の存立の基盤である課税権を侵食しようとする企てから経済的利益を享受することは,まさに,「我が国ひいては我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図る」(前記最高裁平成17年12月19日判決参照)ことにほかならない。我が国のタックス・へイブン対策税制の解釈適用に当たって,上記のような現実を見ないでこれを座視することが同税制の法意に背馳することは明らかである。 (ウ)本件外国税を外国法人税と扱うことによって我が国が失う課税ベース(P1社の課税対象留保金額の加算漏れ額。本件外国税は損金処理済 これを座視することが同税制の法意に背馳することは明らかである。 (ウ)本件外国税を外国法人税と扱うことによって我が国が失う課税ベース(P1社の課税対象留保金額の加算漏れ額。本件外国税は損金処理済み。)は,平成12年3月期平成12年3月期■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■,平成13年3月期■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■,平成15年3月期■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■に上る。租税回避行為の問題に対する司法介入につき著しく消極的な態度を採るとすれば,それは現実には,タックス・へイブンによって仕組まれた有害税制により,本来我が国の課税ベースとされるべき所得の流出を追認するものに等しく,ひいては我が国に巨額の損失を与えかねないものである上,到底,適正な納税を行い,我が国の租税収入を支えている一般国民の理解を得られるものではない。 一般に,立法者は,法令を制定するに当たり,一定の事態を想定するが,さりとて,あらゆる事態を想定することは不可能である。立法者は,- 18 -想定された事態を前提にして,それに社会的評価を加え,一定の価値的立場から望ましい社会的結果の招来を意図して,それに沿うような内容の規範を条文の形で表明する。したがって,条文の形式で表明される法規範は,自ずと,一般的・抽象的規範とならざるを得ない。しかるに,時の経過による社会情勢の変化によるものだけではなく,特に法令の間隙をつくようにして新たなスキームが構築される場合があるが,その一例が,国際的租税回避行為である。国際的取引における租税回避行為は,ますます巧妙化してきており,タックス・へイブンの利用,租税条約の濫用による方法など様々な形態を用いて,各国の国内法,租税条約,外国為替管理法,金融事情,会社設立手続,地理的・政治的・ 回避行為は,ますます巧妙化してきており,タックス・へイブンの利用,租税条約の濫用による方法など様々な形態を用いて,各国の国内法,租税条約,外国為替管理法,金融事情,会社設立手続,地理的・政治的・経済的環境等を徹底的に研究し,各種の方法を組み合わせ,企業全体の全世界的租税負担を極少とするように高度な国際的租税回避戦略が採られているのである。 我が国においては,明文の租税回避否認規定がなければ原則として租税回避行為を否認し得ないとして,ともすれば,硬直的,形式的に租税法を解釈・適用することに流れやすく,国際的租税回避行為を狙われやすい面がある。そして,立法による解決を過度に重視する見解からは,課税逃れの防止は新たな立法によって対応すれば足りるとするのであるが,平成12年7月の政府税務調査会中期答申が,外国税額控除制度に関し「本制度の対象となる外国で所得に対して課される税は外国の制度に基づくものであり,その性格を把握することは容易ではありません」(甲14)としているとおりであり,特にタックス・へイブンにおいては税制度が不透明であり,その実態を把握して適時的確に対応することは一層困難である。また,めまぐるしく新たなスキームが構築される国際的租税回避の分野にあっては,事後的に新たな立法を行うことで租税回避防止を図ることには自ずと限界があるのであり,公平課税の原則上- 19 -租税回避行為の問題の解決を立法のみに依存することはできない。 裁判所は,一般的・抽象的法規範から具体的法規範を定立して,法律上の争訟を解決すべき権限と責務がある。立法は,上記のとおり,もともと裁判所の具体の事案における解釈適用を不可欠なものとして予定するのであって,裁判官の行う法律解釈には必然的に法創造機能が含まれる。このような裁判官の法創造機能の理は租税法の解釈に のとおり,もともと裁判所の具体の事案における解釈適用を不可欠なものとして予定するのであって,裁判官の行う法律解釈には必然的に法創造機能が含まれる。このような裁判官の法創造機能の理は租税法の解釈においても異なることはない。もとより租税法律主義の原則に背馳することなく,また,あくまでも法による裁判の性格を失うことのないような裁判官の法創造機能でなければならないことはいうまでもないが,本件のような事案において具体的妥当な解決を図ることは,租税法律主義の原則に背馳せず,むしろ,法による裁判の性格を失うことのない司法に求められる役割と考える次第である。 (エ)なお,控訴人は,平成12年にOECDによりガーンジー島が有害税制を有する国・地域に指定されたにもかかわらず,その直後の平成13年の税制改正において,本件外国税に該当する税が法人税法施行令141条3項各号にあえて明記されなかったのであり,これは立法担当者が本件外国税を外国法人税に該当すると考えていたことの証左であるとし,また,実際に明文をもって外国法人税に該当しない旨を明確にしなかった以上,本件外国税が外国法人税に該当しないとすることは,納税者の予測可能性を著しく損ない,租税法律主義に反する旨主張する。 