令和2年6月11日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第36424号職務発明対価等請求事件口頭弁論終結日令和2年1月30日判決 原告 A同訴訟代理人弁護士岩永利彦 被告株式会社セガ 同訴訟代理人弁護士川田篤主文 1 被告は,原告に対し,金17万0625円及びこれに対する平成30年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを200分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,4000万円及びこれに対する平成30年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は,被告の従業員であったところ,被告に在職中に,被告の業務範囲に 属し,かつ,原告の職務に属する競争ゲームに関する発明をしたと主張する(こ の発明については,原告は,① 被告特許となっているもの(競争ゲームのベット制御方法に関するもの)に関しては,共同発明者4人のうちの1人として発明し,② 被告特許となっていないもの(競争ゲームに関するノウハウ)に関しては,単独で,発明したと主張する。)。 本件は,原告が,その特許を受ける権利(①については4分の1の持分,② については全部)を被告に承継させたとして,被告に対し,特許法35条(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下同じ。)3項に基づき,上記①の発明に係る特許を受ける権利を承継した対価885 については全部)を被告に承継させたとして,被告に対し,特許法35条(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下同じ。)3項に基づき,上記①の発明に係る特許を受ける権利を承継した対価885万0466円,及び上記②の発明(ノウハウ)に係る特許を受ける権利を承継した対価36億0643万4391円の一部である対価3114万9534円の合計4000万円 及びこれに対する平成30年12月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同様)。)(1) 当事者 ア原告は,平成7年4月1日に被告に入社し,平成13年12月31日に被告を退社した。 イ被告は,電子応用機械器具関連のソフトウェア,ハードウェア等の製造販売等を目的とする株式会社であり,平成27年4月1日,「株式会社セガ」から「株式会社セガゲームス」に,令和2年4月1日,「株式会社セガゲー ムス」から現商号に,それぞれ商号変更した。 (2) 本件特許被告は,発明の名称を「競争ゲームのベット制御方法」とする特許権(特許第3864866号。請求項の数は7である。以下,この特許を「本件特許」という。)を有している。被告は,本件特許につき,平成14年7月12 日に特許出願し,平成18年10月13日にその設定登録を受けた(甲1)。 本件特許に係る特許請求の範囲の記載は,平成18年8月7日に提出された手続補正書による補正を経て,後記(3)のとおりの記載となるに至った(乙6)。 (3) 本件各発明本件特許の特許請求の範囲請求項1ないし7の記載は,別紙特許公報の該 年8月7日に提出された手続補正書による補正を経て,後記(3)のとおりの記載となるに至った(乙6)。 (3) 本件各発明本件特許の特許請求の範囲請求項1ないし7の記載は,別紙特許公報の該 当部分に記載されたとおりである(そのうち,請求項1の記載を「本件特許請求の範囲1-1」,請求項2の記載を「本件特許請求の範囲1-2」といい,順次,その発明を「本件発明1-1」,「本件発明1-2」といい,これらを併せて「本件各発明」と総称する。また,その明細書(図面を含む。)を「本件明細書」といい,その該当部分の記載を段落【0001】などと表すこと とする。)。 (4) 構成要件の分説本件発明1-1及び本件発明1-2を構成要件に分説すると次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件1-1A」などのようにいう。)。 ア本件発明1-11-1A 複数の走行物が競争するレースに対してプレイヤがベットし,レース結果に基づいてプレイヤに配当する競争ゲームを実行する制御手段によるベット制御方法において,1-1B 前記制御手段が,前記レースの複数の着順可能性から構成され る複数の予想情報を設定するステップと,1-1C 前記予想情報をプレイヤに提示するステップと,1-1D プレイヤの指定により前記複数の予想情報の中から所望の予想情報を決定するステップと,1-1E 決定された前記予想情報を構成する複数の着順可能性のすべて に対してベットする単一のベットボタンを表示するステップと, 1-1F プレイヤによる前記ベットボタンへの操作を検出するステップと,1-1G 前記ベットボタンへの操作を検出した場合には,前記複数の着順可能性のすべてにベットするステップと1-1H を実行す 1F プレイヤによる前記ベットボタンへの操作を検出するステップと,1-1G 前記ベットボタンへの操作を検出した場合には,前記複数の着順可能性のすべてにベットするステップと1-1H を実行することを特徴とする競争ゲームのベット制御方法。 イ本件発明1-21-2A 複数の走行物が競争するレースに対してプレイヤがベットし,レース結果に基づいてプレイヤに配当する競争ゲームを実行する制御手段によるベット制御方法において,1-2B 前記制御手段が,レースの複数の着順可能性に対するオッズを それぞれ設定するステップと,1-2C オッズの所望範囲を指定する複数のオッズ指定ボタンをプレイヤに提示するステップと,1-2D プレイヤによる前記複数のオッズ指定ボタンのいずれかへの操作を検出することにより,オッズの所望範囲を決定するステップ と,1-2E 決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性をオッズと共にプレイヤに提示するステップと,1-2F プレイヤに提示した複数の着順可能性のすべてに対してベットする単一のベットボタンを表示するステップと, 1-2G プレイヤによる前記ベットボタンへの操作を検出するステップと,1-2H 前記ベットボタンへの操作を検出した場合には,前記複数の着順可能性のすべてにベットするステップと1-2I を実行することを特徴とする競争ゲームのベット制御方法。 (5) 本件各発明に係る特許を受ける権利の譲渡 本件各発明は,原告を含む4名で発明したものであるところ,その性質上被告の業務に属し,かつ,被告における上記4名の職務に属する職務発明である。被告は,本件特許の特許出願日までに,上記4名から,本件各発明に係る特許を受ける権利の譲渡を受けた。 ところ,その性質上被告の業務に属し,かつ,被告における上記4名の職務に属する職務発明である。被告は,本件特許の特許出願日までに,上記4名から,本件各発明に係る特許を受ける権利の譲渡を受けた。 (6) 被告各製品 被告は,次のアないしウのゲームセンター用競馬メダルゲーム及び競艇メダルゲーム(「スターホース」などの部分はカタカナで表記する。なお,スターボートのみが競艇メダルゲームである。)を製造販売した(以下,下記アないしウ記載の製品を併せて「被告各製品」と総称する。また,下記ア記載の製品を併せて「被告製品1」と,下記イ記載の製品を併せて「被告製品2」 と,下記ウ記載の製品を併せて「被告製品3」とそれぞれ総称する。)。なお,各製品の末尾に記載した年は,その製品を発売した年である(甲6,7,10)。 アスターホース2001(平成13年)スターホース2002(平成14年) スターホースプログレス(平成15年)スターホースプログレスリターンズ(平成21年)イスターホース2FOURTH(平成20年)スターホース2FIFTH(平成21年)スターホース2FINAL(平成22年) スターホース3SeasonⅠ(平成23年)スターホース3SeasonⅡ(平成25年)スターホース3SeasonⅢ(平成26年)スターホース3SeasonⅣ(平成27年)スターホース3SeasonⅤ(平成28年) スターホース3SeasonⅥ(平成29年) スターホース3SeasonⅦ(平成30年)ウスターホース(平成12年)スターホース2(平成17年)スターホース2SECOND(平成18年)スターホース2THIRD(平成19年) スターボート(7) 被告による本件発明1 スターホース(平成12年)スターホース2(平成17年)スターホース2SECOND(平成18年)スターホース2THIRD(平成19年) スターボート(7) 被告による本件発明1-1の実施被告製品1のうちスターホースプログレスリターンズは,本件発明1-1の技術的範囲に属しており,被告は,上記の製造販売により,本件発明1-1を実施していた。 (8) 被告による消滅時効の援用被告は,令和元年6月19日の本訴訟の第3回弁論準備手続期日において,同月11日付け被告第1準備書面を陳述し,後記第3の6【被告の主張】記載の消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 2 争点 (1) 本件発明1-1に係る対価請求権の有無(被告製品1による本件発明1-1の実施の有無)(争点1)(2) 本件発明1-2に係る対価請求権の有無(被告製品2による本件発明1-2の実施の有無)(争点2)(3) 本件ノウハウに係る対価請求権の有無(争点3) (4) 本件各発明に係る相当の対価の額(争点4)(5) 本件ノウハウに係る相当の対価の額(争点5)(6) 本件発明1-1の対価請求権に係る消滅時効の成否(争点6)第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1(本件発明1-1に係る対価請求権の有無(被告製品1による本件発 明1-1の実施の有無))について 【原告の主張】(1) 被告は,以下のとおり,被告製品1において,本件発明1-1を実施していた。 ア本件発明1-1は,レース結果を予想する競馬ゲームにおいて,複数の仮想的な予想新聞の中から好みの予想新聞を一つ選び,その予想新聞の情 報による着順可能性のある出走馬等のすべてにベットできるようにするものであり,「新聞ベット」と呼ばれる方法の発明である 複数の仮想的な予想新聞の中から好みの予想新聞を一つ選び,その予想新聞の情 報による着順可能性のある出走馬等のすべてにベットできるようにするものであり,「新聞ベット」と呼ばれる方法の発明である。スターホース2001については,被告の公式ウェブサイトにおいて新聞ベットが実施されていることが宣伝されており,その説明は,被告が本件発明1-1を実施していたことを認めているスターホースプログレスリターンズと同様(予 想新聞を選び,その予想新聞でよければ決定し,オールベットボタンでベットする。)であるから,スターホース2001が本件発明1-1を実施していたことが強く推認される。 