平成27年1月28日判決言渡平成26年(行ケ)第10114号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成26年12月16日判決 原告株式会社ニコン 訴訟代理人弁護士大野聖二同小林英了訴訟代理人弁理士鈴木 守同加藤真司同大谷 寛 被告特許庁長官 指定代理人伊藤昌哉同井上茂夫同内山 進主文 1 特許庁が不服2013-21075号事件について平成26年3月25日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文と同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(証拠等を摘示しない事実は,当事者間に争いがない。)原告は,平成18年5月8日に国際出願した特願2007-528269号(特許法41条に基づく優先権主張日平成17年5月12日)について,平成23年7月4日,その一部を分割する分割出願(特願2011-148301号。以下「本願」という。平成25年6月14日付け手続補正後の本願の発明の名称は「投影光学系,露光装置,露光方法,デバイス製造方法,および屈折光学素子」であり,同補正後の請求項の数は32である。)をしたが(甲1,2,弁論の全趣旨),本願について平成25年7月23日付けで拒絶査定を受けたので,同年10月29日,これに対する不服の審判を請求するとともに,平成26年2月14日,手続補正書を提出した(甲6。これに係る手続補正を,以下「本件補正」という。)。 特許庁は,この審判請求を,不服2013-21075号事件として審理した後,同年3月25日,独立特許要件を欠くとして本件補 を提出した(甲6。これに係る手続補正を,以下「本件補正」という。)。 特許庁は,この審判請求を,不服2013-21075号事件として審理した後,同年3月25日,独立特許要件を欠くとして本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,審決の謄本を,同年4月8日,原告に送達した。 原告は,同年5月7日,審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲本件補正後の本願の特許請求の範囲における請求項1の記載は次のとおりである(甲6。この発明を,以下「補正発明」という。また,以下,本件補正後の本願の明細書を「本願明細書」といい,同明細書の発明の詳細な説明の項を,単に「発明の詳細な説明」という。)。 【請求項1】第1面のパターンの像を第2面に投影するとともに,液体を介して照明光で基板を露光する液浸露光装置に搭載される投影光学系において,前記照明光が通過する第1レンズ群と, 前記第1レンズ群からの前記照明光を反射する複数の反射ミラーと,前記反射ミラーからの前記照明光が通過するとともに,最終レンズを有する第2レンズ群と,を備え,前記第1レンズ群と前記第2レンズ群とは,前記投影光学系の光軸上に配置され,前記第2面に投影される前記パターンの像の投影領域の中心は,前記光軸と直交する第1方向に関して前記光軸から離れており,前記最終レンズは,前記液体と接する面であって前記照明光が通過する射出領域を一部に含む射出面と,当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し,前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し,前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にあることを特徴とする投影光学系。 3 審決の理由別紙審決書写しのとおりである。要するに,補正発明は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たさないから,特許出願の際独立して特許を受けることができず,本件補正は,平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものであり,本件補正前の本願の特許請求の範囲の請求項1の発明についても,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから特許を受けることができず,したがって,本願は拒絶すべきであるというものである。 第3 原告の主張補正発明が特許法36条6項1号に規定する要件を満たさないとの審決の判断は,以下のとおり誤っており,本件補正は却下されるべきものではないから,審決には結論に影響する判断の誤りがあり,審決は取り消されるべきである。 1 審決による補正発明の特定の誤り審決は,補正発明における「当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し」という事項を「特定事項」とした上,「上記特定事項を含む補正発明は本願の発明の詳細な説明に記載された事項を超えた事項を含むといわざるを得ない。」と判断した。 しかるに,審決がいう特定事項は,突出部に関する要件であるが,補正発明において,突出部は,「前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸 と判断した。 しかるに,審決がいう特定事項は,突出部に関する要件であるが,補正発明において,突出部は,「前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」(下線を付した部分は,原告が本件補正により追加した。)という要件によっても限定されている。 したがって,この特定事項を含む補正発明が,発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内であるかどうかを判断すべきであるにもかかわらず,審決は,原告が補正によって追加した要件を看過して,突出部の構成要件の一部のみを取り出して特定事項とし,当該特定事項を含む補正発明が発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内であるかについて,上記のとおり判断しており,失当である。 2 補正発明が発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内にあること従来から,投影光学系の像空間において液体(浸液)が介在する範囲をできるだけ小さく抑えることが,基板ステージ(ウェハステージ)の巨大化の回避やアライメント光学系の精度の向上などに有利であることが知られており,屈折型の投影光学系の場合(投影領域の中心と光軸とが一致している場合)には,射出面の領域は,光軸を中心として有効射出領域を包含するために必要な最小限の大きさとされていた。これに対し,反射屈折型の投影光学系の場合(投影領域の中心が光軸から偏心している場合)において,射出面を,光軸を中心として有効射出領域を包含するために必要な最小限の大きさに形成すると,従来技術(すなわち,屈折型の投影光学系の場合)に比べて 射出面が大きくなってしまうという課題があった。 本願に係る発明の目的は,本願明細書に「本発明は,前述の課題に鑑みてなされたものであり,たとえば反射屈 屈折型の投影光学系の場合)に比べて 射出面が大きくなってしまうという課題があった。 本願に係る発明の目的は,本願明細書に「本発明は,前述の課題に鑑みてなされたものであり,たとえば反射屈折型で且つ軸外視野型であって,像空間において液体(浸液)が介在する範囲を小さく抑えることのできる液浸型の投影光学系を提供することを目的とする。」(【0008】)とあるとおり,上記の課題を解決することにある。 そして,本願に係る発明の課題を解決するための構成と発明の効果については,本願明細書に,「本発明の典型的な形態にしたがう液浸型の投影光学系は,たとえば反射屈折型で且つ軸外視野型であって,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面が,像面上の有効投影領域の形状に応じて,光軸に関して回転非対称な形状を有する。具体的には,当該屈折光学素子の射出面は,たとえば像面上において直交する2つの軸線方向に関してほぼ対称な形状を有し,射出面の中心軸線と屈折光学素子の入射面の外周に対応する円の中心軸線とはほぼ一致し,射出面の中心軸線は上記2つの軸線方向のうちの一方の軸線方向に沿って光軸から偏心している。」(【0022】)「その結果,本発明の投影光学系では,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面が有効投影領域の形状に応じて回転非対称な形状に形成されているので,像空間において液体(浸液)が介在する範囲を小さく抑えることができる。」(【0023】)とあり,これらの記載と,反射屈折型の投影光学系において本願に係る発明の課題が出てきたという従来技術の流れから,本願に係る発明が,射出面の中心を投影領域の中心と同じ側に偏心させたことによって,課題を解決するものであることは明らかである。 補正発明における突出部の構成は,上記のとおり本願明細書の発明の詳細な説明に る発明が,射出面の中心を投影領域の中心と同じ側に偏心させたことによって,課題を解決するものであることは明らかである。 補正発明における突出部の構成は,上記のとおり本願明細書の発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための構成を記載したものである。 したがって,補正発明は,発明の詳細な説明に記載された発明であり,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化したものではない。 被告は,発明の詳細な説明には,「射出面の中心軸線は上記2つの軸線方向のうちの一方の軸線方向に沿って光軸から偏心」することのみにより,発明の課題を解決し射出面の大きさを小さくできることまでは記載されていないと主張する。 