しかしながら,外国法人税に相当しない例を網羅的に把握してこれを明文化することが困難であることは,平成12年7月の政府税務調査会中期答申が,外国税額控除制度に関し,「本制度の対象となる外国で所得に対して課される税は外国の制度に基づくものであり,その性格を把握することは容易ではありません」(甲14)としているとおりであって,特にタックス・ヘイブンにおいては税制度が不透明であり,国際的- 20 -な情報交換のルートが確立されていない(乙29の1枚目,30参照)こともあり,一層困難である。 )としているとおりであって,特にタックス・ヘイブンにおいては税制度が不透明であり,国際的- 20 -な情報交換のルートが確立されていない(乙29の1枚目,30参照)こともあり,一層困難である。平成13年の税制改正においては,当時把握し得る範囲の制度から,外国法人税に相当しない例を同項1号及び2号で明文化したものにすぎないのであって,このことをもって立法担当者が本件外国税を外国法人税に該当すると考えていたものと論ずることは失当である。 また,外国税額控除制度の本質が,資本輸出の中立性確保という政策判断から課税を減免する国家による一方的な恩恵的措置であり,その趣旨目的に照らして各規定を合理的に解釈し,その控除対象を画することは当然というべきであって,このことはタックス・ヘイブン対策税制の解釈についても同様である。したがって,タックス・ヘイブン対策税制が引用する外国税額控除の規定の合理的解釈により,本件外国税が「外国法人税」に該当しないと判断される限り,納税者の予測可能性を損なうということはできないし,租税法律主義に反するものではないというべきである。 イ「二重課税」の主張について(ア)控訴人は,①本件各更正処分等によると,「措置法66条の6第1項により,P1社の課税対象留保金額に相当する金額が控訴人の収益の額に合算される一方,本来であれば,それと見合いで認められるべき措置法66条の7第1項による外国税額控除が認められず,控訴人は,本来,タックス・ヘイブン対策税制が予定していない二重課税を負担するという不都合な結果を招来してしまう」とか,②「例えば,P1社が国際課税資格を取得せず,その所得に対し20%の課税標準税率で課税された場合には,合算課税の適用がある一方,法人税法69条の外国税額控除の適用も認められるが,同社がその所得に ,②「例えば,P1社が国際課税資格を取得せず,その所得に対し20%の課税標準税率で課税された場合には,合算課税の適用がある一方,法人税法69条の外国税額控除の適用も認められるが,同社がその所得に対し26%の課税を受けた場合には,合算課税の適用はあるが,同法69条の外国税額控除の適- 21 -用は認められないという極めて不自然な結果となる」と主張する。 (イ)控訴人の上記(ア)①の主張は,本件外国税が「外国法人税」(措置法66条の6第1項等)に該当することを前提としている点において既に失当である。 仮にこの点をおくとしても,控訴人も認めるとおり,本件各更正処分等(合算課税)をするに当たっては,P1社の所得の金額の計算上,本件外国税の額については,現に一定の経済的負担を負っていることを考慮し,これを損金の額に算入したところで課税対象留保金額を計算している。 我が国のタックス・ヘイブン対策税制の性質が,特定外国子会社等の留保所得を親会社の所得とみなすことにより租税回避行為を否認するものであることからすれば,特定外国子会社等の課税対象留保金額の計算に当たり本件外国税の損金算入を認めることで調整は済んでいるということができる。こうして,実質的にみても,本件において不当な二重課税と評すべき事態は生じていない。 さらにいえば,法人税法69条の定める外国税額控除の制度は,内国法人が外国法人税を納付することとなる場合に,一定の限度で,その外国法人税の額を我が国の法人税額から控除するという制度であり,これは,同一の所得に対する国際的二重課税を排斥し,かつ,事業活動に対する税制の中立性を確保しようとする政策目的に基づく制度である(前記最高裁平成17年12月19日判決参照)。ところが,本件においては,我が国等のタックス・へイブン対策税制の適用を回避す 事業活動に対する税制の中立性を確保しようとする政策目的に基づく制度である(前記最高裁平成17年12月19日判決参照)。ところが,本件においては,我が国等のタックス・へイブン対策税制の適用を回避するため,保険会社に対し,0%を超え30%までの範囲で,その適用を免れるような税率を選択することを認めるという,およそ公平ないし中立性の原則と相容れない有害「税制」が設定されており,控訴人は,これを利用して26%の「税率」を選択することにより,その利益を特定外国子会社- 22 -たるP1社に逃避させ,我が国の法人税の実効税率36.09%により計算される税額との差額に相当する経済的利益を得ていたものであって,このような活動は,国際的二重課税を排除することによって確保しようとする正当な国際的経済活動のらち外であり,資本輸出中立性とは無縁のものというべきである。 (ウ)控訴人の上記(ア)②の主張についていえば,ガーンジー島の税制とその運用の実態に照らして,キャプティブ保険会社がガーンジー島において徴収される「税」なるものは,その名称にもかかわらず,その実態は,タックス・ヘイブン対策税制の適用を回避させるというサービスを提供するための対価であるということも可能なものであり,控訴人のいう「20%の標準税率で課税された場合」(正確には,20%の標準税率課税を保険会社が任意に選択した場合というべきである。)においても,外国税額控除制度が適用される外国法人税には該当せず,その適用は認められないというべきであるから,控訴人が主張するような「極めて不自然な結果」が生じることはない。 さらに,P1社が20%の「標準税率課税」を選択せず,0%を上回り30%以下の範囲で税率を選択できる「国際課税資格」の取得を選択して,26%の税率を選択したのは,我が国のタックス 生じることはない。 