イスターホース2002とスターホースプログレスについては,いずれも被告の公式ウェブサイトにおいて新聞ベットが実施されていることが表明 され,その説明がされていること,これらの機種がスターホース2001とスターホースプログレスリターンズの間にリリースされたものであり,スターホース2001とスターホースプログレスリターンズにおいて,本件発明1-1が実施されていることからすれば,スターホース2002とスターホースプログレスにおいても本件発明1-1が実施されていること が強く推認される。 (2) そうすると,被告は,被告製品1において本件発明1-1を実施し,本件発明1-1につき独占の利益を得ているから,原告は,被告に対し,本件発明1-1に係る対価請求権を有している。 【被告の主張】 (1) 被告製品1のうち,スターホースプログレスリターンズにおいて本件発明 1-1を実施していたことは認める。 (2) スターホースプログレスリターンズ以外の被告製品1において,本件発明1-1を実施していたかは知らない。原告はこれらの製品で本件発明1-1 件発明 1-1を実施していたことは認める。 (2) スターホースプログレスリターンズ以外の被告製品1において,本件発明1-1を実施していたかは知らない。原告はこれらの製品で本件発明1-1が実施されていたことの具体的主張をしていない。 2 争点2(本件発明1-2に係る対価請求権の有無(被告製品2による本件発 明1-2の実施の有無))について【原告の主張】(1) 被告は,次のとおり,被告製品2において,本件発明1-2を実施しているから,本件発明1-2につき独占の利益を得ており,原告は,被告に対し,本件発明1-2に係る対価請求権を有している。 ア方法の発明であっても,あるステップとあるステップの前後さえ変わらなければ,その間に他のステップが介在しても,構成要件を充足するといえる。本件明細書においても,他のステップの介在を排除するような記載,又は排除を示唆するような記載は見当たらない。 イスターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALをみると, そこで実施されるステップは,構成要件1-2A,1-2B,1-2C,1-2D,1-2F,1-2G,1-2H,1-2Eに相当するステップの順番であるが,この構成要件1-2Eのステップの後にキャンセルボタンを押す操作をすることで,その後,構成要件1-2F,1-2G,1-2H,1-2Iの順にステップが進むことになる。そうすると,構成要件 1-2Dと1-2Eの間に構成要件1-2F,1-2G,1-2Hのステップが,構成要件1-2Eと1-2Fの間にキャンセルボタンを押すステップが介在することになるが,全体としては,本件発明1-2のとおりの順番でステップが進んでいるから,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALは構成要件1-2E及び1-2Fない すステップが介在することになるが,全体としては,本件発明1-2のとおりの順番でステップが進んでいるから,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALは構成要件1-2E及び1-2Fないし1-2H を充足している。 したがって,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALにおいて,本件発明1-2を実施した(文言実施)といえる。 ウスターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINAL以外の被告製品2については,①被告が,本件発明1-2の機能である「オッズ指定ベット」を搭載していると述べていること(スターホース2FOURT H),②被告のウェブサイトで,オッズフィルターが実施されていることを表明し,その説明を行っていること(スターホース3SeasonⅠ),③公式サイトの記載からすれば,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALと同様の機能が存在していたことが強く推認されること(スターホース2FIFTH,スターホース3SeasonⅡないしⅥ) から,これらの製品において,本件発明1-2を実施した(文言実施)といえる。 (2) 被告製品2が,本件発明1-2の構成要件1-2E及び構成要件1-2F以下で構成要件1-2Eを引用する部分(相違部分)を有していないとしても,被告製品2は,次のとおり,均等の第1要件ないし第5要件を満たし, 本件発明1-2と均等なものとして,本件発明1-2を実施していた(均等実施)といえ,上記の場合であっても,被告は,本件発明1-2を実施し,本件発明1-2につき独占の利益を得ているといえるから,原告は,被告に対し,本件発明1-2に係る対価請求権を有している。 ア第1要件 本件発明1-2の本質的部分は,自らの希望するオッズの上限下限を決 2につき独占の利益を得ているといえるから,原告は,被告に対し,本件発明1-2に係る対価請求権を有している。 ア第1要件 本件発明1-2の本質的部分は,自らの希望するオッズの上限下限を決め,その範囲内で着順可能性のある出走馬等のすべてにベットできるようにした点にあり,相違部分は,プレイヤの確認のための便宜上存在するものであって,これがなければオッズフィルターが機能しないものではないから,本件発明1-2の本質的部分ではない。 イ第2要件 本件発明1-2の目的は,初心者であっても適切なベットを短時間で行うことができることである。そして,本件発明1-2の作用効果は,希望するオッズの上限下限を決め,その範囲内で着順可能性のある出走馬等のすべてにベットできるようにしたということである。相違部分を欠いたとしても,このような作用効果は得られるし,そのことにより適切なベット を短時間で行うことができる。したがって,第2要件を充足する。 ウ第3要件本件発明1-2から,相違部分を取り除くことは,当業者であれば容易に想到できたものである。 エ第4要件 被告の主張は争う。本件発明1-2から構成要件1-2Eを除外したものは,公知技術から容易に推考できたものではない。 オ第5要件被告の主張は争う。本件発明1-2から構成要件1-2Eを除外した方法は,特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたもの ではない。 【被告の主張】(1) スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALについてスターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALで実施されるステップは,構成要件1-2E及び1-2Fないし1-2Hを備えていな い。すなわち,スターホース3SeasonⅦ及 ついてスターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALで実施されるステップは,構成要件1-2E及び1-2Fないし1-2Hを備えていな い。すなわち,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALには「オッズフィルター」というボタンがあり,これは構成要件1-2C及び1-2Dにおける「オッズの所望範囲を指定する複数のオッズ指定ボタン」に相当するところ,このボタンでオッズを一定の範囲に限定する操作をしても,オッズフィルター後の画面において,プレイヤには「決定されたオ ッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性」は提示されず,複数の着順可 能性のそれぞれに対応する「オッズ」も提示されないから,構成要件1-2Eのステップを備えていない。そして,「複数の着順可能性」がプレイヤに提示されないから,構成要件1-2Fの「プレイヤに提示した複数の着順可能性のすべてに対してベットする単一のベットボタン」を備えず,さらに,構成要件1-2Fの「ベットボタン」を備えないことから,これを前提とする 構成要件1-2G及び1-2Hのステップも備えていない。 原告は,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALにおいて,「キャンセル」を経て,全く同じステップを繰り返せば,本件発明1-2のステップを取り出すことができるから,本件発明1-2を実施していたと主張する。しかし,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2 FINALは,本件発明1-2のステップとはステップ自体が異なり,単なるステップの順序の変更にとどまらない。すなわち,原告の主張する「キャンセル」はベットする範囲を変更するときのみ意味があり,全く同じベットを繰り返すのであれば,「キャンセル」をする必要がないから,スターホース3SeasonⅦ及びス い。すなわち,原告の主張する「キャンセル」はベットする範囲を変更するときのみ意味があり,全く同じベットを繰り返すのであれば,「キャンセル」をする必要がないから,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALは,そのような無意味なス テップをおよそ予定していない。そして,全く同じベットを繰り返すようなステップは,「プレイヤにとって簡単で素早くベットすることができる競争ゲームのベット制御方法を提供する」(本件明細書段落【0007】)ことを目的とする本件発明1-2が予定しているところでもない。 (2) スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINAL以外の被 告製品2についてスターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINAL以外の被告製品2については,原告においてそれらの製品で本件発明1-2が実施されていたことの具体的主張をしておらず,本件発明1-2を実施していたかは知らない。スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALに おいて,本件発明1-2の「オッズの所望範囲」に対応する「複数の着順可 能性をオッズと共にプレイヤに提示」する点を備えていないことからすれば,スターホース2FIFTH及びスターホース3SeasonⅠないしⅥにおいても,この点を備えていないことが強く推認される。 (3) 被告製品2は,次のとおり,本件発明1-2と均等なものではない。 ア第1要件 本件発明1-2は,本件明細書の段落【0089】記載の「例えば,『~10』のボタンにタッチした場合,その範囲のオッズの組み合わせが全て表示するようにしてもよい。」との選択的な構成を,あえて特許請求の範囲に記載したものであること,当該構成は,出願経過において,本件特許1に係る公開特許公報の特許請求の範囲の請求項 の組み合わせが全て表示するようにしてもよい。」との選択的な構成を,あえて特許請求の範囲に記載したものであること,当該構成は,出願経過において,本件特許1に係る公開特許公報の特許請求の範囲の請求項1,3,4,5及び7ない し10につき進歩性を欠くとの拒絶理由通知に対応して,手続補正により請求項4を変更し,請求項2として加えられたものであることからすれば,構成要件1-Eの「決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性をオッズと共にプレイヤに提示するステップ」は,本件発明1-2の本質的部分といえる。