しかしながら,射出面の大きさは,「液体(浸液)が介在する範囲をできるだけ小さく抑えることが,基板ステージ(ウェハステージ)の巨大化の回避やアライメント光学系の精度の向上などに有利である」という技術常識から自ずと小さくするものであり,従来技術においても,適切な大きさが定められていたのであるから,被告の上記主張は失当である。 また,被告は,発明の詳細な説明に記載された実施形態のうち第1変形例を根拠に,突出部の中心と投影光学系の光軸とが離れていることは,発明の課題を解決するための手段という観点からみれば任意の事項であると主張する。 しかしながら,補正発明は,第1変形例に対応する構成について権利を請求するものではないから,被告の上記主張は失当である。 3 審決による課題解決手段の認定の誤り審決は,本願に係る発明の解決手段について,「射出面を形成する突出部を「実効露光領域ER(投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じた」「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている について,「射出面を形成する突出部を「実効露光領域ER(投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じた」「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」という解決手段で解決しているというべきである。」と認定した。 審決は,実効露光領域ERが矩形状の照明領域であるから,射出面も「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」と理解しているようであるが,誤りである。 実効露光領域ERが矩形状であるからといって,射出面の形状も矩形状であるということにはならない。そもそも,実効露光領域ERは,従来から矩 形状であったのであり,実効露光領域ERの形状が矩形状であることは,本願に係る発明が問題としている課題とは直接的な関係はない。 審決は,光軸AXに対して回転非対称なことを,「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」と誤解している可能性もあるが,両者は異なる概念である。光軸AXに対して回転対称な形状の射出面を想定すると,当該射出面の中心を光軸AXから偏心させると,射出面は光軸AXに対して回転非対称となるが,「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」ようにしても必ずしも回転非対称にはならない。例えば,長方形や楕円形を考えれば分かるように,2つの軸線方向での長さが異なっても,回転対称の場合がある。 審決は,補正発明に係る射出面を形成する突出部には,例えば「実効露光領域ERの形状とは全く関係ない任意の形状」としたものや「互いに直交する2つの軸線方向での射出面Lpbの長さが本願の発明の詳細な発明に記載の実施例とは逆の方向に異なる」もの,さ は,例えば「実効露光領域ERの形状とは全く関係ない任意の形状」としたものや「互いに直交する2つの軸線方向での射出面Lpbの長さが本願の発明の詳細な発明に記載の実施例とは逆の方向に異なる」もの,さらには「互いに直交する2つの軸線方向での射出面Lpbの長さが同じ」である従来技術など,様々な態様のものが含まれるとする。 しかしながら,突出部がいかなる形状であったとしても,突出部を投影領域の中心と同じ側に偏心させなければ,射出面の大きさを従来技術に比べて小さくできないのであるから,審決の上記の判断は的外れである。 第4 被告の主張 1 補正発明の特定について原告は,審決には補正発明の突出部の配置に関する構成を看過して判断した誤りがあると主張する。 この点,補正発明において,「突出部」は,「当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し」とい う,形状に関する構成(以下「要件1」という。)と,「前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」という,配置に関する構成(以下「要件2」という。)によって特定されている。 そして,審決は,発明の課題及び発明の課題を解決するための手段は「突出部」の形状に関するものであり,配置に関する構成である要件2とは明らかに異なるものであるため,まず,補正発明の形状に関する構成である要件1について,審決で認定した課題を解決することができるか検討した上で,要件2の配置に関する構成も含めた補正発明について,審決で認定した「実効露光領域ER(投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じた」「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpb 上で,要件2の配置に関する構成も含めた補正発明について,審決で認定した「実効露光領域ER(投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じた」「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」という解決手段が請求項に反映されていないことを確認している。 よって,補正発明の要件2を看過して判断したという原告の主張は失当である。 仮に,要件2を看過して判断しているように見えたとしても,審決が認定した,請求項に反映されるべき解決手段が,補正発明に反映されていないことには変わりはなく,審決が要件2について明示しなかったことは,その結論に影響を及ぼさない。 2 補正発明には,発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないこと本願に係る発明が解決しようとする課題は,反射屈折型で且つ軸外視野型であって,液浸型の投影光学系において,屈折光学素子の射出面を光軸に関して回転対称な形状に形成すると,像空間において液体が介在する範囲が大きくなるということであるが,ここに「光軸に関して回転対称な形状」とは,本願明細書(【0065】)によれば,「互いに直交する2つの軸線方向に関してほぼ同じ長さを有する形状」のことである。 この発明の課題に対して,補正発明は,射出面(突出部)の形状について特定しておらず,この補正発明により,発明の課題を解決することができるとは直ちにはいうことができない。そこで,発明の詳細な説明の記載(【0009】,【0022】,【0023】)を参酌すると,発明の課題を解決するための手段は,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面が,「有効投影領域(実効露光領域ER)の形状に応じて,光軸に関して回転非対称な形状に形成されている」構成であるといえる。 明の課題を解決するための手段は,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面が,「有効投影領域(実効露光領域ER)の形状に応じて,光軸に関して回転非対称な形状に形成されている」構成であるといえる。 しかし,この構成のうち,「有効投影領域(実効露光領域ER)の形状」については,矩形状であるのが一般的であり直ちに理解することができるが,「(光軸に関して)回転非対称な形状」については「無限回回転対称な形状以外の形状」(【0009】),すなわち,幾何学的に考えると「円」以外であることしかわからず,どのような形状のものか特定できない。 そのため,本願明細書及び図面に記載された,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面の形状に係る4つの実施形態全てについての記載を参照すると,いずれの実施形態についても,「液中平行平面板Lpの射出面LpbがウェハW上において光軸AXを含まない実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じて光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている)ので,投影光学系PLの像空間において液体(浸液)Lm1が介在する範囲を小さく抑えることができる。」と記載されている(【0069】,【0073】,【0077】,【0081】)。また,実効露光領域ERの形状は矩形状の照明領域であり(【0028】,【0029】),射出面を通過した光がウェハ上にそのような実効露光領域ERを形成できる,射出面の形状であることが必要であることが明らかである。 そうすると,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面が「実効露光 領域ERの形状に応じて,光軸に関して回転非対称な形状に形成されている」構成とは,射出面が実効露光 が明らかである。 そうすると,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面が「実効露光 領域ERの形状に応じて,光軸に関して回転非対称な形状に形成されている」構成とは,射出面が実効露光領域ERの形状に応じて,互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている構成を示すことと理解できるから,発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段は,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面が,実効露光領域ERの形状に応じて,互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている構成であるといえる。 