昭和53(行ウ)4 違法処分行為による損害賠償代位請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和57年3月31日 奈良地方裁判所 住民訴訟
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【DRY-RUN】○ 主文 一 第一事件原告Aの訴えを却下する。 二 第一事件原告らの請求をいずれも棄却する。 三 第二事件原告らの請求をいずれも棄却する。 四 訴訟費用のうち、第一事件について生じた部分は第一事件原告

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○ 主文一第一事件原告Aの訴えを却下する。 二第一事件原告らの請求をいずれも棄却する。 三第二事件原告らの請求をいずれも棄却する。 四訴訟費用のうち、第一事件について生じた部分は第一事件原告らの、第二事件について生じた部分は第二事件原告らの各負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨(第一事件について) 1 東吉野村に対し、(一) 被告B及び同Cは各自金一、五九四万三、二〇〇円とこれに対する昭和五二年一二月二二日から支払ずみまで年五分の割合による金員(二) その余の被告はそれぞれ別紙(一)の各被告に対応する本訴請求額欄記載の金員とこれに対する同年同月同日から支払ずみまで年五分の割合による金員を各支払え。 2 訴訟費用は右被告らの負担とする。 3 仮執行宣言(第二事件について) 1 東吉野村に対し、(一) 被告B及び同Cは各自金一、九八五万八、三八八円とこれに対する昭和五四年一月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員(二) その余の被告はそれぞれ別紙(二)の各被告に対応する本訴請求額欄記載の金員とこれに対する同年同月同日から支払ずみまで年五分の割合による金員を各支払え。 2 訴訟費用は右被告らの負担とする。 3 仮執行宣言二請求の趣旨に対する答弁(両事件について共通)(本案前の答弁) 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 (本案の答弁) 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 第二当事者の主張一請求の原因 1 原告らは、いずれも東吉野村の住民であり、被告Bは同村村長として後記専決処分を行なつたもの、被告Cは同村収入役として右専決処分に基づき後記第一次及び第二次の公金支出を行なつたもの、その余の被告は右各公金支出当時別紙(一)、(二)の各被告に対応 は同村村長として後記専決処分を行なつたもの、被告Cは同村収入役として右専決処分に基づき後記第一次及び第二次の公金支出を行なつたもの、その余の被告は右各公金支出当時別紙(一)、(二)の各被告に対応する役職欄記載の役職を有していた同村特別職職員であり、いずれも給与、報酬の名目で別紙(一)、(二)の対応本訴請求額欄記載の金員を受領したものである。 2 被告Bは、昭和五二年一二月二二日、同年四月に遡つて同村特別職職員の給与・報酬を引き上げる旨の専決処分(以下「本件専決処分」という。)を行つた。 3 被告Cは、同日、本件専決処分に基づき、別紙(一)記載の第一事件各被告及び訴外Dに対し、同年四月分から一二月分までの給与・報酬差額としてそれぞれ別紙(一)の本訴請求額欄記載の金員を支払つた(右合計額は一、五九四万三、二〇〇円、以下「第一次公金支出」という。)。 4 前記被告Cは、その後も昭和五三年一月から同年一二月まで別紙(二)記載の第二事件被告及び前記訴外人に対し、それぞれ別紙(二)本訴請求額欄記載のとおり本件専決処分による改定後の給与・報酬を支払つた(右引上げ分の差額合計額は一、九八五万八、三三八円、以下「第二次公金支出」という)。 5 第一事件原告らは昭和五三年五月一八日第一次公金支出につき、また第二事件原告らは昭和五四年一月一九日第二次公金支出につき、いずれも同村監査委員に対し、後記違法を摘示して各監査請求を行なつたが、同監査委員は原告らに対しそれぞれ昭和五三年七月一三日付及び昭和五四年三月一九日付をもつて各公金支出には違法・不当はない旨の監査結果を通知した。 6 しかしながら、本件第一次及び第二次各公金支出には以下のとおり法令(条例)及び予算の根拠を欠く違法がある。 (一) 東吉野村の特別職職員の給与、報酬は、「特別職の職員で非常勤のものの報酬 した。 6 しかしながら、本件第一次及び第二次各公金支出には以下のとおり法令(条例)及び予算の根拠を欠く違法がある。 (一) 東吉野村の特別職職員の給与、報酬は、「特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例」、「特別職の職員で常勤のものの給与及び旅費に関する条例」及び「教育長の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例」に基づいて支給されている。従つて特別職職員の給与・報酬の改定には第一に右各条例の改正が必要であり、第二に改定額の支給に際してはこれを予算に計上して議会の議決を経なければならない。 (二) しかるところ、本件各公金支出については第一次公金支出が行なわれた昭和五二年一二月二二日まで村議会が開催されていたのに(会期の初日は同年同月一二日である。)前記各条例の改正案は何ら提出されず、単に給与等引き上げ分の総額を計上した補正予算案が議会に提出されただけであつた。 (三) さらに右補正予算案は議会では全く審議されず、議決されたかどうかも不明であり、仮に議決されたとしても引き上げ分給与等として右予算に計上された額は実際に支給された額を下回るものであつたから、少くとも右計上額を超えて支給された部分は全く予算の議決を欠く違法なものである。 (四) こうして議会最終日の同月同日、被告Bは前記各条例の改正を内容とする本件専決処分を行ない、これに基づいて同日第一次公金支出がなされた。しかしながら、専決処分を行なうについては地方自治法一七九条に四つの前提要件が定められているが、本件については右いずれの前提要件をも備えていない違法がある。すなわち、当時村議会が開催されていたものであるから、前記各条例の改正案の提出は何時でも可能であり、また事柄の性質上右手続によるべきところ、本件専決処分は議会開催中議会の議決事項である条例改正を専決処分の ち、当時村議会が開催されていたものであるから、前記各条例の改正案の提出は何時でも可能であり、また事柄の性質上右手続によるべきところ、本件専決処分は議会開催中議会の議決事項である条例改正を専決処分の形式で行なつた重大かつ明白な違法がある。 また専決処分の内容についても、自治省から既に本件専決処分以前に給与の引上げ等はこれになじまない旨通達がなされ、被告Bの十分了知しているところであつたほか、本件は第一次公金支出についていえば差額分給与等の支給(後払い)を内容とするものであり、事柄の性質上緊急性を全く有しないものであるから仮に前記会期中に議決に至り得ないとしても次の会期に正式に条例改正を提案すれば事足りる筈である。 以上のとおり本件専決処分は被告Bが権限を行使しうる要件がないのに裁量の範囲を逸脱してこれを行なつたものであり、内容的にも本来許された専決事項を超えるものであつて違法・無効であり、結局条例改正は行なわれなかつたことに帰するから、本件各公金支出は条例の根拠を欠く違法があるというべきである。 7 従つて被告B及び同Cは本来支出すべきでない第一次、第二次の公金支出を行なつたものとして東吉野村に対し右支出額の全額相当の損害賠償義務を負つており、その余の第一、第二事件各被告は法律上の原因なくして引上げ分給与等を受領したものとして、同村に対し右受領額相当の不当利得返還債務を負つている。 よつて原告らは地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、東吉野村に代位して被告B、同Cに対しては第一次、第二次公金支出の合計額相当の損害金とこれに対する支出の日(ただし第二次公金支出については最終の支出日ののちである昭和五四年一月一日)から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、その余の被告に対しては各自の利得した金員とこれに対する利得の日 第二次公金支出については最終の支出日ののちである昭和五四年一月一日)から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、その余の被告に対しては各自の利得した金員とこれに対する利得の日(ただし第二次公金支出にかかるものについては前同昭和五四年一月一日)から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。 二請求原因に対する認否(被告ら共通) 1 請求原因1の事実は認める(ただし、第一次、第二次公金支出の金額は後記3のとおりであり、原告Aが住民でないことは後記のとおりである)。 2 同2のうち被告Bが本件専決処分を行なつた事実は認めるが、右専決処分のなされた月日は否認する。本件専決処分のなされた日は一二月二三日である。なお、本件専決処分の具体的内容は、別紙専決処分目録記載のとおりである。 3 同3の事実のうち被告Cが第一次公金支出を行なつた事実は認める。ただし別紙(一)のうち常勤特別職の手当の差額は正確には以下のとおりであり、本訴請求額もこれに伴つて以下の金額となるほか、第一次公金支出の合計額も一、五九六万九、七〇〇円となる。 (役職) (手当の差額) (本訴請求額欄)村長二七万円八一万円助役二七万円八一万円収入役二二万五、〇〇〇円六七万五、〇〇〇円教育長二二万九、五〇〇円六七万九、五〇〇円また、第一次公金支出につき現実の支給のなされた日は被告B、同C、同E、同Fの四名については一二月二六日である(その余の被告に対する支給が一二月二二日になされた事実は認める)。 4 同4の事実のうち被告Cが第二次公金支出を行なつた事実は認める。ただし各被告に対する支給状況、本訴請求額、引上げ分差額合計は別紙(三)第一、第二表の各一、二の記載が正確なもの た事実は認める)。 4 同4の事実のうち被告Cが第二次公金支出を行なつた事実は認める。ただし各被告に対する支給状況、本訴請求額、引上げ分差額合計は別紙(三)第一、第二表の各一、二の記載が正確なものである。 5 同5の事実は認める。 6 同6のうち冒頭の事実は否認する。(一)の事実と主張は認める。(二)の事実のうち村議会会期が原告ら主張どおりであること、補正予算案が提出されたことは認める。(三)の事実は否認する。(四)のうち主張はすべて争う。末尾の主張も争う。 7 同7の主張もすべて争う。 三被告らの主張(本案前の主張) 1 原告Aは東吉野村の住民ではなく、同人は本件訴えにつき原告適格を有しない。 2 原告らの訴えは、第一、第二事件のいずれについても被告B及びCに対する損害賠償代位請求とその余の被告に対する不当利得返還代位請求を同時に提起しているものであるが、地方自治法二四二条の二第一項四号によれば、住民は、村長及び収入役に対する損害賠償請求が受領した特別職に対する不当利得返還請求かのいずれか一方の訴えを選択して行なうべきものとされており、右双方を同時に提起することは明文に反し許されない。よつて本件訴え(第一、第二事件とも)のうち損害賠償代位請求又は不当利得返還代位請求の一方は不適法であり、却下を免れない。 (本案の主張) 1 本件各公金支出は、以下のとおり、法令及び予算の双方に根拠を有する適法なものであり、原告ら主張の違法は何ら存在しない。 (一) 予算の議決について特別職の報酬、給与の引上げに関する予算の追加変更を一内容とする「昭和五二年度東吉野村一般会計補正予算案」は、昭和五二年一二月一二日開会の定例村議会に日程第七議題第三八号議案として提出され、同日の本会議において村長から提案理由の説明がなされたうえ同日総務委員会に付託され、同月 吉野村一般会計補正予算案」は、昭和五二年一二月一二日開会の定例村議会に日程第七議題第三八号議案として提出され、同日の本会議において村長から提案理由の説明がなされたうえ同日総務委員会に付託され、同月二一日同委員会の審議を経て翌二二日の本会議において満場一致で議決された。このうち常勤及び非常勤の特別職に関係する部分を抽出すると別紙(四)記載のとおりであり、右議決予算額合計は二、〇四一万円である。 次に右予算と支出額の関係を示せば別紙(五)記載のとおりであり、一二月支給合計額は一、五九六万九、七〇〇円でなお前記予算に比して四四四万〇、三〇〇円の残額がある(なお右残額は昭和五三年一月ないし三月の支給に充当されるものである)。 以上のとおり第一次公金支出及び第二次公金支出(昭和五三年四月以降分については前年度分と同額が議決されている。)については適法に予算の議決がなされ、現実の支給も右予算計上額どおりに行なわれており、原告ら主張の違法は何ら存在しない。 (二) 本件専決処分の適法性本件専決処分による条例改正は、以下のとおり適法である。 (1) 村長は、一二月一二日村会に対する提案理由の説明の中で、補正予算案につき説明を行なつたのち、条例の改正については県の準則が会期中に間にあえば追加提案を、会期終了後になれば専決処分による条例改正を図りたい旨明らかにして議会の了承を得た。 (2) 同月二一日の総務委員会においては正式に付託された補正予算案の内容と併せ、その基礎となる条例改正の内容についても説明がなされ、同委員会協議会は条例改正案の引上げ額についても了承したほか理事者側からの右条例改正を専決処分としたい旨の提案についてもこれを了承した。 (3) さらに翌二二日の本会議においては補正予算を満場一致で可決するとともに事実上、条例改正の内容についても助役 たほか理事者側からの右条例改正を専決処分としたい旨の提案についてもこれを了承した。 (3) さらに翌二二日の本会議においては補正予算を満場一致で可決するとともに事実上、条例改正の内容についても助役からの説明を受け、右改正案どおりの内容により、村長が条例改正の専決処分を行うことを承認した。 (4) ところで、地方公共団体の吏員の給与は、地方自治法施行規程五五条二項により国の官吏の給与にならうべきものとされており、その理は特別職職員の給与・報酬についても類推されるべきである。 本件に関係する国の給与引上げ法案は、一二月二一日に可決され、奈良県総務部長からその旨の通知を受けたのは同月二三日であつたため、年末をひかえて再び村会を招集することはできず、一般職の給与の引上げを急ぐ事情のもとに村長は同日地方自治法一七九条一項の規定に基き「議会を召集する暇がない」と認め、右一般職の給与引上を内容とする条例改正を専決処分で行ない、合わせて慣行上一般職の給与引上げと同時になされる特別職の給与・報酬の引上げを内容とする条例改正についても本件専決処分で行なつたものである。 以上のとおり、議会及び委員会における事実上の審議が存在したこと、国の給与法案の可決、県総務部長からの準則の通知の各年月日、本件専決処分とともに行なわれた一般職の給与引き上げの専決処分の必要性・従来の特別職給与改正の慣行等に照らし、本件専決処分は法律に依拠したものであつて適法である。 (5) 仮にそうでないとしても、前記のとおり、議会は本件専決処分について予め了承を与え、実質的審議を行なつたうえ内容を限定して本件専決処分を委任したものということができるから、同法一八〇条の法意に基づき、本件専決処分は適法である。 (6) 仮にそうでないとしても、村議会は昭和五三年二月一五日開会の第一回村議会定例会 して本件専決処分を委任したものということができるから、同法一八〇条の法意に基づき、本件専決処分は適法である。 (6) 仮にそうでないとしても、村議会は昭和五三年二月一五日開会の第一回村議会定例会において本件専決処分を承認し、これを追認したからその効果は専決処分時に遡り、結局本件専決処分は適法である。 (7) なお、差額支給が現実に行なわれたのは、被告Bほか三名を除き一二月二二日であるが、これは議会終了日に支給事務を完了することが年末業務上適切なものと判断されたため、事務的裁量のもとに行なつたまでのことであり、これをもつて違法視することはできない。 2 故意・重過失の不存在仮に本件公金支出が結果的に違法とされることがあつたとしても、右支出当時被告B、同Cにおいて法令違反につき故意・重過失は存しなかつたから、同被告らは、東吉野村に対し、損害賠償義務を負うものではない。 (一) 被告B、同Cに対する本件訴えは、東吉野村に代位して行う損害賠償請求であるから、これが認められるためには、被告らの行為が客観的に法令に違反(違法)しているほか、右法令違反行為が故意又は重過失によつて行なわれたという主観的要件をも備えていることが必要である(地方自治法二四三条の二第一項)。 (二) ところで、同法同条同項にいわゆる「職員の違法行為」の意義については、「主観的には当該職員の違法に限られ、客観的には、法令又は条例が有効であることを前提として当該職員の行為が法令又は条例に違反している場合のみを指し、条例が法令に違反して無効であるため、その条例に基づく当該職員の行為が違法に帰する場合は含まれない」、とするのが先例であり、換言すれば処分又は法規に一見極めて明白かつ重大な瑕疵がある場合は別として、単に取消しうべき瑕疵が存するに止まる場合は、右取消に至るまで、職員は右処 に帰する場合は含まれない」、とするのが先例であり、換言すれば処分又は法規に一見極めて明白かつ重大な瑕疵がある場合は別として、単に取消しうべき瑕疵が存するに止まる場合は、右取消に至るまで、職員は右処分の公定力・法規の拘束力を前提として当該執行を義務付けられるものであり、このような場合には、当該執行は客観的にも違法であるということはできずまた当該職員に故意・重過失があるということもできない。 (三) 法一七九条一項によれば、専決処分は「長において議会を招集する暇がないと認めるとき」にこれを行うことができ、右を行うか否かを長の裁量に委ねている。従つて右判断に裁量権の踰越があつたにすぎないときは単に取消事由となるに止まり、無効を招来するものではないと解される。また右判断は、その当時における客観的情勢その他諸般の事情から決せられるべきであり、前記本件専決処分に至る経緯に照らし、裁量権の踰越があつたものということはできない。本件は条例改正をいかなる法形式で行うかの立法技術上のミスにすぎないものであり、かかるミスをとらえて本件公金支出全般を違法視することは本来法律の専門家であることを予定されていない長その他の職員に過酷を強いるものであろう。 以上のとおり本件公金支出には法二四三条の二第一項の「違法」はなく、当該被告に故意又は重過失もない(なお被告B、同Cにつき右のとおりである以上、その余の被告らに不当利得の要件が認められないことはむしろ当然である)。 四右に対する原告らの認否と反論(本案前の主張について) 1 当該職員に対する損害賠償請求と相手方に対する不当利得返還請求とは別個の根拠に基づくものであり、右双方の訴えを同時に提起することは何ら不適法ではない。仮に被告ら主張のとおりとすればいずれかの訴えで勝訴判決を得てもその者に財産がない場合、地方公共 利得返還請求とは別個の根拠に基づくものであり、右双方の訴えを同時に提起することは何ら不適法ではない。仮に被告ら主張のとおりとすればいずれかの訴えで勝訴判決を得てもその者に財産がない場合、地方公共団体の適正な財産維持をはかりえない不都合を生じ、住民訴訟を認めた法の趣旨に反することになろう。 (本案の主張について) 1 被告らの本案の主張1はすべて争う。特に同(二)の主張は強く争う。本件専決処分は法一七九条一項によるものであつて同一八〇条によるそれではない。 また国の給与法案が一二月二一日に可決された事実は原告らの有利に援用する。そうであるなら、なおさら議会会期中に条例改正の追加提案を行なうべきであつたことになり、本件専決処分の違法性は明白である。なお、一二月二二日に差額支給が行なわれていることは、専決処分の日が同日であることの有力な証拠であり、被告らが処分日を同月二三日であると主張するのは違法・無効と認定されることを回避するための言逃れに過ぎない。また本件専決処分は無効であるから、議会の承認による追認の余地はない。 2 同2の主張もすべて争う。本件専決処分の違法は明白であり、村長・助役において根拠法条を知らず又その解釈を誤つたとすれば右各職責にある者として故意又は重過失があつたということに他ならない。 第三証拠(省略)○ 理由一原告らが同Aを除きいずれも東吉野村の住民であること、被告Bは本件各公金支出当時同村村長の地位を有し、昭和五二年一二月二二日又は二三日(処分の日が右いずれの日であるかについては後記検討のとおりである。)、本件専決処分(その具体的内容が別紙専決処分目録記載のとおりであるとの被告らの主張については、原告らは明らかにこれを争わないから右主張どおりであると認める。)をなしたものであること、被告Cは右各公金支出当時同村収 の具体的内容が別紙専決処分目録記載のとおりであるとの被告らの主張については、原告らは明らかにこれを争わないから右主張どおりであると認める。)をなしたものであること、被告Cは右各公金支出当時同村収入役の地位にあつて右専決処分又は被告Bからの支出命令に基づき本件各公金支出をなしたこと、その余の被告らは、第一次公金支出当時は別紙(一)の、第二次公金支出当時は別紙(二)の各被告対応役職欄記載の役職を有していた同村特別職々員であり、給与又は報酬として右各公金を受領したものであること、第一事件原告らは昭和五三年五月一八日第一次公金支出につき、第二事件原告らは昭和五四年一月一九日第二次公金支出につき、いずれも同村監査委員に対し監査請求を行なつたが、同委員は各公金支出につきいずれも違法、不当はない旨の監査結果を各第一、第二事件原告らに通知したこと、以上の各事実については当事者間に争いがない。 二本案前の主張について 1 原告適格について被告らは、原告Aは東吉野村の住民ではなく、本件訴えにつき原告適格はない旨主張するのでこの点につき判断する。地方自治法(以下「法」という。)一〇条一項によれば、住民とは市町村の区域内に住所を有する者であるが、当該区域内に住所を有するか否かの確定については特に規定するところがない。しかしながら住民の居住関係の確定、証明一般については住民基本台帳法がこれを定めており、同法による住民票の記載は住民の届出に基づいて市町村長がこれを作成するものであつて高度の公証的機能を有し、選挙人名簿の登録を始めとして住民に関する各種行政事務はこれを基礎として行なわれていることに照すと、法二四二条の二第一項の住民とは原則として当該市町村の備える住民基本台帳に記録されたものすなわち当該市町村に住民票を有する者を指すものと解するのが相当である。そ 基礎として行なわれていることに照すと、法二四二条の二第一項の住民とは原則として当該市町村の備える住民基本台帳に記録されたものすなわち当該市町村に住民票を有する者を指すものと解するのが相当である。そうして右住民たる資格は、住民訴訟を適法ならしめるための基本的訴訟要件であり原告の立証事項に属するものと解されるところ、原告Aについては全記録によつても東吉野村に住民票を有することを認めるに足る証拠はない。そうすると同人は弁論終結時において法二四二条の二第一項にいう住民であるということはできず、同人の第一事件請求は不適法であつて却下を免れない。 2 当該職員に対する損害賠償代位請求と相手方に対する不当利得返還代位請求の関係について被告らは、当該職員に対する損害賠償代位請求と相手方に対する不当利得返還代位請求を同時に提起することは明文に反し許されない旨主張するのでこの点につき判断する。 