平成16(ハ)6078 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年10月19日 東京簡易裁判所
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判決文本文5,339 文字)

平成16年10月19日判決言渡平成16年(ハ)第6078号損害賠償請求事件判決 主文 1 被告は,原告に対し,金68万4675円を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,金140万円を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は仮に執行することができる。 第2 事案の概要 1 平成13年12月23日午前3時45分ころ,東京都新宿区歌舞伎町a丁目b番c号A内において,原告は,被告から無断で原告所有のライターを取られたので,これを被告から取り戻そうと被告の胸ぐらを掴んだところ,酔っていた被告が,原告を押し倒して馬乗りになり,その顔面を手拳で数回殴打するなどの強烈な暴行を加え,同人を入院等の加療約4週間を要する鼻骨骨折,顔面挫創,右眼球打撲,左結膜下出血,頭部打撲の傷害を負わせたとして,被告に対し,被告の不法行為により生じた原告の次の各損害に対する損害賠償金と精神的慰謝料等合計140万円の支払を求めるものである。 2 原告主張の損害額金140万円内訳(1) 入通院治療費及び入院交通費の原告立替分合計金10万0951円平成13年12月23日分 6万9946円25日分 8392円29日分 7218円平成14年01月02日分 4100円05日分 7685円09日分 2820円28日分 790円(2) 入通院慰謝料合計金16万8999円入院分  1万6000円(1日)×9日間計金14万4000円通院分 8333円(1日)×3日間計金 2万 790円(2) 入通院慰謝料合計金16万8999円入院分  1万6000円(1日)×9日間計金14万4000円通院分 8333円(1日)×3日間計金 2万4999円(3) 休業損害額合計金24万0800円休業損害 1万2040円(1日)×20日間(4) 精神的慰謝料金29万9250円原告は,被告から受けた傷害事件としての一方的な暴力により,加療4週間にわたる入通院を余儀なくされたのみならず,顔面に暴行を受けたことによる精神的なダメージが大きく,将来目指していた音楽業界への進出が断たれ,DJとしての現役活動を閉ざされてしまったことへの精神的苦痛や,事件後2年6か月経過後の今日でも,恐怖観念等で無気力な状態が続いている等,今日までに受けた多大な精神的苦痛によるものである。 (5) 後遺症慰謝料金59万円被告から受けた顔面への手拳による強烈な暴力により,左上眼瞼と左頬部に傷痕が残ったことによる慰謝料である。これらの傷痕は,原告の顔面外貌に醜状を残すもので,個人が一生涯背負うものであり,顔,目,鼻,頭は致命的なところであり,酌量の余地はない。 3 請求の拡張及び請求の減縮原告は,本件第2回口頭弁論において,被告に対し,被告から暴行による受けた精神的ダメージによる慰謝料として金100万円を求め,請求の拡張をしたが,同期日において,簡易裁判所で審理を受けるべく精神的慰謝料金100万円を金29万9250円に,後遺症慰謝料金75万円を金59万円に各請求の減縮をし,合計金140万円の支払を求め,被告も減縮に同意したものである。なお,原告は,本件は,被告の一方的で理不尽な暴行によるものであり,原告に生じた全損害について, 75万円を金59万円に各請求の減縮をし,合計金140万円の支払を求め,被告も減縮に同意したものである。なお,原告は,本件は,被告の一方的で理不尽な暴行によるものであり,原告に生じた全損害について,原告の過失はまったくないと主張する。 4 原告の主張に対する被告の認否及び反論原告に2の(1),(2),(3)の各損害が生じたこと及び被告の過失の範囲内で支払義務のあることは認める。請求減縮後の金29万9250円の精神的慰謝料及び金75万円の後遺症慰謝料の請求はいずれも争う。本件では,原告は,当時Aに出向いて,DJやチケットの販売等の業務を行っていた者であるから,同店の従業員に準じた立場であり,被告が原告に無断で取り上げたライターを取り返す際,原告がいきなり被告の胸ぐらを掴むなどして本件を誘発した責任があるから,原告にも過失があった。