他方で,原告が本件発明1-2の本質的部分である と主張する「自らの希望するオッズの上限下限を決め,その範囲内で着順可能性のある出走馬等のすべてにベットできるようにした」という構成は,上記拒絶理由において進歩性を欠くとされた補正前の請求項4の「プレイヤの指定により所望のオッズを決定するステップと,プレイヤが指定した前記所望のオッズの複数の着順可能性に対してまとめてベットするステッ プとを有すること」と何ら異ならないものであり,公知技術も同然の構成であるから,本件発明1-2の本質的部分であるとはいえない。 イ第2要件原告が本件発明1-2と均等なものであると主張する方法は,「オッズの所望範囲」に対応する「複数の着順可能性をオッズと共にプレイヤに提示」 するステップを省略するものであるところ,上記アのとおり,同ステップ は本件発明1-2の本質的部分であり,原告主張の方法はこれを欠くものであるから,本件発明1-2と同一の作用効果を果たすものとは認められない。なお,原告が主張する方法は,上記ステップを単に省略したものであり,代替する構成を欠いていることから,そもそも「置換」であるのかについても疑問がある。 同一の作用効果を果たすものとは認められない。なお,原告が主張する方法は,上記ステップを単に省略したものであり,代替する構成を欠いていることから,そもそも「置換」であるのかについても疑問がある。 ウ第4要件本件発明1-2から構成要件1-2Eを除外した方法は,本件特許1に係る出願経過において,拒絶理由通知により進歩性を欠くとされた補正前の請求項4とほぼ同一であるから,公知技術から容易に推考することができるものである。 エ第5要件本件発明1-2から構成要件1-2Eを除外した方法が,本件発明1-2の技術的範囲から意識的に除外されたことについては,本件特許1の出願経過において,当該方法が公知発明から容易に発明することができたとの拒絶理由通知を受けて,「オッズの所望範囲」に対応する「複数の着順可 能性をオッズと共にプレイヤに提示」する点をその技術的特徴として追加する手続補正をしていることから明らかである。 3 争点3(本件ノウハウに係る対価請求権の有無)について【原告の主張】(1) 本件ノウハウの趣旨は,次のとおりであり,被告は,被告各製品において 本件ノウハウを実施していた。本件ノウハウが存在することは,証拠(甲19,22)から明らかである。 「競争体を取得して持ち馬等にした後,遊技価値に基づいた当該持ち馬等の活力値を決定する活力値決定手段と,前記持ち馬等及び持ち馬等以外で競争体のオッズに関連する所定の能力 値を有する競争体を競争に参加させるようにするレース出走手段と, 競争に参加する競争体のオッズを決定するオッズ決定手段と,前記競争における前記競争体の着順を予想して遊技価値を賭けるベット手段と,前記競争体に競争を行わせるレース実行手段と,前記競争における前記競争体の 競争体のオッズを決定するオッズ決定手段と,前記競争における前記競争体の着順を予想して遊技価値を賭けるベット手段と,前記競争体に競争を行わせるレース実行手段と,前記競争における前記競争体の着順と前記オッズに基づいて遊技価値の 払い戻しを行う払い戻し手段と,からなる競争ゲームにおいて,前記オッズ決定手段は,少なくとも前記持ち馬等の前記活力値及び持ち馬等以外の競争体の前記能力値に基づいてオッズを決定する,ことを特徴とする完全確率抽選の競争ゲーム。」(2) 本件ノウハウは,競馬のレース結果を予想するゲーム(以下「予想ゲーム」 という。)に,プレイヤが馬主として競走馬を生産して所有し,調教した後,レースに出走させ,その競争成績によって賞金(メダル)を得るゲーム(以下,このような競馬レースに出場する競走馬を育成するゲームを「馬主ゲーム」という。)を加えたゲームにおいて,完全確率抽選方式の下で,公平性を担保したまま,現実の競馬同様の醍醐味・臨場感という効果を生じさせるこ とを課題として,この効果を生じさせるため,馬主ゲームで育成された競走馬ごとのレースの期待値の不公平さを解消したものである。 具体的には,「活力値」という,レース出走時の出走登録料をメダルで支払うことにより増加し,レース結果として賞金を得たときにも増加し,馬の生産,調教,餌やりなどの育成過程によっても増加する指標を導入し,この活 力値のうち,レースで消費した価値(活力値)と,賞金等でもらえる価値(活力値)の期待値を同じくすることで,馬ごとの不公平さをなくした。 【被告の主張】(1) 20年前に,本件ノウハウが存在していたのか,原告が主張するような内容であったのか,全く立証されていない。本件ノウハウが原告から被告へ譲 渡されたとの事実 くした。 【被告の主張】(1) 20年前に,本件ノウハウが存在していたのか,原告が主張するような内容であったのか,全く立証されていない。本件ノウハウが原告から被告へ譲 渡されたとの事実もない。 仮に,本件ノウハウが,原告が主張するようなものであるとしても,投入されるメダル数と払い戻されるメダル数とを均衡させる人為的な取決めにすぎないから,発明とはいえない。本件ノウハウの趣旨程度のことであれば,育成ゲームにおける当然の前提でしかなく,一般的かつ抽象的な考え方であって,被告が排他的に使用することができる余地はない。そして,本件ノウ ハウについては届出もなく,本件ノウハウが原告から被告に譲渡された事実もない。 (2) そもそも,被告におけるゲーム開発は,企画関係の担当者が中心となりゲームの仕様を取りまとめ,プログラミング関係のほか,デザイン関係,機械関係,電気関係などの担当者に指示をし,進行状況を見ながら,必要に応じ て担当者を増減するなどして進めていく。原告は,数人いたプログラマーの一人としてスターホース(初代)の開発に関与したが,仮に,原告が,被告から,競争ゲームにおいて賭けられるメダルと配当されるメダルとを均衡させ,育成ゲームの育成に投じられるメダルと優勝したときに得られるメダルとを均衡させるように指示を受けて,それを具体化するプログラムの作成を 担当していたとしても,それは職務著作にすぎない。 (3) また,スターホース(初代)を開発していた平成11年12月には,訴外コナミ株式会社から,「GILEADINGSIRE」という「馬券ゲーム」及び「馬主ゲーム」を組み合わせた育成ゲームの要素を取り入れた競馬ゲームが販売されていたところ,同ゲームの紹介記事の記載からすれば,育 成ゲームにおい DINGSIRE」という「馬券ゲーム」及び「馬主ゲーム」を組み合わせた育成ゲームの要素を取り入れた競馬ゲームが販売されていたところ,同ゲームの紹介記事の記載からすれば,育 成ゲームにおいて「持ち馬」を「調教」すれば「能力」が向上することが分かり(本件ノウハウの活力値),向上した「持ち馬」の「能力」を馬券レースのオッズに反映させることは自明である(本件ノウハウの能力値)。そして,「調教」に必要としたメダルと「賞金」としてのメダルとを均衡させる必要があることも自明であるから,このゲームには本件ノウハウの趣旨の基本的 な要素が開示されており,本件ノウハウの趣旨程度の考え方は,原告による 独創的なものではなく,上記ゲームとの関係においては進歩性がないし,営業秘密に当たるほどのものでもない。 4 争点4(本件各発明に係る相当の対価の額)について【原告の主張】(1) 被告各製品の売上は,別紙「製品別売上高一覧」の各「推定売上」欄記載 のとおりである。 (2) 被告が,本件特許によりゲームセンター用競馬メダルゲームの市場を独占した,又は独占できたことによる超過売上げの割合が30%を下らないこと,仮想実施料率が5%を下らないこと,本件特許に係る被告の寄与度は50%程度であることを考慮すると,相当の対価の額は次の式で計算できる。 売上高×超過売上げの割合(30%)×仮想実施料率(5%)×(1-被告の寄与度(50%))×発明の寄与度÷発明者数=売上高×0.75%×発明の寄与度÷発明者数(3) 本件発明1-1を実施する被告製品1の売上高の合計は,117億1850万円であり,このうち本件発明1-1の寄与度は10%である。 (4) 本件発明1-2を実施する被告製品2の売上高の合計は354億8398万72 る被告製品1の売上高の合計は,117億1850万円であり,このうち本件発明1-1の寄与度は10%である。 (4) 本件発明1-2を実施する被告製品2の売上高の合計は354億8398万7200円であり,このうち本件発明1-2の寄与度は10%である。 (5) したがって,本件特許につき,原告に支払われるべき相当の対価は,次のとおり,885万0466円と計算される。 (117億1850万円+354億8398万7200円)×0.0075 ×0.1÷4=885万0466円【被告の主張】上記は争う。 スターホースプログレスリターンズについては,販売総額は約●(省略)●であるが,本件発明1-1に関連する「新聞ベット」が,被告の製品において 10年近く採用されていないことを考えると,本件発明1-1を実施する必要 性はなく,その実施に伴い被告が得られた利益は,被告が本来的に有する通常実施権の範囲にとどまり,独占の利益はないから,本件発明1-1に基づく相当の対価支払請求権は発生していないというべきである。仮に,独占の利益がわずかにでも認められ,これが販売総額の多くとも1%に相当するとしても,被告の貢献度は99%を上回る上,原告は4人の発明者の一人にすぎないから, スターホースプログレスリターンズの販売に関して,原告が受ける本件発明1-1に係る相当の対価の金額は,●(省略)●以下にとどまる。 5 争点5(本件ノウハウに係る相当の対価の額)について【原告の主張】被告が,本件ノウハウによりゲームセンター用競馬メダルゲームの市場を独 占した,又は独占できたことによる超過売上げの割合が50%を下らないこと,仮想実施料率が10%を下らないこと,本件ノウハウに係る被告の寄与度は10%程度であることを考慮すると,相当 市場を独 占した,又は独占できたことによる超過売上げの割合が50%を下らないこと,仮想実施料率が10%を下らないこと,本件ノウハウに係る被告の寄与度は10%程度であることを考慮すると,相当の対価の額は次の式で計算できる。 売上高×超過売上げの割合(50%)×仮想実施料率(10%)×(1-被告の寄与度(10%))×ノウハウの寄与度 =売上高×4.5%×ノウハウの寄与度被告製品1の売上高の合計は,117億1850万円であり,このうち本件ノウハウの寄与度は90%である。したがって,被告製品1の売上高のうち,本件ノウハウが寄与する売上高は,105億4665万円である。 被告製品2の売上高の合計は,354億8398万7200円であり,この うち本件ノウハウの寄与度は90%である。したがって,被告製品2の売上高のうち,本件ノウハウが寄与する売上高は,319億3558万8480円である。 被告製品3の売上高の合計は,376億6074万8000円であり,このうち本件ノウハウの寄与度は100%である。 