法二四二条の二第一項四号のいわゆる住民代位訴訟は、当該地方公共団体の職員が違法に公金又は財産を管理・処分し又はこれを行おうとするときに、住民が住民たる資格に基づいて直接右を防止し又はその結果の回復を求め、違法の是正を通じて当該地方公共団体の財政の維持、保全をはかることを目的として法が認めた特殊の訴訟であり(行政事件訴訟法四二条)、法律上の争訟解決を目的とする通常の民事訴訟、行政訴訟とは異なるものとされている。そうして同条同項の法文によれば、住民は前記の目的達成にとつて最もふさわしい請求すなわち被告を当該職員とするか相手方とするか及び地方公共団体の有するいかなる請求権を代位行使するかを選択・特定しなければならず、同項四号に掲げられた各種請求(大別すれば被告を誰にするかで二つとなり、代位する請求権をも考慮に容れれば七つの類型が掲げられている。)のうち二つ以上を同時に 行使するかを選択・特定しなければならず、同項四号に掲げられた各種請求(大別すれば被告を誰にするかで二つとなり、代位する請求権をも考慮に容れれば七つの類型が掲げられている。)のうち二つ以上を同時に請求することは許されないように解されないではない。しかしながら、右住民訴訟の審理の対象は、当該行為又は怠る事実の違法性の有無に止まるものではなく、右違法性を前提として当該地方公共団体がいかなる請求権を誰に対して有するかの確定にまで及ばざるを得ないから、少くとも被告を当該職員とする場合と相手方とする場合とでは明らかに別個の請求と観念せざるを得ないこと、従つて仮りに甲住民と乙住民がそれぞれ異なる被告に対し別個の住民訴訟を提起した場合、これらを法二四二条の二第四項の「同一の請求」に該るものとしていずれか一方(のちに提起された訴訟)の訴えを不適法として却下することはできないものと解せられ、この理は原告が当該職員に対する訴えと相手方に対する訴えとを同時に併合提起した場合も同様であると解される。仮りに被告ら主張のとおり本件訴えのうちいずれか一方が不適法であるとすれば、原告が双方の請求をあくまで維持した場合、裁判所としてはいずれの訴えを適法とみて実体的審理を進めるかの選択基準を有していないし、また審理の結果、当該職員に対する請求と相手方に対する請求とで判断が常に同一になるのならともかく、右判断が区々になる可能性も否定することはできない(例えば職員に対する損害賠償代位請求が認容されるためには、代位の構造上、法二四三条の二第一項後段の請求の場合、故意又は重過失が要件となるものと解せられるが、違法とされる行為時に職員及び相手方に(軽)過失しか認められないとされたとき職員に対する請求は棄却され、他方相手方に対する請求は認容される余地が存する。)のであつて右可能性が なるものと解せられるが、違法とされる行為時に職員及び相手方に(軽)過失しか認められないとされたとき職員に対する請求は棄却され、他方相手方に対する請求は認容される余地が存する。)のであつて右可能性がある限り合一確定の要請も二つの訴えの間に及ぶものではない。 以上のとおり、法規維持を目的とする客観訴訟としての機能を十分に果たさせる見地からも本件二つの訴えを適法視しうる実質的根拠が存在し、結局法二四二条の二第一項四号の規定は、住民訴訟の各種形態を示したに止まり、このうち二つ以上(とくに被告を職員、相手方の双方とする場合に実益が大きいものと考えられるが、被代位請求権相互間にも選択的にこれを主張する実益がないではない。)の訴えを提起することまでをも禁じた趣旨と解することはできない。 よつて本件訴えはいずれも適法であつて被告の本案前の主張2は採用することができない。 (なお、右両訴がいずれも適法であるとしても、当該地方公共団体が職員及び相手方の双方から重複して給付をうけることを是認されるものではないから、右両訴がともに認容されるとした場合、この点をいかに調整すべきかの問題は残る。さしあたつて考えられる方法は、いわゆる選択的併合として処理するか、不真性連帯請求類似のものとして処理するか又は執行段階で処理するかのいずれかとなろう。)三本件各公金支出の違法性の存否についてそこで以下、本件各公金支出に違法性が存したか否かの実体につき判断を加える。 1 いずれも成立に争いのない甲第一、第二、第一一、第一二号証、乙第一ないし第四号証、同第六ないし第八号証、同第九号証の一ないし五(日付の信憑性については後記検討のとおり。)、証人Dの証言、被告E、同C各本人尋問の結果と弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実を認めることができる。 (1) 昭和五二年一二月、国会におい 一ないし五(日付の信憑性については後記検討のとおり。)、証人Dの証言、被告E、同C各本人尋問の結果と弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実を認めることができる。 (1) 昭和五二年一二月、国会において国家公務員の給与の一部を改正する法律案が係属・審議されており、地方自治法施行規程五五条に基づき、国の官吏の給与にならうべきものとされている普通地方公共団体の一般職職員の給与の改定が奈良県及び県下各市町村においても要急の問題とされていた。 (2) このため同月九日付で奈良県総務部長から各市町村長に対し、奈良県の「一般職の職員の給与に関する条例(準則)の一部を改正する条例(準則)」が送付され、各市町村においても条例改正にあたつてこれを参考とすべきこと、給与の改定が国に先行することのないよう留意すべきこと、従つて条例改正は一二月議会に提案することができるがその施行期日は、国会で給与の一部を改正する法律案が可決成立した日以後の日とすべきことが各指摘されていた。 (3) 東吉野村においても国会での法案可決をまつて一般職職員の給与を改定すべきものとされ、被告Bは「一般職の職員の給与に関する条例の一部を改正する条例(案)」を作成するとともに「昭和五二年度東吉野村一般会計補正予算(案)」を調整し、右給与改定に必要な財政措置をこれに計上したほか、従前からの同村の慣行により、右一般職の給与改定に合わせて特別職職員の給与・報酬をも改定すべきものとし、村議会総務委員協議会の答申に基づいてそのための条例改正案を作成し、かつ右に必要な予算を前記補正予算(案)中に計上した。 (4) 昭和五二年第六回東吉野村議会定例会議は同月一二日から二二日まで開催されたが、前記予算については、日程第七議案三八号として会議に上程されたが、条例改正案については当初から提案されず、被告Bは同日の 昭和五二年第六回東吉野村議会定例会議は同月一二日から二二日まで開催されたが、前記予算については、日程第七議案三八号として会議に上程されたが、条例改正案については当初から提案されず、被告Bは同日の本会議の席上、「今回の補正予算の主体とされます第一点は、本年度の人事院勧告に基づく一般職職員の給与改訂、これに合わせての常勤・非常勤特別職の給与或いは報酬等の改正に要する人件費の予算補正を致したものであります。これにつきましては条例の改正も必要とされますが、今国会の通過をまつて県の準則が流れ次第会期中に間に会えば追加提案を、会期終了後になれば専決処分をもつて条例改正をはかりたいのでこの点よろしくお願いします。」と述べ、条例改正案を提案しなかつた理由を説明した。 (5) 同日、補正予算(案)は所管の総務委員会に付託され、同月二一日の同委員会において審議された。右予算書歳出の部のうち、特別職々員の給与・報酬と関係を有する部分を抽出すると別紙(四)のとおりである。右委員会においては、予算書の説明後、一議員から予算を審議するにあたつては、支出の根拠となる条例改正案を(事実上でも)示してもらわないと審議ができない旨指摘されたが、同委員会は予算の審議を付託されているだけで正式に付託されていない条例改正案を審議することはできないことを理由に、条例改正については協議会に切替えて同所で審議することとされ、予算については原案通り全会一致で了承された。 (6) 同日の前記総務委員会協議会では条例改正案(五件)が示され、右改正を専決処分の形式で行ないたい旨理事者側から申入がなされ、国会において未だ給与法案の可決をみていなかつた状況から、右申入は了承された。 (7) 同日、国会で前記法律が可決成立し、このため同日付で奈良県総務部長から県内各市町村長に対し「育児休業に係る給 れ、国会において未だ給与法案の可決をみていなかつた状況から、右申入は了承された。 (7) 同日、国会で前記法律が可決成立し、このため同日付で奈良県総務部長から県内各市町村長に対し「育児休業に係る給与等に関する条例(準則)及び給与等の支給に関する規則(準則)等の一部改正について」と題する書面が送付され、先に送付された一般職の職員の給与に関する条例(準則)の一部を改正する条例(準則)に伴つて整備を必要とする各種規則の改正案も同時に送付され、参考に供すべきものとされた。 (8) 翌同月二二日の村議会最終日、本会議において各委員会に付託された案件につき報告がなされたのち、質問に入り、一議員から予算についての議決の前に条例改正の内容を知らせてほしい旨の要望がなされ、これに対して被告Bは前記(4)の会議開催時の説明を繰り返したのち、「御存知のように(国会の改正案は)一昨日(昨日の誤記と判断される。)通過して終つておりますので、今日追加提案をと思つておりましたけれど、総務委員会協議会で協議してもらつたところ、これは専決処分をもつて条例改正をさせてもらう、となつておりますので御了承願いたいと思います。」と述べ、その後条例改正案を追加提案すべきか否かにつき討議がなされた。右本会議の席上では、追加提案すべきであるという意見もみられたが、結局議長が一時休憩を宣言し、右休憩時間を利用して議会運営委員会が開催され、右条例改正についての議事進行方法が検討された。 (9) 右協議の中でも追加提案すべきであるとする声もあつたが、これによるとさらに委員会・本会議に日時を要するのに同月二四日、二五日が土曜・日曜日であり、二八日はいわゆる御用納めである関係上日程が組みにくいことから、改正案の内容を説明し、議員の事実上の了承を得て専決処分の形式で関係条例の改正を行うこととさ に同月二四日、二五日が土曜・日曜日であり、二八日はいわゆる御用納めである関係上日程が組みにくいことから、改正案の内容を説明し、議員の事実上の了承を得て専決処分の形式で関係条例の改正を行うこととされ、再開された本会議においても右方針が是認された。そして助役である被告Eから主として特別職職員の給与報酬の改定を内容とする条例改正案につき概略の説明がなされ、予算の計上額も条例改正案に基づいている旨の説明がなされたのち、議員の全員一致で補正予算の議決がなされ、村議会は終了した。 (10) ところで、右村議会の終了直前ころ、収入役の被告Cは、会期終了によつて特別職たる議員の報酬差額支給が遅れることをおそれ、被告Bの同意の下に同日中に前渡しすることとし、担当職員をして別紙(一)本訴請求額欄記載の金員を各議員の机上に配らしめ、全議員はこれを受領した。 (11) 翌同月二三日、被告Bは前記村議会の了承に基づき法一七九条一項の規定により別紙専決処分書記載のとおり本件専決処分をなし、同時になした「一般職の職員の給与に関する条例の一部を改正する条例」及び「一般職の職員の旅費の支給に関する条例の一部を改正する条例」とともに、右は同日公布された。そうして同月二六日には前記補正予算及び右改正条例に基づき、一般職職員に対する差額給与支給が行なわれ、合わせて常勤の特別職職員四名に対しても各々給与差額(村長、助役各八一万円、収入役六七万五、〇〇〇円、教育長六七万九、五〇〇円)が支給された。 (12) 本件専決処分については、昭和五三年二月一九日から開催された同村第一回定例会において日程第一三報第一号をもつて議会への報告がなされ同月二四日議会の承認がなされた。