さらに,P1社が20%の「標準税率課税」を選択せず,0%を上回り30%以下の範囲で税率を選択できる「国際課税資格」の取得を選択して,26%の税率を選択したのは,我が国のタックス・ヘイブン対策税制の適用を回避することによりグループの税負担を軽減することを目的としたものと認めるのが相当であって,P1社において20%の標準税率課税を選択する余地はなかったのであるから,控訴人の上記主張は実際には生じ難い非現実的な例を持ち出すものにすぎず,失当というべきである。 (エ)なお,措置法66条の7第1項は「前条第1項各号に掲げる内国法人が同項の規定の適用を受ける場合には,当該内国法人に係る特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税(法人税法第69条第1項- 23 -に規定する外国法人税をいう。次項において同じ。)の額のうち当該特定外国子会社等の課税対象留保金額に対応するもの(当該課税対象留保金額に相当する金額を限度とする。)として政令で定めるところにより計算した金額は,政令で定めるところにより,当該内国法人が納付する控除対象外国法人税の額(同法第69条第1項に規定する控除対象外国法人税の額をいう。以下この節において同じ。)とみなして,同法第69条第1項から第7項まで,第10項及び第15項から第18項までの規定を適用する。」と規定し,法人税法69条16項は,「第1項の規定は,確定申告書に同項の規定による控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細の記載があり,かつ,控除対象外国法人税の額を課されたことを証する書類その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り,適用する。この場合において,同項の規定による控除をされるべき金額は,当該金額として記載された金額を限度とする。」と規定している。 したがって,特定外国子会社等 で定める書類の添付がある場合に限り,適用する。この場合において,同項の規定による控除をされるべき金額は,当該金額として記載された金額を限度とする。」と規定している。 したがって,特定外国子会社等の所得に関して課される外国法人税の額のうち,課税対象留保金額に対応する金額について,当該内国法人が納付したものとみなして外国税額控除の適用を受けるためには,同条18項の「やむを得ない事情」がない限り,同項の定める申告要件を充足(自己否認)することを要するのである。 一方,法人税法41条は,「内国法人が第69条第1項(外国税額の控除)に規定する控除対象外国法人税の額につき同条…(略)…の規定の適用を受ける場合には,当該控除対象外国法人税の額は,その内国法人の各事業年度の計算上,損金の額に算入しない。」と規定し,内国法人が外国税額控除の方法を選択せず,特定外国子会社等の課税対象留保金額の計算に当たり当該外国法人税の額を損金の額に算入する方法を選択することを認めている(金子宏「租税法」(11版)414頁参照)。 - 24 -すなわち,特定外国子会社等が(本件とは異なり)外国法人税に該当する外国税を課せられた場合であっても,法は,二重課税の排除方法として外国税額控除と外国法人税の額の損金算入のいずれを選択するかを当該内国法人の選択にゆだねているのである。 付言すれば,外国税額控除の方法による場合でも,法人税額から控除される外国税額(控除対象外国法人税額)は,法人税額にその年度分ないし計算期間分の所得の金額のうちに国外源泉所得の占める割合を乗じて計算した金額(控除限度額)を限度とし(法人税法69条1項,同法施行令141条。なお,控除限度額を超える部分の金額は更に一定の限度額の範囲で住民税の額から控除される。),控除対象外国税額がその年度の控除限度額 (控除限度額)を限度とし(法人税法69条1項,同法施行令141条。なお,控除限度額を超える部分の金額は更に一定の限度額の範囲で住民税の額から控除される。),控除対象外国税額がその年度の控除限度額と地方税控除限度額との合計額を超える場合は,前3年以内の各事業年度の控除限度余裕額をその年に繰り越して,その金額(繰越控除限度額)を限度としてさらにその年度の税額から控除する(法人税法69条2項,同法施行令143条,144条)が,繰越控除できる控除限度額と,その額に相当する控除余裕額は,その適用を受けることができる事業年度後の事業年度においては,いずれもないものとみなされ,税額控除は打ち切られることになる(同法施行令145条3項,4項,)。すなわち,外国税額控除の制度は,もともと常に外国法人税の額を100%控除することを保証するものではないのである。 第3当裁判所の判断 争点(1)(平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えが適法な訴えであるかどうか)及び争点(2)(控訴人は,本件通知処分のうち申告税額を上回る部分について争うことができるか)について(1)事実関係平成14年3月期更正処分等及び本件通知処分の課税経緯は,以下のとおりである。 - 25 -ア控訴人は,被控訴人に対し,納付すべき税額を■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■として平成14年3月期の法人税の確定申告書(以下「平成14年3月期確定申告書」という。乙1)を平成14年7月30日に提出した。