過失割合は,原告1割,被告9割を主張する。 第3 当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実 1 傷害事件の発生日時,場所,傷害の態様は,第2の1の事案の概要記載のとおり 2 損害の程度第2の2(1)ないし(3)記載のとおり第4 争点 1 原告に第2の2(4)の精神的慰謝料は認められるか否か。 2 原告に第2の2(5)の後遺症慰謝料は認められるか否か。 3 本件原告に過失が認められるか否か。認められるとした場合過失割合はいくらか。 第5 当裁判所の判断 1 証拠(甲1号証ないし第17号証,原告本人,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 争点1についてア原告は,事件当時,BというクラブのDJなどをする会社の従業員であった。原告の同店での主な仕事は,音楽イベントの企画や運営をしたり,毎週週末の土,日には事件の場所となったAに出向き,午後5時から翌朝5時ころまでDJ(レ いうクラブのDJなどをする会社の従業員であった。原告の同店での主な仕事は,音楽イベントの企画や運営をしたり,毎週週末の土,日には事件の場所となったAに出向き,午後5時から翌朝5時ころまでDJ(レコード音楽をかけて客に踊らせる。)をしたり,同店で音楽イベントのチケット販売等の仕事に従事していた。 イ事件のあった平成13年12月23日は,午後8時ころから午前0時までの予定で,A店内の踊り場から離れたところで机を置き,1人で年末の大きな音楽イベントのチケットを販売をしていた。午前0時過ぎ,予定のチケット販売が終わったので,仕事上は帰ってもよかったが,Aの人から,そのまま座っていなさいと言われたので,午前5時に帰るつもりで,そのままその場所に座っていた。 当日,原告は午前0時過ぎにAの他のスタッフとカシスソーダという酒を1杯だけ飲んでいた。 ウ午前3時30分ころ,客と思われる女性が原告にライターを貸してくれといったので貸したが,その女性は「ありがとう。」と言って,ライターを原告の机の上に置き机から離れた。それで原告はライターを仕舞おうとしたところ,その時に横から手が出てきて原告のライタ-を一言の言葉もなく取り上げた人がいた。 それが被告であった(原告の供述及び甲第17号証)。 エ本件事件の発端が,原告に無断でライターを取り上げた被告から取り戻そうと,原告が両手で被告の胸ぐらを掴んだことにあるとはいえ,酔っていた被告が,いきなり原告を押し倒して馬乗りになり,無防備な原告の顔面を強烈な手拳で数回殴打するなどの一方的ですさまじい暴行を加えたことにより,同人が,鼻骨骨折による手術をはじめ,入通院等の加療約4週間を要する顔面挫創,右眼球打撲,左結膜下出血,頭部打撲の重傷を負ったものであり,顔面や眼球に対する暴行は,一歩間違えれば致命的な損害を与えかね が,鼻骨骨折による手術をはじめ,入通院等の加療約4週間を要する顔面挫創,右眼球打撲,左結膜下出血,頭部打撲の重傷を負ったものであり,顔面や眼球に対する暴行は,一歩間違えれば致命的な損害を与えかねないものであったこと,その受傷により原告は,一次的とはいえ意識が朦朧となるなど,筆舌に尽くしがたい恐怖感を味わったことを認めることができる。 オ特に,原告は上記の傷害により,DJとして年末に予定されていたビッグイベントに参加する資格も失ってしまったことはもとより,1か月以上のブランクにより音楽活動そのものへの参加の意欲を喪失してしまい,結局本件精神的ショックにより,音楽活動をやめる一因となったことも認めることができる。 カ以上の事実を総合的に考慮すれば,原告が被告から傷害を受けたことによる精神的ダメージは非常に重大なものであったことが認められるから本件入通院慰謝料(金16万8999円)以外にも,精神的慰謝料として,次の後遺症慰謝料の要素を加味し,本件の精神的慰謝料としては別途金25万円(合計41万8999円)と認めるのが相当である。 (2) 争点2についてア甲第12号証の1及び法廷での事実上の検証による原告の顔面に残る現状の傷痕によれば,被告から受けた顔面への手拳による強烈な暴力により,左上眼瞼に1ミリ×10ミリの,鼻骨左頬部に0.5ミリ×10ミリの各傷痕が残ったことが認めることができる。