同会議においては、住民から、本件専決処分による条例改正は不当であり、特別職職員の給与・報酬の値上げ巾も過大であつて、 て日程第一三報第一号をもつて議会への報告がなされ同月二四日議会の承認がなされた。同会議においては、住民から、本件専決処分による条例改正は不当であり、特別職職員の給与・報酬の値上げ巾も過大であつて、再度議会において正規の条例改正を行うべきことを求める請願がなされていたが、結局、五二年一二月の議会において概略の条例改正案の説明がなされたこと、議会が専決処分によることを承認したことなどを理由に右請願は採択されなかつた。 (13) なお、昭和五四年六月六日、東吉野村定例村議会本会議において本件専決処分による改正条例が再度改正され、特別職職員の給与・報酬が若干引き下げられて今日に至つている。 以上の事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。 2 予算の議決を欠く違法があるとの主張について右事実によれば、本件第一次公金支出についての予算案は、正式に議会に提案され、本会議における村長の説明ののち総務委員会に付託され、同委員会において全会一致で原案どおり了承されたほか、一二月二二日の本会議においても満場一致で議決されたものであつて適法な議決がなされたことが認められる。また支出金額、が予算計上額をこえるとの原告らの主張もこれを認めるに足る証拠はなく、かえつて予算書歳出の部に計上された金額と一二月の給与改定による支出の関係は別紙(五)記載のとおりであつて予算計上額に対しなお四四四万〇、三〇〇円の残額が存することが認められる。 また第二次公金支出に関する予算についても前掲乙第六号証と弁論の全趣旨によれば、昭和五三年第一回東吉野村定例会議案中に日程第九議第八号として掲げられ、同会において適法に議決されたものと認めることができる。そうすると本件各公金支出について予算の議決がなされず、または予算計上額を超えて支出がなされたとする原告らの主張は理由がない。 して掲げられ、同会において適法に議決されたものと認めることができる。そうすると本件各公金支出について予算の議決がなされず、または予算計上額を超えて支出がなされたとする原告らの主張は理由がない。 3 専決処分による条例改正の無効の主張について次に原告らは、本件各公金支出が無効な専決処分に基づくものであり、結局適法な条例改正を欠いたまま支出がなされた違法があると主張するのでこの点につき判断する。 一般に、専決処分による条例改正は法的には議会の議決にかかる条例改正と同一であるから、仮に内容的に違法、不当があつても改正にかかる条例がさらに改廃されるまでは右改正条例は一応法規としての効力を有し、関係するすべての者がこれに拘束される反面、右が成立要件を欠くとか成立過程に明白・重大な瑕疵があるような場合には、何人も右無効を主張してその効力を否認することができ、これに基づく個々の行為につき客観的には無効な条例によるものとしてその違法を主張することができる。すなわち本件公金支出との関連でいえば、右支出(支出命令及び具体的支出行為)の違法を招来しうる事由は、本件専決処分が成立要件を欠き不存在であるか、もしくはこれに明白・重大な瑕疵が存し、無効である場合に限るものということができる。 そこで、原告ら主張の右無効事由の存否につき判断する。 (一) 専決(権行使の)要件の不存在の主張について原告らは、第一次公金支出(の一部)が昭和五二年一二月二二日になされたことを理由に、本件専決処分が議会開会中の同日になされたものであり、法一七九条一項の専決権行使の要件に該当しない明白・重大な瑕疵がある旨主張する。なるほど、本件専決処分は法一七九条一項のうち「議会の議決を求める暇がないと認めるとき」に該当するものとして行なわれていることは本件専決処分書(乙第九号各証)自体の 白・重大な瑕疵がある旨主張する。なるほど、本件専決処分は法一七九条一項のうち「議会の議決を求める暇がないと認めるとき」に該当するものとして行なわれていることは本件専決処分書(乙第九号各証)自体の記載から明らかであり仮に原告ら主張どおり処分日が同日であつたとすればこれは明らかな専決権行使の逸脱であり、右瑕疵は極めて重大であつて無効を来たしうる事由にあたるものということができる。そこで、本件専決処分の日が何日であつたかを検討するに、条例改正を内容とする専決処分は、長の署名が行なわれることによつて内部的に成立し、公布によつてはじめて外部的効力を取得するものと解されるところ、前掲乙第九号証の一ないし五の起案・決裁及び長の署名年月日はいずれも一二月二三日と記載され、前記昭和五三年二月二四日の専決処分報告の時点でも本件専決処分は昭和五二年一二月二三日に行なわれたものとして報告されていること、実質的にも、本件専決処分による特別職職員の給与・報酬に関する条例改正は、一般職職員の給与改定の条例と同一時期に一括して行なわれており、前掲乙第八号証によれば後者のうちには、県からの条例(準則)の送付をまつてこれを参考とすべきものも存したところ、右県からの送付にかかる条例(準則)は一二月二三日に初めて東吉野村に到達したこと、従つて一般職職員の給与に関する条例は少くとも同日以降に改正される理由が存在したこと、原告ら指摘の同月二二日の差額分の支給も近い将来確実に条例改正案どおり専決処分がなされることが予測され、後日支給する面倒を考慮して行なつたにすぎないと認められることなどの事実からすれば、専決処分書の日付は現にこれがなされた日を記載しているものであり、専決処分がなされたのは同月二三日であると認めることができる。そうすると、右時点においては既に会期は終了していたも の事実からすれば、専決処分書の日付は現にこれがなされた日を記載しているものであり、専決処分がなされたのは同月二三日であると認めることができる。そうすると、右時点においては既に会期は終了していたものであるから、その時点でなされた本件専決処分に原告ら主張の無効事由は存在しないものというべきである。