控訴人は,平成14年3月期確定申告書において,「特定外国子会社留保金」として■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を所得金額に加算しており,このうち■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■は,控訴人がその発行済株式の全部を直接保有するガーン 金」として■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を所得金額に加算しており,このうち■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■は,控訴人がその発行済株式の全部を直接保有するガーンジー島に本店を置くP1社に係る措置法66条の6第1項に規定する課税対象留保金額であった(乙1)。 イ控訴人は,平成15年5月13日付けで,平成14年3月期の法人税について,①■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■,②益金の額に算入した課税対象留保金額のうちP1社に係る部分,及び③■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■に誤りがあったとして,更正の請求をした(以下「本件更正の請求」という。甲5)。 ウ被控訴人は,平成15年5月30日付けで,控訴人の平成14年3月期の法人税の納付すべき税額を■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■とした平成14年3月期更正処分等をした(甲4)。 エ被控訴人は,同年7月15日付けで,本件更正の請求について更正すべき理由がないとして本件通知処分をした(甲6)。 オ控訴人は,同年8月7日に,本件通知処分を不服として,国税不服審判所長に対し審査請求(以下「平成14年3月期審査請求」という。)をした(甲8)。 カ国税不服審判所長は,本件通知処分とともに平成14年3月期更正処分等についてもあわせて審理をし,平成16年3月30日付けで,平成14年3月期審査請求を棄却する裁決をしたが,裁決書では,本件通知処分及び平成14年3月期更正処分等はいずれも適法であるとの判断が示されている(甲9)。 - 26 -キ控訴人は,平成16年6月24日,平成14年3月期更正処分等及び本件通知処分の取消しの訴えを東京地方裁判所に提起した。 (2)以上の事実関係の下に,被控訴人は,本件訴え (甲9)。 - 26 -キ控訴人は,平成16年6月24日,平成14年3月期更正処分等及び本件通知処分の取消しの訴えを東京地方裁判所に提起した。 (2)以上の事実関係の下に,被控訴人は,本件訴えのうち,平成14年3月期更正処分等の取消しを求める訴えは,不服申立前置(国税通則法115条1項)を欠き,また,同更正処分等のあった日から1年以上を経過して提起されたものであるから出訴期間(旧行訴法14条3項)を徒過したもので不適法である旨主張する。 しかし,当裁判所も,本件のように,更正の請求がされ,それに対する通知処分がなされないまま増額更正処分がされ,その後に更正の請求に理由がない旨の通知処分がされたような場合は,当該通知処分に対して不服申立てをしていれば,増額更正処分に対しても不服申立てを経由したものと扱うことが相当であり,したがって,上記訴えについては,不服申立前置の要件,出訴期間の遵守に欠けるところはないと判断する。 また,本件では,本件通知処分の取消しの訴えと平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えが併存しているが,当裁判所も,控訴人としては平成14年3月期更正処分等を争えば足り,これと別個に本件通知処分を争う利益や必要はないから,本件通知処分の取消しの訴えは不適法であると判断する。 したがって,平成14年3月期更正処分等の取消しの訴えは適法な訴えというべきであり(争点(1)),争点(2)については,判断の必要がないというべきところ,その理由は,上記に述べたほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3の1及び2(原判決48頁15行目から53頁初行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点(3)(本件各更正処分等において,P1社が,控訴人の特定外国子会社等(措置法66条の6第1項)に該当するとして,控訴人の所得金額の計算上 目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点(3)(本件各更正処分等において,P1社が,控訴人の特定外国子会社等(措置法66条の6第1項)に該当するとして,控訴人の所得金額の計算上,P1社に係る課税対象留保金額に相当する額を益金の額に算入したことが適法か否か)について- 27 -(1)当裁判所も,本件外国税は法人税法69条1項の外国法人税には該当せず,P1社の本件各事業年度における措置法施行令39条の14第1項2号に規定する租税負担割合は零であり,100分の25以下となるから,被控訴人が本件更正処分等において,P1社が控訴人の特定外国子会社等(措置法66条の6第1項)に該当するとして,P1社に係る課税対象留保金額に相当する額を益金の額に算入して控訴人の所得を計算したことに違法な点はないと判断する。その理由は,原判決「事実及び理由」欄の第3の3(原判決53頁4行目から65頁25行目まで)と同じであるから,これを引用し,併せて,本件外国税が法人税法69条1項の外国法人税に該当するか否かが重要な争点となっていることにかんがみ,後記(2)において,この問題に関する当裁判所の見解を要点に絞って述べることとする。 (2)当裁判所の見解ア前示のとおり,措置法66条の6第1項に規定する特定外国子会社等とは,法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社(措置法施行令39条の14第1項1号),又はその各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の25以下である外国関係会社(同項2号)であって,外国法人税賦課の有無やその税率が問題となるところ,措置法施行令39条の14第2項1号が,外国法人税は,「法人税法69条1項に規定する外国法人税をいう。」