以上によれば,本件ノウハウにつき,原告に支払われるべき相当の対価は, (105億4665万円+319億3558万8480円+376億6074万8000円)×0.045=36億0643万4391円である。 【被告の主張】上記は争う。 6 争点6(本件発明1-1の対価請求権に係る消滅時効の成否)について【被告の主張】仮に,被告製品1において本件発明1-1を実施していたとしても,本件発明1-1と関連する,いわゆる「新聞ベット」を採用していた機種が販売された年度は①平成12年度から17年度,並びに②平成21年度及び平成22年 度である。 被告においては,「実績補償細則」に基づき実績補償金が ,いわゆる「新聞ベット」を採用していた機種が販売された年度は①平成12年度から17年度,並びに②平成21年度及び平成22年 度である。 被告においては,「実績補償細則」に基づき実績補償金が支払われていたところ,平成12年度から平成17年度までの各年度の実績補償金の支給時期は,次のとおりである。 平成12年度平成14年5月13日 平成13年度平成15年5月20日平成14年度平成16年3月31日平成15年度平成16年11月1日平成16年度平成17年10月12日平成17年度平成19年2月9日 したがって,②の期間に販売されたスターホースプログレスリターンズはともかく,「新聞ベット」を採用していた①の期間の機種,すなわち,被告製品1のうち,スターホースプログレスリターンズを除いた機種の製造,販売に係る相当の対価支払請求権については,平成29年2月9日を経過するまでに,上記各支給日のいずれからも10年を経過しており,消滅時効が完成しているの で,これを援用する。 【原告の主張】上記は争う。 被告の主張する実績補償金の支給日には疑義がある。 また,原告が,被告に対し,本件各発明の相当対価の支払等に関する問合せをしたところ,被告の知的財産部の担当者から原告に送付された平成20年1 1月25日付けのメールには,本件各発明を含む原告が発明者である発明につき,発明補償金がある旨の記載がある。これは本件各発明の相当対価のうち少なくとも一部を支払う旨の内容であるから,相当対価の支払債務を承認したものであり,時効中断の効果が生じ,消滅時効は完成していないか,又は時効期間経過後の債務の承認により,被告は時効を援用する権利を喪失したものであ る。 第4 当裁判所の判断 1 認定 したものであり,時効中断の効果が生じ,消滅時効は完成していないか,又は時効期間経過後の債務の承認により,被告は時効を援用する権利を喪失したものであ る。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実(1) 本件明細書には,発明の詳細な説明として,次の記載がある(甲1)。 ア発明の属する技術分野 【0001】本発明は,複数の走行体が競争する競争ゲームのベット制御方法に関する。 イ従来の技術【0002】ゲームセンタ等に設置される大型ゲーム装置の中には,ミニチュアの競馬場を中央に設け,このコースを各プレイヤが投票したミニ競走馬 が実際に走るようにした競馬ゲーム装置が知られている。また,コンピュータグラフィックス技術の進歩に伴い,レース内容を巨大なモニタ画面に出力表示させるようにした競馬ゲーム装置もある。 【0003】これら競馬ゲームは,与えられた情報から入賞馬を推理して投票する楽しみに加え,レースではミニチュア競馬場での競争やモニタ画面の 競争画面を見ながら自分の投票した競争馬を応援でき,実際の競馬に近くな るように構成されているため,安定した人気がある。最近は,自分の競走馬を育成して,レースに参加させ,入賞賞金を稼ぐという馬主としてゲームに参加することもでき,更なる人気を集めている。 ウ発明が解決しようとする課題【0004】従来の競争ゲーム装置では,ベットする方法は,実際の競馬の 馬券と同じであって,単勝(単勝式),複勝(複勝式),ワクレン(枠番連勝),ウマレン(馬番連勝),ワイド(拡大馬番連勝)という賭け方が用意されている。実際の競馬のように競馬新聞を用意して,レースの勝敗についての予想情報をプレイヤに提供することも行われている。 【0005】プレイヤのベットの仕方としては,実際の競 )という賭け方が用意されている。実際の競馬のように競馬新聞を用意して,レースの勝敗についての予想情報をプレイヤに提供することも行われている。 【0005】プレイヤのベットの仕方としては,実際の競馬と同様に,競馬 新聞の予想を参考にしながら,自分自身で馬券の種類と馬と掛けコイン数を決定し,タッチパネルで選択入力していた。競馬ゲームでは1レースのベット時間は長くないので,短時間で決断して選択する必要がある。 【0006】このため,プレイヤにとってベットの仕方が難しく,しかも短時間で決断する必要があり,この種ゲームに参加して継続して遊戯する際の 障害となっていた。 【0007】本発明の目的は,プレイヤにとって簡単で素早くベットすることができる競争ゲームのベット制御方法を提供することにある。 エ課題を解決するための手段【0008】上記目的は,複数の走行物が競争するレースに対してプレイヤ がベットし,レース結果に基づいてプレイヤに配当する競争ゲームのベット制御方法において,前記レースの複数の着順可能性から構成される予想情報を設定するステップと,前記予想情報をプレイヤに提示するステップと,プレイヤの指定により前記予想情報を決定するステップと,決定された前記予想情報を構成する複数の着順可能性に対してまとめてベットするステップと を有することを特徴とする競争ゲームのベット制御方法によって達成される。 【0011】上記目的は,複数の走行物が競争するレースに対してプレイヤがベットし,レース結果に基づいてプレイヤに配当する競争ゲームのベット制御方法において,レースの複数の着順可能性に対するオッズを設定するステップと,前記オッズをプレイヤに提示するステップと,プレイヤの指定により所望のオッズを決定するステップと,プ 競争ゲームのベット制御方法において,レースの複数の着順可能性に対するオッズを設定するステップと,前記オッズをプレイヤに提示するステップと,プレイヤの指定により所望のオッズを決定するステップと,プレイヤが指定した前記所望のオ ッズの複数の着順可能性に対してまとめてベットするステップとを有することを特徴とする競争ゲームのベット制御方法によって達成される。 オ発明の実施の形態【0017】(競馬ゲーム装置の構成)本実施形態の競馬ゲーム装置について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態の競馬ゲーム装置の外観 を示す図であり,図2は本実施形態の競馬ゲーム装置の構成を示すブロック図である。 【0018】本実施形態の競争ゲーム装置による競争ゲームは,プレイヤが…制御部(CPU)により走行を制御される走行物である競走馬の着順を予想してメダルをベットし,そのレース結果に基づいて配当を受ける賭け競争 ゲームのことである。 【0020】図1に示すように,本実施形態の競争ゲーム装置1の本体2にはプレイヤに共通なゲーム画面を出力する巨大な統合ディスプレイ3が設けられている。映像により競走馬が競争する状態が表示される。…【0021】一方,本体2前方には,プレイヤがそれぞれ使用する複数のサ テライト5が設けられている。各サテライト5には,自分の持ち馬,投票した競走馬を中心にゲーム画面を映像出力する個別ディスプレイ6が設けられ,…【0022】図2に示すように,個別ディスプレイ6上にはタッチパネル9が設けられており,各プレイヤはタッチパネル9に指を触れてゲームを操作 する。… 【0039】(新聞ベット)本実施形態の競馬ゲーム装置におけるベット制御方法の一具体例として新聞ベットについて図4を用いて説明する。図 ッチパネル9に指を触れてゲームを操作 する。… 【0039】(新聞ベット)本実施形態の競馬ゲーム装置におけるベット制御方法の一具体例として新聞ベットについて図4を用いて説明する。図4は,新聞ベット時にサテライト5の個別ディスプレイ6に表示される情報画面20である。 【0040】新聞ベットとは,レースを予想する競馬新聞を選択すると,そ の競馬新聞の予想通りに自動的にベットすることである。従来は,競馬新聞の予想情報は提供されていたものの,実際のベットはプレイヤが競馬新聞の予想を見ながら個々に指定していた。…【0042】予想表示領域H5の右側に新聞予想情報表示領域K1を設け,新聞予想情報表示領域K1の右側に予想新聞表示領域K2を設ける。…,新 聞予想表示領域K1には,新聞8によるこのレースの馬連の予想(…)と,馬連のオッズ(…)とを表示する。 【0044】予想新聞表示領域K2の下部には矢印ボタンK3が表示される。 矢印ボタンK3にタッチすることにより,予想新聞を,例えば,新聞1→新聞2→…→新聞8→新聞1→…と切り換えることができる。 【0046】新聞解除ボタンK4の下方にはオールベットボタンK5が表示される。オールベットボタンK5にタッチすると,新聞8が予想した最大8通りの馬連全てにベットする。 【0057】このように本具体例の新聞ベットによれば,レースを予想する競馬新聞を選択すると,その競馬新聞の予想する組合せ,例えば,1-4, 2-4等の着順可能性を画面に表示する。そのとき,プレイヤがひとつのボタンを押すだけで,画面に表示された全ての着順可能性に対して一度にベットすることができる。従来は,競馬新聞の予測からプレイヤ自身が組合せを考えて,その結果決めた組合せ,例えば,1-4,2-4等のの( タンを押すだけで,画面に表示された全ての着順可能性に対して一度にベットすることができる。従来は,競馬新聞の予測からプレイヤ自身が組合せを考えて,その結果決めた組合せ,例えば,1-4,2-4等のの(ママ)着順可能性に対して1つづつボタンを押してベットしていた。… 【0083】(オッズ指定ベット)本実施形態の競馬ゲーム装置におけるベッ ト方法の一具体例としてオッズ指定ベットについて図8を用いて説明する。 図8は,オッズ指定ベット時にサテライト5の個別ディスプレイ6に表示される情報画面20である。 【0084】オッズ指定ベットとは,プレイヤが希望するオッズの範囲を指定すると,その範囲のオッズの全ての箇所に自動的にベットするものである。 従来は,プレイヤがオッズを見て,個別に指定していた。…【0087】新聞予想情報表示領域K1の右側に案内表示領域M1が表示される。案内表示領域M1には「オッズを設定してベットして下さい」という案内が表示される。 【0088】案内表示領域M1の下部には,オッズ設定ボタンM2が表示さ れる。本具体例では,「~10」「10~20」「20~30」「30~」の4つの設定ボタンが表示される。プレイヤがオッズ設定ボタンM2にタッチすることによりオッズを設定する。 【0089】例えば,「~10」のボタンにタッチした場合,その範囲のオッズの組み合わせが全て表示するようにしてもよい。 【0090】オッズ設定ボタンM2の下方にはオールベットボタンM3が表示される。オールベットボタンM3にタッチすると,設定したオッズの範囲の全箇所にベットする。…(2) このような本件明細書の各記載によれば,発明の詳細な説明の記載について,次のように整理することができる。 ア本件各発明は,複数の走行 定したオッズの範囲の全箇所にベットする。