しかるに,補正発明の「突出部」に係る記載には,上記のとおりの発明の課題を解決するための手段が反映されていない。 すなわち,補正発明の「突出部」の構成は,「実効露光領域ERの形状に応じて,互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」構成以外の「突出部」の構成を含んでおり,このような補正発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになるものといえる。 すなわち,補正発明においては,突出部の大きさは特定されていないが,補正発明における突出部の構成によれば,射出面が大きさを変えずに,偏心した距離だけスライドした形態も含み得るものであり,射出面の中心を偏心させるだけで,実効露光領域ER(有効投影領域)に接する程度まで射出面が小さくなるものではない。 他方,発明の詳細な説明には,突出部を投影領域の中心と同じ側に偏心させることのみにより,発明の課題を解決することができ,射出面の大きさを従来技術と比べて小さくできるという効果が得られるという技術事項は記載されていない。 すなわち, 領域の中心と同じ側に偏心させることのみにより,発明の課題を解決することができ,射出面の大きさを従来技術と比べて小さくできるという効果が得られるという技術事項は記載されていない。 すなわち,本願明細書の【0022】には,「射出面の中心軸線は上記2つの軸線方向のうちの一方の軸線方向に沿って光軸から偏心している」こと が記載されているが,このことのみにより,発明の課題を解決し射出面の大きさを小さくできることまでは記載されておらず,この位置関係に係る記載があったからといって,補正発明に,本願の発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえない。 また,発明の詳細な説明に記載された前記4つの実施形態のうち第1変形例では,突出部の中心と投影光学系の光軸とが一致していることを勘案すると,補正発明で特定された,突出部の中心と投影光学系の光軸とが離れていることは,発明の詳細な説明から把握できる発明の課題を解決するための手段という観点からみれば,任意の事項であるということができる。 よって,補正発明には,発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されていないから,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなるとした審決の判断に誤りはない。 3 本願に係る発明の解決手段の認定について原告は,実効露光領域ERが矩形状であるからといって,射出面の形状も矩形状であるということにはならないと主張する。 確かに,審決では,「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」という解決手段について,実効露光領域ERが矩形状の照明領域であることから説明している。 しかるに,ウェハ上に形成される実効露光領域ERが矩形状であれば,それに面した最終 ように形成されている」という解決手段について,実効露光領域ERが矩形状の照明領域であることから説明している。 しかるに,ウェハ上に形成される実効露光領域ERが矩形状であれば,それに面した最終レンズの射出面(突出部)を通過する照明光も,実効露光領域ERの上記形状に対応した矩形状の範囲内のものであることは明らかであることや,本願明細書に「実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じて光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている)」と記載されていることからすれば,上記のような審決の説明に誤りはない。 原告は,光軸AXに対して回転非対称なことと,「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」こととは異なる概念であると主張する。 しかし,「回転非対称な形状」が「無限回回転対称な形状以外の形状」を指すとの本願明細書の定義によれば,「2つの軸線方向での長さが異なる形状」は,光軸に対して「回転非対称な形状」に該当する。 そして,審決では,実効露光領域ERが矩形状であることを踏まえ,「実効露光領域ER(投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じて光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている」という事項が,「実効露光領域ER(投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じた」「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」という解決手段に相当すると認定したのであり,単に「光軸AXに対して回転非対称なこと」と「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」こととが同義で という解決手段に相当すると認定したのであり,単に「光軸AXに対して回転非対称なこと」と「互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている」こととが同義であると認定したわけではないから,原告の上記主張は失当である。 原告は,突出部がいかなる形状であったとしても,突出部を投影領域の中心と同じ側に偏心させなければ,射出面の大きさを従来技術に比べて小さくすることはできないと主張する。 しかしながら,単に射出面の中心を投影領域の中心と同じ側に偏心させたとしても,射出面の形状が投影領域の形状に応じたものでなければ,投影領域以外の余分な領域を射出面に含まざるを得ないのであり,突出部を投影領域の中心と同じ側に偏心させることのみで,射出面を従来技術より小さくすることができるとする原告の主張は失当である。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,審決には,補正発明が発明の詳細な説明に記載された発明ではない発明を含むと判断した点に誤りがあり,この誤りは,審決の結論に影響を 及ぼすものであるから,審決は取消しを免れないと判断する。 その理由は,次のとおりである。 1 補正発明における「突出部」に係る構成の内容について審決は,「当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し」との特定事項を含む補正発明は,発明の詳細な説明に記載された事項を超えた事項を含むと判断した。 これに対し,原告は,審決が突出部に関する要件の一部を看過したと主張する(前記第3の1)。そこで,当該突出部の構成要件の内容について,以下,検討する。 補正発明は,「前記最終レンズは,前記液体と接する面であって前記照明光が通過する射出領域を一部に含む射出面と,当該最終レンズの射 )。そこで,当該突出部の構成要件の内容について,以下,検討する。 補正発明は,「前記最終レンズは,前記液体と接する面であって前記照明光が通過する射出領域を一部に含む射出面と,当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し,前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」との構成要件(以下「突出部の構成要件」という。)を備えている。 ここで,「最終レンズ」に形成される「前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れており,前記光軸に対して前記投影領域の中心と同じ側にある」から,その突出部(射出面)は,その形状がどのようなものであれ,光軸から第1方向に関して投影領域の中心と同じ側に離れた位置に中心を有する。さらに,「第1方向」とは,「投影領域の中心は,前記光軸と直交する第1方向に関して前記光軸から離れて」いるという補正発明の構成要件における「第1方向」であり,投影領域の中心が光軸から離れる方向のことである。したがって,光軸から第1方向に関して投影領域の中心と同じ側に離れた位置とは,要するに,光軸から投影領域の中心に向かって離れた位置のことである。 そうすると,突出部の構成要件は,全体として,最終レンズの突出部(射出面)が,それ自体の形状を問わず,光軸から投影領域の中心に向かって離れた位置に中心を有するという一つの事項を特定するものであるということができる。 補正発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かを判断するに当たっては,突出部の構成要件が全体として特定する上記の一つの事項が発明の詳細な説明に記載されているかどうかを検討すべきである。 補正発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かを判断するに当たっては,突出部の構成要件が全体として特定する上記の一つの事項が発明の詳細な説明に記載されているかどうかを検討すべきである。 これに対して,審決は,前記のとおり,突出部の構成要件の一部のみ取り出して特定事項とし,当該特定事項を含む補正発明が発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内にあるかを検討している。したがって,その判断手法には誤りがあるといわざるを得ない。 