と規定している 係会社(同項2号)であって,外国法人税賦課の有無やその税率が問題となるところ,措置法施行令39条の14第2項1号が,外国法人税は,「法人税法69条1項に規定する外国法人税をいう。」と規定していることから,P1社が,控訴人の特定外国子会社等に該当するか否かの判断に当たっては,本件外国税が法人税法69条1項の外国法人税に該当するか否かが問題となる。 イ法人税施行令141条1ないし3項の規定について法人税法69条1項は,外国法人税の意義を「外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものをいう。」と定めており,これを受けて,同法施行令141条1項が,「法69条1項(外国税額の控- 28 -除)に規定する外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものは,外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税(以下,この款において「外国法人税」という。)とする。」と定め,さらに同条2項が,「外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税は,外国法人税に含まれるものとする。」として1号から4号までを定め,同条3項が,「外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税は,外国法人税に含まれないものとする。」として1号から5号までを定めている。 従来,法人税法施行令141条3項の規定は,外国法人税に含まれないものとして現行の同項5号に当たる附帯税を挙げるのみであったところ,平成12年7月の政府税制調査会「中期答申」において,外国税額控除制度の対象となる外国で所得に課される税は外国の制度に基づくものであり,その性格を把握することは容易ではない上,我が国の企業の国際的な活動の多様化に伴い控除対象となる外国の税の範囲についてどのように考えるのかという問題が一層難しくなっているといった状況 くものであり,その性格を把握することは容易ではない上,我が国の企業の国際的な活動の多様化に伴い控除対象となる外国の税の範囲についてどのように考えるのかという問題が一層難しくなっているといった状況の中で,控除対象となる外国の税の範囲について,二重課税の排除という制度の趣旨を踏まえて,明確化することが求められる(乙14)と提言されたことを受けて,平成13年政令135号により,同項1号ないし4号が追加されたものであり,この改正の趣旨は,制度の趣旨,取扱いの明確化にあり,これまでの取扱いを変更する趣旨ではないと考えられる(乙12)。こうした改正の経緯及び上記の規定の内容に照らしてみれば,法人税法69条1項を受けて外国法人税の意義を定めた政令の規定は同法施行令141条1項であって,同条2項,3項の規定は,同条1項に該当するかどうかを判断するための一種の解釈規定として位置付けられるべきものであり,同条2項,3項各号の定めは,このような解釈規定の性質上,例示列挙と解するのが相当である。 - 29 -したがって,外国法人税に当たるかどうかは,同法施行令141条2項,3項の例示を参酌しつつ,同条1項の規定に該当するものであるか否かによって判断すべきものであり,本件外国税が同条3項の規定する列挙事由に該当しないからといって,それが外国法人税に該当するといえないことは明らかというべきである。 ウ本件外国税が外国法人税に該当するか否か(ア)上記イで説示したとおり,本件外国税が外国法人税に当たるかどうかは,法人税法施行令141条1項等の規定に照らして判断するほかないところ,上記の各規定が「税」という概念によって控除の対象を限定しようとしていることも明らかなのであるから,結局,上記各規定は,我が国を含め先進諸国で通用している一般的な租税概念を前提とし ほかないところ,上記の各規定が「税」という概念によって控除の対象を限定しようとしていることも明らかなのであるから,結局,上記各規定は,我が国を含め先進諸国で通用している一般的な租税概念を前提とし,そのうち,「法人税」,「法人の所得を課税標準として課される税」に相当するものをいうと解するのが相当である。このように解さなければ,外国税額控除の可否は全面的に外国の税制に依存することになって,納税者間の平等ないし税制の中立性の維持が不可能になり,我が国の財政主権が損なわれる結果となるが,そのような結果が容認できないことは明らかである。 ところで,一般的に「租税」とは,国又は地方公共団体が,特別の給付に対する反対給付としてではなく,公共サービスを提供するための資金を調達する目的で,法律の定めに基づいて私人に課する金銭給付であると解されている。そして,租税の特性としては,①公共サービスの提供に必要な資金を調達することを目的とし(租税の公益性),②国民の富の一部を一方的・強制的に国家の手に移す手段であり(租税の強行性),③特別の反対給付の性質を持たず(租税の非対価性),④国民にその能力に応じて一般的に課される点が挙げられる。 そして,我が国を含め先進諸国においては,近代法治主義に基づいて,- 30 -国民の財産権の侵害の性質を有する租税の賦課・徴収は,必ず法律の根拠に基づいて行われなければならない(租税法律主義)とされ,また,近代法の基本原理である平等取扱の原則に基づいて,公共サービスの資金となる租税の負担は国民の間の担税力に即して公平に配分されなければならず,各種の租税関係において国民は平等に取り扱われなければならない(租税公平主義ないし租税平等主義)とされているところである。 