原告は,上記傷痕は,原告の外貌に醜状を残すもので,同人が一生涯背負うものであり,被告からの受傷により,今後DJ等の音楽活動参加の道も閉ざされてしまったものであり,本件後遺症による精神的苦痛は絶大なものであると主張する。 イたしかに本件受傷箇所が顔,目,鼻,頭であった点で,一般的に音楽を志す者にとって,致命的になり得る場所であったことは認められるが,他方 ,本件後遺症による精神的苦痛は絶大なものであると主張する。 イたしかに本件受傷箇所が顔,目,鼻,頭であった点で,一般的に音楽を志す者にとって,致命的になり得る場所であったことは認められるが,他方で,DJという職業が,俳優や歌手と異なり,顔に多少の傷痕が残ることで,その音楽活動を決定的に断念させる業種であると認めると判断することは困難であり,本件は,原告にとって傷痕に対する相当精神的なダメージが残った点は否定し得ないが,本件傷痕が,後遺症慰謝料を認めるに足りる証拠として十分であると判断することはできない。本件では後遺症慰謝料としての慰謝の評価は,前記精神的慰謝料を相当額程度増額する範囲内で認めることが相当であると判断した。 (3) 争点3についてア本件事件の発端が,原告所有のライターを,酔っていたとはいえ,被告が原告に無断で取り上げ,ありがとうの一言も言わなかったことに対して憤慨した原告が,ライターを取り戻そうと両手で被告の胸ぐらを掴み, 「ありがとうの一言もないのかよ。」と言ったことに対して,酔余も手伝って瞬間的に逆上した被告が,前記のとおり,原告を押し倒し,一方的に原告の顔面を手拳で強烈に数回殴打したという事案であるが,原告の証言によれば,原告はA所属の社員ではなかったものの,原告の所属するBとAとが提携して,毎週土・日は,原告が同店でDJとして,あるいは,同店内で音楽イベントのチケットを販売する業務に従事していたことを認めることができるところ,同店で仕事をしているときは,原告は基本的に同店の支配人等の監督下にあり,原告としては,同店の社員に準じて万一,本件のような客とのトラブルが発生した場合には,直ちに同店の他のスタッフや支配人等に連絡し,トラブルが拡大しないよう未然に事故防止の態勢をとるべき注意義務があったと言わざるをえ 店の社員に準じて万一,本件のような客とのトラブルが発生した場合には,直ちに同店の他のスタッフや支配人等に連絡し,トラブルが拡大しないよう未然に事故防止の態勢をとるべき注意義務があったと言わざるをえない。 イ本件事件のあった日は原告は同店でDJの仕事ではなく,年末のイベントのチケット販売の業務に午前0時くらいまで従事し,本来の仕事は終わっていたとも評価できるが,スタッフの一員として店内にいる以上,不測の事態に巻き込まれることがないよう自重した行動をとるべきであったことに変わりはなく,原告が他の一般客とは明らかに異なった立場であったことは明らかであるから,午前3時30分ころは,店内の音楽の大音響のため,互いの声が聞こえにくくなっていたので,意思の疎通が図りにくい等の事情があったとはいえ,酔客である被告が,原告のライターを無断で取り上げて礼の言葉も発しなかったからといって,原告が直ちに被告の胸ぐらを掴む行動に出たことや,午前0時過ぎに酒であるカシスソーダを1杯とはいえ,他のスタッフと飲んでいたことなどを考慮すると,原告にも前記アの注意義務を怠った過失があったと言わざるを得ない。本件での原告の過失割合は,本件の結果の重大性も考慮して1割であることが相当であると判断した。 2 以上の事実をもとに判断すると,前記過失割合によれば,本件で認定した原告の損害総額金76万0750円のうち,原告の過失1割分の金7万6075円を控除した金68万4675円が,被告の責めに帰すべき部分となる。したがって,原告の請求は,主文第1項に記載の限度で理由があるが,その余の請求は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第3室裁判官岡崎昌吾 主文 理由 よって,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第3室裁判官岡崎昌吾

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