被告は,補正発明における「突出部」は,形状に関する構成(要件1)と配置に関する構成(要件2)とで特定されており,審決は,発明の課題及び発明の課題を解決するための手段は「突出部」の形状に関するものであるため,まず,補正発明の形状に関する構成である要件1について,課題を解決することができるか検討したと主張する(前記第4の1)。 しかしながら,突出部の構成要件は,全体として一つの事項を特定するものであるから,課題を解決することができるか否かについても,突出部の構成要件全体で考えるべきであり,これを形状に関する構成と配置に関する構成に分け,前者について課題を解決することができるかどうかを検討するのは適切ではない。 なお,被告は,審決は要件2の配置に関する構成も含めた補正発明について,課題解決手段が請求項に反映されていないことを確認しているとも主張するが(同上),審決にその旨の記載があるとは認められない。 よって,被告の上記主張は採用することができない。 2 発明の詳細な説明の記載内容 前記1の突出部の構成要件の認定を踏まえ,発明の詳細な説明の内容を検討すべきところ,本願明細書(甲1及び2)には,発明の詳細な説明として,次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】【0 記1の突出部の構成要件の認定を踏まえ,発明の詳細な説明の内容を検討すべきところ,本願明細書(甲1及び2)には,発明の詳細な説明として,次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】【0006】…露光装置用の投影光学系の解像力を向上させる手法として,気体よりも屈折率の高い液体などの媒質で像空間を埋めることにより1を超えるような大きな像側開口数を確保する技術が知られている。一方,マイクロリソグラフィーにおいてチップコストを無視した微細パターン形成は成り立たず,現在最も有力な液浸リソグラフィシステムとして,投影光学系の像空間の限定された部分にのみ液体を供給排出する機構を設けた,いわゆる局所液浸システムが主流である。この場合,投影光学系の像空間において液体(浸液)が介在する範囲をできるだけ小さく抑えることが,基板ステージ(ウェハステージ)の巨大化の回避やアライメント光学系の精度の向上などに有利である。 【0007】また,像側開口数が例えば1.2を超えるような液浸投影光学系では,ペッツバール条件を成立させて像の平坦性を得るという観点から反射屈折光学系の採用が望ましく,あらゆるパターンへの対応力の観点から有効視野領域および有効投影領域が光軸を含まない軸外視野光学系の採用が望ましい。反射屈折型で軸外視野型の液浸投影光学系を採用する場合,従来の屈折型の投影光学系よりも最大像高が大きくなる。その結果,投影光学系中の最も像側に配置される屈折光学素子の射出面を従来技術にしたがって光軸に関して回転対称な形状に形成すると,投影光学系の像空間において液体が介在する範囲が大きくなり,ひいては基板ステージの巨大化やアライメント光学系の精度低下などを招いてしまう。 【0008】 本発明は,前述の課題に鑑みてなされたもの 間において液体が介在する範囲が大きくなり,ひいては基板ステージの巨大化やアライメント光学系の精度低下などを招いてしまう。 【0008】 本発明は,前述の課題に鑑みてなされたものであり,たとえば反射屈折型で且つ軸外視野型であって,像空間において液体(浸液)が介在する範囲を小さく抑えることのできる液浸型の投影光学系を提供することを目的とする。また,本発明は,像空間において液体が介在する範囲を小さく抑えることのできる高解像な液浸投影光学系を用いて,基板ステージの巨大化やアライメント光学系の精度低下などを招くことなく,微細なパターンを高精度に投影露光することのできる露光装置および露光方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】【0009】前記課題を解決するために,本発明の第1形態では,第1面のパターンの像を第2面に投影するとともに,液体を介して照明光で基板を露光する液浸露光装置に搭載される投影光学系において,前記照明光が通過する第1レンズ群と,前記第1レンズ群からの前記照明光を反射する複数の反射ミラーと,前記反射ミラーからの前記照明光が通過するとともに,最終レンズを有する第2レンズ群と,を備え,前記第1レンズ群と前記第2レンズ群とは,前記投影光学系の光軸上に配置され,前記第2面に投影される前記パターンの像の投影領域の中心は,前記光軸と直交する第1方向に関して前記光軸から離れており,前記最終レンズは,前記液体と接する面であって前記照明光が通過する射出領域を一部に含む射出面と,当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し,前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して 部に含む射出面と,当該最終レンズの射出側の一部に,前記射出面が他の部分に対して突出して形成される突出部を有し,前記第1方向の幅に基づいて規定される,前記突出部の中心は,前記第1方向に関して前記光軸から離れていることを特徴とする投影光学系を提供する。 なお,本明細書中に記載された「回転非対称な形状」とは,「無限回回転対称 な形状以外の形状」を指す。」「【発明の効果】【0022】本発明の典型的な形態にしたがう液浸型の投影光学系は,たとえば反射屈折型で且つ軸外視野型であって,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面が,像面上の有効投影領域の形状に応じて,光軸に関して回転非対称な形状を有する。具体的には,当該屈折光学素子の射出面は,たとえば像面上において直交する2つの軸線方向に関してほぼ対称な形状を有し,射出面の中心軸線と屈折光学素子の入射面の外周に対応する円の中心軸線とはほぼ一致し,射出面の中心軸線は上記2つの軸線方向のうちの一方の軸線方向に沿って光軸から偏心している。 【0023】その結果,本発明の投影光学系では,最も像面側に配置された屈折光学素子の射出面が有効投影領域の形状に応じて回転非対称な形状に形成されているので,像空間において液体(浸液)が介在する範囲を小さく抑えることができる。 また,本発明の露光装置および露光方法では,像空間において液体が介在する範囲を小さく抑えることのできる高解像な液浸投影光学系を用いているので,基板ステージの巨大化やアライメント光学系の精度低下などを招くことなく,微細なパターンを高精度に投影露光することができ,ひいては良好なマイクロデバイスを高精度に製造することができる。」「【発明を実施するための形態】【0025】…」「【0028】図2( ーンを高精度に投影露光することができ,ひいては良好なマイクロデバイスを高精度に製造することができる。」「【発明を実施するための形態】【0025】…」「【0028】図2(判決注・次頁右上のとおり)は,本実施形態においてウェハ上に形成される矩形状の静止露光領域(すなわち実効露光領域)と基準光軸との位置関 【図2】係を示す図である。本実施形態では,図2に示すように,基準光軸AXを中心とした半径Bを有する円形状の領域(イメージサークル)IF内において,基準光軸AXからY方向に軸外し量Aだけ離れた位置に所望の大きさを有する矩形状の実効露光領域ERが設定されている。 【0029】ここで,実効露光領域ERのX方向の長さはLXであり,そのY方向の長さはLYである。したがって,図示を省略したが,レチクルR上では,矩形状の実効露光領域ERに対応して,基準光軸AXからY方向に軸外し量Aに対応する距離だけ離れた位置に実効露光領域ERに対応した大きさおよび形状を有する矩形状の照明領域(すなわち実効照明領域)が形成されていることになる。」「【0037】図3(判決注・右のとおり)は,本実施形態の各実施例における境界レンズとウェハとの間の構成を模式的に示す図である。図3を参照すると,本実施形態の各実施例にかかる投影光学系PLでは,レチクルR側(物体側)の面が第2液体Lm2に接し且つウェハW側(像側)の面が第1液体Lm1に接する液中平行平面板Lpが最もウェハ側に配置されている。そして,この液中平行平面板Lpに隣接して,レチクルR側の面が気体に接し且つウェハW側の面が第2液体Lm2に接する境界レンズLbが配置されている。」「【0063】【図3】 【図8】本実施形態の液浸投 pに隣接して,レチクルR側の面が気体に接し且つウェハW側の面が第2液体Lm2に接する境界レンズLbが配置されている。」「【0063】【図3】 【図8】本実施形態の液浸投影光学系PLでは,反射屈折型の光学系を採用しているので,大きな像側開口数にもかかわらずペッツバール条件をほぼ成立させて像の平坦性を得ることができるとともに,有効視野領域(実効照明領域)および有効投影領域(実効露光領域ER)が光軸を含まない軸外視野型の光学系を採用してレンズ開口(瞳)中の遮光部を有しないようにしているため,あらゆるパターンへの対応力を確保することができる。しかしながら,本実施形態のような反射屈折型で軸外視野型の液浸投影光学系PLでは,最も像側(ウェハW側)に配置される屈折光学素子としての液中平行平面板Lpの射出面を従来技術にしたがって光軸AX3(すなわち基準光軸AX)に関して回転対称な形状に形成すると不都合が発生する。 【0064】図8(判決注・右のとおり)は,最も像側に配置される屈折光学素子の射出面を従来技術にしたがって回転対称な形状に形成したときの不都合を具体的に説明するための図である。図8を参照すると,液浸投影光学系PL中において最も像側(ウェハW側)に配置される屈折光学素子としての液中平行平面板Lpの入射面は,光軸AXを中心とした円30に対応する外周を有する。言い換えると,液中平行平面板Lpの入射面は,互いに直交する2つの軸線方向に関してほぼ同じ長さを有する。