なお,国家が産業振興,地域振興等の政策目的を実現するため一定の ればならず,各種の租税関係において国民は平等に取り扱われなければならない(租税公平主義ないし租税平等主義)とされているところである。 なお,国家が産業振興,地域振興等の政策目的を実現するため一定の要件の下に税を軽減する特例措置を設けることがあるが,このような制限的な税の調整は,上記の法人税等の基本的な租税の性質に変更をもたらすものとはいえない。 (イ)そこで,本件外国税についてみると,前記引用にかかる原判決に認定のとおり,ガーンジー島の税制とその運用の実態として次の事実が認められる。 aガーンジー所得税法は,保険会社に対して,課税を受ける方法として,①年間500ポンドの申請料を支払い,免税法人となる(同法40A条),②標準税率20%を選択する(同法5条),③標準税率に比べて極めて低い段階税率課税を選択する(同法187A条),④InternationalTaxStatus(国際課税資格)の申請をして,0%を超え30%以下の税率を選択する(同法188条)の4つの選択肢を用意している。 bガーンジー金融当局によるガーンジー島の税制等を説明した説明書(乙3)では,国際課税資格の税率の決定について「Negotiate」(交渉)という用語が使用され,国際課税法人へのガイド(乙18)では,「(国際課税資格)の申請に先立って,国際課税資格を取得しようとする法人の事業計画がガーンジー税務当局担当官と議論される(又は当該担当官に書面で連絡される。)。これにより,適用- 31 -税率の設定が可能となる。申請者とガーンジー税務当局との間で仮に合意された諸条件は,正式な国際課税資格の取得申請におけるガーンジー税務当局の承認を必要とする。」旨記載されている。また,ガーンジー所得税法の解説文(乙15)には,「所得税を支払う際の税率は,合意(Agr た諸条件は,正式な国際課税資格の取得申請におけるガーンジー税務当局の承認を必要とする。」旨記載されている。また,ガーンジー所得税法の解説文(乙15)には,「所得税を支払う際の税率は,合意(Agreement)によって決めることができる。」旨記載されている。 cガーンジー金融当局が作成したパンフレットである「国際課税法人へのガイド」(「AGuideToTheInternationalCompany」,乙18)には,「(国際課税資格)の申請に先立って,国際課税資格を取得しようとする法人の事業計画がガーンジー税務当局担当官と議論される(又は当該担当官に書面で連絡される。)。これにより,適用税率の設定が可能となる。申請者とガーンジー税務当局との間で仮に合意された諸条件は,正式な国際課税資格の取得申請におけるガーンジー税務当局の承認を必要とする。」旨記載されている。また,ガーンジー税務当局が作成したガーンジー所得税法の解説文(乙15)には,「所得税を支払う際の税率は,合意(Agreement)によって決めることができる。」旨記載されている。さらに,元英国財務省高官が作成した金融制度の調査レポート(乙19)には,「国際課税資格を取得する法人は,通常は0から2%の間でガーンジー税務当局と税率の交渉をしているが,たまには,その親会社の全世界所得税負担を最小化するために,より高い税率で交渉する場合もある。」旨記載されている。 dP1社が設立される前の1998年(平成10年)9月25日付けで担当者がガーンジー税務当局にあてた文書(甲11の1)には,「9月15日にP3から上記名称(P1社)の新会社が設立予定だということをお話ししたかと思います。…新会社(P1社)は,Int- 32 -ernationalBusinessCompan は,「9月15日にP3から上記名称(P1社)の新会社が設立予定だということをお話ししたかと思います。…新会社(P1社)は,Int- 32 -ernationalBusinessCompany(国際課税資格)として,26%の税率の選択を希望しています。当該税率は日本の税務当局にも受け入れられ,日本で新たな税負担をせずに済むとのことです。税率の選択期間は1年間とするそうです。その理由は,日本の法人税法に改正があった場合,P1社で支払う税を変更することができるようにです。」と記載されている。 (ウ)以上のような,ガーンジー島の税制度とその運用の実態に照らせば,ガーンジー島の外国法人は,同一の法人の同一の収入に対して,上記(イ)aの基本的性格を異にする4つの税制のいずれかを選択できるものであるが,納税者にかかる選択を認める税制は,我が国を含む先進諸国の一般の租税概念とはかけ離れた不自然なものであり,これを国家の産業振興,地域振興等の政策目的の実現のために設けられた税軽減措置等の特例の適用を受けるかどうかを納税者の選択にゆだねるという種類の税制における調整的な選択制度と同質のものとして理解することは困難である。 そうした税の選択肢の中でも,上記(イ)a④の国際課税資格の制度は,これを利用するについて,国際課税資格を取得することが必要であり,そのためには,資格申請者が,資格申請書に適用すべき税率を明記するとともに,当該税率が申請者にとって適しており,ガーンジー島の経済的利益の観点からも妥当な水準であることに関する情報を記載した上,ガーンジー税務当局から資格申請の承認を受けることを要することとされているものの,上記(イ)において認定した諸事実に照らしてみれば,その実態としては,0ないし30%という枠の中で,申請者である法人とガーンジ 税務当局から資格申請の承認を受けることを要することとされているものの,上記(イ)において認定した諸事実に照らしてみれば,その実態としては,0ないし30%という枠の中で,申請者である法人とガーンジー税務当局とが交渉を行い,その結果成立した合意に基づいて課税が行われていると考えざるを得ない。