…(2) このような本件明細書の各記載によれば,発明の詳細な説明の記載について,次のように整理することができる。 ア本件各発明は,複数の走行体が競争する競争ゲームのベット制御方法に関するものであるところ(段落【0001】),このような競争ゲームとしては,ゲームセンタ等に設置される競馬ゲーム装置が知られている(段落【0002】)。 イ従来の競争ゲーム装置におけるベット方法は,実際の競馬の馬券を購入 する場合と同じであり,実際の競馬のように競馬新聞を用意して,予想情 報をプレイヤに提供することも行われていたところ,プレイヤは,競馬新聞の予想を参考にしながら,自分自身で馬券の種類と馬と掛けるコイン数を決定し,タッチパネルで選択入力していた(段落【0004】,【0005】)。しかし,プレイヤにとってベットの仕方が難しく,また,競馬ゲームでは1レースのベット時間が長くないので,短時間で決断して選択する 必要があるという問題があった(段落【0005】,【0006】)。 ウそこで,本件各発明は,プレイヤにとって簡単で素早くベットすることができる競争ゲームのベット制御方法を提供したものである(段落【0007】)。 エ本件発明1-1は,新聞ベットというベット方法に関するものであると ころ,新聞ベットとは,レースを予想する競馬新聞を選択すると,その競馬新聞の予想通りに自動的にベットすることである(段落【0040】)。 プレイヤの操作するディスプレイに競馬新聞とその新聞によるレースの馬連の予想及びオッズが表示され,プレイヤは,表示される競馬新聞を切り替えて選択し,オールベットボタンをタッチすることで,その新聞が予想 した最大8通りの馬連全てにベットすることができる スの馬連の予想及びオッズが表示され,プレイヤは,表示される競馬新聞を切り替えて選択し,オールベットボタンをタッチすることで,その新聞が予想 した最大8通りの馬連全てにベットすることができる(段落【0042】,【0044】,【0046】)。 オ本件発明1-2は,オッズ指定ベットというベット方法に関するものであるところ,オッズ指定ベットとは,プレイヤが希望するオッズの範囲を指定すると,その範囲のオッズの全ての箇所に自動的にベットするもので ある(段落【0084】)。プレイヤの操作するディスプレイに,複数のオッズの範囲が示されたオッズ設定ボタンが表示され,プレイヤがこのボタンにタッチしてオッズを設定すると,設定されたオッズの範囲の組合せが全て表示され,オールベットボタンをタッチすることで,設定したオッズの全箇所にベットすることができる(段落【0088】~【0090】)。 2 争点1(本件発明1-1に係る対価請求権の有無(被告製品1による本件発 明1-1の実施の有無))について(1) 前記第2の1(7)記載のとおり,被告製品1のうちスターホースプログレスリターンズは,本件発明1-1の技術的範囲に属しており,被告が,上記の製造販売により,本件発明1-1を実施していたということについては,当事者間に争いがない。 (2) そして,前記1(2)のとおり,本件発明1-1は,競争ゲーム装置における新聞ベットという機能に係る発明であるところ,証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば,上記スターホースプログレスリターンズの公式ウェブサイトにおいて,新聞ベットの説明として,①「新聞」というボタンをタッチすること,②矢印のボタンにより新聞を選択すること,③「オールベット」を タッチすることで,選択した新聞の全予想に ウェブサイトにおいて,新聞ベットの説明として,①「新聞」というボタンをタッチすること,②矢印のボタンにより新聞を選択すること,③「オールベット」を タッチすることで,選択した新聞の全予想にベットされることが記載されているものであって,本件発明1-1の構成要件と対比しても,その内容に照らし,これを全て充足するものであることが認められる。 しかして,証拠(甲6,11)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1のうちスターホースプログレスリターンズ以外の製品の公式ウェブサイトにお いても,上記スターホースプログレスリターンズの場合と同様に,上記の①から③のステップを行うことで,選択した新聞の全予想にベットされる旨が記載されており,上記スターホースプログレスリターンズと同じ新聞ベットの機能を有していることが認められるものであって,本件発明1-1の構成要件と対比しても,その内容に照らし,これを全て充足するものであること が認められる。そうすると,これらの製品においても,被告は,本件発明1-1を実施していたものと認めるのが相当である。 したがって,被告は,被告製品1の製造販売により,本件発明1-1を実施していたものといえ,本件発明1-1に係る対価請求権が存するものというべきである。 3 争点2(本件発明1-2に係る対価請求権の有無(被告製品2による本件発 明1-2の実施の有無))について(1) 本件発明1-2について本件発明1-2は,オッズ指定ベットという機能に関する方法の発明であり,その規定文言に照らし,経時的要素のある発明というべきである(特許法2条3項2号参照)。そして,本件特許請求の範囲1-2の文言は,前記第 2の1(3)記載のとおりであるから,これを,当業者(その発明の属する技術の分野における のある発明というべきである(特許法2条3項2号参照)。そして,本件特許請求の範囲1-2の文言は,前記第 2の1(3)記載のとおりであるから,これを,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が理解する文言の一般的意義に照らして解釈すれば,その構成要件1-2Cのステップ(オッズの所望範囲を指定する複数のオッズ指定ボタンをプレイヤに提示するステップ)の後に,構成要件1-2Dのステップ(プレイヤによる前記複数のオッズ指定ボタンの いずれかへの操作を検出することにより,オッズの所望範囲を決定するステップ)がなされ,さらに,同ステップの後に,構成要件1-2Eのステップ(決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性をオッズと共にプレイヤに提示するステップ)がなされ,さらに,同ステップの後に,構成要件1-2Fのステップ(プレイヤに提示した複数の着順可能性のすべてに 対してベットする単一のベットボタンを表示するステップ)がなされるものであるということができる。 そうすると,本件発明1-2においては,オッズの所望範囲の決定後,複数の着順可能性がプレイヤに対して提示され,その後にそのすべてに対してベットする単一のベットボタンを表示することが,その発明特定事項となっ ているものと解するのが相当である。 (2) スターホース3SeasonⅦのステップそして,証拠(甲7)によれば,スターホース3SeasonⅦにおいて,プレイヤが希望するオッズの範囲を指定すると,その範囲のオッズの全ての箇所に自動的にベットするという機能に関して,次のようなステップが存在 することが認められる。 ①「~10」,「10~20」,「20~50」,「50~100」,「100~200」,「200~」の6つのオッ るという機能に関して,次のようなステップが存在 することが認められる。 ①「~10」,「10~20」,「20~50」,「50~100」,「100~200」,「200~」の6つのオッズフィルターボタンが表示される。 ②上記ボタンの1つを選択すると,オッズの範囲が決定され,③「オールベット」ボタンが表示される。 ④「オールベット」ボタンを選択すると,選択されたオッズの範囲に該当 する馬連の全てにベットされ,⑤当該馬連が表示される。 (3) スターホース2FINALのステップまた,証拠(甲7)によれば,スターホース2FINALにおいて,プレイヤが希望するオッズの範囲を指定すると,その範囲のオッズの全ての箇所 に自動的にベットする機能に関して,次のようなステップが存在することが認められる。 ①「~50」,「50~100」,「100~200」,「200~500」,「500~1000」,「1000~」の6つのオッズ範囲を示すボタンが表示される。 ②上記ボタンの1つを選択すると,オッズの範囲が決定され,③「オールベット」ボタンが表示される。 ④「オールベット」ボタンを選択すると,選択されたオッズの範囲に該当する馬連の全てにベットされ,⑤当該馬連を含む全馬連が表示される。 (4) そこで,以上を前提に,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALが本件発明1-2を実施していたかについて検討する。 ア上記を,本件発明1-2の構成要件と対比するに,スターホース3SeasonⅦの①のステップ(上記6つのオッズフィルターボタンが表示される,とのステップ)及びスターホース2FINALの①のステップ(上 記6つのオッズ範囲を示すボタンが表示される,とのステップ)は,各ス ップ(上記6つのオッズフィルターボタンが表示される,とのステップ)及びスターホース2FINALの①のステップ(上 記6つのオッズ範囲を示すボタンが表示される,とのステップ)は,各ス テップの内容に照らし,本件発明1-2の構成要件1-2C(「オッズの所望範囲を指定する複数のオッズ指定ボタンをプレイヤに提示するステップと,」)との文言に当たるものであり,また,スターホース3SeasonⅦの②のステップ(上記ボタンの1つを選択すると,オッズの範囲が決定されるステップ)及びスターホース2FINALの②のステップ(上記ボ タンの1つを選択すると,オッズの範囲が決定され,とのステップ)は,同様に,構成要件1-2D(「プレイヤによる前記複数のオッズ指定ボタンのいずれかへの操作を検出することにより,オッズの所望範囲を決定するステップと,」)との文言に当たるものであるといえる。 しかして,前記(1)に説示したとおり,本件発明1-2においては,オッ ズの所望範囲の決定後,複数の着順可能性がプレイヤに対して提示され,その後にそのすべてに対してベットする単一のベットボタンを表示することが,その発明特定事項となっているものと解されるものである。この点について,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALの構成については,上記(2)及び(3)のとおりであって,オッズフィルター ボタン(構成要件1-2C及び1-2Dの「オッズの所望範囲を指定する複数のオッズ指定ボタン」に当たる。)を選択し,オッズを一定の範囲に限定した操作の後についてみると,該当する馬連(決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性)は,「オールベット」ボタンの選択の後に初めて表示されるものであって,「オールベット」ボタンの表示の際にプ レ いてみると,該当する馬連(決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性)は,「オールベット」ボタンの選択の後に初めて表示されるものであって,「オールベット」ボタンの表示の際にプ レイヤに提示されている構成のものではない。