実際には,液中平行平面板Lpの入射面の外周の一部にオリエンテーションフラット等の切欠が設けられたり,入射面の外周が多角形状に形成されたり,入射面と面一にホールド用のタブが設けられたりすることがあるが,いずれにしても液中平行平面板Lp にオリエンテーションフラット等の切欠が設けられたり,入射面の外周が多角形状に形成されたり,入射面と面一にホールド用のタブが設けられたりすることがあるが,いずれにしても液中平行平面板Lp 【図9】の入射面の外周に対応する円30の中心軸線は光軸AXと一致している。 【0065】一方,液中平行平面板Lpの射出面を有効な結像光束が通過する領域として定義される有効射出領域31は,ウェハW上において光軸AXを含まない矩形状の実効露光領域(静止露光領域)ERに対応するように,光軸AXから一方向(Y方向)に偏心し且つ長方形の隅角部が丸まったような形状を有する。従来技術では,液中平行平面板Lpの射出面が有効射出領域31の回転非対称性とは無関係に光軸AXに関して回転対称な形状(無限回回転対称な形状),言い換えると互いに直交する2つの軸線方向に関してほぼ同じ長さを有する形状に形成されるので,液中平行平面板Lpの射出面は光軸AXを中心として有効射出領域31を内包するような大きな円32に対応する外周を有することになる。その結果,従来技術では,投影光学系PLの像空間において液体Lm1が介在する範囲が大きくなり,ひいては基板ステージ(9~11)の巨大化やアライメント光学系(不図示)の精度低下などを招く。 【0066】図9(判決注・右のとおり)は,本実施形態の各実施例における液中平行平面板の構成を概略的に示す図である。図9において,(a)は液中平行平面板Lpの底面図であり,(b)および(c)は液中平行平面板Lpの側面図である。図9を参照すると,本実施形態の各実施例において液中平行平面板Lpの入射面Lpaは円40に対応する外周を有し,この入 射面Lpaの外周に対応する円40の中心40aは光軸AX(AX3)からY方 参照すると,本実施形態の各実施例において液中平行平面板Lpの入射面Lpaは円40に対応する外周を有し,この入 射面Lpaの外周に対応する円40の中心40aは光軸AX(AX3)からY方向に偏心している。ちなみに,破線41で示す参照円は,光軸AXを中心として円40に内接する円である。言い換えると,液中平行平面板Lpの入射面Lpaは,互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)に関してほぼ同じ長さを持つように形成されている。 【0067】液中平行平面板Lpの射出面Lpbにおける有効射出領域42は,X方向およびY方向に関してほぼ対称で且つ長方形の隅角部が丸まったような形状を有し,有効射出領域42の中心42aは入射面Lpaの外周に対応する円40の中心40aと一致している。液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,有効射出領域42の周囲に僅かなマージン領域を確保して有効射出領域42を内包するようなX方向およびY方向に関してほぼ対称な形状を有し,射出面Lpbの中心Lpbaは有効射出領域42の中心42aおよび入射面Lpaの外周に対応する円40の中心40aと一致している。別の観点でみると,液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,光軸AXに関して1回回転対称な形状を有する。なお,図9(a)において射出面Lpbを包囲する領域であってハッチングの施された部分Lpcは,射出面Lpbの外周から光入射側に延びる傾斜面である。 【0068】すなわち,本実施形態の各実施例において,液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,ウェハW上において直交する2つの軸線方向すなわちX方向およびY方向に関してほぼ対称な形状を有する。また,射出面Lpbの中心軸線Lpbaと入射面Lpaの外周に対応する円40の中心軸線40aとは一致し,射出面Lpbの中心軸線LpbaはY方 すなわちX方向およびY方向に関してほぼ対称な形状を有する。また,射出面Lpbの中心軸線Lpbaと入射面Lpaの外周に対応する円40の中心軸線40aとは一致し,射出面Lpbの中心軸線LpbaはY方向に沿って光軸AXから偏心している。そして,ウェハW上の実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の中心軸線(重心軸線)は,射出面Lpbの中心軸線Lpbaとほぼ一致している。言い換えると,射出面Lpbの一方の軸線方向(Y方向)について 【図10】の長さと,他方の軸線方向(X方向)についての長さとが互いに異なっている。 【0069】以上のように,本実施形態では,液中平行平面板Lpの射出面が有効射出領域42の光軸AXに関する回転非対称性とは無関係に光軸AXに関して回転対称な形状に形成される従来技術とは異なり,液中平行平面板Lpの射出面LpbがウェハW上において光軸AXを含まない実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じて光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている)ので,投影光学系PLの像空間において液体(浸液)Lm1が介在する範囲を小さく抑えることができる。本実施形態の露光装置では,像空間において液体Lm1が介在する範囲を小さく抑えることのできる高解像な液浸投影光学系PLを用いているので,基板ステージ(9~11)の巨大化やアライメント光学系の精度低下などを招くことなく,微細なパターンを高精度に投影露光することができる。 【0070】図10(判決注・右のとおり)は,本実施形態の第1変形例にかかる液中平行平面板の構成を概略的に示す図である。図10において,(a)は液中平行平面板 露光することができる。 【0070】図10(判決注・右のとおり)は,本実施形態の第1変形例にかかる液中平行平面板の構成を概略的に示す図である。図10において,(a)は液中平行平面板Lpの底面図であり,(b)および(c)は液中平行平面板Lpの側面図である。図10を参照すると,第1変形例にかかる液中平行平面板Lpの入射面Lpaは,光軸AX(AX3)を中心とした円50に対応する外周を有する。 言い換えると,液中平行平面板Lpの入射面Lpaは,互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)に関してほぼ同じ長さを持つように形成されている。液中平行平面板Lpの射出面Lpbにおける有効射出領域51は,X方向およびY方向に関してほぼ対称で且つ長方形の隅角部が丸まったような形状を有し,有効射出領域51の中心51aは光軸AXからY方向に偏心している。 【0071】液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,有効射出領域51の一方の長辺側および両方の短辺側に僅かなマージン領域を確保しつつ他方の長辺側に比較的大きなマージン領域を確保して有効射出領域51を内包し,X方向およびY方向に関してほぼ対称な形状を有する。図10(a)において射出面Lpbを包囲する領域であってハッチングの施された部分Lpcは,射出面Lpbの外周から光入射側に延びる傾斜面である。 【0072】すなわち,第1変形例にかかる液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,X方向およびY方向に関してほぼ対称な形状を有する。別の観点でみると,第1変形例にかかる液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,光軸AXに関して2回回転対称な形状を有する。また,射出面Lpbの中心軸線Lpba(図10では不図示)と入射面Lpaの外周に対応する円50の中心軸線50a(図10では不図示)と光軸 射出面Lpbは,光軸AXに関して2回回転対称な形状を有する。また,射出面Lpbの中心軸線Lpba(図10では不図示)と入射面Lpaの外周に対応する円50の中心軸線50a(図10では不図示)と光軸AXとは一致している。そして,ウェハW上の実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の中心軸線(重心軸線)は,射出面Lpbの中心軸線Lpba(すなわち光軸AX)からY方向に偏心している。言い換えると,射出面Lpbの一方の軸線方向(Y方向)についての長さと,他方の軸線方向(X方向)についての長さとが互いに異なっている。 【0073】図10の第1変形例においても図9の実施形態と同様に,液中平行平面板Lpの射出面Lpbが,ウェハW上において光軸AXを含まない実効露光領域E 【図11】R(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じて,光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている)ので,投影光学系PLの像空間において液体(浸液)Lm1が介在する範囲を小さく抑えることができる。 【0074】図11(判決注・右のとおり)は,本実施形態の第2変形例にかかる液中平行平面板の構成を概略的に示す図である。図11において,(a)は液中平行平面板Lpの底面図であり,(b)および(c)は液中平行平面板Lpの側面図である。図11を参照すると,第2変形例にかかる液中平行平面板Lpの入射面Lpaは,光軸AX(AX3)を中心とした円60に対応する外周を有する。液中平行平面板Lpの射出面Lpbにおける有効射出領域61は,X方向およびY方向に関してほぼ対称で且つ長方形の隅角部が丸まったような形状を有し,有効射出領域61の した円60に対応する外周を有する。