上記のとおり,本件外国税は,税率という重要な課税要件が,納税者とガーンジー税務当局との合- 33 -意により決定されるものであって,課税に関する納税者の選択裁量が広範に認められる租税と認めるほかない。 そうすると,ガーンジー島の上記「法人税」税制は,我が国を含む先進諸国の租税概念の基本である強行性,公平性ないし平等性と相容れないものであるといわざるを得ず,上記税制の実態に照らせば,ガーンジー島において上記のような「税制」が採用されているのは,外国法人に対し,本国におけるタックス・ヘイブン対策税制の適用を回避するためのメニューを提供するためであり,それ故,ガーンジー島において徴収される「税」なるものは,税という形式をとるものの,その実質は,タックス・ヘイブン対策税制の適用を回避させるというサービスの提供に対する対価ないし一定の負担としての性格を有するものと評価することができるというべきである。 そして,上記(イ)a④による法人税を外国法人税と認めることは,外国税額控除の可否がガーンジー島の税制に依存することになり,また,同税制を利用する結果として発生する税名目の経済的負担の額と,我が国の実効税率が適用された場合の税額との差額に相当する税負担を免れるいわゆる租税回避を許容することになって,納税者間の平等ないし税制の中立性の維持が不可能になり,我が国の財政主権が損なわれる結果を招来するが,このような結果が許容できないことは明らかである。 したがって,本 租税回避を許容することになって,納税者間の平等ないし税制の中立性の維持が不可能になり,我が国の財政主権が損なわれる結果を招来するが,このような結果が許容できないことは明らかである。 したがって,本件外国税は法人税法69条1項の外国法人税には該当しないというべきである。 (エ)控訴人は,タックス・ヘイブン対策税制については,国際的な租税回避の防止という政策目的から導入されたものであるところ,P1社は対象事業年度においてその所得に対し税率26%の税負担をしているから「国際的租税回避」は存在せず,タックス・ヘイブン対策税制(措置法66条の6第1項)の射程範囲ではない旨主張する。 - 34 -しかし,本件外国税は,我が国の法人税概念とはおよそかけ離れたものであり,むしろ,税という名称にもかかわらず,その実質は,外国法人に本国におけるタックス・ヘイブン対策税制の適用を回避させるサービスを提供するための対価ないし負担と評価できるものであることは既に説示したとおりであるから,P1社が税を負担しているとの前提に立つ控訴人の上記主張はその前提を欠くものである。 また,甲11の1及び弁論の全趣旨によれば,P1社が20%の「標準税率課税」を選択せず,0%を上回り30%以下の範囲で税率を選択できる「国際課税資格」の取得を選択して,26%の税率を選択したのは,我が国のタックス・ヘイブン対策税制の適用を回避することによりグループの税負担を軽減することを目的としたものであることが優に認められる。すなわち,控訴人は,ガーンジー島において設定された変則的な税制を利用し,国際課税資格の26%の「税率」を選択することにより,我が国の法人税の実効税率36.09%(弁論の全趣旨)により計算される税額との差額に相当する経済的利益を得ようとしたものということができるが,タッ 際課税資格の26%の「税率」を選択することにより,我が国の法人税の実効税率36.09%(弁論の全趣旨)により計算される税額との差額に相当する経済的利益を得ようとしたものということができるが,タックス・へイブン対策税制の目的に照らせば,このような行為は,まさに同税制が防止しようとする国際的租税回避行為の範疇に含まれているというべきであって,控訴人の上記主張は理由がない。 なお,控訴人は,決して,タックス・ヘイブン対策税制の適用を回避するためだけにガーンジー島を選択したわけではなく,P1社のような再保険会社を設立し,同社に再保険を引き受けさせることは,現在では,控訴人のような損害保険会社のリスク・マネジメントに重要な意義を有するものであり,ガーンジー島ではキャプティブ保険会社の設立が容易であるなど,P1社をガーンジー島に設立したことには合理性がある旨主張する。しかし,甲54及び弁論の全趣旨によれば,識者の間では,- 35 -キャプティブ保険会社は単に親会社の資産を子会社という形に変えただけのものであり,結局は,親会社の資産でリスクを処理するということと変わりないから,リスクの移転がないのではないかという疑問があることが指摘され,また,キャプティブ保険会社の利点として,「保険料の損金処理など保険としての利点が享受できる」点が挙げられている一方で,欠点として,「キャプティブ保険会社の資金や剰余金(準備金)などの額が一般の保険会社に較べ小さく,リスクの保有能力も小さく,安定性も脆弱である」点が挙げられていることが認められるのであって,キャプティブ保険会社が損害保険会社のリスク・マネジメントに重要な意義を有するという控訴人の主張はたやすく首肯できない。このほか,控訴人はP1社について措置法66条の6第3項が規定するタックス・ヘイブン対策 ブ保険会社が損害保険会社のリスク・マネジメントに重要な意義を有するという控訴人の主張はたやすく首肯できない。このほか,控訴人はP1社について措置法66条の6第3項が規定するタックス・ヘイブン対策税制の適用除外要件に該当する旨の主張をしてないことをも考え併せると,ガーンジー島にキャプティブ保険会社であるP1社を設立した目的が主として控訴人のリスク・マネジメントにあるかのようにいう控訴人の主張は採用できない。 (オ)控訴人は,本件各更正処分等によれば,「措置法66条の6第1項により,P1社の課税対象留保金額に相当する金額が控訴人の収益の額に合算される一方,本来であれば,それと見合いで認められるべき措置法66条の7第1項による外国税額控除が認められず,控訴人は,本来,タックス・ヘイブン対策税制が予定していない二重課税を負担するという不都合な結果を招来してしまう」と主張する。 