すなわち,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALにおいては,上記馬連をプレイヤに提示して,その後に「オールベット」ボタンを表示するという構成(構成要件1-2E,1-2Fの構成)とはなっていないものであることが認められる。 そうすると,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FIN ALの各構成は,いずれも,構成要件1-2E,1-2Fの文言を充足しないというほかなく,また,その表示の際に該当する馬連がプレイヤに提示されていない「オールベット」ボタンが,「プレイヤに提示した複数の着順可能性のすべてに対してベットする単一のベットボタン」(構成要件1-2F)に当たるということもできないから,これを前提とする構成要件1 -2G及び1-2Hの各文言もまた充足しないというほかない。 イこの点,原告は,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALのステップは,構成要件1-2C,1-2D,1-2F,1-2G,1-2H,1-2Eの順番に進行するが,この構成要件1-2Eのステップの後にキャンセルボタンを押すことで,オッズフィルターボタンを 選択する前の画面(上記②のオッズの範囲を決定する段階の画面)に戻り,再度オッズフィルターボタン及びオールベットボタンを選択することで,その後,構成要件1-2F,1-2G,1-2Hの順にステップが進むことになるから,全体として見れば,本件発明1-2のとおりの順番でステップが進行しており,構成要件1-2Eないし1-2Hを充足す で,その後,構成要件1-2F,1-2G,1-2Hの順にステップが進むことになるから,全体として見れば,本件発明1-2のとおりの順番でステップが進行しており,構成要件1-2Eないし1-2Hを充足すると主張 する。 そして,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALにおいては,オールベットボタンを押し,選択したオッズの範囲の馬連が表示された後で,キャンセルボタンを押すことで,オッズフィルターボタンを選択する前の画面に戻り,再度オッズフィルターボタン及びオールベ ットボタンを選択することで,再び選択したオッズの範囲の馬連全てにベットされるものである(甲7)。しかしながら,たとえこのことを前提としても,上記被告製品において,オールベット後に購入馬券一覧画面を表示させた場合,それで問題がないときには,そのままレースの開始を待てば足りるものであるから,ベットしたものをキャンセルする操作は,上記の ベット自体をやめるか,ベットをする対象を変更するという事情があると きに行われるものというべきである。そうすると,上記被告製品において,いったんオールベットを選択しておきながら,それをキャンセルし,その後にまた全く同一のベットを繰り返すというような原告が主張する上記操作は,上記被告製品において通常想定される操作とは言い難いものであって,そのような通常想定されない操作をもって,上記被告製品の構成であ ると認めることはできないというべきであるから,これを前提に,上記被告製品が構成要件1-2Eないし1-2Hを充足するとの原告の上記主張は,その前提を欠き,理由がないものである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (5) また,原告は,被告製品2のうち,スターホース3SeasonⅦ及びス 原告の上記主張は,その前提を欠き,理由がないものである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (5) また,原告は,被告製品2のうち,スターホース3SeasonⅦ及びス ターホース2FINAL以外の製品についても,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALと同様の機能が存在していたことが強く推認されるなどとして,本件発明1-2を実施していたと主張する。 しかし,証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品2は,いずれも,プレイヤが希望するオッズの範囲を指定すると,その範囲のオッズ の全ての箇所に自動的にベットするという機能を有するものであるが,そのうち,上記(2)ないし(4)に説示したとおり,スターホース3SeasonⅦ及びスターホース2FINALの各構成については,いずれも,構成要件1-2Eないし1-2Hの各文言を充足しないというのであって,その他本件全証拠を精査しても,その他の被告製品2がこれと異なり,上記 構成要件の各文言を充足していることを客観的に裏付けるものは見当たらない。 なお,証拠(甲8)によれば,被告の平成21年6月30日付け回答書に,「特許発明『オッズ指定ベット』に対応すると思われる仕様は,数ある『スターホース2シリーズ』のバージョンの中でも最新作となる『スター ホース2 フォースアンビション』のみにしか搭載されておらず,」との記 載があることが認められるが,かかる抽象的記載からは,被告が,「スターホース2FOURTH」において,オッズ指定ベットの機能(プレイヤが指定したオッズの範囲の馬連全てにベットする機能)が搭載されていると回答したことが認められるにとどまり,この機能が本件発明1-2の経時的な構成要件を全て充足し同発明を実施することで実現され レイヤが指定したオッズの範囲の馬連全てにベットする機能)が搭載されていると回答したことが認められるにとどまり,この機能が本件発明1-2の経時的な構成要件を全て充足し同発明を実施することで実現されていることま で認めたものと認定することはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (6) 上記(4)及び(5)で認定したとおり,被告製品2は,本件発明1-2における,決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性をプレイヤに提示するステップ(構成要件1-2Eに関連する部分)を有していないもの である(以下,この相違部分を「本件相違部分」という。)。 この点につき,原告は,本件相違部分が存するとしても,被告製品2は,本件発明1-2に係る特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであり,被告製品2において,本件発明1-2を実施していたといえる旨主張する。 しかして,特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分 が存する場合であっても,所定の要件(最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照。以下,そのうち当該相違部分が特許発明の本質的部分ではないことをいう要件を「均等の第1要件」という。)をいずれも充足するときには,対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,その技術的範囲に属 するというべきである。 そこで,原告の主張する立場(上記の考え方を,特許侵害訴訟ではない本件のような事案においても適用できるとの立場)に沿って検討する。 まず,均等の第1要件についてみると,特許発明の本質的部分とは,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべき であるところ,本件発明1-2の技術分野( 検討する。 まず,均等の第1要件についてみると,特許発明の本質的部分とは,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべき であるところ,本件発明1-2の技術分野(オッズ指定ベット(プレイヤが 希望するオッズの範囲を指定すると,その範囲のオッズの全ての箇所に自動的にベットするもの。本件明細書の段落【0084】)の機能に関する分野)に係る従来技術においては,プレイヤがオッズを見て,個別に指定していたものであるが(本件明細書の段落【0084】),1レースのベット時間が長くなく,ベットの仕方も難しい競馬ゲームにおいて,短時間で決断して素早 くベットすることができるベット制御方法を提供することが課題となっていた(本件明細書の段落【0004】ないし【0007】)。しかるところ,本件発明1-2は,前記第2の1(3)記載の本件特許請求の範囲1-2の文言のとおりの経時的要素を有する構成(構成要件1-2Cのステップ(オッズの所望範囲を指定する複数のオッズ指定ボタンをプレイヤに提示するステップ) の後に,構成要件1-2Dのステップ(プレイヤによる前記複数のオッズ指定ボタンのいずれかへの操作を検出することにより,オッズの所望範囲を決定するステップ)がなされ,さらに,同ステップの後に,構成要件1-2Eのステップ(決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性をオッズと共にプレイヤに提示するステップ)がなされ,さらに,同ステップの 後に,構成要件1-2Fのステップ(プレイヤに提示した複数の着順可能性のすべてに対してベットする単一のベットボタンを表示するステップ)がなされるなどの構成)を採用し,そのことによって,初心者であっても,希望するオッズの範囲を指定するなどするだけで,適切なベットを短時間で行う に対してベットする単一のベットボタンを表示するステップ)がなされるなどの構成)を採用し,そのことによって,初心者であっても,希望するオッズの範囲を指定するなどするだけで,適切なベットを短時間で行うことができるようにするという技術的効果を奏するようにしたものといえる (本件明細書の段落【0084】参照)。 そうすると,本件発明1-2における上記の各ステップやその順序は,初心者が適切なベットを短時間で行うことができるようにする上で,その課題解決原理の中核的部分を構成するものというべきであって,従来技術に見られない特有の技術的思想を有する特徴的部分を構成するものというべきであ るところ,これを本件相違部分についてみると,被告製品2においては,本 件特許請求の範囲1-2に記載された構成(構成要件1-2Eの,決定されたオッズの所望範囲に該当する複数の着順可能性をオッズと共にプレイヤに提示するステップに係る構成)という,経時的要素を有する方法の発明における一つのステップを構成する,一定の有機的なまとまりのある構成に対応する部分が全く存せず,いわばその構成ごと欠如しているものであるから, 当該ステップやその順序において相違しているものというべく,このような本件相違部分は,本件発明1-2における,従来技術に見られない特有の技術的思想を有する特徴的部分に当たるものというほかない。そうすると,本件相違部分は,本件発明1-2の本質的部分であるというべきであるから,均等の第1要件を充足しないというべきである。