液中平行平面板Lpの射出面Lpbにおける有効射出領域61は,X方向およびY方向に関してほぼ対称で且つ長方形の隅角部が丸まったような形状を有し,有効射出領域61の中心61aは光軸AXからY方向に偏心している。言い換えると,射出面Lpbの一方の軸線方向(Y方向)についての長さと,他方の軸線方向(X方向)についての長さとが互いに異なっている。 【0075】液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,有効射出領域61の周囲に僅かなマージン領域を確保して有効射出領域61を内包するようなY方向に関してほぼ 対称でX方向に関して非対称な形状を有し,射出面Lpbの中心(重心)Lpba(図11では不図示)は有効射出領域61の中心61aの近傍(Y方向に沿った近傍)に位置している。図11(a)において射出面Lpbを包囲する領域であってハッチングの施された部分Lpcは,射出面Lpbの外周から光入射側に延びる傾斜面である。 【0076】すなわち,第2変形例にかかる液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,Y方向に関してほぼ対称で且つX方向に関して非対称な形状を有する。言い換えると,射出面Lpbは,一方の軸線方向(Y方向)についての長さと,他方の軸線方向(X方向)についての長さとが互いに異なるように形成されている。また,入射面Lpaの外周に対応する円60の中心軸線60a(図11では不図示)と光軸AXとは一致し,射出面Lpbの中心軸線(重心軸線)LpbaはY方向に沿って光軸AXから偏心している。そして,ウェハW上の実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の中心軸線(重心軸線)は,射出面Lpbの中心軸線(重心軸線)Lpbaとほぼ一致している。別の観点でみると,第2変形例にかかる液中平行平面板Lpの 光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の中心軸線(重心軸線)は,射出面Lpbの中心軸線(重心軸線)Lpbaとほぼ一致している。別の観点でみると,第2変形例にかかる液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,光軸AXに関して1回回転対称な形状を有する。 【0077】図11の第2変形例においても図9の実施形態と同様に,液中平行平面板Lpの射出面Lpbが,ウェハW上において光軸AXを含まない実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じて,光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている)ので,投影光学系PLの像空間において液体(浸液)Lm1が介在する範囲を小さく抑えることができる。 【0078】 【図12】図12(判決注・右のとおり)は,本実施形態の第3変形例にかかる液中平行平面板の構成を概略的に示す図である。図12において,(a)は液中平行平面板Lpの底面図であり,(b)および(c)は液中平行平面板Lpの側面図である。図12を参照すると,第3変形例にかかる液中平行平面板Lpの入射面Lpaは,光軸AX(AX3)を中心とした円70に対応する外周を有する。言い換えると,液中平行平面板Lpの入射面Lpaは,互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)に関してほぼ同じ長さを持つように形成されている。液中平行平面板Lpの射出面Lpbにおける有効射出領域71は,X方向およびY方向に関してほぼ対称で且つ長方形の隅角部が丸まったような形状を有し,有効射出領域71の中心71aは光軸AXからY方向に偏心している。 【0079】液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,有効射出領域71の周囲に僅 つ長方形の隅角部が丸まったような形状を有し,有効射出領域71の中心71aは光軸AXからY方向に偏心している。 【0079】液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,有効射出領域71の周囲に僅かなマージン領域を確保して有効射出領域71を内包するようなX方向およびY方向に関してほぼ対称な形状を有し,射出面Lpbの中心Lpbaは有効射出領域71の中心71aと一致している。図12(a)において射出面Lpbを包囲する領域であってハッチングの施された部分Lpcは,射出面Lpbの外周から光入射側に延びる傾斜面である。 【0080】すなわち,第3変形例にかかる液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,X方 向およびY方向に関してほぼ対称な形状を有する。また,射出面Lpbは,一方の軸線方向(Y方向)についての長さと,他方の軸線方向(X方向)についての長さとが互いに異なるような形状を有する。また,入射面Lpaの外周に対応する円70の中心軸線70a(図12では不図示)と光軸AXとは一致し,射出面Lpbの中心軸線LpbaはY方向に沿って光軸AXから偏心している。 そして,ウェハW上の実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の中心軸線(重心軸線)は,射出面Lpbの中心軸線Lpbaとほぼ一致している。別の観点でみると,第3変形例にかかる液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,光軸AXに関して1回回転対称な形状を有する。 【0081】図12の第3変形例においても図9の実施形態と同様に,液中平行平面板Lpの射出面Lpbが,ウェハW上において光軸AXを含まない実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じて,光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出 おいて光軸AXを含まない実効露光領域ER(すなわち投影光学系PLの有効投影領域)の形状に応じて,光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている)ので,投影光学系PLの像空間において液体(浸液)Lm1が介在する範囲を小さく抑えることができる。なお,第1変形例~第3変形例に示す構成は一例であって,液中平行平面板Lpの入射面および射出面の構成については本発明の範囲内において様々な変形例が可能である。」「【0083】また,液中平行平面板Lpの作用により,境界レンズLbに接する液体Lm2のスキャン露光時の圧力変動やステップ移動時の圧力変動が小さく抑えられるので,比較的小さなスペースで液体を保持することが可能になる。しかしながら,上述の実施形態の構成に限定されることなく,平行平面板Lpの設置を省略した構成も可能である。この場合,最も像側(ウェハW側)に配置される屈折光学素子としての境界レンズLbに対して本発明を適用することができる。 具体的には,境界レンズLbの入射面および射出面に対して,たとえば図10の第1変形例,図11の第2変形例,図12の第3変形例などの構成を適用することにより,本発明の効果を得ることができる。ただし,図9の実施形態では入射面の外周に対応する円の中心が光軸AXから偏心しているので,この構成を境界レンズLbの入射面に適用することはできない。」 3 発明の詳細な説明に記載された事項について本願に係る発明の課題及びその解決手段前記2によれば,本願に係る発明は,反射屈折型で軸外視野型の液浸投影光学系を採用した局所液浸システムにおいて,従来の屈折型の投影光学系よりも最大像高が大きくなる結果,投影光学系中の最も 決手段前記2によれば,本願に係る発明は,反射屈折型で軸外視野型の液浸投影光学系を採用した局所液浸システムにおいて,従来の屈折型の投影光学系よりも最大像高が大きくなる結果,投影光学系中の最も像側に配置される屈折光学素子の射出面を従来技術にしたがって光軸に関して回転対称な形状に形成すると,投影光学系の像空間において液体が介在する範囲が大きくなるという課題を解決し,液体が介在する範囲を小さく抑えることのできる液浸型の投影光学系を提供することを目的とするものである(【0006】ないし【0008】)。 そして,本願明細書の【発明の効果】の項には,本願に係る発明における投影光学系では,当該射出面が有効投影領域の形状に応じて光軸に関して回転非対称な形状を有すること,「具体的には,当該屈折光学素子の射出面は,たとえば像面上において直交する2つの軸線方向に関してほぼ対称な形状を有し,射出面の中心軸線と屈折光学素子の入射面の外周に対応する円の中心軸線とはほぼ一致し,射出面の中心軸線は上記2つの軸線方向のうちの一方の軸線方向に沿って光軸から偏心している。」との形状を採用した結果,像空間において液体(浸液)が介在する範囲を小さく抑えることができるという効果を奏することが記載されている(【0022】,【0023】)。 ここに,「回転非対称な形状」とは,「無限回回転対称な形状以外の形状」とされている(【0009】)ところ,一般に,「幾何学的図形または 物体がある軸のまわりの角2π/n(n=2,3,…)の回転に関して不変であればn回回転対称性をもつという。」(岩波理化学辞典第5版784頁)ことからすると,光軸に関して無限回回転対称な形状とは,光軸のまわりの任意の角の回転に関して不変な形状,すなわち,光軸を中心とする円を指すこととなる。 もつという。」(岩波理化学辞典第5版784頁)ことからすると,光軸に関して無限回回転対称な形状とは,光軸のまわりの任意の角の回転に関して不変な形状,すなわち,光軸を中心とする円を指すこととなる。