しかし,本件外国税が外国法人税に該当しないことは既に説示したとおりであり,したがって,P1社が税を負担しているとの前提に立つ控訴人の上記主張はその前提を欠くものである。また,弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,本件各更正処分(合算課税)をするに当たっては,P1社の所得の金額の計算上,本件外国税の額については,現に一定の- 36 -経済的負担を負っていることを考慮し,これを損金の額に算入したところで課税対象留保金額を計算していることが認められる。したがって,本件において,実質的にみても不当な二重課税と評価すべき事態は生じていないというべきである。 次に,控訴人は,「例えば,P1社が国際課税資格を取得せず,その所得に対し20%の課税標準税率で課税された場合には,合算課税の適用がある一方,法人税法69条の外国税額控除の適用も認められるが,同社がその所得に対し26%の課税 1社が国際課税資格を取得せず,その所得に対し20%の課税標準税率で課税された場合には,合算課税の適用がある一方,法人税法69条の外国税額控除の適用も認められるが,同社がその所得に対し26%の課税を受けた場合には,合算課税の適用はあるが,同法69条の外国税額控除の適用は認められないという極めて不自然な結果となる」と主張する。 しかし,P1社は20%の「標準税率課税」を選択せず,0%を上回り30%以下の範囲で税率を選択できる「国際課税資格」の取得を選択して,26%の税率を選択し,本件外国税を負担したものであるところ,本件外国税が外国法人税に該当しないことは,既に説示したとおりである。控訴人主張のとおり,P1社が20%の標準税率課税を選択した場合,外国税額控除の可否について控訴人主張のような相違が生じるか否かは,その標準税率による税が外国法人税に該当するか否かにかかわるのであり,仮に外国法人税に該当すると解されれば,控訴人主張のとおりの相違が生じるが,そうでなければ相違は生じないというだけのことであり,いずれにしても控訴人主張のような不自然な結果が生じることはないというべきである。 (カ)なお,控訴人は,平成12年にガーンジー島がOECDにより有害税制を有する国・地域に指定されたにもかかわらず,その直後の平成13年の税制改正において,本件外国税に該当する税が法人税法施行令141条3項各号にあえて明記されなかったのであり,これは立法担当者が本件外国税を外国法人税に該当すると考えていたことの証左であると- 37 -し,また,実際に明文をもって外国法人税に該当しない旨を明確にしなかった以上,本件外国税が外国法人税に該当しないとすることは,納税者の予測可能性を著しく損ない,租税法律主義に反する旨主張する。 しかし,外国法人税に該当しない例を 国法人税に該当しない旨を明確にしなかった以上,本件外国税が外国法人税に該当しないとすることは,納税者の予測可能性を著しく損ない,租税法律主義に反する旨主張する。 しかし,外国法人税に該当しない例を網羅的に把握してこれを明文化することは困難であり,特にタックス・ヘイブンにおいては税制度が不透明であり,国際的な情報交換のルートが確立されていないこともあり,一層困難であると考えられる(甲14,乙29,30参照)。そこで,平成13年の税制改正においては,当時において的確に把握し得た範囲と租税の一般概念にかんがみて,外国法人税に該当しない例を法人税法施行令141条3項で明文化したにすぎないと解されるのであって,本件外国税のような例が外国法人税に該当しない旨が明文化されていないからといって,当時の立法担当者が本件外国税を外国法人税に該当すると考えていたものと断ずることはできない。 そして,本件外国税が外国法人税に該当するか否かは,外国税額控除制度,タックス・ヘイブン対策税制の趣旨目的を踏まえ,法人税法施行令141条1項等の規定に照らして合理的に解釈するほかないのであって,その解釈の結果,本件外国税が外国法人税に該当しないと判断される以上,これをもって,納税者の予測可能性を損ない,租税法律主義に反するということはできない。 争点(4)(本件各更正処分等の理由付記は適法か否か)について当裁判所も,本件各更正処分等は,帳簿書類の記載自体の信憑性を否認しているわけではなく,平成12年3月期,平成13年3月期及び平成15年3月期における各確定申告において,P1社が措置法66条の6第1項の特定外国子会社等に該当するかどうかという点についての法的評価を修正し,同社にかかる課税対象留保金額に相当する金額を益金に算入するという法的判断に至った理由を示してお 1社が措置法66条の6第1項の特定外国子会社等に該当するかどうかという点についての法的評価を修正し,同社にかかる課税対象留保金額に相当する金額を益金に算入するという法的判断に至った理由を示しており,理由付記制度の趣旨目的を充足する程度の理由付記がさ- 38 -れているものというべきで,理由付記の違法をいう控訴人の主張には理由がないと判断する。 その理由は,原判決「事実及び理由」欄の第3の4(原判決66頁初行目から67頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第4 結論 以上によれば,本件訴えのうち,本件通知処分の取消しを求める部分は,取消しを求める利益又は必要がなく,不適法であるからこれを却下すべく,控訴人のその余の請求はいずれも理由がないから棄却することが相当である。よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部裁判長裁判官青柳馨裁判官豊田建夫裁判官長久保守夫

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