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (7) 以上によれば,被告は,被告製品2の製造販売により,本件発明1-2を実施していたものとはいえず,本件発明1-2に係る対価請求権が存するということはできない 主張は,採用することができない。 (7) 以上によれば,被告は,被告製品2の製造販売により,本件発明1-2を実施していたものとはいえず,本件発明1-2に係る対価請求権が存するということはできない。 4 争点3(本件ノウハウに係る対価請求権の有無) (1) 本件ノウハウについて,原告は,競馬のレース結果を予想するゲーム(予想ゲーム)とレースに出走する競走馬の育成を行うゲーム(馬主ゲーム)を両立させた競馬ゲームにおいて,完全確率抽選方式の下,馬主ゲームで育成された競走馬ごとにレースの期待値が異なることに起因する不公平さを解消することを課題とするものである旨をいい,その趣旨について,次のとお りであると主張する。 「競争体を取得して持ち馬等にした後,遊技価値に基づいた当該持ち馬等の活力値を決定する活力値決定手段と,前記持ち馬等及び持ち馬等以外で競争体のオッズに関連する所定の能力値を有する競争体を競争に参加させるようにするレース出走手段と, 競争に参加する競争体のオッズを決定するオッズ決定手段と, 前記競争における前記競争体の着順を予想して遊技価値を賭けるベット手段と,前記競争体に競争を行わせるレース実行手段と,前記競争における前記競争体の着順と前記オッズに基づいて遊技価値の払い戻しを行う払い戻し手段と,からなる競争ゲームにおいて, 前記オッズ決定手段は,少なくとも前記持ち馬等の前記活力値及び持ち馬等以外の競争体の前記能力値に基づいてオッズを決定する,ことを特徴とする完全確率抽選の競争ゲーム。」(2) 上記(1)からすれば,本件ノウハウの趣旨の要点は,①「活力値」を有する馬主ゲームで育成された競走馬と,「能力値」を有するその他の競走馬をレー スに参加させ,②「活力値」及び「能力値 (2) 上記(1)からすれば,本件ノウハウの趣旨の要点は,①「活力値」を有する馬主ゲームで育成された競走馬と,「能力値」を有するその他の競走馬をレー スに参加させ,②「活力値」及び「能力値」に基づき各競走馬のオッズを決定し,③プレイヤがレース結果を予想してベットしてレースを行い,④レース結果とオッズに基づき払い戻しが行われる,⑤完全確率抽選の競争ゲームというものであるといえ,要するに,予想ゲームと馬主ゲームを組み合わせたゲームにおいて,完全確率抽選方式を採用したというものであると解され る。 しかし,証拠(乙4)によれば,被告各製品の販売開始以前に,他社から予想ゲームと馬主ゲームを組み合わせたゲームが販売されていたことが認められ,このようなゲームにおいて完全確率抽選方式を採用することは,保護に値すべきノウハウとはいえない。また,上記①ないし⑤の構成を踏まえた, 完全確率抽選方式を採用する上記ゲームにおける「活力値」の導入という点についてみるとしても,競走馬を育成する馬主ゲームにおいて,競走馬の能力を何らかの形で数値化し,育成等によりそれが増減するようにし,これが,競争馬の勝率を反映したオッズに影響するような構成を採ること自体は,当業者が当然試みる範疇のことであって,これを,原告にひとり排他的独占権 を認めるに足りる技術思想とまで評価するには足りない。さらに,育成した 競走馬ごとの不公平さを解消するために,その能力を数値化した「活力値」を基に,当該ゲームの設計思想に応じたバランスの取り方を適宜決定し,それに相応した調整を図ることは,当業者が当然試みることであるといえる。 そうすると,予想ゲームと馬主ゲームを組み合わせながら,完全確率抽選方式を採用するゲームにおいて,原告が主張する前記本件ノウハウの趣旨 応した調整を図ることは,当業者が当然試みることであるといえる。 そうすると,予想ゲームと馬主ゲームを組み合わせながら,完全確率抽選方式を採用するゲームにおいて,原告が主張する前記本件ノウハウの趣旨は, 当業者であれば当然に試みる技術的事項の範疇にあるものといわざるを得ず,いまだ,原告において,発明として保護される程度に至る,被告に独占的利潤をもたらすような,独占の利益が生じていると評価するに足りるノウハウが存在しこれを有していたことは認められないというほかはない。したがって,本件ノウハウに係る原告の被告に対する対価請求権が存するということ はできない。 (3) この点,原告は,「活力値」という,レース出走時の出走登録料をメダルで支払うことにより増加し,レース結果として賞金を得たときにも増加し,馬の生産,調教,餌やりなどの育成過程によっても増加する指標を導入し,この活力値のうち,レースで消費した価値(活力値)と,賞金等でもらえる価 値(活力値)の期待値を同じくすることで,馬ごとの不公平さをなくしたと主張する。 しかし,原告が主張する前記本件ノウハウの趣旨を前提とすると,上記(2)に説示したとおり,上記活力値の導入自体は,当業者が当然試みる範疇のことであって,これを,原告にひとり排他的独占権を認めるに足りる技術思想 とまで評価するには足りない上,育成した競走馬ごとの不公平さを解消するために,その能力を数値化した「活力値」を基に,当該ゲームの設計思想に応じたバランスの取り方を適宜決定し,それに相応した調整を図ることは,当業者が当然試みることであるといえる。 したがって,原告の上記主張を採用することにより,本件ノウハウに係る 原告の被告に対する対価請求権が存するということはできない。 なお,原告は, 業者が当然試みることであるといえる。 したがって,原告の上記主張を採用することにより,本件ノウハウに係る 原告の被告に対する対価請求権が存するということはできない。 なお,原告は,原告作成の「プレイヤー馬計算アルゴリズム説明書」及び「スターホースの馬主ゲームの計算方法」と題する書面(甲19号証の1,甲22号証の1)の記載を基に,本件ノウハウに係る対価請求権が存する旨主張するが,原告が主張する前記本件ノウハウの趣旨を前提とすると,前記のとおり,活力値の導入自体や,活力値を基に,ゲームの設計思想に応じた バランスの取り方を適宜決定し,それに相応した調整を図ることは,当業者が試みる範疇にあるものであるから,上記書面の記載を精査しても,前記判断が左右されるものとはいえない。 5 争点6(本件発明1-1の対価請求権に係る消滅時効の成否)について本件事案に鑑み,争点4(本件発明1-1に係る相当の対価の額)について の判断に先立ち,争点6(本件発明1-1の対価請求権に係る消滅時効の成否)について検討する。 (1) 証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告においては,次のような規定を有する実績補償細則が定められていたことが認められる。なお,年度はいずれも同年4月1日から翌年3月3 1日までの期間である。 (ア) 平成7年度から平成13年度までの実績補償細則第1条(目的)この細則は,会社規則「従業員による発明等に対する補償規則」第3条に基づき,会社の従業員に支給する実績補償の金額,支給手続き などについて定める。 第2条(支給対象の権利)原則として,日本国に於ける登録済の特許権,及び実用新案権(以下特許権等と言う。)であって,その特許権等の実施によって会社が相当の利 続き などについて定める。 第2条(支給対象の権利)原則として,日本国に於ける登録済の特許権,及び実用新案権(以下特許権等と言う。)であって,その特許権等の実施によって会社が相当の利益を得たと認められるもの,或いはその特許権等を他社へ実施 許諾すること等によって会社が相当の実施料収入を得たものを対象と する。…第3条(支給対象の調査) 1 前条による権利を対象として,毎年4月1日以降支給該当年3月31日までの1年間の国内に於ける実施実績並びに,当該期間に於ける実施許諾に基づく実施料収入の額について調査を行う。 第7条(支給額の決定) 1 知的財産権部は,第3条による調査の結果を基に…補償金の額を評定するものとし,その評定結果を経営会議へ諮るものとする。 2 経営会議は,本補償制度の運用方針並びに知的財産権部で評定した結果について審議し,補償金支給の可否,支給時期,及び支給額 について決定する。 第8条(支給手続) 3 補償対象者が退職者(懲戒解雇者を除く)である場合または死亡している場合,対象者またはその相続人から請求があれば次期に補償し,請求がない場合は補償を留保し,民法に定める時効により消 失するものとする。 (イ) 平成16年7月1日改定(平成14年12月1日制定)の実績補償細則第1条(目的)この細則は「従業員による発明等に対する補償規則」第3条に基づ き,会社の従業員に支給する実績補償の金額,支給手続きなどについて定める。 第2条(支給対象)会社に届出された発明,考案或いは意匠の創作であって,特許庁への出願手続きが完了したもの(以下,「特許出願等」という。),又は出 願後,特許登録に至ったもの(以下,「特許等」という。)により,会 社が相 明,考案或いは意匠の創作であって,特許庁への出願手続きが完了したもの(以下,「特許出願等」という。),又は出 願後,特許登録に至ったもの(以下,「特許等」という。)により,会 社が相当の利益を得たと認められる場合,会社は,当該特許出願等又は特許等の発明者に対して実績補償金を支払う。…第3条(支給対象の調査)前条による補償の対象として,毎年4月1日以降支給該当年3月31日までの1年間の実施(実施許諾に基づく実施料収入の金額等)に ついて調査を行う。…第5条(支給額の決定) 1 知的財産権部は,前条2項により決定された補償金額による実績補償金の額を算定し,その算定結果を最高経営会議へ諮るものとする。 2 最高経営会議は,本補償金の運用方針並びに知的財産権部で評定した結果について審議し,補償金支給の可否,支給時期,及び支給額について決定する。 第6条(支給手続き) 3 補償対象者が退職者(懲戒解雇者を除く。)である場合又は死亡し ている場合,対象者又はその相続人から請求があれば次期に補償し,請求がない場合は補償を留保し,民法に定める時効により消滅するものとする。 第7条(施行日)この規則は平成14年4月1日以降に出願,登録及び実施された発 明等につき適用される。 (ウ) 平成17年9月1 日改定(平成14年12月1日制定)の実施補償細則第1条(目的)この細則は「従業員による発明等に対する補償規則」第3条に基づ き,会社の従業員に支給する実績補償の金額の算定,並びに支給手続 き等について定める。 第2条(支給対象)会社は,従業員のなした発明,考案或いは意匠の創作(以下「発明等」という。)について特許・実用新案又は意匠の登録を受ける権利の全部,またはその一部 き等について定める。 第2条(支給対象)会社は,従業員のなした発明,考案或いは意匠の創作(以下「発明等」という。)について特許・実用新案又は意匠の登録を受ける権利の全部,またはその一部を譲り受けて特許庁へ出願したもの(以下,「特 許出願等」という。),又は前記出願後,特許庁による審査を経て登録査定に至ったもの(以下,「特許等」という。)により,会社が相当の利益を得たと認められる場合,第3条により算定される金額を実績補償として,当該特許出願等又は特許等の発明者(以下,「発明者等」という。)に対して支給するものとする。 