したがって,光軸に関して「無限回回転対称な形状以外の形状」とは,光軸を中心とする円を除く任意の形状を指すこととなる。 そして,光軸を中心とする円とは,「光軸を中心とする」という条件(以下「条件1」という。)と,「円である」という条件(以下「条件2」という。)を同時に満たす形状であるから,これらの2つの条件の少なくとも一方を満たさない形状が,光軸を中心とする円を除く任意の形状に当たることとなるところ,上記【発明の効果】の記載においては,条件1に関して,「射出面の中心軸線は上記2つの軸線方向のうちの一方の軸線方向に沿って光軸から偏心している」との形状が,また,条件2に関して,「たとえば像面上において直交する2つの軸線方向に関してほぼ対称な形状」が,それぞれ示されているということができる。 発明の実施形態ア従来技術前記2のとおり,本願明細書の【発明を実施するための形態】の項には,従来技術に関して,「有効射出領域31は,ウェハW上において光軸AXを含まない矩形状の実効露光領域(静止露光領域)ERに対応するように,光軸AXから一方向(Y方向)に偏心」しているのに対し,「液中平行平面板Lpの射出面が有効射出領域31の回転非対称性とは無関係に光軸AXに関して回転対称な形状(無限回回転対称な形状),言い換えると互いに直交する2つの軸線方向に関してほぼ同じ長さを有する形状に形成されるので,液中平行平面板Lpの射出面は光軸AXを中心として有効射出領域31を内包するような大きな円32に対応する外周を有することにな る。」(【0065 てほぼ同じ長さを有する形状に形成されるので,液中平行平面板Lpの射出面は光軸AXを中心として有効射出領域31を内包するような大きな円32に対応する外周を有することにな る。」(【0065】)と記載され,これを図示した【図8】には,有効射出領域31を内包する円32の中心軸線が,光軸AXと一致していることが示されている。 これらに照らせば,従来技術については,射出面が「光軸を中心とする」「円である」との2つの条件を具備した回転対称な形状に形成されたものとして把握されていることが認められる。 イ実施形態前記2のとおり,本願明細書の【発明を実施するための形態】には,【図9】によって図示された本願に係る発明の実施形態について,「液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,光軸AXに関して1回回転対称な形状を有する。」(【0067】),「すなわち,…射出面Lpbの中心軸線Lpbaと入射面Lpaの外周に対応する円40の中心軸線40aとは一致し,射出面Lpbの中心軸線LpbaはY方向に沿って光軸AXから偏心している。そして,…実効露光領域ER(すなわち…有効投影領域)の中心軸線(重心軸線)は,射出面Lpbの中心軸線Lpbaとほぼ一致している。言い換えると,射出面Lpbの一方の軸線方向(Y方向)についての長さと,他方の軸線方向(X方向)についての長さとが互いに異なっている。」(【0068】),「本実施形態では,…液中平行平面板Lpの射出面Lpbが…実効露光領域ER(すなわち…有効投影領域)の形状に応じて光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている)」(【0069】)と記載され,【図9】には,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが光軸から有効投 されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている)」(【0069】)と記載され,【図9】には,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが光軸から有効投影領域の中心に向かって光軸AXから離れていること,射出面LpbのX方向の長さとY方向の長さが異なっていることが示されている。 また,【図11】によって図示された本願に係る発明の実施形態の第 2変形例及び【図12】によって図示された第3変形例については,いずれも,「射出面Lpbの中心軸線(重心軸線)LpbaはY方向に沿って光軸AXから偏心している。そして,…実効露光領域ER(すなわち…有効投影領域)の中心軸線(重心軸線)は,射出面Lpbの中心軸線(重心軸線)Lpbaとほぼ一致している。別の観点でみると,第2変形例(第3変形例)にかかる液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,光軸AXに関して1回回転対称な形状を有する。」(【0076】,【0080】),「射出面Lpbが,…実効露光領域ER(すなわち…有効投影領域)の形状に応じて,光軸AXに関して回転非対称な形状に形成されている(互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面Lpbの長さが異なるように形成されている)」(【0077】,【0081】)と記載され,【図11】及び【図12】には,いずれも,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが光軸から有効投影領域の中心に向かって光軸AXから離れていること(なお,【図11】にはLpbaそのものは図示されていないものの,同図からかかる趣旨を読み取ることができる。),射出面LpbのX方向の長さとY方向の長さが異なっていることが示されている。 以上によれば,これらの実施形態においては,いずれも,条件1に関して,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが光軸か る。),射出面LpbのX方向の長さとY方向の長さが異なっていることが示されている。 以上によれば,これらの実施形態においては,いずれも,条件1に関して,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが光軸から有効投影領域の中心に向かって光軸AXから離れている形状が,条件2に関して,射出面LpbのX方向の長さとY方向の長さが異なっている形状が,回転非対称な形状の実施形態として示されていると認められる。 一方,【図10】によって図示された本願に係る発明の実施形態の第1変形例については,「液中平行平面板Lpの射出面Lpbは,光軸AXに関して2回回転対称な形状を有する。また,射出面Lpbの中心軸線Lpba…と入射面Lpaの外周に対応する円50の中心軸線50a …と光軸AXとは一致している。そして,…実効露光領域ER(すなわち…有効投影領域)の中心軸線(重心軸線)は,射出面Lpbの中心軸線Lpba(すなわち光軸AX)からY方向に偏心している。言い換えると,射出面Lpbの一方の軸線方向(Y方向)についての長さと,他方の軸線方向(X方向)についての長さとが互いに異なっている。」(【0072】)と記載され,【図10】には,射出面Lpbの中心軸線Lpbaと光軸AXとが一致していること(同図にはLpbaそのものは図示されていないものの,同図からかかる趣旨を読み取ることができる。),射出面LpbのX方向の長さとY方向の長さが異なっていることが示されている。 そうすると,この第1変形例においては,条件2に関して,射出面LpbのX方向の長さとY方向の長さが異なっている形状が,回転非対称な形状の実施形態として示されていると認められる。 ウ補正発明に係る最終レンズへの前記イの射出面の形状の適用実施形態として示された前記イのとおりの射出面の形状は なっている形状が,回転非対称な形状の実施形態として示されていると認められる。 ウ補正発明に係る最終レンズへの前記イの射出面の形状の適用実施形態として示された前記イのとおりの射出面の形状は,境界レンズLbとウェハの間に介在させた液中平行平面板Lpの射出面についてのものであるところ(【0037】),発明の詳細な説明には,液中平行平面板Lpを省略した構成も可能であること,その場合には,最も像側(ウェハ側)に配置される屈折光学素子としての境界レンズLb(補正発明における最終レンズに対応する。)の入射面及び射出面に対して,例えば実施形態の第1変形例,第2変形例及び第3変形例などの構成を適用することにより,発明の効果を得ることができることが示されている(【0083】)。ただし,入射面の外周に対応する円の中心が光軸AXから偏心している【図9】の実施形態については,これを境界レンズLbの入射面に適用することはできないとされる(同上)。 4 補正発明が発明の詳細な説明に記載されているか否かについて 特許請求の範囲の記載が,特許法36条6項1号の規定に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 補正発明においては,突出部(射出面)が「光軸を中心とする」という条件を満たさない形状であることが特定されていることとなる。さらに,補正発明においては,突出部(射出面)の中心が光軸から る。 補正発明においては,突出部(射出面)が「光軸を中心とする」という条件を満たさない形状であることが特定されていることとなる。さらに,補正発明においては,突出部(射出面)の中心が光軸から投影領域の中心に向かって離れていることが特定されていることとなる。 したがって,補正発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるというためには,突出部(射出面)が「光軸を中心とする」という条件1を満たさない形状であること,及び,突出部(射出面)の中心が光軸から投影領域の中心に向かって離れていることが,発明の詳細な説明に記載されている必要がある。 