(尤も、条例改正案が議会開会中にほぼ用意されていたこと前記認定のとおりであり、そうすると一二月二二日の段階で会期延長をするか、又は県の準則の到達を待たずに正式に追加提案を行ない、議会の議決を求めえたのではないかと思われるかもしれないが、被告Bも県の準則が流れ次第一応追加提案することも考慮していなかつたわけではなかつたが、結局そのような方法をとらなかつたのは県の準則の到達を待つため会期延長することを議員が賛成しなかつたことに起因するものであつて一人被告Bのみを非難することは妥当でない。そうして少くとも村長の立場にある者が村議会関係を考慮し、議会意思を尊重し、前記諸般の事情を斟酌して専決処分を行うか否かを決定することも全く許されないものと解することはできないから、本件につき「議会の議決を求める暇がない」と認めた同人の裁量に重大・明白な裁量権の濫用又は逸脱があつたものと評価することはできない。)(二) 専決事項逸脱の無効があるとの主張について原告らは、自らに関係する給与等の改定を内容とする条例改正は専決処分によつてなしうる事項に該当せず、これを行つた点で本件専決処分には重大・明白な瑕疵がある旨主張する。なるほど前掲甲第二号証によれば、自治省においては給与等の改定は専決処分になじまないとの見解を有し、この旨各市町村長等に対し通達がなされていた事実を認めることができる。しかしながら法一七九条の文言上、専決処分は本来議会が議決しなければ意味をなさないよう 改定は専決処分になじまないとの見解を有し、この旨各市町村長等に対し通達がなされていた事実を認めることができる。しかしながら法一七九条の文言上、専決処分は本来議会が議決しなければ意味をなさないような事項を除き、その議決事項のすべてに及びうるものであつてひとり給与改定を内容とする条例改正についてのみ専決事項外とは解されないこと、自治省通達の意図は、議会の条例改正議決を経ることなく、執行機関が専決によつてお手盛による給与改定を行うことを防止しようとする点にあるものと窺われるところ、本件については(原告らの評価はともかく)特別職の給与・報酬の値上げの概略が議会で事実上説明されているのに、右値上げ巾が過大であるとか、お手盛にあたるとかの指摘が議員から全くなされておらず、むしろこれを計上した予算を全会一致で議決していることなどの事実によれば、正式に追加提案による議決が行なわれたとしても右改正案の修正又は否決が行なわれたであろう蓋然性はほとんどないことなどの事実に照せば、本件専決処分は当不当はともかく法令に違反する違法なものと評価することはできない。 よつて、この点に関する原告らの主張も理由がない。 4 一二月二二日に差額支給を行なつたことの違法性について最後に一二月二二日の差額支給につき検討する。 前記認定事実によれば、本件専決処分は一二月二三日に行なわれたものであることが認められ、また議員らに対する差額支給は右専決処分の前日である一二月二二日に行われていることは当事者間に争いがない。そうすると、本件第一次公金支出のうち被告B、同E、同C及びFを除くその余の第一事件被告らに対する差額支給は、単に予算の議決がなされ、条例改正がなされていない段階で支出されたものと認められ、右支出は法二〇四条の二、同二三二条の四第二項の規定にそれぞれ違反する違法な支出 の第一事件被告らに対する差額支給は、単に予算の議決がなされ、条例改正がなされていない段階で支出されたものと認められ、右支出は法二〇四条の二、同二三二条の四第二項の規定にそれぞれ違反する違法な支出であるといわざるを得ない。そうして右支出は被告Cが被告Bの了解のもとに行なつたものであるから、同被告の違法な支出命令に基づくものと認めることができる。 同被告らは、右支出は被告Cのいわゆる事務的裁量の範囲に止まる旨主張するが、給与等条例主義を定めた前記各規定の趣旨にてらすと、いかなる事情があつたにせよ、条例改正がなされない段階で支出命令・支出行為を行うことは是認されるものではなく、同被告らは、村長及び収入役として自らの行為が前記法規に反する違法なものであることを十分認識し、又はその職責上重大な過失によりこれを認識しなかつたものというべきである。よつて同人らは故意又は重大な過失により違法な右公金支出を行なつたものと認められる。 しかしながら、本件専決処分の成立によつて右以降前記違法は治癒され、残る違法はそれまでの一日間のみとなる。そこで更に右一日間の村の損害の有無につき検討する。前掲乙第九号証の一ないし三によれば、特別職職員の給与又は報酬の引上に関する改正条例は、いずれもその附則中に右引上に関する規定につき「公布の日から施行し、昭和五二年四月一日から適用する」旨を定めていることが認められる。 右附則によれば、条例の公布によつて条例の発効と同時に引上分報酬等の規定の適用は昭和五二年四月一日に遡ることとなり、これによつて報酬等受給資格者は当然に同日に遡つて値上げにかかる報酬等の受給権を取得するものと解される。そうすると東吉野村村議員たる被告らは既に昭和五二年一二月二二日の時点で受給権を取得していたものというべきであり、村は本来支払うべき報酬を支払つたに げにかかる報酬等の受給権を取得するものと解される。そうすると東吉野村村議員たる被告らは既に昭和五二年一二月二二日の時点で受給権を取得していたものというべきであり、村は本来支払うべき報酬を支払つたに過ぎないものと認められる。 そうすると村には本件公金支出につき具体的な損害はなかつたものというべきである。 よつて本件第一次公金支出は専決処分成立までの一日間につき違法ではあるがこれによつて村に対し損害を与えていないこととなる。 四結語以上のとおりであつて、第一事件原告らの請求及び第二事件原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を各適用して主文のとおり判決する。 (裁判官仲江利政広岡保三代川俊一郎)別紙(一)~(五)(省略)

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