第5条(支給手続き) 3 支給対象の発明者等が退職者(懲戒解雇者を除く。)である場合又は死亡している場合,対象者又はその相続人から請求があれば次期に補償し,請求がない場合は補償を留保するものとする。 第7条(適用) この細則は平成16年4月1 日以降の発明等の実施につき適用される。 附則 1 この細則は,平成14年12月1日より実施する。 イ被告における,平成17年4月1日から平成18年3月31日までの期 間の,実績補償細則に基づく職務発明に係る実績補償金については,各発明者に対し,平成19年2月9日に支給されることが決定された(乙2)。 (2) 上記(1)で認定した事実並びに証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,被告における平成12年度から平成17年度(年度はいずれも同年4月1日から翌年3月31日までの期間)までの期間の実績補償細則に基づく実績補償 金の各支給日は,平成12年度から平成17年度のいずれについても,遅く とも平成19年2月9日であると認められ,これを左右するに足りる証拠はない。そうすると,上記各年度の実績に係る職務発明の対価請求権については,そ 年度から平成17年度のいずれについても,遅く とも平成19年2月9日であると認められ,これを左右するに足りる証拠はない。そうすると,上記各年度の実績に係る職務発明の対価請求権については,それぞれ各支給日(すなわち平成19年2月9日)が消滅時効の起算日に当たると認めるのが相当である。 そして,前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1のうち,ス ターホースプログレスリターンズ以外の機種は,平成12年から平成17年までに販売されたものであることが認められるから,その販売最終年度である平成17年度の販売に対応する実績補償金の支給日でもある上記各起算日(平成19年2月9日)から,民法が規定する債権の消滅時効の期間である10年が経過していることが認められる。 なお,原告は,提出された実績補償細則は一部が黒塗りになっていることや,被告の勤務規則等が提出されないことを理由に,実績補償金の支給日が不明である旨主張するが,原告が指摘する実績補償細則(乙2)中の黒塗りにされている部分は,上記細則の全体の体裁や各項目の記載からすれば,支給日に係る事項が記載されている部分であるとは認められず,また,前記(1) で認定した実績補償細則の存在及び内容に鑑みれば,被告の勤務規則等により上記認定が左右されるものとは認められないから,原告の上記主張は採用することができない。 (3) また,原告は,原告による本件各発明に係る相当対価の支払等に関する問合せに対し,被告の知的財産権部の担当者が平成20年11月25日に送付 したメールの内容をもって,被告が本件発明1-1に係る債務を承認したとして,上記時効が中断した旨又は被告が時効を援用する権利を喪失した旨主張する。 しかし,証拠(甲16)によれば,原告が主張する被告の知的財産権部の もって,被告が本件発明1-1に係る債務を承認したとして,上記時効が中断した旨又は被告が時効を援用する権利を喪失した旨主張する。 しかし,証拠(甲16)によれば,原告が主張する被告の知的財産権部の担当者とのメールでのやりとりにおいて,同担当者が出願補償や登録補償の 支払について言及していることは認められるものの,実績補償の支払につい ては,上記やりとりで同担当者から原告に送付された資料(甲16の2)中の「実績補償」欄に「実績(ライセンス収入等)無し」との記載があるものであって,被告において実績補償の支払を認めた旨の記載が存すると認定することはできず,原告が主張する上記やりとりをもって,本件発明1-1の対価請求権に関し,被告が債務を承認したとまでは認められないというほか ない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 以上によれば,被告製品1のうち,スターホースプログレスリターンズ以外の機種における本件発明1-1の実施については,当該実施に対応する原告の対価請求権につき,消滅時効が完成しており,前記第2の1(8)のとおり, 被告はこれを援用する旨の意思表示をしたものである。 よって,原告の上記対価請求権は,時効により消滅したものというべきである。 6 争点4(本件各発明に係る相当の対価の額)について前記説示によれば,原告は,被告に対し,被告によるスターホースプログレ スリターンズにおける本件発明1-1の実施についてのみ,相当の対価を請求することができる。そこで,その相当の対価の額について検討する。 (1) スターホースプログレスリターンズの売上高原告は,スターホースプログレスリターンズの売上高について,5億9900万円であると推計しているものの,この金額を客観的に裏付ける証拠 検討する。 (1) スターホースプログレスリターンズの売上高原告は,スターホースプログレスリターンズの売上高について,5億9900万円であると推計しているものの,この金額を客観的に裏付ける証拠は ないものである一方,弁論の全趣旨によれば,被告はスターホースプログレスリターンズの売上高を●(省略)●と主張しており,同額は,●(省略)●ことに照らせば,上記売上高については,●(省略)●であると認定するのが相当である。 (2) 独占の利益 ア後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) スターホースプログレスリターンズは,予想ゲームと馬主ゲームを組み合わせた競馬メダルゲームであり,ゲーム機は,ゲームセンターにおいて,プレイヤに共通するゲーム画面であるレースの内容等を映し出す大型ディスプレイと,各プレイヤが操作する複数のサテライトという構成で提供されていた(甲10,11)。 (イ) スターホースプログレスリターンズの予想ゲームにおける賭け方としては,単勝(単勝式),複勝(複勝式),馬連(馬番連勝),ワイド(拡大馬番連勝),ライド(前レースで的中したメダルを指定した競走馬1頭に一括でベットする賭け方),サイド(CPU馬に対して指定されたメダル枚数を支払えば,1レースだけ所有馬として賞金が獲得できるという賭 け方)があり,ベット方法としては,新聞ベットのほかに,ボックス(最大6頭までの馬による組合せでベットできる方法),ながし(軸とする1頭の馬を決め,相手になる馬を何点でも選択し,ベットできる方法)があった(甲10)。 (ウ) 新聞ベットの機能が採用された機種は,平成21年発売のスターホー スプログレスリターンズが最後であり,それ以降に発売された機種に,新聞ベットの機能 できる方法)があった(甲10)。 (ウ) 新聞ベットの機能が採用された機種は,平成21年発売のスターホー スプログレスリターンズが最後であり,それ以降に発売された機種に,新聞ベットの機能は採用されていなかった(甲10,弁論の全趣旨)。 (エ) 被告は,上記のようなスターホースプログレスリターンズを製造販売することにより,本件発明1-1を自社実施していた(弁論の全趣旨)。 イ以上を前提に検討すると,上記のような被告において,スターホースプ ログレスリターンズにおいて本件発明1-1を実施したことによる独占の利益は,第三者に実施を許諾した場合に得られる実施料額というべきところ,これは,上記の売上高に対して,被告が第三者に実施許諾をせずに本件発明1-1を独占的に実施していることによって得た超過売上高の割合を乗じた上で,これに対して仮に第三者に実施許諾をした場合の実施料率 を乗じることにより算定されるというべきである。 (計算式)独占の利益=売上高×超過売上の割合×仮想実施料率そして,前記前提事実及び上記アで認定した事実に加え,新聞ベットの機能により,競馬メダルゲームの課題であるベットの簡易化及び迅速化が実現されることなど,本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると,本件における超過売上げの割合は●(省略)●,仮想実施料率は5%と認めるこ とが相当であるから,これによれば,上記独占の利益は,1365万円(=●(省略)●×0.05)と算定される。 (3) 原告が受けるべき相当の対価の額これを前提に,原告が受けるべき相当の対価の額について検討するに,スターホースプログレスリターンズにおいて本件発明1-1を実施したことに よる独占の利益は上記(2)イのとおりであるところ,原告が受けるべき相当の対価の額は 相当の対価の額について検討するに,スターホースプログレスリターンズにおいて本件発明1-1を実施したことに よる独占の利益は上記(2)イのとおりであるところ,原告が受けるべき相当の対価の額は,その額から使用者である被告の貢献による割合を控除した額を,発明者の数(4名)で除した金額であるというべきである。なお,本件全証拠によっても,4名の発明者の貢献度に差を設けるべき事情は認められないから,各発明者の貢献度は同一であるとすべきである。 そして,前記前提事実及び上記(2)で認定した事実,新聞ベットの機能など本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると,会社の貢献度は95%を下回ることはないものと認めるのが相当である。この点,原告は,会社の貢献度が50%程度である旨主張するが,本件全記録を精査しても,これを的確に認めるに足りる証拠は見当たらない。 したがって,スターホースプログレスリターンズにおける本件発明1-1の実施につき,原告が受けるべき相当の対価の額は,17万0625円(=1365万円×0.05÷4)であると認められる。 第5 結論その他,原告は縷々主張するが,その主張内容を慎重に検討しても,上記説 示を左右するに足りるものはなく,原告による文書提出命令の申立て(令和元 年(モ)第3052号及び同年(モ)第3053号)は,いずれも証拠調べの必要性がないものとして,却下すべきことに帰する。 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は,被告製品1のうちのスターホースプログレスリターンズにおける本件発明1-1の実施につき,相当対価として17万0625円及びこれに対する訴状送達 の日の翌日である平成30年12月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を受け 主文 る本件発明1-1の実施につき,相当対価として17万0625円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年12月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を受けるべき限度で理由があり,その余は理由がない。よって,主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官奥俊彦 裁判官本井修平は,てん補のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官田中孝一 (別紙省略)
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