前記3によれば,本願明細書の発明の詳細な説明に開示された,本願に係る発明における射出面の形状は,条件1に関しては,「射出面の中心軸線は上記2つの軸線方向のうちの一方の軸線方向に沿って光軸から偏心している」(【発明の効果】),あるいは,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが光軸から有効投影領域の中心に向かって光軸AXから離れている(【図9】の実施形態並びにその第2及び第3変形例),というものであり,条件2に関しては,「たとえば像面上において直交する2つの軸線方向に関してほぼ対称な形状を有」する(【発明の効果】),あるいは,射出面LpbのX方向の長さとY方向の長さが異なっている(【図9】の実施形態並びにその第1 ないし第3変形例),というものである。 そして,【発明の効果】には,条件1及び2の双方を満たさない形状が開示され,【発明を実施するための形態】には,境界レンズLbに適用可能なものとして,これと同様の形状が,第2及び第3変形例として開示されている一方,第1変形例として,条件2のみを満たさない形状が開示されている。 ところで,本願に係る発明は,射出面を光軸に関して回転対称な形状( これと同様の形状が,第2及び第3変形例として開示されている一方,第1変形例として,条件2のみを満たさない形状が開示されている。 ところで,本願に係る発明は,射出面を光軸に関して回転対称な形状(すなわち,光軸を中心とする円)にすると,投影光学系の像空間において液体が介在する範囲が大きくなるという課題を解決するために,射出面を光軸に関して回転非対称な形状にしたというものである。このような本願に係る発明の課題及びその解決手段の内容と,従来技術の問題点についての【0064】や【0065】の説明内容や【図8】の内容を踏まえて,【発明の効果】や【発明を実施するための形態】において上記のとおり開示された射出面の形状を見ると,当業者において,射出面の中心軸線を有効投影領域の中心に向かって光軸から離すとの形状のみを採用した場合であっても,それに伴い,射出面を光軸に関して回転対称とした場合に比べて射出面の大きさを小さくすることができ,上記の課題を解決することができることを当然に認識できるというべきである。 以上によれば,発明の詳細な説明には,発明の課題を解決するための手段としての射出面(すなわち,最終レンズの突出部)の形状として,条件2を満たさない形状並びに条件1及び2の双方を満たさない形状が開示されているだけでなく,条件1のみを満たさない形状,すなわち,射出面が「光軸を中心とする」ものではなく,射出面の中心が光軸から投影領域の中心に向かって離れているとの形状も,同様に開示されているということができる。 そうすると,発明の詳細な説明には,補正発明の突出部の構成要件に示された形状が開示されており,補正発明は,発明の詳細な説明に記載された発明であるということができる。したがって,これとは異なり,補正発明が発 明の詳細な説明に記載され の突出部の構成要件に示された形状が開示されており,補正発明は,発明の詳細な説明に記載された発明であるということができる。したがって,これとは異なり,補正発明が発 明の詳細な説明に記載された事項を超えた事項を含むとした審決の判断には誤りがある。かかる誤りは,審決の結論に影響するものであるから,審決は取消しを免れないといわざるを得ない。 5 被告の主張について被告は,発明の詳細な説明に記載された本願に係る発明の課題を解決するための手段は,射出面が,実効露光領域の形状に応じて,互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面の長さが異なるように形成されている構成であり,補正発明の「突出部」に係る記載には,このような発明の課題を解決するための手段が反映されていないと主張する及び)。 この点,実施形態の第3変形例においては,射出面LpbがX方向及びY方向に関してほぼ対称な形状であるにもかかわらず,射出面Lpbが光軸AXに関して1回回転対称であるとされている。仮に,射出面LpbがX方向及びY方向に関して対称であるとともに,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが有効投影領域の中心に向かって光軸AXから偏心していないとすると,射出面Lpbは光軸AXに関して1回回転対称ではなく2回回転対称となるはずであること,他方,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが光軸AXから偏心している限り,射出面Lpbの形状如何にかかわらず,射出面Lpbは光軸AXに関して1回回転対称となることは,幾何学的な考察から明らかである。 このことからすると,第3変形例において,射出面Lpbが光軸AXに関して1回回転対称な形状であるのは,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが有効投影領域の中心に向かって光軸AXからY方向に偏心しているからであり,互いに直交する2つの軸線方向( 射出面Lpbが光軸AXに関して1回回転対称な形状であるのは,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが有効投影領域の中心に向かって光軸AXからY方向に偏心しているからであり,互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面の長さが異なるからではない(なお,境界レンズLbへの適用は否定されているものの,【図9】の実施形態についても,同様である。)。 また,第2変形例においては,射出面LpbはY方向に関してほぼ対称で X方向に関して非対称な形状であるため,第3変形例とは異なり,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが光軸AXから偏心しているか否かを問わず,射出面Lpbは光軸AXに関して1回回転対称となるということができるものの,【図11】から,射出面Lpbの中心軸線Lpbaが有効投影領域の中心に向かって光軸AXから離れていることを読み取ることができるのは,前記3。 以上の考察によれば,第2及び第3変形例における射出面(すなわち突出部)の形状については,互いに直交する2つの軸線方向(XY方向)での射出面の長さが異なるように形成されていることだけではなく,射出面の中心軸線が有効投影領域の中心に向かって光軸からY方向に偏心していることも開示されているというべきであり,審決の判断はこの点を看過しているといわざるを得ない。そして,当業者において,発明の詳細な説明の内容から,射出面の中心軸線を有効投影領域の中心に向かって光軸から離すとの形状のみを採用した場合であっても,発明の課題を解決することができることを理 被告は,補正発明における突出部の構成は,射出面(突出部)が大きさを変えない構成も含み得るから,射出面の中心を偏心させるだけで射出面が小 しかしながら,本願に係る発明の効果は,射出面を光軸に関して回転非対称な形状にすることにより ,射出面(突出部)が大きさを変えない構成も含み得るから,射出面の中心を偏心させるだけで射出面が小 しかしながら,本願に係る発明の効果は,射出面を光軸に関して回転非対称な形状にすることにより,射出面を光軸に関して回転対称な形状とした場合に比べて射出面の大きさを小さくすることができるという点にとどまり,射出面が必然的にある特定の大きさや形状に縮小されることを発明の効果に含むものではなく,突出部の構成要件も,突出部の大きさや形状そのものを構成に含むものではない(突出部の具体的な大きさや形状の決定は,本願に係る発明の実施者に委ねられているというべきである。)。そうである以上,射出面の大きさや形状に変化がないものが補正発明に含まれるかどうかは, 本願に係る発明の上記効果を否定する根拠となるものではない。 被告は,発明の詳細な説明には,突出部を投影領域の中心と同じ側に偏心させることのみにより,発明の課題を解決することができ,射出面の大きさを従来技術と比べて小さくできるという効果が得られるという技術事項は記載されていない しかるに,本願に係る発明の課題の解決のための手段の記載内容に照らせば,射出面(突出部)の中心軸線を投影領域の中心と同じ側に偏心させた場合,射出面の大きさは,それに応じて小さくすることができると認識するこ また,被告は,第1変形例においては突出部の中心と投影光学系の光軸とが一致しているから,突出部の中心と投影光学系の光軸とが離れていることは任意の事項であると主張する(同上)。 しかしながら,第1変形例が射出面の中心軸線と投影光学系の光軸とが一致した形状を開示しているとしても,これとは並列的に挙げられた他の実施形態において,射出面の中心軸線が有効投影領域の中心に向かって光軸からY方向に偏心した形 射出面の中心軸線と投影光学系の光軸とが一致した形状を開示しているとしても,これとは並列的に挙げられた他の実施形態において,射出面の中心軸線が有効投影領域の中心に向かって光軸からY方向に偏心した形状が上記のとおり開示されている以上,発明の詳細な説明における記載としては十分というべきである。 なお,審決が発明の詳細な説明の記載から特定した射出面の構成のうち,「実効露光領域の形状に応じて」との部分は,実質的には射出面(突出部)の中心軸線の光軸からの偏心の点を含む趣旨と解する余地もある。しかしながら,仮にそうであるとしても,発明の詳細な説明にはかかる構成のみを採用した形状についても開示されているということができるのは前記に説示したとおりであり,これに照らすと,審決の判断には少なくともその結論において誤りがあるといわざるを得ない。 以上によれば,被告の前記主張は,いずれも採用することができない。 6 結論 以上のとおりであり,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官石井忠雄 裁判官田中正哉 裁判官神谷厚毅
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